IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ テルモ カーディオバスキュラー システムズ コーポレイションの特許一覧

<>
  • 特許-膜から弁尖を準備するための機器 図1
  • 特許-膜から弁尖を準備するための機器 図2
  • 特許-膜から弁尖を準備するための機器 図3
  • 特許-膜から弁尖を準備するための機器 図4
  • 特許-膜から弁尖を準備するための機器 図5
  • 特許-膜から弁尖を準備するための機器 図6
  • 特許-膜から弁尖を準備するための機器 図7
  • 特許-膜から弁尖を準備するための機器 図8A
  • 特許-膜から弁尖を準備するための機器 図8B
  • 特許-膜から弁尖を準備するための機器 図8C
  • 特許-膜から弁尖を準備するための機器 図9
  • 特許-膜から弁尖を準備するための機器 図10
  • 特許-膜から弁尖を準備するための機器 図11
  • 特許-膜から弁尖を準備するための機器 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-21
(45)【発行日】2022-01-31
(54)【発明の名称】膜から弁尖を準備するための機器
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/24 20060101AFI20220124BHJP
【FI】
A61F2/24
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018562060
(86)(22)【出願日】2017-05-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-06-24
(86)【国際出願番号】 US2017034715
(87)【国際公開番号】W WO2017205760
(87)【国際公開日】2017-11-30
【審査請求日】2020-05-25
(31)【優先権主張番号】62/342,483
(32)【優先日】2016-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500204326
【氏名又は名称】テルモ カーディオバスキュラー システムズ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100137039
【弁理士】
【氏名又は名称】田上 靖子
(72)【発明者】
【氏名】ツボウチ,タケシ
(72)【発明者】
【氏名】カディコフスキ,ランダル
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0089655(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0035720(US,A1)
【文献】米国特許第03532016(US,A)
【文献】特表平09-507771(JP,A)
【文献】特開昭62-227352(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/24
A61B 17/322
B26F 1/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織シートから心臓血管弁再建のための弁尖を準備するためのデバイスであって、
選択された弁尖寸法を有する所定のパターンを切断するように適合されたカッターと、
前記カッターの配置に応答して弁尖に縫合位置をマーキングするように前記所定の切断パターンと自動的に位置合わせされる組織マーカと
を備え、
膜からの弁尖の切断と前記弁尖における前記縫合位置のマーキングとが、同時に達成され
前記デバイスは、
所望の弁尖形状に概ね一致した基板であって、前記所定のパターンに従った底溝を含み、前記カッターが、前記底溝に取り付けられた切断ブレードを備え、前記基板が、前記縫合位置に従った複数の開口を含み、前記組織マーカが、それぞれの前記開口に各々が取り付けられた複数のインク塗布器を備える、基板と、
前記インク塗布器を、前記開口を通して下向きに伸長するように押圧するスラスト面を含む、前記基板に滑動可能に取り付けられたプランジャと、
上方位置に向けて前記スラスト面を付勢するバイアス部材と
をさらに備え、
前記組織シートに対して前記基板を手動で押圧することにより、前記切断ブレードの前記所定のパターンが切断され、切断された弁尖が前記切断ブレード内に留まっている間に、前記プランジャを手動で押圧することにより、前記縫合位置がマーキングされる、デバイス。
【請求項2】
前記インク塗布器の各々が、前記上方位置における前記スラスト面に対して前記インク塗布器を後退させるバイアスばねを含む、
請求項に記載のデバイス。
【請求項3】
前記プランジャが、硬質上部領域と、前記スラスト面を提供する弾性底部領域とを備える、
請求項に記載のデバイス。
【請求項4】
前記硬質上部領域が、前記基板に滑動可能に装着された取り付けシャフトを含む、
請求項に記載のデバイス。
【請求項5】
心臓血管弁再建のための弁尖を準備するためのデバイスであって、
所望の弁尖寸法に概ね一致した基板であって、前記所望の弁尖寸法に対応した所定のパターンに従った底溝を含み、前記所望の弁尖寸法のための所定の縫合位置のパターンに従った複数の開口を含む、基板と、
前記底溝に取り付けられた切断ブレードと、
それぞれの前記開口に各々が取り付けられた複数のインク塗布器と、
前記インク塗布器を、前記開口を通して下向きに伸長するように押圧するスラスト面を含む、前記基板に滑動可能に取り付けられたプランジャと、
上方位置に向けて前記スラスト面を付勢するバイアス部材と
を備え、
組織シートに対して前記基板を手動で押圧することにより、前記組織シートを通して前記切断ブレードの前記所定のパターンが切断され、切断された弁尖が前記切断ブレード内に留まっている間に、前記プランジャを手動で押圧することにより、縫合位置がマーキングされる、デバイス。
【請求項6】
前記インク塗布器の各々が、前記上方位置における前記スラスト面に対して前記インク塗布器を後退させるバイアスばねを含む、
請求項に記載のデバイス。
【請求項7】
前記プランジャが、硬質上部領域と前記スラスト面を提供する弾性底部領域とを備える、
請求項に記載のデバイス。
【請求項8】
前記硬質上部領域が、前記基板に滑動可能に装着された取り付けシャフトを含む、
請求項に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、弁修復/再建における使用のための心膜から心臓弁尖に対してマーキングおよび切断を行うことに関し、特に、正確さを高め、作業時間を短くする弁尖に対して同時にマーキングおよび切断を行うためのデバイスおよびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
一種の心臓手術が、心臓弁修復または置換に関係する。(例えば二尖弁または三尖弁における)弁尖を損傷した患者に対して、患者自体の心膜組織、ウシの組織、または合成材料を使用して弁尖を修復するための手術技術が存在する。人工合成弁は、良好な耐久性をもつが、抗凝固薬の継続使用を必要とする。患者から採取された心膜組織を使用して弁尖再建手術は、好ましい技術となりつつある。患者から採取された心膜組織の薄いシートは、置換される弁尖の要求寸法に従って切断および成形されなければならない切断された弁尖は、次に、罹患した弁尖の元の位置に縫い込まれる。この治療は、ウシ組織弁と比較してより長い寿命をもつと考えられ、この治療は患者自体の組織を使用するので、この治療は、拒絶反応に対して概して安全である。
【0003】
より具体的には、弁尖修復のための処置は、以下のステップを含み得る。循環支援切開部が作られ、灌流システム(すなわち、人口心肺装置)が接続される。対象心臓弁(例えば大動脈弁)が次に露出される。心膜組織の薄いシートが摘出され、知られた化学薬品を使用した処置により準備される。損傷した弁尖は切除される。新しい弁尖が装着される部位(例えば弁幅)を測定するために、採寸ツールが使用される。処理された心膜組織は、裏打ち板上に配置される。測定された寸法に対応した型とマーキングペンとを使用して、置換弁尖に対する所望の寸法および形状が組織シート上に謄写される。個々の縫合を形成するための位置(例えば最大15点)がさらにマーキングされ得る。謄写された弁尖は、はさみを使用して組織シートから手作業で切断および切除される。弁尖は弁輪に縫合され、弁尖の交連が縫合される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
切断および切除作業が実施される期間中、心臓が止められ、患者は、酸素供給器および血液ポンプを使用した外部循環により支援される。これは、体に好ましくない影響を与えるので、期間が最小化される必要がある。従って、より正確に成形された弁尖を取得することにより、治療のより良好な結果に寄与しながら、弁尖準備期間を最小化することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、様々なデバイスを提供し、各デバイス自体が、1つのユーザーの操作により所望の弁尖寸法で切断することと、縫合位置をマーキングすることとの両方が可能である。一例において、心臓血管弁再建のために弁尖を準備するためのデバイスは、「クッキーカッター」ブレードをもつ打ち抜き加工機またはエンボス加工機に似ている。デバイスは切り刃を組織マーカと組み合わせ、膜からの弁尖の切断が、弁尖に縫合位置をマーキングするのと同時に達成される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の第1の実施形態による切断/マーキングデバイスの斜視図である。
図2】本発明の第1の実施形態による切断/マーキングデバイスの斜視図である。
図3】本発明の第1の実施形態による切断/マーキングデバイスの斜視図である。
図4図1に示すデバイスの分解図である。
図5】基板およびインク塗布器の分解図である。
図6】基板およびインク塗布器の部分断面図である。
図7】さらに詳細にプランジャおよび基板の搭載を示す断面図である。
図8A図8Aは、図1に示すデバイスを使用して弁尖に対して同時に切断およびマーキングを行う手順を示す図である。
図8B図8Bは、図1に示すデバイスを使用して弁尖に対して同時に切断およびマーキングを行う手順を示す図である。
図8C図8Cは、図1に示すデバイスを使用して弁尖に対して同時に切断およびマーキングを行う手順を示す図である。
図9】切断/マーキングデバイスの代替的な実施形態を示す断面図である。
図10】切断およびマーキング謄写器を含む別の一実施形態の斜視図である。
図11】運動制御テーブルを含む別の一実施形態の斜視図である。
図12】レーザマーキングおよび切断システムを含む別の一実施形態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
「クッキーカッター」タイプの弁尖切断およびマーキングデバイス10の第1の実施形態が図1図7に示される。図1図3を参照すると、基板11は、底側において切断ブレード12を支持するための枠を提供する。好ましくは、基板11は所望の弁尖形状に概ね一致し、所望の弁尖形状よりわずかに大きい。切断ブレード12は、選択された弁尖寸法に従った、正確に構成された切断パターンに沿った切り刃を提供する。複数の異なる寸法の切断デバイスを含むキットが手術処置を支援するためにひとまとめにされ得るように、好ましくはデバイス10が構成される特定の寸法がデバイスに表記され得る。基板11は、基板11の上空洞内における上向きおよび下向きの動きのために滑動可能に取り付けられたプランジャ13を受容する上空洞を含む。基板11は、プランジャ13の制御下で伸張可能な複数のインク塗布器15を受容する適切に配置された開口を含む底壁14を含む。
【0008】
図4を参照すると、基板11は、切断ブレード12を固定して搭載する底溝25を含む。基板11の底壁14は、インク塗布器15のうちのそれぞれ1つを各々が受容するように構成された複数の開口24を含む。各インク塗布器15は、ばね荷重基体21、ペン本体22、およびマーキング先端23を含む。開口24は、ペン本体22を収容するように寸法決めされる。ばね基体21は、プランジャ13のスラスト面30に当接するように構成される。バイアス部材(例えばばね)26は、上方位置に面30を付勢するために、壁14とスラスト面30との間に位置し、塗布器先端23は、切断側から最も遠い位置に後退させられる。プランジャ13は、好ましくは、硬質上部領域16と弾性底部領域または層17とを含み得る。弾性領域17は、インク塗布器15との界面を衝撃吸収し、ゴムシートを含み得る。硬質上部領域16は、壁14内の孔20に向けて延びた取り付けシャフト18と一体的に形成される。シャフト18の底部端部の係止タブ19は、孔20内の係止面と連結し得る。
【0009】
図5を参照すると、基板11の上空洞26は、インク塗布器15を受容する。各開口24は肩部27を含み、インク塗布器15のばね基体21を、ばね基体21と肩部27との間において干渉することにより空洞26内に保持する。カラー28は、ばね26の一端部を位置合わせするように、および保持するように、ならびに、図6に示される係止タブ19を受容するための内部係止面29を提供するように適応される。カラー28と位置合わせした状態でプランジャ13を滑動可能に保持するための構成が、図7においてさらに詳細に示される。
【0010】
本発明を使用した弁尖の準備が図8A図8Cに示される。図8Aにおいて、心膜シート35がまず準備され、執刀医が患者の大動脈構造物を測定して、所望の弁尖寸法を決定する。所望の弁尖寸法のための測定された寸法に適合するデバイス10が選択されて、シート35に接触させられる。図8Bに示されるように、シート35およびデバイス10は、好ましくは、硬質裏打ち板36の上に配置される。基板11に押圧力37を手動で印加することにより(すなわち、プランジャ13に圧力を印加せずに)、切断ブレード12がシート35を突き抜けることにより、所望の寸法の弁尖を迅速に、および正確に切断する。図8Cに示されるように、デバイス10を除去せずに、プランジャ13に対する下向きの押圧力38を使用して対応する縫合位置のマーキングが同時に実施される。その結果、インク塗布器が(主バイアス部材および個々のインク塗布器ばね基体により生成される)ばねバイアス力に対抗して、切断された弁尖に接触して、インク塗布器の配置により規定された所望の縫合位置をマーキングするまで動かされる。
【0011】
図9に示されるように、プランジャ40は、上部領域41と弾性底層42とを含み得る。インク塗布器15の位置合わせを改善するために、ソケット43は、それぞれのインク塗布器の一端部を受容する直径をもつ層42内の窪みまたは孔として形成され得る。
【0012】
図10に示される一実施形態において、支持板50は、患者から採取された心膜シートまたは膜51を受容する。(例えば薄い生体適合金属板を含む)謄写板52は、所定の寸法の弁尖の輪郭に沿った一連の溝またはスロット53を含む。測定された寸法に適合する謄写板が選択され得るように、手術セットは様々な弁尖寸法のために構成された複数の謄写板を具備する。謄写板52は、謄写板52を突き抜けた、およびマーキングペン55を収容するのに十分な直径をもつ一連のマーキング孔54をさらに含む。溝53は、切削工具57の切断ブレード56を収容するように適応された幅をもつ。シート51に対して謄写板52を押圧しながら、所望の弁尖の輪郭が手作業で切断され得るように、ブレード56がハンドル58に取り付けられる。溝53を不連続にする接続ブリッジ60が必要とされ得るが、ブリッジ60の下方における対応する切断は、謄写板52を除去した後、シート51に簡単に実行され得る。代替的な実施形態において、異なる寸法の弁尖のための溝およびマーキング孔が、含まれる機能部(すなわち、縁部および孔)が重ならないことを条件として、単一の謄写板において提供され得る。
【0013】
図11に示す一実施形態において、支持板65は、患者から採取された心膜シートまたは膜66を受容する。プログラム可能制御装置(図示されない)に応答して、搬送体68から縦方向に伸張可能な、切断ブレード70とマーキングペン71とを支持する搬送体68を含むX-Y運動制御機構67が提供される。サーボ機構がブレード70およびペン71の位置を平行移動させて、任意の所望のパターンをたどり、所望の弁尖を生成(すなわち、切断およびマーキング)し得るように、搬送体68が可動アーム72に滑動可能に取り付けられる。ペン71は、管74によりインク容器73に接続されたインクジェットヘッドを備え得る。制御装置は、特定の患者の必要性に従って選択される様々な望ましい弁尖形状および寸法に従った既定のパターンのライブラリを含み得る。
【0014】
図12に示す一実施形態において、支持板80は、患者から採取された心膜シートまたは膜81を受容する。シート81から所望の弁尖を形成するための切断およびマーキングは、レーザファイバー83によりレーザ出力ユニット(LPU:laser power unit)84に接続されたレーザ走査デバイス82(例えばNd-YAGレーザ)を使用して実施される。走査デバイス82は、異なる寸法の弁尖のために予めプログラムされたパターンに従ってレーザビーム86を走査するための、運動制御を伴うポリゴンミラーユニット85を備え得る。LPU84は、2つの異なる電力レベルを提供し、高い方の電力レベルは、弁尖を切断(すなわちアブレーション)するために弁尖縁部を走査している間に使用され、低い方の電力レベル(より小さな振幅の、またはより短い時間のパルス)は、大幅な突き抜けなく視認可能な表面の焼け跡を生成するために、縫合マーカの位置にレーザビーム86を配置している間に使用される。代替的な実施形態において、レーザ投影レンズは、所望の経路に沿ったレーザビームを走査するために、図11に示されるタイプのX-Y運動制御機構に搭載され得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図9
図10
図11
図12