(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-21
(45)【発行日】2022-01-31
(54)【発明の名称】弾性クローラ
(51)【国際特許分類】
B62D 55/253 20060101AFI20220124BHJP
【FI】
B62D55/253 A
(21)【出願番号】P 2019207963
(22)【出願日】2019-11-18
【審査請求日】2020-01-29
(73)【特許権者】
【識別番号】519404045
【氏名又は名称】崔 鎔宰
(74)【代理人】
【識別番号】110001645
【氏名又は名称】特許業務法人谷藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】崔 鎔宰
【審査官】米澤 篤
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-144633(JP,A)
【文献】特開2011-46276(JP,A)
【文献】特開2010-120550(JP,A)
【文献】特開2010-12806(JP,A)
【文献】特開2010-120549(JP,A)
【文献】特開2003-89366(JP,A)
【文献】特開2002-255066(JP,A)
【文献】特開2010-111355(JP,A)
【文献】特開平10-100955(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 55/253
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クローラ本体の左右方向の中央部に周方向に等間隔を置いて配置された係合部と、
前記各係合部に対応して前記クローラ本体
の左右方向に配置された芯金と、
前記クローラ本体の外周側
の前記係合部の左右両側に設けられた左右二列のラグ列とを備え、
前記各ラグ列は、前記芯金に対して斜め方向に配置された駆動ラグ
と、前記ラグ列毎に周方向に隣り合う二つの前記駆動ラグを接続する接続ラグとを備えた弾性クローラにおいて、
前記各ラグ列の前記各駆動ラグは、前記係合部に近い内端部側の重なり部で周方向に隣り合う二つの前記芯金の一方に、前記係合部から遠い外端部側の重なり部で周方向に隣り合う二つの前記芯金の他方に夫々重なっており、
前記各ラグ列の前記各接続ラグは、周方向に隣り合う二つの前記駆動ラグの一方の前記内端部側の重なり部と、周方向に隣り合う二つの前記駆動ラグの他方の前記外端部側の重なり部との間の重なり部で前記各芯金に重なる
ことを特徴とする弾性クローラ。
【請求項2】
前記各接続ラグの前記重なり部は、前記内端部側の重なり部と、前記外端部側の重なり部との一方に連続する
ことを特徴とする請求項1に記載の弾性クローラ。
【請求項3】
前記各接続ラグの前記重なり部は、前記外端部側の重なり部に連続する
ことを特徴とする請求
項2に記載の弾性クローラ。
【請求項4】
前記各駆動ラグは、前進方向の前側へと突出して円弧状に湾曲する
ことを特徴とする請求項1
~3の何れかに記載の弾性クローラ。
【請求項5】
前記各駆動ラグは、前進方向の後側へと突出して円弧状に湾曲する
ことを特徴とする請求項1
~4の何れかに記載の弾性クローラ。
【請求項6】
前記各駆動ラグは略直線状である
ことを特徴とする請求項1~5の何れかに記載の弾性クローラ。
【請求項7】
前記接続ラグの頂面は、該接続ラグに対応する前記駆動ラグの接続ラグ対応部分の頂面よりも低い
ことを特徴とする請求項
1~5の何れかに記載の弾性クローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運搬車、農業用機械、除雪機、建設用機械等の履帯走行装置に使用する弾性クローラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
運搬車等の履帯走行装置に使用する弾性クローラは、ゴム等の弾性材料により構成されたクローラ本体を備え、このクローラ本体の左右方向の略中央部に周方向に等間隔を置いて多数の係合孔を形成し、またその各係合孔間のクローラ本体内に左右方向(幅方向)の芯金を埋設し、更にクローラ本体の外周側に左右二列のラグ列を配置している。
【0003】
この種の弾性クローラでは、走行中の振動を軽減すると同時にクローラ本体の亀裂を防止するために、左右二列のラグ列に、クローラ本体内の各芯金に対して傾斜状に配置された駆動ラグと、周方向に隣り合う駆動ラグ間を接続する接続ラグとを備え、各ラグ列を周方向に連続状に構成したものがある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この従来の弾性クローラは、左右二列のラグ列において、その駆動ラグと接続ラグとが周方向に連続しているため、周方向のラグ間に隙間があるものに比較して、振動及び亀裂の発生を少なくできる利点がある。しかし、各ラグ列の駆動ラグと芯金は、各駆動ラグが各芯金に対して1箇所で重なるように配置しているため、路面走行時には駆動ラグの芯金との重なり部分の面圧が高くなって耐久性が低下する上に、走行時の振動音の発生を十分に防止し得ない欠点がある。
【0006】
即ち、走行時には駆動輪、遊動転輪等がクローラ本体に沿って相対的に転動しながら、クローラ本体を前後進方向へと周方向に案内する。しかし、各駆動ラグは各芯金に対して1箇所で重なっており、重なり部分の面積が少ないため、駆動ラグが路面に接触した際に駆動ラグの芯金との重なり部分の面圧が高くなり、その重なり部分で駆動ラグが損傷し易くなる等、駆動ラグの耐久性が低下する欠点がある。
【0007】
また重なり部分の高い面圧に対しても十分に抗し得る程度に駆動ラグを含むクローラ本体の弾性材料に硬い材料を選択すれば、路面の走行時に各芯金が路面側に対応する毎に硬い駆動ラグが少ない面積の重なり部分で路面を叩くことになり、走行時の振動、騒音が大きくなる欠点がある。
【0008】
更に各駆動ラグと各芯金との重なり部分の面積が少ないため、走行時に重なり部分の前後両側でクローラ本体が大きく屈曲することとなり、クローラ本体自体に亀裂が発生し易くなる欠点もある。
【0009】
本発明は、このような従来の問題点に鑑み、耐久性が向上すると共に、走行時の振動、騒音の発生及び亀裂の発生を効果的に防止できる弾性クローラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、クローラ本体の左右方向の中央部に周方向に等間隔を置いて配置された係合部と、前記各係合部に対応して前記クローラ本体の左右方向に配置された芯金と、前記クローラ本体の外周側の前記係合部の左右両側に設けられた左右二列のラグ列とを備え、前記各ラグ列は、前記芯金に対して斜め方向に配置された駆動ラグと、前記ラグ列毎に周方向に隣り合う二つの前記駆動ラグを接続する接続ラグとを備えた弾性クローラにおいて、前記各ラグ列の前記各駆動ラグは、前記係合部に近い内端部側の重なり部で周方向に隣り合う二つの前記芯金の一方に、前記係合部から遠い外端部側の重なり部で周方向に隣り合う二つの前記芯金の他方に夫々重なっており、前記各ラグ列の前記各接続ラグは、周方向に隣り合う二つの前記駆動ラグの一方の前記内端部側の重なり部と、周方向に隣り合う二つの前記駆動ラグの他方の前記外端部側の重なり部との間の重なり部で前記各芯金に重なるものである。
【0011】
前記各接続ラグの前記重なり部は、前記内端部側の重なり部と、前記外端部側の重なり部との一方に連続してもよい。前記各接続ラグの前記重なり部は、前記外端部側の重なり部に連続してもよい。前記各駆動ラグは、前進方向の前側へと突出して円弧状に湾曲するようにしてもよい。
【0012】
前記各駆動ラグは、前進方向の後側へと突出して円弧状に湾曲するか、略直線状でもよい。前記ラグ列毎に周方向に隣り合う二つの前記駆動ラグを接続する接続ラグを備えたものでもよい。前記接続ラグの頂面は、該接続ラグに対応する前記駆動ラグの接続ラグ対応部分の頂面よりも低いことが望ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明はで、クローラ本体の左右方向の中央部に周方向に等間隔を置いて配置された係合部と、前記各係合部に対応して前記クローラ本体の左右方向に配置された芯金と、前記クローラ本体の外周側の前記係合部の左右両側に設けられた左右二列のラグ列とを備え、前記各ラグ列は、前記芯金に対して斜め方向に配置された駆動ラグと、前記ラグ列毎に周方向に隣り合う二つの前記駆動ラグを接続する接続ラグとを備えた弾性クローラにおいて、前記各ラグ列の前記各駆動ラグは、前記係合部に近い内端部側の重なり部で周方向に隣り合う二つの前記芯金の一方に、前記係合部から遠い外端部側の重なり部で周方向に隣り合う二つの前記芯金の他方に夫々重なっており、前記各ラグ列の前記各接続ラグは、周方向に隣り合う二つの前記駆動ラグの一方の前記内端部側の重なり部と、周方向に隣り合う二つの前記駆動ラグの他方の前記外端部側の重なり部との間の重なり部で前記各芯金に重なっているので、耐久性が向上すると共に、走行時の振動、騒音の発生及び亀裂の発生を効果的に防止できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1の実施形態を示す弾性クローラの平面図である。
【
図5】本発明の第2の実施形態を示す弾性クローラの平面図である。
【
図6】本発明の第3の実施形態を示す弾性クローラの平面図である。
【
図7】本発明の第4の実施形態を示す弾性クローラの平面図である。
【
図8】本発明の第5の実施形態を示す弾性クローラの平面図である。
【
図10】本発明の第6の実施形態を示す弾性クローラの平面図である。
【
図12】本発明の第7の実施形態を示す弾性クローラの平面図である。
【
図13】本発明の第8の実施形態を示す弾性クローラの平面図である。
【
図15】本発明の第9の実施形態を示す弾性クローラの平面図である。
【
図18】本発明の第10の実施形態を示す弾性クローラの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の各実施形態を図面に基づいて詳述する。
【0016】
図1~
図4は本発明の第1の実施形態を示す。この実施形態の弾性クローラは、
図1~
図4に示すように、ゴムその他の弾性材料により構成された無端帯状のクローラ本体1と、クローラ本体1の左右方向の略中央に周方向に等間隔を置いて一列状に配置された駆動輪用の係合孔2と、クローラ本体1内の各係合孔2間に左右方向に配置された芯金3と、クローラ本体1の外周側の係合孔2の左右両側に配置された左右二列のラグ列4a,4bとを備え、駆動輪、従動輪、遊動転輪等に巻き掛けられている。
【0017】
クローラ本体1は、スチールワイヤ等の抗張体5a,5bが左右方向に複数埋入されている。係合孔2は駆動輪の係合突起が係合するものであって、クローラ本体1の左右方向の略中央部に周方向に略等間隔をおいて一列状に多数(複数)設けられている。
【0018】
芯金3はクローラ本体1の左右方向の中央部に位置する係合部6と、係合部6の両側からクローラ本体1の左右方向の外側に伸びる翼部7a,7bと、係合部6の両側からクローラ本体1の内周側に突出する案内突起8a,8bとを一体に備えている。クローラ本体1には芯金3の係合部6間に係合孔2が形成され、駆動輪の外周の係合突起が係合孔2内から係合部6に係合するようになっている。
【0019】
左右二列のラグ列4a,4bは、クローラ本体1の左右方向の両側に左右対称に配置されており、その各ラグ列4a,4bには多数(複数)の駆動ラグ9a,9bと接続ラグ10a,10bとが周方向に交互に配置されている。左右の駆動ラグ9a,9b、接続ラグ10a,10bは、
図1に示すように、周方向に同一ピッチで左右対称に配置されている。なお、駆動ラグ9a,9b、接続ラグ10a,10bは断面台形状であって、クローラ本体1の外周面から外側へと突出しており、その頂面は略同一高さとなっている。
【0020】
左右の各駆動ラグ9a,9bは、クローラ本体1の左右方向の中央側の内端部11a,11bと、左右方向の外側の外端部12a,12bとの間で緩やかに湾曲する円弧状であって、内端部11a,11bが周方向に隣り合う二つの芯金3のうち前進方向(
図1のX矢示方向)側の芯金3上に位置し、外端部12a,12bが周方向に隣り合う二つの芯金3のうち後進方向側の芯金3の外方延長上に位置するように、クローラ本体1の周方向及び左右方向の線分に対して斜め方向に傾斜状に配置されている。
【0021】
即ち、駆動ラグ9a,9bは、内端部11a,11b側から外端部12a,12b側へと前進方向の後側に膨らむ緩やかな円弧状に形成され、しかも芯金3に対して概ね傾斜状に配置されている。駆動ラグ9a,9bは、
図1に斜線で示すように、内端部11a,11bがクローラ本体1の前進方向の前側の芯金3と前重なり部13a,13bで重なり、外端部12a,12bよりも内側の中間部分が後重なり部14a,14bで後側の芯金3と重なっている。なお、駆動ラグ9a,9bの内端部11a,11b側は係合孔2の両側で左右に相対向して配置され、外端部12a,12bはクローラ本体1の左右両側に配置されている。
【0022】
各接続ラグ10a,10bは、周方向に隣り合う駆動ラグ9a,9bを接続するものであって、
図1に示すように、クローラ本体1の左右方向の外側に膨らむ緩やかな円弧状に湾曲している。各接続ラグ10a,10bは、その両端の前接続部15a,15b、後接続部16a,16bのうちクローラ本体1の前進方向の前側の前接続部15a,15bが左右方向の中間で前側の駆動ラグ9a,9bに一体に接続され、前進方向の後側の後接続部16a,16bが前接続部15a,15bよりも左右方向の内側で後側の駆動ラグ9a,9bに一体に接続されている。従って、各接続ラグ10a,10bは、その前後両側の駆動ラグ9a,9bに対して略直角又は略直角に近い角度に配置されている。
【0023】
各接続ラグ10a,10bは、
図1に斜線で示すように、その前接続部15a,15bを含む多くの部分が重なり部17a,17bで芯金3と重なっている。各接続ラグ10a,10bの後接続部16a,16bは、前後の芯金3とは重ならずに隣り合う芯金3間の中間位置に位置している。
【0024】
なお、駆動ラグ9a,9bには、その周方向の両側の接続ラグ10a,10bが接続されているが、後接続部16a,16bが左右方向の内側に位置し、前接続部15a,15bが左右方向の外側に位置している。前接続部15a,15b、後接続部16a,16bの芯金3との重なり状態は逆でもよい。
【0025】
この種の弾性クローラでは、クローラ本体1は各駆動輪等に沿って周方向に回動するため、その回動時に駆動輪等が各芯金3上を相対的に通過する。従って、クローラ本体1が前進方向に回転しながら路面上を走行する場合には、クローラ本体1の回動に伴って各芯金3が路面側に対応する毎に、芯金3等を介して加わる荷重により、各駆動ラグ9a,9bが路面に順次圧接しながら前後進方向に走行する。
【0026】
この実施形態の弾性クローラでは、左右の各ラグ列4a,4bにおいて、周方向に隣り合う二つの駆動ラグ9a,9bが周方向に隣り合う二つの芯金3に対して傾斜状に配置され、各芯金3に対して前重なり部13a,13bと後重なり部14a,14bとで夫々重なっているため、各芯金3が路面側に対応する毎に、回動方向の前側の駆動ラグ9a,9bと、その後側の駆動ラグ9a,9bとの前後二つの駆動ラグ9a,9bが芯金3上に重なった状態となる。更に各駆動ラグ9a,9b間の接続ラグ10a,10bの重なり部分も芯金3に重なった状態となる。
【0027】
従って、駆動ラグ9a,9bと芯金3とが前重なり部13a,13bと後重なり部14a,14bとの2箇所で重なるため、1箇所で芯金と重なる従来の弾性クローラに比較して重なり部13a,13b、14a,14bの面積を広く採ることができ、駆動ラグ9a,9bが路面に接触した際に駆動ラグ9a,9bの重なり部分の面圧を低くすることができる。その結果、各駆動ラグ9a,9bが低い面圧で路面上を転がることになり、駆動ラグ9a,9bの耐久性が向上すると共に、走行時に駆動ラグ9a,9bが路面を叩くときの振動、走行音(転がり音)を抑えることができる。
【0028】
また周方向に隣り合う二つの芯金3に対して、周方向に隣り合う二つの駆動ラグ9a,9bが夫々重なっており、周方向に隣り合う二つの芯金3に跨がって、周方向に隣り合う二つの駆動ラグ9a,9bがあるため、周方向に隣り合う二つの芯金3間でクローラ本体1が極端に屈曲することがなく、各芯金3の両側でのクローラ本体1の亀裂の発生等を防止することができる。
【0029】
更に駆動ラグ9a,9b間を接続する接続ラグ10a,10bにも芯金3との重なり部分があるので、各芯金3毎に見た場合、各ラグ列4a,4bにおいて合計3箇所でラグ9a,9b、10a,10bの重なり部分がある。そのためラグ9a,9b、10a,10b全体の面圧を更に低く抑えることができる。
【0030】
図5は本発明の第2の実施形態を例示する。この弾性クローラは、
図5に示すように、左右のラグ列4a,4bを備え、その各ラグ列4a,4bの駆動ラグ9a,9b、接続ラグ10a,10bは略直線状に設けられている。なお、他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0031】
このように左右のラグ列4a,4bの駆動ラグ9a,9b、接続ラグ10a,10bを略直線状に構成することも可能である。このような構成の駆動ラグ9a,9b、接続ラグ10a,10bを採用する場合にも、駆動ラグ9a,9bを二つの重なり部13a,13b、14a,14bで芯金3に、接続ラグ10a,10bを重なり部17a,17bで芯金3に夫々重ねることができる。
【0032】
従って、第1の実施形態と同様に駆動ラグ9a,9bの面圧を下げて駆動ラグ9a,9bの耐久性の向上を図ることが可能であり、また走行時の振動とを防止できると共に、クローラ本体1の亀裂の発生を防止することができる。
【0033】
図6は本発明の第3の実施形態を例示する。この弾性クローラは、
図6に示すように、左右のラグ列4a,4bを備え、その各ラグ列4a,4bの駆動ラグ9a,9b、接続ラグ10a,10bは円弧状に湾曲して構成されている。
【0034】
各駆動ラグ9a,9bは内端部11a,11bと外端部12a,12bとの間で前進方向の前側へと膨らむ円弧状に湾曲しており、重なり部13a,13b、14a,14bで芯金3と重なっている。接続ラグ10a,10bはその略全体の重なり部17a,17bで芯金3に重なっている。なお、他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0035】
この弾性クローラでは、駆動ラグ9a,9bは円弧状に湾曲しているが、第1の実施形態の駆動ラグ9a,9bと比較すると、その湾曲方向は逆になっている。しかし、この場合にも、駆動ラグ9a,9bを二つの重なり部13a,13b、14a,14bで芯金3に、接続ラグ10a,10bを重なり部17a,17bで芯金3に夫々重ねることができる。
【0036】
従って、第1の実施形態と同様に駆動ラグ9a,9bの面圧を下げて駆動ラグ9a,9bの耐久性の向上を図ることが可能であり、また走行時の振動とを防止できると共に、クローラ本体1の亀裂の発生を防止することができる。
【0037】
図7は本発明の第4の実施形態を例示する。この弾性クローラは、
図7に示すように、左右のラグ列4a,4bを備えている。左右の各ラグ列4a,4bは、円弧状に湾曲する駆動ラグ9a,9b、接続ラグ10a,10bを備えているが、左右の各ラグ列4a,4bの駆動ラグ9a,9b、接続ラグ10a,10bはクローラ本体1の周方向に半ピッチずらせた状態で配置されている。
【0038】
左右の各ラグ列4a,4bの駆動ラグ9a,9bは各芯金3に対して2箇所の重なり部13a,13b、14a,14bで重なり、接続ラグ10a,10bは各芯金3に対して1箇所の重なり部17a,17bで重なっている。他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0039】
このように左右のラグ列4a,4bの駆動ラグ9a,9b、接続ラグ10a,10bをクローラ本体1の周方向に半ピッチずらせて配置した場合にも、各実施形態と同様に駆動ラグ9a,9bを二つの重なり部13a,13b、14a,14bで芯金3に、接続ラグ10a,10bを重なり部17a,17bで芯金3に夫々重ねることができる。従って、第1の実施形態と同様に駆動ラグ9a,9bの面圧を下げて駆動ラグ9a,9bの耐久性の向上を図ることが可能であり、また走行時の振動とを防止できると共に、クローラ本体1の亀裂の発生を防止することができる。
【0040】
図8、
図9は本発明の第5の実施形態を例示する。この弾性クローラは、
図8、
図9に示すように、左右のラグ列4a,4bを構成する駆動ラグ9a,9bと接続ラグ10a,10bとの内、駆動ラグ9a,9bの頂面の高さH1を接続ラグ10a,10bの頂面の高さH2よりも高く構成している。他の構成は各実施形態と同様である。
【0041】
このように駆動ラグ9a,9bの頂面の高さH1を接続ラグ10a,10bの頂面の高さH2よりも高く構成することにより、不整地走行時にも、駆動ラグ9a,9bの接続ラグ10a,10bに対応する部分での滑りを防止でき、駆動ラグ9a,9bの地面に対する食い込みが良好になる利点がある。
【0042】
即ち、駆動ラグ9a,9bと接続ラグ10a,10bとの頂面の高さが略同じ場合には、駆動ラグ9a,9bの接続ラグ10a,10bに対応する部分と地面との間で滑りが生じ易くなり、駆動ラグ9a,9bの地面に対する食い込みが悪くなる。
【0043】
しかし、駆動ラグ9a,9bの高さH1を接続ラグ10a,10bの高さH2よりも高くすれば、接続ラグ10a,10bに対応する部分でも駆動ラグが突出するため、駆動ラグ9a,9bと地面との間の滑りが少なくなり、駆動ラグ9a,9bの地面に対する食い込みが良好になる。
【0044】
図10、
図11は本発明の第6の実施形態を例示する。駆動ラグ9a,9bの頂面の高さH1を接続ラグ10a,10bの頂面の高さH2よりも高くする場合には、
図10、
図11に示すように、接続ラグ10a,10bの両端の駆動ラグ9a,9b側にV字状、その他の凹部10cを設けて、駆動ラグ9a,9bと接続ラグ10a,10bとの境界を際立たせることも可能である。
【0045】
図12は本発明の第7の実施形態を例示する。左右二列のラグ列4a,4bは、駆動ラグ9a,9bと接続ラグ10a,10bとを備え、その駆動ラグ9a,9bは芯金3に対して概ね傾斜状であるが、
図12に示すように、内側部分20a,20bと外側部分21a,21bとで芯金3に対する角度が異なっている。
【0046】
即ち、駆動ラグ9a,9bの内側部分20a,20bは芯金3に対する角度が大であり、外側部分21a,21bは芯金3に対する角度が小となっている。他の構成は各実施形態と同様である。
【0047】
駆動ラグ9a,9bの平面視上のラグ形状を
図12に示すように構成すれば、弾性クローラの前進時と後退時との駆動力の極端な違いを防止することができる。例えば、駆動ラグ9a,9bを
図6又は
図7に示すような円弧状に構成した場合には、駆動ラグ9a,9bの芯金3に対する角度は、クローラ本体1の左右方向の中央側に比較して両端側が大きくなる。
【0048】
そのため不整地を走行する際に、クローラ本体1が前進方向(X矢示方向)に回転したときには、クローラ本体1の左右両側部分では駆動ラグ9a,9bの湾曲形状に沿って泥が左右両側へと案内されて行くことになり、駆動ラグ9a,9bの地面に対する食い込み力が低下する。
【0049】
一方、クローラ本体1が後退方向に回転したときには、クローラ本体1の左右両側部分の泥が駆動ラグ9a,9bの湾曲形状に沿って左右方向の中央側へと案内されるため、駆動ラグ9a,9bの地面に対する食い込み力が向上する。その結果、前進時と後退時とで駆動力が大きく異なることになる。
【0050】
しかし、
図12に示すように駆動ラグ9a,9bを中間部で屈曲させて、内側部分20a,20bと外側部分21a,21bとがくの字状となるように構成することにより、前進時と後退時との駆動力の極端な違いを防止することができる。
【0051】
図13、
図14は本発明の第8の実施形態を例示する。この弾性クローラは、クローラ本体1の外周に駆動ラグ9a,9b、接続ラグ10a,10bが設けられ、クローラ本体1の内周に車輪転動部22a,22bが設けられている。駆動ラグ9a,9b、接続ラグ10a,10bは第1の実施形態と同様に構成されている。
【0052】
車輪転動部22a,22bはクローラ本体1の回動時に駆動輪、従動輪、遊動転輪等の車輪24a,24bが転動する車輪転動路23a,23bを構成するものであって、左右の案内突起8a,8bの外側に接続ラグ10a,10bに対応して周方向に列状に配置されている。
【0053】
このようにクローラ本体1の内周に、外周側の接続ラグ10a,10bに対応して車輪転動部22a,22bを設けることも可能であり、これによって車輪24a,24bが車輪転動路23a,23bを転動する際のクローラ本体1の上下方向の振動を極力防止することができる。
【0054】
図15~
図17は本発明の第9の実施形態を例示する。この弾性クローラは、
図15、
図16に示すように、クローラ本体1の外周に駆動ラグ9a,9b、接続ラグ10a,10bが設けられている。これらは第1の実施形態と同様である。
【0055】
クローラ本体1の内周には、
図16、
図17に示すように、芯金3の左右一対の案内突起8a,8bが突出している。各案内突起8a,8bは頂部81a,81b側が周方向(前後方向)に長くなっており、この頂部81a,81bによって、遊動転輪25が転動する車輪転動路23a,23bが形成されている。各案内突起8a,8bの頂部81a,81bは、芯金3に対して周方向の逆向きに突出している。遊動転輪25は案内突起8a,8bの頂部81a,81bを転動する左右一対の小径の転輪部25a,25bと、この一対の転輪部25a,25b間に配置され且つ案内突起8a,8bの内側部により案内される大径の被案内部25cとを有する。
【0056】
このように案内突起8a,8bの頂部81a,81bを遊動転輪25が転動するような形式の弾性クローラにおいても、第1の実施形態と同様に駆動ラグ9a,9bの面圧を下げて駆動ラグ9a,9bの耐久性の向上を図ることが可能であり、また走行時の振動を防止できると共に、クローラ本体1の亀裂の発生を防止することができる。
【0057】
図18~
図20は本発明の第10の実施形態を例示する。この弾性クローラは、
図18、
図19に示すように、クローラ本体1の外周に駆動ラグ9a,9b、接続ラグ10a,10bが設けられている。これらは第1の実施形態と同様である。
【0058】
クローラ本体1の内周には、
図19、
図20に示すように、芯金3の左右一対の案内突起8a,8bと、この案内突起8a,8bの外側に配置された車輪転動部26a,26bとが設けられている。案内突起8a,8bと車輪転動部26a,26bは周方向(前後方向)に長くなっており、また左右同一側で案内突起8a,8bと車輪転動部26a,26bは芯金に対して周方向の逆向きに突出している。なお、左右の案内突起8a,8bと左右の車輪転動部26a,26bは、芯金3毎に点対称になっている。
【0059】
車輪転動部26a,26bは遊動転輪28の大径の転輪部28a,28bが転動する車輪転動路23a,23bを構成するものである。周方向に隣り合う車輪転動部26a,26b間には、クローラ本体1の屈曲性を良くするための凹部29a,29bが左右方向に設けられている。遊動転輪28は、左右両端側に形成され且つ車輪転動部26a,26b上を転動可能な大径の転輪部28a,28bと、案内突起8a,8b上に対応する小径部28cと、転輪部28a,28b及び小径部28c間に形成され且つ案内突起8a,8bの外側隅部により左右方向の位置が規制される傾斜部28d,28eとを有する。車輪転動路23a,23bは接続ラグ10a,10bに対応している。
【0060】
このような遊動転輪28を使用する弾性クローラにおいても、第1の実施形態と同様に駆動ラグ9a,9bの面圧を下げて駆動ラグ9a,9bの耐久性の向上を図ることが可能であり、また走行時の振動とを防止できると共に、クローラ本体1の亀裂の発生を防止することができる。
【0061】
なお、
図19に二点鎖線で示すように、遊動転輪28に小径の転輪部28f,28gを設ける一方、この転輪部28f,28に対応して案内突起8a,8bの頂面を車輪転動部81a,81bとし、大径の転輪部28a,28bが車輪転動部26a,26b上を転動すると同時に、小径の転輪部28f,28gが車輪転動部81a,81b上を転動するようにしてもよい。
【0062】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。例えば、実施形態では、クローラ本体1の外周側に左右二列のラグ列4a,4bを構成する駆動ラグ9a,9b、接続ラグ10a,10bは、走行路側の条件に応じて円弧状、直線状、屈曲状、その他の適宜形状に変更することができる。
【0063】
また駆動ラグ9a,9bを隣り合う二つの芯金3と重なるように配置するに当たっては、駆動ラグ9a,9bを芯金3に対して概ね斜め方向に傾斜状に配置することが望ましいが、駆動ラグ9a,9bは隣り合う二つの芯金3に跨がって蛇行するように屈曲状に配置することも可能である。その場合には、接続ラグ10a,10bは省略することもできる。
【0064】
駆動ラグ9a,9bは隣り合う二つ以上の芯金3と重なるように配置すればよい。その場合、頂面を含む駆動ラグ9a,9bの一部が芯金3と重なるようにすることが望ましいが、断面台形状の駆動ラグ9a,9bの内、その上部側傾斜部等のように駆動ラグ9a,9bの頂面以外の一部でもよい。各ラグ列4a,4bの駆動ラグ9a,9bが一種類の場合には、その各駆動ラグ9a,9bが芯金3と重なることが望ましいが、長短二種類の駆動ラグ9a,9bなど、複数種類の駆動ラグ9a,9bがある場合には、その全ての駆動ラグ9a,9bが隣り合う少なくとも二つの芯金3と重なるようにしてもよいし、複数種類の駆動ラグ9a,9bの内の一部、例えば主要な駆動ラグ9a,9bが隣り合う二つの芯金3と重なり、他の駆動ラグ9a,9bが一つの芯金3と重なるようにしてもよい。
【0065】
駆動ラグ9a,9bと接続ラグ10a,10bは頂面が略同一高さでもよいが、駆動ラグ9a,9bの頂面を接続ラグ10a,10bの頂面よりも高くすれば、駆動力の地面に対する食い付きがよくなり、駆動力をアップすることができる。その場合、駆動ラグ9a,9bは少なくとも接続ラグ10a,10bに対応する部分が高くなっておればよい。
【0066】
各実施形態では、クローラ本体1の左右方向の中央部に周方向に等間隔を置いて配置された係合孔2と、クローラ本体1の周方向に隣り合う係合孔2間に幅方向に配置された芯金3と、クローラ本体1の外周側に設けられた左右二列のラグ列4a,4bとを備えた弾性クローラを例示しているが、係合孔2に代替して内周に突出する係合部を備えた弾性クローラでも同様に実施可能である。
【符号の説明】
【0067】
1 クローラ本体
2 係合孔
3 芯金
4a,4b ラグ列
6 係合部
9a,9b 駆動ラグ
10a,10b 接続ラグ
11a,11b 内端部
12a,12b 外端部
13a,13b 前重なり部
14a,14b 後重なり部
15a,15b 前接続部
16a,16b 後接続部
17a,17b 重なり部
20a,20b 内側部分
21a,21b 外側部分