(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-21
(45)【発行日】2022-01-31
(54)【発明の名称】ポリエステル組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 67/02 20060101AFI20220124BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20220124BHJP
C08K 7/14 20060101ALI20220124BHJP
C08K 5/524 20060101ALI20220124BHJP
B29C 45/00 20060101ALI20220124BHJP
B29C 48/00 20190101ALI20220124BHJP
B29C 70/02 20060101ALI20220124BHJP
【FI】
C08L67/02
C08K3/22
C08K7/14
C08K5/524
B29C45/00
B29C48/00
B29C70/02
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019239044
(22)【出願日】2019-12-27
(62)【分割の表示】P 2015093988の分割
【原出願日】2015-05-01
【審査請求日】2020-01-27
(32)【優先日】2014-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】505422707
【氏名又は名称】ランクセス・ドイチュランド・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ティモ・インメル
(72)【発明者】
【氏名】マティアス・ビエンミュラー
(72)【発明者】
【氏名】ヨヒェン・エントナー
【審査官】三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-272955(JP,A)
【文献】特開2009-007552(JP,A)
【文献】特表2010-535876(JP,A)
【文献】特開2012-229315(JP,A)
【文献】特表2004-510837(JP,A)
【文献】特表2014-500368(JP,A)
【文献】国際公開第2012/057318(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
B29C41/00- 41/36
B29C41/46- 41/52
B29C70/00- 70/88
B29C45/00- 45/24
B29C45/46- 45/63
B29C45/70- 45/72
B29C45/74- 45/84
B29C48/00- 48/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)24.9~89.9重量%の少なくとも1種のポリアルキレンテレフタレート、
b)10~75重量%の、酸化アルミニウム、ならびに
c)0.1~50重量%のガラス繊維、
(ただし、成分の重量パーセントをすべて合計したものは必ず100である)
を含み、少なくとも一種のポリアルキレンテレフタレートが、ポリブチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレートとのブレンドであることを特徴とする、ポリエステル組成物。
【請求項2】
ポリエチレンテレフタレート含量が、存在するポリエステルの全量を基準にして50~99.9重量%の範囲内であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
成分a)~c)に加えて、
d)全組成物を基準にして0.01~5重量%の少なくとも1種のホスファイト安定剤をさらに含み、
成分a)、b)、c)の量が、成分の重量パーセントをすべて合計したものが必ず100になるように減量されていることを特徴とする、請求項1
または2に記載の組成物。
【請求項4】
成分a)~d)に加えて、あるいはd)に代えて、
e)全組成物を基準にして、0.01~10重量%の少なくとも1種の流動助剤をさらに含み、その他の成分の量が、成分の重量パーセントをすべて合計したものが必ず100になるように減量されていることを特徴とする、請求項
3に記載の組成物。
【請求項5】
成分a)~e)に加えて、あるいはd)及び/またはe)に代えて、
f)全組成物を基準にして、0.01~15重量%の、タルク粉体をさらに含み、その他の成分の量が、成分の重量パーセントをすべて合計したものが必ず100になるように減量されていることを特徴とする、請求項
4に記載の組成物。
【請求項6】
タルク粉体が、微結晶性タルク粉体として使用されることを特徴とする、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
成分a)~f)に加えて、あるいはd)及び/またはe)及び/またはf)に代えて、
g)全組成物を基準にして、0.01~15重量%の少なくとも1種の離型剤をさらに含み、その他の成分の量が、成分の重量パーセントをすべて合計したものが必ず100になるように減量されていることを特徴とする、請求項
5に記載の組成物。
【請求項8】
成分a)~g)に加えて、またはd)及び/またはe)及び/またはf)及び/またはg)に代えて、
h)全組成物を基準にして、0.01~45重量%の、
成分c)~g)とは異なる少なくとも1種の別の添加剤をさらに含み、その他の成分の量が、成分の重量パーセントをすべて合計したものが必ず100になるように減量されていることを特徴とする、請求項
7に記載の組成物。
【請求項9】
トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、(2,4,6-トリ-tert-ブチルフェノール)2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールホスファイト、またはHostanox(登録商標)P-EPQの群からのホスファイト安定剤を使用し、ここで、前記Hostanox(登録商標)P-EPQはテトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)1,1-ビフェニル-4,4’-ジイルビスホスフォナイトを含むことを特徴とする、請求項
3~
8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
使用される離型剤が、エステルワックス、ペンタエリスリトールテトラステアレー
ト、長鎖脂肪酸、長鎖脂肪酸の塩、長鎖脂肪酸のアミド誘導体、モンタンワックス、ならびに、低分子量ポリエチレンワックスおよび低分子量ポリプロピレンワックスおよびエチレンホモポリマーワックスの群から選択される少なくとも1種を含むことを特徴とする、請求項
7に記載の組成物。
【請求項11】
多価アルコールのモンタン酸エステルが、離型剤として使用されることを特徴とする、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
直鎖、非分岐状のC
28
~C
32
モノカルボン酸とエチレングリコールまたはグリセロールとのエステルが、離型剤として使用されることを特徴とする、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
請求項1~
12のいずれか一項に
規定の組成物の使用であって、高いグローワイヤ抵抗性を有する製品を製造するための成形組成物の形態での、使用。
【請求項14】
高いグローワイヤ抵抗性を有する製品が、電気および電子用モジュールおよび構成要素である、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
高いグローワイヤ抵抗性を有する製品が、家電用機器である、請求項13に記載の使用。
【請求項16】
前記成形組成物が、射出成形または押出成形において使用されることを特徴とする、請求項
13に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導率を改良するための少なくとも1種の充填剤、好ましくは酸化アルミニウム、窒化ホウ素またはケイ酸アルミニウム、特に好ましくはケイ酸アルミニウム、極めて特に好ましくは三斜晶系-単面体晶系の結晶構造を有するケイ酸アルミニウムを含む、高められたグローワイヤ抵抗性を有するポリエステルベースの組成物、それらの製造およびそれらから製造される、電気電子市場、好ましくは家電用機器のための製品、ならびに、電気電子市場、好ましくは家電用機器のための製品のグローワイヤ抵抗性を改良するための、酸化アルミニウム、窒化ホウ素またはケイ酸アルミニウム、特に好ましくはケイ酸アルミニウム、極めて特に好ましくは三斜晶系-単面体晶系の結晶構造を有するケイ酸アルミニウムの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルをベースとする熱可塑性プラスチック組成物は、なかんずく、強度、靱性、良好な表面性、および極めて良好な耐溶剤性に関しては優れた性質を有しており、このため、自動車分野から電気電子分野における用途に至るまで、広く各種の用途においてそれらは使用されている。特に、家電用機器における構成要素のために使用される非金属の絶縁材料は、前記構成成分に電流が流れたり電位がかかる場合、その材料と電流が流れている部材との距離が3mm未満である場合のグローワイヤ抵抗性に関する、標準規格IEC 60335-1の要求性能を満たしていなければならない。
【0003】
0.5Aよりも高い電流を使用する家電用機器の場合、前記機器が管理されているのなら、その非金属の、絶縁材料、およびそれらから製造された製品のそれぞれが、少なくとも750℃のGWFI(グローワイヤ燃焼性指数(Glow Wire Flammability Index)=IEC 60695-2-12)を達成していなければならない。GWFIは、IEC 60695-2-12に従い、試験プラック(円板)について測定し、サンプルをグローワイヤに曝露させたときの自己消火性挙動の目安である。試験サンプルは、加熱したグローワイヤに対して、30秒間、1ニュートンの力で圧接される。グローワイヤの貫入深さは、7mmまでに制限される。グローワイヤを取り去った後、その試験サンプルが30秒未満の間に消炎し、かつその試験サンプルの下に置いておいたティッシュペーパー片に着火しなければ、その試験に合格したことになる。
【0004】
しかし、それに代わるものとしてGWT試験(グローワイヤ温度試験(Glow Wire Temperature Test)=IEC 60695-2-11)も存在し、これは、完成部品について実施される。0.5Aよりも高い電流を使用する家電用機器の場合においては、前記機器が管理されているのならば、その非金属の、絶縁材料は、少なくとも750℃のGWTに達していなければならない。
【0005】
ここでの家電用機器についての要求性能は、前記機器が管理されていないのならば、850℃のGWFI(グローワイヤ燃焼性指数(Glow Wire Flammability Index)=IEC 60695-2-12)、および775℃のGWIT(グローワイヤ着火温度(Glow Wire Ignition Temperature)=IEC 60695-2-13)を達成しているべきである。
【0006】
IEC 60695-2-13に従ったGWITは、試験プラック(円板)について測定し、たとえばグローワイヤまたは過熱した抵抗体に曝露させた、プラスチックの着火の容易さの目安である。その着火温度試験の間のすべてで、その試験サンプルに着火することは許されない。着火とは、5秒を超えて継続する燃焼と定義されている。したがって、GWITとして記述される温度は、そのプラックに着火しない最大温度よりも25℃上の温度である。GWITは、その材料のメーカーが記載し、Underwriters Laboratories(UL) Yellow Cardにリストアップされる。GWITに代わるものとして、完成部品についてGWT試験(グローワイヤ温度試験(Glow Wire Temperature Test)=IEC 60695-2-11)を実施することもまた可能である。
【0007】
GWFIおよびGWITの要求性能に適合させるために、ポリエステルベースの組成物、およびポリエステルをベースとする熱可塑性プラスチック成形組成物には、難燃剤を加える。その目的のためには、かつては、ハロゲン含有難燃剤が好ましいとして使用されていた。しかし、ほとんどの場合、臭素化難燃剤をベースとしていたそれらの成形組成物は、環境問題を引き起こし、また特にほとんどの場合、要求されたGWITには適合しない。さらには、電気電子分野において重要とされるその他の性質たとえば、高い耐トラッキング性の値(CTI-A)や、今日、成形組成物にハロゲンを含まない難燃剤を使用することが好まれている、低い煤煙濃度に適合させることも困難である。
【0008】
(特許文献1)およびそれから派生した(特許文献2)には、ポリエステル樹脂またはポリエステル樹脂ブレンド成分、トリアジン、グアニジン、または(イソ)シアヌレート化合物、硫化亜鉛、ホウ酸亜鉛、または窒化ホウ素、場合によっては非フィブリル化ポリテトラフルオロエチレン、およびリン含有化合物を含む、難燃性ポリエステル組成物が記載されている。
【0009】
(特許文献3)には、なかんずく、酸成分として少なくとも70mol%のテレフタル酸および5~12mol%の水素化ダイマー酸を使用したポリブチレンテレフタレートをベースとするコポリエステル、さらには窒化ホウ素および/またはケイ酸マグネシウム、臭素化難燃剤、アンチモン化合物、ならびに繊維質の充填剤を含む、ポリアルキレンテレフタレート樹脂組成物が記載されている。(特許文献4)には、窒素ベースの有機難燃剤および離型剤、さらに場合によってはリン含有難燃剤が含まれるポリマー組成物が記載されており、それらは、IEC 60695-2-13による、管理されていない家電用機器についての上述の要求性能に適合している。
【0010】
(特許文献5)には、ホスフィン酸塩、さらにはホスホン酸塩オリゴマー、ポリマー、ならびにメラミン誘導体をベースとする難燃剤の混合物が記載されている。PBT(ポリブチレンテレフタレート)においてリン含有難燃剤を使用すると、775℃以上のGWIT値が得られた。
【0011】
(特許文献6)では、PBT、窒素含有難燃剤、さらにはリン含有難燃剤をベースとする成形組成物が提供されており、それらは、IEC 695-2-1/2により、960℃のGWTを達成している。
【0012】
特にハロゲンを含まない難燃剤を使用したときに発生する具体的な欠点は、それらの分解温度が低く、それにともなって、製品を製造するための加工の際、特に射出成形または押出成形において、ハロゲンを含まない難燃剤を含む成形組成物の加工の許容度が限定されるということである。さらには、リン含有難燃剤は、エネルギーを多量に消費する製造プロセスでしか得ることができない。したがって、これらはハロゲンは含まないが、リンを含有する難燃剤を回避することが望ましいという環境的な理由も存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】国際公開第01/81470A1号パンフレット
【文献】欧州特許第1276813B1号明細書
【文献】特開2012-229315号公報
【文献】国際公開第2006/117087A1号パンフレット
【文献】国際公開第2010/080491A1号パンフレット
【文献】国際公開第03/018680A2号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、本発明の目的は、従来技術から公知のハロゲンベースまたはリンベースの難燃剤を使用しなくても、標準規格IEC 60335-1の要求性能に適合する、電気電子市場のための製品、好ましくは家電用機器の製造に使用するための、ポリエステルベースの組成物を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0015】
驚くべきことには、酸化アルミニウム、窒化ホウ素、およびケイ酸アルミニウムの群からの少なくとも1種の成分を含むポリエステル組成物が、従来技術から公知の追加の難燃剤の使用を一切必要とせず、標準規格IEC 60335-1の要求性能に適合し、また、それらが極めて良好なグローワイヤ抵抗性と寛大な加工許容性とを併せて有しているために、それらが、電気電子市場のための製品の製造、好ましくは家電用機器の製造において優れた適合性を有しているということが見いだされた。
【0016】
その目的は、以下のものを含む組成物によって達成され、したがって本発明はそれらの組成物を提供する:
a)少なくとも1種のポリアルキレンテレフタレート、好ましくはポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、またはPBTとPETとのブレンド、特に好ましくはその中でPET含量が、存在しているポリエステルの全量を基準にして50~99.9重量%の範囲内である、PBTとPETとのブレンド、
b)酸化アルミニウム、窒化ホウ素、およびケイ酸アルミニウムの群からの少なくとも1種の成分、好ましくはケイ酸アルミニウム、特に好ましくは三斜晶系-単面体晶系の結晶構造を有するケイ酸アルミニウム、ならびに
c)ガラス繊維。
【発明を実施するための形態】
【0017】
明確にするために付言すれば、本発明の範囲には、以下において一般的な項目または好ましい範囲として列記されるすべての定義およびパラメーターの各種所望の組合せが含まれていると考えるべきである。
【0018】
本発明は、好ましくは、以下のものを含む組成物を提供する:
a)24.9~89.9重量%、好ましくは34.9~84.9重量%、特に好ましくは44.9~84.9重量%の、少なくとも1種のポリアルキレンテレフタレート、好ましくはPBT、PET、またはPBTとPETとのブレンド、特に好ましくはPBTとPETとのブレンド、特には、その中でPET含量が、存在しているポリエステルの全量を基準にして50~99.9重量%の範囲内である、PBTとPETとのブレンド、
b)10~75重量%、好ましくは15~65重量%、特に好ましくは25~65重量%の、酸化アルミニウム、窒化ホウ素、およびケイ酸アルミニウムの群からの少なくとも1種の成分、好ましくはケイ酸アルミニウム、特に好ましくは三斜晶系-単面体晶系の結晶構造を有するケイ酸アルミニウム、ならびに
c)0.1~50重量%、好ましくは10~40重量%、特に好ましくは10~30重量%のガラス繊維、
ただし、成分の重量パーセントをすべて合計したものは必ず100である。
【0019】
本発明は、特に好ましくは、以下のものを含む組成物を提供する:
a)24.9~54重量%、好ましくは28~45重量%、特に好ましくは32~40重量%の、ポリブチレンテレフタレートまたはポリエチレンテレフタレート、またはPBTとPETとのブレンド、特に好ましくはPBTとPETとのブレンド、特には、その中でPET含量が、存在しているポリエステルの全量を基準にして50~99.9重量%である、PBTとPETとのブレンド、
b)21~75重量%、好ましくは30~70重量%、特に好ましくは40~65重量%の、酸化アルミニウム、窒化ホウ素、およびケイ酸アルミニウムの群からの少なくとも1種の成分、好ましくはケイ酸アルミニウム、特に好ましくは三斜晶系-単面体晶系の結晶構造を有するケイ酸アルミニウム、ならびに
c)0.1~50重量%、好ましくは2~40重量%、特に好ましくは3~30重量%のガラス繊維、
ただし、成分の重量パーセントをすべて合計したものは必ず100である。
【0020】
本発明の組成物は、出発原料として使用される成分a)~c)の少なくとも1種のミキサーの中での混合をさらに使用して調製する。このことによって、中間体としての、本発明の組成物をベースとする成形組成物が得られる。それらの成形組成物には、もっぱら成分a)~c)のみが含まれていてもよいし、あるいは成分a)~c)に加えて他の成分が含まれていてもよい。この場合においては、成分a)~c)の量を、成分の重量パーセントをすべて合計したものが必ず100になるように、記述された量の範囲内で変更させるべきである。
【0021】
一つの実施態様においては、本発明の組成物には、成分a)~c)に加えて、以下のものが含まれる:
d)それぞれの場合において全組成物を基準にして、0.01~5重量%、好ましくは0.05~4重量%、特に好ましくは0.1~3重量%の、少なくとも1種のホスファイト安定剤、ここで、成分a)、b)、c)の量は、重量パーセントをすべて合計したものが必ず100になるように、減量される。
【0022】
一つの実施態様においては、本発明の組成物には、成分a)~d)に加えるか、またはd)に代えて、以下のものが含まれる:
e)全組成物を基準にして、0.01~10重量%の、流動性を改良するための少なくとも1種の添加剤(これらは、流動助剤、流動剤、流動助剤または内部潤滑剤とも呼ばれる)、ここで、その他の成分の量は、重量パーセントをすべて合計したものが必ず100になるように、減量される。
【0023】
一つの実施態様においては、本発明の組成物には、成分a)~d)に加えるか、またはd)および/またはe)に代えて、以下のものが含まれる:
f)全組成物を基準にして、0.01~10重量%、好ましくは0.01~5重量%の、タルク粉体、好ましくは微結晶性タルク粉体、ここで、その他の成分の量は、重量パーセントをすべて合計したものが必ず100になるように、減量される。
【0024】
一つの実施態様においては、本発明の組成物には、成分a)~e)に加えるか、または成分d)および/またはe)および/またはf)に代えて、以下のものが含まれる:
g)全組成物を基準にして、0.01~15重量%、好ましくは0.01~10重量%、特に好ましくは0.01~5重量%の、少なくとも1種の離型剤、ここで、その他の成分の量は、重量パーセントをすべて合計したものが必ず100になるように、減量される。
【0025】
一つの実施態様においては、本発明の組成物には、成分a)~g)に加えるか、または成分d)および/またはe)および/またはf)および/またはg)に代えて、以下のものが含まれる:
h)全組成物を基準にして、0.01~45重量%、好ましくは0.01~30重量%、特に好ましくは0.01~15重量%の、成分c)~g)とは異なる少なくとも1種のその他の添加剤、ここで、その他の成分の量は、重量パーセントをすべて合計したものが必ず100になるように、減量される。
【0026】
本発明においては、使用された成分b)に酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウムまたは窒化ホウ素が含まれているならば、後者が、成分h)としての二酸化チタンと組み合わされているのが有利である。
【0027】
成分b)として酸化アルミニウムを使用するのが好ましい。
【0028】
それに代わる好ましい実施態様では、酸化アルミニウムまたはケイ酸アルミニウムの代わりに、窒化ホウ素を二酸化チタンと組み合わせて使用する。
【0029】
成分a)
本発明においては、成分a)は、少なくとも1種のポリアルキレンテレフタレート、好ましくは少なくともポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、またはPBTとPETとのブレンド、特には、その中でPET含量が、存在しているポリエステルの全量を基準にして、50~99.9重量%の範囲内であるPBTとPETとのブレンドである。本発明においては、成分a)が、ポリブチレンテレフタレート(PBT)またはポリエチレンテレフタレート(PET)、またはPBTとPETとのブレンド、特には、その中でPET含量が、存在しているポリエステルの全量を基準にして、50~99.9重量%の範囲内であるPBTとPETとのブレンドであるのが好ましい。
【0030】
本発明において使用されるポリアルキレンテレフタレートの、PBTおよびPETのそれぞれは、芳香族ジカルボン酸またはその反応性誘導体、好ましくはジメチルエステルまたは無水物と、適切な脂肪族ジオールとの反応生成物である。それらは、テレフタル酸(またはその反応性誘導体)と4個、またはそれぞれ2個のC原子を有するそれぞれの脂肪族ジオールから、公知の方法によって製造することができる(Kunststoff-Handbuch,Bd.VIII[Plastics handbook,Volume VIII],p.695~743,Karl-Hanser-Verlag,Munich,1973)。
【0031】
ポリエステルとして好適に使用されるPETには、ジカルボン酸を規準にして、少なくとも80mol%、好ましくは少なくとも90mol%のテレフタル酸残基、およびジオール成分を規準にして、少なくとも80mol%、好ましくは少なくとも90mol%のエチレングリコール残基が含まれる。
【0032】
ポリエステルとして好適に使用されるPBTには、ジカルボン酸を規準にして、少なくとも80mol%、好ましくは少なくとも90mol%のテレフタル酸残基、およびジオール成分を規準にして、少なくとも80mol%、好ましくは少なくとも90mol%の1,4-ブタンジオール残基が含まれる。
【0033】
好適に使用される上述のポリエステル、PBTおよびPETには、エチレングリコール残基の他に、それぞれ1,4-ブタンジオール残基、20mol%までの、その他の、3~12個のC原子を有する脂肪族ジオールまたは6~21個のC原子を有する脂環族ジオールを含むこともできる。以下の残基が好ましい:1,3-プロパンジオール、2-エチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-2,4-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、1,6,2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,4-ジ(β-ヒドロキシエトキシシ)ベンゼン、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、2,4-ジヒドロキシ-1,1,3,3-テトラメチルシクロブタン、2,2-ビス(3-s-ヒドロキシエトキシシフェニル)プロパン、または2,2-ビス(4-ヒドロキシプロポキシフェニル)プロパン(独国特許出願公開第A24 07 674号明細書(=米国特許第A4 035 958号明細書)、独国特許出願公開第A24 07 776号明細書、独国特許出願公開第A27 15 932号明細書(=米国特許第A4 176 224号明細書))。
【0034】
一つの実施態様においては、好適に使用される上述のポリエステルが、たとえば独国特許出願公開第A19 00 270号明細書(=米国特許第A3 692 744号明細書)に記載されているように、3価もしくは4価のアルコール、または3塩基性もしくは4塩基性のカルボン酸を比較的少量含ませることにより、分岐状であってもよい。好ましい分岐化剤は、トリメシン酸、トリメリット酸、トリメチロールエタンおよびトリメチロールプロパン、ならびにペンタエリスリトールである。
【0035】
本発明において好適に使用される上述のポリエステルの固有粘度が、それぞれの場合で、Ubbelohde粘度計を用い、フェノール/o-ジクロロベンゼン(1:1、重量部)中25℃測定して、30cm3/g~150cm3/gの範囲、好ましくは40cm3/g~130cm3/gの範囲、特には50cm3/g~110cm3/gの範囲であるのが好ましい。
【0036】
固有粘度[η]は、極限粘度数またはStaudinger指数とも呼ばれるが、その理由は、第一には、それが物質依存性の定数であり、第二には、それが分子量に関連しているからである。それは、溶媒の粘度が、溶解された物質によってどのような影響を受けるかを表している。固有粘度は次の定義を用いて定義される:
【数1】
(式中、cは溶解された物質の濃度(g/mL)であり、η
0は、純溶媒の粘度であり、そして
【数2】
は、比粘度である。)
【0037】
PETとPBTとのブレンドを使用するのなら、その中でPET含量が、存在しているポリエステルの全量を基準にして、成分a)の中で50~99.9重量%の範囲内であるであるブレンドが好ましい。
【0038】
成分b)
その酸化アルミニウムおよびその窒化ホウ素が、成分b)の中で、微細な針状物、微小板状物、球状物、または不規則形状の粒子の形態で使用されるのが好ましい。その酸化アルミニウムおよびその窒化ホウ素の好ましい粒径は、0.1~300μmの範囲、特には0.5~100μmの範囲である。その酸化アルミニウム、および窒化ホウ素それぞれの熱伝導率が、10~400W/mKの範囲、特には30~250W/mKの範囲であるのが好ましい。酸化アルミニウムの好適な一例は、Martoxid(登録商標)MPS-2[CAS No.:1344-28-1](Martinswerk GmbH(Bergheim,Germany)製)である。成分b)として使用される窒化ホウ素[CAS No.:10043-11-5]は、たとえば、ESK Ceramics GmbH & Co.KG(Kempten,Germany)(3M(St.Paul/Minnesota,USA)の子会社)からBORONID(登録商標)として入手可能である。
【0039】
好適に使用されるケイ酸アルミニウムは、三斜晶系-単面体晶系のケイ酸アルミニウムである。本発明の目的のために好適に使用される鉱物質である、カイアナイト[CAS No.:1302-76-7]は、三斜晶系-単面体晶系の結晶形で生成する、Al2[O SiO4]の化学組成を有するケイ酸アルミニウムである。カイアナイトには、不純物として、鉄化合物およびクロム化合物が含まれている可能性がある。本発明においては、使用するケイ酸アルミニウムまたはカイアナイトには、1重量%未満、特には0.5重量%未満の不純物しか含まれていないのが好ましい。
【0040】
ケイ酸アルミニウム、好ましくはAl2[O SiO4]またはカイアナイトは、粉体の形態で使用するのが好ましい。好適なケイ酸アルミニウム粉体、好ましくはAl2[O SiO4]またはカイアナイト粉体の中央粒径d50は、(ASTM D 1921-89、方法Aに従って)大きくても500μm、好ましくは0.1~250μmの範囲、特に好ましくは0.5~150μmの範囲、極めて特に好ましくは0.5~70μmの範囲であり、それによって、本発明の組成物から得ることが可能な成形組成物中、およびそれから製造される製品中での微細な分散が保証される。
【0041】
本発明において好適に使用されるAl2[O SiO4]粒子またはカイアナイト粒子は、アスペクト比で表して、各種の形状をとることができる。アスペクト比が1~100の範囲、特には1~30の範囲、極めて特には1~10の範囲にあるAl2[O SiO4]粒子またはカイアナイト粒子を使用するのが好ましい。
【0042】
本発明において使用されるケイ酸アルミニウム粒子、好ましくはAl2[O SiO4]粒子またはカイアナイト粒子は、表面変性をしたものでも、あるいはしないものでも使用することができる。「表面変性」という表現は、その粒子の熱可塑性プラスチックのマトリックスに対する結合性を改良することを目的とした、有機カップリング剤を表している。好適に使用される表面変性には、アミノシランまたはエポキシシランが含まれる。一つの特に好ましい実施態様においては、本発明において使用されるケイ酸アルミニウム粒子が、好ましくはAl2[O SiO4]粒子、またはカイアナイト粒子が、表面変性なしで使用される。カイアナイトの供給業者の一例は、Quarzwerke GmbH(Frechen)であり、そこではカイアナイトのAl2[O SiO4]をSilatherm(登録商標)として販売している。
【0043】
酸化アルミニウム、窒化ホウ素、およびケイ酸アルミニウムのそれぞれは、個別に使用することも、あるいは混合物として使用することも可能である。本発明においては、窒化ホウ素とケイ酸アルミニウムとの混合物を使用するのが好ましい。特には、ケイ酸アルミニウムを単独で使用するも好ましい。
【0044】
成分c)
『http://de.wikipedia.org/wiki/Faser-Kunststoff-Verbund』によれば、0.1~1mmの範囲の長さを有するチョップト・ファイバー(短繊維とも呼ばれる)と、1~50mmの範囲の長さを有する長繊維および長さLが50mmよりも長い連続フィラメント繊維との間では、区別がつけられている。短繊維は、射出成形技術において使用され、エクストルーダーを用いて直接的に加工することも可能である。長繊維も同様に、エクストルーダーで使用することができる。それらは、スプレー・レイアップで広く使用されている。長繊維は、充填剤として、熱硬化性樹脂と混合されることも多い。連続フィラメント繊維は、繊維強化プラスチックにおいて、ロービングまたは織布の形態で使用される。連続フィラメント繊維を用いた製品は、剛性および強度の面では最大値を与える。さらに摩砕したガラス繊維も利用することが可能であるが、摩砕した後のそれらの長さは、典型的には、70~200μmの範囲である。
【0045】
本発明においては、「ガラス繊維」という表現には、先に述べた長さを有するガラス短繊維、ガラス長繊維、および連続フィラメントガラス繊維が含まれるが、そこで述べられている長さは、初期の長さ、すなわち一切の加工をする前の長さに基づいている。
【0046】
成形組成物を得るため、または製品を得るための加工をすると、成形組成物におけるかまたは製品における成分c)のガラス繊維のd97またはd50値が、元々使用されたガラス繊維の長さよりは短くなり、加工後のガラス繊維の長さの算術平均は、多くの場合、150μm~300μmの範囲となる。
【0047】
成分c)として使用する好ましいガラス繊維の繊維直径は、7~18μmの範囲、特に好ましくは9~15μmの範囲である。
【0048】
本発明においては、使用される成分c)が、1~50mmの範囲、特には1~10mmの範囲、極めて特には2~7mmの範囲の初期長さを有するチョップトガラス長繊維を含んでいるのが好ましい。
【0049】
一つの好ましい実施態様においては、成分c)のガラス繊維を、適切なサイジング系を用いるか、または単一のカップリング剤もしくはカップリング剤系を用いて変性する。シランベースのサイジング系、またはシランベースのカップリング剤を使用するのが好ましい。
【0050】
前処理のための、特に好ましいシランベースのカップリング剤は、一般式(I)のシラン化合物である。
(X-(CH
2)
q)
k-Si-(O-C
rH
2r+1)
4-k (I)
(式中、
Xは、NH
2-、カルボキシ、HO-、または
【化1】
であり
qは、2~10、好ましくは3~4の整数であり、
rは、1~5、好ましくは1~2の整数であり、そして
kは、1~3の整数、好ましくは1である。)
【0051】
好適なカップリング剤は、特には、以下の群からのシラン化合物である:アミノプロピルトリメトキシシシラン、アミノブチルトリメトキシシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノブチルトリエトキシシラン、ならびにそれらに対応するシランで、置換基Xとしてグリシジルまたはカルボキシ基、極めて特に好ましくは、カルボキシ基を含むもの(式(I)参照)。
【0052】
成分c)として使用されるガラス繊維を変性するために使用されるカップリング剤、好ましくは式(I)で表されるシラン化合物の量は、それぞれの場合において成分c)の100重量%を規準にして、好ましくは0.05~2重量%、特に好ましくは0.25~1.5重量%、極めて特に好ましくは0.5~1重量%である。
【0053】
『http://www.r-g.de/wiki/Glasfasern』によれば、ガラス繊維は溶融紡糸プロセス(ノズルからの延伸、ロッドからの延伸、およびノズル噴出後で空気ジェットなどを含むプロセス)によって製造される。ノズルからの延伸を含むプロセスにおいては、加熱されたガラス組成物が、重力下に、白金製の紡糸口金の中の数百のノズル開口部を通して流し出される。個々のフィラメントは、3~4km/分の速度で延伸することが可能で、その長さには制限はない。
【0054】
当業者は、ガラス繊維を各種のタイプに分類しているが、たとえばそのいくつかを以下に挙げる:
・ Eガラス:最適な価格-性能比を有し、最も広く使用されている材料(R&G)
・ Hガラス:重量を減らすための中空ガラス繊維(R&G:160g/m2および216g/m2、中空ガラス繊維織布)
・ R&Sガラス:比較的厳しい機械的性能が要求される用途(R&G製のS2ガラス)
・ Dガラス:比較的厳しい電気的性能が要求される用途のためのボロシリケートガラス
・ Cガラス:比較的高い化学的安定性を有している
・ 石英ガラス:温度変化に対する高い抵抗性を有している。
【0055】
『http://de.wikpedia.org/wiki/Glasfaser』からは、別の例も挙げることができる。Eガラス繊維は、プラスチックの強化には最大級の重要性を達成した。「E」は、「電気」を意味しているが、その理由は、このガラスは元々、主として電気産業で使用されていたからである。Eガラスは、純石英に石灰石、カオリンおよびホウ酸を加えたガラス溶融物を製造することにより製造されている。それらには、二酸化ケイ素に加えて、各種の金属酸化物が各種の量で含まれている。その製品の性質は、組成によって決まってくる。本発明においては、Eガラス、Hガラス、R&Sガラス、Dガラス、Cガラスおよび石英ガラスの群からのガラス繊維の少なくとも1種のタイプが好ましいが、特に好ましいのは、Eガラスから製造したガラス繊維である。
【0056】
Eガラスから製造したガラス繊維は、最も広範に使用されている補強材料である。強度の性質は、それらの金属(たとえば、アルミニウム合金)の性質に依存し、ここで積層物の比重量は、金属のそれよりも低い。Eガラス繊維は、不燃性で、約400℃までの耐熱性を有し、ほとんどの化学薬品に対する抵抗性があり、耐候性もある。
【0057】
成分d)
本発明においては、少なくとも1種のホスファイト安定剤が成分d)として使用される。以下の群からの少なくとも1種のホスファイト安定剤を使用するのが好ましい:トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト(Irgafos(登録商標)168、BASF SE、CAS:31570-04-4)、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(Ultranox(登録商標)626、Chemtura、CAS:26741-53-7)、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(ADK Stab PEP-36、Adeka、CAS:80693-00-1)、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(Doverphos(登録商標)S-9228、Dover Chemical Corporation、CAS:154862-43-8)、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト(Irgafos(登録商標)TNPP、BASF SE、CAS:26523-78-4)、(2,4,6-トリ-tert-ブチルフェノール)2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールホスファイト(Ultranox(登録商標)641、Chemtura、CAS:161717-32-4)、またはHostanox(登録商標)P-EPQ。
【0058】
ホスファイト安定剤としては、特には、少なくともHostanox(登録商標)P-EPQ[CAS No.:119345-01-6](Clariant International Ltd.(Muttenz,Switzerland)製)を使用するのが好ましい。これには、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)1,1-ビフェニル-4,4’-ジイルビスホスフォナイト[CAS No.:38613-77-3]が含まれており、このものは、本発明において成分d)として使用するのに特に好ましい。
【0059】
成分e)
使用する流動助剤としては、少なくとも1種のα-オレフィンと、少なくとも1種の脂肪族アルコールのメタクリレートまたはアクリレートとのコポリマーが好ましい。ここでは、α-オレフィンがエテンおよび/またはプロペンから構成され、メタクリレートまたはアクリレートが、アルコール成分として、6~20個のC原子を有する直鎖状または分岐状のアルキル基を含んでいるようなコポリマーが特に好ましい。極めて特に好ましいのは、アクリル酸2-エチルヘキシルである。本発明において流動助剤として好適なコポリマーは、それらの組成だけではなく、それらが低分子量であることも特徴としている。したがって、本発明におけるものであり、熱分解からも保護されている組成物に好適なコポリマーは特に、190℃で2.16kgの負荷で測定して、少なくとも100g/10分、好ましくは少なくとも150g/10分、特に好ましくは少なくとも300g/10分のMFI値を有するものである。MFIすなわちメルトフローインデックスは、熱可塑性プラスチックの溶融流動性を表すのに有用であり、標準規格のISO 1133およびASTM D 1238に準拠している。本発明の目的においては、MFIおよびMFIに関連するすべてのデータは、190℃、試験重量2.16kgでのISO 1133に基づくか、あるいはもっぱらそれに従って測定、定量されたものである。
【0060】
成分f)
本発明においては、タルク粉体[CAS No.:14807-96-6]、好ましくは微結晶性タルク粉体を、成分f)として使用する。タルク粉体は、タルクとも呼ばれ、Mg3[Si4O10(OH)2]の化学組成を有するフィロケイ酸塩であって、三斜晶系の結晶系ではタルク1Aとして、あるいは単斜晶系の結晶系ではタルク2Mとして結晶化したものである(http://de.wikipedia.org/wiki/Talkum)。本発明において使用されるタルク粉体[CAS No.:14807-96-6]は、たとえばMistron(登録商標)R10(Imerys Talc Group(Toulouse,France)(Rio Tinto Group)製)として購入することが可能である。
【0061】
成分g)
本発明においては、成分g)として少なくとも1種の離型剤を使用する。好適な離型剤は以下の群から選択される少なくとも1種の離型剤である:エステルワックス、ペンタエリスリトールテトラステアレート(PETS)、長鎖脂肪酸、長鎖脂肪酸の塩、長鎖脂肪酸のアミド誘導体、モンタンワックス、ならびに低分子量ポリエチレンワックスおよび低分子量ポリプロピレンワックス、およびエチレンホモポリマーワックス。
【0062】
好ましい長鎖脂肪酸は、ステアリン酸およびベヘン酸である。好ましい長鎖脂肪酸の塩は、ステアリン酸カルシウムおよびステアリン酸亜鉛である。好ましい長鎖脂肪酸のアミド誘導体は、エチレンビスステアリルアミドである。好ましいモンタンワックスは、28~32個のC原子の鎖長を有する、直鎖で飽和のカルボン酸の混合物である。
【0063】
特には、使用される離型剤には以下のものが含まれているのが好ましい:多価アルコールの少なくとも1種のモンタン酸エステル、特には少なくとも1種の、直鎖で非分岐状のC28~C32モノカルボン酸とエチレングリコールまたはグリセロールとのエステル(このものは、Licowax(登録商標)E[CAS No.:73138-45-1](Clariant(Muttenz,Switzerland)製)として購入することが可能である)。
【0064】
成分h)
本発明においては、使用される成分h)には、成分b)、c)、d)、e)、f)およびg)とは異なる少なくとも1種の添加剤が含まれていてもよい。
【0065】
成分h)の添加剤は、成分d)とは異なった安定剤であるのが好ましく、特には以下のものが挙げられる:UV安定剤、熱安定剤、ガンマ線安定剤、帯電防止剤、流動助剤、難燃剤、エラストマー変性剤、防火性添加剤、乳化剤、成核剤、可塑剤、潤滑剤、染料、または顔料。上述の添加剤およびその他適切な添加剤は、たとえば以下の文献に記載されている:Gaechter,Mueller;Kunststoff-Additive[Plastics Additives],3rd Edition,Hanser-Verlag,Munich,Vienna,1989、およびPlastics Additives Handbook,5th Edition,Hanser-Verlag,Munich,2001。それらの添加剤は、単独で使用しても、混合物で使用しても、あるいはマスターバッチの形態で使用してもよい。
【0066】
使用するのに好ましい安定剤は、立体障害フェノール、ヒドロキノン、芳香族二級アミンたとえばジフェニルアミン、置換レソルシノール、サリチレート、ベンゾトリアゾールおよびベンゾフェノン、ならびにこれらの群の各種置換されたもの、またはこれらの混合物である。
【0067】
使用される染料および顔料は、好ましくは、硫化亜鉛、二酸化チタン、ウルトラマリンブルー、酸化鉄、カーボンブラック、フタロシアニン、キナクリドン、ペリレン、ニグロシン、およびアントラキノンである。
【0068】
さらには、顔料として好適に使用される二酸化チタンの平均粒径は、90nm~2000nmの範囲であるのが好ましい。本発明において顔料として好適に使用される二酸化チタンは、硫酸プロセス(SP)または塩素プロセス(CP)によって製造された基本的構造を有する二酸化チタン顔料であってよく、ここで前記構造は、アナターゼおよび/またはルチル、好ましくはルチル構造である。その基本構造が安定化された構造であるということが必ずしも必要ではないが、特定の安定化をされているのが好ましく、CP法による基本構造の場合では、少なくとも2%の気相の中で四塩化チタンを酸化して二酸化チタンを得る際に、(Al2O3として計算して)0.3~3.0重量%のAlおよび過剰の酸素を用いてドーピングするし、SP法による基本構造の場合では、好ましくはAl、Sb、Nb、またはZnを用いてドーピングする。
【0069】
二酸化チタンをペイント、コーティング、プラスチックなどにおける白色顔料として使用する場合には、UV吸収が原因の望ましくない光触媒反応によって、その顔料処理した材料の分解が起きるということは公知である。この場合、二酸化チタン顔料がUV領域に近い光を吸収して、電子・正孔対が形成され、それによって二酸化チタンの表面の上に高反応性のフリーラジカルが発生する。有機媒体の中では、そのようにして生成したフリーラジカルがバインダーの分解の原因となる。本発明においては、二酸化チタンを無機的に、特に好ましくはSiおよび/またはAlおよび/またはZrの酸化物を用いるか、および/またはSn化合物を用いて後処理することによって、二酸化チタンの光活性を抑制するのが好ましい。
【0070】
二酸化チタン顔料の表面に、化合物SiO2および/またはAl2O3および/または酸化ジルコニウムの非晶質の沈降酸化物水和物のコーティングを有しているのが好ましい。Al2O3コーティングは、ポリマーマトリックスの中での顔料の分散を容易にするし、SiO2コーティングは、顔料表面での電荷交換を抑制して、ポリマーの分解を防止する。
【0071】
本発明においては、二酸化チタンに対して、特にはシロキサンまたはポリアルコールを使用して、親水性および/または疎水性の有機コーティングを与えておくのが好ましい。
【0072】
本発明においては、顔料として使用する二酸化チタンの平均粒径が、90nm~2000nmの範囲、好ましくは200nm~800nmの範囲にあるのが特に好ましい。市販されている製品の例としては、Kronos(登録商標)2230、Kronos(登録商標)2225、およびKronos(登録商標)vlp7000(Kronos(Dallas,USA)製)が挙げられる。
【0073】
使用される成核剤には、好ましくは、フェニルホスフィン酸ナトリウム、フェニルホスフィン酸カルシウム、酸化アルミニウム、または二酸化ケイ素が含まれる。
【0074】
使用される好適な可塑剤は、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジベンジル、フタル酸ブチルベンジル、炭化水素オイル、またはN-(n-ブチル)ベンゼンスルホンアミドである。
【0075】
エラストマー変性剤として使用される添加剤は、以下のものからの1種または複数のグラフトポリマーEであるのが好ましい:
E.1:5~95重量%、好ましくは30~90重量%の、少なくとも1種のビニルモノマー、
E.2:95~5重量%、好ましくは70~10重量%の、10℃未満、好ましくは0℃未満、特に好ましくは-20℃未満のガラス転移温度を有する、1種または複数のグラフトベース。
【0076】
そのグラフトベースE.2の中央粒径(d50値)は、一般的には0.05~10μm、好ましくは0.1~5μm、特に好ましくは0.2~1μmである。
【0077】
モノマーE.1は、好ましくは以下のものの混合物である:
E.1.1:50~99重量%の、ビニル芳香族化合物および/または環置換されたビニル芳香族化合物、特には、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-クロロスチレン、および/またはメタクリル酸(C1~C8)-アルキル、特にはメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、ならびに
E.1.2:1~50重量%の、ビニルシアニド、特にはアクリロニトリルおよびメタクリロニトリル、および/または(メタ)アクリル酸(C1~C8)-アルキル、特にはメタクリル酸メチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸tert-ブチル、および/または不飽和カルボン酸の誘導体、特には無水物およびイミド、特には無水マレイン酸およびN-フェニルマレイミド。
【0078】
好適なモノマーE.1.1は、スチレン、α-メチルスチレンおよびメタクリル酸メチルのモノマーの少なくとも1種から選択したものであり、好適なモノマーE.1.2は、アクリロニトリル、無水マレイン酸、およびメタクリル酸メチルのモノマーの少なくとも1種から選択したものである。
【0079】
特に好適なモノマーは、E.1.1ではスチレン、E.1.2ではアクリロニトリルである。
【0080】
エラストマー変性剤においてグラフトポリマーとして使用するのに適したグラフトベースE.2の例としては、特には、ジエンゴム、EP(D)Mゴム、すなわちエチレン/プロピレンおよび適切であるならばジエンをベースとするゴム、さらにはアクリレートゴム、ポリウレタンゴム、シリコーンゴム、クロロプレンゴム、およびエチレン/酢酸ビニルゴムが挙げられる。
【0081】
好適なグラフトベースE.2は、ジエンゴム(特に、ブタジエン、イソプレンなどをベースとするもの)であるか、またはジエンゴムの混合物であるか、またはジエンゴムまたはそれらの混合物と、その他の共重合性モノマー、特にE.1.1およびE.1.2に属するものとのコポリマーであるが、ただし、成分E.2のガラス転移温度は、10℃未満、好ましくは0℃未満、特に好ましくは-10℃未満である。
【0082】
グラフトベースE.2としては、純粋なポリブタジエンゴムが特に好ましい。
【0083】
ポリマーEとして特に好適なのは、ABSポリマー(乳化法ABS、バルク法ABS、および懸濁法ABS)であるが、その例は以下の文献に記載されている:独国特許出願公開第A2 035 390号明細書(=米国特許第A3 644 574号明細書)、独国特許出願公開第A2 248 242号明細書(=英国特許出願公開第A1 409 275号明細書、またはUllmann,Enzyklopaedie der Technischen Chemie[Encyclopedia of Industrial Chemistry],vol.19(1980),p.280~。グラフトベースE.2のゲル含量は、(トルエン中で測定して)少なくとも30重量%、好ましくは少なくとも40重量%である。「ABS」とは、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン・コポリマー(CAS番号:9003-56-9)を意味していて、次の3種の異なったモノマー、すなわちアクリロニトリル、1,3-ブタジエンおよびスチレンの合成ターポリマーである。それは、非晶質の熱可塑性プラスチックである。この場合の量比は、15~35%のアクリロニトリル、5~30%のブタジエン、および40~60%のスチレンの中で変化させることが可能である。
【0084】
エラストマー変性剤すなわちグラフトコポリマーEは、フリーラジカル重合、たとえば乳化重合、懸濁重合、溶液重合またはバルク重合、特には乳化重合またはバルク重合によって製造される。
【0085】
その他の特に好適なグラフトゴムとしては、米国特許第A4 937 285号明細書に記載の、有機ヒドロペルオキシドおよびアスコルビン酸からなる重合開始剤系を使用した、レドックス開始系によって製造されたABSポリマーが挙げられる。
【0086】
グラフト化反応の際に、グラフトベースの上にグラフトモノマーが完全にグラフト化されていることは必ずしも要しないということは公知であり、したがって、グラフトベースの存在下にグラフトモノマーを(共)重合させることによって得られ、その作業中に付随的に生成する反応生成物も、本発明におけるグラフトポリマーEである。
【0087】
好適なアクリレートゴムは、グラフトベースE.2をベースとするものであって、それは、適切であるならばE.2を規準にして40重量%までのアクリル酸アルキル、またはその他の重合可能なエチレン性不飽和モノマーからなるポリマーであるのが好ましい。好ましい重合可能なアクリル系エステルは、C1~C8-アルキルエステル、好ましくはメチル、エチル、ブチル、n-オクチルおよび2-エチルヘキシルエステル;ハロアルキルエステル、好ましくはハロ-C1~C8-アルキルエステル、特に好ましくはクロロエチルアクリレート、ならびに前記モノマーの混合物である。
【0088】
架橋させる目的で、二つ以上の重合可能な二重結合を有するモノマーを共重合させることも可能である。架橋性モノマーの好ましい例としては、以下のものが挙げられる:3~8個の炭素原子を有する不飽和モノカルボン酸と、3~12個の炭素原子を有する不飽和1価アルコールまたは2~4個のOH基および2~20個の炭素原子を有する飽和ポリオールとのエステル、たとえば、エチレングリコールジメタクリレート、メタクリル酸アリル;ポリ不飽和ヘテロサイクリック化合物、好ましくはトリビニルシアヌレートおよびトリアリルシアヌレート;多官能ビニル化合物、好ましくはジビニルベンゼンおよびトリビニルベンゼン;さらにはリン酸トリアリルおよびフタル酸ジアリル。
【0089】
好適な架橋性モノマーは、メタクリル酸アリル、エチレングリコールジメタクリレート、フタル酸ジアリル、および少なくとも3個のエチレン性不飽和基を有するヘテロサイクリック化合物である。
【0090】
特に好適な架橋性モノマーは、環状モノマーのトリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアクリロイルヘキサヒドロ-s-トリアジン、トリアリルベンゼンである。架橋されるモノマーの量は、グラフトベースE.2を規準にして、好ましくは0.02~5重量%、特には0.05~2重量%である。
【0091】
少なくとも3個のエチレン性不飽和基を有する環状の架橋性モノマーの場合には、グラフトベースE.2の1重量%未満の量に制限するのが有利である。
【0092】
適切ならば、グラフトベースE.2を製造するための、アクリル系エステルと共に使用することが可能な、好適な「その他の」重合可能なエチレン性不飽和モノマーの例は、特には、アクリロニトリル、スチレン、α-メチルスチレン、アクリルアミド、ビニルC1~C6-アルキルエーテル、メタクリル酸メチル、ブタジエンである。グラフトベースE.2として好適なアクリレートゴムは、そのゲル含量が少なくとも60重量%である乳化重合ポリマーである。
【0093】
E.2に属するその他の好適なグラフトベースは、グラフト化の目的に活性なサイトを有するシリコーンゴムであり、たとえば以下の特許に記載されている:独国特許出願公開第A3 704 657号明細書(=米国特許第4 859 740号明細書)、独国特許出願公開第A3 704 655号明細書(=米国特許第4 861 831号明細書)、独国特許出願公開第A3 631 540号明細書(=米国特許第4 806 593号明細書)、および独国特許出願公開第A3 631 539号明細書(=米国特許第4 812 515号明細書)。
【0094】
難燃剤として使用される添加剤としては、相乗剤を含むかまたは含んでいない市販の有機ハロゲン化合物、または成分d)とは異なる、有機もしくは無機リン化合物をベースとする市販のハロゲンを含まない難燃剤、または有機窒素化合物が、単独または混合物の形で挙げられる。
【0095】
好適なハロゲン含有、特に臭素化および塩素化化合物としては、以下のもの挙げることが可能である:エチレン-1,2-ビステトラブロモフタルイミド、デカブロモジフェニルエタン、テトラブロモビスフェノールAエポキシオリゴマー、テトラブロモビスフェノールAオリゴカーボネート、テトラクロロビスフェノールAオリゴカーボネート、ポリペンタブロモベンジルアクリレート、臭素化ポリスチレン、および臭素化ポリフェニレンエーテル。好適なリン化合物は、国際公開第A98/17720号パンフレット(=米国特許第A6 538 024号明細書)に記載されているリン化合物であり、好ましくはホスフィン酸金属塩、特にはホスフィン酸アルミニウムおよびホスフィン酸亜鉛、ホスホン酸金属塩、特にはホスホン酸アルミニウム、ホスホン酸カルシウム、およびホスホン酸亜鉛、さらにはそれらに相当するホスホン酸金属塩の水和物、ならびに、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン10-オキシド(DOPO)の誘導体、リン酸トリフェニル(TPP)、レソルシノールビス(ジフェニルホスフェート)(RDP)(オリゴマーを含む)、さらにはビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)(BDP)(オリゴマーを含む)、ポリホスホン酸塩(たとえば、Nofia(商標)HM1100(FRX Polymers(Chelmsford,USA)製)、さらには亜鉛ビス(ジエチルホスフィネート)、アルミニウムトリス(ジエチルホスフィネート)、メラミンホスフェート、メラミンピロホスフェート、メラミンポリホスフェート、メラミンポリ(リン酸アルミニウム)、メラミンポリ(リン酸亜鉛)、およびフェノキシホスファゼンオリゴマー、ならびにそれらの混合物。使用することが可能な好適な窒素化合物は、メラミンおよびメラミンシアヌレート、ならびにCAS No.:1078142-02-5に従うトリクロロトリアジン、ピペラジンおよびモルホリンの反応生成物(たとえば、MCA PPM Triazine HF(MCA Technologies GmbH(Biel-Benken,Switzerland)製)である。特に好ましい相乗剤は、アンチモン化合物、特に三酸化アンチモンおよび五酸化アンチモン、亜鉛化合物、スズ化合物、特にはスズ酸亜鉛、およびホウ酸塩、特にはホウ酸亜鉛である。
【0096】
難燃剤に対して、炭化剤として知られている物質、特にはポリフェニレンエーテルや、たれ防止剤たとえばテトラフルオロエチレンポリマーを添加することも可能である。
【0097】
ハロゲン含有難燃剤の中でも、特に好適に使用できるのは、エチレン-1,2-ビステトラブロモフタルイミド、テトラブロモビスフェノールAオリゴカーボネート、ポリペンタブロモベンジルアクリレート、または臭素化ポリスチレン、特にFiremaster(登録商標)PBS64(Great Lakes(West Lafayette,USA)製)であるが、いずれの場合においても、三酸化アンチモンおよび/またはアルミニウムトリス(ジエチルホスフィネート)と組み合わせて使用する。
【0098】
ハロゲンを含まない難燃剤の中で、特に好適に使用できるのは、メラミンポリホスフェートおよび/またはメラミンシアヌレートと組み合わせたアルミニウムトリス(ジエチルホスフィネート)および/または、フェノキシホスファゼンオリゴマーである。
【0099】
単独の難燃剤としては、特にアルミニウムトリス(ジエチルホスフィネート)(CAS No.:225789-38-8)を使用するのも極めて特に好ましい。
【0100】
成分c)とは別に、本発明の組成物の中には、添加剤として、さらなる充填剤および/または補強材料を存在させることも可能である。
【0101】
しかし、2種以上の異なった充填剤および/または補強材料、特にタルク、マイカ、シリケート、石英、二酸化チタン、ウォラストナイト、カオリンをベースとする混合物を使用したり、非晶質シリカ、炭酸マグネシウム、チョーク、長石、硫酸バリウム、ガラスビーズおよび/または炭素繊維をベースとする繊維質の充填剤および/または補強材料を使用したりするのも好ましい。マイカ、シリケート、石英、ウォラストナイト、カオリンをベースとする鉱物質の粒子状充填剤を使用したり、非晶質シリカ、炭酸マグネシウム、チョーク、長石または硫酸バリウムを使用したりするのも好ましい。本発明においては、ウォラストナイトまたはカオリンをベースとする鉱物質の粒子状充填剤を使用するのが特に好ましい。
【0102】
さらに、針状の鉱物質の充填剤を添加剤として使用することが特に好ましい。本発明においては、「針状の鉱物質の充填剤」という用語は、明白に針状の特性を有する鉱物質の充填剤を意味している。特には、針状のウォラストナイトを挙げることができる。その鉱物質の長さ:直径の比率は、好ましくは(2:1)から(35:1)まで、特に好ましくは(3:1)から(19:1)まで、最も好ましくは(4:1)から(12:1)までである。本発明において使用される針状の鉱物質の平均粒径は、CILAS GRANULOMETERで測定して、好ましくは20μm未満、特に好ましくは15μm未満、極めて特に好ましくは10μm未満である。
【0103】
先に成分c)に関連して述べたように、一つの好ましい実施態様においては、添加剤として使用される充填剤および/または補強材料を、特に好ましくはカップリング剤またはカップリング剤系、極めて特に好ましくはシランをベースとするものを用いて表面変性しておくことも可能である。しかしながら、そのような前処理が必須という訳ではない。
【0104】
添加剤として使用される充填剤の表面変性をするためのシラン化合物の使用量は、鉱物質の充填剤を規準にして、一般的には0.05~2重量%の範囲、好ましくは0.25~1.5重量%の範囲、特には0.5~1重量%の範囲である。
【0105】
成形組成物または成形物を得るための加工によって、成形組成物または成形物における粒子状充填剤のd97値またはd50値が、元々使用された充填剤のそれよりも小さな値になる可能性がある。
【0106】
一つの好ましい実施態様においては、本発明は、以下のものを含む組成物を提供する:PBT、PET、三斜晶系-単面体晶系ケイ酸アルミニウム、ガラス繊維、および少なくとも1種のホスファイト安定剤、好ましくはHostanox(登録商標)P-EPQ、特にはテトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)1,1-ビフェニル-4,4’-ジイルビスホスフォナイト(このものは、Hostanox(登録商標)P-EPQの中に存在している)。
【0107】
一つの特に好ましい実施態様においては、本発明は、以下のものを含む組成物を提供する:PBT、PET、三斜晶系-単面体晶系ケイ酸アルミニウム、ガラス繊維、および少なくとも1種のホスファイト安定剤、好ましくはHostanox(登録商標)P-EPQ、特にはテトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)1,1-ビフェニル-4,4’-ジイルビスホスフォナイト(このものは、Hostanox(登録商標)P-EPQの中に存在している)、および少なくとも1種の離型剤、好ましくは少なくとも1種の多価アルコールのモンタン酸エステル、特に好ましくは少なくとも1種の、直鎖、非分岐状のC28~C32モノカルボン酸と、エチレングリコールまたはグリセロールとのエステル。
【0108】
また別な特に好ましい実施態様においては、本発明は、以下のものを含む組成物を提供する:PBTまたはPET、特にはPBTとPETとのブレンドで、その中でPET含量が、存在しているポリエステルの全量を基準にして、50~99.9重量%の範囲内であるもの、ガラス繊維、窒化ホウ素、および二酸化チタン。
【0109】
本発明はさらに、一つの好ましい実施態様において、以下のものを含む組成物を提供する:PBTまたはPET、特にはPBTとPETとのブレンドで、その中でPET含量が、存在しているポリエステルの全量を基準にして、50~99.9重量%の範囲内であるもの、ガラス繊維、窒化ホウ素、二酸化チタン、および少なくとも1種のホスファイト安定剤、好ましくはHostanox(登録商標)P-EPQ、特にはテトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)1,1-ビフェニル-4,4’-ジイルビスホスフォナイト(このものは、Hostanox(登録商標)P-EPQの中に存在している)。
【0110】
本発明は、特に好ましくは、以下のものを含む組成物を提供する:
a)24.9~54重量%の、ポリブチレンテレフタレートまたはポリエチレンテレフタレートまたはPBTとPETとのブレンド、特に好ましくはPBTとPETとのブレンド、特にはPBTとPETとのブレンドで、その中でPET含量が、存在しているポリエステルの全量を基準にして、50~99.9重量%の範囲内であるもの、
b)21~75重量%の酸化アルミニウム、ならびに
c)0.1~50重量%のガラス繊維、
ただし、成分の重量パーセントをすべて合計したものは必ず100である。
【0111】
本発明はさらに、特に好ましくは、以下のものを含む組成物を提供する:
a)24.9~54重量%の、ポリブチレンテレフタレートまたはポリエチレンテレフタレートまたはPBTとPETとのブレンド、特に好ましくはPBTとPETとのブレンド、特にはPBTとPETとのブレンドで、その中でPET含量が、存在しているポリエステルの全量を基準にして、50~99.9重量%の範囲内であるもの、
b)21~75重量%の窒化ホウ素、
c)0.1~50重量%のガラス繊維、ならびに
h)24.9~45重量%の二酸化チタン、
ただし、成分の重量パーセントをすべて合計したものは必ず100である。
【0112】
使用
しかしながら、本発明はさらに、高いグローワイヤ抵抗性を有する製品、好ましくは電気および電子用モジュールおよび構成要素、極めて特に好ましくは家電用機器を製造するための、成形組成物の形態にある本発明の組成物も提供する。
【0113】
射出成形のためまたは押出成形のための、本発明において使用される成形組成物は、本発明の組成物の個々の成分をミキサー中で混合し、その混合物を少なくとも一つのミキサー出口から排出してストランドとし、その混合物をペレット化が可能になるまで冷却し、そしてその混合物をペレット化することによって得られる。
【0114】
ミキサー中での混合は、285~310℃の範囲の温度にした溶融物の中で実施することが好ましい。ミキサーとしては、エクストルーダー、特に2軸スクリューエクストルーダーを使用するのが好ましい。
【0115】
一つの実施態様においては、本発明の組成物を含むペレットを、真空乾燥オーブン中120℃で約2時間かけて乾燥させた後で、射出成形または押出成形のプロセスにかけて、製品を製造する。
【0116】
プロセス
しかしながら、本発明はさらに、製品、好ましくは電気または電子産業のための改良されたグローワイヤ抵抗性を有する製品、特に好ましくは電子または電気用モジュールおよび構成要素、極めて特に好ましくは家電用機器を製造するためのプロセスも提供するが、そこでは、記載された量の個々の成分をミキサー中で混合し、少なくとも一つのミキサー出口から排出してストランドとし、ペレット化が可能になるまで冷却し、ペレット化し、そしてそのペレットを、射出成形または押出成形プロセスにかける。
【0117】
しかしながら、本発明はさらに、ポリエステルベースの製品のグローワイヤ抵抗性を改良するためのプロセスも提供するが、その特徴とするところは、成形組成物の形態にある本発明の組成物を、射出成形または押出成形によって加工する点にある。
【0118】
熱可塑性プラスチック成形組成物の射出成形および押出成形のプロセスは、当業者には公知である。押出成形または射出成形により製品を製造するための本発明のプロセスは、230~330℃の範囲、好ましくは250~300℃の範囲の溶融温度と、場合によってはさらに、高くとも2500barの圧力、好ましくは高くとも2000barの圧力、特に好ましくは高くとも1500barの圧力、極めて特に好ましくは高くとも750barの圧力で実施する。
【0119】
押出成形の一つのタイプである、シーケンシャル共押出成形の場合においては、2種の異なった原料を、連続して交互に排出させる。このことによって、押出加工の方向に、異なった原料組成のセクションを有する予備成形物が得られる。原料を適切に選択することによって、成形品の特定のセクションに特別に必要とされる性能を備えさせることが可能となり、たとえば、低硬度の末端および高硬度の中央セクション、あるいは一体型の低硬度折りたたみベロー領域を有する成形品を得ることが可能となる(Thielen,Hartwig,Gust,『Blasformen von Kunststoffhohlkoerpern(Blow Moulding of Hollow Plastics Products)』,Carl Hanser Verlag,Munich,2006,p.127~129)。
【0120】
射出成形プロセスの特徴は、好ましくはペレットの形状の、粗原料を、加熱した円筒状のキャビティの中で溶融(可塑化)させ、射出溶融物の形態で加圧下に、温度調節したキャビティの中に射出することである。その溶融物が冷却(固化)してから、射出成形物を脱型する。
【0121】
各種の工程は以下のとおりである:
1.可塑化/溶融
2.射出フェーズ(注入手順)
3.圧力保持フェーズ(結晶化の際の熱収縮を配慮)、および
4.脱型。
【0122】
射出成形機は、クランプユニット、射出ユニット、駆動系、および制御系で構成されている。クランプユニットには、型のための固定および可動熱盤、端盤、さらにはタイバーおよび可動型熱盤のための駆動系(トグルアセンブリーまたは油圧クランプユニット)が備わっている。
【0123】
射出ユニットには、電気加熱可能なシリンダー、スクリュー駆動系(モーター、ギアボックス)、およびスクリューおよび射出ユニットを移動させるための油圧系が含まれる。射出ユニットの機能は、本発明による組成物を含む粉体またはペレットを溶融、計量、そして射出すること、ならびに、それに(収縮に対処する目的で)保持圧をかけることからなっている。スクリューの中で溶融物が逆流する問題(漏洩流)は、逆流防止弁により解決される。
【0124】
射出型の内部では、流入した溶融物が次いで分流されてから冷却されて、それにより所望の製品が製造される。このプロセスのためには、二つ割りの型が必要である。射出成形プロセスにおける各種の機能系は以下の通りである:
- ランナー系
- 成形インサート系
- ベント系
- 機器取り付けおよび圧力吸収系
- 脱型系および移動伝達系
- 温度制御系。
【0125】
射出成形プロセスとは対照的に、押出成形プロセスでは、エクストルーダーの中で連続的に成形された、本発明による組成物を含むストランドを使用するが、ここでエクストルーダーとは、熱可塑性プラスチックの成形物を製造するための機械である。各種のタイプの装置としては、以下のものが挙げられる:
- 単軸スクリューエクストルーダーおよび2軸スクリューエクストルーダー、およびそれぞれのサブグループ
- 慣用される単軸スクリューエクストルーダー、搬送型単軸スクリューエクストルーダー
- 逆回転2軸スクリューエクストルーダー、および共回転2軸スクリューエクストルーダー。
【0126】
押出成形設備は、エクストルーダー、ダイ、下流側の装置、および押出吹込成形型からなっている。異形品を製造するための押出成形設備は以下のものからなっている:エクストルーダー、異形押出ダイ、キャリブレーター、冷却セクション、キャタピラーおよびロール引取り装置、分離装置、および傾斜シュート。
【0127】
最後に、本発明は、本発明の組成物を押出成形または射出成形することによって得ることができる製品、特にはグローワイヤ抵抗性の製品も提供する。
【実施例】
【0128】
実施例:
出発物質:
PBT:Pocan(登録商標)B1100ポリブチレンテレフタレート(Lanxess Deutschland GmbH(Cologne,Germany)製)
PET:PET V004ポリエステルチップ(Invista(Wichita,USA)製)
ホスファイト安定剤:Hostanox(登録商標)P-EPQ(Clariant International Ltd.(Muttenz,Switzerland)製)
タルク粉体:Mistron(登録商標)R10(Imerys Talc Group(Toulouse,France)(Rio Tinto Group)製)
離型剤:Licowax(登録商標)E(Clariant International Ltd.(Muttenz,Switzerland)製)
ガラス繊維:CS7967(26/1493)D(Lanxess Deutschland GmbH(Cologne,Germany)製)
カイアナイト:三斜晶系-単面体晶系の結晶形のケイ酸アルミニウム粒子(Silatherm(登録商標)T1360-EST(Quarzwerke GmbH(Frechen,Germany)製)
【0129】
難燃剤(FR)
FR1:Melapur(登録商標)MC25、メラミンシアヌレート(BASF(Ludwigshafen,Germany)製)
FR2:ビスフェノールAジホスフェート(CAS No.:61261-37-8)
FR3:ビスフェノールAエポキシオリゴマー(CAS No.:728911-06-6)
FR4:PBT中80%三酸化アンチモン
【0130】
実験方法:
本発明において記載された組成物は、溶融状態にある個々の成分を、2軸スクリューエクストルーダー(ZSK26 Mega Compounder(Coperion Werner & Pfleiderer(Stuttgart,Germany)製、3孔ダイプレート付き、ダイホール直径3mm)内で、260~280℃の範囲の温度で混合し、それらをストランドの形態で排出し、ペレット化が可能になるまで冷却し、ペレット化させることにより製造した。さらなる工程に入る前に、それらのペレットを、真空乾燥オーブン中120℃で約2時間かけて乾燥させた。
【0131】
表1に記載の試験のためのシートおよび試験サンプルは、市販の射出成形機で、溶融温度260℃、型温度80℃で射出成形した。
【0132】
GWFIの測定
グローワイヤ燃焼性指数(GWFI)は、IEC/EN 60695-2-12標準規格に従って求めた。
【0133】
GWITの測定
グローワイヤ着火温度(GWIT)は、IEC/EN 60695-2-13標準規格に従って求めた。
【0134】
熱重量分析(TGA)
熱安定性は、加工の許容性を求めるための決定的に重要な因子であり、熱重量分析(TGA)により評価した。この目的のためには、密封式の熱天秤(Netzsch TG209 F1(Iris製))の中、20.0K/分の速度でサンプルを加熱し、質量の変化を温度の関数として記録した。質量の累積損失が2%となった温度を、熱安定性が不充分になった、温度T(D)(=分解温度)と定義した。
【0135】
【0136】
表1からわかるように、本発明の組成物は、GWITのみならず、IEC 60335-1に従って、管理されていない家電用機器で必要とされるGWFIも達成していた。さらに、温度が350℃を越えるまで、質量損失2%には達しなかった。これとは対照的に、他の鉱物質(比較例1および2)では、IEC 60335-1に従うグローワイヤ要求性能に適合していなかった。ハロゲン含有難燃剤(比較例3)およびハロゲンを含まない難燃剤(比較例4)を用いれば、要求されるGFWIおよびそれぞれGWIT値を達成することは可能であった。しかしながら、これらの材料は顕著に低いT(D)を有していて、難燃剤が早めに分解するために、加工の許容性が低かった。