(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-21
(45)【発行日】2022-01-31
(54)【発明の名称】樹脂組成物、樹脂付銅箔、誘電体層、銅張積層板、キャパシタ素子及びキャパシタ内蔵プリント配線板
(51)【国際特許分類】
C08L 63/00 20060101AFI20220124BHJP
C08K 3/24 20060101ALI20220124BHJP
C08L 77/06 20060101ALI20220124BHJP
C08G 59/40 20060101ALI20220124BHJP
B32B 15/088 20060101ALI20220124BHJP
B32B 15/09 20060101ALI20220124BHJP
B32B 15/092 20060101ALI20220124BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20220124BHJP
H05K 1/16 20060101ALI20220124BHJP
H01G 4/30 20060101ALI20220124BHJP
H01G 4/18 20060101ALI20220124BHJP
H01G 4/20 20060101ALI20220124BHJP
【FI】
C08L63/00 C
C08K3/24
C08L77/06
C08G59/40
B32B15/088
B32B15/09
B32B15/092
H05K1/03 610R
H05K1/03 630H
H05K1/16 D
H01G4/30 544
H01G4/18
H01G4/20 600
(21)【出願番号】P 2019505985
(86)(22)【出願日】2018-03-09
(86)【国際出願番号】 JP2018009327
(87)【国際公開番号】W WO2018168718
(87)【国際公開日】2018-09-20
【審査請求日】2020-12-08
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2017/010221
(32)【優先日】2017-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006183
【氏名又は名称】三井金属鉱業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113365
【氏名又は名称】高村 雅晴
(74)【代理人】
【識別番号】100131842
【氏名又は名称】加島 広基
(74)【代理人】
【識別番号】100209336
【氏名又は名称】長谷川 悠
(72)【発明者】
【氏名】米田 祥浩
(72)【発明者】
【氏名】松島 敏文
(72)【発明者】
【氏名】細井 俊宏
(72)【発明者】
【氏名】福田 堅志郎
【審査官】堀 洋樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-034580(JP,A)
【文献】国際公開第2016/114030(WO,A1)
【文献】特開2003-292733(JP,A)
【文献】国際公開第2005/087489(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/008471(WO,A1)
【文献】特開2010-285594(JP,A)
【文献】国際公開第2010/087526(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
B32B 1/00-43/00
H05K 1/03
H05K 1/16
H01G 4/00-4/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂成分と、誘電体フィラーとを含む樹脂組成物であって、
前記樹脂成分が、エポキシ樹脂と、活性エステル樹脂と、芳香族ポリアミド樹脂とを含
み、
前記樹脂成分100重量部に対して、前記芳香族ポリアミド樹脂25~85重量部及び前記活性エステル樹脂15~35重量部を含み、
前記樹脂組成物の固形分100重量部に対して、前記誘電体フィラー60~95重量部を含む、樹脂組成物。
【請求項2】
前記誘電体フィラーが、BaTiO
3、SrTiO
3、Pb(Zr,Ti)O
3、PbLaTiO
3、PbLaZrO及びSrBi
2Ta
2O
9からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項
1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記誘電体フィラーが、BaTiO
3である、請求項1
又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
銅箔と、前記銅箔の少なくとも一方の面に設けられた請求項1~
3のいずれか一項に記載の樹脂組成物とを含む、樹脂付銅箔。
【請求項5】
請求項1~
3のいずれか一項に記載の樹脂組成物が硬化された層である、誘電体層。
【請求項6】
前記誘電体層の厚さが、0.2~30μmである、請求項
5に記載の誘電体層。
【請求項7】
第一銅箔と、請求項
5又は6に記載の誘電体層と、第二銅箔とを順に備えた、銅張積層板。
【請求項8】
請求項
5又は6に記載の誘電体層を有する、キャパシタ素子。
【請求項9】
請求項
5又は6に記載の誘電体層を有する、キャパシタ内蔵プリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、樹脂付銅箔、誘電体層、銅張積層板、キャパシタ素子及びキャパシタ内蔵プリント配線板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
銅張積層板やプリント配線板の製造に用いられる樹脂組成物として、キャパシタ内蔵プリント配線板用樹脂組成物が知られている。かかる樹脂組成物は硬化されることでキャパシタにおける誘電体層として機能するものである。例えば、特許文献1(特許第4148501号公報)には、(樹脂成分100重量部として)エポキシ樹脂を20~80重量部及び芳香族ポリアミド樹脂を20~80重量部を含み、(樹脂組成物100wt%として)誘電体フィラー75~85wt%を含む、キャパシタ内蔵プリント配線板用樹脂組成物が記載されている。また、特許文献2(国際公開第2009/008471号)には、(樹脂成分100重量部として)エポキシ樹脂を25~60重量部、活性エステル樹脂を28~60重量部、ポリビニルアセタール樹脂を1~20重量部を含み、(樹脂組成物100wt%として)誘電体フィラーを65~85wt%含む、キャパシタ内蔵プリント配線板製造用樹脂組成物が記載されている。
【0003】
一方、樹脂組成物の硬化物の低誘電正接化を達成でき、かつ、硬化物を穴あけ加工して粗化処理した後のビアホール内のスミアを抑制することができる樹脂組成物が知られている。例えば、特許文献3(特開2016-156019号公報)には、(A)エポキシ樹脂、(B)活性エステル化合物、(C)スミア抑制成分及び(D)無機充填材を含有する樹脂組成物であり、該樹脂組成物の不揮発成分を100質量%とした場合に、(B)活性エステル化合物の含有量が5質量%以上であり、該樹脂組成物の不揮発成分を100質量%とした場合に、(C)スミア抑制成分が0.001~10質量%であり、該樹脂組成物の不揮発成分を100質量%とした場合に、(D)無機充填材が70質量%以上であり、(C)スミア抑制成分がゴム粒子である樹脂組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4148501号公報
【文献】国際公開第2009/008471号
【文献】特開2016-156019号公報
【文献】特開2004-277460号公報
【発明の概要】
【0005】
ところで、プリント配線板は携帯用電子機器等の電子通信機器に広く用いられている。特に、近年の携帯用電子通信機器等の軽薄短小化及び高機能化に伴い、プリント配線板におけるノイズの低減等が課題となっている。ノイズ低減を可能にするにはキャパシタが重要となるが、高性能化を実現するために、このようなキャパシタにはプリント配線板の内層に組み込まれる程の小型化及び薄型化が望まれる。それに伴い、より過酷な環境である高温高湿下でも所望のキャパシタンスを保持できる容量安定性が望まれる。
【0006】
したがって、携帯用電子機器等の電子通信機器の高性能化にあたり、プリント配線板内蔵キャパシタの高温高湿下におけるキャパシタンス低下ないし誘電率低下を抑制することが望まれる。そのためには、キャパシタの誘電体層を構成する樹脂層の更なる改善が求められる。一方で、樹脂層と回路の高い密着性(すなわち回路密着性)も望まれる。
【0007】
本発明者らは、今般、エポキシ樹脂、活性エステル樹脂及び芳香族ポリアミド樹脂を誘電体フィラーと共に含む樹脂組成物を、キャパシタの誘電体層として用いることで、優れた回路密着性を確保しながら、高温高湿下におけるキャパシタンス低下ないし誘電率低下を抑制できるとの知見を得た。
【0008】
したがって、本発明の目的は、キャパシタの誘電体層として用いられた場合に、優れた回路密着性を確保しながら、高温高湿下におけるキャパシタンス低下ないし誘電率低下を抑制することが可能な樹脂組成物を提供することにある。
【0009】
本発明の一態様によれば、樹脂成分と、誘電体フィラーとを含む樹脂組成物であって、
前記樹脂成分が、エポキシ樹脂と、活性エステル樹脂と、芳香族ポリアミド樹脂とを含む、樹脂組成物が提供される。
【0010】
本発明の他の一態様によれば、銅箔と、前記銅箔の少なくとも一方の面に設けられた請求項1~5のいずれか一項に記載の樹脂組成物とを含む、樹脂付銅箔が提供される。
【0011】
本発明の他の一態様によれば、前記樹脂組成物が硬化された層である、誘電体層が提供される。
【0012】
本発明の他の一態様によれば、第一銅箔と、前記誘電体層と、第二銅箔とを順に備えた、銅張積層板が提供される。
【0013】
本発明の他の一態様によれば、前記誘電体層を有する、キャパシタ素子が提供される。
【0014】
本発明の他の一態様によれば、前記誘電体層を有する、キャパシタ内蔵プリント配線板が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】例1~8における、樹脂付銅箔、銅張積層板及び評価用回路の作製工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態を以下に説明する。なお、本明細書において「X~Y」なる形式で表される数値範囲は「X以上Y以下」を意味するものとする。
【0017】
樹脂組成物
本発明の樹脂組成物は、樹脂成分と、誘電体フィラーとを含む。そして、この樹脂成分は、エポキシ樹脂と、活性エステル樹脂と、芳香族ポリアミド樹脂とを含む。このように、エポキシ樹脂、活性エステル樹脂及び芳香族ポリアミド樹脂を誘電体フィラーと共に含む樹脂組成物を、キャパシタの誘電体層として用いることで、優れた回路密着性を確保しながら、高温高湿下におけるキャパシタンス低下ないし誘電率低下を抑制することができる。すなわち、本発明の樹脂組成物を含む誘電体層は本来的に静電容量が高く、高温高湿下においてもその高い静電容量が低下しにくい。また、本発明の樹脂組成物を含む誘電体層は、高温高湿下においても回路構成成分(典型的にはCu等の金属)のマイグレーションが起こりにくく、それ故、層間絶縁性を長期にわたって保持することができる。したがって、誘電体層は、高温高湿下で誘電率が低下しにくく、それ故、高温高湿下におけるキャパシタンスが低下しにくくなる。そうでありながら、本発明の樹脂組成物を含む誘電体層は回路密着性にも優れており、キャパシタにおける回路剥がれが起こりにくい。
【0018】
本発明の樹脂組成物は、樹脂成分100重量部に対して、芳香族ポリアミド樹脂9~85重量部及び活性エステル樹脂5~50重量部を含むのが好ましく、芳香族ポリアミド樹脂10~80重量部及び活性エステル樹脂10~40重量部を含むのが好ましく、より好ましくは芳香族ポリアミド樹脂15~70重量部及び活性エステル樹脂12~38重量部、さらに好ましくは芳香族ポリアミド樹脂25~60重量部及び活性エステル樹脂15~35重量部、特に好ましくは芳香族ポリアミド樹脂30~50重量部及び活性エステル樹脂20~30重量部である。このような含有量である上述した本発明の効果をより効果的に発揮させることができる。
【0019】
エポキシ樹脂は、分子内に2個以上のエポキシ基を有し、電気及び電子材料用途に使用可能なものであれば特に限定されない。エポキシ樹脂の例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、及びそれらの任意の組合せが挙げられる。硬化物の耐熱性を保持する点から芳香族エポキシ樹脂又は多官能エポキシ樹脂が好ましく、より好ましくはフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂又はビフェニルノボラック型エポキシ樹脂である。これらのエポキシ樹脂硬化物の耐熱性を保持するのに効果的である。
【0020】
活性エステル樹脂は、エポキシ樹脂と反応して硬化するエポキシ樹脂硬化剤として作用する。活性エステル樹脂は特に限定されず公知のものが使用可能である。例えば、特許文献4(特開2004-277460号公報)に開示されている活性エステル化合物を用いてもよい。また、市販の活性エステル化合物を用いることもできる。市販の活性エステル化合物の例としては、ジシクロペンタジエニル構造を含む活性エステル系硬化剤、ナフタレン構造を含む活性エステル系硬化剤、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル系硬化剤、及びフェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル系硬化剤が挙げられ、好ましくはナフタレン構造を含む活性エステル系硬化剤、及びジシクロペンタジエニルジフェノール構造を含む活性エステル系硬化剤が挙げられる。ジシクロペンタジエニルジフェノール構造を含む活性エステル系硬化剤の例としては、EXB9451、EXB9460、EXB9460S、HPC-8000-65T(DIC(株)製)が挙げられる。ナフタレン構造を含む活性エステル系硬化剤の例としては、EXB9416-70BK(DIC(株)製)が挙げられる。フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル系硬化剤の例としては、DC808(三菱化学(株)製)が挙げられる。フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル系硬化剤の例としては、YLH1026(三菱化学(株)製)が挙げられる。上記のような活性エステル樹脂を用いると、エポキシ樹脂硬化物の耐熱性を確保しつつ、吸水率を低くすることができる。
【0021】
樹脂組成物が樹脂成分100重量部に対して芳香族ポリアミド樹脂25~60重量部及び活性エステル樹脂15~35重量部を含む場合、活性エステル樹脂含有量は、エポキシ樹脂の1当量のエポキシ基に対して、ヒドロキシ基換算で0.75~1.25当量となる量であることが好ましい。エポキシ樹脂に対する活性エステル樹脂の含有量が0.75当量以上であると、エポキシ樹脂が自己重合しにくく、少ない分子のエポキシ樹脂で硬化反応が終結することを防止できるため、活性エステル樹脂のヒドロキシ基が残留せず誘電正接の大きな誘電層を得ることができる。また、エポキシ樹脂に対する活性エステル樹脂の配合量が1.25当量以下であると、硬化後の誘電層中に活性エステル樹脂が未反応で残留しにくくなり、誘電層の耐熱特性が劣化を防止することができる。
【0022】
芳香族ポリアミド樹脂は樹脂層の耐熱性の向上に寄与する。芳香族ポリアミド樹脂とは、芳香族ジアミンとジカルボン酸との縮重合により合成されるものである。上記縮重合に用いる芳香族ジアミンの例としては、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、m-キシレンジアミン、3,3’-オキシジアニリン等、及びそれらの任意の組合せが挙げられる。また、上記縮重合に用いるジカルボン酸の例としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、フマル酸、及びそれらの任意の組合せが挙げられる。芳香族ポリアミド樹脂に耐熱性を付与するためには、ジカルボン酸は芳香族ジカルボン酸であるのが好ましく、芳香族ジカルボン酸の例としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、フマル酸、及びそれらの任意の組合せが挙げられる。特に、分子内にフェノール性水酸基を含有する芳香族ポリアミド樹脂が好ましい。また、この芳香族ポリアミド樹脂は、耐熱性を損なわない範囲で、柔軟鎖として芳香族ポリアミド樹脂に可とう性を付与する化学結合を分子内に適宜有していてもよく、ポリアミド樹脂との架橋性ポリマーアロイとして一部が凝集状態で存在するものであってもよい。柔軟鎖として芳香族ポリアミド樹脂に可とう性を付与する化学結合をもたらす化合物の例としては、例えばブタジエン、エチレン-プロピレン共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、カルボン酸ブタジエン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、ポリウレタン、ポリクロロプレン、シロキサン等が挙げられる。上述したような芳香族ポリアミドを用いることで、エポキシ樹脂硬化物の柔軟性を確保して剥離強度信頼性を高めることができるとともに、耐熱性をも向上することができる。
【0023】
樹脂の反応を促進させるため、樹脂成分に硬化促進剤を添加することが好ましい。硬化促進剤の好ましい例として、イミダゾール系及びアミン系硬化促進剤が挙げられる。硬化促進剤の含有量は、樹脂組成物の保存安定性や硬化の効率化の観点から、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対し、0.01~3質量%が好ましく、より好ましくは0.1~2質量%である。
【0024】
イミダゾール系硬化促進剤は、エポキシ樹脂との硬化反応後にイオンとして遊離することなくエポキシ樹脂の一部として分子構造に取り込まれるため、樹脂層の誘電特性や絶縁信頼性を優れたものとすることができる。イミダゾール系硬化促進剤の含有量は、樹脂層の組成等の諸条件を勘案しながら望ましい硬化をもたらす量を適宜決定すればよく、特に限定されない。イミダゾール硬化促進剤の例としては、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン、及びそれらの任意の組合せが挙げられる。イミダゾール系硬化促進剤の好ましい例としては、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾールが挙げられ、この中でも、樹脂層の半硬化(Bステージ)状態での化学的安定性の点からフェニル基を有するイミダゾール系硬化促進剤である2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾールがより好ましい例として挙げられる。この中で特に好ましくは2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾールが挙げられる。
【0025】
アミン系硬化促進剤の例としては、トリエチルアミン、トリブチルアミンなどのトリアルキルアミン、4-ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン、及びそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0026】
誘電体フィラーは、誘電体層としての樹脂組成物に所望の高い静電容量をもたらす成分であり、公知のものが使用可能である。好ましい誘電体フィラーは、BaTiO3、SrTiO3、Pb(Zr,Ti)O3、PbLaTiO3、PbLaZrO及びSrBi2Ta2O9からなる群から選択される少なくとも1種を含む。誘電体層が形成するキャパシタの静電容量を高いものとする点で、特に好ましい誘電体フィラーはBaTiO3である。樹脂組成物における誘電体フィラーの好ましい含有量は、樹脂組成物の固形分100重量部に対して、60~95重量部であり、より好ましくは70~90重量部、さらに好ましくは70~80重量部である。
【0027】
所望により、樹脂組成物はフィラー分散剤をさらに含んでいてもよい。フィラー分散剤をさらに含むことで、樹脂ワニスと誘電体フィラーを混練する際、誘電体フィラーの分散性を向上させることができる。フィラー分散剤は、使用可能な公知のものが適宜使用可能であり、特に限定されない。好ましいフィラー分散剤の例としては、イオン系分散剤である、ホスホン酸型、カチオン型、カルボン酸型、アニオン型分散剤の他、ノニオン系分散剤である、エーテル型、エステル型、ソルビタンエスエル型、ジエステル型、モノグリセライド型、エチレンオキシド付加型、エチレンジアミンベース型、フェノール型分散剤等が挙げられる。その他、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤等のカップリング剤が挙げられる。
【0028】
樹脂付銅箔
本発明の樹脂組成物は樹脂付銅箔の樹脂として用いられるのが好ましい。樹脂付銅箔における樹脂組成物は、2枚の樹脂付銅箔を樹脂組成物が互いに向かい合うように積層して誘電体層を形成させる観点から、半硬化されているのが好ましい。予め樹脂付銅箔の形態とすることで、樹脂層ないし誘電体層を別途形成することなく、キャパシタ素子やキャパシタ内蔵プリント配線板の製造を効率良く行うことができる。すなわち、本発明の好ましい態様によれば、銅箔と、銅箔の少なくとも一方の面に設けられた樹脂組成物とを含む、樹脂付銅箔が提供される。典型的には、樹脂組成物は樹脂層の形態であって、樹脂組成物を、銅箔に乾燥後の樹脂層の厚さが所定のものとなるようにグラビアコート方式で塗工し乾燥させ、樹脂付銅箔を得る。この塗工の方式については任意であるが、グラビアコート方式の他、ダイコート方式、ナイフコート方式等を採用することができる。その他、ドクターブレードやバーコータ等を使用して塗工することも可能である。
【0029】
樹脂層の厚さは、誘電体層としてキャパシタに組み込まれた場合に所望の静電容量を確保できる限り特に限定されないが、好ましくは0.1~15μmであり、より好ましくは0.2~10μm、さらに好ましくは0.5~5.0μmである。これらの範囲内の厚さであると、高い静電容量を実現しやすい、樹脂組成物の塗布により樹脂層の形成がしやすい、銅箔との間で十分な密着性を確保しやすいといった利点がある。
【0030】
銅箔は、電解製箔又は圧延製箔されたままの金属箔(いわゆる生箔)であってもよいし、少なくともいずれか一方の面に表面処理が施された表面処理箔の形態であってもよい。表面処理は、金属箔の表面において何らかの性質(例えば防錆性、耐湿性、耐薬品性、耐酸性、耐熱性、及び基板との密着性)を向上ないし付与するために行われる各種の表面処理でありうる。表面処理は金属箔の少なくとも片面に行われてもよいし、金属箔の両面に行われてもよい。銅箔に対して行われる表面処理の例としては、防錆処理、シラン処理、粗化処理、バリア形成処理等が挙げられる。
【0031】
銅箔の樹脂層側の表面における、JIS B0601-2001に準拠して測定される十点平均粗さRzjisが2.0μm以下であるのが好ましく、より好ましくは1.5μm以下、さらに好ましくは1.0μm以下、特に好ましくは0.5μm以下である。このような範囲内であると、樹脂層の厚さをより薄くすることができる。銅箔の樹脂層側の表面における十点平均粗さRzjisの下限値は特に限定されないが、樹脂層との密着性向上の観点からRzjisは0.005μm以上が好ましく、より好ましくは0.01μm以上、さらに好ましくは0.05μm以上である。
【0032】
銅箔の厚さは特に限定されないが、0.1~100μmであるのが好ましく、より好ましくは0.5~70μm以下であり、さらに好ましくは2~70μm以下、特に好ましくは10~70μm以下、最も好ましくは10μm~35μm以下である。これらの範囲内の厚さであると、プリント配線板の配線形成の一般的なパターン形成方法である、MSAP(モディファイド・セミアディティブ)法、SAP(セミアディティブ)法、サブトラクティブ法等の工法が採用可能である。もっとも、銅箔の厚さが例えば10μm以下となる場合などは、本発明の樹脂付銅箔は、ハンドリング性向上のために剥離層及びキャリアを備えたキャリア付銅箔の銅箔表面に樹脂層を形成したものであってもよい。
【0033】
誘電体層
本発明の樹脂組成物は硬化されて誘電体層とされるのが好ましい。すなわち、本発明の好ましい態様によれば、本発明の樹脂組成物が硬化された層である、誘電体層が提供される。樹脂組成物の硬化は公知の手法に基づき行えばよいが、熱間真空プレスにより行うのが好ましい。誘電体層の厚さは、所望の静電容量を確保できる限り特に限定されないが、好ましくは0.2~30μmであり、より好ましくは0.5~20μm、さらに好ましくは1~8μm、最も好ましくは2~6μmである。これらの範囲内の厚さであると、高い静電容量を実現しやすい、樹脂組成物の塗布により樹脂層の形成がしやすい、銅箔との間で十分な密着性を確保しやすいといった利点がある。
【0034】
銅張積層板
本発明の樹脂組成物ないしそれを含む誘電体層は銅張積層板に適用されるのが好ましい。すなわち、本発明の好ましい態様によれば、第一銅箔と、上述した誘電体層と、第二銅箔とを順に備えた、銅張積層板が提供される。銅張積層板の形態とすることで、本発明の樹脂組成物を誘電体層として含むキャパシタ素子やキャパシタ内蔵プリント配線板を望ましく作製することができる。銅張積層板の作製方法は特に限定されないが、例えば、2枚の上述した樹脂付銅箔を樹脂層が互いに向かい合うように積層して高温で真空プレスすることにより銅張積層板を製造することができる。
【0035】
キャパシタ素子及びキャパシタ内蔵プリント配線板
本発明の樹脂組成物ないしそれを含む誘電体層はキャパシタ素子に組み込まれるのが好ましい。すなわち、本発明の好ましい態様によれば、上述した誘電体層を有する、キャパシタ素子が提供される。キャパシタ素子の構成は特に限定されず、公知の構成が採用可能である。特に好ましい形態は、キャパシタないしその誘電体層がプリント配線板の内層部分として組み込まれた、キャパシタ内蔵プリント配線板である。すなわち、本発明の特に好ましい態様によれば、上述した誘電体層を有する、キャパシタ内蔵プリント配線板が提供される。特に、本発明の樹脂付銅箔を用いることで、キャパシタ素子やキャパシタ内蔵プリント配線板を公知の手法に基づき効率良く製造することができる。
【実施例】
【0036】
本発明を以下の例によってさらに具体的に説明する。
【0037】
例1~7
(1)樹脂ワニスの調製
まず、樹脂ワニス用原料成分として、以下に示される樹脂成分、イミダゾール系硬化促進剤及び誘電体フィラーを用意した。
‐ エポキシ樹脂:ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、日本化薬株式会社製、NC-3000
‐ 活性エステル樹脂:DIC株式会社製、HPC-8000-65T
‐ 芳香族ポリアミド樹脂:日本化薬株式会社製、BPAM-155
‐ イミダゾール硬化促進剤:四国化成工業株式会社製、2P4MHZ、添加量1.0wt%(樹脂成分100wt%に対して)
‐ 誘電体フィラー:BaTiO3、日本化学工業株式会社製、AKBT-M
‐ フィラー分散剤:チタネート系カップリング剤、味の素ファインテクノ株式会社製、KR-44
【0038】
表1に示される配合比(重量比)で上記樹脂ワニス用原料成分を秤量した。さらに溶剤としてシクロペンタノンを追加し、60℃で攪拌した。樹脂ワニスの透明性を確認した後、樹脂ワニスを回収した。
【0039】
(2)フィラーとの混練
シクロペンタノン、誘電体フィラー及びフィラー分散剤をそれぞれ秤量した。秤量した溶剤、誘電体フィラー及びフィラー分散剤を分散機でスラリー化した。スラリー化を確認した後、樹脂ワニスを秤量し、分散機で誘電体フィラー含有スラリーとともに混練して、樹脂組成物4を得た。
【0040】
(3)樹脂塗工
図1に示されるように、得られた樹脂組成物4を、銅箔2(三井金属鉱業株式会社製、厚さ35μm、表面粗さRz=0.5μm)に厚さが1.5μmとなるようにバーコーターを用いて塗工し、その後130℃に加熱したオーブンにて3分間乾燥させ、樹脂を半硬化状態とした。こうして樹脂付銅箔6を得た。
【0041】
(4)プレス
図1に示されるように、2枚の樹脂付銅箔6を樹脂組成物4が互いに向かい合うように積層し、圧力40kgf/cm
2、200℃で90分間の真空プレスを行い、樹脂組成物4を硬化状態とした。こうして硬化された樹脂組成物4を誘電体層として含む銅張積層板8を得た。
【0042】
(5)回路形成及び評価
得られた銅張積層板8の片面又は両面にエッチングを施して各種評価用の回路10を形成し、以下の各種評価を行った。
【0043】
<評価1:剥離強度>
銅張積層板の片面にエッチングを施して10mm幅の直線状の回路を作製した後、オートグラフにて引き剥がし速度50mm/分で回路を引き剥がし、その剥離強度を測定した。この測定はIPC-TM-650 2.4.8に準拠して行った。測定された剥離強度を以下の基準に従い評価した。結果は表1に示されるとおりであった。
‐評価A:0.8kgf/cm以上(良)
‐評価B:0.4kgf/cm以上でかつ0.8kgf/cm未満(可)
‐評価C:0.4kgf/cm未満(不可)
【0044】
<評価2:熱処理後の静電容量の低下率>
まず、銅張積層板の片面にエッチングを施して直径0.5インチ(12.6mm)の円形の回路を作製した後、LCRメーター(日置電気株式会社製、LCRハイテスタ3532-50)にて周波数1kHzにおける静電容量を測定した。この測定はIPC-TM-650 2.5.2に準拠して行った。結果は表1に示されるとおりであった。
【0045】
次に、上記測定が終了したサンプルを230℃のオーブンに110分間投入した後、静電容量を再度測定し、熱処理前後での静電容量の低下率を算出した。算出された静電容量低下率を以下の基準に従い評価した。結果は表1に示されるとおりであった。
‐評価AA:2%未満(最良)
‐評価A:2%以上でかつ3%未満(良)
‐評価B:3%以上でかつ6%未満(可)
‐評価C:6%以上(不可)
【0046】
<評価3:層間絶縁性保持時間>
銅張積層板の両面にエッチングを施して直径0.5インチ(12.6mm)の円形の回路を作製した後、上部電極及び下部電極に配線をはんだ付けし、配線をマイグレーション測定用テスターに接続した。評価回路を85℃及び85%RHの恒温恒湿槽に投入し、印加電圧3Vの負荷をかけ、1×105Ω以上の絶縁抵抗を保持する時間を計測した。計測された層間絶縁性保持時間を以下の基準に従い評価した。結果は表1に示されるとおりであった。
‐評価AA:1000時間以上(最良)
‐評価A:500時間以上でかつ1000時間未満(良)
‐評価B:200時間以上でかつ500時間未満(可)
‐評価C:200時間未満(不可)
【0047】
<総合評価>
評価1~3の評価結果を以下の基準に当てはめることにより、総合評価を決定した。結果は表1に示されるとおりであった。
‐評価AA:全ての評価においてA以上の判定となるもの(最良)
‐評価A:C判定となるものがなく、かつ、B判定となるものが1つあるもの(良)
‐評価B:C判定となるものがなく、かつ、B判定となるものが2つあるもの(可)
‐評価C:C判定が少なくとも1つあるもの(不可)
【0048】
例8(比較)
活性エステル樹脂の代わりにフェノール樹脂(明和化成株式会社製、MEH-7500)20.0重量部を用い、エポキシ樹脂の配合比を40.0重量部に増やしたこと以外は例3と同様にして、樹脂ワニスの調製及び各種評価を行った。結果は表1に示されるとおりであった。
【0049】
例9(比較)
芳香族ポリアミド樹脂の代わりにブチラール樹脂(積水化学工業製、KS-5Z)を用いたこと以外は例2と同様にして、樹脂ワニスの調製及び各種評価を行った。結果は表1に示されるとおりであった。
【0050】
例10(比較)
芳香族ポリアミド樹脂を用いず、エポキシ樹脂の配合比を56.0重量部、活性エステル樹脂の配合比を44.0重量部に増やしたこと以外は例1と同様にして、樹脂ワニスの調製及び各種評価を行った。結果は表1に示されるとおりであった。
【0051】