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特許7013409医療用ガスカップリング、鼻カニューレおよび酸素ガス供給装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-21
(45)【発行日】2022-01-31
(54)【発明の名称】医療用ガスカップリング、鼻カニューレおよび酸素ガス供給装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 16/20 20060101AFI20220124BHJP
   A61M 16/10 20060101ALI20220124BHJP
   A61M 16/06 20060101ALI20220124BHJP
   F16K 17/38 20060101ALI20220124BHJP
【FI】
A61M16/20 G
A61M16/10 B
A61M16/06 C
F16K17/38 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019068029
(22)【出願日】2019-03-29
(65)【公開番号】P2020162968
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2020-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】396007694
【氏名又は名称】株式会社医器研
(74)【代理人】
【識別番号】100098796
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 全
(74)【代理人】
【識別番号】100121647
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 和孝
(74)【代理人】
【識別番号】100187377
【弁理士】
【氏名又は名称】芳野 理之
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 博文
【審査官】今関 雅子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0288662(US,A1)
【文献】特表2015-524697(JP,A)
【文献】特許第2542123(JP,B2)
【文献】特開2003-106469(JP,A)
【文献】英国特許出願公開第2418239(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 16/00-16/20
F16K 17/38
F16L 55/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素ガスを通す可撓性の管に使用される医療用ガスカップリングであって、
中空部を有し、前記中空部につながり前記管に接続される第1接続端部と、前記中空部につながり前記管に接続される第2接続端部と、を有し、前記第1接続端部と前記中空部と前記第2接続端部とが前記酸素ガスを通すガス導通路を形成している本体と、
前記本体の前記中空部内に移動可能に配置される弁体と、
前記弁体を前記中空部の中央位置に保持して、前記ガス導通路を通じて前記酸素ガスを通す第1付勢手段および第2付勢手段と、
を備え、
前記第1接続端部が熱により軟化または溶融すると、前記弁体が前記第2付勢手段の付勢力により前記中空部内で第1方向に移動することで、前記第1接続端部と前記中空部との間の前記ガス導通路を閉鎖し、前記第2接続端部が熱により軟化または溶融すると、前記弁体が前記第1付勢手段の付勢力により前記中空部内で前記第1方向とは反対の第2方向に移動することで、前記第2接続端部と前記中空部との間の前記ガス導通路を閉鎖することを特徴とする医療用ガスカップリング。
【請求項2】
前記弁体は、
前記第1方向および前記第2方向に沿って前記中空部の内面を摺動可能な第1弁体部分と、
前記第1弁体部分から内部に向かって後退し前記内面から離れた第2弁体部分と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の医療用ガスカップリング。
【請求項3】
前記第1接続端部と前記第2接続端部とのそれぞれは、前記酸素ガスを通す可撓性の前記管に対して着脱可能に接続される係合部分を有することを特徴とする請求項1または2に記載の医療用ガスカップリング。
【請求項4】
前記第1接続端部の前記係合部分および前記第2接続端部の前記係合部分の少なくともいずれかは、カプラ形状を有することを特徴とする請求項3に記載の医療用ガスカップリング。
【請求項5】
酸素ガスを通す可撓性を有する管と、
前記管の一方の端部に接続された請求項1~4のいずれか1項に記載の医療用ガスカップリングと、
前記管の他方の端部に接続され前記酸素ガスを鼻孔に供給する鼻孔挿入用ノズルと、
を備えたことを特徴とする鼻カニューレ。
【請求項6】
請求項に記載の鼻カニューレと、
前記鼻カニューレに接続される酸素ボンベ及び/または酸素濃縮装置と、
を備えたことを特徴とする酸素ガス供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濃縮酸素ガスを通す可撓性の管等に接続される医療用ガスカップリング、医療用ガスカップリングを備える鼻カニューレ、および鼻カニューレを備える酸素ガス供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
酸素濃縮装置は、慢性気管支炎等の呼吸器疾患の患者の治療法として有効な酸素吸入法に使用される。酸素濃縮装置には、空気中の酸素を透過しながら窒素を選択的に吸着するゼオライトを吸着剤として用いた吸着法が広く使われている。この種の酸素濃縮装置は、特許文献1に記載されている。
【0003】
治療用の酸素を必要とする患者は、病院や家庭において、例えば鼻カニューレを介して酸素の供給を受ける。鼻カニューレは、可撓性を有するプラスチック管を介して酸素供給源となる酸素ボンベや酸素濃縮装置側に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4636910公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように患者が鼻カニューレを用いて酸素の供給を受けている際に、例えばタバコの様な火炎が近づくと、プラスチック管に着火するおそれがある。もし、プラスチック管に着火した場合には、直ちに酸素の供給を停止しなければならない。
【0006】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、酸素濃縮装置に接続された管に着火した場合には、酸素の供給を直ちに停止させることができる医療用ガスカップリング、医療用ガスカップリングを備える鼻カニューレ、および鼻カニューレを備える酸素ガス供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、酸素ガスを通す可撓性の管に使用される医療用ガスカップリングであって、中空部を有し、前記中空部につながり前記管に接続される第1接続端部と、前記中空部につながり前記管に接続される第2接続端部と、を有し、前記第1接続端部と前記中空部と前記第2接続端部とが前記酸素ガスを通すガス導通路を形成している本体と、前記本体の前記中空部内に移動可能に配置される弁体と、前記弁体を前記中空部の中央位置に保持して、前記ガス導通路を通じて前記酸素ガスを通す第1付勢手段および第2付勢手段と、を備え、前記第1接続端部が熱により軟化または溶融すると、前記弁体が前記第2付勢手段の付勢力により前記中空部内で第1方向に移動することで、前記第1接続端部と前記中空部との間の前記ガス導通路を閉鎖し、前記第2接続端部が熱により軟化または溶融すると、前記弁体が前記第1付勢手段の付勢力により前記中空部内で前記第1方向とは反対の第2方向に移動することで、前記第2接続端部と前記中空部との間の前記ガス導通路を閉鎖することを特徴とする本発明に係る医療用ガスカップリングにより解決される。
を特徴とする医療用ガスカップリング。
【0008】
本発明に係る医療用ガスカップリングによれば、第1接続端部が熱により軟化または溶融すると、第1接続端部と中空部との間のガス導通路の閉鎖が行われ、第2接続端部が熱により軟化または溶融すると、第2接続端部と中空部との間のガス導通路の閉鎖が行われる。このため、酸素ガスを通す可撓性の管に着火した場合には、医療用ガスカップリングは、酸素の供給を直ちに停止させることができる。
【0009】
本発明に係る医療用ガスカップリングにおいて、好ましくは、前記弁体は、前記第1方向および前記第2方向に沿って前記前記中空部の内面を摺動可能な第1弁体部分と、前記第1弁体部分から内部に向かって後退し前記内面から離れた第2弁体部分と、を有することを特徴とする。
本発明に係る医療用ガスカップリングによれば、第1弁体部分から内部に向かって後退し中空部の内面から離れた第2弁体部分が設けられているため、弁体は、中空部の中央位置に保持された状態において、ガス導通路を確保し、酸素ガスの所定の流量を確保することができる。つまり、第2弁体部分は、弁体において生ずる圧力損失を抑え、酸素ガスの流れが阻害されることを抑えることができる。
【0010】
本発明に係る医療用ガスカップリングにおいて、好ましくは、前記第1接続端部と前記第2接続端部とのそれぞれは、前記酸素ガスを通す可撓性の前記管に対して着脱可能に接続された係合部分を有することを特徴とする。
本発明に係る医療用ガスカップリングによれば、医療用ガスカップリングは、酸素ガスを通す可撓性の管に対して着脱可能に接続されるとともに、酸素ガスを通す可撓性の管が容易に抜けることを抑えることができる。
【0011】
本発明に係る医療用ガスカップリングにおいて、好ましくは、前記第1接続端部の前記係合部分および前記第2接続端部の前記係合部分の少なくともいずれかは、カプラ形状を有することを特徴とする。
本発明に係る医療用ガスカップリングによれば、使用者等は、酸素ガスを通す可撓性の管に対して医療用ガスカップリングを容易に取り付けたり取り外したりすることができ、医療用ガスカップリングを容易に交換することができる。
【0012】
前記課題は、酸素ガスを通す可撓性を有する管と、前記管の一方の端部に接続された上記のいずれかの医療用ガスカップリングと、前記管の他方の端部に接続され前記酸素ガスを鼻孔に供給する鼻孔挿入用ノズルと、を備えたことを特徴とする本発明に係る鼻カニューレにより解決される。
本発明に係る鼻カニューレによれば、使用者は、医療用ガスカップリングが一体型として設けられた鼻カニューレを使用することができる。また、第1接続端部が熱により軟化または溶融すると、第1接続端部と中空部との間のガス導通路の閉鎖が行われ、第2接続端部が熱により軟化または溶融すると、第2接続端部と中空部との間のガス導通路の閉鎖が行われる。このため、酸素ガスを通す可撓性の管に着火した場合には、医療用ガスカップリングは、酸素の供給を直ちに停止させることができる。
【0014】
前記課題は、上記の鼻カニューレと、前記鼻カニューレに接続される酸素ボンベ及び/または酸素濃縮装置と、を備えたことを特徴とする本発明に係る酸素ガス供給装置により解決される。
本発明に係る酸素ガス供給装置によれば、使用者は、医療用ガスカップリングが一体型として設けられた鼻カニューレを使用することができる。また、第1接続端部が熱により軟化または溶融すると、第1接続端部と中空部との間のガス導通路の閉鎖が行われ、第2接続端部が熱により軟化または溶融すると、第2接続端部と中空部との間のガス導通路の閉鎖が行われる。このため、酸素ガスを通す可撓性の管に着火した場合には、医療用ガスカップリングは、酸素の供給を直ちに停止させることができる。これにより、患者が酸素ボンベ及び/または酸素濃縮装置に鼻カニューレを接続することにより酸素ガス供給装置を用いて酸素供給を行う場合において、使用上の安全性を確保することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、着火した場合には、酸素の供給を直ちに停止させることができる医療用ガスカップリング、医療用ガスカップリングを備える鼻カニューレ、および鼻カニューレを備える酸素ガス供給装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る酸素ガス供給装置の外観を示す斜視図である。
図2】酸素濃縮装置の構成例を示すブロック図である。
図3図3(A)は、医療用ガスカップリングの正面図であり、図3(B)は、医療用ガスカップリングの側面図である。
図4図4(A)は、図3(B)に示す医療用ガスカップリングのA-A線における断面図であり、図4(B)は、図4(A)に示す医療用ガスカップリングのB-B線における断面図である。
図5図5(A)は、図3に示す医療用ガスカップリングの斜視図であり、図5(B)は、図5(A)に示す医療用ガスカップリングのV-V線における断面を有する斜視図であり、図5(C)は、図5(A)に示す医療用ガスカップリングのW-W線における断面を有する斜視図である。
図6図6(A)は、医療用ガスカップリングの通常使用状態を示し、図6(B)は、火炎の熱が医療用ガスカップリングの一方側を軟化または溶融した様子を示す断面図である。
図7】本発明の第2実施形態を示す断面図である。
図8】本発明の第3実施形態を示す断面図である。
図9】本発明の第4実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して詳しく説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0018】
(第1実施形態)
<酸素ガス供給装置15および酸素濃縮装置1の構造例>
図1は、本発明の実施形態に係る酸素ガス供給装置の外観を示す斜視図である。
図2は、酸素濃縮装置の構成例を示すブロック図である。
図2のブロック図において、太線および矢印は、配管流路(導管)および空気(濃縮酸素)の流れ方向を示す。
【0019】
図1に示すように、本発明の実施形態に係る酸素ガス供給装置15は、酸素濃縮装置1と、鼻カニューレ30と、を備える。なお、図1に示す鼻カニューレ20は、比較例に係る鼻カニューレの一例である。図1に示す酸素濃縮装置1は、一例として、濃縮酸素ガスを生成し所定の流量で送り出す圧力変動吸着型酸素濃縮装置である。なお、後述する鼻カニューレ30に送られる濃縮酸素ガスの供給源は、酸素濃縮装置1に限定されるわけではなく、酸素ボンベ等であってもよい。あるいは、酸素ガス供給装置15は、酸素濃縮装置と酸素ボンベとの両方を濃縮酸素ガスの供給源として備えていてもよい。例えば、酸素ガス供給装置15は、酸素ボンベを備え、停電時において濃縮酸素ガスの供給源を酸素濃縮装置から酸素ボンベに切り替えてもよい。本実施形態の説明では、鼻カニューレ30に送られる濃縮酸素ガスの供給源が酸素濃縮装置1である場合を例に挙げる。
【0020】
酸素濃縮装置1は、病院での臨床や家庭等で使い易い大きさであり、装置本体2を有する。装置本体2は、表示/操作パネル部3と、取っ手4と、を有する。装置本体2の下部には、キャスタユニット5が着脱可能に取り付けられている。キャスタユニット5は、装置本体2を移動可能に保持している。図1に示す表示/操作パネル部3は、酸素供給ノズル6と、酸素供給量表示部7と、酸素供給量の設定ボタン8と、電源スイッチ9と、各種情報を表示する表示部10と、を有する。また、酸素濃縮装置1内の適所にサーミスタなどの感温素子が設けられ、炎による過熱を検出して酸素濃縮装置1の濃縮酸素の生成を停止する機能が設けられてもよい。
【0021】
酸素供給ノズル6は、患者が酸素の供給を受ける際に、後で説明する鼻カニューレ20のソケット21または鼻カニューレ30のソケット31を選択的に接続可能である。広義の意味では、鼻カニューレ20,30は、ソケット21,31をそれぞれ含む。酸素供給ノズル6の近傍には、例えば火炎が鼻カニューレ30を伝って装置本体2の内部に進入することを抑える遮断器(図示せず)が設けられている。酸素供給量表示部7は、実際の酸素の供給量をデジタル表示する。酸素供給量の設定ボタン8は、使用者の操作に応じて酸素供給量の増減を行い、酸素供給量の設定を行うことができる。電源スイッチ9は、酸素濃縮装置1の電源をオン/オフを切り換える。各種情報を表示する表示部10は、内蔵するバッテリ等の残量情報等の各種の項目を表示する。
【0022】
次に、図2を参照して、酸素濃縮装置1の構成例を説明する。図2に示すように、酸素濃縮装置1内に取り込まれる空気は、空気取入口100から取り入れられ、フィルタ101と、消音バッファを兼ねる吸気フィルタ102と、によりゴミを除去された後、コンプレッサ(圧縮手段)105で圧縮される。コンプレッサ(圧縮手段)105は、冷却用ファン104により冷却される。
【0023】
圧縮された空気は、配管流路を切替える流路切換手段としての3方向切換弁107を介して、並列に2本配列された吸着筒108a,108bのいずれかに送り込まれる。なお、吸着筒の数は、2本に限定されるわけではなく、例えば4本であってもよい。吸着筒108a,108b内には、吸着剤が充填されている。吸着剤は、窒素と酸素とのガス分離を行う。これにより、濃縮酸素ガスが生成される。生成された濃縮酸素ガスは、一時的に製品タンク111に送り込まれる。さらに、濃縮酸素ガスの圧力と流速とに基づく流量が、圧力調整器112と流量調節器115とを用いて、制御される。このとき、酸素濃度は、圧力調整器112に接続した酸素濃度センサ114によって検知される。
【0024】
患者には、例えば最大流量2L/分の90%程度に濃縮され適度に加湿された酸素が、酸素濃縮装置1の酸素供給ノズル(ワンタッチ酸素出口)6から、図1に示す鼻カニューレ20あるいは鼻カニューレ30を経て、供給される。
【0025】
図2のコンプレッサ105の減圧手段VP、排気マフラ120、および排気口121は、吸着筒108a,108bの吸着剤に吸着された酸素以外の例えば窒素等の成分を排出(排気)する。排気流路には、開放弁118が設けられている。酸素濃縮装置1の駆動は、通常は、AC電源と接続するAC電源コネクタ130、およびスイッチング電源部125を介して商用電源により行われる。酸素濃縮装置1の駆動は、外出時等においてAC電源コネクタ130が商用電源に接続されていない場合には、スイッチング電源部125により、ACバッテリ(充電式バッテリ)127からの電源で行われる。
【0026】
表示部10は、LED等で形成され、運転状態(通常動作時には緑色に点灯または点滅/異常時または停止時には赤色に点灯または点滅)を示す運転ランプと、バッテリ残量表示等の表示を行う点検ランプと、を有する。
【0027】
吸気フィルタ102は、消音構造となっている。コンプレッサ105の駆動制御は、制御部(CPU)124、モータ制御部123、および可変速度制御器123aにより行われる。コンプレッサ105は、加圧機能(加圧手段:P)と減圧機能(減圧手段:VP)との両方の機能を備える。なお、コンプレッサ105は、加圧機能(加圧手段:P)のみを有していてもよい。コンプレッサ105の回転数は、取り出される酸素流量に応じて制御される。また、コンプレッサ105の速度は、500rpmから3000rpmの間で制御される。
【0028】
気体分離手段としての吸着筒108a,108bには、少なくとも2本以上の吸着筒が並列に配置されている。例えば、充填される吸着剤としては、1mm未満の顆粒測定値を有し、SiO/Al比が2.0~3.0であるX型ゼオライトが挙げられ、Alの四面体単位の少なくとも88%以上をリチウムカチオンと融合させたものがより好ましい。製品タンク111では、吸着筒内圧力と同期して圧力が変動している。そのため、圧力調整器112は、濃縮酸素を減圧し、ほぼ一定圧力となるよう機能する。
【0029】
<鼻カニューレ20と、鼻カニューレ30の構造例>
図1に示す鼻カニューレ20は、通常用いられているカニューレであり、防火機能を有する医療用ガスカップリング40を有していない。本実施形態の鼻カニューレ20は、比較例に係る鼻カニューレの一例である。鼻カニューレ20は、可撓性を有する透明なプラスチック製の管(チューブ)22と、可撓性を有する透明なプラスチック製の鼻孔挿入用ノズル23と、樹脂製あるいは金属製のソケット21と、を有する。管22は、例えば透明なプラスチックチューブである。管22の一端部には、鼻孔挿入用ノズル23が、設定された濃縮酸素ガス流量(L/分)に対して気密に接続され、管22の他端部には、ソケット21が気密に接続されている。ソケット21は、例えばカプラなどと呼ばれ、装置本体2の酸素供給ノズル6に対して着脱可能に気密に接続される。
【0030】
一方、図1に示す別の鼻カニューレ30は、その途中の適所に防火機能を有する医療用ガスカップリング40を有している。本実施形態の鼻カニューレ30は、本発明に係る鼻カニューレの一例である。鼻カニューレ30は、ポリ塩化ビニル樹脂,ポリアミド樹脂等熱可塑性で可撓性を有する透明なプラスチック製の第1管(チューブ)35と、可撓性を有する透明なプラスチック製の第2管(チューブ)36と、可撓性を有する透明なプラスチック製の鼻孔挿入用ノズル33と、樹脂製あるいは金属製のソケット31と、を有する。第1管35の第1端部35Aには、ソケット31が気密に接続されている。第1端部35Aは、第1管35において、濃縮酸素ガスの流れの上流側の端部に相当する。ソケット31は、例えばカプラなどと呼ばれ、装置本体2の酸素供給ノズル6に対して着脱可能に気密に接続される。第2管36の第2端部36Bには、鼻孔挿入用ノズル33が気密に接続されている。第2端部36Bは、第2管36において、濃縮酸素ガスの流れの下流側の端部に相当する。第1管35の第2端部35Bと、第2管36の第1端部36Aと、の間には、医療用ガスカップリング40が気密に接続されている。第2端部35Bは、第1管35において、濃縮酸素ガスの流れの下流側の端部に相当する。第1端部36Aは、第2管36において、濃縮酸素ガスの流れの上流側の端部に相当する。
【0031】
図1に示すように、医療用ガスカップリング40は、第1管35の第2端部35Bと、第2管36の第1端部36Aとの間に着脱可能に取り付けられており、防火機能を有する中間連結部材である。医療用ガスカップリング40は、例えば火炎の熱により軟化または溶融することが可能なプラスチック材料により作られている。
【0032】
<医療用ガスカップリング40の構造例>
次に、図3図5を参照して、医療用ガスカップリング40の構造例を説明する。
図3(A)は、医療用ガスカップリング40の正面図である。図3(B)は、医療用ガスカップリング40の側面図である。図4(A)は、図3(B)に示す医療用ガスカップリング40のA-A線における断面図である。図4(B)は、図4(A)に示す医療用ガスカップリング40のB-B線における断面図である。図5(A)は、図3に示す医療用ガスカップリング40の斜視図である。図5(B)は、図5(A)に示す医療用ガスカップリング40のV-V線における断面を有する斜視図である。図5(C)は、図5(A)に示す医療用ガスカップリング40のW-W線における断面を有する斜視図である。
【0033】
図3図5に示す医療用ガスカップリング40は、双方向型のカップリングとも呼ばれ、図1に例示するように、濃縮酸素ガスを供給する可撓性の第1管35と第2管36との間に設けられ使用される。医療用ガスカップリング40の軸方向Xの長さは、約60mm程度である。医療用ガスカップリング40は、図3図4に示すように、本体50と、弁体60と、第1スプリング71と、第2スプリング72と、を有する。
【0034】
図4に示すように、本体50は、例えばタバコの火等に起因して発火した火炎の熱により所定の温度で軟化または溶融するポリ塩化ビニル樹脂,ポリアミド樹脂等熱可塑性のプラスチック材料等により外径18~20mm程度に成形されている。本体50は、第1部分51と第2部分52とを有する。第1部分51と第2部分52は、断面円形状の中空部53を内部に有している。第1部分51の接続端面51Dと、第2部分52の接続端面52Dと、の間には、シール材54が配置されている。これにより、本体50の第1部分51と第2部分52の間から、酸素ガスの気密性が保たれる。なお、接続端面51Dおよび接続端面52Dのいずれか一方を雌ネジにするとともに、接続端面51Dおよび接続端面52Dのいずれか他方を雄ネジにして、接続端面51Dおよび接続端面52Dを気密に螺合するようにしてもよい。
【0035】
第1部分51の接続端面51Dと第2部分52の接続端面52Dとは、シール材54を挟んだ状態で圧力約400kPaの酸素ガスの気密性を保つように互いに接合されている。第1部分51の接続端面51Dと第2部分52の接続端面52Dとの間の接合形態は、接着剤による接着であってもよく、加熱による溶着であってもよい。あるいは、図6(A)および図6(B)に表した例のように、第1部分51はフランジ部51Fを有し、第2部分52はフランジ部52Fを有していてもよい。図6(A)および図6(B)に表した例では、第1部分51と第2部分52とは、フランジ部51Fおよびフランジ部52Fを通された複数のボルトおよびナットなどの締結部材55により固定される。
【0036】
図4に示すように、本体50の第1部分51は、中空状の第1接続端部56を有する。本体50の第2部分52は、中空状の第2接続端部57を有する。第1接続端部56は、本体50の軸方向XのX1方向に沿って、第1部分51から突出して形成されている。例えば、X1方向は、酸素ガスの流れの下流側へ向かう方向であり、本発明の「第1方向」の一例である。同様にして、第2接続端部57は、本体50の軸方向XのX2方向に沿って、第2部分52から突出して形成されている。例えば、X2方向は、酸素ガスの流れの上流側へ向かう方向であり、本発明の「第2方向」の一例である。
【0037】
図4(A)に示すように、第1接続端部56は、外端部56Aと内端部56Bとを有する。内端部56Bは、中空部53の一端側につながっている。同様にして、第2接続端部57は、外端部57Aと内端部57Bとを有する。内端部57Bは、中空部53の他端側につながっている。これにより、第1接続端部56の中空穴56Hと、中空部53と、第2接続端部57の中空穴57Hと、は、軸方向Xに沿ってつながっていて、濃縮酸素ガスを通すガス導通路Tを形成している。なお、中空部53の内径は、第1接続端部56の中空穴56Hと第2接続端部57の中空穴57Hの内径よりも大きく設定されている。
【0038】
通常の使用状態において、第1スプリング71および第2スプリング72が医療用ガスカップリング40の外端部56Aおよび外端部57Aから飛び出さないようにするため、外端部56Aと外端部57Aとの内側には、流量が最大20L/分の酸素ガスの流量を妨げない程度に、環状または複数の突起部がわずかに突起して設けられている。
【0039】
図3に示すように、第1接続端部56は、図1に示す第1管35の第2端部35Bに対して着脱可能に圧入により接続される。第1接続端部56は、係合部分56Mを有している。係合部分56Mは、例えばタケノコ形状などと呼ばれる部分であり、複数の傾斜部分(リブ)56Kが並んだ形状を有する。これにより、係合部分56Mは、第1管35の第2端部35Bに対して着脱可能に流量が最大20L/分の酸素ガスが外に漏れないように気密に接続されるとともに、第1管35の第2端部35BがX1方向に容易に抜けることを抑えることができる。
【0040】
同様にして、第2接続端部57は、図1に示す第2管36の第1端部36Aに対して着脱可能に圧入により接続される。第2接続端部57は、係合部分57Mを有している。係合部分57Mは、例えばタケノコ形状などと呼ばれる部分であり、複数の傾斜部分57Kが並んだ形状を有する。これにより、係合部分57Mは、第2管36の第1端部36Aに対して着脱可能に接続されるとともに、第2管36の第1端部36AがX2方向に容易に抜けることを抑えることができる。これにより、本体50は、第1管35の第2端部35Bと第2管36の第1端部36Aとに連結された状態で簡単には抜けないようになっている。これにより、使用上の安全を図ることができる。
【0041】
また、図3および図4に表した第1接続端部56および第2接続端部57の形状は、高い汎用性を有する。すなわち、第1接続端部56および第2接続端部57は、酸素濃縮装置に使用される一般的な可撓性を有するプラスチック製の管に接続可能とされている。これにより、本実施形態の医療用ガスカップリング40は、種々の酸素濃縮装置に使用可能とされている。
【0042】
図4に示す弁体60は、本体50よりも軟化温度,溶融温度が高く、耐熱性があるテフロン(登録商標)などのフッ素樹脂やナイロン等のプラスチック製あるいはアルミニウム等の金属製であり、中空部53内において、軸方向Xに沿って移動可能である。弁体60は、図4(B)と図5(B)と図5(C)に示すように、一対の曲面部分61,62と、一対の平面部分63,64と、を有する中実体である。本実施形態の曲面部分61,62は、本発明の「第1弁体部分」の一例である。本実施形態の平面部分63,64は、本発明の「第2弁体部分」の一例である。図4(B)に示すように、曲面部分61,62は、中空部53の内周面53Rに沿って軸方向Xにガイドされる部分である。すなわち、曲面部分61,62は、軸方向Xに沿って中空部53の内周面53Rを摺動可能である。平面部分63,64は、曲面部分61,62から弁体60の内部に向かって後退した部分あるいは切り欠かれた部分であり、内周面53Rから離れている。平面部分63,64は、酸素ガスを通すためのガス導通路Tの一部を構成している。このように、曲面部分61,62から弁体60の内部に向かって後退し内周面53Rから離れた平面部分63,64が設けられているため、弁体60は、軸方向Xに関して中空部53において中央位置に配置された状態(通常の使用状態)において、ガス導通路Tを確保し、酸素ガスの所定の流量を確保することができる。つまり、平面部分63,64は、弁体60において生ずる圧力損失を抑え、酸素ガスの流れが阻害されることを抑えることができる。このため、平面部分63,64が設けられた部分の酸素ガスの流路断面積は、第1接続端部56の中空穴56Hの流路断面積や第2接続端部57の中空穴57Hの流路断面積とほぼ変わらないように形成されているので、流量が最大20L/分の酸素ガスが設定された所定の流量でスムーズに鼻カニューレ30まで到達する。
【0043】
図4(A)に示すように、弁体60は、第1接続端部56に向かった延びた第1突出部65と、第2接続端部57に向かって延びた第2突出部66と、を有する。第1突出部65の外周には、第1シール部材67が配置されている。第2突出部66の外周には、第2シール部材68が配置されている。第1シール部材67および第2シール部材68としては、例えば本体50よりも軟化温度,溶融温度が高く耐熱性があるフッ素樹脂のO-リングや本体50よりも軟化温度,溶融温度が高く耐熱性があり弾性変形するゴム等のO-リングを採用できるがこれらに限定されない。
【0044】
図4(A)に示すように、第1スプリング71は、第1接続端部56の中空穴56Hに圧縮された状態で収容されている。第1スプリング71は、例えばコイルスプリングであり、本発明の「第1付勢手段」の一例である。第2スプリング72は、第2接続端部57の中空穴57Hに圧縮された状態で収容されている。第2スプリング72は、コイルスプリングであり、本発明の「第2付勢手段」の一例である。
【0045】
例えば、第1スプリング71および第2スプリング72のそれぞれは、例えば、ピアノ線,硬鋼線,バネ性を有するステンレス鋼線等を用いた金属等で形成されており、線径φ0.4mm×外径φ3mm×自由長30mmの形状を有する。また、第1スプリング71および第2スプリング72のそれぞれの保持荷重は、例えば、5N以上、7N以下程度である。但し、第1スプリング71および第2スプリング72のそれぞれの形状および保持荷重は、これだけに限定されるわけではない。
【0046】
第1スプリング71と第2スプリング72とは、互いに均等のスプリング荷重を発揮する。コイルスプリングが第1スプリング71と第2スプリング72として使用される場合には、第1スプリング71と第2スプリング72とは、第1接続端部56の中空穴56Hと第2接続端部57の中空穴57Hとに圧縮されて対向して所定の付勢力を有した状態で収容されていても、コイルスプリングの線径が細いため、酸素ガス流路断面積を実質的に減少させないのでガス導通路Tにおける酸素ガスの流れを実質的には阻害しない。第1スプリング71の一方の端部は、第1接続端部56の外端部56Aの内側の突起部で保持されている。第1スプリング71の他方の端部は、弁体60の第1突出部65に係合、保持されている。同様にして、第2スプリング72の一方の端部は、第2接続端部57の外端部57Aの内側の突起部で保持されている。第2スプリング72の他方の端部は、弁体60の第2突出部66に係合、保持されている。第1スプリング71と第2スプリング72とは、第1接続端部56の中空穴56Hと第2接続端部57の中空穴57Hとに収容された状態において、互いに均等の付勢力を有する。これにより、弁体60は、軸方向Xにおいて中空部53の略中央部に配置されている。
【0047】
一方で、第1スプリング71の付勢力が低下すると、弁体60は、第2スプリング72の付勢力を受けてX1方向に移動する。そうすると、第1シール部材67は、中空部53と、第1接続端部56の中空穴56Hと、の間のガス導通路Tを密閉(閉鎖)して酸素ガスの移動を遮断する。また、第2スプリング72の付勢力が低下すると、弁体60は、第1スプリング71の付勢力を受けてX2方向に移動する。そうすると、第2シール部材68は、中空部53と、第2接続端部57の中空穴57Hと、の間のガス導通路Tを密閉(閉鎖)して酸素ガスの移動を遮断する。
【0048】
<使用例>
次に、図1および図6を参照して、医療用ガスカップリング40を備える鼻カニューレ30の使用例を説明する。
図6(A)は、医療用ガスカップリング40の通常使用状態を示す断面図である。
図6(B)は、火炎の熱が医療用ガスカップリング40の一方側を軟化または溶融した様子を示す断面図である。
【0049】
図1に示すように、医療用ガスカップリング40は、第1管35の第2端部35Bと、第2管36の第1端部36Aと、の間に着脱可能に取り付けられている。あるいは、医療用ガスカップリング40が鼻カニューレ30の一部として設けられていない場合(医療用ガスカップリング40と鼻カニューレ30とが一体型ではない場合)には、使用者が、第1管35の第2端部35Bと、第2管36の第1端部36Aと、の間に医療用ガスカップリング40を取り付ける。鼻カニューレ30のソケット31は、酸素濃縮装置1の酸素供給ノズル6に取り付けられる。これにより、酸素濃縮装置1により生成された酸素ガスが、第1管35、医療用ガスカップリング40、第2管36および鼻孔挿入用ノズル33を通じて、設定された所定の流量(L/分)で患者の鼻孔に供給される。
【0050】
通常の使用状態では、図6(A)に示すように、第1スプリング71と第2スプリング72とは、弁体60に対して対向して均等な付勢力(均等なスプリング荷重)を発揮する。このため、通常の使用状態では、軟化温度,溶融温度が高く、耐熱性があるテフロン(登録商標)などのフッ素樹脂やナイロン等のプラスチック製あるいはアルミニウム等の金属製の弁体60は、軸方向Xに関して、中空部53において中央位置に位置決めされる。第1接続端部56の中空穴56Hと、中空部53と、第2接続端部57の中空穴57Hと、から形成されている濃縮酸素ガスを通すガス導通路Tは、弁体60により閉鎖されることがなく、酸素濃縮装置1により生成された酸素ガスを設定された所定の流量(L/分)で鼻孔挿入用ノズル33に向かって流すことができる。
【0051】
これに対して、図6(B)に例示するように、第1管35の第2端部35Bと第1接続端部56とが、例えば酸素供給を受けている患者のタバコの火等に起因して発火した火炎FRの熱により軟化または溶融すると、第1スプリング71の一端部71Sが、第1接続端部56から外れる。そうすると、第1スプリング71が第1接続端部56の中空穴56Hに圧縮された状態で収容されていたため、第1スプリング71の一端部71Sは、第1スプリング71の復元力により、第1接続端部56の中空穴56Hから突き出て開放端部となる。
【0052】
これにより、第1スプリング71が弁体60に与えていた付勢力が低下することから、第2スプリング72が弁体60に与える付勢力が、第1スプリング71が弁体60に与える付勢力よりも大きくなる。そのため、弁体60は、第2スプリング72により中空部53内でX1方向に押される。これにより、弁体60の第1シール部材67は、中空部53と、第1接続端部56の中空穴56Hと、の間のガス導通路Tを密閉(閉鎖)して、酸素ガスの流れを遮断する。
【0053】
また、図6(B)に示した例とは逆に、第2管36の第1端部36Aと第2接続端部57とが、例えば酸素供給を受けている患者のタバコの火等に起因して発火した火炎FRの熱により、軟化または溶融すると、第2スプリング72の一端部72Sが、第2接続端部57から外れる。そうすると、第2スプリング72が第2接続端部57の中空穴57Hに圧縮された状態で収容されていたため、第2スプリング72の一端部72Sは、第2スプリング72の復元力により、第2接続端部57の中空穴57Hから突き出て開放端部となる。
【0054】
これにより、第2スプリング72が弁体60に与えていた付勢力が低下することから、第1スプリング71が弁体60に与える付勢力が、第2スプリング72が弁体60に与える付勢力よりも大きくなる。そのため、弁体60は、第1スプリング71により中空部53内でX2方向に押される。これにより、弁体60の第2シール部材68は、中空部53と、第2接続端部57の中空穴57Hと、の間のガス導通路Tを密閉(閉鎖)して、酸素ガスの流れを遮断する。
【0055】
このようにして、医療用ガスカップリング40の一方側あるいは他方側が、タバコの火等に起因して発火した火炎等の熱発生源の熱により軟化または溶融したとしても、弁体60のシール部材67,68が直ちにガス導通路Tを閉鎖し、酸素ガスの供給の遮断を行うことができる。すなわち、第1接続端部56または第2接続端部57のどちらかが、火炎(火気)により破損すると、第1スプリング71のスプリング荷重と第2スプリング72のスプリング荷重とのバランスが崩れる。このため、弁体60は、破損した側の接続端部へ移動し、酸素ガスの供給を即座に遮断することができる。
【0056】
医療用ガスカップリング40は、軸方向Xの双方向に関して酸素ガスの供給を停止できるので、双方向型の防火用カップリングといえる。医療用ガスカップリング40は、管に着火した場合には酸素の供給を直ちに停止させることができ、患者が酸素濃縮装置1に鼻カニューレ30を適用して酸素供給を行う場合に使用上の安全性を確保することができる。
【0057】
次に、図7から図9を参照して、本発明の第2実施形態から第4実施形態の医療用ガスカップリングを説明する。第2実施形態から第4実施形態の箇所が、上述した第1実施形態の対応する箇所と同様である場合には、同様の符号を記してその説明を省略する。第2実施形態から第4実施形態の医療用ガスカップリング240,340,440は、第1実施形態の医療用ガスカップリング40とは異なり、軸方向Xの一方向だけに関して酸素ガスの供給を停止できる一方向型のカップリングである。
【0058】
(第2実施形態)
図7を参照して、本発明の第2実施形態を説明する。
図7に示す医療用ガスカップリング240は、図1に示す医療用ガスカップリング40と同様に、鼻カニューレ30に用いられる。医療用ガスカップリング40は、図7に示すように、本体250と、弁体260と、第1スプリング271と、第2スプリング272と、を有する。例えば、第1スプリング271は、例えば、ピアノ線,硬鋼線,バネ性を有するステンレス鋼線等を用いた金属等で形成されており、線径φ0.4mm×外径φ3mm×自由長30mmの形状を有する。また、第1スプリング271の保持荷重は、5N以上、7N以下程度である。例えば、第2スプリング272は、例えば、ピアノ線,硬鋼線,バネ性を有するステンレス鋼線等を用いた金属等で形成されており、線径φ0.5mm×外径6mm×自由長10mmの形状を有する。また、第2スプリング272の保持荷重は、5N以上、7N以下程度である。
【0059】
本体250は、例えばタバコの火等に起因して発火した火炎の熱により軟化または溶融するプラスチック材料、ポリ塩化ビニル樹脂,ポリアミド樹脂等熱可塑性のプラスチック材料により作られている。本体250は、第1部分251と第2部分252とを有する。第1部分251と第2部分252とは、断面円形状の中空部253を内部に有している。本体250の第1部分251は、中空状の第1接続端部256を有する。本体250の第2部分252は、中空状の第2接続端部257を有する。第1接続端部256の中空穴256Hと、中空部253と、第2接続端部257の中空穴257Hと、は、軸方向Xに沿ってつながっていて、濃縮酸素ガスを通すガス導通路Tを形成している。
【0060】
第1接続端部256は、カプラ形状の係合部分256Mを有する。すなわち、図7に表した第1接続端部256の係合部分256Mは、オス型のカプラであり、メス型のカプラと着脱可能に接続される。メス型のカプラが第2管36の第1端部36Aに取り付けられている場合には、第1接続端部256は、第2管36の第1端部36Aに対して着脱可能に接続される。メス型のカプラとしては、例えば図1に表したソケット31が挙げられる。
【0061】
第2接続端部257は、簡単な形状の係合部分257Mを有し、図1に示す第1管35の第2端部35Bに対して着脱可能に圧入により接続される。第2接続端部257の係合部分257Mは、第1管35の第2端部35Bに対して着脱可能に接続されるとともに、第1管35の第2端部35BがX1方向に容易に抜けることを抑えることができる。これにより、本体250は、第1管35の第2端部35Bと第2管36の第1端部36Aとに連結された状態で、本体250が簡単には抜けないようになっている。これにより、使用上の安全を図ることができる。
【0062】
弁体260は、軟化温度,溶融温度が本体250より高く、耐熱性があるテフロン(登録商標)などのフッ素樹脂やナイロン等のプラスチック製あるいはアルミニウム等の金属製であり、中空部253内において、軸方向Xに沿って移動可能である。弁体260は、第1接続端部256に向かって延びた突出部265を有する。また、弁体260は、第2接続端部257の側に設けられた凹部266を有する。突出部265の外周には、第1シール部材267が配置されている。
【0063】
弁体260は、切り欠き部等を適所に設けることで、軸方向Xに関して中空部253において中央位置に配置された状態(通常の使用状態)において、ガス導通路Tを確保し、酸素ガスの所定の流量を確保することができる。このため、この部分の酸素ガスの流路断面積は、第1接続端部256の中空穴56Hの流路断面積や第2接続端部257の中空穴57Hの流路断面積とほぼ変わらないように形成されているので、流量が最大20L/分の酸素ガスが設定された所定の流量でスムーズに鼻カニューレ30まで到達する。
【0064】
第1シール部材267としては、例えば本体250よりも軟化温度,溶融温度が高く耐熱性があるテフロン(登録商標)などのフッ素樹脂等のプラスチック製のO-リングや本体250よりも軟化温度,溶融温度が高く耐熱性があり弾性変形するゴム等のO-リングを採用できるがこれらに限定されない。
【0065】
通常の使用時において、第1スプリング271が医療用ガスカップリング240の外端部から飛び出さないようにするため、中空穴256Hの開口径は環状または複数の突起部を設けるなどして第1スプリング271のコイル径よりも僅かに小さく形成されている。このため、流量が最大20L/分の酸素ガスの流量を妨げることなく、第1スプリング271は第1接続端部256の中空穴256Hと、弁体260との間で圧縮された状態で収容されている。また、第1スプリング271の他方の端部は、弁体260の突出部265に係合されている。第2スプリング272は、第2接続端部257の中空穴257Hに圧縮された状態で収容されている。第2スプリング272の一方の端部は、第2部分252と第2接続端部257との接続部分に固定されている。第2スプリング272の他方の端部は、弁体260の凹部266に固定されている。すなわち、第2スプリング272は、中空部253において弁体260の凹部266と第2接続端部257との間に設けられている。
【0066】
通常の使用状態では、第1スプリング271と第2スプリング272とは、所定量圧縮された状態にあり、対向して弁体260に対して均等な付勢力を有している。このため、図7に示すように、通常の使用状態では、弁体260は、軸方向Xに関して、中空部253において中央位置に位置決めされる。このため、第1接続端部56の中空穴256Hと、中空部253と、第2接続端部257の中空穴257Hと、から形成されている濃縮酸素ガスを通すガス導通路Tは、弁体260により閉鎖されることがなく、酸素濃縮装置1により生成された酸素ガスを設定された所定の流量(L/分)で鼻孔挿入用ノズル33に向かって流すことができる。
【0067】
これに対して、第1接続端部256が、例えば酸素供給を受けている患者のタバコの火の熱等に起因して着火した炎の熱により軟化または溶融すると、第1スプリング271の一端部271Sが第1接続端部256から外れる。そうすると、第1スプリング271が第1接続端部256の中空穴256Hに圧縮された状態で収容されていたため、第1スプリング271の一端部271Sは、第1スプリング271の復元力により、第1接続端部256の中空穴256Hから突き出て開放端部となる。これにより、第1スプリング271が弁体260に与えていた付勢力が低下することから、第2スプリング272が弁体260に与える付勢力が、第1スプリング271が弁体60に与える付勢力よりも大きくなる。そのため、弁体260は、第2スプリング272により中空部253内でX1方向に押される。これにより、シール部材267が、中空部253と、第1接続端部256の中空穴256Hと、の間のガス導通路Tを密閉(閉鎖)して、X1方向への酸素ガスの移動を遮断する。
【0068】
このようにして、医療用ガスカップリング240の一方側が、タバコの火の熱等に起因して着火した炎等の熱発生源の熱により軟化または溶融したとしても、弁体260のシール部材267が直ちにガス導通路Tを閉鎖し、酸素ガスの供給の遮断を行うことができる。医療用ガスカップリング240は、軸方向Xの一方向に関して酸素ガスの供給を停止できるので、一方向型の防火用カップリングといえる。医療用ガスカップリング40は、管に着火した場合には酸素の供給を直ちに停止させることができ、患者が酸素濃縮装置1に鼻カニューレ30を適用して酸素供給を行う場合に使用上の安全性を確保することができる。
【0069】
なお、本実施形態では、第1接続端部256がカプラ形状の係合部分256Mを有する場合を例に挙げた。但し、接続端部256,257の形態は、これだけに限定されるわけではない。例えば、第1接続端部256および第2接続端部257の両方が、カプラ形状の係合部分を有していてもよい。すなわち、本実施形態の医療用ガスカップリング240では、第1接続端部256および第2接続端部257の少なくともいずれかが、カプラ形状の係合部分を有する。第2接続端部257の係合部分がオス型のカプラである場合には、メス型のカプラが第1管35の第2端部35Bに取り付けられる。また、第1接続端部256および第2接続端部257の少なくともいずれかが有するカプラ形状の係合部分は、メス型のカプラであってもよい。この場合には、オス型のカプラが、第2管36の第1端部36Aおよび第1管35の第2端部35Bの少なくともいずれかに取り付けられる。
【0070】
本実施形態の医療用ガスカップリング240は、第1接続端部256および第2接続端部257の少なくともいずれかにおいてカプラ形状の係合部分を有するため、使用者等は、第1管35および第2管36に対して医療用ガスカップリング240を容易に取り付けたり取り外したりすることができ、医療用ガスカップリング240を容易に交換することができる。
【0071】
(第3実施形態)
図8を参照して、本発明の第3実施形態を説明する。
図8に示す第3実施形態の医療用ガスカップリング340は、軸方向Xの一方向に関して酸素ガスの供給を停止できるので、一方向型の防火用カップリングである。図7に関して前述した医療用ガスカップリング240が第1接続端部256および第2接続端部257の少なくともいずれかにおいてカプラ形状の係合部分を有することに対して、本実施形態の医療用ガスカップリング340は、図6に示す第1接続端部56と同様な構造の第1接続端部356と、第2接続端部57と同様な構造の第2接続端部357と、を有している、この点において、本実施形態の医療用ガスカップリング340は、図7に関して前述した医療用ガスカップリング240とは異なる。第1接続端部356には、第1スプリング371が配置されている。医療用ガスカップリング340のその他の要素は、図7に示す医療用ガスカップリング240の対応する要素と実質的に同じである。
【0072】
本実施形態の医療用ガスカップリング340によれば、第1接続端部356および第2接続端部357の形状は、高い汎用性を有する。すなわち、第1接続端部356および第2接続端部357は、酸素濃縮装置に使用される一般的な可撓性を有するプラスチック製の管に接続可能とされている。これにより、本実施形態の医療用ガスカップリング340は、種々の酸素濃縮装置に使用可能とされている。
【0073】
(第4実施形態)
図9を参照して、本発明の第4実施形態を説明する。
図9に示す第4実施形態の医療用ガスカップリング440は、軸方向Xの一方向に関して酸素ガスの供給を停止できるので。一方向型の防火用カップリングである。図7に関して前述した医療用ガスカップリング240が第1接続端部256および第2接続端部257の少なくともいずれかにおいてカプラ形状の係合部分を有することに対して、本実施形態の医療用ガスカップリング440は、簡単な構造の筒状の第1接続端部456および第2接続端部457を有している。第1接続端部456には、第1スプリング471が配置されている。これにより、医療用ガスカップリング440の構造を簡単化できる。医療用ガスカップリング440のその他の要素は、図7に示す医療用ガスカップリング240の対応する要素と実質的に同じである。
【0074】
本実施形態の医療用ガスカップリング440によれば、第1接続端部456および第2接続端部457の構造を簡易化することができるとともに、第1接続端部456および第2接続端部457の形状は、高い汎用性を有することができる。これにより、本実施形態の医療用ガスカップリング440は、第1接続端部456および第2接続端部457の構造を簡易化しつつ、種々の酸素濃縮装置に使用可能とされている。
【0075】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。例えば、酸素ボンベを備え、停電時酸素ボンベからの酸素供給に切り替えるようにした酸素濃縮装置を濃縮酸素ガスの供給源にしても良い。上記実施形態の構成は、その一部を省略したり、上記とは異なるように任意に組み合わせたりすることができる。
【符号の説明】
【0076】
1:酸素濃縮装置、 2:装置本体、 3:操作パネル部、 4:取っ手、 5:キャスタユニット、 6:酸素供給ノズル、 7:酸素供給量表示部、 8:設定ボタン、 9:電源スイッチ、 10:表示部、 15:酸素ガス供給装置、 20:鼻カニューレ、 21:ソケット、 22:管、 23:鼻孔挿入用ノズル、 30:鼻カニューレ、 31:ソケット、 33:鼻孔挿入用ノズル、 35:第1管、 35A:第1端部、 35B:第2端部、 36:第2管、 36A:第1端部、 36B:第2端部、 40:医療用ガスカップリング、 50:本体、 51:第1部分、 51D:接続端面、 51F:フランジ部、 52:第2部分、 52D:接続端面、 52F:フランジ部、 53:中空部、 53R:内周面、 54:シール材、 55:締結部材、 56:第1接続端部、 56A:外端部、 56B:内端部、 56H:中空穴、 56K:傾斜部分、 56M:係合部分、 57:第2接続端部、 57A:外端部、 57B:内端部、 57H:中空穴、 57K:傾斜部分、 57M:係合部分、 60:弁体、 61、62:曲面部分、 63、64:平面部分、 65:第1突出部、 66:第2突出部、 67:第1シール部材、 68:第2シール部材、 71:第1スプリング、 71S:一端部、 72:第2スプリング、 72S:一端部、 100:空気取入口、 101:フィルタ、 102:吸気フィルタ、 104:冷却用ファン、 105:コンプレッサ、 107:3方向切換弁、 108a、108b:吸着筒、 111:製品タンク、 112:圧力調整器、 114:酸素濃度センサ、 115:流量調節器、 118:開放弁、 120:排気マフラ、 121:排気口、 123:モータ制御部、 123a:可変速度制御器、 124:制御部、 125:スイッチング電源部、 127:充電式バッテリ、 130:AC電源コネクタ、 132:ショックセンサ、 135:加速度センサ、 240:医療用ガスカップリング、 250:本体、 251:第1部分、 252:第2部分、 253:中空部、 256:第1接続端部、 256H:中空穴、 256M:係合部分、 257:第2接続端部、 257H:中空穴、 257M:係合部分、 260:弁体、 265:突出部、 266:凹部、 267:第1シール部材、 271:第1スプリング、 271S:一端部、 272:第2スプリング、 340:医療用ガスカップリング、 356:第1接続端部、 357:第2接続端部、 371:第1スプリング、 440:医療用ガスカップリング、 456:第1接続端部、 457:第2接続端部、 471:第1スプリング、 FR:火炎、 T:ガス導通路、 VP:減圧手段
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