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  • 特許-気液分離装置 図1
  • 特許-気液分離装置 図2
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  • 特許-気液分離装置 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-21
(45)【発行日】2022-01-31
(54)【発明の名称】気液分離装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/40 20060101AFI20220124BHJP
   B01D 53/42 20060101ALI20220124BHJP
   B01D 53/78 20060101ALI20220124BHJP
   B01D 45/08 20060101ALI20220124BHJP
【FI】
B01D53/40 200
B01D53/42 ZAB
B01D53/78
B01D45/08 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019061612
(22)【出願日】2019-03-27
(65)【公開番号】P2020157257
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2020-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】500483219
【氏名又は名称】パンパシフィック・カッパー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100134511
【弁理士】
【氏名又は名称】八田 俊之
(72)【発明者】
【氏名】森 正
【審査官】長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-217809(JP,A)
【文献】実開昭54-159479(JP,U)
【文献】特開2007-021426(JP,A)
【文献】特開平10-054338(JP,A)
【文献】実開昭63-020918(JP,U)
【文献】特開昭47-026379(JP,A)
【文献】特開昭60-118219(JP,A)
【文献】特開昭63-260981(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/34-53/85
B01D 53/92
B01D 53/96
B01D 45/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部を通過する排ガスを酸性液又はアルカリ性液により中和する洗浄塔に設けられ、中和された前記排ガスを前記洗浄塔の上方に導き、上端部近傍に形成された排出孔から略水平方向に向けて前記排ガスを排出す排出管と、
前記排出管の上端部を囲む空間を形成する器状の空間形成部材と、を備え、
前記排出管の上端部には、前記排出管の上端部を閉じ、前記排出管の上端部よりも略水平方向に広がる面を有し、前記排出孔から排出された前記排ガスを略水平方向にガイドし、前記排ガスを前記空間形成部材の周壁の前記排出孔に対向する箇所に当てて気液分離するガイド部材が設けられ、
前記空間形成部材の内部底面は、水平面に対して傾斜しており、前記空間形成部材の一部には、前記傾斜に沿って前記内部底面を流れる液体を回収する回収孔が形成されている、ことを特徴とする気液分離装置。
【請求項2】
前記内部底面の前記水平面に対する傾斜角は、5~20°であることを特徴とする請求項1に記載の気液分離装置。
【請求項3】
前記ガイド部材には、前記空間形成部材の強度を高める補強材が設けられている請求項1又は2に記載の気液分離装置。
【請求項4】
前記回収孔と前記排出管内又は前記洗浄塔内とを繋ぐ回収管を更に備える、請求項1~3のいずれか一項に記載の気液分離装置。
【請求項5】
前記洗浄塔内の前記排ガスが通過する箇所には、充填物が設けられ、前記充填物に対して前記酸性液又は前記アルカリ性液が噴射されることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の気液分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気液分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
酸性排ガス又はアルカリ性排ガスを洗浄(中和)する洗浄塔から排ガスを排出する場合、排ガスに液体が含まれる場合がある。この液体は中和に用いた酸性又はアルカリ性の液であるため、外部に放出されると周囲の建材等が腐食するなどの影響がある。したがって、排ガスから液体を分離したうえで、排ガスだけを外部に放出する必要がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、気水分離器が開示されている。この特許文献1の気水分離器は、ブロータンク排気管より導かれた水分を含んだ蒸気を横方向に噴出し、外管の壁面に当てることで、気水分離を行うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実公昭57-53610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の気水分離器では、蒸気から分離された水は、外管と下部板とにより形成される下部空間内に溜まり、排水口へと導かれる。しかしながら、酸性排ガス又はアルカリ性排ガスを中和する洗浄塔では、排出される排ガスに含まれる液体は、酸性液やアルカリ性液であるため、粘度が高い。したがって、特許文献1の気水分離器を利用した場合には、下部空間内に液体が溜まり続けるおそれがある。
【0006】
本明細書に記載の気液分離装置は、排ガスから分離した液体を回収しやすくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に記載の気液分離装置は、内部を通過する排ガスを酸性液又はアルカリ性液により中和する洗浄塔に設けられ、中和された前記排ガスを前記洗浄塔の上方に導き、上端部近傍に形成された排出孔から略水平方向に向けて前記排ガスを排出す排出管と、前記排出管の上端部を囲む空間を形成する器状の空間形成部材と、を備え、前記排出管の上端部には、前記排出管の上端部を閉じ、前記排出管の上端部よりも略水平方向に広がる面を有し、前記排出孔から排出された前記排ガスを略水平方向にガイドし、前記排ガスを前記空間形成部材の周壁の前記排出孔に対向する箇所に当てて気液分離するガイド部材が設けられ、前記空間形成部材の内部底面は、水平面に対して傾斜しており、前記空間形成部材の一部には、前記傾斜に沿って前記内部底面を流れる液体を回収する回収孔が形成されている気液分離装置である。
【発明の効果】
【0008】
本明細書に記載の気液分離装置は、排ガスから分離した液体を回収しやすくすることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態に係る洗浄塔システムの構成を概略的に示す図である。
図2】気液分離装置の空間形成部材を断面した状態を示す図である。
図3】気液分離装置の作用を説明するための図である。
図4】変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、一実施形態に係る洗浄塔システム100について、図1図3に基づいて詳細に説明する。図1には、洗浄塔システム100の構成が概略的に示されている。
【0011】
図1に示すように、本実施形態に係る洗浄塔システム100は、洗浄塔16と、洗浄塔16の上部に設けられた気液分離装置50と、を備えている。
【0012】
洗浄塔16は、空塔18と、空塔18内に流入する酸性排ガスに向けて循環液(例えば苛性ソーダなどのアルカリ性液)を噴きかけ、酸性排ガスを洗浄するスプレー41とを備える。また、洗浄塔16の内部には、充填部(充填物)42が設けられている。充填物としては、線構造のプラスチック製充填物であるテラレットなどを用いることができる。スプレー41から充填部42上部に向けて噴射された循環液は、充填部42で拡散される。そして、充填部42下部から流入する酸性排ガスは、充填部42で拡散され、充填部42において酸性排ガスが循環液により中和される。
【0013】
洗浄塔16内の循環液は、洗浄塔16の下部に溜まる。洗浄塔16の下部に溜まった循環液は、循環ポンプ45により、スプレー41へ供給される。
【0014】
ここで、洗浄塔16においては、酸性排ガスをアルカリ性液で中和するが、中和により生成される中和塩によって充填部42の一部が閉塞される「内部閉塞」が生じることがある。この内部閉塞が生じると、洗浄塔16内にアルカリ性液などの液体が通りやすくなる道ができ、排ガスとともに液体が外部に噴出する可能性が高くなる。したがって、本実施形態においては、排ガスから液体を分離するために、気液分離装置50を設けている。
【0015】
気液分離装置50は、洗浄塔16から排出される排ガスに含まれる液体や固体を分離する装置である。気液分離装置50は、排出管としての排突52と、排突52の上端部を囲む状態で設けられた空間形成部材54と、を有する。
【0016】
図2には、気液分離装置50の空間形成部材54を断面した状態が示されている。
【0017】
図2に示すように、排突52は、円筒形状を有しており、その上端部は、円板状の蓋55により閉じられている。蓋55の径は、排突52の径よりも大きく設定されている。排突52の材料としては、樹脂等を用いることができる。排突52の上端部には、排出孔としての矩形の排気口57が複数形成されている。なお、図2では、排気口57が4つ形成されているものとする(紙面奥側の排気口57は不図示)。排気口57からは、排突52内を上昇してきた排ガスが略水平方向に噴き出すようになっている。この排気口57の開口面積は、排ガス抵抗が局所的に大きくならないように、排突52の断面積に対して1.2倍以上となっている。
【0018】
空間形成部材54は、空間70を形成し、排突52の上端部の周囲を覆う周壁56aと、底壁56bとを有する。空間形成部材54の材料としては、樹脂等を用いることができる。周壁56aの上端部側はテーパー状に狭まっているが、空間形成部材54により形成される空間70の上方は解放された状態となっている。
【0019】
底壁56bには、中央に円形の開口53が形成されており、開口53には排突52が挿入された状態となっている。開口53の内径は、排突52の外径と略一致しているため、底壁56bと排突52との間には隙間が存在しないようになっている。
【0020】
底壁56bの上面(空間形成部材54の内部底面)は、水平面に対して5~20°、好ましくは10°傾斜している。このため、粘度が水よりも高いアルカリ性の液体であっても、底壁56bの上面に沿って下方へ流れるようになっている。
【0021】
底壁56bの一部には、回収孔としての貫通孔58が形成されている。貫通孔58と、排突52に形成された貫通孔(不図示)との間には、回収管としてのL字管59が設けられている。したがって、底壁56bに液体が溜まったとしても、L字管59により、液体を排突52内へ戻すことができる。
【0022】
なお、排突52の上端に設けられた蓋55の上側には、上方から見て十字状の形状を有する補強材60が設けられている。この補強材60により、空間形成部材54の強度を高くすることができるとともに、排突52と空間形成部材54との位置関係を強固に維持することができる。
【0023】
次に、気液分離装置50の作用について、図3に基づいて説明する。
【0024】
気液分離装置50では、洗浄塔16から上昇してきた液体を含む排ガスが排突52に導かれて上昇してくると、液体を含む排ガスは排気口57から水平方向に向かって噴出する(図3の矢印A参照)。このとき、蓋55が、排ガスの上方への移動を妨げるため、排ガスは蓋55により水平方向にガイドされるようになっている。すなわち、蓋55は、排気口57から排出された排ガスを略水平方向にガイドするガイド部材として機能している。そして、排気口57から噴出された液体を含む排ガスは、空間形成部材54の周壁56aに当たることで、排ガスと液体とが気液分離する。
【0025】
気液分離後、排ガスは、空間形成部材54の上方の開口部分から外部に排出される(図3の矢印B参照)。一方、排ガスから分離された液体は、周壁56aを伝って、底壁56bまで到達する(図3の破線矢印C参照)。
【0026】
底壁56bに到達した液体は、水よりも粘度が高いものの、底壁56bに上述した傾斜が設けられているため、傾斜に沿って流れ(図3の破線矢印D参照)、貫通孔58付近に集まる。そして、液体は、貫通孔58、L字管59を介して、排突52内に戻る(図3の破線矢印E参照)。排突52に戻った液体は、排突52の内面を伝って、洗浄塔16に戻るようになっている。
【0027】
このように、本実施形態では、液体を含む排ガスが気液分離装置50で気液分離される。そして、排ガスは外部に排出され、液体は気液分離装置50から排突52を通って洗浄塔16に戻されるようになっている。また、本実施形態では、空間70内に長時間溜まることが無いため、液体が気液分離装置50内で凝固するのを抑制することができる。
【0028】
ここで、排ガスには、液体とともに中和物が含まれる場合がある。気液分離装置50においては、この中和物も液体とともに排ガスから分離することができるが、分離された中和物が底壁56b上に溜まる可能性がある。しかるに、本実施形態では、上述したように底壁56bの上面に傾斜を設けていることから、底壁56b上の中和物は液体の流れによって流され、L字管59及び排突52を介して洗浄塔16に戻りやすくなっている。
【0029】
以上、説明したように、本実施形態によると、排突52は、排ガスを洗浄塔16の上方に導き、上端部近傍に形成された排気口57から略水平方向に向けて排ガスを排出し、空間形成部材54は、排突52の上端部を囲む空間70を形成している。そして、空間形成部材54の内部底面は、水平面に対して傾斜しており、底壁56bの一部には、傾斜に沿って内部底面を流れる液体を回収する貫通孔58が形成されている。このため、本実施形態では、排突52の排気口57から排出された液体を含む排ガスが空間形成部材54の周壁56aに当たることで気液分離されるため、気液分離装置50からは液体を含まない排ガスを排出することができる。これにより液体(アルカリ性液)が周囲に飛び散るなどして建材の腐食等が生じるのを抑制することができる。また、排ガスから分離した液体は、底壁56bの傾斜により、底壁56b上には溜まらず、貫通孔58から回収されるため、気液分離装置50内で液体が凝固するのを抑制することができる。
【0030】
また、本実施形態では、空間形成部材54の内部底面の水平面に対する傾斜角を5~20°、好ましくは10°としている。このように、水勾配(0.5~1%≒0.28°~0.57°)よりも傾斜角を大きくすることで、粘度の高い液体であっても、傾斜に沿って流れ落ちるようにすることができる。
【0031】
また、本実施形態では、排突52の上端部には、排突52から排出された排ガスを略水平方向にガイドする蓋55が設けられている。これにより、排突52から排出された排ガスが周壁56aに当らずに上方に向かうのを防止し、気液分離の効率化を図ることが可能となる。
【0032】
また、本実施形態では、洗浄塔16に充填部42が設けられている。このように、洗浄塔16に充填部42が設けられ、中和物が充填部42の一部を閉塞し、液体が通る道が形成されるような場合(排ガスに液体が含まれやすい状況下)であっても、気液分離装置50を設けることで、液体が外部に飛び散らないようにすることができる。
【0033】
なお、上記実施形態では、図4に示すように、空間形成部材54の周壁56aの一部(蓋55よりも上側)に、邪魔板65を設けることとしてもよい。なお、図4では、図面の簡素化のため、補強材60の図示を省略している。図4の例では、液体を含む排ガスが蓋55を回り込んで上方に上がってきたとしても、邪魔板65に当たることで、排ガスから液体を分離することができる。したがって、排ガスからの液体分離をより効果的に行うことができる。
【0034】
なお、上記実施形態では、空間形成部材54において分離した液体を排突52に戻す場合について説明したが、これに限られるものではない。例えば、液体は、洗浄塔16に直接戻すこととしてもよい。また、液体回収タンクを別途設け、液体回収タンクに液体を送るようにしてもよい。
【0035】
なお、上記実施形態では、洗浄塔16において、酸性排ガスをアルカリ性液によって中和する場合について説明したが、これに限らず、アルカリ性の排ガスを酸性液によって中和することとしてもよい。
【0036】
上述した実施形態は本発明の好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能である。
【符号の説明】
【0037】
16 洗浄塔
57 排気口(排出孔)
52 排突(排出管)
70 空間
54 空間形成部材
58 貫通孔(回収孔)
55 蓋(ガイド部材)
50 気液分離装置
59 L字管(回収管)
図1
図2
図3
図4