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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-21
(45)【発行日】2022-01-31
(54)【発明の名称】太陽電池及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/0749 20120101AFI20220124BHJP
   H01L 31/18 20060101ALI20220124BHJP
【FI】
H01L31/06 460
H01L31/04 420
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019182440
(22)【出願日】2019-10-02
(62)【分割の表示】P 2016519440の分割
【原出願日】2014-06-12
(65)【公開番号】P2019220725
(43)【公開日】2019-12-26
【審査請求日】2019-10-10
(31)【優先権主張番号】10-2013-0068897
(32)【優先日】2013-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2014-0031121
(32)【優先日】2014-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2014-0066764
(32)【優先日】2014-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】515129607
【氏名又は名称】ジョン,ヨン-クォン
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,ヨン-クォン
【審査官】原 俊文
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-155237(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0017976(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102244111(CN,A)
【文献】特開2009-084112(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/02-31/078
H01L 31/18-31/20
H01L 51/42-51/48
H02S 10/00-10/40
H02S 30/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互対向するように配置される2つの電極の間に光吸収層が形成される太陽電池において、前記電極と光吸収層との間に、内蔵電界を形成する電気分極物質を含む電気分極層が形成されており、
前記電気分極層の層厚は、10nm~100nmであり、
前記電気分極層はバッファ層の役割も遂行し、
前記電気分極層はZrPbO、NHPO、(NHIO、Cu(HCOO)・4H、CCTO(CaCu Ti 12 )、(Mg,Fe)SiO 、CaSiO の中から選択された1種以上を含む太陽電池。
【請求項2】
前記光吸収層は、M1、M2、X(ここで、M1は、Cu、Ag、またはこれらの組み合わせ、M2は、In、Ga、Al、Zn、Ge、Sn、またはこれらの組み合わせ、Xは、Se、S、またはこれらの組み合わせである)、及びこれらの組み合わせからなる化合物を含む請求項1に記載の太陽電池。
【請求項3】
前記光吸収層は、p型半導体、n型半導体、i型(真性)半導体のいずれか1つ以上を含む請求項1に記載の太陽電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池及びその製造方法に関し、より詳細には、CIGS、染料感応型のような薄膜太陽電池は勿論、結晶質シリコン太陽電池に、自発分極及び/または残留分極特性を有し、内蔵電界を形成する電気分極物質層を光吸収層に隣接して配置することにより太陽電池の光電変換効率を向上させた、太陽電池の構造及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜太陽電池技術は、現在、最大の市場占有率を示している結晶質Si太陽電池と比較される次世代の太陽電池技術であって、薄膜太陽電池は、結晶質Si太陽電池よりも効率は高いものの、低コストでの製造が可能な太陽電池である。
【0003】
薄膜太陽電池は、多様な種類が開発されているが、その代表的な例として、CIGS(Cu(In,Ga)Se)太陽電池が挙げられる。
【0004】
CIGS太陽電池とは、一般的なガラスを基板として、基板-背面電極-光吸収層-バッファ層-前面透明電極などからなる電池であり、このうち、太陽光を吸収する光吸収層がCIGSまたはCIS(CuIn(S,Se))からなる電池を意味する。前記CIGSまたはCISのうち、CIGSがより広範囲に用いられているので、以下では、CIGS太陽電池について説明するようにする。
【0005】
CIGSは、I-III-IV族黄銅鉱(chalcopyrite)系化合物半導体であって、直接遷移型のエネルギーバンドギャップを有しており、光吸収係数が約1×10cm-1と半導体の中で最も高い方に属し、膜厚1μm乃至2μmの薄膜であっても高効率の太陽電池の製造が可能な物質である。
【0006】
CIGS太陽電池は、室外においても電気光学的に長期安定性に非常に優れ、輻射線に対する抵抗力に優れていることから、宇宙船用の太陽電池にも適した太陽電池である。このようなCIGS太陽電池は、一般的には、ガラスを基板として用いるが、ガラス基板の他にも、高分子(例:ポリイミド)または金属薄膜(例:ステンレス鋼、Ti)基板の上に蒸着して、フレキシブル太陽電池の形態に製造することもでき、特に、最近、薄膜太陽電池の中で最も高い、19.5%のエネルギー変換効率が具現されるようになったことで、シリコン結晶質太陽電池を代替し得る低価型の高効率薄膜型太陽電池であって、商業化可能性が非常に高い太陽電池として知られている。
【0007】
CIGSは、カチオンであるCu、In、Gaと、アニオンであるSeとを、それぞれ異なる金属イオンまたはアニオンに代わって用いることができ、これを通称してCIGS系化合物半導体と表すことができる。代表的な化合物は、Cu(In,Ga)Seであり、このようなCIGS系化合物半導体は、構成しているカチオン(例:Cu、Ag、In、Ga、Al、Zn、Ge、Snなど)及びアニオン(例:Se、S)の種類と組成を変化させると、結晶格子定数だけでなく、エネルギーバンドギャップを調節することができる物質である。
【0008】
したがって、CIGS物質を含んで、類似した化合物半導体物質からなる光吸収層を用いることもできる。前記光吸収層は、M1、M2、X(ここで、M1は、Cu、Ag、またはこれらの組み合わせ、M2は、In、Ga、Al、Zn、Ge、Sn、またはこれらの組み合わせであり、Xは、Se、S、またはこれらの組み合わせである)及びこれらの組み合わせからなる化合物を含むことができる。例えば、最近は、低価型の化合物半導体物質として、CuZnSnS(CZTS)やCuSnGe(CTGS)などの物質を用いたりもする(ここで、x、yは任意の正の素数である)。
【0009】
一方、従来の薄膜太陽電池においても、圧電素子(piezoelectric device)との融合を通じて効率をさらに増加させるための技術が開発されている。
【0010】
例えば、Wangらによる下記特許文献1には、ハイブリッド太陽光発電機(hybrid solar nanogenerator)において、染料太陽電池(dye-sensitized solar cell)の電極に直列または並列にZnOナノワイヤ(nanowire)を用いた圧電ナノ発電素子(piezoelectric nanogenerator)を設置し、機械的振動によって生成された電荷を収集して光電流とともに発電量に資するようにすることで、効率を改善させる方法が提示されている。ところが、下記特許文献1に開示された技術は、機械的振動を発生させるためのエネルギーと装置が付加的に必要となるため、経済性に劣る短所がある。
【0011】
また、下記特許文献2には、電場の向上効果によって改善した光転換効率を示すことができる太陽電池技術が開示されているが、この技術は、薄膜太陽電池の電極に電界放出効果を有するナノロッド、ナノワイヤまたはナノチューブなどの形態を有するナノ構造物を含んだ電界放出層を形成し、光によって光活性層から発生した電子と正孔を各電極に効果的に伝達することにより太陽電池の光電変換効率を向上させるためのものであるが、実際、多様な薄膜太陽電池に適用したところ、効率の改善効果はわずかであるものの、一方、ナノ構造物の作製に所要される工程費用が増加してしまい、特許文献1に開示された技術と同様に経済性に劣るという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】米国登録特許公報US7,705,523(2010年4月27日)
【文献】韓国公開特許公報第2011-0087226号(2011年8月2日)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上述した問題点を解決するために案出されたものであって、従来の薄膜太陽電池や通常的な太陽電池の光電変換効率をさらに改善することができる、新たな太陽電池の構造及び製造方法を提供することにその目的がある。
【0014】
また、本発明の他の目的は、特に、ハイブリッド圧電発電型太陽電池や電界放出層電極を用いた太陽電池とは異なって、追加の工程費用がないか或いは少ないながらも、光電変換効率を向上させることができる、経済的な太陽電池の構造及び製造方法を提供することである。
【0015】
また、本発明のまた他の目的は、自発分極(spontaneous polarization)または残留分極(remanent polarization)特性を有する電気分極(electrical polarization)物質を、光吸収層に隣接して配置することにより、内蔵電界(built-in electric field)を形成し、光吸収によってp-n接合半導体内で生成された電子と正孔の再結合(recombination)を減少させるとともに、電極への収集(collection)効率を改善して効率を増大することができる、太陽電池の構造および製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述した目的を達成するための本発明の第1の側面は、相互対向するように配置される2つの電極の間に光吸収層が形成される太陽電池において、前記電極と光吸収層との間に、内蔵電界を形成する電気分極物質を含む電気分極層が形成されている太陽電池を提供することである。
【0017】
上述した目的を達成するための本発明の第2の側面は、相互対向するように配置される2つの電極の間に光吸収層が形成され、前記光吸収層の一面にバッファ層が形成される化合物半導体太陽電池において、前記バッファ層が、内蔵電界を形成する電気分極物質を含む太陽電池を提供することである。
【0018】
上述した目的を達成するための本発明の第3の側面は、相互対向するように配置される2つの電極の間に光吸収層が形成される太陽電池において、前記光吸収層が、内蔵電界を形成する電気分極物質を含む太陽電池を提供することである。
【0019】
上述した目的を達成するための本発明の第4の側面は、相互対向するように配置される2つの電極の間に光吸収層が形成される太陽電池において、前記太陽電池の1つ以上の電極に、内蔵電界を形成する電気分極物質を含む電気分極層が直列に連結されたものを含む太陽電池を提供することである。
【0020】
また、前記電気分極物質は、自発分極特性を有してもよい。
【0021】
また、前記電気分極物質は、残留分極特性を有してもよい。
【0022】
また、前記電気分極物質は、強誘電体またはこれを含む複合物質であってもよい。
【0023】
また、前記電気分極物質は、反強誘電体またはこれを含む複合物質であってもよい。
【0024】
また、前記電気分極物質は、ペロブスカイト結晶構造を有してもよい。
【0025】
また、前記2つの電極に隣接して2つ以上の電気分極層が形成されてもよい。
【0026】
また、前記電気分極物質は、トンネリング誘電体またはキャパシタの特性を有してもよい。
【0027】
また、前記電極分極物質は、2.54eV以下のバンドギャップエネルギーを有する物
質を含んでいてもよい。
【0028】
また、前記電気分極物質層の層厚は、10nm~100nmであってもよい。
【0029】
また、前記光吸収層は、 M1、M2、X(ここで、M1は、Cu、Ag、またはこれらの組み合わせ、M2は、In、Ga、Al、Zn、Ge、Sn、またはこれらの組み合わせ、Xは、Se、S、またはこれらの組み合わせである)、及びこれらの組み合わせからなる化合物を含んでいてもよい。
【0030】
また、前記強誘電体は、BaTiO(BTO)、PbZrTiO(PZT)、SrTiO、CaTiO、CuTiO、KTaO、KNbO、NaNbO、LiNbO、ZrHfO、BiFeO、及びトルマリンの中から選択された1種以上を含んでいてもよい。
【0031】
また、前記反強誘電体は、ZrPbO、NHPO、(NHIO、Cu(HCOO)・4HOの中から選択された1種以上を含んでいてもよい。
【0032】
また、前記ペロブスカイト結晶構造を有する 物質は、CCTO(CaCuTi12)、(Mg,Fe)SiO、CaSiOの中から選択された1種以上を含んでいてもよい。
【0033】
また、前記光吸収層は、p型半導体、n型半導体、i型(真性)半導体のいずれか1つ以上を含んでいてもよい。
【0034】
上述した目的を達成するための本発明の第5の側面は、相互対向するように配置される2つの電極の間に光吸収層が形成される太陽電池の製造方法であって、前記電極と光吸収層の間または前記光吸収層に、内蔵電界を形成する電気分極物質からなる電気分極層を形成する太陽電池の製造方法を提供する。
【0035】
また、前記電気分極層の両端に電場を印加して内蔵電界を増加させてもよい。
【0036】
また、前記内蔵電界を増加させるための電場は、太陽電池の逆方向破壊電圧以内で印加されてもよい。
【0037】
また、前記電気分極層を、物理気相蒸着(PVD)、化学気相蒸着(CVD)、原子層蒸着(ALD)、またはウェットコーティング方法により形成してもよい。
【0038】
また、前記電気分極層を原子層蒸着で形成する場合、Ca化合物前駆物質とCu化合物前駆物質のいずれか一方または両方と、Ti化合物前駆物質とを前記光吸収層に吸着させるステップと、前記前駆物質の吸着層を酸化反応によって酸化物に形成するステップとを含む過程を通じて形成してもよい。
【0039】
また、前記Ca化合物前駆物質は、Ca(Thd)(Tetraen)及びCa(thd)の中から選択された1つ以上であってもよい。
【0040】
また、前記Cu化合物前駆物質は、Cu(hfac)(tmvs)[=C1013CuFSi]、Cu(hfac)[=Cu(CFCOCHCOCF]、(hfac)Cu(DMB)[=Cu(CFCOCHCOCF)[CHCHC(CH]]、Cu(ethylketoiminate)[=Cu[(CHCOCHCN(CHCH)CH)]]の中から選択された1つ以上であってもよい。
【0041】
また、前記Ti化合物前駆物質は、Ti(O-iPr)(DPM)[=Ti(CO)(C1119]、TiO(thd)[=TiO(C1120]の中から選択された1つ以上であってもよい。
【0042】
また、前記電気分極層は、前記光吸収層の一面に金属酸化物層を形成するステップと、前記光吸収層と金属酸化物層の間で化学反応を起こすステップとを含む工程を通じて形成されてもよい。
【0043】
また、前記金属酸化物層は、物理気相蒸着(PVD)、化学気相蒸着(CVD)、または原子層蒸着(ALD)により形成されてもよい。
【0044】
また、前記金属酸化物層は、Tiを含む前駆物質を用いて原子層蒸着により形成されてもよい。
【0045】
また、前記Tiを含む前駆物質は、テトラキス(ジメチルアミノ)チタン、テトラキス(ジエチルアミド)チタン、テトラキス(エチルメチルアミド)チタン、テトライソプロポキシド、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0046】
また、前記ウェットコーティング方法は、化学的液相成長、スピンコーティング、ドクターブレードコーティング、ドロップキャスティング、スクリーンプリンティング及びインクジェットプリンティングの中から選択された1つ以上であってもよい。
【0047】
また、前記ウェットコーティング方法は、金属酸化物が溶解された溶液を準備するステップと、前記溶液をコーティングするステップと、熱処理を行うステップとを含んでもよい。
【0048】
また、前記金属酸化物は、Tiを含む化合物であってもよい。
【0049】
また、前記金属酸化物は、TiとCuを含む化合物であってもよい。
【発明の効果】
【0050】
本発明にかかる太陽電池は、太陽電池の光吸収層に隣接して自発分極または残留分極により内蔵電界を形成した電気分極層が配置されているため、前記内蔵電界を通じて光吸収によってp-n接合半導体内で生成された電子と正孔の再結合を減少させるとともに、電極への収集効率を改善し、光電変換効率を増大させることができる。
【0051】
また、本発明の一様態にかかるCIGS薄膜太陽電池の場合、従来のバッファ層に代わって電気分極層を形成する場合、追加の工程費用を最小化するとともに、光電変換効率を向上させ得るCIGS薄膜太陽電池を製造することができる。
【0052】
また、本発明の他の様態にかかる太陽電池の場合、光吸収が可能でありつつ、電気分極特性を具現し得る物質を含ませて光吸収層を製造する場合、追加の工程費用を最小化するとともに、光電変換効率を向上させ得る太陽電池を製造することができる。
【0053】
また、本発明にかかる太陽電池は、薄膜太陽電池は勿論、既存の結晶質シリコン太陽電池にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】電極と光吸収層との間に内蔵電界を発生する電気分極層が配置された太陽電池において光電流が増大する効果を説明する図である。
図2】光吸収層が多層からなったとき、前記多層の光吸収層の間に配置された内蔵電界を発生する電気分極層が配置された太陽電池において光電流が増大する効果を説明する図である。
図3】内蔵電界を発生する電気分極層を形成し得る物質を含む光吸収層が形成された太陽電池において光電流が増大する効果を説明する図である。
図4】本発明の実施例にかかる電気分極物質として圧電素子(PZT)のような強誘電体を適用した場合における格子構造とヒステリシス曲線を示した図である。
図5】5a乃至5bは、本発明の実施例にかかる電気分極物質として用いたCaTiOとCuTiOのペロブスカイト格子構造を示した図である。
図6】本発明の一具現例にかかる太陽電池の構造を示した図である。
図7】本発明の他の具現例にかかる太陽電池の構造を示した図である。
図8】本発明のまた他の具現例にかかるCIGS薄膜太陽電池の構造を示した図である。
図9】本発明の実施例にかかる電気分極層の形成において、SIMS(二次イオン質量分析法)の測定結果であって、厚みに対する組成の変化を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
以下、本発明の実施例について添付の図面を参考にしながら、その構成及び作用を説明する。
【0056】
本発明の説明に当たって、関連の公知の機能または構成に関する具体的な説明が余計に本発明の要旨を不明確にするおそれがあると判断される場合は、その詳細な説明を省略することとする。また、ある部分がある構成要素を“含む”とするとき、これは、特に反対される記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。添付の図面において、膜(層)または領域の大きさや厚みは、明細書の明確性のために誇張して示したものである。
【0057】
本発明においては、追加の費用の必要性を最小化するとともに、光電変換効率を向上させることができる方法について研究した結果、太陽電池の光吸収層と電極との間に内蔵電界が形成された電気分極物質層を介設する場合、図1図1において、IEPは、電気分極層がある時の電流、IPHは、電気分極層がない時の電流である)に示されたように、内蔵電界が光励起(photoexcitation)により半導体内で生成された電荷キャリア(charge carrier)である電子と正孔のそれぞれに対して順方向(電子に対して電子が収集される陰極方向)に電場を印加する効果を奏し、電子と正孔の間の相互再結合を減少させるとともに、電極への収集効率を改善し得ることを見出して、本発明に至るようになった。
【0058】
また、図2図2において、IEPは、電気分極層がある時の電流、IPHは、電気分極層がない時の電流である)に示されたように、光吸収層が多層構造からなった場合、電気分極物質層も各層の間に配置される場合は、電子と正孔の間の相互再結合を減少させる効果が得られる。
【0059】
また、図3に示されたように、光吸収層を、光吸収が可能でありながらも、電気分極を具現することができる物質で形成する場合、別途の追加層を形成すること無しにも、電子と正孔の間の相互再結合を減少させることができる。
【0060】
図4は、電気分極物質の一例であるPZT(PbZrTiO)のような強誘電体の格子構造および電気ヒステリシス曲線を示した図である。図4に示されたように、PZTの場合、自発分極特性があり、外部電場によって左側図の中心にある金属原子(TiまたはZr)が上方または下方に変位される場合、外部電場が除去された後にも残留分極が発生するため、内蔵電界を形成することができる。
【0061】
図5a乃至5bは、電気分極物質の他の例として、ペロブスカイト格子構造を有するCaTiOとCuTiOの格子構造を示した図であり、これらの物質はいずれも自発分極と残留分極の特性を示し、本発明にかかる太陽電池は、このような物質を電極層と光吸収層との間に配置することを特徴とする。
【0062】
図6は、本発明の一具現例にかかる太陽電池の構造を概略的に示した図である。
【0063】
図6に示されたように、本発明の一具現例にかかる薄膜太陽電池100は、基板110と、下部電極120と、光吸収層130と、電気分極層140と、上部電極150とを含んで構成される。
【0064】
このうち、前記基板110としては、ソーダライムガラス(soda-lime glass、SLG)を含むガラス基板、セラミック基板、ステンレス鋼基板を含む金属基板、ポリマー基板などの、当該分野において用いられるものは、いずれも用いることができる。
【0065】
前記下部電極120と上部電極150は、それぞれ、光電効果で生成された電子と正孔を受け入れて外部に伝達するための電極であり、特に、前記上部電極150は、導電性のある透明な物質で形成された透明電極に形成されることがより好ましい。透明電極には、例えば、ITO、FTO、ZnO、ATO、PTO、AZO、IZOのような透明導電性酸化物やカルコゲニドのような物質を用いることができ、本発明の下部電極120と上部電極150の特性を具現可能なものであれば、その物質は制限されるものではない。
【0066】
前記光吸収層130は、1つ以上のn型半導体層と1つ以上のp型半導体層とが積層して形成されるものであって、前記n型半導体層とp型半導体層との間には、さらに光吸収層を備えることもできる。前記n型半導体層とp型半導体層は、無機物、有機物、有機金属化合物、有無機複合体、またはこれらの組み合わせを含有する化合物半導体を含むことができるが、これに制限されるものではない。
【0067】
前記電気分極層140は、自発分極及び/または残留分極現象により内蔵電界を形成し、光励起(photo excitation)によって前記光吸収層130の半導体内で生成された電荷キャリアである電子と正孔のそれぞれに対して順方向に電場を印加し、電子と正孔の間の相互再結合を減少させるための層であって、自発分極及び/または残留分極現象を通じて内蔵電界を形成可能な電気分極物質であれば、どのようなものでも制限なしに用いることができる。電気分極物質としては、強誘電体またはこれらの複合物質や、反強誘電体またはこれらの複合物質、或いはペロブスカイト結晶構造を有する物質などがある。
【0068】
前記電気分極層140は、自発分極特性の他に、外部の電圧源を用いて電気分極層の両端に順方向の電場を印加する場合、残留分極を増加させて、光励起によって生成された電荷キャリアへの順方向の電場を増加させることができる。
【0069】
前記強誘電体としては、BaTiO(BTO)、PbZrTiO(PZT)、SrTiO、CaTiO、CuTiO、KTaO、KNbO、NaNbO、LiNbO、ZrHfO、BiFeO及びトルマリンなどがあり、前記反強誘電体としては、ZrPbO、NHPO、(NH)2HIO、Cu(HCOO)・4HOなどがあるが、必ずしもこれらに制限されるものではない。さらに、強誘電体若しくは反強誘電体ではなくても、CCTO(CaCuTi12)のように残留分極特性を示す物質もまた用いることができる。
【0070】
前記電気分極層140の層厚は、10nm~100nmの範囲で形成することが好ましいが、これは、10nm未満である場合、電気分極層による電界効果が減少し、100nmを超過する場合には、電界効果は増加するものの、電子や正孔が電極まで移動する距離が増加するため、直列抵抗が増加するからである。
【0071】
図7は、本発明の他の具現例にかかる太陽電池の構造を概略的に示した図である。
【0072】
図7に示されたように、本発明の他の具現例にかかる薄膜太陽電池200は、基板210と、下部電極220と、電気分極物質を含む光吸収層230と、上部電極250とを含んで構成される。
【0073】
すなわち、本発明の他の具現例の場合、前記の一具現例の電気分極層140と光吸収層130が1つの層からなることを特徴とする。このような構造の薄膜太陽電池は、製造工程をより簡素化することができる。
【0074】
電気分極層を光吸収層としても活用しようとする場合、前記光吸収層は、p型半導体、n型半導体、i型(真性)半導体のいずれか1つの物質であるか、またはこれらの組み合わせで構成することができる。
【0075】
例えば、TiOのバンドギャップエネルギー(bandgap energy)は3.0~3.2eV程度であって、紫外線吸収及び光励起が可能であり、不純物元素を添加することにより、バンドギャップエネルギーが1.25eVまで減少するようになるため、可視光吸収も可能となる。
【0076】
特に、電気分極特性のあるCuまたはCaとTiを含む酸化物の場合、バンドギャップエネルギーが、CuTiO:0.53eV、CaCuTi12:0.57eV、CaCuTi12:1.22eV、CaCuTi12:2.30eV、CaTiO:2.20~2.54eVであると知られているので、CuとTiを含む酸化物は、その組成によって可視光及び赤外線の吸収も可能となる。
【0077】
これにより、電気分極物質層自体が光吸収層の役割もすることができるようになるため、光吸収層と電気分極物質層をまとめて用いることもできる。
【0078】
図8は、本発明のまた他の具現例にかかるCIGS薄膜太陽電池の構造を概略的に示した図である。
【0079】
図8に示されたように、本発明のまた他の具現例にかかる薄膜太陽電池300は、基板310と、下部電極320と、光吸収層330と、電気分極層340と、バッファ層360と、ウィンドウ層370と、上部電極350とを含んで構成される。
【0080】
前記バッファ層360は、従来のCIGS薄膜太陽電池と同様にCdS薄膜を用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0081】
前記ウィンドウ層370は、バンドギャップが十分大きくて吸収層に到達される可視光の光量を増加させるとともに、電子が電極に収集され得るように抵抗を低くする役割を担うものであって、非制限的な例としてZnOやドープされたZnOなどが用いられる。
【0082】
一方、図8には、電気分極層340の上にバッファ層360を形成したが、電気分極層340によってバッファ層360を適用しないことが経済的であるため、バッファ層360を電気分極層340に代わったことがより好ましい。
【0083】
本発明にかかる太陽電池の製造方法は、一般的な薄膜太陽電池の製造方法に、さらに電気分極層を形成することに特徴がある。
【0084】
前記電気分極層を形成する方法としては、通常的なスパッタリング法、蒸発法のような物理気相蒸着(PVD:physical vapor deposition)法または化学気相蒸着(CVD:chemical vapor deposision)法、さらに原子層蒸着(ALD:atomic layer deposition)法などを用いることができる。
【0085】
このうち、スパッタリング法を用いる場合、真空チャンバ内に形成しようとする電気分極材料のターゲット(target)を設置し、真空状態でArなどの不活性ガスを注入しながらプラズマを発生させ、Arイオンがターゲットに衝突して放出される電気分極物質が光吸収層上に薄膜として形成されるようにすることができる。
【0086】
また、前記蒸発法を用いる場合、真空チャンバの蒸発源ホルダーに電気分極材料の粉末を装入し、抵抗加熱によって該当物質の原子を蒸発させることにより、光吸収層上に電気分極層が形成されるようにすることができる。
【0087】
また、前記化学気相蒸着(CVD)法を用いる場合、前駆体に金属を含む有機金属錯化合物ガスを用いて、アルゴン(Ar)ガス、窒素(N)ガスのような不活性ガスを伝達ガスとして用い、公知の化学気相蒸着条件を通じて電気分極材料の薄膜、すなわち、電気分極層が形成されるようにすることができる。
【0088】
また、前記原子層蒸着(ALD)法を用いる場合、電気分極材料の原料前駆体を流入して吸着させるステップと、パージガスを用いて副産物を脱着させ、残留ガスを除去するステップと、反応ガスを供給して吸着した物質と反応させるステップと、パージガスを用いて副産物を脱着させ、残留ガスを除去するステップとを含むサイクルを繰り返して、所望の層厚で電気分極層を形成することができる。
【0089】
このように形成された電気分極物質の内蔵電界は、強誘電体や反強誘電体の残留分極特性を用いて、電気分極層の両端に所定の電場を印加し、残留分極を増大させるようになると、太陽電池の効率をさらに向上させることができる。
【0090】
[実施例1]
本発明の実施例1では、CIGS薄膜太陽電池を次のような過程を通じて製造した。
【0091】
先ず、SLGガラス基板上に、スパッタリング方法を用いて、Mo層を約1μmの層厚で蒸着して下部電極を形成した。次いで、CIGS薄膜を約2μmの膜厚で蒸着して光吸収層を形成した。
【0092】
CIGS光吸収層を形成する方法としては、Cu、In、Ga、Seなどの元素を個別的に高真空雰囲気で同時に蒸発させ、基板を500~600℃の範囲で加熱して蒸着する同時蒸発法と、Cu、Ga、Inなどの元素を含む前駆体またはCu、Ga、In及びSeを含む前駆体を用いて薄膜を形成した後、HSe気体またはSe蒸気雰囲気でセレン化を進める2ステップ方法などがある。
【0093】
また、前駆体薄膜を形成する方法としては、同時蒸発法とスパッタリング蒸着などの真空方式が最も広く用いられているが、工程費用を低減するために、電気めっき、インクプリンティング、スプレー熱分解法などのような非真空方式も適用されてもよい。
【0094】
本発明の実施例1では、同時蒸発法を適用して、基板温度550℃で30~60分間蒸着し、CIGS光吸収層を形成した。
【0095】
電気分極層を形成する方法としては、光吸収層の一面に金属酸化物層を形成した後、前記光吸収層と金属酸化物層との間で化学反応が起きるようにして、電気分極を形成する物質層を製造する方法を用いることができる。
【0096】
この時、金属酸化物層は、物理気相蒸着(PVD)、化学気相蒸着(CVD)または原子層蒸着(ALD)などの真空蒸着方法を通じて形成することができる。
【0097】
一例として、原子層蒸着法を用い、Ti化合物が混合された前駆体を光吸収層に吸着させるステップと、前記Ti化合物が混合さえた前駆体の吸着層を酸化させて酸化物に形成するステップとを通じて電気分極層を形成することができる。
【0098】
より具体的に、CIGS層上にTiO層を形成するか、形成した後の熱処理を通じてCIGS層を構成するCu、Ga、In原子と、TiO層とが化学反応を起こすようにする方法を通じて、(Cu,Ga,In)Ti(x、yは、任意の正数である)複合化合物層を形成することができるが、この複合化合物は、電気分極層として働くことができる。
【0099】
また、原子層蒸着法を通じて電気分極層を形成する場合、例えば、Ca化合物及び/またはCu化合物とTi化合物が混合された前駆体を用いて形成することもできる。
【0100】
Ca化合物とTi化合物が混合された前駆体を用いて、原子層蒸着法により電気分極層を形成する場合、Ca及びTi化合物前駆物質を前記光吸収層に吸着させるステップと、前記前駆物質の吸着層を酸化反応により酸化物に形成するステップとを含んで形成することができる。
【0101】
この時、Ca化合物前駆体としては、Ca(Thd)(Tetraen)[=C3061CaN]、Ca(thd)[=Ca(C1120]などから1つ以上の物質を適用することができ、Ti化合物前駆体としては、Ti(O-iPr)(DPM)[=Ti(CO)(C1119]、TiO(thd)[=TiO(C1120]などから1つ以上の物質を適用することもできる。
【0102】
また、Cu化合物とTi化合物が混合された前駆体を用い、原子層蒸着法により電気分極層を形成する場合、Cu及びTi化合物前駆物質を前記光吸収層に吸着させるステップと、前記前駆物質の吸着層を酸化反応により酸化物に形成するステップとを含んで形成することができる。
【0103】
この時、Cu化合物前駆体としては、Cu(hfac)(tmvs)[=C1013CuFSi]、Cu(hfac)[=Cu(CFCOCHCOCF]、(hfac)Cu(DMB)[=Cu(CFCOCHCOCF)[CHCHC(CH]]、Cu(ethylketoiminate)[=Cu[(CHCOCHCN(CHCH)CH)]]の中から選択された1つ以上の物質を適用することができ、Ti化合物前駆体としては、Ti(O-iPr)(DPM)[=Ti(CO)(C1119]とTiO(thd)[=TiO(C1120]の中から1つ以上の物質を適用することもできる。
【0104】
本発明の実施例1では、CIGS層上に原子層蒸着法を用いてTiO薄膜を200℃以上の温度で蒸着するか、200℃以下の温度でTiO薄膜を蒸着した後に、200℃以上の温度で熱処理する過程を通じて、CIGS層を構成するCu、Ga及び/またはIn原子との相互拡散及び化学反応により、CuTiO及びGaTiOを含む金属酸化物からなる電気分極層が形成されるようにした。
【0105】
より具体的に、TiO薄膜を形成する場合、Ti化合物前駆体としては、tetrakis(dimethylamino)titanium(TDMAT:Ti[N(CH
])、tetrakis(diethylamido)titanium(TDEAT:Ti[N(C])、tetrakis(ethylmethylamido)titanium(TEMAT:Ti[N(C)(CH)])、tetraisopropoxide(TTIP:Ti[OCH(CH])などを用いることができる。
【0106】
さらに、原子層蒸着ステップは、時間帯別で4つの区間に区分した工程が繰り返して進められる。
【0107】
先ず、Arを希釈ガスとし、Ti化合物前駆体を用いて前駆物質を吸着させて前駆物質(Ti化合物)の吸着層を形成するステップ(第1のステップ)と、Arガスで副産物と残留ガスを除去するステップ(第2のステップ)と、酸素を注入しながらプラズマを発生させ、吸着層との酸化反応を起こすステップ(第3のステップ)と、Arガスで副産物と残留ガスを除去するステップ(第4のステップ)とを含んで、TiO薄膜またはTi化合物の酸化膜を形成する。
【0108】
例えば、前記第1のステップは0.3~5秒間、第2のステップは10~20秒間、第3のステップは3~5秒間、第4のステップは10~20秒間進められ、反応温度は、100~300℃で前記4つのステップを1つのサイクルとし、成膜膜厚と成膜速度(約0.1nm/sec)に応じて100~500サイクルを繰り返すと、50nmの膜厚まで電気分極物質を形成することができる。
【0109】
好ましくは、200℃で、第1のステップは1秒間、第2のステップは10秒間、第3のステップは3秒間、第4のステップは5秒間で構成された原子層蒸着サイクルを500回適用して形成されるTiOとCIGS層が化学的に反応するようにして、約50nmのTi化合物の酸化物質からなる電気分極層が形成されるようにする。この時、それぞれのステップにおいて、気体の注入速度は50sccmを適用することができ、第1のステップでは、Ti化合物前駆体とともに水素(H)気体を同時に適用することもできる。
【0110】
図9は、本発明の実施例1によって作製したCIGS薄膜及び電気分極層に対して、SIMSを用いて厚みによる組成の変化を測定した結果であって、TiO薄膜を200℃で蒸着する間に、TiO層がCIGS薄膜中のCu、Ga及びIn原子との相互拡散及び化学反応により、界面において混合酸化物[(Cu,Ga,In)Ti]からなる電気分極層が幅広く形成されることを示している。
【0111】
一方、本発明の実施例1では、電気分極層を光吸収層と電極との間に1つの層のみを配置したが、両方の電極に隣接して電子の収集方向と正孔の収集方向のそれぞれに対して導入することにより内蔵電界を両方に形成するなど、1つの太陽電池内に2つ以上の電気分極層を適用することができる。
【0112】
一方、前記電気分極層上に従来のCIGS太陽電池と同様に、約50nmの層厚のCdS層からなるバッファ層を形成することもできるが、本発明の実施例1にかかる電気分極層は、バッファ層の役割も遂行することができ、CdS層を形成しないことが製造コストの面で好適であるため、CdS層は形成しなかった。
【0113】
最後に、前記電気分極層上に約0.5μmの層厚でITO層を蒸着してウィンドウ層を形成し、前記ウィンドウ層上にAlグリッド層を形成して上部電極を形成することにより、CIGS薄膜太陽電池を完成した。
【0114】
このように製造されたCIGS薄膜太陽電池の電気分極層は、自発分極を通じて内部電界を形成する。
【0115】
下記表1は、本発明の実施例1によって製造したCIGS薄膜太陽電池の特性を評価した結果を示したものである。
【0116】
【表1】
【0117】
上記表1から確認されるように、本発明の実施例1によって製造されたCIGS薄膜太陽電池は、42%以上の高い光電変換効率を示した。
【0118】
また、本発明の実施例1にかかる太陽電池の場合、外部から順方向または逆方向にかかわらず電場を印加すると電流が発生したので、前記電気分極層は、内蔵電界を提供するとともに、電荷キャリアに対してトンネリング誘電体(またはキャパシタ)の役割をするものと示された。
【0119】
特に、電気分極層は、自発分極特性以外に、外部の電圧源を用いて電気分極層の両端に順方向の電場を印加する場合、残留分極を増加させて、光励起により電荷キャリアに対する順方向の電場を増加させることができる。
【0120】
[比較例]
本発明の比較例では、実施例1と同一の構造を有するCIGS薄膜太陽電池を形成したが、電気分極層を除いた他は、実施例1と同一に製造した。
【0121】
ここでは、電気分極層を形成するに当って、電気分極効果を確認するために、絶縁薄膜層を電気分極層を形成する前に介在させることにより電気分極効果が減少するか否かについて確認を行った。絶縁薄膜層としては、絶縁物質であるAl薄膜を、Al化合物前駆体を用いて原子層蒸着法で約10nmの膜厚で形成した。
【0122】
この時、ALD工程の適用に際して、Al化合物前駆体としては、アルミニウムヒドリド(aluminum hydride:AlH)、トリメチルアルミニウム(trimethylaluminum:(CHAl)、ジメチルアルミニウムヒドリド(dimethyl aluminum hydride:(CHAlH)、ジメチルエチルアミンアラン(dimethylethylamine alane:[(CHN]AlH)の中から選択された1種以上を用いた。
【0123】
原子層蒸着ステップは、実施例1と類似に、時間帯別で4つの区間に区分して進められ、具体的に、Arを希釈ガスとしてAl-前駆体を吸着させる第1のステップと、Arガスで副産物と残留ガスを除去する第2のステップと、酸素プラズマを発生させて酸化反応を起こす第3のステップと、Arガスで副産物と残留ガスを除去する第4のステップとを通じて、Al薄膜を形成した。一方、第1のステップでは、Al化合物前駆体とともに水素(H)気体を同時に適用することもできる。
【0124】
このとき、前記第1のステップは0.3~5秒間、第2のステップは10~20秒間、第3のステップは3~5秒間、第4のステップは10~20秒間進められ、反応温度は、100~300℃で前記4つのステップを1つのサイクルとし、成膜膜厚と成膜速度(約0.2nm/sec)に応じて50~1000回のサイクルを繰り返して10~20nmの層厚で絶縁薄膜層を形成することができ、本比較例では、100℃で、第1のステップは0.1秒間、第2のステップは10秒間、第3のステップは3秒間、第4のステップは5秒間で構成された原子層蒸着サイクルを50回適用して、約10nmのAl2O3物質からなる薄膜層を形成することができた。
【0125】
その後、Al絶縁薄膜層上に、実施例1と同様に、Ti化合物前駆体を用いて原子層蒸着法で電気分極層を形成し、その結果、約10nmのAl絶縁薄膜層と混合酸化物[(Cu,Ga,In)Ti]の電気分極層が形成された太陽電池を作製した。
【0126】
このように作製した太陽電池は、効率(%)が3.3%と実施例1に比べて効率が相当低い値を示した。これは、絶縁薄膜層が介在することによって、電気分極層の形成が減少して現れた結果であると類推することができる。
【0127】
下記表2は、比較例によって作製した太陽電池に逆方向電圧を印加して残留分極を形成した後に光電流を測定した結果を示したものであるが、表2に示されたように、-5Vの逆方向電圧を印加すると、太陽電池の光電流が急激に増加する現象を見せており、このような現象は、太陽電池の内部に形成された電気分極層の残留分極が増加することに起因した結果であると類推される。
【0128】
以上より分かるように、電気分極層を有する太陽電池において、残留分極を増加させ得る範囲で逆方向電圧を印加すると、太陽電池の効率を改善することができる。
【0129】
【表2】
【0130】
一方、太陽光の照射がない暗(dark)状態で太陽電池セルに逆方向バイアスを増加させると、リーク電流(leakage current)が急激に増加し且つセルが破壊される破壊電圧(breakdown voltage)が存在するが、実験によると、セルによって-3~-7Vの間の値を示す。したがって、電気分極を増加させるための逆方向電圧は、無限に高い値を加えることはできず、太陽電池セルの破壊電圧以内で印加しなければならない。
【0131】
[実施例2]
本発明の実施例1においては、真空蒸着方法を適用して太陽電池を製造したが、非真空蒸着方法である、化学的液相成長(chemical bath deposition;CBD)、スピンコーティング(spin coating)、ドクターブレードコーティング(doctor-blade coating)、ドロップキャスティング(drop-casting)、スクリーンプリンティング(screen printing)及びインクジェットプリンティング(inkjet printing)などのウェットコーティング方法を用いて形成することができ、本発明の実施例2にかかる太陽電池は、ウェットコーティング方法を適用して電気分極層を形成したものを含む。
【0132】
先ず、SLGガラス基板上に、スピンコーティング方法を用い、AgまたはCu層を約1μmの層厚でコーティングして下部電極を形成する。次いで、p-n接合(junction)構造の半導体からなるCIGSを作製するために、Cu、In、Ga、Se、Sなどの構成元素を含む前駆体溶液を製造し、スピンコーティング及びドクターブレードコーティングなどで基板上に形成し、これを熱処理することにより約3μmの厚みで蒸着し、光吸収層を形成する。
【0133】
前記前駆体物質は、化合物原料として CuAc・HO、InAc、GaClなどをエタノール(ethanol)とエチレングリコール(ethyleneglycol)に溶解した溶液を用いるか、CuCl・2HO、InCl、GaClとSe原料をジエチルアミン(diethylamine)に溶解した溶液、CuIまたは[Cu(CHCN)](BFとInI、GaIが溶解されたピリジン(pyridine)溶液とNaSeが溶解されたメタノール(methanol)溶液を混合した溶液、または、CuS、InSe、Ga、S、Seなどの原料を溶解したヒドラジン(hydrazine)溶液などを用いることを含む。
【0134】
電気分極層は、例えば、Cu、Ti、Oなどの構成元素を含む前駆体溶液を製造し、ウェットコーティングで基板上に薄膜層を形成して、これを熱処理することにより形成される。このような場合、次のようなステップを通じて、電気分極物質を有するCIGS薄膜太陽電池を作製することができる。
【0135】
具体的に、光吸収層の表面にスピンコーティング方法を用いて、CuTiO薄膜を約10~100nmの厚みで形成し、電気分極層を形成する。このとき、Cu前駆体としては、CuAc・HO、CuCl・2HO、CuI、[Cu(CHCN)](BFの中から1つ以上の物質を用い、Ti前駆体として、塩化チタン(TiCl)、チタンイソプロポキシド[Ti(OCH(CH]やチタンブトキシド[Ti(O(CHCH]の中から1つ以上の物質を用いる。これらの前駆体をエタノール(ethanol)やイソプロパノール(iso-propanol)に1Mの濃度で希釈し、pH1.5以上の希釈硝酸溶液、IPAなどを混合して溶液を形成し、酸化/還元反応を通じて、CuTiOを含んで(Cu,Ti)薄膜を形成することができる。
【0136】
最後に、前記電気分極層上に、約1μmの層厚で、Ag層をスクリーンプリンティング方法で形成して上部電極を形成することにより、CIGS薄膜太陽電池を完成した。
【0137】
[実施例3]
本発明の実施例1及び実施例2においては、太陽電池内に電気分極層を形成する場合の例を記述したが、太陽電池の外部において電気分極層を直列に連結して適用することもできる。すなわち、基板-下部電極-光吸収層(またはp-n接合半導体層)-上部電極からなる一般的な太陽電池構造において、基板と下部電極との間または上部電極の上側、或いはこれらを含めて両方に電気分極層が電極に直列に連結されるように形成すると、電気分極層の自発分極を用いるか、電気分極層に電場を印加して形成される残留分極を用いて、太陽電池で収集される電子と正孔に対して順方向の電界を印加する効果が得られるようになる。
【0138】
このような場合であっても、上述した電気分極層の形成方法を同様に適用することができ、ただし、電気分極層に電場を印加するために、電気分極層の上部及び下部の両面に電極が連結されるように電極を追加形成するステップを含んでいてもよい。一方、この時は、電気分極層の層厚やトンネリング特性について特別な制限を設けない。
【0139】
また、前記電気分極物質は、光吸収層が、p型半導体、n型半導体、i型(真性)半導体のいずれか1つの物質であるか、これらの組み合わせで構成される太陽電池の構造のすべてに適用することができる。
【0140】
以上のような内蔵電界を有する太陽電池の構造は、Si薄膜太陽電池、染料感応型太陽電池、有機太陽電池などの基板を用いる他の薄膜型太陽電池や、結晶質太陽電池などの通常的な太陽電池に対しても、同一の効果のために適用することができる。
【0141】
以上を通じて本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、特許請求の範囲と発明の詳細な説明及び添付図面の範囲内で色々と変形して実施することができ、これもまた本発明の範囲に属することは言うまでもない。
【符号の説明】
【0142】
100、200、300:太陽電池
110、210、310:基板
120、220、320:下部電極
130、230、330:光吸収層
140、240、340:電気分極層
150、250、350:上部電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9