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特許7013430負極集電体、負極シート及び電気化学装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-21
(45)【発行日】2022-02-15
(54)【発明の名称】負極集電体、負極シート及び電気化学装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/64 20060101AFI20220207BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20220207BHJP
【FI】
H01M4/64 A
H01M4/66 A
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019192005
(22)【出願日】2019-10-21
(65)【公開番号】P2020184515
(43)【公開日】2020-11-12
【審査請求日】2019-10-21
(31)【優先権主張番号】201910350620.0
(32)【優先日】2019-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】劉欣
(72)【発明者】
【氏名】黄起森
(72)【発明者】
【氏名】梁成都
【審査官】増山 淳子
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-273132(JP,A)
【文献】特開2011-060560(JP,A)
【文献】特開2016-018653(JP,A)
【文献】国際公開第2016/031690(WO,A1)
【文献】特開2003-031224(JP,A)
【文献】国際公開第2013/047432(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/64
H01M 4/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極集電体であって、
前記負極集電体は、支持層と、前記支持層自体の厚さ方向における対向する2つの表面のうちの少なくとも一方に設けられる導電層とを備え、
前記導電層は、金属材料を含み、前記金属材料は、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン及び銀のうちの1種または複数種であり、
前記支持層は、高分子材料及び高分子基複合材料のうちの1種または複数種を含み、
前記高分子材料は、ポリアミド、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、ポリアセチレン、シリコーンゴム、ポリオキシメチレン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエチレングリコール、ポリ窒化硫黄系高分子材料、ポリパラフェニレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピリジン、セルロース、澱粉、タンパク質、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、それらの誘導体、それらの架橋物、およびそれらの共重合体のうちの1種または複数種であり、
前記高分子基複合材料は、前記高分子材料と添加剤とを含み、前記添加剤は、金属材料及び無機非金属材料のうちの1種または複数種を含み、
前記支持層の密度は、前記導電層の密度よりも小さく、
前記導電層の厚さDは、300nm≦D≦2μmを満たし、
前記負極集電体の引張歪が1.5%であるとき、前記導電層のシート抵抗増加率Tは、T≦5%を満たし、
前記支持層の体積抵抗率は、1.0×10-5Ω・m以上であり、
前記支持層のヤング率Eは、E≧4GPaを満たし、
前記導電層の体積抵抗率は、1.3×10-8Ω・m~1.3×10-7Ω・mであることを特徴とする負極集電体。
【請求項2】
前記導電層の厚さDは、500nm≦D≦1.5μmを満たすことを特徴とする請求項1に記載の負極集電体。
【請求項3】
前記導電層のシート抵抗増加率Tは、T≦2.5%を満たすことを特徴とする請求項1に記載の負極集電体。
【請求項4】
前記導電層の体積抵抗率は、1.3×10-8Ω・m~3.3×10-8Ω・mであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の負極集電体。
【請求項5】
前記導電層の体積抵抗率は、1.65×10-8Ω・m~3.3×10-8Ω・mであることを特徴とする請求項4に記載の負極集電体。
【請求項6】
保護層をさらに備え、
前記保護層は、前記導電層自体の厚さ方向における対向する2つの表面のうちの少なくとも一方に設けられ、
前記保護層には、金属又は金属酸化物材料が用いられることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の負極集電体。
【請求項7】
前記保護層には、ニッケル、クロム、ニッケル基合金、銅基合金、アルミナ、酸化コバルト、酸化クロム及び酸化ニッケルのうちの1種または複数種が用いられることを特徴とする請求項に記載の負極集電体。
【請求項8】
前記保護層の厚さDは、1nm≦D≦200nmを満たし、且つD≦0.1Dであることを特徴とする請求項に記載の負極集電体。
【請求項9】
前記支持層の厚さDは、1μm≦D≦20μmを満たすことを特徴とする請求項1に記載の負極集電体。
【請求項10】
前記支持層の厚さDは、2μm≦D≦10μmを満たすことを特徴とする請求項に記載の負極集電体。
【請求項11】
前記支持層の厚さDは、2μm≦D≦6μmを満たすことを特徴とする請求項1に記載の負極集電体。
【請求項12】
前記支持層の破断伸び率は、前記導電層の破断伸び率以上であり、及び/又は、
前記支持層のヤング率Eは、4GPa≦E≦20GPaを満たすことを特徴とする請求項1に記載の負極集電体。
【請求項13】
前記導電層は、気相成長層又はメッキ層であることを特徴とする請求項1乃至1のいずれか1項に記載の負極集電体。
【請求項14】
負極シートであって、
前記負極シートは、負極集電体と、前記負極集電体に設けられる負極活物質層とを備え、
前記負極集電体は、請求項1乃至1のいずれか1項に記載の負極集電体であることを特徴とする負極シート。
【請求項15】
電気化学装置であって、
前記電気化学装置は、正極シート、負極シート、セパレータ及び電解液を備え、
前記負極シートは、請求項1に記載の負極シートであることを特徴とする電気化学装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学装置の技術分野に属し、特に、負極集電体、負極シート及び電気化学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、エネルギー密度が大きく、出力電力が高く、サイクル寿命が長く、環境汚染が小さいなどのメリットを有するため、電気自動車や消費類電子製品に広く使用されている。リチウムイオン二次電池の応用範囲が絶えずに拡大しているにつれて、リチウムイオン二次電池のエネルギー密度に対する要求もますます高くなっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来技術で用いられる金属集電体は、大きい厚さ(通常、18μm~30μm)と高い密度を有するため、リチウムイオン二次電池のエネルギー密度が低く、市場でますます高くなっている要求を満たすことができない。そのため、如何に集電体を改良してリチウムイオン二次電池のエネルギー密度を高めるとともに、集電体が良好な導電と集電の性能を有することを保証するかは、早急に解決すべき技術的難題となっている。
【0004】
これに鑑みて、本願を出願した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施例は、負極集電体、負極シート及び電気化学装置が提供され、電気化学装置が高重量エネルギー密度及び良好な耐電流性能を両立できるように、負極集電体に低重量と良好な導電及び集電の性能を両立させることを目的とする。
【0006】
本発明の実施例の第1観点は、負極集電体を提供し、負極集電体は、支持層と、支持層自体の厚さ方向における対向する2つの表面のうちの少なくとも一方に設けられる導電層とを備え、
支持層の密度は、導電層の密度よりも小さく、
導電層の厚さDは、300nm≦D≦2μmを満たし、好ましくは、500nm≦D≦1.5μmを満たし、
負極集電体の引張歪が1.5%であるとき、導電層のシート抵抗増加率Tは、T≦5%を満たし、好ましくは、T≦2.5%を満たす。
【0007】
本発明の実施例の第2観点は、負極シートを提供し、負極シートは、負極集電体と、負極集電体に設けられる負極活物質層とを備え、負極集電体は、本発明の実施例の第1観点に係る負極集電体である。
【0008】
本発明の実施例の第3観点は、電気化学装置を提供し、電気化学装置は、正極シートと、負極シートと、セパレータと、電解液とを備え、負極シートは、本発明の実施例の第2観点に係る負極シートである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施例に提供される負極集電体では、厚さの小さい導電層を支持層の少なくとも1つの表面に設け、且つ、支持層の密度が導電層の密度よりも小さいため、従来の金属集電体に比べ、電気化学装置の重量エネルギー密度を著しく向上させ、そして、負極集電体の引張歪が1.5%であるとき、導電層のシート抵抗増加率TがT≦5%を満たし、厚さの小さい導電層の引張変形による抵抗の急激な増加を防止し、負極集電体が良好な導電と集電の性能を有することを保証し、電気化学装置が低いインピーダンスを有し、且つ負極分極が小さく、電気化学装置が良好な倍率性能、サイクル性能及び動力学性能などの電気化学性能を兼ね備えるようになる。従って、本発明の実施例に係る負極集電体を用いることで、電気化学装置は、高重量エネルギー密度及び良好な総合電気化学性能を両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明の実施例における技術案をより明瞭に説明するために、以下、実施例に記載された使用が必要な図面を簡単に紹介し、当業者にとって、創造的労力をかけない前提で、これらの図面から他の図面を得ることができる。
図1】本発明の一実施形態に係る負極集電体の構造を示す模式図である。
図2】本発明の他の実施形態に係る負極集電体の構造を示す模式図である。
図3】本発明の他の実施形態に係る負極集電体の構造を示す模式図である。
図4】本発明の他の実施形態に係る負極集電体の構造を示す模式図である。
図5】本発明の他の実施形態に係る負極集電体の構造を示す模式図である。
図6】本発明の他の実施形態に係る負極集電体の構造を示す模式図である。
図7】本発明の他の実施形態に係る負極集電体の構造を示す模式図である。
図8】本発明の他の実施形態に係る負極集電体の構造を示す模式図である。
図9】本発明の他の実施形態に係る負極集電体の構造を示す模式図である。
図10】本発明の一実施形態に係る負極シートの構造を示す模式図である。
図11】本発明の他の実施形態に係る負極シートの構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の発明目的、技術案および有益な技術効果をより明瞭にするために、以下、実施形態を結合しながら本発明をより詳しく説明する。本明細書に記載される実施形態は、本発明を解釈するためのものに過ぎず、本発明を限定するためのものではないと理解されるべきである。
【0012】
簡便にするために、いくつかの数値範囲のみが本明細書に明示的に開示されている。しかしながら、任意の下限を任意の上限と組み合わせて、明示的に記載されない範囲を形成することができ、また、任意の下限を他の下限と組み合わせて、明示的に記載されない範囲を形成することもでき、同様に、任意の上限を他の上限と組み合わせて、明示的に記載されない範囲を形成することができる。また、明示的に記載されていないが、範囲の端点間の各点または単一の数値が範囲に含まれるべきである。したがって、各点または単一の数値は、自身の下限または上限として、他の任意の点または単一の数値と組み合わせたり、他の下限または上限と組み合わせたりすることで、明示的に記載されない範囲を形成することができる。
【0013】
なお、本明細書の記述において、「以上」および「以下」は、特に明記しない限り、その数を含み、「1種または複数種」における「複数種」は、2つ以上を意味する。
【0014】
本発明の上記の発明の概要は、本発明における開示された各実施形態または各実現態様を記述することを意図したものではない。以下の記述は、例示的な実施形態をより具体的に例を挙げて説明するものである。全篇の出願における多くの箇所で、一連の実施形態を通じて指導が提供され、これらの実施形態が、様々な組み合わせで応用することが可能である。各実施形態において、列挙は、代表的な群とされることにすぎず、網羅的ではないと解釈されるべきである。
【0015】
負極集電体
本発明の実施例の第1観点は、負極集電体10を提供し、本発明の実施例に係る負極集電体10は、従来の金属銅箔負極集電体に比べ、低重量と良好な導電及び集電の性能とを同時に両立させることができる。
【0016】
本発明の実施例に係る負極集電体10は、積層配置される支持層101及び導電層102を備える。
【0017】
一例として、図1は、負極集電体10を示す模式図であり、図1を参照すると、負極集電体10は、積層配置される支持層101と導電層102とを備え、支持層101の厚さ方向において、対向する第1表面101aと第2表面101bとを有し、導電層102は、支持層101の第1表面101a及び第2表面101bに設けられている。
【0018】
他の一例として、図2は、他の負極集電体10を示す模式図であり、図2を参照すると、負極集電体10は、積層配置される支持層101と導電層102とを備え、支持層101の厚さ方向において、対向する第1表面101aと第2表面101bとを有し、導電層102は、支持層101の第1表面101aに設けられている。無論、導電層102は、支持層101の第2表面101bに設けられてもよい。
【0019】
さらに、支持層101の密度は、導電層102の密度よりも小さく、導電層102の厚さDは、300nm≦D≦2μmを満たす。
【0020】
本発明の実施例に係る負極集電体10は、支持層101を設け、厚さの小さい導電層102を支持層101の少なくとも1つの表面に設け、且つ支持層101の密度を導電層102の密度よりも小さくすることにより、電気化学装置の重量エネルギー密度を著しく向上させることができる。
【0021】
また、負極集電体10の引張歪が1.5%であるとき、導電層102のシート抵抗増加率Tは、T≦5%を満たす。負極集電体10は、負極シート20及び電気化学装置の加工及び使用過程で、例えば、ロールプレス又は極シートが膨張するとき、引っ張られることがある。負極集電体10の引張歪を1.5%としたとき、導電層102のシート抵抗増加率TがT≦5%であるため、厚さの小さい導電層102の引張変形による抵抗の急激な増加を効果的に防止でき、負極集電体10が良好な導電と集電の性能を有することを保証でき、電気化学装置が低い阻抗を有し、且つ負極分極が小さく、電気化学装置に良好な倍率性能、サイクル性能及び動力学性能等の電気化学性能を兼ね備えさせる。
【0022】
従って、電気化学装置は、本発明の実施例に係る負極集電体10を用いることで、高重量エネルギー密度及び良好な総合電気化学性能を同時に両立させる。
【0023】
さらに、好ましくは、負極集電体10の引張歪が1.5%であるとき、導電層102のシート抵抗増加率TがT≦2.5%を満たす。
【0024】
本実施例では、負極集電体10の引張歪εは、式ε=ΔL/L×100%に基づいて算出することができる。ただし、ΔLは、負極集電体10が引っ張られることによって生じる伸長量であり、Lは、負極集電体10の元の長さであり、即ち、引っ張られる前の長さである。
【0025】
負極集電体10の引張歪が1.5%であるとき、導電層102のシート抵抗増加率Tが、当該分野において周知される方法で測定することができ、一例として、負極集電体10が20mm×200mmに切断された試料を採取し、試料の中心領域のシート抵抗を4探針法で測定し、Rとして記録し、その後、高鉄引張力機を用いて試料の中心領域を引張し、初期位置を設定し、治具間の試料の長さを50mmとし、50mm/minの速度で引張し、引張距離が試料の元の長さの1.5%となるように引張し、即ち、引張距離が0.75mmになったときに停止し、引張後の試料を取り外し、治具間の導電層102のシート抵抗を測定し、Rとして記録し、式T=(R-R)/R×100%に基づいて、負極集電体10の引張歪が1.5%であるときの導電層102のシート抵抗増加率Tを算出する。
【0026】
また、4探針法を用いて試料のシート抵抗を測定する方法は、以下の通りである。RTS-9型の二重電気測定4探針測定器を用いて、測定環境は、常温23±2℃、0.1MPa、相対湿度≦65%である。測定の時、試料を表面洗浄し、そして、水平に測定ステージに置き、4探針を降下し、探針を試料の表面に良好に接触させ、続いて、試料の電流レンジを指定するように自動測定モードを調節して、適切な電流レンジでシート抵抗を測定し、同じ試料の8~10個のデータ点をデータ測定の正確性及び誤差分析として収集する。最後に、平均値を取って試料のシート抵抗値として記録する。
【0027】
本発明の実施例に係る負極集電体10では、支持層101の厚さDは、1μm≦D≦20μmを満たすことが好ましい。当該支持層101は、十分な機械強度を有し、加工及び使用過程で、破断が発生しにくく、導電層102に対して良好な支持と保護作用を発揮し、負極集電体10が良好な機械的安定性と動作安定性を有することが保証され、負極集電体10の長寿命化を図る。当該支持層101を用いることで、電気化学装置が小さい体積及び重量を有することにも有利であり、電気化学装置のエネルギー密度を向上させる。
【0028】
一部の実施例では、支持層101の厚さDは、上限が20μm、18μm、15μm、12μm、10μm、8μmであってもよく、下限が1μm、1.5μm、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μmであってもよく、支持層101の厚さDの範囲は、上限と下限の任意の数値からなってもよい。好ましくは、支持層101の厚さDは、1μm≦D≦15μmを満たし、より好ましくは、2μm≦D≦10μmを満たし、さらに好ましくは、2μm≦D≦6μmを満たす。
【0029】
好ましくは、支持層101の体積抵抗率は、1.0×10-5Ω・m以上である。支持層101の体積抵抗率が大きいため、釘刺し等の異常時において、電気化学装置の内部短絡時の短絡抵抗を大きくすることができ、電気化学装置の安全性能を向上させることができる。
【0030】
本実施例では、支持層101の体積抵抗率は、20℃での体積抵抗率であり、当該分野の既知の方法で測定することができる。一例として、測定は、恒温常圧低湿度の室で行われ(20℃、0.1MPa、RH≦20%)、直径20mmの円板支持層101の試料(試料の寸法が測定機器の実際の寸法に応じて調整可能)を製造し、測定は、3電極測定表面抵抗率法(GB T 1410-2006)が採用され、絶縁抵抗測定器(精度10Ω)で行われる。測定方法は、以下の通りである。即ち、円板試料を2つの電極の間に配置して、2つの電極の間に電位差を与え、発生した電流が円板試料の内部に分布し、ピコアンペア計又は静電計で測定されることで、測定中での表面リーク電流の計上によって測定誤差が生じることを避ける。示度は、体積抵抗率であり、単位は、Ω・mである。
【0031】
さらに、支持層101の破断伸び率は、導電層102の破断伸び率以上であり、負極集電体10に断帯が発生することをより良く防止することができる。
【0032】
なお、支持層101の破断伸び率は5%以上であり、好ましくは、支持層101の破断伸び率は10%以上である。
【0033】
破断伸び率は、当該分野の既知の方法で測定することができ、一例として、支持層101が15mm×200mmに切断させた試料を採取し、常温常圧(25℃、0.1MPa)で高鉄引張力機を用いて引張測定を行い、治具間の試料長さが50mmになるように初期位置を設定し、引張速度を50mm/minにして、引張破断時のデバイスの変位y(mm)を記録し、最後に、(y/50)×100%である破断伸び率を算出する。導電層102の破断伸び率は、同様な方法で便利に測定することができる。
【0034】
好ましくは、支持層101のヤング率Eは、E≧4GPaを満たす。当該支持層101は、導電層102に対する支持層101の支持作用を満たす剛性を有し、負極集電体10全体の強度を確保する。負極集電体10の加工中に、支持層101は、過大な伸びや変形が生じることなく、支持層101に断帯が発生することを防止し、支持層101と導電層102との結合の堅牢性を向上させることに有利であり、剥離が生じにくく、負極集電体10が高い機械的安定性と動作安定性を有することを保証し、電気化学装置が高い電気化学性能、例えば、長いサイクル寿命を有するようになる。
【0035】
より好ましくは、支持層101のヤング率Eは、4GPa≦E≦20GPaを満たすことにより、支持層101が剛性を有するとともに、変形に耐える能力をある程度有し、負極集電体10の加工及び使用中に、巻回を行う可撓性を有することができ、断帯の発生をより良く防止することができる。
【0036】
支持層101のヤング率Eは、当該分野の既知の方法で測定することができる。例として、支持層101が15mm×200mmに切断された試料を採取し、マイクロメータで試料の厚さh(μm)を測定し、常温常圧(25℃、0.1MPa)で高鉄引張力機を用いて引張試験を行い、治具間の試料の長さが50mmになるように初期位置を設定し、引張速度を50mm/minにして、破断まで引張される荷重L(N)、デバイスの変位y(mm)を記録すると、応力ε(GPa)=L/(15×h)であり、ひずみη=y/50であり、応力ひずみグラフを描き、初期線形領域グラフを取り、当該グラフの傾きがヤング率Eである。
【0037】
好ましくは、支持層101と導電層102との間の結合力Fは、F≧100N/mを満たし、より好ましくは、F≧400N/mを満たす。支持層101と導電層102とが牢固に結合され、導電層102に対する支持層101の支持作用を効果的に発揮し、負極集電体10の動作安定性を保証する。
【0038】
当該分野の既知の方法で支持層101と導電層102との結合力Fを測定することができ、例えば、導電層102が支持層101の1つの面に設けられる負極集電体10を、測定される試料とし、幅dを0.02mとし、常温常圧(25℃、0.1MPa)で、3M両面テープを用いて、ステンレス板に均一に貼り付け、測定される試料を両面テープに均一に貼り付け、高鉄引張力機で測定される試料の導電層102を支持層101と剥離し、引張力と変位のデータ図に基づいて、最大の引張力x(N)を読み取り、F=x/dに基づいて導電層102と支持層101との結合力F(N/m)を算出する。
【0039】
好ましくは、支持層101には、高分子材料及び高分子基複合材料のうちの1種または複数種が用いられる。高分子材料及び高分子基複合材料の密度が著しく低下することにより、負極集電体10の重量が大幅に軽減され、電気化学装置の重量エネルギー密度を向上させる。
【0040】
上記高分子材料は、例えば、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリエステル系、ポリオレフィン系、ポリアセチレン系、シロキサンポリマー、ポリエーテル系、ポリアルコール系、ポリスルホン系、多糖類ポリマー、アミノ酸系ポリマー、ポリ窒化硫黄系、芳香環ポリマー、芳香族複素環ポリマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、それらの誘導体、それらの架橋物、およびそれらの共重合体のうちの1種または複数種であってもよい。
【0041】
ポリアミド系高分子材料は、例えば、ポリカプロラクタム(通称ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(通称ナイロン66)、ポリパラフェニレンテレフタルアミド(PPTA)、ポリ-m-フェニレンイソフタルアミド(PMIA)であり、ポリエステル系高分子材料は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)であり、ポリオレフィン系高分子材料は、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン-プロピレン共重合体(PPE)であり、ポリオレフィン系高分子材料の誘導体は、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTEE)、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム(PSS)であり、ポリアルキン系高分子材料は、例えば、ポリアセチレン(Polyacetylene、PAと略称する)であり、シロキサンポリマーは、例えば、シリコーンゴム(Silicone rubber)であり、ポリエーテル系高分子材料は、例えば、ポリオキシメチレン(POM)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)であり、ポリアルコール系高分子材料は、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)であり、多糖類ポリマーは、例えば、セルロース、澱粉であり、アミノ酸系ポリマーは、例えば、タンパク質であり、芳香環ポリマーは、例えば、ポリフェニレン、ポリピロール(PPy)、ポリアニリン(PAN)、ポリチオフェン(PT)、ポリピリジン(PPY)であり、ポリオレフィン基ポリマー及びその誘導体の共重合物は、例えば、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)である。
【0042】
上記高分子基複合材料は、上述した高分子材料と添加剤を含んでもよい。添加剤により、高分子材料の体積抵抗率、破断伸び率及びヤング率を調整することができる。上記添加剤は、金属材料及び無機非金属材料のうちの1種または複数種であってもよい。
【0043】
金属材料は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、鉄、鉄合金、銀、および銀合金のうちの1種または複数種である。無機非金属材料は、例えば、炭素系材料、アルミナ、シリカ、窒化ケイ素、炭化ケイ素、窒化ホウ素、ケイ酸塩、および酸化チタンのうちのいずれか1種または複数種であり、さらに、例えば、ガラス材料、セラミック材料およびセラミック複合材料のうちの1種または複数種である。上記炭素系材料は、例えば、グラファイト、超伝導炭素、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン、およびカーボンナノファイバーのうちの1種または複数種である。
【0044】
一部の実施例では、上記添加剤は、金属材料で被覆された炭素系材料、例えば、ニッケルで被覆されたグラファイト粉末及びニッケルで被覆された炭素繊維のうちの1種または複数種であってもよい。
【0045】
好ましくは、支持層101には、絶縁高分子材料および絶縁高分子基複合材料のうちの1種または複数種が用いられる。当該支持層101の体積抵抗率は高く、1.0×10Ω・m以上に達することが可能であり、電気化学装置の安全性能をより良く向上させる。
【0046】
さらに好ましくは、支持層101には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム(PSS)およびポリイミド(PI)のうちのいずれか1種または複数種が用いられる。
【0047】
支持層101は、高分子材料の化学組成、分子量及び分布、鎖構造及び鎖構築、凝集状態構造、相構造、添加剤等を調整することにより、電気化学装置の機械的性能及び電気化学性能を改善する目的に達するように、所定の体積抵抗率、破断伸び率及びヤング率を有することができる。
【0048】
本発明の実施例に係る負極集電体10では、支持層101が、図1図2に示される単層構造であってもよいし、2層以上の複合層構造、例えば、2層、3層、4層などであってもよい。
【0049】
複合層構造を有する支持層101の一例として、図3は、他の負極集電体10を模式的に示し、図3を参照すると、支持層101は、第1サブ層1011、第2サブ層1012及び第3サブ層1013が積層配置されることにより形成される複合層構造である。複合層構造を有する支持層101は、対向する第1表面101aと第2表面101bとを有し、導電層102は、支持層101の第1表面101a及び第2表面101bに積層配置されている。無論、導電層102は、支持層101の第1表面101aのみに配置されてもよいし、支持層101の第2表面101bのみに配置されてもよい。
【0050】
支持層101が2層以上の複合層構造であるとき、各サブ層の材料は、同じであってもよいし、異なってもよい。
【0051】
本発明の実施例に係る負極集電体10では、導電層102の厚さDが300nm≦D≦2μmを満たし、従来の金属銅箔集電体の厚さに比べ、大幅に減少し、かつ、支持層101の密度が導電層102の密度よりも小さいため、電気化学装置の重量エネルギー密度を著しく改善することができる。この厚さの範囲を有する導電層102は、負極集電体10が良好な導電と集電の性能を有することを保証し、負極集電体10が良好な機械的安定性と動作安定性及び長い使用寿命を有し、良好な電気化学性能を保証することができる。
【0052】
一部の実施例では、導電層102の厚さDの上限は、2μm、1.8μm、1.5μm、1.2μm、1μm、900nmであってもよく、導電層102の厚さDの下限は、800nm、700nm、600nm、500nm、450nm、400nm、350nm、300nm、導電層102の厚さDの範囲は、上限及び下限の任意の数値からなってもよい。より好ましくは、導電層102の厚さDは、500nm≦D≦1.5μmを満たし、負極集電体10が高いエネルギー密度及び導電性能をより良く両立させることに有利である。
【0053】
好ましくは、導電層102の体積抵抗率は、1.3×10-8Ω・m~1.3×10-7Ω・mであり、これにより、負極集電体10が良好な導電と集電の性能を有するようになり、電気化学装置に低い抵抗を持たせて負極分極を減少させることができ、電気化学装置の倍率性能及びサイクル性能に有利である。より好ましくは、導電層102の体積抵抗率は、1.3×10-8Ω・m~3.3×10-8Ω・mであり、さらに好ましくは、1.65×10-8Ω・m~3.3×10-8Ω・mである。
【0054】
本実施例では、導電層102の体積抵抗率ρは、ρ=R×dを満たし、ここで、ρの単位はΩ・mであり、Rは導電層102のシート抵抗であり、その単位がΩであり、dは、導電層102のmを単位とする厚さである。4探針法で導電層102のシート抵抗Rを測定する方法は、以下の通りである。即ち、RTS-9型二重電気測定四探針テスタを用いて、測定環境が常温23±2℃、0.1MPa、相対湿度≦65%であり、測定時に、正極集電体10の試料を表面洗浄し、そして、水平に測定ステージに置き、4探針を降下し、探針を試料の表面に良好に接触させ、続いて、試料の電流レンジを指定するように自動測定モードを調節して、適切な電流レンジでシート抵抗を測定し、同じ試料の8~10個のデータ点をデータ測定の正確性及び誤差分析として収集する。最後に、平均値を取って導電層102のシート抵抗として記録する。
【0055】
導電層102は、金属材料、例えば、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀及び銀合金のうちの1種または複数種を含み、好ましくは、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン及び銀のうちの1種または複数種を含む。
【0056】
上記銅合金における銅元素の重量パーセント含有量は、90wt%以上であることが好ましい。
【0057】
上記ニッケル合金は、例えば、ニッケル銅合金である。
【0058】
導電層102には、炭素系導電材料と導電性高分子材料とのうちの1種または複数種をさらに含むことができる。
【0059】
炭素系導電材料と導電性高分子材料とのうちの1種または複数種の、導電層102における重量パーセント含有量は、10wt%以下であることが好ましい。
【0060】
上記炭素系導電材料は、例えば、グラファイト、超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン、およびカーボンナノファイバーのうちの1種または複数種である。
【0061】
上記導電性高分子材料は、例えば、ポリ窒化硫黄系、脂肪族共役ポリマー、芳香環共役ポリマー、および芳香族複素環共役ポリマーのうちの1種または複数種のうちの1種または複数種である。脂肪族共役ポリマーは、例えば、ポリアセチレン、芳香環共役ポリマーは、例えば、ポリフェニル、ポリナフタレンであり、ポリフェニルは、例えば、ポリパラフェニレンであり、芳香族複素環共役ポリマーは、例えば、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピリジンである。また、ドーピング改質によって導電高分子材料の導電率を高めることもできる。
【0062】
図4図9は、それぞれ1種の負極集電体10を模式的に示し、図4図9を参照すると、負極集電体10は、保護層103をさらに備える。具体的に、導電層102は、その自体の厚さ方向において対向する2つの表面を有し、保護層103は、導電層102の2つの表面のうちのいずれか一方または両方に積層配置され、これにより、導電層102を保護し、導電層102に化学的腐食や機械的破壊などの損害が生じることを防止し、負極集電体10の動作安定性及び使用寿命を保証し、電気化学装置の電気化学性能に有利である。なお、保護層103により、負極集電体10の機械強度を増加させることもできる。
【0063】
保護層103の材料は、金属、金属酸化物、および導電性カーボンのうちの1種または複数種であってもよい。
【0064】
上記金属は、例えば、ニッケル、クロム、ニッケル基合金及び銅基合金のうちの1種または複数種である。上記ニッケル基合金は、純ニッケルを基体に1種又は複数種の他の元素を加えて構成される合金であり、好ましくは、ニッケルクロム合金である。ニッケルクロム合金は、金属ニッケルと金属クロムとで形成される合金であり、好ましくは、ニッケルクロム合金におけるニッケルとクロムとの重量比は1:99~99:1であり、例えば9:1である。上記銅基合金は、純銅を基体に1種又は複数種の他の元素を加えて構成される合金であり、好ましくは、ニッケル銅合金である。好ましくは、ニッケル銅合金におけるニッケルと銅との重量比は1:99~99:1、例えば、9:1である。
【0065】
上記金属酸化物は、例えば、アルミナ、酸化コバルト、酸化クロム、酸化ニッケルのうちの1種または複数種である。
【0066】
上記導電性カーボンは、例えば、グラファイト、超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェンおよびカーボンナノファイバーのうちの1種または複数種であり、好ましくは、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、アセチレンブラック及びグラフェンのうちの1種または複数種である。
【0067】
さらに、保護層103として、金属又は金属酸化物が用いられることが好ましく、即ち、導電層102に、金属保護層又は金属酸化物保護層が設けられる。金属保護層と金属酸化物保護層は、耐食性が高く、硬度が高く、かつ比表面積が大きく、高い総合性能を有する。
【0068】
いくつかの例として、図4図5を参照すると、負極集電体10は、積層配置される支持層101、導電層102及び保護層103を備える。ここで、支持層101の厚さ方向において、対向する第1表面101aと第2表面101bとを有し、導電層102は、支持層101の第1表面101aと第2表面101bとのうちの少なくとも一方に積層配置され、保護層103は、導電層102における支持層101とは反対側の表面に積層配置されている。
【0069】
導電層102における支持層101とは反対側の表面に保護層103が設けられることにより(以下、上保護層と略称する)、導電層102に対して、化学腐食の防止、機械的破壊の防止の保護作用を果たす。特に、金属又は金属酸化物保護層は、導電層102を保護することができるし、負極集電体10と負極活物質層201との界面を改善し、界面抵抗を低下させ、負極集電体10と負極活物質層201との結合力を高めることもでき、極シートの分極を低減して、電気化学装置の電気化学性能を改善することに有利である。
【0070】
他のいくつかの例として、図6図7を参照すると、負極集電体10は、積層配置される支持層101、導電層102及び保護層103を備える。ここで、支持層101の厚さ方向において、対向する第1表面101aと第2表面101bとを有し、導電層102は、支持層101の第1表面101aと第2表面101bとのうちの少なくとも一方に積層配置され、保護層103は、導電層102における支持層101に向かう表面に積層配置されている。
【0071】
導電層102における支持層101に向かう表面に保護層103が設けられ(以下、下保護層と略称する)、下保護層の対向する2つの表面は、それぞれ導電層102と支持層101に接続され、これにより、導電層102を支持保護する効果を向上させることに有利であるとともに、化学腐食や機械的破壊から保護する作用を果たすことができ、また、支持層101と導電層102との結合力を増強させることもできる。従って、金属保護層又は金属酸化物保護層が好ましい。
【0072】
さらに他のいくつかの例として、図8図9を参照すると、負極集電体10は、積層配置される支持層101、導電層102及び保護層103を備える。ここで、支持層101の厚さ方向において、対向する第1表面101aと第2表面101bとを有し、導電層102は、支持層101の第1表面101aと第2表面101bとのうちの少なくとも一方に積層配置され、保護層103は、導電層102における支持層101とは反対側の表面及び支持層101に向かう表面に積層配置されている。
【0073】
導電層102の2つの表面には、いずれも保護層103が設けられ、導電層102をより十分に保護する。
【0074】
理解できるように、導電層102の2つの表面における保護層103は、その材料が同じであってもよいし、異なってもよく、その厚さが同じであってもよいし、異なってもよい。
【0075】
好ましくは、保護層103の厚さDは、1nm≦D≦200nmを満たし、且つD≦0.1Dである。保護層103が薄すぎると、導電層102を保護する作用が不十分であり、厚すぎると、電気化学装置のエネルギー密度を低下してしまう。
【0076】
一部の実施例では、保護層103の厚さDの上限は、200nm、180nm、150nm、120nm、100nm、80nm、60nm、55nm、50nm、45nm、40nm、30nm、20nmであってもよく、保護層103の厚さDの下限は、1nm、2nm、5nm、8nm、10nm、12nm、15nm、18nmであってもよく、保護層103の厚さDの範囲は、上限及び下限の任意の数値からなってもよい。好ましくは、保護層103の厚さDは、5nm≦D≦200nmを満たし、より好ましくは、10nm≦D≦200nmを満たす。
【0077】
さらに、導電層102の2つの表面にいずれも保護層103が設けられているとき、導電層102における支持層101とは反対側の表面に位置する保護層103(即ち、上保護層)の厚さDは、1nm≦D≦200nmを満たし、且つD≦0.1Dであり、導電層102の支持層101に向かう表面に位置する保護層103(即ち、下保護層)の厚さDは、1nm≦D≦200nmを満たし、且つD≦0.1Dである。好ましくは、D>Dであり、これは、保護層103が導電層102に対して良好な化学腐食の防止、機械破壊の防止の保護作用を果たすことに有利であるとともに、電気化学装置が高重量エネルギー密度を有するようにする。より好ましくは、0.5D≦D≦0.8Dである場合、保護層103が作用をより良く発揮することができる。
【0078】
導電層102は、機械的なロール圧延、接着、気相成長法(vapor deposition)、無電解めっき(Electroless plating)、および電気めっき(Electroplating)のうちの少なくとも一つの手段によって支持層101に形成されてもよく、ここで、気相成長法や電気めっきが好ましく、即ち、導電層102は、気相成長層又はメッキ層であることが好ましく、このようにすると、導電層102と支持層101との緊密な結合を実現することができる。
【0079】
例えば、気相成長法で導電層102を支持層101に形成することにより、導電層102と支持層101とが高い結合力を有し、負極集電体10の機械的安定性、動作安定性及び使用寿命を高めることに有利である。気相成長過程の条件、例えば気相成長温度、気相成長速度、気相成長室の雰囲気条件などを合理的に調節することにより、負極集電体10の引張歪を1.5%とするとき、導電層102が低いシート抵抗増加率を有することができ、負極集電体10の電気化学性能を改善する。
【0080】
上記気相成長法は、物理気相成長法(Physical Vapor Deposition、PVD)であることが好ましい。物理気相成長法は、蒸着法およびスパッタ法のうちの少なくとも1種であることが好ましい。蒸着法は、真空蒸着法(vacuum evaporating)、熱蒸着法(Thermal Evaporation Deposition)及び電子ビーム蒸着法(electron beam evaporation method、EBEM)のうちの少なくとも1種であることが好ましく、スパッタ法は、マグネトロンスパッタ法(Magnetron sputtering)であることが好ましい。
【0081】
例として、真空蒸着法によって導電層102を形成することは、表面洗浄処理された支持層101を真空めっき室内に置き、1300℃~2000℃の高温で金属蒸発室内の高純度ワイヤを溶かして蒸発させ、蒸発した金属は真空めっき室内の冷却システムを経て、最後に支持層101に堆積し、導電層102が形成される。
【0082】
保護層103は、気相成長法、インサイチュ形成法及び塗布法のうちの少なくとも1つの手段により導電層102に形成されてもよい。気相成長法は、上述した気相成長法であってもよい。インサイチュ形成法は、インサイチュパッシベーション法、即ち、金属表面にインサイチュで金属酸化物パッシベーション層を形成する方法であることが好ましい。塗布法は、ロールプレス塗布、押出塗布、ナイフ塗布及びグラビア塗布のうちの少なくとも1つであることが好ましい。
【0083】
好ましくは、保護層103は、気相成長法とインサイチュ形成法とのうちの少なくとも1つの手段によって導電層102に形成されることにより、導電層102と保護層103とが高い結合力を有することに有利であり、保護層102が負極集電体10に対して保護作用をより良く発揮するとともに、負極集電体10の動作性能を保証する。
【0084】
導電層102と支持層101との間に保護層103(即ち、下保護層)が配置されているとき、下保護層を支持層101に形成し、さらに導電層102を下保護層に形成してもよい。下保護層は、気相成長法と塗布法とのうちの少なくとも1つの手段によって支持層101に形成されてもよく、ここで、気相成長法が好ましく、これにより、下保護層と支持層101とが高い結合力を有することに有利である。導電層102は、機械的なロール圧延、接着、気相成長法、無電解めっき、および電気めっきのうちの少なくとも一つの手段によって下保護層に形成されてもよく、ここで、気相成長法と電気めっきが好ましく、これは、下保護層と導電層102とが高い結合力を有することに有利である。ここで、気相成長法及び塗布法は上述した気相成長法及び塗布法であってもよい。
【0085】
好ましくは、導電層102と保護層103との結合力Fは、F≧100N/mを満たし、より好ましくは、F≧400N/mを満たす。
【0086】
保護層103が支持層101と連結されている場合、好ましくは、保護層103と支持層101との結合力Fは、F≧100N/mを満たし、より好ましくは、F≧400N/mを満たす。
【0087】
導電層102と保護層103との結合力F及び保護層103と支持層101との結合力Fは、上記支持層101と導電層102との結合力Fを測定する方法を参照して測定することができる。
【0088】
負極シート
本発明の実施例の第2観点に係る負極シート20は、積層配置される負極集電体10と負極活物質層201とを備え、ここで、負極集電体10は本発明の実施例の第1観点に係る負極集電体10である。
【0089】
本発明の実施例に係る負極シート20は、本発明の実施例の第1観点に係る負極集電体10が用いられることで、従来の負極シートに比べ、高重量エネルギー密度及び良好な総合電気化学性能を有する。
【0090】
一例として、図10に示される負極シート20を参照すると、負極シート20は、積層配置される支持層101、導電層102及び負極活物質層201を備え、支持層101は、対向する2つの表面を有し、導電層102は、支持層101の2つの表面に積層配置され、負極活物質層201は、導電層102における支持層101とは反対側の表面に積層配置されている。
【0091】
他の一例として、図11に示される負極シート20を参照すると、負極シート20は、積層配置される支持層101、導電層102及び負極活物質層201を備え、支持層101は、対向する2つの表面を有し、導電層102は、支持層101の2つの表面のうちのいずれか一方に積層配置され、負極活物質層201は、導電層102における支持層101とは反対側の表面に積層配置されている。
【0092】
本発明の実施例に係る負極シート20は、負極活物質層201として、当該分野で既知の負極活物質が用いられてもよく、イオンの可逆的な挿入/脱離が可能である。
【0093】
例えば、リチウムイオン二次電池に用いられる負極活物質は、金属リチウム、天然黒鉛、人造黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ(MCMBと略称する)、ハードカーボン、ソフトカーボン、シリコン、シリコン-炭素複合体、SiO、Li-Sn合金、Li-Sn-O合金、Sn、SnO、SnO、スピネル構造のチタン酸リチウム、およびLi-Al合金のうちの1種または複数種であってもよい。
【0094】
好ましくは、負極活物質層201は、導電剤をさらに含んでもよい。一例として、導電剤は、グラファイト、超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン、およびカーボンナノファイバーのうちの1種または複数種である。
【0095】
好ましくは、負極活物質層201は、接着剤をさらに含んでもよい。一例として、接着剤は、スチレンブタジエンゴム(SBR)、水性アクリル樹脂(water-based acrylic resin)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリビニルアルコール(PVA)、およびポリビニルブチラール(PVB)のうちの1種または複数種である。
【0096】
負極シート20は、当該分野の通常の方法で製造することができる。一般的に、負極活物質及び選択可能な導電剤、接着剤及び増粘剤を溶媒に分散させ、溶媒は、NMP又は脱イオン水であってもよ、均一な負極スラリーを形成し、負極スラリーを負極集電体10にコーティングして、乾燥などのプロセスを経た後、負極シート20が得られる。
【0097】
電気化学装置
本発明の実施例の第3観点は、電気化学装置を提供し、電気化学装置は、正極シート、負極シート、セパレータ及び電解液を備え、ここで、負極シートは、本発明の実施例の第2観点に係る負極シートである。
【0098】
上記電気化学装置は、リチウムイオン二次電池、リチウム一次電池、ナトリウムイオン電池、マグネシウムイオン電池などであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0099】
電気化学装置は、本発明の実施例の第2観点に提供される負極シートが用いられるため、本発明の実施例に係る電気化学装置は、高重量エネルギー密度及び良好な総合電気化学性能を有する。
【0100】
上記正極シートは、正極集電体及び正極活物質層を含んでもよい。
【0101】
正極集電体は、金属箔、炭素塗布金属箔及び多孔質金属箔であってもよい。正極集電体として、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀及び銀合金のうちの1種または複数種が用いられてもよい。
【0102】
正極活物質層は、当該分野で既知の正極活物質が用いられてもよく、イオンの可逆的な挿入/脱離が可能である。
【0103】
例えば、リチウムイオン二次電池に用いられる正極活物質は、リチウム遷移金属複合酸化物であってもよく、ここで、遷移金属は、Mn、Fe、Ni、Co、Cr、Ti、Zn、V、Al、Zr、Ce及びMgのうちの1種または複数種であってもよい。リチウム遷移金属複合酸化物には、電気陰性度が大きい元素、例えばS、F、Cl及びIのうちの1種または複数種がドープされてもよく、これにより、正極活物質は、高い構造安定性及び電気化学性能を有する。一例として、リチウム遷移金属複合酸化物は、例えば、LiMn、LiNiO、LiCoO、LiNiCo(0<y<1)、LiNiCoAl1-a-b(0<a<1、0<b<1、0<a+b<1)、LiMn1-m-nNiCo(0<m<1、0<n<1、0<m+n<1)、LiMPO(Mは、Fe、Mn、Coのうちの1種または複数種であってもよい)及びLi(POのうちの1種または複数種である。
【0104】
好ましくは、正極活物質層は、接着剤をさらに含んでもよい。一例として、接着剤は、スチレンブタジエンゴム(SBR)、水性アクリル樹脂(water-based acrylic resin)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリビニルアルコール(PVA)、およびポリビニルブチラール(PVB)のうちの1種または複数種である。
【0105】
好ましくは、正極活物質層は、導電剤をさらに含んでもよい。一例として、導電剤は、グラファイト、超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン、およびカーボンナノファイバーのうちの1種または複数種である。
【0106】
正極シートは、当該分野の通常の方法によって製造することができる。一般的に、正極活物質及び選択可能な導電剤及び接着剤を溶媒(例えば、N-メチルピロリドンであり、NMPと略称する)に分散させ、均一な正極スラリーを形成し、正極スラリーを正極集電体にコーティングして、乾燥などのプロセスを経た後、正極シートが得られる。
【0107】
上記セパレータは、特に制限されず、任意の周知の電気化学的安定性及び化学的安定性を有する多孔質のセパレータを用いることができ、例えば、ガラス繊維、不織布、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびポリフッ化ビニリデンのうちの1種または複数種の単層又は多層フィルムであってもよい。
【0108】
上記電解液は、有機溶媒と電解質塩とを含む。有機溶媒は、電気化学反応においてイオンを輸送する媒体として、当該分野で既知の電気化学装置の電解液に用いられる有機溶媒を用いることができる。電解質塩は、イオンの供給源として、当該分野で既知の電気化学装置の電解液に用いられる電解質塩であってもよい。
【0109】
例えば、リチウムイオン二次電池に用いられる有機溶媒は、炭酸エチレン(EC)、炭酸プロピレン(PC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、炭酸エチルプロピル(EPC)、炭酸ブチレン(BC)、炭酸フッ化エチレン(FEC)、ギ酸メチル(MF)、酢酸メチル(MA)、酢酸エチル(EA)、酢酸プロピル(PA)、プロピオン酸メチル(MP)、プロピオン酸エチル(EP)、プロピオン酸プロピル(PP)、酪酸メチル(MB)、酪酸エチル(EB)、1,4-ブチロラクトン(GBL)、スルホラン(SF)、ジメチルスルホン(MSM)、メチルエチルスルホン(EMS)、およびジエチルスルホン(ESE)のうちの1種または複数種であってもよく、そのうちの2種以上であることが好ましい。
【0110】
例えば、リチウムイオン二次電池に用いられる電解質塩は、LiPF(六フッ化リン酸リチウム)、LiBF(四フッ化ホウ酸リチウム)、LiClO(過塩素酸リチウム)、LiAsF(六フッ化ヒ酸リチウム)、LiFSI(ビスフルオロスルホン酸リチウム)、LiTFSI(ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム)、LiTFS(トリフルオロメタンスルホン酸リチウム)、LiDFOB(リチウムジフルオロオキサレートボレート)、LiBOB(リチウムジオキサレートボレート)、LiPO(ジフルオロリン酸リチウム)、LiDFOP(リチウムジフルオロビス(オキサラト)ホスフェート)、およびLiTFOP(テトラフルオロ(オキサラト)リン酸リチウム)のうちの1種または複数種であってもよい。
【0111】
セパレータが正極シートと負極シートとの間に位置して、隔離の作用を果たすように、上記正極シート、セパレータ、負極シートを順次に積層して、電池セルが得られ、巻回されて得られた電池セルであってもよい。電池セルを外装ハウジングに入れて、電解液を注入し、注入口を封止することで、電気化学装置が得られる。
【0112】
実施例
以下の実施例は、本発明に開示される内容をより具体的に説明するが、これらの実施例は、例示的な説明のみに用いられ、これは、本発明に開示される内容の範囲内で様々な改修および変化が、当業者にとって明らかなものであるためである。特に明記しない限り、以下の実施例に記載されるすべての部、パーセント、および比は、いずれも重量に基づくものであり、に使用されるすべての試薬は、市販されているか、または従来の方法により合成して得られ、さらに処理する必要がなく直接に使用可能である。また、実施例に使用される機器は、いずれも市販されるものであってもよい。
製造方法
【0113】
負極集電体の製造
所定の厚さを有する支持層を選択して表面洗浄処理を行い、表面洗浄処理された支持層を真空めっき室内に置き、以1300℃~2000℃の高温で金属蒸発室内の高純度銅ワイヤを溶かして蒸発させ、蒸発した金属は真空めっき室内の冷却システムを経て、最後に支持層の2つの表面に堆積し、導電層が形成される。
【0114】
負極シートの製造
将負極活物質である黒鉛、導電性カーボンブラック、増粘剤であるカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)、接着剤であるスチレンブタジエンゴムエマルジョン(SBR)を96.5:1.0:1.0:1.5の重量比で適量の脱イオン水に十分に撹拌して混合し、均一な負極スラリーとし、負極スラリーを負極集電体にコーティングして、乾燥などのプロセスを経た後、負極シートが得られる。
【0115】
通常の負極シートの製造
本願の負極シートの製造方法と異なることは、8μmの銅箔を用いることである。
【0116】
正極集電体の製造
厚さ12μmのアルミニウム箔が用いられる。
【0117】
通常の正極シートの製造
正極活物質LiNi1/3Co1/3Mn1/3(NCM333)、導電性カーボンブラック、接着剤であるポリフッ化ビニリデン(PVDF)を93:2:5の重量比で適量のN-メチルピロリドン(NMP)溶媒に十分に撹拌して混合し、均一な正極スラリーとして、正極スラリーを正極集電体にコーティングして、乾燥などのプロセスを経た後、正極シートが得られる。
【0118】
電解液の製造
体積比が3:7である炭酸エチレン(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを均一に混合して、有機溶媒が得られ、そして、1mol/LのLiPFを上記有機溶媒に均一に溶解させる。
【0119】
リチウムイオン二次電池の製造
正極シート、セパレータ、負極シートを順次に積層配置し、そして、電池セルとして巻回して、外装ハウジングに入れ、セパレータとして、PP/PE/PP複合フィルムが用いられ、それが正極シートと負極シートとの間に位置し、隔離の作用を果たし、上記電解液を電池セルに注入して封止し、静置、プレス、化成、および排気などのプロセスを経て、リチウムイオン二次電池が得られる。
【0120】
試験部分
1.負極集電体の試験
支持層の体積抵抗率、負極集電体の引張歪が1.5%であるときの導電層のシート抵抗増加率T、及び支持層のヤング率Eは、それぞれ上述した測定方法で測定される。
【0121】
2.電池の性能試験
(1)サイクル性能試験
45℃で、リチウムイオン二次電池を1Cの倍率で4.2Vまで定電流で充電し、そして、電流が0.05C以下になるまで定電圧で充電し、そして、1Cの倍率で定電流で2.8Vまで放電し、これを1つの充放電サイクルとし、この度の放電容量が1回目のサイクルの放電容量となる。リチウムイオン二次電池を上記方法に従って1000回の充放電サイクルを行い、1000回目のサイクルの放電容量を記録する。
【0122】
リチウムイオン二次電池の1C/1Cでの1000サイクル後の容量維持率(%)=1000回目のサイクルの放電容量/1回目のサイクルの放電容量×100%である。
【0123】
(2)倍率性能試験
25℃で、リチウムイオン二次電池を1Cの倍率で4.2Vまで定電流で充電し、そして、電流が0.05C以下となるまで定電圧で充電し、そして、1Cの倍率で3.0Vまで定電流で放電し、測定してリチウムイオン二次電池の1C倍率の放電容量を得る。
【0124】
25℃で、リチウムイオン二次電池を1Cの倍率で4.2Vまで定電流で充電し、そして、電流が0.05C以下となるまで定電圧で充電し、そして、4Cの倍率で3.0Vまで定電流で放電し、測定してリチウムイオン二次電池の4C倍率の放電容量を得る。
【0125】
リチウムイオン二次電池の4C倍率の容量維持率(%)=4C倍率の放電容量/1C倍率の放電容量×100%である。
【0126】
試験結果
1.本願に係る負極集電体が、電気化学装置の重量エネルギー密度を改善する点において果たす作用
【0127】
【表1】
【0128】
表1では、負極集電体重量百分率とは、単位面積当たりの負極集電体の重量を単位面積当たりの通常の負極集電体の重量で割る百分率である。
【0129】
従来の銅箔負極集電体に比べ、本願の技術案が用いられる負極集電体の重量は、いずれも異なる程度で軽減され、電池の重量エネルギー密度を向上させることができる。
【0130】
2.本願に係る負極集電体が電気化学装置の電気化学性能に果たす作用
【0131】
【表2】
【0132】
表2に記載される負極集電体は、負極集電体4に加えて保護層が配置されるものである。
【0133】
【表3】
【0134】
【表4】
【0135】
表4からわかるように、本願の実施例に係る負極集電体が用いられる電池のサイクル寿命及び倍率性能は良好であり、通常の負極集電体が用いられる電池のサイクル性能及び倍率性能に相当する。これは、本願実施例に係る負極集電体を用いることは、負極シートと電池の電気化学性能に明らかな悪影響を与えないことを示している。特に、保護層が設けられる負極集電体で製造される電池は、45℃、1C/1C、1000サイクル後の容量維持率及び4C倍率の容量維持率のさらなる向上が得られており、電池の信頼性がよりよいことを示す。
【0136】
3.負極集電体の引張抵抗増加率が電気化学装置に与える影響
【0137】
【表5】
【0138】
表5では、銅合金の成分は、銅が95wt%であり、ニッケルが5wt%である。
【0139】
表5に記載の正極集電体に対して過電流試験を行い、過電流試験の方法は、正極集電体を100mm幅に切断し、幅方向の真ん中の位置に幅80mmの活物質層を塗布してロールプレスし、極シートを製造し、ロールプレス後の極シートを幅方向に沿って100mm×30mmの長尺に切断し、それぞれの極シートを5本に切断する。試験時、極シートの試料の両側において塗膜がない導電領域をそれぞれ充放電機の正負極の端に接続し、その後、充放電機を設定し、10Aの電流に極シートを通過させ、1hを維持して、極シートに溶断が発生しなかったことは、試験に合格することを示し、そうではなければ、試験に合格しないと示す。各グループの試料は、5個に対して試験が行われ、試験結果が表6に示されている。
【0140】
【表6】
【0141】
表5と表6からわかるように、負極集電体の引張歪が1.5%であるとき、導電層のシート抵抗増加率Tは5%以下であり、この時、この負極集電体が用いられる負極シートは、ロール圧延された後、良い導電性能を有する。そうでなければ、導電性能が悪く、電池製品に実用価値が少ない。好ましくは、負極集電体の引張歪が1.5%であるとき、導電層のシート抵抗増加率TはT≦2.5%を満たす。
【0142】
上述したのは、本発明の具体的な実施形態に過ぎず、本発明の保護範囲は、これらに限定されないものである。当業者であれば、本発明に記載された技術範囲内において、各種の変更または置換を容易に想到し得ることは明らかであり、これらの変更または置換についても、本発明の保護範囲に含まれるものと理解すべきである。従って、本発明の保護範囲は、特許請求の範囲によって示されることが意図される。
【符号の説明】
【0143】
10 負極集電体
101 支持層
101a 第1表面
101b 第2表面
1011 第1サブ層
1012 第2サブ層
1013 第3サブ層
102 導電層
103 保護層
20 負極シート
201 負極活物質層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11