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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-21
(45)【発行日】2022-01-31
(54)【発明の名称】MIC-1化合物及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/52 20060101AFI20220124BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20220124BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20220124BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20220124BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20220124BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20220124BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20220124BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20220124BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20220124BHJP
   A61K 38/02 20060101ALI20220124BHJP
   C12N 15/19 20060101ALN20220124BHJP
【FI】
C07K14/52 ZNA
A61P3/00
A61P3/04
A61P3/10
A61P3/06
A61P9/10 101
A61P1/16
A61P13/12
A61P9/00
A61K38/02
C12N15/19
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2018561606
(86)(22)【出願日】2017-05-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-07-18
(86)【国際出願番号】 EP2017062583
(87)【国際公開番号】W WO2017202936
(87)【国際公開日】2017-11-30
【審査請求日】2020-05-22
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2016/083104
(32)【優先日】2016-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2016/103574
(32)【優先日】2016-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】509091848
【氏名又は名称】ノヴォ ノルディスク アー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】シュジア・チャン
(72)【発明者】
【氏名】シャン・ガオ
(72)【発明者】
【氏名】ホンタオ・グアン
(72)【発明者】
【氏名】ヘニング・トゥーヤスン
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン・サス-エルム
(72)【発明者】
【氏名】ラース・フォク・イヴェルセン
(72)【発明者】
【氏名】ペル・ノルゴーフ
(72)【発明者】
【氏名】セバスチャン・ベック・ヨアンスン
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン・ターゲ・ハンセン
(72)【発明者】
【氏名】イ・ワン
【審査官】西垣 歩美
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0129083(US,A1)
【文献】特表2015-518468(JP,A)
【文献】特表2003-526319(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0232385(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0172146(US,A1)
【文献】William R. Strohl,BioDrugs,2015年,29,215-239
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00ー19/00
C12N 15/00ー15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
MIC-1ポリペプチド及びN末端アミノ酸伸長部を含むMIC-1化合物であって、前記伸長部は3~36個のアミノ酸残基からなり、前記化合物は6.5未満の計算されたpIを有する、MIC-1化合物。
【請求項2】
ホモダイマーであり、218~296個、224~296個又は230~296個のアミノ酸残基からなる、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記伸長部の長さが、3~36、3~30、3~24、3~12、4~36、4~30、4~24、4~12、5~36、5~30、5~24、5~12、6~36、6~30、6~24、6~12、7~36、7~30、7~24、7~12、8~36、8~30、8~24、8~12、30~36、32~36、30~34、又は30~32アミノ酸残基の範囲である、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
前記伸長部が、塩基性アミノ酸残基(リジン、アルギニン及びヒスチジン)数と比較して、少なくとも3、4、5又は6個の過剰な酸性アミノ酸残基(アスパラギン酸及びグルタミン酸)を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
前記伸長部がA、E、G、P、S、T、Q、及びDからなる群から選択されるアミノ酸残基から構成され、前記伸長部が少なくとも3個のE及び/又はDアミノ酸残基を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
前記伸長部が、6個のSer、4個のPro、4個のGly、4個のThr、4個のGlu及び2個のAlaを含む、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
前記伸長部が、以下の配列
SPAGSP(配列番号4)、
TSESAT(配列番号5)、
TSTEPE(配列番号6)、
SEPATS(配列番号7)、
TSTEEG(配列番号8)、
PESGPG(配列番号9)、
SGSAPG(配列番号10)、
GSETPG(配列番号11)、
SEPATSGSETPGSPAGSPTSTEEG(配列番号12)、
SEPATSGSETPGTSESATPESGPG(配列番号13)、
SEPATSGSETPGTSTEPESGSAPG(配列番号14)、
SEPATSGSETPGSPAGSPTSTEEGSPAGSP(配列番号15)、
SEPATSGSETPGTSESATPESGPGSPAGSP(配列番号16)、
SEPATSGSETPGTSTEPESGSAPGSPAGSP(配列番号17)、
SEPATSGSETPGSPAGSPTSTEEGTSESAT(配列番号18)、
SEPATSGSETPGTSESATPESGPGTSESAT(配列番号19)、
SEPATSGSETPGTSTEPESGSAPGTSESAT(配列番号20)、
SEPATSGSETPGSPAGSPTSTEEGTSTEPE(配列番号21)、
SEPATSGSETPGTSESATPESGPGTSTEPE(配列番号22)、
SEPATSGSETPGTSTEPESGSAPGTSTEPE(配列番号23)、
SEPATSGSETPGSPAGSPTSTEEGSEPATS(配列番号24)、
SEPATSGSETPGTSESATPESGPGSEPATS(配列番号25)、
SEPATSGSETPGTSTEPESGSAPGSEPATS(配列番号26)、
SEPATSGSETPGSPAGSPTSTEEGTSTEEG(配列番号27)、
SEPATSGSETPGTSESATPESGPGTSTEEG(配列番号28)、
SEPATSGSETPGTSTEPESGSAPGTSTEEG(配列番号29)、
SEPATSGSETPGSPAGSPTSTEEGPESGPG(配列番号30)、
SEPATSGSETPGTSESATPESGPGPESGPG(配列番号31)、
SEPATSGSETPGTSTEPESGSAPGPESGPG(配列番号32)、
SEPATSGSETPGSPAGSPTSTEEGSGSAPG(配列番号33)、
SEPATSGSETPGTSESATPESGPGSGSAPG(配列番号34)、
SEPATSGSETPGTSTEPESGSAPGSGSAPG(配列番号35)、
SEPATSGSETPGSPAGSPTSTEEGGSETPG(配列番号36)、
SEPATSGSETPGTSESATPESGPGGSETPG(配列番号37)、
SEPATSGSETPGTSTEPESGSAPGGSETPG(配列番号38)、
SEPATSGSETPGTSESATPESGPGTSTEPS(配列番号70)、
SEPATSGSETPGTSESATPESGPGTSTEPSEG(配列番号71)、
SEPATSGSETPGSPAGSPTSTEEGTSESATPESGPG(配列番号39)、
SEPATSGSETPGSPAGSPTSTEEGSPAGSPTSTEEG(配列番号40)、
SEPATSGSETPGSPAGSPTSTEEGTSTEPESGSAPG(配列番号41)、
SEPATSGSETPGTSESATPESGPGSPAGSPTSTEEG(配列番号42)、
SEPATSGSETPGTSESATPESGPGTSESATPESGPG(配列番号43)、
SEPATSGSETPGTSESATPESGPGTSTEPESGSAPG(配列番号44)、
SEPATSGSETPGTSESATPESGPGSEPATSGSETPG(配列番号45)、
SEPATSGSETPGTSTEPESGSAPGSPAGSPTSTEEG(配列番号46)、
SEPATSGSETPGTSTEPESGSAPGTSESATPESGPG(配列番号47)、
SEPATSGSETPGTSTEPESGSAPGTSTEPESGSAPG(配列番号48)、
SEPATSGSETPGTSTEPESGSAPGSEPATSGSETPG(配列番号49)、
SEPATSGSETPGSEPATSGSETPGSPAGSPTSTEEG(配列番号50)、
SEPATSGSETPGSEPATSGSETPGTSESATPESGPG(配列番号51)、
SEPATSGSETPGSEPATSGSETPGTSTEPESGSAPG(配列番号52)、
SEPATSGSETPGSEPATSGSETPGSEPATSGSETPG(配列番号53)、
GGGS(配列番号136)、
GSGS(配列番号137)、
GGSS(配列番号138)及び
SSSG(配列番号139)
のうち1つ又は複数を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
前記伸長部が、以下の配列
GEPS(配列番号118)、
GPSE(配列番号119)、
GPES(配列番号120)、
GSPE(配列番号121)、
GSEP(配列番号122)、
GEPSGEPSGEPSGEPSGEPS(配列番号140)、
GPSEGPSEGPSEGPSEGPSE(配列番号141)、
GPESGPESGPESGPESGPES(配列番号142)、
GSPEGSPEGSPEGSPEGSPE(配列番号143)、
GSEPGSEPGSEPGSEPGSE(配列番号144)、
GEPQ(配列番号123)、GEQP(配列番号124)、
GPEQ(配列番号125)、GPQE(配列番号126)、
GQEP(配列番号127)、GQPE(配列番号128)、
GEPQGEPQGEPQGEPQGEPQ(配列番号145)、
GEQPGEQPGEQPGEQPGEQP(配列番号146)、
GPEQGPEQGPEQGPEQGPEQ(配列番号147)、
GPQEGPQEGPQEGPQEGPQE(配列番号148)、
GQEPGQEPGQEPGQEPGQEP(配列番号149)、
GQPEGQPEGQPEGQPEGQPE(配列番号150)、
GGGS(配列番号136)、
GSGS(配列番号137)、
GGSS(配列番号138)及び
SSSG(配列番号139)
のうち1つ又は複数を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
前記伸長部が、以下の配列
PEDEETPEQE(配列番号129)、
PDEGTEEETE(配列番号130)、
PAAEEEDDPD(配列番号131)、
AEPDEDPQSED(配列番号132)、
AEPDEDPQSE(配列番号133)、
AEPEEQEED(配列番号134)、
AEPEEQEE(配列番号135)、
AEEAEEAEEAEEAEE(配列番号151)、
GGGS(配列番号136)、
GSGS(配列番号137)、
GGSS(配列番号138)及び
SSSG(配列番号139)
のうち1つ又は複数を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
前記MIC-1ポリペプチドが、配列番号1のMIC-1と少なくとも90%、95%又は98%の配列同一性を示す、請求項1から9のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
前記MIC-1ポリペプチドが、配列番号1のMIC-1と比較して、以下の置換N3E、P11E、H18E、R21E、A30E、A47E、R53E、A54E、M57E、M57L、H66E、R67E、L68E、K69E、A75E、A81E、P85E、M86L、Q90E、T92E、L105E及びK107Eのうち1つ又は複数を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
前記MIC-1ポリペプチドが、配列番号1のMIC-1と比較して、最初の3残基の欠失(MIC-1-Δ1~3)又はN3の欠失(des-N3)を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項13】
MIC-1ポリペプチド及びN末端アミノ酸伸長部を含むMIC-1化合物であって、配列番号100、104、106、107、108、109、111、112、113、114、115、116、117又は164によるアミノ酸配列を含む、MIC-1化合物。
【請求項14】
トリス緩衝液系中、pH8.0で、0.5、1.0、5.0、10、30又は50mg/mlの溶解度を有する、請求項1から13のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載の化合物を含む、代謝障害の予防及び/又は治療用組成物であり、前記代謝障害が、肥満、糖尿病、心血管疾患、脂質異常症、動脈硬化症、脂肪性肝炎、又は糖尿病性腎症である、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MIC-1化合物及びその医薬的用途に関する。
【0002】
配列表の参照による組込み
「配列表」という表題の配列表は142,554バイトであり、2017年5月24日に作成され、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
マクロファージ阻害性サイトカイン-1(Macrophage Inhibitory Cytokine-1:MIC-1)は、活性化マクロファージにおける発現の増大を示す実験に基づき、1997年に最初に記載された(Bootcovら、Proc. Natl. Acad. Sci. Oct 1997)。その後MIC-1はその他の人々によっても確認され、胎盤トランスフォーミング増殖因子ベータ(PTGF-β)、胎盤骨形成タンパク質、増殖分化因子-15(GDF15)、前立腺由来因子(prostate derived factor:PDF)、非ステロイド性抗炎症薬活性化遺伝子(non-steroidal anti-inflammatory drug-activated gene:NAG-1)及びPL74等の、いくつかの更なる名称を与えられている。
【0004】
MIC-1は、細胞の増殖及び分化に関与するペプチドホルモンファミリーであるTGF-ベータスーパーファミリーの遠縁のメンバーである。MIC-1は、分子量24.5kDaのシステインリッチなホモダイマーとして循環する。MIC-1は最初、IL-1b、TNF-アルファ、IL-2、及びTGF-bを含む刺激により、マクロファージにおいてアップレギュレートされることが報告された。リポ多糖に誘導されるTNF-アルファ産生をMIC-1が減少させうることも示されており、MIC-1が抗炎症性サイトカインであることは、提唱されたこれらのデータに基づくものであった。
【0005】
より最近では、(Johnenら、Nat Med.、Nov、2007)進行性がん患者由来のデータから、体重減少が循環MIC-1レベルと相関していることが示された。これらのデータは、MIC-1が体重を調節することを示している。この仮説については前立腺腫瘍細胞を異種移植されたマウスで試験されており、MIC-1レベルの上昇は体重減少及び食物摂取量減少と関連し、MIC-1に対する中和抗体の投与によりその効果を逆転させることができた。組換えMIC-1をマウスに投与すると視床下部ニューロペプチドY及びプロオピオメラノコルチンが調節されたことから、MIC-1が中枢機構により食物摂取量を調節することが提唱された。更に、MIC-1を過剰発現するトランスジェニックマウスでは、通常の低脂肪食及び高脂肪食の両方で体重及び体脂肪の増加が小さい(Maciaら、PLoS One、Apr、2012)。また、低脂肪食及び高脂肪食の両方を与えられた、MIC-1を過剰発現するトランスジェニックマウスでそれぞれ、同等の食事を与えられた野生型動物と比較して耐糖能が改善された。
【0006】
肥満は、最も一般的には、過度のカロリー摂取単独で、又はエネルギー消費の減少及び/若しくは運動不足と相まって引き起こされる。肥満は、糖尿病、心血管疾患、睡眠時無呼吸及びがん等の代謝疾患における十分に確立されたリスク因子である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】WO2008/043847号
【非特許文献】
【0008】
【文献】Bootcovら、Proc. Natl. Acad. Sci. Oct 1997
【文献】Johnenら、Nat Med.、Nov、2007
【文献】Maciaら、PLoS One、Apr、2012
【文献】B. Skoog及びA. Wichman (Trends in Analytical Chemistry、1986、vol. 5、82~83頁)
【文献】Correlation of Electrophoretic Mobilities from Capillary Electrophoresis with Physicochemical Properties of Proteins and Peptides by Rickard EC、Strohl MM、Nielsen RG. Analytical Biochemistry 1991、vol 197、197~207頁
【文献】Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor、New York、1989
【文献】Cordingleyら、J. Virol. 1989、63、5037~5045頁
【文献】Birchら、Protein Expr Purif.、1995、6、609~618頁
【文献】Chichら、Anal. Biochem、1995、224、245~249頁
【文献】Xinら、Protein Expr. Purif. 2002、24、530~538頁
【文献】Remington: The Science and Practice of Pharmacy(例えば第19版(1995)、及び以降の任意の版)
【文献】Protein Purification. Principles and Practice Series: Springer Advanced Texts in Chemistry Scopes、Robert K. 第3版、1994(6章及び8章)
【文献】Pathologic Basis of Veterinary Disease5: Pathologic Basis of Veterinary Disease、By James F. Zachary、M. Donald McGavin
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
N末端アミノ酸伸長部を有するMIC-1ポリペプチドを含むMIC-1化合物が本明細書に記載される。
【0010】
一態様において、本発明のMIC-1化合物は良好な生物物理学的特性を有する。これらの特性には溶解性及び安定性が含まれるが、これらに限定されない。一態様において、本発明のMIC-1化合物は改善された溶解性を有する。一態様において、本発明のMIC-1化合物は改善された化学的安定性を有する。
【0011】
一態様において、本発明の化合物は、結晶形成傾向の低下により示される、改善された生物物理学的安定性を有する。
【0012】
一態様において、本発明のMIC-1化合物は、維持されたMIC-1受容体効力、並びに食物摂取量及び体重を減少させることに対するin vivo有効性を有する。したがって、これらのMIC-1化合物は、肥満、糖尿病、脂質異常症及び動脈硬化症等の心血管疾患等の代謝障害、並びに脂肪性肝炎及び糖尿病性腎症等のその他の障害の治療に使用可能である。
【0013】
一態様において、本発明のMIC-1化合物は、MIC-1ポリペプチド及びN末端アミノ酸伸長部を含み、前記伸長部は3~36個のアミノ酸残基からなり、化合物は6.5未満の計算されたpIを有する。
【0014】
本発明の一部の実施形態において、MIC-1化合物は6.1未満の計算されたpIを有する。
【0015】
本発明の一部の実施形態において、MIC-1化合物は4.7超の計算されたpIを有する。
【0016】
本発明の一部の実施形態において、MIC-1化合物は4.7超かつ6.1未満の計算されたpIを有する。
【0017】
本発明の一部の実施形態において、MIC-1化合物は5.8~5.2の範囲の計算されたpIを有する。
【0018】
一部の実施形態において、本発明のMIC-1化合物は、ホモダイマーとして、218~296個、224~296個又は230~296個のアミノ酸残基を有する。
【0019】
一部の実施形態において、本発明のMIC-1化合物は、長さが、3~35、3~30、3~25、3~24、4~36、4~35、4~30、4~25、4~24、5~36、5~35、5~30、5~25、5~24、6~36、6~35、6~30、6~25、6~24、7~36、7~35、7~30、7~25、7~24、8~36、8~35、8~30、8~25、8~24、8~12、30~36、32~36、30~34、又は30~32アミノ酸残基の範囲のN末端伸長部を含む。
【0020】
一部の実施形態において、本発明のMIC-1化合物は、長さが30~32アミノ酸残基の範囲のN末端伸長部を含む。
【0021】
一部の実施形態において、本発明のMIC-1化合物は、塩基性アミノ酸残基(リジン、アルギニン及びヒスチジン)数と比較して、少なくとも3、4、5又は6個の過剰な酸性アミノ酸残基(アスパラギン酸及びグルタミン酸)を有するN末端伸長部を含む。
【0022】
本発明の一部の実施形態において、MIC-1化合物は、A、E、G、P、S、T、Q、及びDからなる群から選択されるアミノ酸残基から構成されるN末端伸長部を含み、前記伸長部は少なくとも3個のE及び/又はDアミノ酸残基を含む。
【0023】
一部の実施形態において、本発明のMIC-1化合物は、配列番号1のMIC-1と少なくとも85%、90%、95%又は98%の配列同一性を示すMIC-1ポリペプチドを含む。
【0024】
一部の実施形態において、本発明のMIC-1化合物は、配列番号1のMIC-1と比較して、以下の置換N3E、P11E、H18E、R21E、A30E、A47E、R53E、A54E、M57E、M57L、R67E、L68E、K69E、A75E、A81E、P85E、M86L、L105E、及びK107Eのうち1つ若しくは複数、並びに/又は、配列番号1のMIC-1と比較して、最初の3残基の欠失(MIC-1-Δ1~3)若しくはN3の欠失(des-N3)を含むMIC-1ポリペプチドを含む。
【0025】
本発明の特定の実施形態において、MIC-1化合物は、配列番号87、90、92、93、94、97、98、99、100、101、102、108、109、又は164によるアミノ酸配列を有する、MIC-1ポリペプチド及びN末端アミノ酸伸長部を含む。
【0026】
一態様において、本発明は、pH8.0のトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(トリス)緩衝液系に対し約0.5、1.0、5.0、10、30又は50mg/mlの溶解度を有するMIC-1化合物を提供する。
【0027】
一態様において、本発明は、本発明のMIC-1化合物をコードするポリヌクレオチド分子を提供する。
【0028】
一態様において、本発明は、本発明のMIC-1化合物又はその薬学的に許容される塩、アミド若しくはエステル、及び1つ又は複数の薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物を提供する。
【0029】
一態様において、本発明は、医薬として使用するための本発明のMIC-1化合物を提供する。
【0030】
一態様において、本発明は、代謝障害の予防及び/又は治療において使用するための本発明のMIC-1化合物を提供し、代謝障害は肥満、2型糖尿病、脂質異常症、又は糖尿病性腎症である。
【0031】
一態様において、本発明は、例えば食物摂取量を減少させること、体重を減少させること、食欲を抑制すること、及び満腹を誘導することによる、肥満等の摂食障害の予防及び/又は治療において使用するための、本発明のMIC-1化合物を提供する。
【0032】
一態様において、本発明は、肥満の予防及び/又は治療において使用するための本発明のMIC-1化合物を提供する。
【0033】
一態様において、本発明の化合物はMIC-1受容体アゴニストである。一態様において、本発明の化合物は食物摂取を阻害する。一態様において、本発明の化合物は体重を減少させる。
【0034】
一態様において、本発明は、心血管疾患の予防及び/又は治療において使用するための本発明のMIC-1化合物を提供する。
【0035】
一態様において、本発明は、脂質異常症、動脈硬化症、脂肪性肝炎、又は糖尿病性腎症の予防及び/又は治療において使用するための、本発明のMIC-1化合物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】単一12-merビルディングブロックを有するMIC-1化合物の発現についての図である。全ての細胞を37℃のTB中で増殖させ、OD600が1.0に達した後、0.5mM IPTGを添加することによりタンパク質の発現を誘導した。一晩の後細胞を採取し、総溶解物をSDS-PAGEにローディングすることにより発現レベルを確認した。wtMIC-1は陽性対照としてローディングした。
図2】二重12-merビルディングブロックを有するMIC-1化合物の発現についての図である。全ての細胞を37℃のTB中で増殖させ、OD600が1.0に達した後、0.5mM IPTGを添加することによりタンパク質の発現を誘導した。一晩の後細胞を採取し、総溶解物をSDS-PAGEにローディングすることにより発現レベルを確認した。wtMIC-1は陽性対照としてローディングした。
図3】a)12mer-(4+2+_)、-(4+4+_)及び-(4+3+_)で始まるMIC-1化合物間での発現レベルの比較についてのグラフである。12mer-(4+3+_)を有する群及び点で示される構築物が、MIC-1の骨格にM57Lを含むことに注目すべきである。b)発現レベルに対する伸長された12merの効果についてのグラフである。更に、3.6群の最低データ点はM57Lを含むMIC-1化合物である。この図では、「1.6後半部」はTSTEEGを表し、「2.6」はTSESATを表し、「3.6」はTSTEPSを表し、「4.6」SEPATSを表す。
図4】12mer-(4+2+_)、12mer-(4+3+_)+M57L、12mer-(3反復)、及び12mer-(4反復)を有する代表物のSDS-PAGEについての図である。T:総タンパク質、S:可溶性画分、P:細胞ペレット(封入体)。
図5】配列内突然変異を有するMIC-1化合物の溶解性についての図である。この図では、骨格はMIC-1 del(1~3)である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明は、MIC-1ポリペプチドを含むMIC-1化合物に関する。一態様において、本発明は、MIC-1ポリペプチド及びN末端アミノ酸伸長部を含むMIC-1化合物であって、前記伸長部は3~200個のアミノ酸残基からなり、化合物は6.5未満の計算されたpIを有する、MIC-1化合物に関する。
【0038】
MIC-1
「MIC-1」という語は、本明細書で使用される場合、増殖分化因子15(GDF-15)、胎盤骨形成タンパク質(PLAB)及び非ステロイド性抗炎症薬活性化遺伝子(NAG-1)としても知られる、マクロファージ阻害性サイトカイン-1(MIC-1)を意味する。MIC-1は、62kDaの細胞内ホモダイマー前駆体タンパク質として合成され、次いでフューリン様プロテアーゼにより24.5kDaのホモダイマーに切断される。全長野生型ヒトMIC-1の配列は、UNIPROTデータベースより受託番号Q99988で入手可能である。308個のアミノ酸の前駆体配列は、シグナルペプチド(アミノ酸1~29)、プロペプチド(アミノ酸30~196)及びMIC-1モノマー配列(アミノ酸197~308)を含む。112個のアミノ酸のMIC-1モノマー配列は、本明細書に配列番号1として含まれる。MIC-1モノマーは9個のシステイン残基を含み、それにより鎖内ジスルフィド結合4つ及び鎖間ジスルフィド結合1つの形成が生じ、共有結合した24.5kDaホモダイマーが作り出される。MIC-1モノマー配列(配列番号1)におけるH6Dに相当する、天然に存在する突然変異について記載されている。
【0039】
「MIC-1化合物」という語は、本明細書で使用される場合、MIC-1ポリペプチド及びN末端アミノ酸伸長部を含む化合物を指す。MIC-1化合物は通常、ホモダイマーの形態である。
【0040】
「MIC-1ポリペプチド」という語は、本明細書で使用される場合、配列番号1のヒトMIC-1モノマー配列又はそのアナログを指す。特定のMIC-1残基について数字で言及される場合、別途明記されない限り、112個のアミノ酸のモノマー配列を指す(すなわち、残基1はアラニン(A1)、残基112はイソロイシン(I112))。
【0041】
「MIC-1アナログ」又は「MIC-1のアナログ」という語は、本明細書で使用される場合、配列番号1のモノマーMIC-1配列のアミノ酸バリアントであるMIC-1ポリペプチドを指す。言い換えれば、MIC-1アナログは、ヒトMIC-1(配列番号1)と比較して複数のアミノ酸残基が変化したMIC-1ポリペプチドである。これらの変化は、独立に、1つ又は複数のアミノ酸置換、付加、及び/又は欠失を表しうる。
【0042】
MIC-1アナログは、変化するアミノ酸残基、アミノ酸残基の番号(すなわちMIC-1モノマー配列(配列番号1)における対応する位置)、及び変化(例えば変化後のアミノ酸残基)に言及することで記載されうる。
【0043】
一態様において、MIC-1アナログは、配列番号1のMIC-1の機能性バリアントである。本発明の一態様において、MIC-1アナログは、配列番号1のMIC-1と少なくとも85%、90%又は95%の配列同一性を示す。2つのアナログ間の配列同一性を決定する方法の例として、2つのペプチドH6D MIC-1及び配列番号1のMIC-1が整列される。配列番号1のMIC-1と比較したH6D MIC-1アナログの配列同一性は、整列された同一残基数マイナス異なる残基数を、配列番号1のMIC-1の残基総数で割ることにより与えられる。したがって、前記の例では、パーセンテージでの配列同一性は、(112-1)/112X100である。MIC-1アナログの配列同一性決定では、N末端アミノ酸伸長部は含まれない。
【0044】
本発明の別の態様において、MIC-1アナログは、配列番号1のヒトMIC-1と比較して、例えば15未満、10未満又は5未満のアミノ酸改変(置換、欠失、付加(挿入を含む)及びそれらの任意の組合せ)を含む。本出願を通して使用される「アミノ酸改変」という語は、モノマーMIC-1(配列番号1)と比較した、アミノ酸に対する改変という意味で使用される。この改変は、アミノ酸の欠失、アミノ酸の付加、あるアミノ酸の別のアミノ酸による置換、又はペプチドのアミノ酸に共有結合した置換基の結果でありうる。
【0045】
置換:一態様において、アミノ酸は保存的置換により置換されていてよい。「保存的置換」という語は、本明細書で使用される場合、1つ又は複数のアミノ酸が、生物学的に類似した別の残基で置き換えられることを表す。例には、類似した特徴を有するアミノ酸残基、例えば低分子量アミノ酸、酸性アミノ酸、極性アミノ酸、塩基性アミノ酸、疎水性アミノ酸及び芳香族アミノ酸による置換が含まれる。
【0046】
一態様において、アミノ酸は非保存的置換により置換されていてよい。「非保存的置換」という語は、本明細書で使用される場合、1つ又は複数のアミノ酸が、異なる特徴を有する別のアミノ酸で置き換えられることを表す。例には、酸性アミノ酸残基による塩基性アミノ酸残基の置換、芳香族アミノ酸残基による極性アミノ酸残基の置換等が含まれる。一態様において、非保存的置換は、コードされるアミノ酸から、異なる特徴を有する別のコードされるアミノ酸への置換である。一態様において、MIC-1アナログは、MIC-1配列に対する1つ又は複数の非天然及び/又は非アミノ酸、例えばアミノ酸ミメティックによる置換を含んでいてよい。
【0047】
ヒトMIC-1モノマー配列(配列番号1)の3位のアスパラギン残基(N3)は化学的に不安定である。本発明の一態様において、モノマーMIC-1配列(配列番号1)の3位に相当する位置のアスパラギンは、セリン(N3S)、グルタミン酸(N3E)、アラニン(N3A)、又はグルタミン(N3Q)に置換されていてよい。本発明の一態様において、ヒトMIC-1モノマー配列(配列番号1)の3位に相当する位置のアスパラギンはグルタミン酸に置換されている(N3E)。
【0048】
本発明の一態様において、ヒトMIC-1モノマー配列(配列番号1)の2位に相当する位置のアルギニンはアラニンに置換されており(R2A)、ヒトMIC-1モノマー配列(配列番号1)の3位に相当する位置のアスパラギンはグルタミン酸に置換されている(N3E)。
【0049】
欠失及びトランケーション:一態様において、本発明のMIC-1アナログは、MIC-1のアミノ酸配列(配列番号1)から欠失した1つ又は複数のアミノ酸残基を、単独で、又は1つ若しくは複数の挿入若しくは置換と組み合わせて有していてよい。
【0050】
アミノ酸欠失を有するMIC-1アナログは、「des」、欠失したアミノ酸残基への言及、それに続いて、欠失したアミノ酸の番号(すなわちモノマーMIC-1(配列番号1)における相当する位置)により記載されうる。本発明の一部の実施形態において、ヒトモノマーMIC-1(配列番号1)の3位に相当する位置のアスパラギンは欠失している(MIC-1 des-N3、配列番号2)。
【0051】
N又はC末端における1つ又は複数のアミノ酸残基のトランケーションを有するMIC-1アナログは、「MIC-1-Δ」、及び欠失したアミノ酸残基の番号(すなわちモノマーMIC-1(配列番号1)における相当する位置)への言及により記載されうる。本発明の一部の実施形態において、N末端の最初の3残基(A1、R2、N3)は欠失している(MIC-1-Δ1~3、配列番号3)。
【0052】
挿入:一態様において、本発明のMIC-1アナログは、ヒトMIC-1のアミノ酸配列に挿入された1つ又は複数のアミノ酸残基を、単独で、又は1つ若しくは複数の欠失及び/若しくは置換と組み合わせて有していてよい。
【0053】
一態様において、本発明のMIC-1アナログは、MIC-1配列への1つ又は複数の非天然アミノ酸及び/又は非アミノ酸の挿入を含んでいてよい。
【0054】
「タンパク質」又は「ポリペプチド」という語は、例えば本明細書で使用される場合、アミド(又はペプチド)結合により相互接続された一連のアミノ酸を含む化合物を指す。アミノ酸は、アミン基及びカルボン酸基、及び任意選択で、しばしば側鎖と呼ばれる1つ又は複数の更なる基を含む分子である。
【0055】
「アミノ酸」という語は、コードされる(又はタンパク質性又は天然)アミノ酸(標準アミノ酸20種より)、及びコードされない(又は非タンパク質性又は非天然)アミノ酸を含む。コードされるアミノ酸は、タンパク質に天然に組み込まれるアミノ酸である。標準アミノ酸は、遺伝暗号によりコードされるアミノ酸である。コードされないアミノ酸は、タンパク質中に見出されないものであるか、又は標準的な細胞機構によって産生されないもののいずれかである(例えば、これらは翻訳後修飾を受けた可能性がある)。以下では、光学異性体について明記されていないMIC-1タンパク質のアミノ酸が全てL-異性体を意味することを理解されたい(別途指定されない限り)。
【0056】
上記から明らかなように、アミノ酸残基はそのフルネーム、1文字記号、及び/又は3文字記号で特定されうる。これら3つの方法は完全に同等である。読者の利便性のため、1文字及び3文字アミノ酸記号が以下で与えられる:
グリシン:G及びGly;プロリン:P及びPro;アラニン:A及びAla;バリン:V及びVal;ロイシン:L及びLeu;イソロイシン:I及びIle;メチオニン:M及びMet;システイン:C及びCys;フェニルアラニン:F及びPhe;チロシン:Y及びTyr;トリプトファン:W及びTrp;ヒスチジン:H及びHis;リジン:K及びLys;アルギニン:R及びArg;グルタミン:Q及びGln;アスパラギン:N及びAsn;グルタミン酸:E及びGlu;アスパラギン酸:D及びAsp;セリン:S及びSer;並びにスレオニン:T及びThr。
【0057】
N末端アミノ酸伸長部
本発明の一部の実施形態において、MIC-1化合物はN末端アミノ酸伸長部を含む。
【0058】
「N末端アミノ酸伸長部」という語は、本明細書で使用される場合、MIC-1ポリペプチドのN末端が、アミド結合、好ましくはペプチド結合によって、N末端アミノ酸伸長部のC末端に結合していることを意味する。「N末端アミノ酸伸長部」、「N末端伸長部」、及び「N-伸長部」という語は、本明細書では同じものを意味し、互換可能に使用される。一実施形態において、本発明の化合物は、ペプチド結合によってN末端、すなわち1位のアラニン(A1)に結合したアミノ酸伸長部を有するヒトMIC-1モノマー配列(配列番号1)を含む。
【0059】
本発明の一部の実施形態において、N末端アミノ酸伸長部は、長さが最大200アミノ酸残基である。本発明の特定の実施形態において、N末端アミノ酸伸長部は3~36個のアミノ酸残基を有する。
【0060】
本発明の一態様において、N末端アミノ酸伸長部は、塩基性アミノ酸残基(リジン、アルギニン及びヒスチジン)数と比較して、少なくとも3、4、5又は6個の過剰な酸性アミノ酸残基(アスパラギン酸及びグルタミン酸)を有する。「過剰な」酸性アミノ酸残基とは、酸性残基数が塩基性残基数を上回ることを意味する。過剰な酸性アミノ酸残基の規定値は、酸性残基数マイナス塩基性残基数として計算される。
【0061】
メチオニンは、原核生物細胞(例えば細菌、例えば大腸菌(E.coli))におけるタンパク質発現での最初のアミノ酸である。本発明の一部の実施形態において、最初のメチオニンはタンパク質発現中にタンパク質から除去される。したがって、最初のメチオニンは、MIC-1化合物のN-伸長部の配列には含まれない。しかし当業者には、タンパク質の翻訳開始には最初のメチオニンをコードする開始コドンが必要であり、タンパク質発現のためには例外なくヌクレオチド配列直前に組み込まれるべきであることが既知である。
【0062】
一方、最初のメチオニンを有するN-伸長部を有するMIC-1化合物も本発明の範囲に入ることが理解されよう。
【0063】
等電点(pI)
MIC-1化合物の計算されたpIは、化合物の正味の計算された電荷がゼロとなるpHとして定義される。pHに応じたMIC-1化合物の計算された電荷は、Table1(表1)に記載されるアミノ酸残基のpKa値、並びにB. Skoog及びA. Wichman (Trends in Analytical Chemistry、1986、vol. 5、82~83頁)に記載される方法を使用して得られる。システイン(Cys)の側鎖pKaは、遊離スルフヒドリル基を有するシステインについての電荷の計算にのみ含まれる。例として、ヒトwtMIC-1の計算されたpI値はホモダイマーとして8.8である。
【0064】
本明細書に記載される場合、MIC-1化合物についてのpIの計算は、ホモダイマーとしてのMIC-1化合物に対して行われる。
【0065】
【表1】
【0066】
一態様において、本発明のMIC-1化合物は良好な生物物理学的特性を有する。これらの特性には、溶解性及び/又は安定性が含まれるがこれらに限定されない。
【0067】
溶解性
ヒト野生型MIC-1は、ホモダイマーに基づくと計算されたpI8.8を有する疎水性タンパク質である。その結果、野生型MIC-1は中性pHの水性緩衝液系に約0.5mg/mlしか可溶化されない。MIC-1の溶解性が小さいことでその製剤特性及び治療上の使用が著しく妨害されるため、溶解性を操作したMIC-1化合物を開発することがMIC-1分子工学において重要である。
【0068】
一態様において、本発明の化合物は、配列番号1のヒトMIC-1と比較して改善された溶解性を有する(すなわちより溶解性が大きい)。
【0069】
本明細書に記載される場合、溶解性は実施例4に記載されるように測定される。
【0070】
ある特定の実施形態において、本発明のMIC-1化合物は、pH8.0のトリス緩衝液に対し少なくとも1mg/mlの溶解度を有する。他の実施形態において、本発明の化合物は、pH8.0のトリス緩衝液に対し少なくとも5mg/ml、少なくとも10mg/ml、少なくとも30mg/ml、又は少なくとも40mg/mlの溶解度を有する。
【0071】
本明細書に記載される場合、溶解度はホモダイマーとしてのMIC-1化合物について測定される。
【0072】
安定性
ヒト野生型MIC-1配列は化学的に不安定であり、アミノ酸配列のいくつかの残基について、保存中に、3位のアスパラギン(N3)の脱アミド、並びにメチオニンM43、M57及びM86の酸化などの改変を行うことができる。特定の残基が化学的に不安定であることは製薬特性に影響を及ぼしうるため、化学的に安定なMIC-1化合物を開発することは、MIC-1治療用化合物を作製することにおける別の重要な一部となるはずである。
【0073】
一態様において、本発明の化合物は、配列番号1のヒトMIC-1と比較して改善された化学的安定性を有する。
【0074】
「化学的安定性」という語は、未変化ポリペプチドと比較しての、生物学的活性の低下、溶解性の低下、及び/又は免疫原性効果の増大を潜在的に有する化学分解産物の形成につながる、ポリペプチド構造における化学的変化を指す。化学的安定性は、例えばSEC-HPLC及び/又はRP-HPLCにより、様々な環境条件に曝露された後の各時点での化学分解産物量を測定することで評価することができる。
【0075】
MIC-1は化学的に不安定な場合があり、アミノ酸配列(配列番号1)のいくつかの残基について、保存中に、N3の脱アミド、並びにメチオニンM43、M57及びM86の酸化などの改変を行うことができる。特定の残基が化学的に不安定であることは、製薬特性に影響を及ぼす場合があり、例えば治療用化合物としてのMIC-1における低い化学的安定性である。
【0076】
本発明のある特定の実施形態において、MIC-1モノマー配列(配列番号1)の特定の残基が、例えば、MIC-1化合物の化学的安定性を増大させるように、置換により改変される。脱アミドを回避するため、N3を欠失させるか、その他のアミノ酸、例えばE又はQで置換することができる。酸化を減少させるため、メチオニンをその他のアミノ酸、例えばE又はLで置換することができる。
【0077】
結晶化
一態様において、本発明の化合物は、配列番号1のMIC-1と比較して、pH8.0での結晶形成傾向の低下を示す。
【0078】
免疫原性
一態様において、本発明の化合物は低い免疫原性リスクを有する。
【0079】
in vitro活性
一態様において、本発明の化合物は、ヒトMIC-1(配列番号1)と比較してMIC-1受容体効力を維持していた。受容体効力及び有効性は、ヒトMIC-1受容体(hGFRAL、GDNFファミリー受容体アルファ様)及びそのシグナル伝達共受容体hRET51(癌原遺伝子チロシン-タンパク質キナーゼ受容体Retアイソフォーム51)をトランスフェクトされた哺乳動物細胞において測定することができる。MIC-1化合物による受容体複合体の活性化は、実施例6に記載されるように、細胞外シグナル調節キナーゼ(ERK)のリン酸化により測定される。
【0080】
本明細書に記載される場合、受容体効力及び有効性はホモダイマーとしてのMIC-1化合物について測定される。
【0081】
in vivo生物学的活性
一態様において、本発明の化合物はin vivoで強力であり、このことは、任意の適切な動物モデルにおいて当技術分野で既知であるように決定可能である。
【0082】
肥満でないSprague Dawleyラットは適切な動物モデルの一例であり、このようなラットにおいて、食物摂取量の変化を、例えば実施例7に記載されるようにin vivoで決定することができる。一態様において、本発明の化合物は、肥満でないSprague Dawleyラットにおいてin vivoでの食物摂取を阻害する。食事性肥満(DIO)Sprague Dawleyラットは適切な動物モデルの別の一例であり、このようなラットにおいて、食物摂取量の変化をin vivoで決定することができる。一態様において、本発明の化合物はDIO Sprague Dawleyラットにおいてin vivoでの食物摂取を阻害し、体重を減少させる。
【0083】
産生プロセス
本発明のMIC-1化合物は、当業者に既知の組換えタンパク質技術を用いて産生可能である。概して、目的のタンパク質又はその機能性バリアントをコードする核酸配列が、望ましいMIC-1化合物をコードするように改変される。次いで、この改変された配列が発現ベクターに挿入され、発現ベクターが発現宿主細胞に形質転換又はトランスフェクトされる。
【0084】
MIC-1化合物をコードする核酸構築物は、適切に、ゲノム、cDNA又は合成由来であってよい。アミノ酸配列変更は、周知の技術による遺伝暗号の改変により遂行される。
【0085】
MIC-1化合物をコードするDNA配列は通常、組換えベクターに挿入され、ベクターは任意のベクターであってよく、好都合には組換えDNA手法を受けることができ、ベクターの選択は大抵、導入先の宿主細胞によって決まる。したがって、ベクターは自己複製ベクター、すなわち染色体外のものとして存在し、その複製が染色体の複製から独立しているベクター、例えばプラスミドであってよい。或いは、ベクターは、宿主細胞に導入されると宿主細胞ゲノムに組み込まれ、組込み先の染色体とともに複製されるベクターであってもよい。
【0086】
ベクターは、好ましくは、MIC-1化合物をコードするDNA配列が、DNAの転写に必要な更なるセグメントに作動可能に連結されている発現ベクターである。「作動可能に連結される」という語は、セグメントが、その所期の目的のために協調して機能するように、例えば転写がプロモーターで開始され、ポリペプチドをコードするDNA配列を通って、ターミネーター内で終結するまで進行するように配置されていることを示す。
【0087】
したがって、MIC-1化合物を発現させるのに使用するための発現ベクターは、クローニングされる遺伝子又はcDNAの転写を開始及び指示できるプロモーターを含むものである。プロモーターは、最適な宿主細胞において転写活性を示し、宿主細胞にとって同種又は異種いずれかのタンパク質をコードする遺伝子由来であってよい任意のDNA配列とすることができる。
【0088】
更に、MIC-1化合物の発現のための発現ベクターは、宿主細胞により認識されて転写を終結させる配列であるターミネーター配列も含むものである。ターミネーター配列は、ポリペプチドをコードする核酸配列の3'末端に作動可能に連結される。最適な宿主細胞で機能する任意のターミネーターが本発明で使用可能である。
【0089】
MIC-1化合物の発現は、宿主細胞の細胞質における細胞内発現を目的としていてもよく、増殖培地への細胞外発現のため分泌経路に方向付けてもよい。
【0090】
細胞内発現はデフォルトの経路であり、プロモーター、その次にMIC-1化合物をコードするDNA配列、その次にターミネーターを含むDNA配列を有する発現ベクターが必要である。
【0091】
MIC-1化合物の配列を宿主細胞の分泌経路に方向付けるため、分泌シグナル配列(シグナルペプチド又はプレ配列としても知られる)がMIC-1配列の伸長部として必要である。シグナルペプチドをコードするDNA配列は、適正なリーディングフレームで、MIC-1化合物をコードするDNA配列の5'末端に連結される。シグナルペプチドは、そのタンパク質に通常関連するものでも、別の分泌タンパク質をコードする遺伝子由来でもよい。
【0092】
MIC-1化合物をコードするDNA配列、プロモーター、ターミネーター及び/又は分泌シグナル配列をそれぞれライゲーションし、これらを、複製に必要な情報を含む適切なベクターに挿入するのに使用される手法は、当業者に周知である(例えば、Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor、New York、1989を参照)。
【0093】
MIC-1化合物をコードするDNA配列が導入される宿主細胞は、細胞内又は細胞外のいずれかにMIC-1化合物を発現させることができる任意の細胞であってよい。MIC-1化合物は、MIC-1化合物をコードし、MIC-1化合物の発現を可能にする条件下で適切な栄養培地においてMIC-1化合物を発現することができるDNA配列を含む宿主細胞を培養することによって産生可能である。MIC-1化合物の発現に適した宿主細胞の非限定的な例は:大腸菌(Escherichia coli)、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、及びヒト胎児腎臓(HEK)、ベビーハムスター腎臓(BHK)又はチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株である。翻訳後修飾が必要である場合、適切な宿主細胞には、酵母、真菌、昆虫、及び哺乳動物細胞等のより高等な真核細胞が含まれる。
【0094】
宿主生物において発現されると、MIC-1化合物は従来の技術により回収され、必要な質になるまで精製されうる。このような従来の回収及び精製技術の非限定的な例は、遠心処理、可溶化、濾過、沈殿、イオン交換クロマトグラフィー、固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)、逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)、ゲル濾過及び凍結乾燥である。
【0095】
MIC-1タンパク質の組換え発現及び精製の例は、例えばCordingleyら、J. Virol. 1989、63、5037~5045頁; Birchら、Protein Expr Purif.、1995、6、609~618頁及びWO2008/043847号に見られる。
【0096】
MIC-1タンパク質の微生物による発現及び精製の例は、例えばChichら、Anal. Biochem、1995、224、245~249頁、及びXinら、Protein Expr. Purif. 2002、24、530~538頁に見られる。
【0097】
本発明の複数の化合物を調製する方法の特定の例は、実験部分に含まれる。
【0098】
封入体及びタンパク質発現
MIC-1化合物は、大腸菌等の細菌で発現させることができる。本発明の状況において、N-伸長部を有する前記MIC-1ポリペプチドの大規模タンパク質産生では、プロセス回収率、タンパク質純度、プロテアーゼ分解及び全体的なタンパク質安定性を制御するための有利な手法の代表例であることから、封入体(IB)を利用することができる。これは、大規模タンパク質産生において特に重要となりつつある。IBの質にとってきわめて重要なのは、N-伸長部を有するMIC-1ポリペプチドの、計算されたpIにより部分的に制御される溶解性と、IB形成とのバランスである。
【0099】
投与様式
「治療」という語は、言及される疾患、障害、又は状態を予防すること及び最小限に抑えることの両方を含むことを意図される(すなわち、「治療」は、文脈で別途示されるか明らかに否定されない限り、本発明の化合物又は本発明の化合物を含む組成物の予防的及び治療的投与の両方を指す)。
【0100】
投与経路は、非経口的、例えば、皮下、筋肉内又は静脈内等、体内の望ましい又は適切な箇所に本発明の化合物を有効に輸送する任意の経路であってよい。或いは、本発明の化合物は、経口、経肺、経直腸、経皮、頬側、舌下、又は経鼻投与してもよい。
【0101】
投与されるべき本発明の化合物量、どれくらいの頻度で本発明の化合物を投与するかの決定、及び任意選択で別の薬学的に活性な薬剤とともに本発明のどの単一の化合物又は複数の化合物を投与するかの選出については、肥満及び関連する障害の治療に精通している当業者と相談して決定される。
【0102】
医薬組成物
本発明の化合物又はその薬学的に許容される塩、アミド、若しくはエステル、及び薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物は、当技術分野で既知であるように調製可能である。
【0103】
「賦形剤」という語は、活性な治療成分以外の任意の成分を広く指す。賦形剤は、不活性物質、不活性物質、及び/又は医薬として活性でない物質であってよい。
【0104】
賦形剤は、例えば担体、溶媒、希釈剤、錠剤形成助剤(tablet aid)として、並びに/又は投与及び/若しくは活性物質の吸収を改善するため、各種目的を果たしうる。
【0105】
薬学的に活性な成分を各種賦形剤とともに製剤化することについては当技術分野で既知であり、例えばRemington: The Science and Practice of Pharmacy(例えば第19版(1995)、及び以降の任意の版)を参照のこと。
【0106】
組合せ治療
本発明による化合物での治療は、例えば抗肥満剤、食欲調節剤、並びに肥満から生じる又は肥満に関連する合併症及び障害の治療及び/又は予防のための薬剤から選択される1つ又は複数の薬理学的に活性な物質と組み合わせてもよい。
【0107】
医薬的な適応
一態様において、本発明は、医薬として使用するための本発明の化合物に関する。
【0108】
特定の実施形態において、本発明の化合物は以下の医学による治療に使用可能である:
(i)例えば食物摂取量を減少させること、体重を減少させること、食欲を抑制すること、及び満腹を誘導することによる、肥満等の摂食障害の予防及び/又は治療
(ii)高血糖、インスリン抵抗性及び/又は耐糖能障害の予防及び/又は治療
(iii)脂質異常症の予防及び/又は治療。
【0109】
一部の実施形態において、本発明は体重管理の方法に関する。一部の実施形態において、本発明は食欲低下の方法に関する。一部の実施形態において、本発明は食物摂取量減少の方法に関する。
【0110】
概して、肥満を患う対象は全て体重過多を患うとも考えられる。一部の実施形態において、本発明は肥満の治療又は予防の方法に関する。一部の実施形態において、本発明は肥満の治療又は予防のための、本発明のMIC-1化合物の使用に関する。一部の実施形態において、肥満を患う対象は、成人又は小児(乳幼児、子供、及び青年を含む)等のヒトである。ボディマスインデックス(BMI)は、身長及び体重に基づく体脂肪の尺度である。計算式は、BMI=キログラムでの体重/メートルでの身長2である。肥満を患うヒト対象は、30以上のBMIを有しうる;この対象は肥満とも呼ばれうる。一部の実施形態において、肥満を患うヒト対象は、35以上のBMI又は30以上~40未満の範囲のBMIを有しうる。一部の実施形態において、ヒト対象が40以上のBMIを有しうる肥満は重度の肥満又は病的肥満である。
【0111】
一部の実施形態において、本発明は、任意選択で少なくとも1つの体重関連合併症の存在下での、体重過多の治療又は予防の方法に関する。一部の実施形態において、本発明は、任意選択で少なくとも1つの体重関連合併症の存在下での、体重過多の治療又は予防のための、本発明のMIC-1化合物の使用に関する。
【0112】
一部の実施形態において、体重過多を患う対象は、成人又は小児(乳幼児、子供、及び青年を含む)等のヒトである。一部の実施形態において、体重過多を患うヒト対象は、27以上のBMI等、25以上のBMIを有しうる。一部の実施形態において、体重過多を患うヒト対象は、25~30未満の範囲又は27~30未満の範囲のBMIを有する。一部の実施形態において、体重関連合併症は、高血圧、糖尿病(2型糖尿病等)、脂質異常症、高コレステロール、及び閉塞性睡眠時無呼吸からなる群から選択される。
【0113】
一部の実施形態において、本発明は体重減少の方法に関する。一部の実施形態において、本発明は、体重減少のための、本発明のMIC-1化合物の使用に関する。本発明に従って体重減少を受けるヒトは、27以上のBMI又は30以上のBMI等、25以上のBMIを有しうる。一部の実施形態において、本発明に従って体重減少を受けるヒトは、35以上のBMI又は40以上のBMIを有しうる。「体重減少」という語は、肥満及び/又は体重過多の治療又は予防を含んでいてよい。
【0114】
一部の実施形態において、本発明は、動脈硬化症等の心血管疾患、並びに脂肪性肝炎、及び糖尿病性腎症等のその他の障害の治療又は予防の方法に関する。
【0115】
冠詞「1つの(a)」及び「1つの(an)」は、本明細書では、1つ又は1つより多く(すなわち少なくとも1つの)冠詞の文法上の目的語を指すために使用される。例として、「MIC-1ポリペプチド(a MIC-1 polypeptide)」は、1つのMIC-1ポリペプチド又は1より多くのMIC-1ポリペプチドを意味する。
【0116】
特定の実施形態
本発明を、以下の本発明の非限定的な実施形態により更に説明する:
1. MIC-1ポリペプチド及びN末端アミノ酸伸長部を含むMIC-1化合物であって、前記伸長部は3~200個のアミノ酸残基からなり、化合物は6.5未満の計算されたpIを有する、MIC-1化合物。
2. MIC-1ポリペプチド及びアミノ酸伸長部が、109~312個、112~312個、115~312個、112~148個又は115~148個のアミノ酸残基からなる、実施形態1に記載の化合物。
3. ホモダイマーである、実施形態1に記載の化合物。
4. ホモダイマーとしての化合物が、218~296個、224~296個、230~296個、218~310個、224~310個、230~310個、218~360個、224~360個、230~360個、218~624個、224~624個、230~296個又は230~296個のアミノ酸残基からなる、実施形態1に記載の化合物。
5. N末端アミノ酸伸長部を有するMIC-1ポリペプチドからなる化合物であって、前記伸長部は3~200個のアミノ酸残基からなり、化合物は6.5未満の計算されたpIを有する、化合物。
6. 計算されたpIが6.1未満である、実施形態1から5に記載の化合物。
7. 計算されたpIが6.0未満である、実施形態1から5に記載の化合物。
8. 計算されたpIが、6.4未満、6.3未満、6.2未満、6.1未満、6.0未満、5.9未満、5.8未満、5.7未満、5.6未満、5.5未満、5.4未満、5.3未満、又は5.2未満、5.1未満、又は5.0未満、4.9未満、4.8未満、4.7未満、4.6未満、4.5未満、4.4未満、4.3未満、4.2未満、4.1未満又は4.0未満である、実施形態1から5のいずれか一項に記載の化合物。
9. 計算されたpIが4.7超である、実施形態1から7のいずれか一項に記載の化合物。
10. 計算されたpIが4.8超である、実施形態1から7のいずれか一項に記載の化合物。
11. 計算されたpIが4.9超である、実施形態1から7のいずれか一項に記載の化合物。
12. 計算されたpIが5.0超である、実施形態1から7のいずれか一項に記載の化合物。
13. 計算されたpIが5.1超である、実施形態1から7のいずれか一項に記載の化合物。
14. 計算されたpIが、6.5~3.0、6.5~3.5、6.5~4.0、6.1~3.0、6.1~3.5、6.1~4.0、6.1~4.7、6.1~4.9、6.1~5.0、6.1~5.1、6.0~3.0、6.0~3.5、6.0~4.0、5.9~3.0、5.9~3.5、5.9~4.0、5.9~5.0、5.9~5.1、5.8~3.0、5.8~3.5、5.8~4.0、5.8~5.1、5.8~5.2、5.5~3.0、5.5~3.5、5.5~4.0、又は5.0~4.0の範囲にある、実施形態1から5のいずれか一項に記載の化合物。
15. 計算されたpIが5.8~5.2の範囲にある、実施形態1から14のいずれか一項に記載の化合物。
16. 前記伸長部の長さが、3~100、3~50、3~40、3~30、5~100、5~50、5~40、5~30、10~100、10~50、10~40、10~30、3~36、3~30、3~25、3~24、3~12、4~36、4~30、4~24、4~12、5~36、5~30、5~24、5~12、6~36、6~30、6~24、6~12、7~36、7~30、7~24、7~12、8~36、8~30、8~24、8~12、30~36、32~36、30~34、又は30~32アミノ酸残基の範囲である、実施形態1から15のいずれか一項に記載の化合物。
17. 前記伸長部がアミノ酸長3~36である、実施形態1から16のいずれか一項に記載の化合物。
18. 前記伸長部の長さが30~32アミノ酸残基の範囲である、実施形態1から17のいずれか一項に記載の化合物。
19. 伸長部が、塩基性アミノ酸残基(リジン、アルギニン又はヒスチジン)数と比較して、少なくとも3、4、5、6、7、8、9又は10個の過剰な酸性アミノ酸残基(アスパラギン酸又はグルタミン酸)を有する、実施形態1から18のいずれか一項に記載の化合物。
20. 伸長部が、塩基性アミノ酸残基(リジン又はアルギニン又はヒスチジン)数と比較して、少なくとも15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%又は75%過剰な酸性アミノ酸残基(アスパラギン酸又はグルタミン酸)を含む、実施形態1から18のいずれか一項に記載の化合物。
21. 伸長部が、酸性アミノ酸残基を少なくとも15%含む、実施形態1から20のいずれか一項に記載の化合物。
22. 伸長部が、酸性アミノ酸残基を少なくとも25%含む、実施形態21に記載の化合物。
23. 伸長部が、A、E、G、P、S、T、D、N、及びQからなる群から選択されるアミノ酸残基から構成され、前記伸長部が少なくとも3個のE及び/又はDアミノ酸残基を含む、実施形態1から22のいずれか一項に記載の化合物。
24. 伸長部が、A、E、G、P、S、T、Q及びDからなる群から選択されるアミノ酸残基から構成され、前記伸長部が少なくとも3個のE及び/又はDアミノ酸残基を含む、実施形態1から23のいずれか一項に記載の化合物。
25. 伸長部が、少なくとも3個のE、及び少なくとも1個のPを含む、実施形態23又は24に記載の化合物。
26. 伸長部がS、G、T及びAを更に含む、実施形態25に記載の化合物。
27. 伸長部が、6個のSer、4個のPro、4個のGly、4個のThr、4個のGlu及び2個のAlaを含む、実施形態26に記載の化合物。
28. 伸長部が、SPAGSPTSTEEG、TSESATPESGPG、TSTEPSEGSAPG及びSEPATSGSETPGからなる群から選択される配列のうち2つを含む、実施形態27に記載の化合物。
29. 伸長部が、SPAGSPTSTEEG、TSESATPESGPG、TSTEPSEGSAPG又はSEPATSGSETPGのうち、最初の6~8アミノ酸残基、最後の6~8残基又は内部の6~8残基等の連続した6~8つのアミノ酸を更に含む、実施形態28に記載の化合物。
30. 伸長部がSで始まる、実施形態23から29のいずれか一項に記載の化合物。
31. 伸長部がSEで始まる、実施形態30に記載の化合物。
32. 伸長部がSEPで始まる、実施形態31に記載の化合物。
33. 伸長部が、以下の配列SPAGSP(配列番号4)、TSESAT(配列番号5)、TSTEPE(配列番号6)、SEPATS(配列番号7)、TSTEEG(配列番号8)、PESGPG(配列番号9)、SGSAPG(配列番号10)、GSETPG(配列番号11)、SEPATSGSETPGSPAGSPTSTEEG(配列番号12)、SEPATSGSETPGTSESATPESGPG(配列番号13)、SEPATSGSETPGTSTEPESGSAPG(配列番号14)、
SEPATSGSETPGSPAGSPTSTEEGSPAGSP(配列番号15)、
SEPATSGSETPGTSESATPESGPGSPAGSP(配列番号16)、
SEPATSGSETPGTSTEPESGSAPGSPAGSP(配列番号17)、
SEPATSGSETPGSPAGSPTSTEEGTSESAT(配列番号18)、
SEPATSGSETPGTSESATPESGPGTSESAT(配列番号19)、
SEPATSGSETPGTSTEPESGSAPGTSESAT(配列番号20)、
SEPATSGSETPGSPAGSPTSTEEGTSTEPE(配列番号21)、
SEPATSGSETPGTSESATPESGPGTSTEPE(配列番号22)、
SEPATSGSETPGTSTEPESGSAPGTSTEPE(配列番号23)、
SEPATSGSETPGSPAGSPTSTEEGSEPATS(配列番号24)、
SEPATSGSETPGTSESATPESGPGSEPATS(配列番号25)、
SEPATSGSETPGTSTEPESGSAPGSEPATS(配列番号26)、
SEPATSGSETPGSPAGSPTSTEEGTSTEEG(配列番号27)、
SEPATSGSETPGTSESATPESGPGTSTEEG(配列番号28)、
SEPATSGSETPGTSTEPESGSAPGTSTEEG(配列番号29)、
SEPATSGSETPGSPAGSPTSTEEGPESGPG(配列番号30)、
SEPATSGSETPGTSESATPESGPGPESGPG(配列番号31)、
SEPATSGSETPGTSTEPESGSAPGPESGPG(配列番号32)、
SEPATSGSETPGSPAGSPTSTEEGSGSAPG(配列番号33)、
SEPATSGSETPGTSESATPESGPGSGSAPG(配列番号34)、
SEPATSGSETPGTSTEPESGSAPGSGSAPG(配列番号35)、
SEPATSGSETPGSPAGSPTSTEEGGSETPG(配列番号36)、
SEPATSGSETPGTSESATPESGPGGSETPG(配列番号37)、
SEPATSGSETPGTSTEPESGSAPGGSETPG(配列番号38)、
SEPATSGSETPGTSESATPESGPGTSTEPS(配列番号70)、
SEPATSGSETPGTSESATPESGPGTSTEPSEG(配列番号71)、
SEPATSGSETPGSPAGSPTSTEEGTSESATPESGPG(配列番号39)、
SEPATSGSETPGSPAGSPTSTEEGSPAGSPTSTEEG(配列番号40)、
SEPATSGSETPGSPAGSPTSTEEGTSTEPESGSAPG(配列番号41)、
SEPATSGSETPGTSESATPESGPGSPAGSPTSTEEG(配列番号42)、
SEPATSGSETPGTSESATPESGPGTSESATPESGPG(配列番号43)、
SEPATSGSETPGTSESATPESGPGTSTEPESGSAPG(配列番号44)、
SEPATSGSETPGTSESATPESGPGSEPATSGSETPG(配列番号45)、
SEPATSGSETPGTSTEPESGSAPGSPAGSPTSTEEG(配列番号46)、
SEPATSGSETPGTSTEPESGSAPGTSESATPESGPG(配列番号47)、
SEPATSGSETPGTSTEPESGSAPGTSTEPESGSAPG(配列番号48)、
SEPATSGSETPGTSTEPESGSAPGSEPATSGSETPG(配列番号49)、
SEPATSGSETPGSEPATSGSETPGSPAGSPTSTEEG(配列番号50)、
SEPATSGSETPGSEPATSGSETPGTSESATPESGPG(配列番号51)、
SEPATSGSETPGSEPATSGSETPGTSTEPESGSAPG(配列番号52)、
SEPATSGSETPGSEPATSGSETPGSEPATSGSETPG(配列番号53)、GEPS(配列番号118)、GPSE(配列番号119)、GPES(配列番号120)、GSPE(配列番号121)、GSEP(配列番号122)、GEPQ(配列番号123)、GEQP(配列番号124)、GPEQ(配列番号125)、GPQE(配列番号126)、GQEP(配列番号127)又はGQPE(配列番号128)、PEDEETPEQE(配列番号129)、PDEGTEEETE(配列番号130)、PAAEEEDDPD(配列番号131)、AEPDEDPQSED(配列番号132)、AEPDEDPQSE(配列番号133)、AEPEEQEED(配列番号134)、AEPEEQEE(配列番号135)、GGGS(配列番号136)、GSGS(配列番号137)、GGSS(配列番号138)及びSSSG(配列番号139)のうち1つ又は複数を含む、実施形態1から24のいずれか一項に記載の化合物。
34. 伸長部が、以下の配列SPAGSP、TSESAT、TSTEPE、SEPATS、TSTEEG、PESGPG、SGSAPG、GSETPG、SEPATSGSETPGSPAGSPTSTEEG、SEPATSGSETPGTSESATPESGPG、SEPATSGSETPGTSTEPESGSAPG、SEPATSGSETPGSPAGSPTSTEEGSPAGSP、SEPATSGSETPGTSESATPESGPGSPAGSP、SEPATSGSETPGTSTEPESGSAPGSPAGSP、SEPATSGSETPGSPAGSPTSTEEGTSESAT、SEPATSGSETPGTSESATPESGPGTSESAT、SEPATSGSETPGTSTEPESGSAPGTSESAT、SEPATSGSETPGSPAGSPTSTEEGTSTEPE、SEPATSGSETPGTSESATPESGPGTSTEPE、SEPATSGSETPGTSTEPESGSAPGTSTEPE、SEPATSGSETPGSPAGSPTSTEEGSEPATS、SEPATSGSETPGTSESATPESGPGSEPATS、SEPATSGSETPGTSTEPESGSAPGSEPATS、SEPATSGSETPGSPAGSPTSTEEGTSTEEG、SEPATSGSETPGTSESATPESGPGTSTEEG、SEPATSGSETPGTSTEPESGSAPGTSTEEG、SEPATSGSETPGSPAGSPTSTEEGPESGPG、SEPATSGSETPGTSESATPESGPGPESGPG、SEPATSGSETPGTSTEPESGSAPGPESGPG、SEPATSGSETPGSPAGSPTSTEEGSGSAPG、SEPATSGSETPGTSESATPESGPGSGSAPG、SEPATSGSETPGTSTEPESGSAPGSGSAPG、SEPATSGSETPGSPAGSPTSTEEGGSETPG、SEPATSGSETPGTSESATPESGPGGSETPG、SEPATSGSETPGTSTEPESGSAPGGSETPG
SEPATSGSETPGSPAGSPTSTEEGTSESATPESGPG、
SEPATSGSETPGSPAGSPTSTEEGSPAGSPTSTEEG、
SEPATSGSETPGSPAGSPTSTEEGTSTEPESGSAPG、
SEPATSGSETPGTSESATPESGPGSPAGSPTSTEEG、
SEPATSGSETPGTSESATPESGPGTSESATPESGPG、
SEPATSGSETPGTSESATPESGPGTSTEPESGSAPG、
SEPATSGSETPGTSESATPESGPGSEPATSGSETPG、
SEPATSGSETPGTSTEPESGSAPGSPAGSPTSTEEG、
SEPATSGSETPGTSTEPESGSAPGTSESATPESGPG、
SEPATSGSETPGTSTEPESGSAPGTSTEPESGSAPG、
SEPATSGSETPGTSTEPESGSAPGSEPATSGSETPG、
SEPATSGSETPGSEPATSGSETPGSPAGSPTSTEEG、
SEPATSGSETPGSEPATSGSETPGTSESATPESGPG、
SEPATSGSETPGSEPATSGSETPGTSTEPESGSAPG、
SEPATSGSETPGSEPATSGSETPGSEPATSGSETPG、GEPQ、GEPS、GGGS、GSGS、GGSS、及びSSSGのうち1つ又は複数を含む、実施形態1から24のいずれか一項に記載の化合物。
35. 伸長部が、以下の配列SPAGSP、TSESAT、TSTEPE、SEPATS、TSTEEG、PESGPG、SGSAPG、GSETPG、GEPQ、GEPS、GGGS、GSGS、GGSS、及びSSSGのうち任意の2~6つの任意の組合せを含む、実施形態1から24のいずれか一項に記載の化合物。
36. 伸長部が、以下の配列GEPS、GPSE、GPES、GSPE、GSEP、GEPQ、GEQP、GPEQ、GPQE、GQEP、GQPE、GGGS、GSGS、GGSS、及びSSSGのうち1つ又は複数を含む、実施形態1から24のいずれか一項に記載の化合物。
37. 伸長部が、以下の配列GEPS、GPSE、GPES、GSPE、GSEP、GEPQ、GEQP、GPEQ、GPQE、GQEP、GQPE、GGGS、GSGS、GGSS、及びSSSGのうち2~9つの任意の組合せを含む、実施形態36に記載の化合物。
38. 伸長部が、以下の配列GEPS、GPSE、GPES、GSPE、GSEP、GGGS、GSGS、GGSS、及びSSSGのうち1つ又は複数を含む、実施形態1から24のいずれか一項に記載の化合物。
39. 伸長部が、以下の配列GEPS、GPSE、GPES、GSPE、GSEP、GGGS、GSGS、GGSS、及びSSSGのうち2~9つの任意の組合せを含む、実施形態38に記載の化合物。
40. 伸長部が、以下の配列GEPSGEPSGEPSGEPSGEPS(配列番号140)、GPSEGPSEGPSEGPSEGPSE(配列番号141)、GPESGPESGPESGPESGPES(配列番号142)、GSPEGSPEGSPEGSPEGSPE(配列番号143)、及びGSEPGSEPGSEPGSEPGSEP(配列番号144)のうち1つ又は複数を含む、実施形態39に記載の化合物。
41. 伸長部が、以下の配列GEPQ、GEQP、GPEQ、GPQE、GQEP、GQPE、GGGS、GSGS、GGSS、及びSSSGのうち1つ又は複数を含む、実施形態1から24のいずれか一項に記載の化合物。
42. 伸長部が、以下の配列GEPQ、GEQP、GPEQ、GPQE、GQEP、GQPE、GGGS、GSGS、GGSS、及びSSSGのうち2~9つの任意の組合せを含む、実施形態41に記載の化合物。
43. 伸長部が、以下の配列GEPQGEPQGEPQGEPQGEPQ(配列番号145)、GEQPGEQPGEQPGEQPGEQP(配列番号146)、GPEQGPEQGPEQGPEQGPEQ(配列番号147)、GPQEGPQEGPQEGPQEGPQE(配列番号148)、GQEPGQEPGQEPGQEPGQEP(配列番号149)、及びGQPEGQPEGQPEGQPEGQPE(配列番号150)のうち1つ又は複数を含む、実施形態42に記載の化合物。
44. 伸長部が、以下の配列PEDEETPEQE、PDEGTEEETE、PAAEEEDDPD、AEPDEDPQSED、AEPDEDPQSE、AEPEEQEED、及びAEPEEQEE、GGGS、GSGS、GGSS及びSSSGのうち1つ又は複数を含む、実施形態1から24のいずれか一項に記載の化合物。
45. 伸長部が、以下の配列PEDEETPEQE、PDEGTEEETE、PAAEEEDDPD、AEPDEDPQSED、AEPDEDPQSE、AEPEEQEED、AEPEEQEE及びAEEAEEAEEAEEAEEのうち2~3つの任意の組合せを含む、実施形態1から24のいずれか一項に記載の化合物。
46. 伸長部が、以下の配列配列番号54、配列番号55、配列番号56、配列番号57、配列番号58、配列番号59、配列番号60、配列番号61、配列番号62、配列番号63、配列番号64、配列番号65、配列番号66、配列番号67、配列番号68、配列番号69、配列番号70、配列番号71、配列番号72、配列番号161、配列番号162、配列番号181、配列番号182、配列番号183、配列番号184、配列番号185、配列番号186、配列番号187、配列番号188、配列番号189、配列番号190、配列番号191、配列番号192、配列番号193、配列番号194及び配列番号195のうち1つ又は複数を含む、実施形態1から24のいずれか一項に記載の化合物。
47. 伸長部が、N末端に1~3個のアラニンアミノ酸残基を含む、実施形態1から46のいずれか一項に記載の化合物。
48. 伸長部が、C末端に1~4個のグリシン及びセリンアミノ酸残基を含む、実施形態1から47のいずれか一項に記載の化合物。
49. 伸長部が、C末端に(Gly-Ser)n又は(Ser-Gly)n配列を含み、nが1~8の整数である、実施形態1から48のいずれか一項に記載の化合物。
50. 伸長部が、C末端にGGGS、GSGS、GGSS又はSSSGを含む、実施形態1から49のいずれか一項に記載の化合物。
51. MIC-1ポリペプチドが、野生型MIC-1(配列番号1)と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を示す、実施形態1から50のいずれか一項に記載の化合物。
52. MIC-1ポリペプチドが、野生型MIC-1(配列番号1)と少なくとも95%の配列同一性を示す、実施形態51に記載の化合物。
53. MIC-1ポリペプチドが、配列番号1のMIC-1と比較して最大10、9、8、7、6、5、4、3、2又は1個のアミノ酸改変を有する、実施形態1から51のいずれか一項に記載の化合物。
54. MIC-1ポリペプチドが、配列番号1のMIC-1と比較して最大7、6、5、4、3又は2個のアミノ酸改変を有する、実施形態1から53のいずれか一項に記載の化合物。
55. 6.5未満の計算されたpIを有する、MIC-1ポリペプチドを含む化合物。
56. MIC-1ポリペプチドが、野生型MIC-1(配列番号1)と比較して、以下の置換P11E、H18E、R21E、A30E、M43L、M43E、A47E、R53E、A54E、M57E、M57L、H66E、R67E、L68E、K69E、A75E、A81E、P85E、M86F、M86L、Q90E、T92E、L105E、K107Eのうち1つ又は複数を含む、実施形態1から55のいずれか一項に記載の化合物。
57. MIC-1ポリペプチドが、配列番号1のMIC-1と比較して、以下の置換R2S、R2A、N3S、N3E、N3A、N3T、N3P、N3G、N3V、N3H、N3Y又はN3Qのうち1つ又は複数を含む、実施形態1から56のいずれか一項に記載の化合物。
58. MIC-1ポリペプチドが、配列番号1のMIC-1と比較してN3の欠失(des-N3)を含む、実施形態1から57のいずれか一項に記載の化合物。
59. MIC-1ポリペプチドが、配列番号1のMIC-1と比較してM57E又はM57L置換を含む、実施形態1から58のいずれか一項に記載の化合物。
60. MIC-1ポリペプチドが、配列番号1のMIC-1と比較してM86L又はM86F置換を含む、実施形態1から59のいずれか一項に記載の化合物。
61. MIC-1ポリペプチドが、配列番号1のMIC-1と比較してQ90E又はT92E置換を更に含む、実施形態60に記載の化合物。
62. MIC-1ポリペプチドが、配列番号1のMIC-1と比較してH66E置換を含む、実施形態1から61のいずれか一項に記載の化合物。
63. MIC-1ポリペプチドが、配列番号1のMIC-1と比較してR67E置換を含む、実施形態1から62のいずれか一項に記載の化合物。
64. MIC-1ポリペプチドが、配列番号1のMIC-1と比較して最初の3、4、5又は6残基の欠失を含む、実施形態1から63のいずれか一項に記載の化合物。
65. MIC-1ポリペプチドが、配列番号1のMIC-1と比較して最初の3残基の欠失を含む、実施形態1から64のいずれか一項に記載の化合物。
66. MIC-1ポリペプチドが配列番号154による配列(M43L/des-N3)を有する、実施形態1から56のいずれか一項に記載の化合物。
67. MIC-1ポリペプチドが配列番号155による配列(M43L/Δ1~3)を有する、実施形態1から56のいずれか一項に記載の化合物。
68. MIC-1ポリペプチドが配列番号156による配列(M57E/H66E/des-N3)を有する、実施形態1から56のいずれか一項に記載の化合物。
69. MIC-1ポリペプチドが配列番号157による配列(M57L/Δ1~3)を有する、実施形態1から56のいずれか一項に記載の化合物。
70. MIC-1ポリペプチドが配列番号158による配列(M57L/des-N3)を有する、実施形態1から56のいずれか一項に記載の化合物。
71. MIC-1ポリペプチドが配列番号159による配列(M86L/Δ1~3)を有する、実施形態1から56のいずれか一項に記載の化合物。
72. MIC-1ポリペプチドが配列番号160による配列(M86L/des-N3)を有する、実施形態1から56のいずれか一項に記載の化合物。
73. MIC-1ポリペプチドが配列番号222による配列(M57L、M86L/des-N3)を有する、実施形態1から56のいずれか一項に記載の化合物。
74. MIC-1ポリペプチドが配列番号1による配列を有する、実施形態1から55のいずれか一項に記載の化合物。
75. MIC-1ポリペプチド及びN末端アミノ酸伸長部を含むMIC-1化合物であって、配列番号89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117又は164によるアミノ酸配列を含む、MIC-1化合物。
76. MIC-1ポリペプチド及びN末端アミノ酸伸長部を含むMIC-1化合物であって、配列番号100、104、106、107、108、109、111、112、113、114、115、116、117又は164によるアミノ酸配列を含む、MIC-1化合物。
77. 配列番号1のMIC-1と比較して改善された溶解性を示す、実施形態1から76のいずれか一項に記載の化合物。
78. pH8.0のトリス緩衝液系に対する、配列番号1のMIC-1と比較して改善された溶解性を示す、実施形態1から77のいずれか一項に記載の化合物。
79. pH8.0のトリス緩衝液系に対する、配列番号1のMIC-1と比較して2倍超、5倍超、10倍超、50倍超、最大100倍超の溶解性の改善を有する、実施形態1から78のいずれか一項に記載の化合物。
80. トリス緩衝液系中、pH8.0で、0.5、1.0、5.0、10、30又は50mg/mlの溶解度を有する、実施形態1から79のいずれか一項に記載の化合物。
81. トリス緩衝液系中、pH8.0で、30mg/mlの溶解度を有する、実施形態80に記載の化合物。
82. MIC-1化合物が、配列番号1のMIC-1と比較して、pH8.0での結晶形成傾向の低下を示す、実施形態1から81のいずれか一項に記載の化合物。
83. 結晶形成傾向が、pH8.0のトリス緩衝液系において測定される、実施形態82に記載の化合物。
84. 低い免疫原性リスクを有する、実施形態1から83のいずれか一項に記載の化合物。
85. 配列番号1のMIC-1と比較して、食物摂取量を減少させること及び/又は体重を減少させることについて改善されたin vivo有効性を有する、実施形態1から84のいずれか一項に記載の化合物。
86. 医薬として使用するための、実施形態1から85のいずれか一項に記載の化合物。
87. 代謝障害の予防及び/又は治療において使用するための、実施形態1から85のいずれか一項に記載の化合物。
88. 代謝障害の予防及び/又は治療において使用するためであり、代謝障害が、肥満、2型糖尿病、脂質異常症、又は糖尿病性腎症である、実施形態87に記載の化合物。
89. 肥満等の摂食障害の予防及び/又は治療において使用するための、実施形態1から85のいずれか一項に記載の化合物。
90. 食物摂取量を減少させること、体重を減少させること、食欲を抑制すること、及び/又は満腹を誘導することによる肥満の予防及び/又は治療において使用するための、実施形態89に記載の化合物。
91. 心血管疾患の予防及び/又は治療において使用するための、実施形態1から85のいずれか一項に記載の化合物。
92. 脂質異常症、動脈硬化症、脂肪性肝炎、又は糖尿病性腎症の予防及び/又は治療において使用するための、実施形態91に記載の化合物。
93. 実施形態1から85のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩、アミド若しくはエステル、及び1つ又は複数の薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物。
94. 代謝障害の予防及び/又は治療用の医薬の製造における、実施形態1から85のいずれか一項に記載の化合物の使用であって、代謝障害が、肥満、2型糖尿病、脂質異常症、又は糖尿病性腎症である、使用。
95. 摂食障害の予防及び/又は治療用の医薬の製造における、実施形態1から85のいずれか一項に記載の化合物の使用。
96. 肥満の予防及び/又は治療用の医薬の製造における、実施形態1から85のいずれか一項に記載の化合物の使用。
97. 食物摂取量を減少させること、体重を減少させること、食欲を抑制すること、及び/又は満腹を誘導することによる肥満の予防及び/又は治療用の医薬の製造における、実施形態1から85のいずれか一項に記載の化合物の使用。
98. 心血管疾患の予防及び/又は治療用の医薬の製造における、実施形態1から85のいずれか一項に記載の化合物の使用。
99. 脂質異常症、動脈硬化症、脂肪性肝炎、又は糖尿病性腎症の予防及び/又は治療用の医薬の製造における、実施形態1から85のいずれか一項に記載の化合物の使用。
100. 薬学的に活性な量の、実施形態1から85のいずれか一項に記載の化合物を投与することにより代謝障害を治療及び/又は予防する方法であって、代謝障害が、肥満、2型糖尿病、脂質異常症、又は糖尿病性腎症である、方法。
101. 薬学的に活性な量の、実施形態1から85のいずれか一項に記載の化合物を投与することにより、摂食障害を治療及び/又は予防する方法。
102. 薬学的に活性な量の、実施形態1から85のいずれか一項に記載の化合物を投与することにより、肥満を治療及び/又は予防する方法。
103. 薬学的に活性な量の、実施形態1から85のいずれか一項に記載の化合物を投与することによって、食物摂取量を減少させること、体重を減少させること、食欲を抑制すること、及び/又は満腹を誘導することで肥満を治療及び/又は予防する方法。
104. 薬学的に活性な量の、実施形態1から85のいずれか一項に記載の化合物を投与することにより、心血管疾患を治療及び/又は予防する方法。
105. 薬学的に活性な量の、実施形態1から85のいずれか一項に記載の化合物を投与することにより、脂質異常症、動脈硬化症、脂肪性肝炎、又は糖尿病性腎症を治療及び/又は予防する方法。
106. 実施形態1から85のいずれか一項に記載の化合物をコードするポリヌクレオチド分子。
【実施例
【0117】
略語リスト
「主ピーク」は、ミリ吸光度単位で最大のUV強度を有し融合タンパク質を含む、精製クロマトグラムにおけるピークを指す。
【0118】
HPLCは高速液体クロマトグラフィーである。
【0119】
SDS-PAGEはドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動である。
【0120】
IMACは固定化金属アフィニティークロマトグラフィーである。
【0121】
SECはサイズ排除クロマトグラフィーである。
【0122】
MSは質量分析である。
【0123】
本明細書では、ギリシャ文字は、記号又は対応するカタカナ名称、例えば:α=アルファ;β=ベータ;ε=イプシロン;γ=ガンマ;ω=オメガ;Δ=デルタ等で表される場合がある。また、ギリシャ文字μは「u」、例えばμl=ul、又はμM=uMで表される場合がある。
【0124】
MIC-1化合物の設計
本発明の一態様において、増大した溶解性を有するようにMIC-1化合物を設計した。本発明の一態様において、MIC-1ポリペプチドにN末端「酸性」伸長部を付加することによりこれを実現した。本発明の一態様において、MIC-1ポリペプチドのアミノ酸配列の改変によって、溶解性が増強され安定性が改善された。例えば、MIC-1ポリペプチドのN末端に伸長部を付加し、かつ/又はMIC-1ポリペプチドのアミノ酸配列内で改変を行った(配列内突然変異)。
【0125】
N-伸長部設計:
N末端アミノ酸伸長部の設計では、タンパク質凝集に寄与するおそれがあるためF、I、L、M、V、W及びYを除外した。細胞膜への望ましくない結合を引き起こすおそれがあるためH、K、及びRも除外した。N-伸長部配列にはA、E、G、P、S、T、D、N、及びQが好ましい。化合物のpI値を減少させることによって溶解性を増大させるため、E及びDが特に好ましい。特に、一部のN-伸長部では、MIC-1化合物が大腸菌で発現される際に最初のメチオニンが除去される効率を増大させるため、ちょうどN末端に1つ又は2つの更なるアラニンを付加した。
【0126】
上記の原則に基づいて、各種N末端アミノ酸伸長部を設計した。一部のN-伸長部はヒトタンパク質由来の配列(ヒト化配列)を含み、一部は人工的に設計された配列(例えばGS、SG、AEE、AES、GEPQ(配列番号123)、GEPS(配列番号118))を含み、一部はヒト化配列又は人工配列の反復をいくつか含み、一部は上記の組合せを含む。6残基配列(6-mer)をいくつか設計した。N-伸長部は、6-mer、6-merの一部(例えば6-merの1~5残基)、又は上記の組合せのうち1つ又は複数を含みうる。人工配列(6-merを含む)及びヒト化配列のアミノ酸残基は、任意の順序で配置されうる。
【0127】
一部の代表的な6-mer及び6-merの組合せをTable2(表2)に列挙する:
【0128】
【表2A】
【0129】
【表2B】
【0130】
【表3】
【0131】
配列内突然変異:
MIC-1(配列番号1)の特定の内部残基を、例えば置換により改変した。例えば、MIC-1化合物の溶解性を増大させるため、例えばMIC-1の疎水性残基を親水性残基、好ましくは酸性残基で置換することができ、正に荷電した残基を酸性残基で置換することができる。酸化を減少させるため、メチオニンをその他のアミノ酸、例えばE、F又はLで置換することができる。
【0132】
溶解性を増大させるための配列内突然変異には:P11E、H18E、R21E、A30E、A47E、R53E、A54E、M57E、R67E、L68E、K69E、A75E、A81E、P85E、L105E及びK107Eが含まれるがこれらに限定されない。
【0133】
酸化を減少させるための配列内突然変異には:M43L、M57E、M57L、M86F及びM86Lが含まれるがこれらに限定されない。
【0134】
化学的安定性を増大させるための配列内突然変異には、R2S、R2A、N3S、N3E、N3A、N3T、N3P、N3G、N3V、N3H、N3Y及びN3Qが含まれるがこれらに限定されない。
【0135】
MIC-1化合物のpIの計算
MIC-1化合物の計算されたpIは、化合物の正味の計算された電荷がゼロとなるpHとして定義される。pHに応じたMIC-1化合物の計算された電荷は、Table1(表1)に記載されるアミノ酸残基のpKa値、並びにB. Skoog及びA. Wichman (Trends in Analytical Chemistry、1986、vol. 5、82~83頁)に記載される方法を使用して得られる。システイン(Cys)の側鎖pKaは、遊離スルフヒドリル基を有するシステインについての電荷の計算にのみ含まれる。例として、ヒトwtMIC-1の計算されたpI値はホモダイマーとして8.8である。
【0136】
本明細書では、この文書を通して、MIC-1化合物についてのpIの計算は、別途明記されない限りホモダイマーとしてのMIC-1化合物に対して行われる。
【0137】
【表4】
【0138】
材料及び方法
一般的な調製方法
(実施例1):MIC-1化合物の発現及び発酵
pET11b由来のベクターにMIC-1化合物のcDNAをサブクローニングした。大腸菌において、細胞密度がOD600 1.0に達すると、0.5mMイソプロピルβ-d-チオガラクトシド(IPTG)により、封入体としてのMIC-1化合物の過剰発現を誘導した。TBにおいて37℃で20h継続的に増殖させた後細胞を採取し、LC/MS及びUPLC両方のための試料を調製して分子量を確認した。
【0139】
発酵を流加プロセスで、添加物質としての既知組成培地において実施した。発酵収量は異なる化合物によって主に決まり、化合物ごとに1g/L~8g/Lと様々であった。
【0140】
(実施例2):精製及びリフォールディング:
MIC-1化合物を更に以下の通り精製した:
10mMトリス緩衝液pH8.0中の大腸菌スラリー(20%w/v)をソニケーションし(オン/オフ間隔3秒、氷上で5分間)、MIC-1化合物を遠心処理(10,000xg、30分間)によりペレットにした。20mMトリスpH8.0中の8M尿素により封入体を再可溶化し、遠心処理(10,000xg、30分間)により残骸を除去した。生じた上清中のMIC-1化合物を収集し、最終濃度0.1mg/mlになるまでリフォールディング緩衝液(50mMトリス、pH8.5及び10%DMF又は10%DMSO)で希釈した。リフォールディングプロセスを低温室で48時間継続させた。生じた溶液を、概してProtein Purification. Principles and Practice Series: Springer Advanced Texts in Chemistry Scopes、Robert K. 第3版、1994(6章及び8章)に記載されるように、0.4μmフィルターで濾過し、疎水性相互作用カラム、又はQ Sepharose Fast Flow樹脂(GE Healthcare社)を使用するアニオン交換クロマトグラフィー(50mMトリスpH8.0、0~500mM NaCl)にローディングした。一部の例では、50mMトリスpH8.0及び200mM NaClを用いて作動させるHiLoad 26/60 Superdex pg 75カラム(GE Healthcare社)を使用するサイズ排除クロマトグラフィーにより、更なる精製を行った。保存のため、MIC-1化合物をDPBSに移し、凍結保存した。
【0141】
【表5A】
【0142】
【表5B】
【0143】
(実施例3):本発明のMIC-1化合物のpH依存性溶解度
本実験の目的は、改善された溶解性を有するMIC-1化合物をスクリーニングし、製剤において最適なpH域を決定することであった。
【0144】
水及びエタノールの混合物(水60%及びエタノール40%)中にMIC-1化合物を濃度範囲3mg/ml~10mg/mlで溶解させた。SpeedVac(Concentrator Plus、Eppendorf社)で6時間溶媒を蒸発させ、前記MIC-1化合物のペレットを得た。
【0145】
本pH依存性溶解度曲線アッセイには以下の緩衝液を使用した:酢酸緩衝液(pH3~pH6);トリス緩衝液(pH7~pH9);CAPS緩衝液(pH10~pH11)。
【0146】
緩衝液をMIC-1化合物とともに96ウェルプレートの各ウェルに添加した。使用する量は正確に同じでなくてよいが、全て理論濃度12~18mg/ml内を目標としていてよい。上清のMIC-1化合物濃度をUPLCにより決定した(Table6(表6))。結果に基づくと、本発明のMIC-1化合物の溶解性は、wtMIC-1と比較して、pH6~9の間で有意に改善された。MIC-1化合物の最適なpH域は、製剤において好ましいpH範囲、例えばpH6.5~8.5に入る。
【0147】
【表6】
【0148】
(実施例4):pH8でのMIC-1化合物の最大溶解度
最大溶解度を試験するため、水及びエタノールの混合物(水60%及びエタノール40%)中にMIC-1化合物を濃度範囲3mg/ml~10mg/mlで溶解させた。次いで、溶液(各ウェル150μL)を96ウェルプレート(Corning社)に等分した。SpeedVac(Concentrator Plus、Eppendorf社)で6時間溶媒を蒸発させ、MIC-1化合物のペレットを得た。96ウェルプレートの各ウェルにトリス緩衝液(pH8.0、賦形剤不含)を添加した。最大濃度が実現されるように、ウェルに添加される緩衝液の量を、ウェル中のペレット全体を溶解させるのに必要な量未満とした。プレート振とう機で、800rpm(MixMate、Eppendorf社)で2時間プレートを振とうした。ペレットを3600gで5分間遠沈させた。上清を96-ディープウェルプレートに移し、40%エタノールで20倍に希釈した。次いで、試料を全てUPLC(Acquity、Waters社)、プレートリーダー(Infinite M200 pro、Tecan社)及びUV分光計(NanoDrop 8000、Thermo Scientific社)にかけ、濃度を決定した(Table7(表7))。
【0149】
結果に基づくと、本発明のMIC-1化合物の溶解性はpH8.0で有意に改善された。特に、N-伸長部を有するMIC-1化合物は、pH8.0で30mg/mlを超える溶解度を実現した。
【0150】
【表7】
【0151】
in vitro活性スクリーニングの一般的な方法
(実施例5):BHK21-hGFRAL-IRES-hRET細胞株の樹立
本実施例の目的は、MIC-1活性を試験するための、細胞ベースのin vitroアッセイを確立することであった。哺乳動物細胞にトランスフェクトを行い、全長MIC-1受容体(hGFRAL)及びその全長シグナル伝達共受容体hRET51を安定に発現させた。
【0152】
全長hGFRAL及び全長hRET51をコードする合成DNAヌクレオチドを哺乳動物発現ベクターpELに挿入することにより、全長hGFRAL及び全長hRET51を発現するプラスミドを構築した。IRES(内部リボソーム進入部位)は、2つのDNA配列が同時にmRNAに翻訳されうるように、2つのDNA配列間に一般的に使用されるリンカーである。pELベクター骨格はTaihegene CRO社より供給された。
【0153】
BHK21細胞200万個を10cmペトリ皿に播種し、培養培地(DMEM+10%FBS+1%PS)で一晩培養した。細胞にpEL-hGFRAL-IRES-hRETプラスミドをトランスフェクトした。トランスフェクトされた細胞を新たな10cmディッシュに様々な密度で分割し、選択培地(DMEM+10%FBS+1%PS+1mg/ml G418)で2週間超増殖させて単一のクローンを得た。単一のクローンを6ウェルプレートに移し、100%コンフルエンスになるまで培養した。hGFRAL及びhRETのmRNA発現をqPCRにより測定した。トランスフェクトが成功したクローンを選び、MIC-1との結合について試験した(図15及びTable13(表13))。
【0154】
(実施例6):MIC-1の細胞ベースin vitro活性アッセイ
wtMIC-1及びMIC-1化合物は、BHK21-hGFRAL-IRES-hRET安定細胞においてERK1/2両方のリン酸化を誘導した(Table8(表8))。結果から、MIC-1、GFRAL及びRETの三元複合体がRETタンパク質チロシンキナーゼをリン酸化し、ERK1/2のリン酸化により、ERK/MAPK経路を含むシグナル経路を介してMIC-1のin vivo活性を誘導すると結論付けられる。
【0155】
BHK21-hGFRAL-IRES-hRETを使用したMIC-1化合物スクリーニングの結果をTable8(表8)に示す。N-伸長部のみを有するMIC-1化合物又は配列内突然変異のみを有するMIC-1アナログは、wtMIC-1に等しいかより大きいin vitro活性を実現した。また、N-伸長部及び配列内突然変異の組合せでも同様の活性が実現された。
【0156】
【表8A】
【0157】
【表8B】
【0158】
MIC-1の溶解性増大は、MIC-1ポリペプチドをヒト血清アルブミン(HSA)とともにN末端に融合させることでも実現可能である。HSA融合によりMIC-1の溶解性が増大しうることが知られている。このようなHSA-MIC-1融合タンパク質2種を、in vitro活性について試験した(Table9(表9))。
【0159】
【表9】
【0160】
効力が有意に失われたことが観察され、ゆえに、高い溶解性を有するこれらのMIC-1融合タンパク質が受容体効力を維持していなかったことが実証された。
【0161】
in vivo有効性
(実施例7):痩せたSprague Dawleyラットにおける、食物摂取量に対するMIC-1化合物の効果
本発明のMIC-1化合物のin vivo有効性を、9~11週齢の痩せたオスのSprague Dawleyラットで測定した。用量8nmol/kg体重(HSA-MIC-1融合タンパク質2種については4nmol/kg)で1日1回、暗期開始1~2時間前に動物に注射した。化合物は適切な緩衝溶液として皮下に投与した(1~4ml/kg)。食物摂取量の変化を自動食物モニタリングシステム(ラット用BioDAQシステム及びHM2システム)で測定した。BioDAQシステムでは動物を単独で収容した。HM2システムでは動物を群で、ケージあたり動物最大3匹で収容した。各化合物を動物n=4~8匹で試験した。実験前の少なくとも7日間、動物を順化させた。収集されたデータは、毎日12時間の暗期開始から翌日の暗期まで測定された1日食物摂取量(24時間食物摂取量)として表される。投与された化合物に応答しての毎日の食物摂取量変化を、治療群の平均1日食物摂取量から溶媒群の平均1日食物摂取量を差し引いて計算した。studentの両側t検定()を使用し、pが0.1未満であれば変化を有意であるとみなした。結果は、研究期間中記録された、溶媒と比較した食物摂取量の「最大減少」(パーセンテージ)として表される。データは、研究期間中の、食物摂取量の有意な(p<0.1)1日の減少(パーセンテージ)の合計としての、食物摂取量の「累積減少」としても表される。
【0162】
【表10】
【0163】
発明者らは驚くべきことに、これらのMIC-1化合物が分子の溶解性を増大させるだけでなく、wtMIC-1に等しいかより良好な有効性を生じることを発見した(Table10(表10))。例えば、配列番号105及び配列番号106による化合物は、皮下投薬で、wtMIC-1より40~50%大きい最大及び累積in vivo有効性を有していた。配列番号92、配列番号104、配列番号105及び配列番号106による化合物が全て、wtMIC-1と比較して上昇した溶解性及び有意により大きいin vivo有効性を有していたことから、有効性の増大は溶解性の増大に更に関連していた。この相関関係は、配列番号105による化合物を除いて、Table10(表10)の化合物全てがwtMIC-1と同等のEmaxを有していたことから、in vitro Emaxの変化では説明されないと考えられる。実際、化合物配列番号105はwtMIC-1よりも小さいEmaxを有していたが、in vivoではwtMIC-1より有効性が高かった。また、化合物はいずれもwtMIC-1と異なるEC50を有していなかったため、化合物間でin vitro効力は同等であった。したがって、in vivo有効性の増大と溶解性の増大が関連していることは驚くべきことであり、in vitroでの受容体活性化増大の変化だけでは説明できない。
【0164】
(実施例8):様々な12-merブロックのMIC-1発現及び最初のMet除去効率
人体では、N-ホルミル-メチオニンが、外来性の物質又は損傷細胞により放出される警告シグナルとして免疫系に認識され、可能性のある感染症に対して戦うよう体を刺激する(Pathologic Basis of Veterinary Disease5: Pathologic Basis of Veterinary Disease、By James F. Zachary、M. Donald McGavin)。更に、メチオニンは容易に酸化されうる不安定な残基である。したがって、N-Met切断効率はMIC-1発現にとって非常に重要である。
【0165】
12merには4種の異なる型があり、その全てが3個のSer、2個のPro、2個のGly、2個のThr、2個のGlu及び1個のAlaから構成される。しかし、各反復における12個の残基は異なって配置される。
【0166】
発現レベル及びN-Met切断効率に対する様々な12merの効果についてはほとんど知られていない。したがって、単一及び二重の12merでそれぞれ始まるMIC-1化合物の体系的な研究がきわめて必要である。
【0167】
pET11b由来のベクターにMIC-1化合物のcDNAをサブクローニングした。大腸菌において、細胞密度がOD600 1.0に達すると、0.5mMイソプロピルβ-d-チオガラクトシド(IPTG)により、封入体又は可溶性タンパク質としてのMIC-1化合物の過剰発現を誘導した。TBにおいて37℃で20h継続的に増殖させた後細胞を採取し、緩衝液A(20mMトリス、pH8.0)中でソニケーションした。生じた混合物を10,000gで20分間高速回転させ、LC/MS及びSDS-PAGEで分析して分子量を確認した。
【0168】
発酵を流加プロセスで、添加物質としての既知組成培地において実施した。発酵収量は異なる化合物によって主に決まり、化合物ごとに1g/L~8g/Lと様々であった。
【0169】
単一12mer試験用に設計された化合物及び結果をTable11(表11)及び図1に示す。
【0170】
【表11】
【0171】
二重12merを有する化合物をTable12(表12)に列挙し、結果も示す(Table12(表12)及び図2を参照のこと)。
【0172】
【表12】
【0173】
結論として、12mer-1ブロックで始まるN-伸長部は大腸菌で発現されなかった。その他の12merブロックについてはタンパク質発現が実現したが、最初の配列としての12mer-4のみが完全なメチオニン切断を生じた。更に、12mer-2系のN-met切断効率は12mer-3系より良好である。
【0174】
(実施例9):2*又は2.5*12mer N-伸長部を有するMIC-1ペプチド化合物の発現レベル及び封入体比
(1)2.5*12mer N-伸長部を有するMIC-1化合物の発現
タンパク質産生方法については実施例8を参照のこと。結果をTable13(表13)、図3及び図4に示す。
【0175】
【表13A】
【0176】
【表13B】
【0177】
伸長された12mer(6aa)はN末端から24aa離れて位置するが、MIC-1化合物の発現レベルは異なる群間で大いに変動する。12mer-1由来の断片は発現に適していないことが明らかであり、このことはこれまでの結果と一致する。12mer-(4+_+3.6)及び-(4+_+4.6)の平均発現レベルはその他のものより比較的大きい。
【0178】
(2)2*又は2.5*12mer N-伸長部を有するMIC-1化合物の封入体比
大規模タンパク質産生において、封入体は通常、主にそのより良好なスケールアップ特性のため良好な選択肢と考えられ、スケールアップ特性には主に、高い発現レベル、簡便な回収工程及び高い純度、プロテアーゼ抵抗性及び良好なプロセス安定性が含まれる。
【0179】
MIC-1化合物は封入体又は可溶性形態のいずれかとして発現させることができ、これは主に化合物のpI及び伸長部の長さによって決まる。結果をTable14(表14)及び図4に示す。
【0180】
【表14】
【0181】
配列内突然変異を有するMIC-1化合物の溶解性について、Table15(表15)及び図5(骨格はMIC-1 del(1~3))に示す。
【0182】
【表15】
【0183】
12mer-(4+2+_)、-(4+4+_)、及び-(4+3+_)で始まるMIC-1化合物を、封入体を発現する能力を用いて研究した。pIが5.1を超えると封入体比が90%を超えることが示された。更に、配列内突然変異M57E/H66Eを有するMIC-1化合物は主に可溶性画分を発現した。
図1
図2
図3
図4
図5
【配列表】
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