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  • 特許-電動コンプレッサ用気密端子 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-21
(45)【発行日】2022-01-31
(54)【発明の名称】電動コンプレッサ用気密端子
(51)【国際特許分類】
   H01R 9/16 20060101AFI20220124BHJP
   H01R 43/20 20060101ALI20220124BHJP
   F04B 39/00 20060101ALI20220124BHJP
   H01B 17/58 20060101ALI20220124BHJP
   H01B 3/40 20060101ALI20220124BHJP
   H01B 3/44 20060101ALI20220124BHJP
   H01B 3/28 20060101ALI20220124BHJP
   F16J 15/10 20060101ALI20220124BHJP
【FI】
H01R9/16 101
H01R43/20 Z
F04B39/00 106A
H01B17/58 B
H01B3/40 C
H01B3/44 C
H01B3/28
F16J15/10 U
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019027673
(22)【出願日】2019-02-19
(65)【公開番号】P2020136061
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2020-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】300078431
【氏名又は名称】ショット日本株式会社
(72)【発明者】
【氏名】前川 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】本田 浩喜
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 明
(72)【発明者】
【氏名】福島 大輔
【審査官】山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】実開平03-114582(JP,U)
【文献】実公昭51-009697(JP,Y1)
【文献】特開2010-168914(JP,A)
【文献】特開平04-132885(JP,A)
【文献】特開平06-185463(JP,A)
【文献】特開平05-144493(JP,A)
【文献】特開2015-187963(JP,A)
【文献】特開2013-148037(JP,A)
【文献】特開平08-135572(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 9/16
H01R 43/20
F04B 39/00
H01B 17/58
H01B 3/40
H01B 3/44
H01B 3/28
F16J 15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1個の封着孔を有した金属ベースと、前記金属ベースの前記封着孔に挿通したリードと、前記金属ベースと前記リードとを気密に封着する絶縁材とを備えた気密端子において、少なくとも前記気密端子を取り付ける耐圧容器の内側に配置され冷媒と接触する前記気密端子の表面に前記リードの先端部を除いて隙間なく覆った断熱体の被覆面を設け、さらに前記断熱体のリード被覆面に、前記断熱体の外周を周回する突起をさらに設けたことを特徴とする気密端子。
【請求項2】
前記突起は、複数設けられたことを特徴とする請求項に記載の気密端子。
【請求項3】
前記突起は、間隔をあけて設けられことを特徴とする請求項に記載の気密端子。
【請求項4】
少なくとも1個の封着孔を有した金属ベースと、前記金属ベースの前記封着孔に挿通したリードと、前記金属ベースと前記リードとを気密に封着する絶縁材と、さらに前記金属ベースを取り付ける耐圧容器の内側に配置されて冷媒と接触する部位の前記金属ベースと前記リードと前記絶縁材の表面を覆った断熱体の被覆とを備えた気密端子であって、前記断熱体は、一端は少なくともインナ側の前記リードの外径表面に施され軸方向に沿って先端方向に所定の長さになるまで延伸されており、もう一端は前記絶縁材の表面全体を覆って、さらに、前記金属ベースの前記封着孔端を超え、少なくとも前記金属ベースの表面を、前記金属ベースが取付けられた前記耐圧容器の端子取付孔の内壁面に到達するまでの範囲にわたって被覆し、かつ前記断熱体のリード被覆面に、前記断熱体の外周を周回する突起をさらに設けたことを特徴とする気密端子。
【請求項5】
前記突起は、その断熱体の被覆の所定表面に、前記耐圧容器の内側に配置された電動機の配線コードに繋がるコネクタの内径に合致し、かつ、前記コネクタの内径部に冷媒および潤滑油が進入しない様に前記断熱体の外周を周回する突起を設けたことを特徴とする請求項に記載の気密端子。
【請求項6】
前記突起は、複数設けられたことを特徴とする請求項または請求項に記載の気密端子。
【請求項7】
前記突起は、間隔をあけて設けられことを特徴とする請求項に記載の気密端子。
【請求項8】
少なくとも1個の封着孔を有した金属ベースと、前記金属ベースの前記封着孔に挿通したリードと、前記金属ベースと前記リードとを気密に封着する絶縁材と、さらに前記金属ベースを取り付ける耐圧容器の内側に配置されて冷媒と接触する部位の前記金属ベースと前記リードと前記絶縁材の表面を覆った断熱体の被覆とを備え、前記断熱体は、一端は少なくともインナ側の前記リードの外径表面に施され軸方向に沿って先端方向に所定の長さになるまで延伸されており、もう一端は前記絶縁材の表面全体を覆って、さらに、前記金属ベースの前記封着孔端を超え、少なくとも前記金属ベースの表面を、前記金属ベースが取付けられた前記耐圧容器の端子取付孔の内壁面に到達するまでの範囲にわたって被覆し、かつ前記断熱体のリード被覆面に、前記断熱体の外周を周回する突起をさらに設けた気密端子を有する耐圧容器。
【請求項9】
前記突起は、その断熱体の被覆の所定表面に、前記耐圧容器の内側に配置された電動機の配線コードに繋がるコネクタの内径に合致し、かつ、前記コネクタの内径部に冷媒および潤滑油が進入しない様に前記断熱体の外周を周回する突起を設けた請求項に記載の耐圧容器。
【請求項10】
前記突起は、複数設けられたことを特徴とする請求項または請求項に記載の耐圧容器。
【請求項11】
前記突起は、間隔をあけて設けられことを特徴とする請求項10に記載の耐圧容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は気密端子に関し、より詳細には、車載用電動圧縮機に用いる気密端子に関する。
【背景技術】
【0002】
気密端子は、アイレットまたは金属ベースの挿通孔にガラス絶縁材を介してリードを気密に封着したもので、気密容器内に収容された電気機器や素子に電流を供給したり、電気機器や素子から信号を外部に導出したりする場合に用いられる。例えば、冷蔵庫やエアコンの圧縮機に用いられる気密端子は、国際公開WO2010/117000号公報(特許文献1)に示されるように、天板部、この天板部の外周端から下方に向かって延びる筒状部、この筒状部の下端から斜め外方に広がったフランジ部、及び天板部から内方側に向かって延びるリード封着孔を形成する3個の小筒部を備えた金属ベースが用いられている。そして、この金属ベースのリード封着孔にそれぞれ封着用のガラス絶縁材を介して封着されたリードが気密封着される。
【0003】
ところで、ハイブリッド自動車では、エンジンによる環境への影響を軽減するという本来の目的から、自動車が信号などで一時停止する場合にはエンジンが停止する構成となっているものがある。このような場合、エンジンで駆動する圧縮機を用いていると、車が停止する度に空調が止まることになり、夏季や冬季、極寒や極暑の地では特に問題になる。そこで、ハイブリッド自動車や電気自動車では、エンジンで駆動する圧縮機ではなく電動機で駆動する圧縮機、すなわち屋内用エアコンと同様に圧縮機構を電動機とともに気密容器に内蔵した電動機内蔵の圧縮機が採用されている。これらの車載用電動圧縮機は、狭隘なエンジンルームへの設置を考慮して、出来るだけ省スペースかつ小型軽量のものが好ましい。電動機は気密容器の端子取付孔に取付けた気密端子を通じて駆動されるので、用いられる気密端子も、例えば、中国実用新案登録CN206098769U号公報(特許文献2)に示されるように、省スペースに有利なように直列一線状にピン配置されたものが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開WO2010/117000号公報
【文献】中国実用新案登録CN206098769U号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車載電動圧縮機は、冷媒および潤滑油と電動機を収容した気密容器の端子取付孔に気密端子を取付け、電源から気密端子を通して電動機に電気を供給して冷媒を圧縮、循環させて車内外の熱交換に利用している。このとき、気密端子は容器内側の冷媒と接触するためと金属表面が冷却されて、容器外側の端子リードや金属ベースの表面が結露してしまうことが有り電気絶縁上好ましくなかった。また、従来の気密端子にリードや金属ベースの表面結露を防止するという発想はなかった。これまで冷凍機用気密端子において、容器外側の金属ベースとアウタリードとに電気絶縁性を向上させる目的でシリコーンゴムなどの絶縁被覆を設けることがあったが、シリコーンゴムは、耐冷媒性、耐油性を備えておらず容器内側に適用することはできない。一方、その他の断熱材においても耐冷媒性、耐油性と電気絶縁性を同時に満足する比較的廉価な断熱材素材はなく、車載電動圧縮機の表面結露の解決に好適ではなかった。
【0006】
本発明は、車載電動圧縮機において端子表面の結露がない気密端子および耐圧容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、封着孔を有した金属ベースと、この金属ベースの封着孔に挿通したリードと、金属ベースとリードとを気密に封着する絶縁材とを備え、少なくともこの気密端子を取り付ける容器内側の冷媒と接触する表面に断熱体を設けたことを特徴とする気密端子が提供される。断熱体は、耐冷媒性および耐油性を有する電気絶縁材からなる。必要に応じて、断熱体の所定表面には電動機への配線コネクタの内径に合致するように断熱体の外周を周回する突起を設けることができる。気密端子のインナ側の露出表面を断熱体で遮蔽することにより、気密端子の金属表面が冷媒と接触しないようになる。金属ベースやリードの表面が冷媒によって冷却されることがないので、気密端子のアウタ側の結露を防止できる。
【発明の効果】
【0008】
本開示の発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、次のとおりである。本開示の一実施形態によれば、気密端子の結露を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る気密端子10を示し、(a)はインナ側平面図を、(b)は正面図を、(c)はアウタ側下面図を、(d)は側面図を示す。
図2】本発明に係る気密端子20を示し、(a)はインナ側平面図を、(b)は正面図を、(c)はアウタ側下面図を、(d)は側面図を示す。
図3】本発明に係る気密端子の耐圧容器への取付け状態を示し、(a)は電動機のコネクタを外して耐圧容器のインナ側から見た平面図を、(b)は耐圧容器正面の部分断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る気密端子は、少なくとも1個の封着孔を有した金属ベースと、この金属ベースの封着孔に挿通したリードと、金属ベースとリードとを気密に封着する絶縁材とを備え、少なくともこの気密端子を取り付ける耐圧容器の内側に配置され冷媒と接触する気密端子の表面に断熱体を設けたことを特徴とする。必要に応じて、断熱体の所定表面には電動機への配線コネクタの内径に合致するように断熱体の外周を周回する突起を設けることができる。気密端子のインナ側の露出表面を断熱体で覆ったことにより、少なくとも気密端子の金属表面に冷媒が直接接触することがない。このため気密端子のアウタ側の金属ベースやリードの表面が冷媒によって冷却されることがなく結露を防止できる。
【0011】
本発明に係る断熱体は、耐冷媒性および耐油性を有する電気絶縁材からなり、特に限定されないが、ゴム、エラストマー、プラスチックまたは、これらを複合させた複合材または複合構成体を利用でき、例えばHNBR(水素化ニトリルゴム)、EPDM(エチレン‐プロピレン‐ジエンゴム)、エポキシ樹脂、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン樹脂)が好適に利用できる。
【0012】
断熱体の物性低下を防止する安定剤にカーボンブラックを添加することがある。しかし、カーボンブラックの含有量が多すぎると断熱体の電気絶縁性や耐電圧性が低下することがある。本発明に係る断熱体は、気密端子の電気絶縁性や耐電圧性の要求特性を満足させるためにカーボンブラックの添加量を限りなく低減させる必要がある。例えば、一般にHNBRのゴムに耐冷媒性、耐油性を付加させる場合、カーボンブラックを数%から10%未満の範囲で添加したものが使われるが、本発明の気密端子用の断熱体に用いるHNBRは、絶縁性向上のためカーボンブラックフリーあるいはカーボンブラックレスの低減配合とし、これにシリカ、珪酸マグネシウムの何れか1つ以上の無機フィラーを1~5質量%添加したものが好ましい。より好ましくは、前記気密端子用の断熱体組成物に、芳香環1個にフェノール性水酸基1個の基本骨格を有するモノフェノール系酸化防止剤、芳香環2個を有し各芳香環にフェノール性水酸基1個の基本骨格を有するビスフェノール系酸化防止剤、芳香環1個にフェノール性水酸基2個の基本骨格を有するポリフェノール系酸化防止剤の何れか1つ以上のヒンダードフェノール系老化防止剤(酸化防止剤)をさらに10質量%未満含有させたものを利用するのがよい。
【0013】
本発明の気密端子10は、図1に示すように、封着孔を有した金属ベース11と、金属ベース11の封着孔に貫通したリード12と、金属ベース11とリード12とを気密に封着するガラス絶縁材13とを備え、少なくとも気密端子10を取り付ける容器内側に配置され冷媒と接触する部位の金属ベース11とリード12と絶縁材13の表面を覆った断熱体14の被覆を設けたことを特徴とする。図3に示すように、気密端子10は、冷媒と潤滑油とともに電動機を収めた耐圧容器35の端子取付孔36に螺旋37などの固定手段で気密に固定される。断熱体14の被覆の所定表面には、耐圧容器35の内側に配置された電動機の配線コード38に繋がるコネクタ39の内径に合致し、かつ、このコネクタ39の内径部に冷媒および潤滑油が進入しない様に断熱体の外周を周回する突起を設けることができる。気密端子10のインナ側(a)の露出表面を断熱体14で覆ったことにより、気密端子10の金属表面およびガラス絶縁材13に冷媒が接触しないようになる。断熱体14は、少なくとも耐圧容器35に設けられた端子取付孔36の内側の気密端子10の表面全体を、インナ側(a)のリード12先端部を除いて隙間なく覆うように設けられる。前記インナ側リード12の先端部は、電動機への接続のためコネクタ39に全体が挿入されてしまうので、気密端子10の金属ベースやリードの表面が冷媒に触れて冷却されることがなく、アウタ側(c)の結露を防止できる。断熱体14は、耐冷媒性および耐油性を有する電気絶縁材であれば何れの材料を用いてもよく、例えばHNBR、EPDMなどのゴムが好適である。電気絶縁性が1011[Ω・cm]とやや劣るHNBRなどの断熱体14においては、カーボンブラックフリーまたはカーボンブラックレスのカーボンブラックを低減した配合とし、これにシリカ、珪酸マグネシウムの何れか1つ以上の無機フィラーを1~5質量%添加したものが好ましい。さらにモノフェノール系酸化防止剤、ビスフェノール系酸化防止剤、ポリフェノール系酸化防止剤の何れか1つ以上のヒンダードフェノール系老化防止剤をさらに10質量%未満含有させたものを利用するのがよい。HNBRの断熱体14の組成物を前記範囲内としたことで、HNBRの電気絶縁性を1015[Ω・cm]程度に向上させることができる。本発明の気密端子10は、少なくとも冷媒と接触する部位に耐冷媒、耐油性の断熱体14の被覆を設け、かつ断熱体14に電気絶縁性を持たせたことで、結露防止のみならずインナ側(a)の金属ベース11とリード12との沿面距離を増大させて気密端子10の耐トラッキング性、電気絶縁性、耐電圧性も同時に向上させることができる。また、本発明の気密端子10は、図3に示すように、インナ側(a)のリード12周辺の断熱体14の外形を、これを取付けるコネクタ39の内径に合致させることにより、リード接続部を含むコネクタの内部に低絶縁物である潤滑油(特にPAG[ポリアルキレングルコール]オイルは絶縁性が低い)等が進入しないように密栓することができる。これにより、潤滑油による気密端子10の絶縁低下も防ぐことができる。
【実施例
【0014】
本発明に係る実施例1の気密端子10は、図1に示すように、螺旋止めのため設けた複数の通孔100および直線上に配置した3個の封着孔を有した炭素鋼の金属ベース11と、金属ベース11の封着孔に挿通したFe-Cr鉄基合金製のリード12と、金属ベース11とリード12とを気密に封着するホウ珪酸ガラスの絶縁材13とを備え、気密端子10を取り付ける耐圧容器の内側に配置されて冷媒と接触する部位の金属ベース11とリード12と絶縁材13の表面を覆ったHNBR製の断熱体14の被覆を設けたことを特徴とする。断熱体14は、一端は少なくともインナ側(a)のリード12の外径表面に施され軸方向に沿って先端方向に所定の長さになるまで延伸されており、もう一端は絶縁材13の表面全体を覆って、さらに、金属ベース11の封着孔端を超えて、少なくとも金属ベース11表面の気密端子10を取付ける耐圧容器35の端子取付孔36内壁面に到達するまで被覆する。図1(a)のインナ側リード12の先端部は金属表面が露出しているが、先端部は、図3に示す耐圧容器35内の電動機に配線されるコネクタ39に挿し込まれるため使用状態において表面に露出しないようになっている。気密端子10のインナ側(a)の露出表面を全てHNBRの断熱体14で覆ったことにより、気密端子10の金属表面およびガラス絶縁材に冷媒と潤滑油が直に接触しないようになる。このため気密端子20のアウタ側(c)の金属ベース11やリード12の表面が冷媒によって冷却されることがなく結露を防止できる。断熱体14のHNBRは、カーボンブラックフリーまたはカーボンブラックレスのカーボンブラックを低減した配合とし、これにシリカ、珪酸マグネシウムの何れか1つ以上の無機フィラーを1~5質量%添加し、さらにモノフェノール系酸化防止剤、ビスフェノール系酸化防止剤、ポリフェノール系酸化防止剤の何れか1つ以上のヒンダードフェノール系老化防止剤をさらに10質量%未満含有させたものを用いて絶縁性を向上させており、インナ側(a)の金属ベース11とリード12との沿面距離を増大させることで耐トラッキング性、電気絶縁性、耐電圧性を向上させる。
【0015】
本発明に係る実施例2の気密端子20は、図2に示すように、螺旋止めのため設けた複数の通孔200および直線上に配置した3個の封着孔を有した炭素鋼の金属ベース21と、金属ベース21の封着孔に挿通したFe-Cr鉄基合金製のリード22と、金属ベース21とリード22とを気密に封着するソーダバリウムガラスの絶縁材23とを備え、気密端子20を取り付ける耐圧容器の内側に配置されて冷媒と接触する部位の金属ベース21とリード22と絶縁材23の表面を覆ったEPDM製の断熱体24の被覆を設けたことを特徴とする。断熱体24は、少なくともインナ側(a)のリード22の外径表面に施され軸方向に沿って先端方向に所定の長さになるまで延伸されており、絶縁材23の表面全体を覆って、さらに、金属ベース21の封着孔端を超え、少なくとも金属ベース21の表面を、これが取付けられた端子取付孔36の内壁面に到達するまでの範囲にわたって被覆する。断熱体24のリード被覆面には、気密端子20を取り付ける耐圧容器内側に配置された電動機に配線されるコネクタの内径に合致し、かつ、このコネクタの内径部に冷媒および潤滑油が進入しないようにし、かつコネクタが脱落し難いように前記リード被覆面の外周を周回する突起210を複数、間隔をあけて設けている。気密端子20のインナ側(a)の露出表面を全てEPDMの断熱体で覆ったことにより、気密端子の金属表面およびガラス絶縁材に冷媒と潤滑油が直に接触しないようになる。このため気密端子20のアウタ側(c)の金属ベース21とリード22の表面が冷媒によって冷却されることがなく結露を防止できる。実施例2の気密端子20は、断熱体24にEPDMを用いて耐冷媒性、特にPOE[ポリオールエステル]オイルに対する耐油性を満足させるとともに、インナ側(a)の金属ベース21とリード22との沿面距離を増大させて耐トラッキング性、電気絶縁性、耐電圧性を向上させる。
【0016】
本発明に係る気密端子は、図3に示すように、これを取り付ける耐圧容器35の内部に納められた電動機にリードを電気接続させた後、耐圧容器35の端子取付孔36に挿着され、螺旋37等で締結されて取付けることができる。
【0017】
本発明に係る気密端子のリードは、その表面に所望のめっき被覆を施すことができる。また、リードおよび金属ベースは、気密端子に利用可能な金属材であれば何れの材料を用いてもよい、例えばFe-Cr合金に限らず、Fe-Ni合金、炭素鋼、銅合金、アルミニウム合金等に変更してもよい。同様に実施例に記載の絶縁材は、リードと金属ベースとを電気絶縁および気密封着できればよく、ソーダバリウムガラスに限らず任意のガラス材を用いることができる。本発明の絶縁材は、必要ならば絶縁材の一部を互いに異なるガラス材で形成してもよく、また、さらに必要ならばガラス材の一部または全部をエポキシ樹脂等の樹脂材に替えてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明は、気密端子に利用でき、特に車載用の気密端子に利用できる。
【符号の説明】
【0019】
気密端子10、金属ベース11、リード12、絶縁材13、断熱体14、気密端子20、金属ベース21、リード22、絶縁材23、断熱体24、耐圧容器35、端子取付孔36、螺旋37、配線コード38、コネクタ39、通孔100、通孔200、突起210。
図1
図2
図3