(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-21
(45)【発行日】2022-01-31
(54)【発明の名称】余剰電力取引装置およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/06 20120101AFI20220124BHJP
【FI】
G06Q50/06
(21)【出願番号】P 2018163403
(22)【出願日】2018-08-31
【審査請求日】2021-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 功太朗
(72)【発明者】
【氏名】丸山 ほなみ
【審査官】石川 正二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/151986(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/145456(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
余剰電力の買電を希望する第1需要家が電力会社から購入する単位電力量当たり料金である第1電気料金、および余剰電力の売電を希望する第2需要家が売電する余剰電力の単位電力量当たりの料金である第2電気料金を取得し、前記第2需要家と、当該第2需要家の前記第2電気料金より高い前記第1電気料金の前記第1需要家とを紐付ける需要家情報、および前記第2需要家の前記第2電気料金を前記電力会社の端末に通知する通知部、
を備える余剰電力取引装置。
【請求項2】
前記通知部は、前記第2電気料金より高い前記第1電気料金の前記第1需要家が複数存在する場合、予め設定された条件に基づいて、当該複数の第1需要家のそれぞれに優先度を設定し、前記優先度が最も高い前記第1需要家と、前記第2需要家とを紐付ける前記需要家情報を前記電力会社の端末に通知する請求項1に記載の余剰電力取引装置。
【請求項3】
前記予め設定された条件は、前記第2需要家との間の物理的な距離が近くなるに従って前記優先度を高くすることである請求項2に記載の余剰電力取引装置。
【請求項4】
前記需要家情報は、送電が禁止されている電力系統の先に存在する前記第1需要家以外の前記第1需要家と、前記第2需要家とを紐付ける情報である請求項1から3のいずれか一に記載の余剰電力取引装置。
【請求項5】
前記第2需要家を識別可能とする識別情報と、前記第2需要家の前記第2電気料金と、を対応付ける売電情報を記憶する記憶部をさらに備え、
前記通知部は、前記第2需要家と、前記売電情報において前記第2需要家の前記識別情報と対応付けられる前記第2電気料金より高い前記第1電気料金の前記第1需要家と、を紐付ける前記需要家情報を、前記電力会社の端末に通知する請求項1から4のいずれか一に記載の余剰電力取引装置。
【請求項6】
単位電力量当たりの電力の市場価格、需要家による電力の現在の使用状況、需要家が存在する地域や住所、および送配電事業者が提供する需給バランスの状況や送電禁止エリアの情報の少なくとも1つに基づいて、前記第2電気料金を設定する設定部をさらに備える請求項1から5のいずれか一に記載の余剰電力取引装置。
【請求項7】
前記第2電気料金は、前記第2需要家によって指定される電気料金である請求項1から5のいずれか一に記載の余剰電力取引装置。
【請求項8】
前記通知部は、さらに、前記第2需要家毎の余剰電力の売電履歴に基づいて、前記第2電気料金の値下げを促す通知を前記第2需要家に行う請求項6に記載の余剰電力取引装置。
【請求項9】
前記通知部は、さらに、前記複数の第2需要家のそれぞれの前記第2電気料金に基づいて、前記複数の第2需要家の余剰電力の売買による収入が等しくなるように、前記第2需要家毎に、売買可能な余剰電力の割合を決定し、前記決定した割合を前記電力会社の端末に通知する請求項1から8のいずれか一に記載の余剰電力取引装置。
【請求項10】
前記通知部は、さらに、予め設定された条件に基づいて、前記第2需要家に対して優先度を設定し、前記第2需要家が売電可能な余剰電力の割合が前記優先度が高くなるに従って大きくなるように、前記第2需要家毎に、売買可能な余剰電力の割合を決定し、前記決定した割合を前記電力会社の端末に通知する請求項1から8のいずれか一に記載の余剰電力取引装置。
【請求項11】
前記需要家に設置された電力計測装置から、前記需要家による電力の現在の使用状況を、前記送配電事業者を介さずに、収集する情報収集部をさらに備え、
前記設定部は、前記情報収集部により収集される前記需要家による電力の現在の使用状況に基づいて、前記第2電気料金を設定する請求項6に記載の余剰電力取引装置。
【請求項12】
前記設定部は、前記需要家による電力の現在の使用状況に基づいて、前記第1電気料金を設定する請求項6に記載の余剰電力取引装置。
【請求項13】
前記第1電気料金は、前記電力の買電により生じる手数料および託送料金を含めた料金である請求項12に記載の余剰電力取引装置。
【請求項14】
コンピュータを、
余剰電力の買電を希望する第1需要家が電力会社から購入する単位電力量当たり料金である第1電気料金、および余剰電力の売電を希望する第2需要家が売電する余剰電力の単位電力量当たりの料金である第2電気料金を取得し、前記第2需要家と、当該第2需要家の前記第2電気料金より高い前記第1電気料金の前記第1需要家とを紐付ける需要家情報、および前記第2需要家の前記第2電気料金を前記電力会社の端末に通知する通知部、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、余剰電力取引装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
2009年11月より太陽光発電システムで発電された電力のうち、自宅で使いきれなかった余剰電力を、10年間、固定価格で電力会社に売電できる固定価格買取制度(FIT制度)が始まった。そして、FIT制度が始まってから、10年後の2019年11月に、電力会社による固定価格での買い取りが終了する需要家が約37万件存在し、2019年度末までに50万件に達することが想定されている。そのため、需要家間で余剰電力を売買する余剰電力取引システムの導入が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電力(電流)は、電圧の高い所から電圧に低い所から流れる性質を有し、需要家間で送りたい場所に余剰電力を送電することは難しい。そのため、現状においては、需要家間において電力を売買することはできず、小売電気事業者を経由して需要家間で仮想的に電力の売買を成立させ、その後、仮想的に売買した電力の料金を事後精算とするシステムが必要となる。また、電力は、色づけされていないため、ある需要家の余剰電力がどの需要家に供給されたかを特定することができず、スマートメータ等のメータ値のみを使って事後精算することが困難である。
【0005】
また、需要家間での余剰電力の取引が活性化した際に、余剰電力の買い取りの希望価格が同等の希望者(需要家)が複数存在する場合における当該希望者に対する優先度の付け方も課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態にかかる余剰電力取引装置は、通知部、を備える。通知部は、余剰電力の買電を希望する第1需要家が電力会社から購入する単位電力量当たり料金である第1電気料金、および余剰電力の売電を希望する第2需要家が売電する余剰電力の単位電力量当たりの料金である第2電気料金を取得する。また、通知部は、第2需要家と、当該第2需要家の第2電気料金より高い第1電気料金の第1需要家とを紐付ける需要家情報、および第2需要家の第2電気料金を電力会社の端末に通知する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本実施形態にかかる余剰電力取引システムの構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、本実施形態にかかる余剰電力取引システムの電力会社端末が記憶する電力量情報の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、本実施形態にかかる余剰電力取引システムの電力会社端末が記憶する電力量情報の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、本実施形態にかかる余剰電力取引システムが有する余剰電力取引装置の構成の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、本実施形態にかかる余剰電力取引システムの余剰電力取引装置が記憶する売電情報の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、本実施形態にかかる余剰電力取引システムの余剰電力取引装置による出力データの出力処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付の図面を用いて、本実施形態にかかる余剰電力取引装置およびプログラムを適用した余剰電力取引システムの構成の一例について説明する。
【0009】
図1は、本実施形態にかかる余剰電力取引システムの構成の一例を示す図である。
図1に示すように、本実施形態にかかる余剰電力取引システムは、余剰電力取引装置100と、電力会社の端末200(以下、電力会社端末と言う)と、送配電事業者の端末300(以下、送配電事業者端末と言う)と、複数の需要家400と、を有する。
【0010】
電力会社端末200は、需要家400からの電力の買取や、需要家400からの電気料金の徴収、送配電事業者への託送料金の支払等を管理する。すなわち、電力会社端末200は、需要家400を管理する顧客管理システムである。また、電力会社端末200は、需要家400毎の電気料金に関する契約者情報を記憶する記憶部を有する。
【0011】
本実施形態では、契約者情報には、電力会社と低圧の契約を行っている需要家400(例えば、一般家庭)の契約者情報、および電力会社200と高圧の契約を行っている需要家400(例えば、ビル、会社、商店、スーパー、工場)の契約者情報が含まれる。
【0012】
図2および
図3は、本実施形態にかかる余剰電力取引システムの電力会社端末が記憶する契約者情報の一例を示す図である。低圧の需要家400の契約者情報は、
図2に示すように、低圧の需要家400の個人名と、低圧の需要家400が契約している電力会社と、低圧の需要家400に設定される料金メニューと、電力会社と低圧の契約を行っている需要家を識別可能とするお客様番号(契約者識別情報)と、低圧の需要家400の住所と、低圧の需要家400がPVを有しているか否かを示すPV有無と、低圧の需要家400の所定期間毎(例えば、月毎)の電力の使用量である使用電力量と、低圧の需要家400の電力の使用に関わる現在の段階における単位電力量当たりの電気料金と、を対応付けるテーブルである。
図2に示す契約者情報には、余剰電力の売電を希望する需要家400および余剰電力の買電を希望する需要家400の両方の契約者情報が含まれるものとする。
【0013】
一方、高圧の需要家400(余剰電力の売電を希望する需要家400および余剰電力の買電を希望する需要家400の両方を含む)の契約者情報は、
図3に示すように、高圧の需要家400の名称(例えば、法人)、高圧の需要家400が契約している電力会社、高圧の需要家400に設定される料金メニューと、電力会社と高圧の契約を行っている需要家400を識別可能とするお客様番号(契約者識別情報)と、高圧の需要家400の住所と、高圧の需要家400がPVを有しているか否かを示すPV有無と、高圧の需要家400の所定期間毎(例えば、月毎)の電力の使用量である使用電力量と、高圧の需要家400が契約した料金メニュー(例えば、標準メニューまたは季節別時間帯別メニュー)に対応する単位電力量当たりの電気料金と、を対応付けるテーブルである。
図3に示す契約者情報には、余剰電力の売電を希望する需要家400および余剰電力の買電を希望する需要家400の両方の契約者情報が含まれるものとする。
【0014】
図1に戻り、送配電事業者端末300は、管轄するエリアの需給バランスを加味して需要家400のPV等による余剰電力等の発電を制御可能である。また、送配電事業者端末300は、需要家400が備えるスマートメータから通知される電力の使用量を示すメータ値等の各種情報を取得する。そして、送配電事業者端末300は、取得したメータ値等を、電力会社端末200に通知する。
【0015】
需要家400は、送配電事業者の系統を活用して、PV等の余剰電力を電力会社に売電したりする。
【0016】
余剰電力取引装置100は、余剰電力の売電を希望する需要家400(以下、売電側需要家と言う)の余剰電力の単位電力量当たりの電気料金(以下、売電希望価格と言う)を示す売電情報、および電力会社端末200が記憶する契約者情報を取得し、当該取得した売電情報および契約者情報に基づいて、需要家400のPV等の余剰電力を売買する需要家400を紐付け、その結果を電力会社200に通知する。これにより、需要家400間の余剰電力の売買を仮想的に成立させるとともに、需要家400間での余剰電力の売買の事後的な精算(事後精算)を可能とする。
【0017】
図4は、本実施形態にかかる余剰電力取引システムが有する余剰電力取引装置の構成の一例を示す図である。本実施形態にかかる余剰電力取引装置100は、
図4に示すように、入力部101、記憶部102、および制御部103を有する。入力部101は、マウスやキーボード等、余剰電力取引装置100を操作するユーザが各種情報を入力可能な入力部である。
【0018】
記憶部102は、売電情報や、電力会社端末200から取得した契約者情報等の各種情報を記憶する。ここで、売電情報は、上述したように、売電側需要家400の売電希望価格を示す情報である。
【0019】
図5は、本実施形態にかかる余剰電力取引システムの余剰電力取引装置が記憶する売電情報の一例を示す図である。本実施形態では、売電情報は、
図5に示すように、売電側需要家400を識別可能とする識別情報(以下、売電側識別情報と言う。例えば、氏名、顧客番号、住所)と、当該売電側需要家400の売電希望価格と、を対応付けるテーブルである。
【0020】
図4に戻り、制御部103は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを有し、余剰電力取引装置100全体を制御する。本実施形態では、制御部103は、
図2に示すように、情報収集部103a、データ設定部103c、データ読込部103d、および通知部103hを有する。また、通知部103hは、データ連携部103e、データ作成部104f、および出力部103bを有する。
【0021】
情報収集部103aは、電力会社端末200から、送配電事業者端末300から電力会社200に通知されるメータ値(需要家400による電力の現在の使用状況(使用電力量))、契約者情報、電力の市場価格等の各種情報を収集する。本実施形態では、情報収集部103aは、送配電事業者端末300を介して、需要家400による電力の現在の使用状況を収集しているが、これに限定するものではない。例えば、需要家400が、当該需要家400に設置されたスマートメータのデータ(需要家400による電力の現在の使用状況)を、電力会社端末200や余剰電力取引装置100に送信可能な電力計測装置等のIoT装置を有している場合には、情報収集部103aは、需要家400に設置された電力計測装置から、送配電事業者端末300を介さずに、需要家400による電力の現在の使用状況を収集しても良い。
【0022】
データ設定部103cは、売電情報を作成し、当該作成した売電情報を記憶部102に保存する。また、データ設定部103cは、記憶部102に記憶される売電情報の削除や修正等を行う。
【0023】
さらに、データ設定部103cは、単位電力量当たりの電力の市場価格(JPEXにて取引されている該当日の価格)、需要家400による電力の現在の使用状況、需要家400が存在する地域や住所、および、送配電事業者が提供する需給バランスの状況や送電禁止エリアの情報の少なくとも1つに基づいて、売電情報が含む売電希望価格を設定する設定部の一例として機能する。需要家400が電力計測装置を有する場合には、データ設定部103cは、送配電事業者端末300を介さずに、当該電力計測装置から収集した、需要家400による電力の現在の使用状況に基づいて、売電希望価格を設定するものとする。本実施形態では、売電希望価格には、電力の売電により電力会社に支払う手数料(例えば、50銭/kWh)および送配電事業者に支払う託送料金(例えば、1円/kWh)を含むものとする。または、売電希望価格には、当該手数料および託送料金を含めず、電力会社および送配電事業者から需要家400に対して後日請求する構成としても良い。
【0024】
例えば、データ設定部103cは、単位電力量当たりの電力の市場価格が高い期間(16:00~17:00等)においては、売電希望価格を上げる。一方、データ設定部103cは、単位電力量当たりの電力の市場価格が安い期間(0:00~5:00等)においては、売電希望価格を下げる。
【0025】
また、例えば、データ設定部103cは、情報収集部103aにより収集されるメータ値に基づいて、需要家400による電力の現在の使用状況を特定する。そして、データ設定部103cは、需要家400によって消費される電力が多い場合には、売電希望価格を上げる。一方、データ設定部103cは、需要家400によって消費される電力が少ない場合には、売電希望価格を下げる。また、例えば、データ設定部103cは、需要家400が存在する地域において日中に消費される電力が少ない場合には、日中の売電希望価格を下げる。
【0026】
また、データ設定部103cは、売電側需要家400によって指定された余剰電力の電気料金を、売電情報が示す売電希望価格に設定しても良い。また、データ設定部103cは、売電情報において、1つの売電側需要家400の売電側識別情報に対応付けて、複数の売電希望価格を設定しても良い。また、データ設定部103cは、売電情報が示す1つの売電側需要家400の売電側識別情報と対応付ける売電希望価格に幅を持たせても良い。
【0027】
さらに、データ設定部103cは、入力部101から入力される売電側需要家400からの指示に従って、売電側需要家400に対する余剰電力の売電による収入の支払方法を設定する。本実施形態では、データ設定部103cは、売電側需要家400による電力の売電による収入の支払方法として、金銭による支払、または仮想通貨による支払を設定可能である。
【0028】
データ読込部103dは、記憶部102から、売電情報を読み込み、当該読み込んだ売電情報をデータ連携部103eに出力する。
【0029】
データ連携部103eは、余剰電力の買電を希望する需要家400(以下、買電側需要家と言う)が電力会社から購入する電力の単位電力量当たりの電気料金(以下、電力会社電気料金と言う)、および売電側需要家400が売電する余剰電力の単位電力量当たりの電気料金である売電希望価格を取得する。
【0030】
本実施形態では、データ連携部103eは、情報収集部103aにより取得された契約者情報に基づいて、買電側需要家400の電力会社電気料金を取得する。
【0031】
具体的には、買電側需要家400が低圧の契約を行っている場合、データ連携部103eは、
図2に示す契約者情報において、買電側需要家400の契約者識別情報と対応付けられた、買電側需要家400の現在の段階における電気料金を、買電側需要家400の電力会社電気料金として取得する。
【0032】
また、買電側需要家400が低圧の契約を行っている場合、データ連携部103eは、
図2に示す契約者情報において、買電側需要家400の契約者識別情報と対応付けられた使用電力量を取得する。次いで、データ連携部103eは、取得した使用電力量と、買電側需要家400の現在の段階における使用電力量の上限との差分が小さい場合(具体的には、取得した使用電力量と、現在の段階における使用電力量の上限との差分が予め設定された電力量以下である場合)、現在の段階より上の段階(例えば、1つ上の段階)における電気料金を、買電側需要家400の電力会社電気料金として取得しても良い。
【0033】
一方、買電側需要家400が高圧の契約を行っている場合、データ連携部103eは、
図3に示す契約者情報において、買電側需要家400の契約者識別情報と対応付けられた電気料金を、電力会社電気料金として取得する。
【0034】
また、本実施形態では、データ連携部103eは、データ読込部103dにより読み込まれた売電情報に基づいて、売電側需要家400の売電希望価格を取得する。具体的には、データ連携部103eは、
図5に示す売電情報において、売電側需要家400の売電側識別情報と対応付けられた売電希望価格を取得する。
【0035】
そして、データ連携部103eは、売電側需要家400と、当該売電側需要家400の売電希望価格より電力会社電気料金が高い買電側需要家400と、を紐付ける。これにより、買電側需要家400の電力の使用状況に応じて、売電側需要家400が高値で電力を売電することを実現する需要家400のマッチングシステムを実現できる。その際、データ連携部103eは、送電が禁止されている電力系統の先に存在する買電側需要家400以外の買電側需要家(すなわち、送電が許可されている電力系統の先に存在する買電側需要家400)と、売電側需要家400とを紐付けるものとする。
【0036】
ここで、電力会社電気料金が、売電側需要家400の売電希望価格より高い買電側需要家400の(以下、買電側需要家400の候補と言う)が複数存在する場合、データ連携部103eは、予め設定された条件に基づいて、電力会社電気料金が売電側需要家400の売電希望価格より高い買電側需要家400の候補それぞれに優先度を設定する。そして、データ連携部103eは、複数の買電側需要家400の候補のうち、設定した優先度が最も高い買電側需要家400と、売電側需要家400とを紐付ける。これにより、売電側需要家400の売電希望価格より高い買電側需要家400が複数存在する場合でも、優先度に基づいて、買電側需要家400と売電側需要家400とをマッチングするシステムを提供できる。
【0037】
ここで、予め設定された条件は、例えば、余剰電力を最後に買電した日時が古くなるに従って優先度を高くする、売電側需要家400との間の物理的な距離が近くなるに従って優先度を高くする、売電側需要家400と近しい関係(例えば、友人)になるに従って優先度を高くする等である。
【0038】
本実施形態では、データ連携部103eは、買電側需要家400の電力会社電気料金を用いて、売電側需要家400と買電側需要家400とを紐付けているが、これに限定するものではない。例えば、データ設定部103cが、需要家400により電力の現在の使用状況に基づいて、買電側需要家400が買電する電気料金として自動的に算出する。そして、データ連携部103eは、当該自動的に算出された電気料金を用いて、売電側需要家400と買電側需要家400とを紐付ける。その際、データ設定部103cは、需要家400により電力の現在の使用状況に応じた電力会社電気料金(例えば、19.52円/kWh)より安い電気料金を、買電側需要家400が買電する電気料金(例えば、17円/kWh)として自動的に算出する。なお、当該自動的に算出する電気料金には、電力の買電により電力会社に支払う手数料(例えば、50銭/kWh)および送配電事業者に支払う託送料金(例えば、1円/kWh)が含まれているものとする。または、自動的に算出する電気料金には、手数料および託送料金を含めず、電力会社および送配電事業者から需要家400に対して後日請求する構成としても良い。
【0039】
また、データ連携部103eは、買電側需要家400の候補が複数存在する場合、売電側需要家400が売電可能な電力量に応じて、同じ時間帯において、当該複数の買電側需要家400の候補と、売電側需要家400とを紐付けることも可能である。例えば、データ連携部103eは、売電側需要家400が売電可能な電力量が40kWhである場合、一方の買電側需要家400には、25kWhが売電され、他方の買電側需要家400には、15kWhが売電されるようにして、複数の買電側需要家400の候補と、売電側需要家400とを紐付ける。
【0040】
また、データ連携部103eは、売電側需要家400毎の余剰電力の売電履歴(例えば、最後に余剰電力を売電した日時、売電した余剰電力の電力量)に基づいて、余剰電力の売買が売電希望価格の値下げを促す売電側需要家400を選択する。
【0041】
例えば、データ連携部103eは、最後に余剰電力を売電した日時から予め設定された期間以上経過して、余剰電力の売買が長期間成立していない売電側需要家400を選択する。また、例えば、データ連携部103eは、売電した余剰電力の電力量が予め設定された電力量よりも少なく、余剰電力の売電による収入が他の売電側需要家400より少ない売電側需要家400を、売電希望価格の値下げを促す売電側需要家400として選択する。
【0042】
また、データ連携部103eは、複数の売電側需要家400が存在する場合、当該複数の売電側需要家400のそれぞれの売電希望価格に基づいて、当該複数の売電側需要家400の余剰電力の売買による収入が等しくなるように、当該売電側需要家400毎に、売電可能な余剰電力の割合を決定する。ここで、余剰電力の割合は、買電側需要家400に売電する余剰電力全体に対する、各売電側需要家400が売電可能な余剰電力の割合である。
【0043】
本実施形態では、データ連携部103eは、複数の売電側需要家400のうち売電希望価格が高い売電側需要家400が売電可能な余剰電力の割合を、当該複数の売電側需要家400のうち売電希望価格が安い売電可能な余剰電力の割合を小さくする。これにより、売電希望価格が安い売電側需要家400の余剰電力のみが売電されたり、売電希望価格が高い売電側需要家400の余剰電力の売電による収入が、売電希望価格が安い売電側需要家400より多くなったりすることを防止可能となる。その結果、売電側需要家400の余剰電力の売電による収入を平均化することができる。
【0044】
また、データ連携部103eは、複数の売電側需要家400が存在する場合、予め設定された条件に基づいて、売電側需要家400に対して優先度を設定する。ここで、予め設定された条件は、例えば、余剰電力を最後に買電した日時が古くなるに従って優先度を高くする、売電側需要家400との間の物理的な距離が近くなるに従って優先度を高くする、売電側需要家400と近しい関係(例えば、友人)になるに従って優先度を高くする等である。
【0045】
次に、データ連携部103eは、設定した優先度が高くなるに従って、売電側需要家400が売電可能な余剰電力の割合が多くなるように、売電側需要家400毎に、売電可能な余剰電力の割合を決定する。これにより、売電側需要家400の余剰電力の売電による収入の偏りを防止したり、売電側需要家400が希望する買電側需要家400との間で余剰電力の売買を行ったりすることが可能となる。
【0046】
データ作成部103fは、データ連携部103eにより紐付けられた売電側需要家400および買電側需要家400を示す需要家情報、および売電側需要家400の売電希望価格を含むデータ(以下、出力データと言う)を作成する。本実施形態では、需要家情報は、紐付けられた売電側需要家400および買電側需要家400それぞれの識別情報(例えば、顧客番号、氏名、住所)を示す情報である。また、本実施形態では、データ連携部103eは、送電が禁止されている電力系統の先に存在する買電側需要家400以外の買電側需要家と、売電側需要家400とを紐付ける。よって、データ作成部103fにより作成される需要家情報は、送電が禁止されている電力系統の先に存在する買電側需要家400以外の買電側需要家と、売電側需要家400とを紐付ける情報である。
【0047】
本実施形態では、データ設定部103cによって、余剰電力の売電による収入の支払方法が設定されている場合、データ作成部103fは、需要家情報および売電希望価格に加えて、データ設定部103cにより設定された支払方法を含む出力データを作成する。また、本実施形態では、データ連携部103eによって、売電側需要家400が売電可能な余剰電力の割合が決定された場合、データ作成部103fは、当該決定された余剰電力の割合を含む出力データを作成する。
【0048】
出力部103bは、データ作成部103fにより作成される出力データを電力会社端末200に通知する。これにより、電力会社は、余剰電力取引装置100から受信する出力データが含む需要家情報により紐付けられる需要家400間において余剰電力の売買が成立したと判断して、当該出力データが含む売電希望価格に従って買電側需要家400に対する電気料金の請求を行うことが可能となる。
【0049】
その結果、需要家400間での余剰電力の売買を仮想的に実現でき、かつ需要家400間での余剰電力の売買における事後精算を可能とするシステムを提供することができる。また、電力会社は、余剰電力取引装置100から通知される需要家情報に基づいて、どの需要家400間において余剰電力が売買されたかを特定できるので、スマートメータ等のメータ値を使って、買電側需要家400からの余剰電力の電気料金の徴収および売電側需要家400に対する余剰電力の売電による収入の支払を事後精算することが可能となる。
【0050】
また、余剰電力の売電による収入の支払方法を含む出力データを電力会社端末200に対して通知した場合、電力会社は、余剰電力の売買により売電側需要家400が得る対価を、売電側需要家400が希望する支払方法(例えば、通常の通過、仮想通貨)によって支払うことが可能となる。その結果、余剰電力の売買により得られる仮想通貨を活用して、余剰電力の売買により得られる収入を新たな価値に変換することが可能となる。
【0051】
また、売電側需要家400が売電可能な余剰電力の割合を含む出力データを電力会社端末200に通知した場合、電力会社は、出力データが含む余剰電力の割合に応じて、各売電側需要家400の余剰電力の売買を成立させることが可能となるので、売電側需要家400の余剰電力の売電による収入の偏りを防止したり、売電側需要家400が希望する買電側需要家400との間で余剰電力の売買を行ったりすることが可能となる。
【0052】
また、出力部103bは、売電希望価格が売電側需要家400により指定された電気料金である場合、データ連携部103eによって選択された売電側需要家400に対して、売電希望価格の値下げを促す通知を行う。これにより、複数の売電側需要家400のうち一部の売電側需要家400に対して、余剰電力の売買による収入が偏ることを防止できる。
【0053】
次に、
図6を用いて、本実施形態にかかる余剰電力取引装置100における出力データの出力処理の流れの一例について説明する。
図6は、本実施形態にかかる余剰電力取引システムの余剰電力取引装置による出力データの出力処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0054】
入力部101を介して、余剰電力の売電先(買電側需要家400)を決定する売電側需要家400が選択されると、情報収集部103aは、電力会社端末200から、契約者情報を収集する(ステップS601)。データ読込部103dは、記憶部102から、選択された売電側需要家400の売電情報を読み込む(ステップS602)。
【0055】
データ連携部103eは、情報収集部103aにより収集される契約者情報に基づいて、買電側需要家400の電力会社電気料金を取得する(ステップS603)。また、データ連携部103eは、また、データ連携部103eは、データ読込部103dにより読み込まれる売電情報に基づいて、選択された売電側需要家400の売電希望価格を取得する(ステップS604)。
【0056】
次に、データ連携部103eは、売電側需要家400の売電希望価格と、買電側需要家400の電力会社電気料金とを比較し、電力会社電気料金が、売電側需要家400の売電希望価格より高い買電側需要家400を特定する(ステップS605)。そして、データ連携部103eは、売電側需要家400と、特定した買電側需要家400と、を紐付ける(ステップS606)。
【0057】
データ作成部103fは、データ連携部103eにより紐付けられた売電側需要家400および買電側需要家400を示す需要家情報、および売電側需要家400の売電希望価格を含む出力データを作成する(ステップS607)。その際、データ設定部103cによって、余剰電力の売電による収入の支払方法が設定されている場合には、データ作成部103fは、需要家情報および売電希望価格に加えて、当該支払方法を含む出力データを作成する。また、データ作成部103fは、データ連携部103eによって、売電側需要家400が売電可能な余剰電力の割合が決定された場合には、当該決定された余剰電力の割合を含む出力データを作成する。
【0058】
出力部103bは、データ作成部103fにより作成される出力データを電力会社200に通知する(ステップS608)。
【0059】
電力会社端末200は、余剰電力取引装置100から出力データを受信する。そして、電力会社端末200は、受信した出力データが含む需要家情報が示す買電側需要家400に対して、当該買電側需要家400が使用した電力のうち、売電側需要家400の余剰電力の分の電気料金については、出力データが含む売電希望価格に従って徴収する処理を実行する。
【0060】
また、電力会社端末200は、受信した出力データが含む需要家情報が示す売電側需要家400に対しては、余剰電力の売電により得られる収入を支払うための処理を実行する。その際、電力会社端末200は、受信した出力データに、余剰電力の売電による収入の支払方法が含まれている場合、売電側需要家400に対して、当該支払方法(例えば、金銭による支払、仮想通貨による支払)に従って、余剰電力の売電により得られる収入を支払うための処理を実行する。
【0061】
このように、本実施形態にかかる余剰電力取引装置100によれば、需要家400間での余剰電力の売買を仮想的に実現でき、かつ需要家400間での余剰電力の売買における事後精算を可能とするシステムを提供することができる。
【0062】
また、本実施形態にかかる余剰電力取引装置100によれば、需要家400の電力の使用量や需要家400の趣味嗜好等に基づいて、需要家400のプロファイリングや行動分析を行い、余剰電力が多い時間帯(例えば、昼間)における再生可能エネルギーを有効活用されるように、人の行動を誘導することも可能である。また、本実施形態にかかる余剰電力取引装置100によれば、需要家400として個人または家族の趣味嗜好を鑑みて、社会への貢献に繋がる行動を促すことも可能である。さらに、本実施形態にかかる余剰電力取引装置100によれば、特定の地域に人を呼び込むなどの、地域の発展に繋がるサービスを提供可能である。
【0063】
本実施形態の余剰電力取引装置100は、制御部103と、ROM(Read Only Memory)や、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、CDドライブ装置などの記憶部102と、ディスプレイ装置などの表示装置と、キーボードやマウスなどの入力部101と、を備えており、通常のコンピュータを利用したハードウェア構成となっている。
【0064】
本実施形態の余剰電力取引装置100で実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供される。
【0065】
また、本実施形態の余剰電力取引装置100で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、本実施形態の余剰電力取引装置100で実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。また、本実施形態の余剰電力取引装置100で実行されるプログラムを、ROM等に予め組み込んで提供するように構成してもよい。
【0066】
本実施形態の余剰電力取引装置100で実行されるプログラムは、上述した各部(情報収集部103a、出力部103b、データ設定部103c、データ読込部103d、データ連携部103e、データ作成部103f)を含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしてはCPUが上記記憶媒体からプログラムを読み出して実行することにより上記各部が主記憶装置上にロードされ、情報収集部103a、出力部103b、データ設定部103c、データ読込部103d、データ連携部103e、データ作成部103fが主記憶装置上に生成されるようになっている。
【0067】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0068】
100 余剰電力取引装置
101 入力部
102 記憶部
103 制御部
103a 情報収集部
103b 出力部
103c データ設定部
103d データ読込部
103e データ連携部
103f データ作成部
103h 通知部
200 電力会社端末
300 送配電事業者端末
400 需要家