IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ユーダブリューエム・リサーチ・ファウンデーション,インコーポレーテッドの特許一覧 ▶ ザ・トラスティーズ・オブ・コロンビア・ユニバーシティ・イン・ザ・シティ・オブ・ニューヨークの特許一覧

特許7013446GABA(A)受容体モジュレーター、及び、喘息における気道過敏及び炎症を抑制するための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-21
(45)【発行日】2022-02-15
(54)【発明の名称】GABA(A)受容体モジュレーター、及び、喘息における気道過敏及び炎症を抑制するための方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 487/04 20060101AFI20220207BHJP
   C07D 487/14 20060101ALI20220207BHJP
   A61K 31/5517 20060101ALI20220207BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20220207BHJP
   A61P 11/08 20060101ALI20220207BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220207BHJP
【FI】
C07D487/04 154
C07D487/14 CSP
A61K31/5517
A61P11/00
A61P11/08
A61P43/00 111
【請求項の数】 28
(21)【出願番号】P 2019508255
(86)(22)【出願日】2017-08-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-10
(86)【国際出願番号】 US2017047185
(87)【国際公開番号】W WO2018035246
(87)【国際公開日】2018-02-22
【審査請求日】2020-08-13
(31)【優先権主張番号】62/375,694
(32)【優先日】2016-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/427,771
(32)【優先日】2016-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515076769
【氏名又は名称】ユーダブリューエム・リサーチ・ファウンデーション,インコーポレーテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】306018457
【氏名又は名称】ザ・トラスティーズ・オブ・コロンビア・ユニバーシティ・イン・ザ・シティ・オブ・ニューヨーク
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100133765
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 尚志
(72)【発明者】
【氏名】アーノルド,アレクサンダー・イー
(72)【発明者】
【氏名】スタッフォード,ダグラス・シー
(72)【発明者】
【氏名】クック,ジェームズ・エム
(72)【発明者】
【氏名】エマラ,チャールズ・ダブリュー
(72)【発明者】
【氏名】フォルクオ,グロリア
(72)【発明者】
【氏名】ジャハーン,ラジワナ
(72)【発明者】
【氏名】コダリ,レヴァティ
(72)【発明者】
【氏名】リー,グワングワン
(72)【発明者】
【氏名】スティーヴン,マイケル・ラジェシュ
【審査官】安藤 倫世
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-502736(JP,A)
【文献】米国特許第04226768(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0003995(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0295892(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0258643(US,A1)
【文献】国際公開第1996/015129(WO,A1)
【文献】特表2015-529254(JP,A)
【文献】特表2014-532749(JP,A)
【文献】特表2014-515374(JP,A)
【文献】特表2015-503596(JP,A)
【文献】J. Heterocyclic Chem.,1986年,Vol. 23,pp. 1303-1314
【文献】J. Med. Chem.,1989年,Vol. 32,pp. 2282-2291
【文献】SYNTHESIS,2004年,No. 16,pp. 2697-2703
【文献】周東智,有機医薬分子論,2012年,p.201-18
【文献】野崎正勝 等,創薬化学,第1版,株式会社化学同人,1995年,p.98-99
【文献】長野哲雄、夏苅英昭、原博,創薬化学,第1版第4刷,日本,2007年04月10日,pp. 139-140
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 487/04
C07D 487/14
A61K 31/5517
A61P 11/00
A61P 11/08
A61P 43/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
[式中:
は、COOHであり;
Xは、C-H、C-F、C-Cl、C-Br、C-I、C-CF、又はNであり;
及びR2’は、各々独立して、H、D、C1-4アルキル、CD、F、Cl、CF、CCl、若しくはシクロプロピルであるか;又はR及びR2’が一緒になって、置換されていてもよい環を形成し;並びに
は、H、F、Cl、Br、CF、CHF、-OCF、-OCHF、CN、OH、-OC1-4アルキル、又はシクロプロピルであり;
但し、
Xは、C-H、C-F、C-Br、又はC-Iであり、及びRは、H、F、Cl、又はBrである場合、R及びR2’の両方が同時にHにはならない]
の化合物又はその医薬的に許容される塩。
【請求項2】
Xが、C-H、C-F、C-Cl、C-Br、C-I、又はNである、請求項1に記載の化合物又はその医薬的に許容される塩。
【請求項3】
Xが、C-H、C-F、C-Cl、C-Br、又はNである、請求項2に記載の化合物又はその医薬的に許容される塩。
【請求項4】
及びR2’が、各々独立して、H、C1-4アルキル、F、Cl、CF、CCl、若しくはシクロプロピルであるか;又はR及びR2’が一緒になって環を形成する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の化合物又はその医薬的に許容される塩。
【請求項5】
及びR2’が、各々独立して、H、C1-4アルキル、F、Cl、CF、若しくはCClであるか;又はR及びR2’が一緒になって環を形成する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の化合物又はその医薬的に許容される塩。
【請求項6】
及びR2’が、各々独立して、H、D、CH、CD、CF、若しくはシクロプロピルであるか;又はR及びR2’が一緒になって、C3-6シクロアルキルを形成する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の化合物又はその医薬的に許容される塩。
【請求項7】
が、H、F、Cl、Br、OH、OCH、又はシクロプロピルである、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の化合物又はその医薬的に許容される塩。
【請求項8】
が、OHである、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の化合物又はその医薬的に許容される塩。
【請求項9】
が、H、F、Cl、又はOCHである、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の化合物又はその医薬的に許容される塩。
【請求項10】
式(I-A):
【化2】
[式中、Rは、D、C1-4アルキル、CD、F、Cl、CF、CCl、又はシクロプロピルである]
である、請求項1乃至3及び7乃至9のいずれか一項に記載の化合物又はその医薬的に許容される塩。
【請求項11】
が、D、CH、CD、CF、又はシクロプロピルである、請求項10に記載の化合物又はその医薬的に許容される塩。
【請求項12】
式(I-B):
【化3】
[式中、R2’は、D、C1-4アルキル、CD、F、Cl、CF、CCl、又はシクロプロピルである]
である、請求項1乃至3及び7乃至9のいずれか一項に記載の化合物又はその医薬的に許容される塩。
【請求項13】
2’が、D、CH、CD、CF、又はシクロプロピルである、請求項12に記載の化合物又はその医薬的に許容される塩。
【請求項14】
式(I-C):
【化4】
である、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の化合物又はその医薬的に許容される塩。
【請求項15】
Xが、C-H、C-F、C-Cl、C-Br、C-I、又はNであり;
が、C1-4アルキル、CD、F、Cl、CF、CCl、又はシクロプロピルであり;
2’が、H又はDであり;及び
が、H、F、Cl、Br、OH、OCH、又はシクロプロピルである、
請求項1に記載の化合物又はその医薬的に許容される塩。
【請求項16】
が、C1-4アルキルである、請求項15に記載の化合物又はその医薬的に許容される塩。
【請求項17】
(R)-8-エチニル-6-(2-フルオロフェニル)-4-メチル-4H-ベンゾ[f]イミダゾ[1,5-a][1,4]ジアゼピン-3-カルボン酸;
(R)-8-ブロモ-6-(2-フルオロフェニル)-4-メチル-4H-ベンゾ[f]イミダゾ[1,5-a][1,4]ジアゼピン-3-カルボン酸;
(R)-8-シクロプロピル-6-(2-フルオロフェニル)-4-メチル-4H-ベンゾ[f]イミダゾ[1,5-a][1,4]ジアゼピン-3-カルボン酸;
(R)-8-クロロ-6-(2-フルオロフェニル)-4-メチル-4H-ベンゾ[f]イミダゾ[1,5-a][1,4]ジアゼピン-3-カルボン酸;
(R)-8-ブロモ-4-メチル-6-(ピリジン-2-イル)-4H-ベンゾ[f]イミダゾ[1,5-a][1,4]ジアゼピン-3-カルボン酸;及び
(R)-8-エチニル-4-メチル-6-(ピリジン-2-イル)-4H-ベンゾ[f]イミダゾ[1,5-a][1,4]ジアゼピン-3-カルボン酸;
から成る群より選択される化合物又はその医薬的に許容される塩。
【請求項18】
(R)-8-ブロモ-6-(2-フルオロフェニル)-4-メチル-4H-ベンゾ[f]イミダゾ[1,5-a][1,4]ジアゼピン-3-カルボン酸、である、請求項1に記載の化合物又はその医薬的に許容される塩。
【請求項19】
(R)-8-シクロプロピル-6-(2-フルオロフェニル)-4-メチル-4H-ベンゾ[f]イミダゾ[1,5-a][1,4]ジアゼピン-3-カルボン酸、である、請求項1に記載の化合物又はその医薬的に許容される塩。
【請求項20】
(R)-8-クロロ-6-(2-フルオロフェニル)-4-メチル-4H-ベンゾ[f]イミダゾ[1,5-a][1,4]ジアゼピン-3-カルボン酸、である、請求項1に記載の化合物又はその医薬的に許容される塩。
【請求項21】
(R)-8-ブロモ-4-メチル-6-(ピリジン-2-イル)-4H-ベンゾ[f]イミダゾ[1,5-a][1,4]ジアゼピン-3-カルボン酸、である、請求項1に記載の化合物又はその医薬的に許容される塩。
【請求項22】
請求項1乃至21のいずれか一項に記載の化合物又はその医薬的に許容される塩、及び医薬的に許容されるキャリアを含む医薬組成物。
【請求項23】
気道狭窄を低減するための、請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項24】
肺炎症を低減するための、請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項25】
肺炎症に関連するリスク因子を有する対象における疾患の発症を低減するための、請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項26】
肺疾患を治療するための、請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項27】
気道狭窄の低減、肺炎症の低減、肺炎症に関連するリスク因子の発現の低減、又は肺疾患の治療のための医薬の製造に使用するための、請求項1乃至22のいずれか一項に記載の化合物若しくは医薬組成物、又は前記化合物の医薬的に許容される塩。
【請求項28】
気道狭窄の低減、肺炎症の低減、肺炎症に関連するリスク因子の発現の低減、又は肺疾患の治療に使用するための、請求項1乃至22のいずれか一項に記載の化合物若しくは医薬組成物、又は前記化合物の医薬的に許容される塩。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、その全内容が参照により本明細書に援用される2016年8月16日に出願された米国仮特許出願第62/375,694号及び2016年11月29日に出願された米国仮特許出願第62/427,771号の利益を主張するものである。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載
本発明は、NIH助成金番号R01HL118561、R01MH096463、R01GM065281、及びR01HL122340の下、米国政府の支援によって行われた。米国政府は、本発明に対して一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
気管支収縮性疾患は、世界的な主たる健康問題である。これらには、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、及び気管支肺異形成症(BPD)が含まれ、β-アドレナリン作動薬、吸入コルチコステロイド、及び吸入抗コリン作動薬などの既存の治療薬があるにも関わらず、気管支収縮性疾患は、広く蔓延したままである。喘息だけで、世界中で3億人の患者が罹患している。喘息は、患者を重篤な急性気道狭窄に罹患し易くすることから、気道平滑筋弛緩を促進することができる新規な治療機構があれば、臨床的価値があるであろう。
【0004】
したがって、気管支収縮性疾患に対して有効な治療剤及び予防剤が継続的に求められている。これらの疾患を治療するための新規な薬理学的手法は限られている。治療上の限界は、β-アドレナリン受容体作動薬及び抗コリン作動薬が、依然として急性気道狭窄の治療に用いられる現時点で唯一の薬物クラスであることから、急性の気道平滑筋弛緩を促進する薬物療法において特に明らかである。
【0005】
GABA受容体(GABAR)は、その中枢神経系(CNS)における抑制効果でよく知られているリガンド開口型塩化物イオンチャネルである。GABARは、19の異なるサブユニット(α1-6、β1-3、γ1-3、δ、ε、π、θ、ρ1-3)から組み立てられたヘテロペンタマーである。古典的なGABARは、2つのα、2つのβ、及び1つのγ、δ、ε、θ、又はπのサブユニットから成る。GABARの機能の有効性を変化させる化合物は、中枢神経系の障害に対する医薬として広く用いられてきた。神経細胞に加えて、GABARサブユニットは、気道平滑筋、気道上皮、及び免疫/炎症細胞にも識別されている。気道平滑筋細胞、上皮細胞、及び免疫細胞上の別々のGABARサブタイプに対して選択的に反応する化合物は、気管支収縮性疾患を治療するためのこれまでにない新規な手法において重要である。αβγGABAR又はαβγGABARに対する選択性を有する化合物が、記載される喘息モデルにおいて薬理学的に活性であるとして識別された。
【発明の概要】
【0006】
1つの態様では、本発明は、式(I)の化合物又はその医薬的に許容される塩を提供し、
【0007】
【化1】
【0008】
式中:
は、COOH、カルボン酸エステル、カルボン酸等価体、又はカルボン酸エステル等価体であり;
Xは、C-H、C-F、C-Cl、C-Br、C-I、C-CF、又はNであり;
及びR2’は、各々独立して、H、D、C1-4アルキル、CD、F、Cl、CF、CCl、若しくはシクロプロピルであるか;又はR及びR2’が一緒になって、所望に応じて置換されていてもよい環を形成し;及び
は、H、F、Cl、Br、CF、CHF、-OCF、-OCHF、CN、OH、-OC1-4アルキル、-C≡CH、又はシクロプロピルである。
【0009】
本発明の別の態様は、式(II)の化合物又はその医薬的に許容される塩を提供し、
【0010】
【化2】
【0011】
式中:
は、COOH、カルボン酸エステル、カルボン酸等価体、又はカルボン酸エステル等価体であり;
nは、1又は2であり;並びに
は、H、F、Cl、Br、CF、CHF、-OCF、-OCHF、CN、OH、-OC1-4アルキル、-C≡CH、又はシクロプロピルである。
【0012】
別の態様では、本発明は、式(I)若しくは(II)の化合物、又はその医薬的に許容される塩、及び医薬的に許容されるキャリアを含む医薬組成物を提供する。ある実施形態では、組成物は、経口又はエアロゾル調合物である。
【0013】
別の態様では、本発明は、式(I)若しくは(II)の化合物又は組成物、又はその医薬的に許容される塩の有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む、気道狭窄を低減する方法を提供する。ある実施形態では、式(I)又は(II)の化合物は、治療用量でのジアゼパムと比較して、対象におけるベンゾジアゼピン型CNS作用を低減した。
【0014】
別の態様では、本発明は、式(I)若しくは(II)の化合物又は組成物、又はその医薬的に許容される塩の有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む、肺炎症を低減する方法を提供する。ある実施形態では、式(I)又は(II)の化合物は、治療用量でのジアゼパムと比較して、対象におけるベンゾジアゼピン型CNS作用を低減した。
【0015】
別の態様では、本発明は、式(I)若しくは(II)の化合物又は組成物、又はその医薬的に許容される塩の有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む、肺炎症に関連するリスク因子を有する対象における疾患の発症を低減する方法を提供する。ある実施形態では、式(I)又は(II)の化合物は、治療用量でのジアゼパムと比較して、対象におけるベンゾジアゼピン型CNS作用を低減した。
【0016】
別の態様では、本発明は、式(I)若しくは(II)の化合物又は組成物、又はその医薬的に許容される塩の有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む、肺疾患を治療する方法を提供する。ある実施形態では、式(I)又は(II)の化合物は、治療用量でのジアゼパムと比較して、対象におけるベンゾジアゼピン型CNS作用を低減した。
【0017】
ある態様では、本発明の化合物は、GABARのα及びαサブユニットを選択的に標的とする。ある態様では、本発明の化合物は、GABAR上のα及びαベンゾジアゼピンアロステリック調節部位に対して選択的であるGABARのアロステリックモジュレーターである。ある態様では、本発明の化合物の血液脳関門不透過性が、限定的であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1Aは、GABA受容体サブタイプα1β3γ2、α2β3γ2、α3β3γ2、α4β3γ2、及びα5β3γ2を発現するアフリカツメガエル卵母細胞上でのSH-053-2’F-R-CH-酸によるGABA誘導電流の用量依存的調節を示す。図1Bは、α1β3γ2又はα4β3γ2GABA受容体を発現するHEK293T細胞を用いたRJ-02-50による自動パッチクランプを示す。
図2図2は、ロータロッド試験における感覚運動協調に対する化合物の効果を示す。
図3-1】図3Aは、モルモットの気管軟骨輪(tracheal rings)における気道平滑筋の収縮力に対するRJ-02-50及びRJ-03-30の効果を示す。図3Bは、モルモットの気管軟骨輪における気道平滑筋の収縮力に対するRJ-03-57の効果を示す。
図3-2】図3Cは、モルモットの気管軟骨輪における気道平滑筋の収縮力に対するSH-053-2’F-R-CH3酸及びGL-II-93の効果を示す。
図4図4は、ヒト気道平滑筋の収縮力に対するSH-053-2’F-R-CH3酸の効果を示す。
図5-1】図5A~5Fは、気道過敏に対する化合物の効果を示す。
図5-2】図5A~5Fは、気道過敏に対する化合物の効果を示す。
図5-3】図5A~5Fは、気道過敏に対する化合物の効果を示す。
図6-1】図6A~6Dは、マウスの血液、肺、及び脳における化合物の薬物動態プロファイルを示す。
図6-2】図6A~6Dは、マウスの血液、肺、及び脳における化合物の薬物動態プロファイルを示す。
図7-1】図7A~7Cは、炎症細胞に対する化合物の効果を示す。
図7-2】図7A~7Cは、炎症細胞に対する化合物の効果を示す。
図8図8は、600nMのGABA及び一緒に3秒間適用された濃度を増加させた化合物の存在下、ova s/c BALB/cマウスの脾臓から単離したCD4+T細胞を用いた電流測定を示す。
図9図9は、サイトカイン産生に関する化合物の抗炎症特性を示す。
図10図10A~10Bは、ムチン産生に対する化合物の効果を示す。
図11図11は、GL-II-93による処理なし又は処理ありにおける肺細胞の増殖を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
最近の研究から、機能性ガンマ-アミノ酪酸A型受容体(GABAR)が、喘息肺の病態生理に関与する細胞型の表面に存在することが示された。重要なことには、GABARのシグナル伝達は、気道平滑筋(ASM)の収縮状態、炎症プロセス、及び気道上皮細胞(AEC)の増殖に影響を与え得る。肺で局所的に作用するGABARのシグナル伝達の理解が進んでいるにも関わらず、喘息治療のためにGABARの応答を一体化し、標的とする戦略は、開発されておらず、又は治療に利用されてこなかった。したがって、本発明者らは、AEC肥大を刺激することなくASM及び免疫/炎症細胞に対して抑制性であるリガンドを識別するために、ヒト肺細胞型を系統的に探索することによって、新規な喘息治療法を識別することを考慮している。
【0020】
内在性気道平滑筋GABA受容体の活性化は、気道平滑筋のコリン作動性収縮を緩和し、気道平滑筋の分子分析から、これらのGABA受容体のα-サブユニット成分は、α4及びα5に限定されていることが分かっている。
【0021】
本発明は、免疫/炎症細胞及び気道平滑筋で発現される特定の向イオン性(リガンド開口型)イオンチャネルに結合することができ、その結果として収縮を緩和することができる新規な化合物を提供する。この新規な知見は、気道平滑筋収縮緩和のための新しいシグナル伝達経路及びタンパク質標的を詳細に示すものであり、気道狭窄、肺炎症、並びにアレルギー性及び自己免疫性疾患に伴う炎症に対する新規な治療剤へと発展させることができる可能性がある。したがって、本発明は、中でも、気道狭窄、肺炎症、並びにアレルギー性及び自己免疫性疾患に伴う炎症に対する新規な治療オプションを提供する新規な化合物、並びに様々な疾患を治療するためにこれらの化合物を用いる方法を提供する。
【0022】
定義
特定の官能基及び化学用語の定義を、以下でより詳細に記載する。本発明の目的のために、化学元素は、Handbook of Chemistry and Physics, 75th Ed.の表紙裏の元素周期律表、CASバージョンに従って識別され、特定の官能基については、一般的に、本明細書に記載されるように定義される。加えて、有機化学の一般的原理、さらには特定の官能部分及び反応性については、各々の全内容が参照により本明細書に援用されるOrganic Chemistry, Thomas Sorrell, University Science Books, Sausalito, 1999;Smith and March March's Advanced Organic Chemistry, 5th Edition, John Wiley & Sons, Inc., New York, 2001;Larock, Comprehensive Organic Transformations, VCH Publishers, Inc., New York, 1989;Carruthers, Some Modern Methods of Organic Synthesis, 3rd Edition, Cambridge University Press, Cambridge, 1987に記載されている。
【0023】
「アシル」の用語は、アルキルカルボニル、シクロアルキルカルボニル、ヘテロシクリルカルボニル、アリールカルボニル、又はヘテロアリールカルボニル置換基を意味する。ある実施形態では、アシルは、さらに置換されていてもよい(例:1又は複数の置換基により)。特に断りのない限り、アシルは、無置換である。
【0024】
「アルキル」の用語は、示された数の炭素原子を有する直鎖状又は分岐鎖状炭化水素鎖を意味する。例えば、C-C12アルキルは、アルキル基が1から12個(1及び12を含む)の炭素原子を有し得ることを示し、C-Cアルキルは、アルキル基が1から4個(1及び4を含む)の炭素原子を有し得ることを示す。ある実施形態では、アルキル基は、所望に応じて置換されていてもよい。C1-4アルキル基の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、及びtert-ブチルが挙げられる。特に断りのない限り、アルキルは、無置換である。
【0025】
「アルケニル」の用語は、1又は複数の二重結合を有する直鎖状又は分岐鎖状炭化水素鎖を意味する。アルケニル基の例としては、限定されないが、アリル、プロペニル、2-ブテニル、3-ヘキセニル、及び3-オクテニル基が挙げられる。二重結合炭素のうちの一方は、所望に応じて、アルケニル置換基の結合点であってもよい。ある実施形態では、アルケニル基は、所望に応じて置換されていてもよい。特に断りのない限り、アルケニルは、無置換である。
【0026】
「アルキニル」の用語は、1又は複数の三重結合を有する直鎖状又は分岐鎖状炭化水素鎖を意味する。アルキニル基の例としては、限定されないが、エチニル、プロパルギル、及び3-ヘキシニルが挙げられる。三重結合炭素のうちの一方は、所望に応じて、アルキニル置換基の結合点であってもよい。ある実施形態では、アルキニル基は、所望に応じて置換されていてもよい。特に断りのない限り、アルキニルは、無置換である。
【0027】
「アリール」の用語は、芳香族炭素環式の単環式、二環式、又は三環式炭化水素環系を意味し、置換可能である環原子のいずれも置換されていてよい(例:1又は複数の置換基によって)。アリール部分の例としては、限定されないが、フェニル、ナフチル、及びアントラセニルが挙げられる。特に断りのない限り、アリールは、無置換である。
【0028】
「アリールアルキル」の用語は、アルキル水素原子がアリール基で置き換えられているアルキル部分を意味する。アリールアルキルは、2つ以上の水素原子がアリール基で置き換えられた基を含む。アリールアルキル基の例としては、ベンジル、2-フェニルエチル、3-フェニルプロピル、9-フルオレニル、ベンズヒドリル、及びトリチル基が挙げられる。
【0029】
「シクロアルキル」の用語は、本明細書で用いられる場合、3~12個の炭素(例:3、4、5、6、又は7個の炭素原子)を有する飽和環式、二環式、三環式、又は多環式炭化水素基を意味する。いずれかの環原子が置換されていてもよい(例:1又は複数の置換基によって)。シクロアルキル基は、縮合環を有していてよい。縮合環は、1又は複数の共通の炭素原子を共有する環である。単環式シクロアルキル基の例としては、限定されないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、及びシクロヘキシルが挙げられる。架橋シクロアルキルの例としては、アダマンチル及びノルボルニルが挙げられる。
【0030】
「ハロ」又は「ハロゲン」の用語は、本明細書で用いられる場合、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素のいずれの基をも意味する。
「ハロアルキル」の用語は、本明細書で用いられる場合、1又は複数の水素原子がハロゲンで置き換えられたアルキルを意味し、すべての水素がハロゲンで置き換えられたアルキル部分を含む(例:CFなどのペルフルオロアルキル)。
【0031】
「ヘテロアリール」の用語は、本明細書で用いられる場合、単環式の場合は1~3個のヘテロ原子を、二環式の場合は1~6個のヘテロ原子を、又は三環式の場合は1~9個のヘテロ原子を有する芳香族の5~8員環単環式、8~12員環二環式、又は11~14員環三環式環系を意味し、前記ヘテロ原子は、独立して、O、N、S、P、及びSiから選択される(例:炭素原子、並びに、それぞれ単環式、二環式、又は三環式の場合、O、N、S、P、及びSiから独立して選択される1~3個、1~6個、又は1~9個のヘテロ原子)。いずれかの環原子が置換されていてもよい(例:1又は複数の置換基によって)。ヘテロアリール基は、1又は複数の共通の原子を共有する環である縮合環を有していていてもよい。ヘテロアリール基の例としては、限定されないが、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、イソキサゾール、フラン、チアゾール、イソチアゾール、チオフェン、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、インドール、イソインドール、インドリジン、インダゾール、ベンズイミダゾール、フタラジン、プテリジン、カルバゾール、カルボリン、フェナントリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、ナフチリジン、及びプリンの基が挙げられる。
【0032】
「ヘテロ環」の用語は、本明細書で用いられる場合、単環式の場合は1~3個のヘテロ原子を、二環式の場合は1~6個のヘテロ原子を、又は三環式の場合は1~9個のヘテロ原子を有する非芳香族の飽和又は部分不飽和3~10員環単環式、8~12員環二環式、又は11~14員環三環式環系を意味し、前記ヘテロ原子は、O、N、S、Si、及びPから選択される(例:炭素原子、並びに、それぞれ単環式、二環式、又は三環式の場合、O、N、S、Si、及びPの1~3個、1~6個、又は1~9個のヘテロ原子)。いずれかの環原子が置換されていてもよい(例:1又は複数の置換基によって)。ヘテロシクリル基は、1又は複数の共通の原子を共有する環である縮合環を有していていてもよい。ヘテロシクリル基の例としては、限定されないが、テトラヒドロフラン、テトラヒドロチオフェン、テトラヒドロピラン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、ピロリン、ピリミジン、ピロリジン、インドリン、テトラヒドロピリジン、ジヒドロピラン、チアントレン、ピラン、ベンゾピラン、キサンテン、フェノキサチイン、フェノチアジン、フラザン、ラクトン、アゼチジノン及びピロリジノン等のラクタム、スルタム、並びにスルトン等の基が挙げられる。
【0033】
「ヒドロキシ」の用語は、-OH基を意味する。「アルコキシ」の用語は、-O-アルキル基を意味する。「アリールオキシ」の用語は、-O-アリール基を意味する。「ハロアルコキシ」の用語は、-O-ハロアルキル基を意味する。
【0034】
「置換基」の用語は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、アリールアルキル、又はヘテロアリール基上、その基のいずれかの原子において「置換された」基を意味する。適切な置換基としては、限定されないが、アシル、アシルアミド、アシルオキシ、アルコキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、カルボキシ、シアノ、エステル、ハロ、ヒドロキシ、イミノ、ニトロ、オキソ(例:C=O)、ホスホネート、スルフィニル、スルホニル、スルホネート、スルホンアミノ、スルホンアミド、チオアミド、チオール、チオキソ(例:C=S)、及びウレイドが挙げられる。実施形態では、基上の置換基は、独立して、上述した置換基のいずれか1つ、又はいずれかの組み合わせである。実施形態では、置換基自体が、上記置換基のいずれか1つで置換されていてもよい。
【0035】
上記置換基は、本明細書において略記される場合があり、例えば、Me、Et、及びPhの略語は、それぞれ、メチル、エチル、及びフェニルを表す。有機化学者によって用いられる略語のより包括的なリストは、Journal of Organic Chemistryの各巻の第1号に記載されており、このリストは、典型的には、標準略語リスト(Standard List of Abbreviations)と題する表に示される。前記リストに含まれる略語、及び当業者である有機化学者によって用いられるすべての略語は、参照により本明細書に援用される。
【0036】
化合物において、その基及び置換基は、選択及び置換の結果として、転位、環化、脱離などによる自発的な変換を起こすことのない化合物を例とする安定な化合物が得られるように、原子及び置換基の許容される価数に従って選択され得る。
【0037】
置換基が、左から右に記載されるその従来の化学式によって指定される場合、それらは、所望に応じて、右から左に構造を記載することによる置換基も包含するものであり、例えば、-CHO-は、所望に応じて-OCH-も意味する。
【0038】
本技術分野で用いられる慣例に従って、基:
【0039】
【化3】
【0040】
が、本明細書中の構造式において、部分又は置換基の核又は主鎖構造との結合点である結合を示すために用いられる。
障害を治療するという意味において、「有効量」の用語は、本明細書で用いられる場合、対象への単一又は複数用量の投与によって、細胞の治療、又は対象の持つ障害の症状の治癒、軽減、緩和、若しくは改善に有効である化合物又は化合物を含む組成物の量を意味する。化合物又は組成物の有効量は、用途に応じて様々であり得る。障害を治療するという意味において、有効量は、疾患の状態、個人の年令、性別、及び体重、並びに化合物が個人に所望される応答を引き起こす能力などの因子に依存し得る。例えば、化合物の有効量は、任意のパラメータに、その化合物で治療されていない細胞(例:細胞の培養物)又は対象などのコントロールと比較して薬理学的に有用な変化を発生させる量である。
【0041】
ベンゾジアゼピン型CNS作用に対する治療ウィンドウとは、ベンゾジアゼピン型のCNS作用(例:鎮静作用)が特定の治療処置という状況で許容されるレベルである用量又は用量の範囲において、標的器官(例:肺)で所望される治療効果を有することを意味する。例えば、喘息治療という状況では、CNS作用の許容されるレベルは、CNS作用なし、又は軽度のCNS作用を含む。例えば、ある実施形態では、治療指数は、10以上である。ある実施形態では、治療指数は、20以上である。ある実施形態では、治療指数は、24以上である。ベンゾジアゼピン型CNS作用の低減は、治療用量でのジアゼパムと比較した対象におけるベンゾジアゼピン型CNS作用の低減を含む。例えば、ある実施形態では、ベンゾジアゼピン型CNS作用は、治療用量でのジアゼパムと比較して、10倍以上低減される。ある実施形態では、ベンゾジアゼピン型CNS作用は、治療用量でのジアゼパムと比較して、20倍以上低減される。ある実施形態では、ベンゾジアゼピン型CNS作用は、治療用量でのジアゼパムと比較して、24倍以上低減される。
【0042】
本明細書で列挙されるいずれの数値(例:範囲)も、下限値から上限値までのすべての値を含むものと特に理解され、すなわち、列挙される最小値と最大値との間の数値の考え得るすべての組み合わせが、本出願に明白に記載されているものと見なされるべきである。例えば、濃度範囲が、1%~50%と記載される場合、それは、2%~40%、10%~30%、又は1%~3%などの値が本明細書に明白に列挙されていることを意図している。これらは、特に意図するものの単なる例である。
【0043】
化合物
第一の態様では、式(I)の化合物又はその医薬的に許容される塩が提供される。式(I)の実施形態は、X、R、R、R2’、及びR、並びにこれらのいずれかの組み合わせの以下の記述を含む。
【0044】
式(I)のある実施形態では、Rがカルボン酸エステル若しくはカルボン酸エステル等価体である場合、Rは、OHであり;並びに/又はRがH、F、Cl、Br、-OC1-4アルキル、-C≡CH、若しくはシクロプロピルである場合、Rは、カルボン酸エステル若しくはカルボン酸エステル等価体ではなく;並びに/又は、Rが-C≡CHである場合、Rは、カルボン酸アミド、カルボン酸チオエステル、
【0045】
【化4】
【0046】
ではなく、ここで、R10及びR11は、独立して、H若しくはC1-6アルキルであり;並びに/又はRが-C≡CHである場合、Rは、COOHではなく;並びに/又は、R及びR2’の両方がHであり;Xは、C-H、C-F、C-Br、又はC-Iであり;並びにRは、H、F、Cl、又はBrである場合、Rは、COOH、カルボン酸エステル、カルボン酸アミド、又はカルボン酸チオエステルではない。ある実施形態では、式(I)の化合物は、(R)-8-エチニル-6-(2-フルオロフェニル)-4-メチル-4H-ベンゾ[f]イミダゾ[1,5-a][1,4]ジアゼピン-3-カルボン酸ではない。ある実施形態では、Rが-C≡CHであり、R又はR2’が、独立して、H又はC1-4アルキルである場合、Rは、COOHではない。
【0047】
式(I)の実施形態では、本明細書で述べるように、Xは、C-H、C-F、C-Cl、C-Br、C-I、C-CF、又はNである。さらなる実施形態では、Xは、C-H、C-F、C-Cl、C-Br、C-I、又はNである。さらなる実施形態では、Xは、C-H、C-F、C-Cl、C-Br、又はNである。
【0048】
式(I)の実施形態では、本明細書で述べるように、R及びR2’は、各々独立して、H、D、C1-4アルキル、CD、F、Cl、CF、CCl、若しくはシクロプロピルであるか;又はR及びR2’が一緒になって、所望に応じて置換されていてよい環を形成する。さらなる実施形態では、R及びR2’は、各々独立して、H、C1-4アルキル、F、Cl、CF、CCl、若しくはシクロプロピルであるか;又はR及びR2’が一緒になって環を形成する。さらなる実施形態では、R及びR2’は、各々独立して、H、C1-4アルキル、F、Cl、CF、若しくはCClであるか;又はR及びR2’が一緒になって環を形成する。なおさらなる実施形態では、R及びR2’は、各々独立して、H、D、CH、CD、CF、若しくはシクロプロピルであるか;又はR及びR2’が一緒になって、C3-6シクロアルキル(例:シクロプロピル)を形成する。なおさらなる実施形態では、R及びR2’は、一緒になって、CH、F、OH、OCH、オキソ、及びCFから成る群より独立して選択される1~4つの置換基によって所望に応じて置換されていてもよいC3-6シクロアルキルを形成する。
【0049】
式(I)の実施形態では、本明細書で述べるように、Rは、H、F、Cl、Br、CF、CHF、-OCF、-OCHF、CN、OH、-OC1-4アルキル、-C≡CH、又はシクロプロピルである。さらなる実施形態では、Rは、H、F、Cl、Br、OH、OCH、-C≡CH、又はシクロプロピルである。さらなる実施形態では、Rは、H、F、Cl、OCH、又は-C≡CHである。なおさらなる実施形態では、Rは、OHであり、ここで、X、R、R、及びR2’、並びにこれらの組み合わせは、本明細書で述べる通りである。ある実施形態では、Rは、OHである。
【0050】
さらなる実施形態では、Rは、OHであり;Xは、C-H、C-F、C-Cl、C-Br、C-I、又はNであり;R及びR2’は、各々独立して、C1-4アルキル、F、Cl、CF、CCl、若しくはシクロプロピルから選択されるか、又は一緒になって環を形成し;Rは、本明細書で定められる。なおさらなる実施形態では、R及びR2’は、一緒になって、CH、F、OH、OCH、オキソ、及びCFから成る群より独立して選択される1~4つの置換基によって所望に応じて置換されていてもよいC3-6シクロアルキルを形成する。ある実施形態では、1又は複数の水素は、重水素で置き換えられてもよい。適切には、化合物は、S-異性体であってよい。別の選択肢として、化合物は、R-異性体であってもよい。
【0051】
式(I)の実施形態は、式(I-A)の化合物を含み、
【0052】
【化5】
【0053】
式中、Rは、D、C1-4アルキル、CD、F、Cl、CF、CCl、若しくはシクロプロピルであり、X、R、及びRとの組み合わせは、本明細書で述べる通りである。式(I-A)の実施形態のいくつかでは、Rは、D、CH、CD、CF、又はシクロプロピルである。上記に従う式(I-A)のある実施形態では、Rは、OHである。
【0054】
式(I)の実施形態は、式(I-B)の化合物を含み、
【0055】
【化6】
【0056】
式中、R2’は、D、C1-4アルキル、CD、F、Cl、CF、CCl、若しくはシクロプロピルであり、X、R、及びRとの組み合わせは、本明細書で述べる通りである。式(I-B)の実施形態のいくつかでは、R2’は、D、CH、CD、CF、又はシクロプロピルである。上記に従う式(I-B)のある実施形態では、Rは、OHである。
【0057】
式(I)の実施形態は、式(I-C)の化合物を含み、
【0058】
【化7】
【0059】
式中、X、R、及びR、並びにこれらの組み合わせは、本明細書で述べる通りである。上記に従う式(I-C)のある実施形態では、Rは、OHである。
X、R、R2’、及びRのある組み合わせでは、Xは、C-H、C-F、C-Cl、C-Br、C-I、又はNであり;Rは、C1-4アルキル、CD、F、Cl、CF、CCl、又はシクロプロピルであり;R2’は、H又はDであり;並びにRは、H、F、Cl、Br、OH、OCH、-C≡CH、又はシクロプロピルである。実施形態のいくつかでは、Rは、C1-4アルキル(例:CH)である。さらなる実施形態では、Rは、H、F、Cl、Br、OH、OCH、又はシクロプロピルであり、Rは、C1-4アルキルである。上述とのさらなる組み合わせでは、Rは、COOHである。
【0060】
ある実施形態では、本発明は、式(I)に従う化合物を提供し、式中、Rは、カルボン酸等価体であり;Xは、C-H、C-F、C-Cl、C-Br、C-I、又はNであり;R及びR2’は、独立して、H、C1-4アルキル、F、Cl、CF、CCl、若しくはシクロプロピルから選択されるか、又は一緒になって環を形成し;並びにRは、H、F、Cl、Br、OMe、-C≡CH、若しくはシクロプロピルから選択される。なおさらなる実施形態では、R及びR2’は、一緒になって、CH、F、OH、OCH、オキソ、及びCFから成る群より独立して選択される1~4つの置換基によって所望に応じて置換されていてもよいC3-6シクロアルキルを形成する。実施形態では、R及びR2’は、H及び(R)-Me、又はH及び(S)-Meであるか、又はR及びR2’の両方がHである。ある実施形態では、1又は複数の水素は、重水素で置き換えられてもよい。適切には、化合物は、S-異性体であってよい。別の選択肢として、化合物は、R-異性体であってもよい。
【0061】
式(I)の別の実施形態では、Rは、COOHであり;Xは、C-H、C-F、C-Cl、C-Br、C-I、又はNであり;R及びR2’は、独立して、C1-4アルキル、F、Cl、CF、CCl、若しくはシクロプロピルから選択されるか、又は一緒になって環を形成し;並びにRは、H、F、Cl、Br、OMe、-C≡CH、Br、若しくはシクロプロピルから選択される。なおさらなる実施形態では、R及びR2’は、一緒になって、CH、F、OH、OCH、オキソ、及びCFから成る群より独立して選択される1~4つの置換基によって所望に応じて置換されていてもよいC3-6シクロアルキルを形成する。ある実施形態では、1又は複数の水素は、重水素で置き換えられてもよい。適切には、化合物は、S-異性体であってよい。別の選択肢として、化合物は、R-異性体であってもよい。
【0062】
別の態様では、式(II)の化合物又はその医薬的に許容される塩が提供される。式(II)の実施形態は、X、R、及びR、並びにこれらの組み合わせの以下の記述を含む。
【0063】
式(II)の化合物のある実施形態では、RがCOOH、カルボン酸エステル、カルボン酸アミド、又はカルボン酸チオエステルである場合、Rは、OHである。他の実施形態では、RがCOOHである場合、Rは、OHである。他の実施形態では、Rは、カルボン酸エステル、カルボン酸アミド、又はカルボン酸チオエステルではない。他の実施形態では、Rが-OC1-4アルキル又はOHである場合、Rは、カルボン酸エステル、カルボン酸アミド、又はカルボン酸チオエステルではない。ある実施形態では、式(II)の化合物は、エチル(S)-7-ヒドロキシ-9-オキソ-11,12,13,13a-テトラヒドロ-9H-ベンゾ[e]イミダゾ[5,1-c]ピロロ[1,2-a][1,4]ジアゼピン-1-カルボキシレートではない。
【0064】
式(II)の実施形態では、本明細書で述べるように、Rは、H、F、Cl、Br、CF、CHF、-OCF、-OCHF、CN、OH、-OC1-4アルキル、-C≡CH、又はシクロプロピルである。さらなる実施形態では、Rは、H、F、Cl、Br、OH、-OCH、-C≡CH、又はシクロプロピルである。さらなる実施形態では、Rは、H、F、Cl、Br、-OCH、又は-C≡CHである。さらなる実施形態では、Rは、H、F、Cl、-OCH、又は-C≡CHである。なおさらなる実施形態では、Rは、OHである。さらなる実施形態では、Rは、OHであり、ここで、X、及びR、並びにこれらの組み合わせは、本明細書で述べる通りである。
【0065】
特定の組み合わせでは、Rは、カルボン酸等価体であり、Rは、H、F、Cl、Br、CF、CHF、-OCF、-OCHF、CN、-OC1-4アルキル、-C≡CH、又はシクロプロピルである。他の組み合わせでは、Rは、COOH、カルボン酸エステル、カルボン酸等価体、又はカルボン酸エステル等価体であり;Rは、OHである。
【0066】
式(II)の実施形態は、式(II-A)の化合物を含み、
【0067】
【化8】
【0068】
式中、X、R、及びRは、本明細書で述べる通りである。上記に従う式(II-A)の実施形態のいくつかでは、Rは、OHである。特定の組み合わせでは、Rは、カルボン酸等価体であり、Rは、H、F、Cl、Br、CF、CHF、-OCF、-OCHF、CN、-OC1-4アルキル、-C≡CH、又はシクロプロピルである。特定の組み合わせでは、Rは、カルボン酸等価体であり、Rは、H、F、Cl、Br、OH、-OCH、-C≡CH、又はシクロプロピルである。他の組み合わせでは、Rは、COOH、カルボン酸エステル、カルボン酸等価体、又はカルボン酸エステル等価体であり;Rは、OHである。
【0069】
式(II)の実施形態は、式(II-B)の化合物を含み、
【0070】
【化9】
【0071】
式中、X、R、及びRは、本明細書で述べる通りである。上記に従う式(II-B)の実施形態のいくつかでは、Rは、OHである。特定の組み合わせでは、Rは、カルボン酸等価体であり、Rは、H、F、Cl、Br、CF、CHF、-OCF、-OCHF、CN、-OC1-4アルキル、-C≡CH、又はシクロプロピルである。特定の組み合わせでは、Rは、カルボン酸等価体であり、Rは、H、F、Cl、Br、OH、-OCH、-C≡CH、又はシクロプロピルである。他の組み合わせでは、Rは、COOH、カルボン酸エステル、カルボン酸等価体、又はカルボン酸エステル等価体であり;Rは、OHである。
【0072】
特に断りのない限り、本明細書で述べる実施形態は、RがCOOHであるさらなる実施形態を含む。特に断りのない限り、本明細書で述べる実施形態は、Rがカルボン酸エステルであるさらなる実施形態を含む。ある実施形態では、カルボン酸エステルは、-C(O)OC1-6アルキル又は-C(O)OC3-6シクロアルキルである。特に断りのない限り、本明細書で述べる実施形態は、Rがカルボン酸等価体であるさらなる実施形態を含む。特に断りのない限り、本明細書で述べる実施形態は、Rがカルボン酸エステル等価体であるさらなる実施形態を含む。
【0073】
本明細書で述べる実施形態には、Rが、
【0074】
【化10】
【0075】
であるなおさらなる実施形態が含まれ、ここで、R10、R11、及びR12は、独立して、H、D、又はC1-6直鎖状若しくは環状の飽和若しくは置換アルキル基から選択される。
【0076】
本明細書で述べる実施形態には、Rが、
【0077】
【化11】
【0078】
であるなおさらなる実施形態が含まれる。上述のR基のメンバーは、「カルボン酸等価体」の用語に含まれる。さらなる実施形態では、Rは、
【0079】
【化12】
【0080】
である。
なおさらなる実施形態及び組み合わせでは、R10、R11、及びR12は、独立して、H、D、C1-6アルキル、又はC3-6シクロアルキルである。
【0081】
なおさらなる実施形態では、Rは、テトラゾール(例:
【0082】
【化13】
【0083】
)である。
上述によると、カルボン酸エステル等価体としては、
【0084】
【化14】
【0085】
が挙げられる。
別の態様では、本発明は:
(R)-8-エチニル-6-(2-フルオロフェニル)-4-メチル-4H-ベンゾ[f]イミダゾ[1,5-a][1,4]ジアゼピン-3-カルボン酸(SH-053-2’F-R-CH酸);
(R)-8-ブロモ-6-(2-フルオロフェニル)-4-メチル-4H-ベンゾ[f]イミダゾ[1,5-a][1,4]ジアゼピン-3-カルボン酸(GL-II-93);
(R)-8-シクロプロピル-6-(2-フルオロフェニル)-4-メチル-4H-ベンゾ[f]イミダゾ[1,5-a][1,4]ジアゼピン-3-カルボン酸(GL-III-43);
(R)-8-クロロ-6-(2-フルオロフェニル)-4-メチル-4H-ベンゾ[f]イミダゾ[1,5-a][1,4]ジアゼピン-3-カルボン酸(GL-III-54);
(R)-8-ブロモ-4-メチル-6-(ピリジン-2-イル)-4H-ベンゾ[f]イミダゾ[1,5-a][1,4]ジアゼピン-3-カルボン酸(GL-II-51);
(R)-8-エチニル-4-メチル-6-(ピリジン-2-イル)-4H-ベンゾ[f]イミダゾ[1,5-a][1,4]ジアゼピン-3-カルボン酸(GL-II-30);
(S)-7-メトキシ-1-(1H-テトラゾール-5-イル)-11,12,13,13a-テトラヒドロ-9H-ベンゾ[e]イミダゾ[5,1-c]ピロロ[1,2-a][1,4]ジアゼピン-9-オン(RJ-03-57);
(S)-N,7-ジメトキシ-9-オキソ-11,12,13,13a-テトラヒドロ-9H-ベンゾ[e]イミダゾ[5,1-c]ピロロ[1,2-a][1,4]ジアゼピン-1-カルボキシアミド(MRS-III-87);
(S)-N-シアノ-7-メトキシ-9-オキソ-11,12,13,13a-テトラヒドロ-9H-ベンゾ[e]イミダゾ[5,1-c]ピロロ[1,2-a][1,4]ジアゼピン-1-カルボキシアミド(MRS-III-90);
エチル(S)-7-ヒドロキシ-9-オキソ-11,12,13,13a-テトラヒドロ-9H-ベンゾ[e]イミダゾ[5,1-c]ピロロ[1,2-a][1,4]ジアゼピン-1-カルボキシレート(RJ-02-50);
(S)-7-ヒドロキシ-9-オキソ-11,12,13,13a-テトラヒドロ-9H-ベンゾ[e]イミダゾ[5,1-c]ピロロ[1,2-a][1,4]ジアゼピン-1-カルボン酸(RJ-03-90);
(S)-7-ヒドロキシ-1-(オキサゾール-5-イル)-11,12,13,13a-テトラヒドロ-9H-ベンゾ[e]イミダゾ[5,1-c]ピロロ[1,2-a][1,4]ジアゼピン-9-オン(RJ-03-30);及び
tert-ブチル(S)-7-ヒドロキシ-9-オキソ-11,12,13,13a-テトラヒドロ-9H-ベンゾ[e]イミダゾ[5,1-c]ピロロ[1,2-a][1,4]ジアゼピン-1-カルボキシレート(RJ-02-67);
から成る群より選択される化合物又はその医薬的に許容される塩を提供する。
【0086】
別の態様では、本発明は:
5-(8-エチニル-6-(ピリジン-2-イル)-4H-ベンゾ[f]イミダゾ[1,5-a][1,4]ジアゼピン-3-イル)オキサゾール(KRM-II-81);
5-(8-エチニル-6-フェニル-4H-ベンゾ[f]イミダゾ[1,5-a][1,4]ジアゼピン-3-イル)オキサゾール(KRM-II-82);
5-(8-エチニル-6-(2-フルオロフェニル)-4H-ベンゾ[f]イミダゾ[1,5-a][1,4]ジアゼピン-3-イル)オキサゾール(KRM-II-18B);
メチル(R)-8-エチニル-6-(2-フルオロフェニル)-4-メチル-4H-ベンゾ[f]イミダゾ[1,5-a][1,4]ジアゼピン-3-カルボキシレート(MP-III-004);
(R)-8-エチニル-6-(2-フルオロフェニル)-N,4-ジメチル-4H-ベンゾ[f]イミダゾ[1,5-a][1,4]ジアゼピン-3-カルボキシアミド(MP-III-022);
エチル-1,1-d8-エチニル-6-(ピリジン-2-イル)-4H-ベンゾ[f]イミダゾ[1,5-a][1,4]ジアゼピン-3-カルボキシレート(MP-III-068);
5-(8-エチニル-6-(ピリジン-2-イル)-4H-ベンゾ[f]イミダゾ[1,5-a][1,4]ジアゼピン-3-イル)-3-メチル-1,2,4-オキサジアゾール(MP-III-085);
3-エチル-5-(8-エチニル-6-(ピリジン-2-イル)-4H-ベンゾ[f]イミダゾ[1,5-a][1,4]ジアゼピン-3-イル)-1,2,4-オキサジアゾール(MP-III-080);
エチル8-エチニル-6-フェニル-4H-ベンゾ[f]イミダゾ[1,5-a][1,4]ジアゼピン-3-カルボキシレート(XHe-II-053);
エチル8-エチニル-6-(ピリジン-2-イル)-4H-ベンゾ[f]イミダゾ[1,5-a][1,4]ジアゼピン-3-カルボキシレート(HZ-166);及び
エチル8-エチニル-6-(2-フルオロフェニル)-4H-ベンゾ[f]イミダゾ[1,5-a][1,4]ジアゼピン-3-カルボキシレート(JY-XHe-053);
から成る群より選択される化合物又はその医薬的に許容される塩を提供する。
【0087】
本発明に従う化合物において、その基及び置換基は、選択及び置換の結果として、転位、環化、脱離などによる自発的な変換を起こすことのない化合物を例とする安定な化合物が得られるように、原子及び置換基の許容される価数に従って選択され得る。
【0088】
置換基が、左から右に記載されるその従来の化学式によって指定される場合、それらは、所望に応じて、右から左に構造を記載することによる置換基も包含するものであり、例えば、-CHO-は、所望に応じて-OCH-も意味する。
【0089】
本発明に従う化合物は、1又は複数の同位体濃縮原子が存在していることのみが異なる化合物を含む。例えば、化合物は、水素を重水素若しくは三重水素で置き換えたこと以外は、又は炭素を13C-若しくは14C-濃縮炭素で置き換えたこと以外は本発明の構造を有し得る。
【0090】
本発明に従う化合物は、医薬的に許容される塩を例とする塩の形態であってよい。「医薬的に許容される塩」の用語は、化合物上に見出される特定の置換基に応じて、比較的無毒性である酸又は塩基を用いて作製される活性化合物の塩を含む。本発明の化合物の適切な医薬的に許容される塩としては、本発明に従う化合物の溶液を、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酢酸、安息香酸、シュウ酸、クエン酸、酒石酸、炭酸、又はリン酸などの医薬的に許容される酸の溶液と混合することによって例えば形成され得る酸付加塩が挙げられる。さらに、本発明の化合物が酸性部分を有する場合、その適切な医薬的に許容される塩としては、アルカリ金属塩、例えばナトリウム塩又はカリウム塩、アルカリ土類金属塩、例えばカルシウム塩又はマグネシウム塩、及び適切な有機リガンドと共に形成される塩、例えば四級アンモニウム塩が挙げられ得る。
【0091】
化合物の中性の形態は、塩を塩基又は酸と接触させ、従来の方法で親化合物を単離することによって作製され得る。化合物の親形態は、極性溶媒中の溶解度などのある特定の物理的特性において様々な塩の形態と異なるが、それ以外では、塩は、本開示の目的のために、化合物の親形態と同等である。
【0092】
塩形態に加えて、本発明はまた、プロドラッグ形態の本発明に従う化合物も提供し得る。化合物のプロドラッグとは、生理学的条件下で容易に化学変化を起こして、活性化合物をもたらす化合物である。プロドラッグは、生体外環境中での化学的又は生化学的方法によって、本発明の化合物に変換され得る例えば、プロドラッグは、適切な酵素又は化学試薬と共に経皮パッチリザーバー中に置かれると、ゆっくり本発明の化合物に変換され得る。
【0093】
本明細書で述べる化合物は、不斉(又はキラル)中心が存在する立体異性体として存在してもよい。これらの立体異性体は、キラル炭素原子を中心とする置換基の立体配置に応じて、「R」又は「S」となる。本明細書で用いられる「R」及び「S」の用語は、IUPAC 1974 Recommendations for Section E,Fundamental Stereochemistry,Pure Appl.Chem.,1976,45:13-30に定められる通りの立体配置である。
【0094】
本発明に従う化合物は、例えば、本明細書で述べる立体異性体のエナンチオマー的に濃縮された異性体であってよい。エナンチオマーとは、本明細書で用いられる場合、その分子構造が互いに対して鏡像の関係にある1対の化学化合物のいずれかを意味する。例えば、化合物は、少なくとも約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%のエナンチオマー過剰率を有し得る。
【0095】
本発明に従う化合物の製剤は、選択された立体中心に対応するR又はSを例とする選択された立体化学を有する化合物の異性体について濃縮されてよい。例えば、化合物は、選択された立体中心の選択された立体化学を有する化合物に対応する、少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%の純度を有してよい。例えば、化合物は、選択された立体中心でのR又はSを例とする選択された立体化学を有する構造について濃縮された本明細書で開示される化合物の製剤を含んでよい。
【0096】
ある実施形態では、本発明に従う化合物の製剤は、その化合物のジアステレオマーである異性体(目的の異性体)について濃縮されてよい。ジアステレオマーとは、本明細書で用いられる場合、同じ化合物の別の立体異性体と鏡像関係にない2つ以上のキラル中心を有する化合物の立体異性体を意味する。例えば、化合物は、選択されたジアステレオマーを有する化合物に対応する、少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%の純度を有してよい。
【0097】
化合物の任意の立体中心での立体配置について特に示されない場合、立体配置のいずれか1つ又は立体配置の混合物を意図している。本明細書中の式は、考え得る互変異性体の1つのみを表し得る。いずれの互変異性体及びその混合物も本明細書において包含されものとして理解されるべきであり、化合物の命名又は式の範囲内で用いられるいずれか1つの互変異性体のみに限定されるべきではない。
【0098】
化合物は、ラセミ体として、又は立体特異的合成若しくは分割のいずれかによって個々のエナンチオマー若しくはジアステレオマーとして作製されてもよい。化合物は、例えば、標準的な技術によってその成分であるエナンチオマー又はジアステレオマーに分割されてよく、光学活性塩基を用いた塩形成によって立体異性体対の形成、並びにそれに続く分別再結晶及び遊離酸の再生などによる。化合物はまた、立体異性体のエステル又はアミドの形成、並びにそれに続くクロマトグラフィ分離、及びキラル助剤の除去によって分割されてもよい。別の選択肢として、化合物は、キラルHPLCカラムを用いて分割されてもよい。エナンチオマーはまた、リパーゼ酵素を用いた対応するエステルのラセミ体の速度論的分割から得られてもよい。
【0099】
本発明に従う化合物はまた、選択的生物学的特性を高めるために、適切な官能基を付加することによって修飾されてもよい。そのような修飾は、本技術分野において公知であり、任意の生物学的系(例:血液、リンパ系、中枢神経系)への生物学的透過率を高める、経口による利用度を高める、注射投与を可能とするために溶解度を高める、代謝を改変する、及び/又は排出速度を改変する修飾が挙げられる。これらの修飾の例としては、限定されないが、ポリエチレングリコールによるエステル化、ピバレート(pivolates)若しくは脂肪酸置換基による誘導体化、カルバメートへの変換、芳香族環のヒドロキシル化、及び芳香族環におけるヘテロ原子置換が挙げられる。
【0100】
本発明に従う化合物はまた、「ソフトドラッグ」として構成されてもよい。ソフトドラッグは、その所望される治療効果を達成した後、不活性種への予測可能かつ制御可能である生体内代謝を有する生物学的活性化合物として定義され得る。すなわち、本発明の化合物は、肺又は他の標的組織中での化合物の迅速な代謝を可能とする部分を有してよい。肺では、複数のチトクロムアイソフォーム、さらにはスルホトランスフェラーゼ、UDPグルクロノシルトランスフェラーゼ、グルタチオンS-トランスフェラーゼ、エステラーゼ、ペプチダーゼ、シクロオキシゲナーゼ、及びフラビンモノオキシゲナーゼなどの他の生体内変換酵素が見出されている。広範囲にわたる生体内変換酵素が、不安定なエステル官能基を有する化合物を例とする広い範囲の化学的に異なる基質の代謝を可能としている。ソフトドラッグは、その部分を持たない化合物よりも短い全身半減期を有することになり、望ましくない全身作用(CNS組織への分布など)を制限し得る。
【0101】
化合物の合成
式(I)及び(II)の化合物は、市販の出発物質を用いて合成され得る。例示的な合成は、スキーム1~5、及び(Cook, J.M., Zhou, H., Huang S., Sarma, P.V.V.S., Zhang, C., 2009. Stereospecific anxiolytic and anticonvulsant agents with reduced muscle-relaxant, sedative hypnotic and ataxic effects、PCT国際公開第2006/004945(A1)号、米国特許第7,618,958号)にまとめて示される。
【0102】
【化15】
【0103】
【化16】
【0104】
【化17】
【0105】
【化18】
【0106】
【化19】
【0107】
式(II)の化合物は、市販の出発物質を用いて合成することができる。例示的な合成は、本明細書の例、及び(Jahan et al. European J. Med Chem. 2017, 126, 550-560)に示されている。
【0108】
本明細書における式の化合物を合成する他の方法は、当業者にとって明らかである。化合物の合成に有用である合成化学変換及び保護基による方法(保護及び脱保護)は、本技術分野において公知であり、例えば、R. Larock, Comprehensive Organic Transformations, VCH Publishers (1989);T.W. Greene and P.G.M. Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, 2d. Ed., John Wiley and Sons (1991);L. Fieser and M. Fieser, Fieser and Fieser's Reagents for Organic Synthesis, John Wiley and Sons (1994);並びにL. Paquette, ed., Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis, John Wiley and Sons (1995)、及びその後の版に記載のものなどが挙げられる。
【0109】
化合物の評価
化合物は、受容体結合実験及び生体内法を含む数多くの方法を用いて分析することができる。。
【0110】
例えば、化合物のGABAサブユニット選択性は、例えば、競合結合アッセイを用いて評価することができる。そのようなアッセイは、(Choudhary et al. Mol Pharmacol. 1992, 42, 627-33;Savic et al. Progress in Neuro-Psychopharmacology & Biological Psychiatry, 2010, 34, 376-386)に記載されている。このアッセイは、[H]フルニトラゼパムなどのGABA受容体と結合することが知られている放射標識化合物の使用を含む。膜タンパク質を回収して放射標識化合物とインキュベートしてよく、放射標識化合物の結合を、別の非標識化合物(例:ジアゼパム)と比較することによって、非特異的結合が評価され得る。結合した放射活性は、液体シンチレーション測定によって定量され得る。膜タンパク質濃度は、市販のアッセイキット(例:Bio-Rad、ハーキュリーズ、カリフォルニア州から)を用いて特定され得る。
【0111】
化合物はまた、特定のGABARサブタイプを過剰発現するアフリカツメガエル卵母細胞又はHEK293T細胞中での電気生理学アッセイでも評価され得る。化合物は、GABAの添加前に細胞に予め適用されてよく、その後GABAは、ピーク応答が観察されるまで化合物と共に共適用されてよい。適用間において、脱感作からの完全な回復を確実とするために、細胞が洗浄されてよい。電流測定については、マイクロ電極を細胞に刺入してよく、電圧固定を用いて記録が行われる。
【0112】
本明細書で述べる化合物は、内在性気道平滑筋GABA受容体と結合して、コリン作動性気道平滑筋収縮の緩和を強めるGABA受容体リガンドであり得る。これは、α4及びα5サブユニットでのベンゾジアゼピンアロステリック調節部位に対するターゲティングの増加に起因する。化合物は、GABA/α4及び/又はGABA/α5アロステリック調節部位に対して、GABA/α1、GABA/α2、及びGABA/α3と比較して少なくとも2倍、適切には少なくとも5倍、有利には少なくとも10倍の選択的有効性を有し得る。しかし、GABA/α4及び/又はGABA/α5受容体上のベンゾジアゼピンアロステリック調節部位に対して選択的ではない化合物も、本発明の範囲内に包含される。そのような化合物は、望ましくは、他のGABA受容体のベンゾジアゼピンアロステリック調節部位での有効性の低下を示すことによって、機能的選択性を呈することになる。
【0113】
選択的又は優先的治療剤は、GABA/α4又はGABA/α5サブユニット上のベンゾジアゼピンアロステリック調節部位と比較して、GABA受容体上の他のベンゾジアゼピンアロステリック調節部位に対する低い結合親和性又は有効性を有する。別の選択肢として、剤は、すべてのGABA受容体上のベンゾジアゼピンアロステリック調節部位を同等の親和性で標的とするが、GABA/α及びGABA/α受容体上のベンゾジアゼピンアロステリック調節部位に対して、他のGABA受容体上のベンゾジアゼピンアロステリック調節部位と比較して優先的な有効性を発揮する。本発明の選択的な剤はまた、GABA/α及びGABA/α受容体と比較して、他のGABA受容体上のベンゾジアゼピンアロステリック調節部位と結合するより高い又はより低い能力も有し得る。
【0114】
化合物を評価するための他の方法は、当業者に公知である。化合物の望ましくない副作用(毒性)を評価するために、神経機能又は筋肉機能の障害の明白な徴候について動物がモニタリングされてよい。マウスの場合、最小限の筋肉又は神経の障害を明らかにするために、ロータロッド手順(Dunham, M. S. et al. J. Amer. Pharm. Ass. Sci. Ed. 1957, 46, 208-209)が用いられる。マウスを6回転毎分(rpm)の速度で回転するロッド上に置くと、動物は、長時間にわたってその平衡を維持することができる。動物が、回転するロッドから1分間の間に3回落下した場合、化合物は、毒性であると見なされる。ラットの場合、最小限の運動障害は、運動失調によって示され、これは、異常でぎこちない歩行運動として現れる。個々の動物は、歩行運動、平衡、置き直し反応などに特殊性を有する場合があり、それらが試験物質に対する誤差に寄与する可能性があることから、毒性を評価するために用いられるラットは、試験薬物が投与される前に検査される。動物は、円形又はジグザグの歩行運動、異常な体位及び脚を伸ばす動き、振戦、運動亢進、探索行動の欠如、傾眠、昏迷、カタレプシー、置き直し反応の喪失、及び筋緊張の変化を呈し得る。
【0115】
本明細書で述べる化合物は、喘息の動物モデルにおいて気道過敏を低減し得る。したがって、マウスは、2mgに乳化させた卵白アルブミン(Ova)の2mg/kg/日の腹腔内(i.p.)注射を、第0、7、及び14日に合計100μLの体積で3回行うことによって感作され得る。加えて、マウスは、第23~27日の5日間にわたって1mg/kg/日のOvaによって鼻腔内(i.n.)チャレンジされ得る。コントロールマウスは、Ovaで感作され、生理食塩水でチャレンジされ得る。気道過敏の測定は、特異的気道抵抗(sRaw)の計算を可能とする胸部チャンバーと組み合わされた鼻部チャンバーから成るDSIのBuxco(登録商標)FinePointe Non-Invasive Airway Mechanics(NAM)測定器を用いて行われ得る。処理済みの意識があり自発的に呼吸しているOva S/Cマウスが、エアロゾル化されたリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(ベースライン測定のために)又はメタコリン(1.5625~12.5mg/mL)に1分間曝露されてよく、各噴霧後の3分間にわたって測定値(sRaw)が読み取られて平均され得る。
【0116】
Ova S/Cマウスの気管支肺胞洗浄液(BALF)中における、化合物に起因する特定の免疫細胞の数の変化が調べられ得る。したがって、気管支肺胞洗浄、及び続いて赤血球細胞の溶解が行われ得る。細胞型特異的抗体をBALFと共にインキュベートすることによって、好酸球及びCD4Tリンパ球などの白血球のサイトメトリーを用いた定量が可能となり得る。
【0117】
化合物とCD4T細胞との間の直接の相互作用が、電気生理学によって調べられ得る。したがって、CD4T細胞は、喘息マウスの脾臓から単離されて、自動パッチクランプ実験の過程で化合物を用いて処理され得る。
【0118】
Ova S/Cマウスの肺における、化合物に起因するサイトカイン発現の変化が調べられ得る。したがって、処理済み及び未処理の喘息マウスの肺が、採取され、ホモジナイズされ、遠心分離によって透明化され得る。サイトカインは、特異的抗体及びフローサイトメトリーを用いて識別及び定量され得る。
【0119】
動物における化合物の薬物動態特性が調べられ得る。したがって、動物は、異なる時間間隔で化合物に曝露され得る。化合物濃度の定量は、特定の調製プロトコル、及びそれに続く質量分析を用いた定量を用いて、血液、肺、及び脳について行われ得る。
【0120】
化合物の細胞毒性は、HEK293ヒト胚腎細胞を増加する濃度の化合物で24~48時間にわたって処理し、続いてCell-Titer Glo(Promega)を用いて生細胞を定量することによって評価され得る。
【0121】
組成物及び投与経路
別の態様では、本発明は、医薬的に許容されるキャリアと共に本発明の1又は複数の化合物を含む医薬組成物を提供する。そのような組成物は、経口、非経口、鼻腔内、舌下、若しくは直腸内投与用、又は吸入若しくは吹込による投与用の錠剤、丸剤、カプセル剤、粉末剤、顆粒剤、滅菌非経口溶液剤若しくは懸濁剤、定量エアロゾル若しくは液体噴霧剤、ドロップ剤、アンプル剤、自動インジェクタ装置、又は坐剤などの単位剤形であってよい。化合物が、薬物の適切な量を連続的に送達するように設計された経皮パッチに組み込まれてよいことも想定される。錠剤などの固体組成物を作製する場合、主活性成分が、トウモロコシデンプン、ラクトース、スクロース、ソルビトール、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、リン酸二カルシウム、又はガムなどの従来の打錠成分を例とする医薬キャリア、及び水を例とする他の医薬希釈剤と混合されて、本発明の化合物又はその医薬的に許容される塩の均質な混合物を含有する固体予備調合組成物が形成される。これらの予備調合組成物が均質であると称される場合、それは、活性成分が組成物全体に均一に分散されており、それによって、組成物が、錠剤、丸剤、及びカプセル剤などの同等に有効である単位剤形に容易に細分割することができることを意味する。次に、この固体予備調合組成物は、本発明の活性成分の0.1~約500mgを含有している上記で述べた種類の単位剤形に細分割される。典型的な単位剤形は、1、2、5、10、25、50、又は100mgを例とする1~100mgの活性成分を含有している。新規な組成物の錠剤又は丸剤は、剤形に持続的な作用という利点を付与するために、コーティング、又はそうでなければ配合されてよい。例えば、錠剤又は丸剤は、内部用量成分及び外部用量成分を含んでいてよく、後者は、前者の上のエンベロープの形態である。これら2つの成分は、胃での崩壊に耐えるように作用し、内部成分が十二指腸へ無傷で送られるか、又は内部成分の放出が遅延されることを可能とする腸溶層によって分離されていてよい。そのような腸溶層又はコーティングには、様々な材料が用いられてよく、そのような材料としては、いくつかのポリマー酸、並びにポリマー酸とシェラック、セチルアルコール、及び酢酸セルロースなどの材料との混合物が挙げられる。
【0122】
経口又は注射投与のために本発明の組成物が組み込まれ得る液体としては、水溶液、適切に風味付けされたシロップ、水性若しくは油性懸濁液、並びに綿実油、ゴマ油、ヤシ油、又はピーナッツ油などの食用油による香味付けされたエマルジョン、さらにはエリキシル剤、及び類似の医薬媒体が挙げられる。水性懸濁液のための適切な分散剤又は懸濁剤としては、トラガカントガム、アラビアガム、アルギネート、デキストラン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、又はゼラチンなどの合成及び天然のガムが挙げられる。
【0123】
適切な用量レベルは、1日あたり約0.01~250mg/kg、1日あたり約0.05~100mg/kg、又は1日あたり約0.05~5mg/kgである。化合物は、1日あたり1~4回のレジメンで、又は例えば経皮パッチの使用を介した連続ベースで投与されてよい。
【0124】
経鼻、頬側、直腸内、舌下、又は特に、経口投与などの腸内投与のための、及び静脈内、筋肉内、皮下、硬膜周囲、硬膜外、又はくも膜下腔内投与などの非経口投与のための医薬組成物が適している。医薬組成物は、およそ1%~およそ95%の活性成分、又はおよそ20%~およそ90%の活性成分を含む。
【0125】
冠動脈内、脳血管内、又は抹消血管内注射/注入を含む非経口投与の場合、サブユニット選択的GABAA受容体作動薬の溶液の使用が好ましく、また、例えば使用の直前に作られてよい懸濁液又は分散体、特に等張性の水溶液、分散体、又は懸濁液の使用も好ましい。医薬組成物は、滅菌されてよく、並びに/又は賦形剤、例えば保存剤、安定剤、湿潤剤、及び/若しくは乳化剤、可溶化剤、増粘剤、浸透圧調整のための塩、及び/若しくは緩衝剤を含んでよく、従来の溶解及び凍結乾燥プロセスを例とするそれ自体公知である方法で作製される。
【0126】
経口医薬製剤の場合、適切なキャリアは、特には、ラクトース、サッカロース、マンニトール、若しくはソルビトールを例とする糖、セルロース製剤、及び/又はリン酸カルシウムなどの充填剤、並びにさらにはデンプン、セルロース誘導体、及び/又はポリビニルピロリドンなどのバインダーであり、並びに/又は、所望される場合、崩壊剤、流動性調節剤(flow conditioners)、及び滑沢剤、例えばステアリン酸若しくはその塩、及び/又はポリエチレングリコールである。錠剤のコアは、適切な、所望に応じて腸溶性であるコーティングを備えていてよい。例えば、識別の目的で、又は活性成分の用量の違いを示すために、染料又は顔料が、錠剤又は錠剤コーティングに添加されてもよい。経口投与用の医薬組成物はまた、ゼラチンから成るハードカプセル、及びさらにはゼラチン、及びグリセロール又はソルビトールなどの可塑剤から成るシールされたソフトカプセルも含む。カプセルは、顆粒の形態の活性成分、又は油などの適切な液体賦形剤に溶解若しくは懸濁された活性成分を含有してよい。
【0127】
例えば1~20日間の長期間にわたる投与を可能とする経皮パッチを用いることを例とする経皮投与も考慮される。
使用方法
本発明は、式(I)若しくは(II)の化合物又は組成物、又はその塩の有効量を投与することを含む、気道狭窄を低減する方法を提供する。ある実施形態では、式(I)又は(II)の化合物は、治療用量でのジアゼパムと比較して、対象におけるベンゾジアゼピン型CNS作用を低減した。ある実施形態では、気道狭窄は麻酔中に発生する。
【0128】
本発明はさらに、式(I)若しくは(II)の化合物又は組成物、又はその医薬的に許容される塩の有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む、肺炎症を低減する方法も提供する。ある実施形態では、式(I)又は(II)の化合物は、治療用量でのジアゼパムと比較して、対象におけるベンゾジアゼピン型CNS作用を低減した。ある実施形態では、肺炎症は、喘息、慢性閉塞性肺疾患、肺気腫、嚢胞性線維症、肺線維症、気管支拡張症、線維性肺胞炎、ウェゲナー肉芽腫症、内因性肺胞炎(intrinsic alveolitis)、又は感染症に伴う。感染症は、適切には、ウィルス、細菌、及び/又は真菌の病原体によって引き起こされる。
【0129】
患者の肺炎症は、肺機能の障害、息切れ、特に激しい活動若しくは運動に伴う息切れ、咳、又は努力呼吸によって明らかとなり得る。炎症性肺疾患の診断のために、胸部x線、CTスキャン、及び肺機能検査を含む広く様々な診断ツールが用いられる。肺機能及び運動検査は、炎症によって損なわれた肺容量を特定するために用いられ得る。より確定的な炎症の診断のためには、肺からの組織サンプルが採取され得る。これは、気管支鏡検査(経気管支生検)又は気管支肺胞洗浄又は外科的肺生検を用いて採取され得る。組織学的には、炎症は、痰及び気管支肺胞洗浄液又は肺実質又は気道におけるマクロファージ、リンパ球、又は多形核細胞の数の増加を示し得る。免疫/炎症細胞の肺への遊走及び活性化は、様々な炎症細胞及び常在細胞によって分泌されるプロテアーゼ、サイトカイン、及びケモカインを含む様々な異なるメディエーターによって制御される。
【0130】
別の態様では、本発明は、式(I)若しくは(II)の化合物又は組成物、又はその医薬的に許容される塩の有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む、肺炎症に関連するリスク因子を有する対象における疾患の発症を低減する方法を提供する。ある実施形態では、式(I)又は(II)の化合物は、治療用量でのジアゼパムと比較して、対象におけるベンゾジアゼピン型CNS作用を低減した。
【0131】
数多くの因子が、炎症性肺疾患発症の可能性を高め得る:低出生体重、喘息などの病状を患う血族を有すること(したがって、遺伝的素因)、特定の遺伝子変異の存在(嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(cystic fibrosis transmembrane conductor regulator)(CFTR)遺伝子の場合など)、肥満、喫煙若しくは煙への曝露(子宮内曝露を含む)、排気ガス若しくは他の種類の環境汚染への曝露、又は工業用若しくは農業用化学物質への曝露。
【0132】
ある実施形態では、肺炎症は、喘息、慢性閉塞性肺疾患、肺気腫、嚢胞性線維症、肺線維症、気管支拡張症、線維性肺胞炎、ウェゲナー肉芽腫症、内因性肺胞炎、又は感染症に伴う。感染症は、適切には、ウィルス、細菌、及び/又は真菌の病原体によって引き起こされる。
【0133】
本発明はさらに、式(I)若しくは(II)の化合物又は組成物、又はその医薬的に許容される塩の有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む、自己免疫性疾患を患う対象において炎症を低減する方法も提供する。ある実施形態では、式(I)又は(II)の化合物は、治療用量でのジアゼパムと比較して、対象におけるベンゾジアゼピン型CNS作用を低減した。ある実施形態では、自己免疫性疾患は、関節炎、糖尿病、ループス、及びクローン病から選択される。
【0134】
以下の限定されない例は、ある態様及び実施形態の単なる実例であることを意図しており、本開示に従って行われた具体的な実験を示すものである。
実施例
例1.(R)-8-エチニル-6-(2-フルオロフェニル)-4-メチル-4H-ベンゾ[f]イミダゾ[1,5-a][1,4]ジアゼピン-3-カルボン酸(SH-053-2’F-R-CH3-酸)の合成
化合物7(2.0g、5.16mmol)をエタノール(100mL)中で撹拌し、3Mの水酸化ナトリウム(20mL、60mmol)を添加し、この溶液を加熱して1時間還流した。次に、反応溶液を室温まで冷却し、水(100mL)で希釈した。溶液を、溶媒の残りが半分となるまで減圧下に置いた。残った反応混合物を室温で撹拌し、塩酸(1M)を、生成物が析出するまで室温で滴下した。生成物をろ過し、水でリンスし、乾燥して、純粋な酸SH-053-2’F-R-CH3-酸を白色固体として得た(収率81%)。H NMR(300MHz,DMSO-d)δ 8.42(s,1H),7.94(d,1H,J=8.4Hz),7.82(d,1H,J=8.2Hz),7.56(dt,2H,J=7.8,6.5Hz),7.33(t,1H,J=7.4Hz),7.22(t,2H,J=9.3Hz),6.53(d,1H,J=7.1Hz),2.51(s,1H),1.16(d,3H,J=6.8Hz);13C NMR(75MHz,DMSO-d6)δ 164.76,162.81,158.19,140.57,136.57,135.54,134.74,133.18,132.65,131.88,129.88,129.35,125.17,123.98,121.09,116.53,116.25,83.42,82.01,49.79,15.08;HRMS(LCMS-IT-TOF)C2114FNに対する計算値(M+H)+ 360.1143,実測値 360.1140。
【0135】
例2.(R)-8-ブロモ-6-(2-フルオロフェニル)-4-メチル-4H-ベンゾ[f]イミダゾ[1,5-a][1,4]ジアゼピン-3-カルボン酸(GL-II-93)の合成
化合物4(5.1g、11.5mmol)をEtOH(150mL)に溶解し、その後、固体NaOH(0.9g、23mmol)を溶液に添加した。この反応混合物を、70℃に1時間加熱し、EtOHを減圧除去した。残った水溶液を、0℃で10分間にわたって撹拌し、次に10%のHCl水溶液を、pHが5(pH試験紙)となるまで溶液に滴下した。形成した淡白色の析出物を、溶液中に10分間放置し、次にろ過によって回収した。この固体を冷水で洗浄し、水層も室温で10時間放置して、追加の酸を得た。1つにまとめた固体を、真空オーブン中、80℃で7時間乾燥して、純粋なGL-II-93を白色粉末として得た(4g、9.7mmol、85.2%)。H NMR(500MHz,CDCl):δ 8.12(s,1H),7.73(d,J=7.6Hz,1H),7.63(s,1H),7.55(d,J=8.3Hz,1H),7.50-7.37(m,2H),7.25(t,J=7.3Hz,1H),7.07-6.99(m,1H),6.78(q,J=7.2Hz,1H),1.27(d,J=6.3Hz,3H);13C NMR(126MHz,CDCl):δ 164.94,162.87,161.09,159.09,141.28,135.04,134.91,133.59,133.08,132.51,132.12,131.34,131.11,129.38,128.16,124.57,123.91,120.40,116.30,116.13,49.83,14.91;HRMS(LCMS-IT-TOF)C1913FBrに対する計算値(M+H)+ 414.0248,実測値 414.0235。
【0136】
例3.(R)-8-シクロプロピル-6-(2-フルオロフェニル)-4-メチル-4H-ベンゾ[f]イミダゾ[1,5-a][1,4]ジアゼピン-3-カルボン酸(GL-III-43)の合成
化合物4(2.1g、4.8mmol)をトルエン(20mL)に溶解した。シクロプロピルボロン酸(1.0g、12.0mmol)及び水(1.5mL)をこの混合物に添加した。還流冷却管を取り付け、混合物を、真空下、アルゴンで脱気し、このプロセスを4回繰り返した。ビス(トリフェニルホスフィン)-パラジウム(II)アセテート(0.72g、0.96mmol)及びKPOを反応混合物に添加し、アルゴン/真空による脱気をさらに4回行った。次に、反応混合物を、アルゴン下で加熱して還流し、3時間撹拌した。反応混合物を、冷水を添加することによって反応停止し、酢酸エチルで抽出した。有機層を1つにまとめ、塩水(2×150mL)で洗浄し、NaSO上で乾燥し、溶媒を減圧除去して、褐色固体を得た。この粗固体を、カラムクロマトグラフィ(シリカゲル、酢酸エチル/ヘキサン 5:5)で精製して、純粋な化合物5をオフホワイト色固体として得た(1.2g、3.0mmol、65%)。H NMR(500MHz,CDCl)δ 7.88(s,1H),7.55(t,J=7.1Hz,1H),7.44(d,J=8.3Hz,1H),7.39(dd,J=13.3,5.8Hz,1H),7.19(dd,J=12.9,6.1Hz,2H),6.98(dd,J=18.9,9.9Hz,2H),6.64(q,J=7.2Hz,1H),4.45-4.25(m,2H),1.91-1.78(m,1H),1.38(t,J=7.1Hz,3H),1.24(d,J=7.3Hz,3H),1.04-0.88(m,2H),0.59(m,2H);13C NMR(126MHz,CDCl):δ 164.17,163.12,161.12,159.12,143.88,141.58,134.85,132.09,131.65,131.21,129.16,129.04,128.47,127.87,124.33,121.95,116.08,115.91,60.59,50.05,15.04,14.64,14.44,9.91,9.89;HRMS(LCMS-IT-TOF)C2422Fに対する計算値(M+H)+ 404.1769,実測値404.1763。
【0137】
GL-III-43を、前の手順でGL-II-93に対して概略的に述べた一般手順に従って化合物5から作製し、白色固体としてGL-III-43を得た(0.62g、1.7mmol、75%)。H NMR(500MHz,DMSO-d6)δ 8.34(s,1H),7.77(d,J=7.2Hz,1H),7.58-7.49(m,2H),7.32(m,2H),7.21(t,J=8.8Hz,1H),6.94(s,1H),6.50(q,J=5.2Hz,1H),1.93(m,J=4.1Hz,1H),1.13(d,J=6.4Hz,3H),0.95(d,J=7.7Hz,2H),0.61(m,2H);HRMS(LCMS-IT-TOF)C2218Fに対する計算値(M+H)+ 376.1456,実測値376.1453。
【0138】
例4.(R)-8-クロロ-6-(2-フルオロフェニル)-4-メチル-4H-ベンゾ[f]イミダゾ[1,5-a][1,4]ジアゼピン-3-カルボン酸(GL-III-54)の合成
GL-III-54を、上記で報告した一般手順に従って化合物8から作製し、白色固体として得た(0.93g、2.5mmol、85%)。H NMR(500MHz,DMSO-d6)δ 8.41(s,1H),7.97(d,J=8.4Hz,1H),7.84(t,J=10.0Hz,1H),7.65-7.52(m,2H),7.34(t,J=7.4Hz,1H),7.27-7.14(m,2H),6.56(q,J=7.0Hz,1H),1.17(d,J=6.9Hz,3H);HRMS(LCMS-IT-TOF)C1913FClに対する計算値(M+H)+ 370.0753,実測値370.0752。
【0139】
例5.(R)-8-ブロモ-4-メチル-6-(ピリジン-2-イル)-4H-ベンゾ[f]イミダゾ[1,5-a][1,4]ジアゼピン-3-カルボン酸(GL-II-51)の合成
GL-II-51を、上記で報告した一般手順に従って化合物9から作製し、白色固体として得た(0.87g、2.2mmol、62%)。H NMR(500MHz,DMSO-d6)δ 8.51(s,1H),8.38(s,1H),8.01(d,J=7.5Hz,1H),7.98-7.89(m,2H),7.84(d,J=7.6Hz,1H),7.47(m,2H),6.54(d,J=5.3Hz,1H),1.17(d,J=6.4Hz,3H);HRMS(LCMS-IT-TOF)C1813Brに対する計算値(M+H)+ 397.0295,実測値397.0299。
【0140】
例6.(R)-8-エチニル-4-メチル-6-(ピリジン-2-イル)-4H-ベンゾ[f]イミダゾ[1,5-a][1,4]ジアゼピン-3-カルボン酸(GL-II-30)の合成
GL-II-30を、上記で報告した一般手順に従って化合物10から作製し、白色固体として得た(1.06g、3.1mmol、60%)。1H NMR(500MHz,DMSO-d6)δ 8.57(d,J=3.8Hz,1H),8.02(dd,J=27.8,13.9Hz,2H),7.84(t,J=6.6Hz,1H),7.69(d,J=8.0Hz,1H),7.57(d,J=8.2Hz,1H),7.42(s,1H),7.40-7.31(m,1H),6.72(q,J=7.0Hz,1H),3.15(s,1H),1.25(d,J=7.0Hz,3H);HRMS(LCMS-IT-TOF)C2014に対する計算値(M+H)+ 343.1190,実測値343.1188。
【0141】
例7.(S)-7-メトキシ-1-(1H-テトラゾール-5-イル)-11,12,13,13a-テトラヒドロ-9H-ベンゾ[e]イミダゾ[5,1-c]ピロロ[1,2-a][1,4]ジアゼピン-9-オン(RJ-03-57)の合成
DIBAL-H(1.2M、6.2mL、7.4mmol)を、20mLの乾燥テトラヒドロフラン中のナトリウムtert-ブトキシド(0.76g、7.9mmol)の溶液へ、0℃で添加した。得られた混合物を、アルゴン雰囲気下、室温で1時間撹拌した。次に、化合物15(1.5g、4.4mmol)を、0℃で上記溶液に添加し、アルゴン雰囲気下、室温で3時間(又は15が完全に消費されるまで)撹拌した。その後、濃NH(28%、20mL)及びI(4.57g、18.0mmol)を0℃で添加し、得られた混合物を、室温で3時間撹拌した。アルデヒド中間体が完全に消滅した後、反応混合物を、チオ硫酸ナトリウムの飽和溶液(約10mL)で処理し、酢酸エチルで抽出した(3×30mL)。1つにまとめた有機層を塩水で洗浄し、NaSO上で乾燥し、溶媒を減圧除去した。残渣をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィ(70%、ヘキサン中の酢酸エチル)で精製して、ニトリル17を白色固体、1.225g、95%として得た。この時点で、30mLのテトラヒドロフラン中のニトリル17(0.295g、1.0mmol)の溶液へ、ZnBr(0.34g、1.50mmol)及びNaN(78mg、1.20mmol)を添加し、この混合物を、36時間(又は17が完全に消費されるまで)加熱して還流した。この溶液を、1MのHClで処理して、固体物質を溶解し、溶液のpHを1とした。溶液を酢酸エチルで抽出した(4×40mL)。溶媒を減圧蒸発させ、残渣を、ジクロロメタン中の7%メタノールでシリカの短パッドに通して、196mgのRJ-03-57、58%を得た。H NMR(300MHz,DMSO-d):δ 1.96-2.14(m,2H),2.23-2.40(m,1H),3.40-3.50(m,1H),3.5-3.66(m,1H),3.89(s,3H),3.96-4.10(m,1H),4.95(d,1H,J=8.34Hz),7.31-7.38(m,1H),7.43(d,1H,J=2.8Hz),7.69(d,1H,J=8.8Hz),8.60(s,1H);13C NMR(75MHz,DMSO-d):δ 24.7,27.9,46.6,52.3,56.3,115.1,119.2,123.5,126.0,126.5,130.9,137.7,155.4,159.3,163.3;HRMS(ESI)(M-H)C1616に対する計算値336.1360;実測値336.1357。
【0142】
例8.(S)-N,7-ジメトキシ-9-オキソ-11,12,13,13a-テトラヒドロ-9H-ベンゾ[e]イミダゾ[5,1-c]ピロロ[1,2-a][1,4]ジアゼピン-1-カルボキシアミド(MRS-III-87)の合成
化合物16(0.15g)、塩化チオニル(1mL)、及び乾燥CHCl(8mL)の混合物を、オーブン乾燥した丸底フラスコにアルゴン下で投入した。この懸濁液を、アルゴン雰囲気下、52℃(外側のオイルバス温度は60℃であった)で1時間還流させた。溶液は黄色透明となった。出発物質が存在しないことを、薄層クロマトグラフィ(TLC)(シリカゲル)で溶液を調べることによって確認した。有機溶媒及び過剰の塩化チオニルを減圧除去した。乾燥ジクロロメタン(5mL)によるこのフラッシュ蒸発を2回繰り返して、過剰の塩化チオニル及びいずれのHClをも除去した。得られた黄色残渣を乾燥CHCl(10mL)に溶解し、アルゴン下で10分間0℃に冷却した。次に、メチルヒドロキシルアミン塩酸塩(2.5当量)、続いてトリエチルアミン(5当量)を、0℃で反応混合物に添加し、次にこの混合物を室温に戻し、4時間撹拌した。反応の完了後(TLC、シリカゲル)、溶媒を減圧除去し、アセトン(4mL)を残渣に添加した。ろ過によって塩を除去し、溶媒を減圧除去して、MRS-III-87を収率70%で得た。H NMR(300MHz,CDCl)δ 2.14-2.22(m,2H),2.30-2.39(m,1H),3.08-3.10(m,1H),3.51-3.57(m,1H),3.75-3.80(m,1H),3.88(s,3H),3.91(s,3H),4.72(d,1H,J=8.0Hz),7.14(dd,1H,J=8.8Hz,2.7Hz),7.28(d,1H,J=8.8Hz),7.58(d,1H,J=2.7Hz),7.69(s,1H),9.84(bs,1H);LCMS(ESI,m/z,相対強度(ESI),C1717に対する計算値(M-H)+ 341.35;実測値 341.00。
【0143】
例9.(S)-N-シアノ-7-メトキシ-9-オキソ-11,12,13,13a-テトラヒドロ-9H-ベンゾ[e]イミダゾ[5,1-c]ピロロ[1,2-a][1,4]ジアゼピン-1-カルボキシアミド(MRS-III-90)の合成
化合物16(0.15g)、塩化チオニル(1mL)、及び乾燥CHCl(8mL)の混合物を、オーブン乾燥した丸底フラスコにアルゴン下で投入した。この懸濁液を、アルゴン雰囲気下、52℃(外側のオイルバス温度は60℃であった)で1時間還流させた。溶液は黄色透明となった。出発物質が存在しないことを、TLC(シリカゲル)で溶液を調べることによって確認した。有機溶媒及び過剰の塩化チオニルを減圧除去した。乾燥CHCl(5mL)によるこの蒸発を数回繰り返して、過剰の塩化チオニル及びいずれのHClをも除去した。得られた黄色残渣を乾燥CHCl(10mL)に溶解し、アルゴン下で10分間0℃に冷却した。メチルシアナミド(2.5当量)、続いてトリエチルアミン(5当量)を、0℃で反応混合物に添加し、次にこの混合物を室温に戻し、5時間撹拌した。反応の完了後(TLC、シリカゲル)、溶媒を減圧除去し、アセトン(4mL)を残渣に添加した。ろ過によって塩を除去し、溶媒を減圧除去して、MRS-III-90を収率70%で得た。H NMR(300MHz,DMSO-d6)δ 2.10-2.13(m,2H),3.34-3.58(m,3H),3.88(s,3H),3.91(s,3H),4.73(d,1H,J=7.5Hz,メジャー回転異性体83%),4.84(d,J=7.5Hz,マイナー回転異性体,17%),7.27-7.29(m,1H,メジャー回転異性体),7.31-7.33(m,マイナー回転異性体),7.38(d,1H,J=2.0Hz,メジャー回転異性体),7.41(d,J=2.5Hz,マイナー回転異性体),7.57(d,1H,J=8.5Hz,メジャー回転異性体),7.64(d,J=9.0Hz,マイナー回転異性体),8.00(s,1H,メジャー回転異性体),8.21(s,マイナー回転異性体),9.49-10.11(bs,1H);LCMS(ESI,m/z,相対強度(ESI),C1714に対する計算値(M-H)+ 336.33;実測値 336.00。
【0144】
例10.(S)-エチル-7-ヒドロキシ-9-オキソ-11,12,13,13a-テトラヒドロ-9H-ベンゾ[e]イミダゾ[5,1-c]ピロロ[1,2-a][1,4]ジアゼピン-1-カルボキシレート(RJ-02-50)の合成:
オーブン乾燥した丸底フラスコに、乾燥CHCl(50ml)を投入し、0℃に冷却した。次に、AlCl(3g、22.8mmol)及びエタンチオール(4.5ml、60.8mmol)を、上記フラスコに0℃でゆっくり添加した。アイスバスを取り外し、反応液を室温まで戻した。AlClが完全に溶解した後、エステル15(2.6g、7.62mmol)を室温でこの混合物に添加し、Ar下で24~36時間撹拌した。反応の完了後(TLC、シリカゲル)、溶液を氷上に注ぎ、2NのHCl水溶液を用いて酸性化した。溶液を、CHClで5~7回、酢酸エチルで3~4回、別々に抽出した。1つにまとめた有機層を塩水で洗浄し、乾燥した(NaSO)。溶媒を減圧除去し、残渣を、[シリカゲル、CHCl中の4%メタノール]でのフラッシュカラムクロマトグラフィによって精製して、RJ-02-50を固体(2.1g)として収率84%で得た。融点=>260℃(分解):H NMR(300MHz,CDCl)δ 1.44(t,3H,J=7.1Hz),2.19-2.42(m,3H),3.55-3.64(m,2H),3.81-3.89(m,1H),4.42(q,2H,J=7.1Hz),4.82(d,1H,J=7.3Hz),7.13(dd,1H,J=8.7Hz,2.6Hz),7.27-7.31(m,1H),7.85(s,1H),7.91(d,1H,J=2.6Hz),9.22(s,1H);13CNMR(75MHz,CDCl)δ 14.3,24.4,28.4,46.9,53.8,61.2,117.5,120.8,124.9,125.2,127.7,129.5,136.0,137.2,157.6,162.8,164.6;HRMS(ESI)(M+H)+ C1718に対する計算値328.1292;実測値328.1293。
【0145】
例11.(S)-7-ヒドロキシ-9-オキソ-11,12,13,13a-テトラヒドロ-9H-ベンゾ[e]イミダゾ[5,1-c]ピロロ[1,2-a][1,4]ジアゼピン-1-カルボン酸(RJ-03-90)の合成
RJ-02-50(1.52g,4.6mmol)を、エタノール(4mL)及びHO(3mL)の混合物に溶解し、その後、固体NaOH(1.0g、25.0mmol)をこの溶液に添加した。この反応混合物を、50℃に15分間加熱し、エタノールを減圧除去した。残った水溶液を、0℃で10分間にわたって撹拌し、次に濃HClを、pHが3~4(pH試験紙)となるまで溶液に滴下した。形成された淡黄色析出物を溶液中に残したままとし、この混合物を、室温で2時間撹拌した。析出物を、ろ過によって回収し、冷水(2~5mL)で洗浄し、水層も室温で10時間放置して、追加のRJ-03-90を得た。1つにまとめた固体を、真空オーブン中、80℃で7時間乾燥して、純粋なRJ-03-90を収率65%で得た。H NMR(300MHz,CDOD):δ 2.14-2.29(m,3H),3.50-3.63(m,2H),3.70-3.78(m,1H),4.95(d,1H,溶媒ピークと重複),7.15(d,1H,J=8.7Hz,3.0Hz),7.38-7.43(m,1H),7.53(d,1H,J=8.76Hz),8.48(m,1H);13C NMR(75MHz,CDOD)δ 24.0,27.7,46.2,53.4,116.2,119.8,124.5,125.4,128.4,130.2,136.2,137.5,158.2,162.5,164.4;HRMS(ESI)(M+H)+ C1514に対する計算値300.0979;実測値300.0990。
【0146】
例12.(S)-tert-ブチル-7-ヒドロキシ-9-オキソ-11,12,13,13a-テトラヒドロ-9H-ベンゾ[e]イミダゾ[5,1-c]ピロロ[1,2-a][1,4]ジアゼピン-1-カルボキシレート(RJ-02-67)の合成:
火炎乾燥した丸底フラスコに、乾燥テトラヒドロフラン(30mL)を投入し、リチウム棒(過剰量、小片に切断)を添加した。乾燥tert-ブタノール(2.6mL、27.1mmol)を、室温で上記フラスコに添加し、得られた混合物を、Ar下、tert-ブタノールが完全に反応するまで45~50℃に加熱した。この調製したばかりのリチウムtert-ブトキシド溶液を、RJ-02-50(1.0g、2.71mmol)を投入した別の火炎乾燥した丸底フラスコに、カニューレを用いて注意深く移し、Ar下、50℃で30分間撹拌した。反応の完了後(TLC、シリカゲル)、フラスコを室温まで冷却し、テトラヒドロフランを減圧除去した。氷水(10mL)を残渣に添加し、次にこれを酢酸エチルで抽出した。有機層を、水(2×10mL)及び塩水(15mL)で洗浄した。溶媒を減圧除去し、残渣を、フラッシュカラムクロマトグラフィ[シリカゲル、酢酸エチル/ヘキサン(7:3)]によって精製して、RJ-02-67を固体(0.72g)として収率65%で得た。融点=174~175℃:H NMR(300MHz,CDCl)δ 1.63(s,9H),2.09-2.34(m,3H),3.50-3.62(m,2H),3.77-3.85(m,1H),4.79(d,1H,J=7.1Hz),7.10(dd,1H,J=8.6Hz,2.2Hz),7.23-7.28(m,1H),7.77(bs,1H),7.85(s,1H),9.75(bs,1H);13C NMR(75MHz,CDCl)δ 24.4,28.2,28.3,46.9,53.7,82.0,117.4,120.7,124.9,125.1,129.1,129.6,135.8,136.2,157.7,162.3,164.6;HRMS(ESI)(M+H)+ C1922に対する計算値356.1605;実測値356.1615。
【0147】
例13.(S)-7-ヒドロキシ-1-(オキサゾール-5-イル)-11,12,13,13a-テトラヒドロ-9H-ベンゾ[e]イミダゾ[5,1-c]ピロロ[1,2-a][1,4]ジアゼピン-9-オン(RJ-03-30)の合成:
DIBAL-H(1M、20.4mL、20.4mmol)を、30mLの乾燥テトラヒドロフラン中のナトリウムtert-ブトキシド(2.02g、21.02mmol)の溶液へ、0℃で添加した。得られた混合物を、アルゴン雰囲気下、室温で1時間撹拌した。次に、化合物15(4g、11.72mmol)を、0℃で上記溶液に添加し、アルゴン雰囲気下、室温で3時間(又は15が完全に消費されるまで)撹拌した。反応の完了後、メタノール(約15mL)、続いて5%HCl水溶液(20~30mL)を0℃で注意深く添加することによって過剰のDIBAL-Hを失活させた。この後、得られた混合物を室温に戻した。水層をCHClで抽出した(2×50mL)。1つにまとめた有機層を塩水で洗浄し、乾燥した(NaSO)。溶媒を減圧除去して、粗アルデヒドを得た。この残渣を、フラッシュクロマトグラフィ(2:1 酢酸エチル/ヘキサン)によって精製して、純粋なジアゼピンアルデヒド18を白色固体として得た(3.325g、93%)。
【0148】
トルエンスルホニルメチルイソシアニド、TosMIC(3.28g、16.8mmol)を、乾燥二口丸底フラスコに入れ、アルゴン雰囲気下、乾燥メタノール(40mL)に溶解した。KCO(4.64g、33.57mmol)を、さらにはアルデヒド18(3.325g、11.18mmol)を室温で反応混合物に添加し、これを加熱して3時間還流した。TLC(シリカゲル 酢酸エチル)によって示される反応の完了後、反応混合物を冷水で反応停止した。この後、溶媒の1/3を減圧除去し、酢酸エチルで抽出した(3×20mL)。1つにまとめた有機層を水及び塩水で順に洗浄し、乾燥した(NaSO)。次に、溶媒を減圧除去し、残渣をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィによって精製して、純粋なオキサゾール19を白色固体として得た(2.83g、75%)。
【0149】
オーブン乾燥した丸底フラスコに、乾燥CHCl(50mL)を取り、0℃に冷却した。次に、AlCl(3.33g、24.97mmol)及びエタンチオール(5.0ml、67.52mmol)を、上記フラスコに0℃でゆっくり添加した。アイスバスを取り外し、反応液を室温まで戻した。AlClが完全に溶解した後、19(2.8g、8.32mmol)を室温でこの混合物に添加し、Ar下で24~36時間撹拌した。反応の完了後(TLC、シリカゲル)、溶液を氷に注ぎ、2NのHCl溶液を用いて酸性化した。溶液を、CHClで5~7回、酢酸エチルで3~4回、別々に抽出した。1つにまとめた有機層を塩水で洗浄し、NaSO上で乾燥した。溶媒を減圧除去し、残渣を、[シリカゲル、CHCl中の4%メタノール]でのフラッシュカラムクロマトグラフィによって精製して、RJ-03-30を固体(2.36g)として収率88%で得た。H NMR(500MHz,CDCl):δ 1.97-2.08(m,2H),2.25-2.35(m,1H),2.65-2.73(m,1H),3.63-3.71(m,1H),3.76-3.84(m,1H),4.84-4.88(m,1H),7.10(dd,1H,J=8.6,2.2Hz),7.30(d,1H,J=5.3Hz),7.40(s,1H),7.75(d,1H,J=1.9Hz),7.95(s,1H),8.02(s,1H),9.85(s,1H);13C NMR(125MHz,CDCl)δ 23.9,27.8,47.2,52.8,117.6,120.8,123.5,124.7,125.3,126.2,129.3,131.9,136.5,145.4,150.9,157.5,164.8;HRMS(ESI)(M+H)+ C1715に対する計算値323.1139;実測値323.1130。
【0150】
例14.GABARサブタイプ選択性の特定
α4及びα5-GABARに対して選択的活性バイアスを有する化合物を識別することができる。パッチクランプアッセイを用いて、単一のα-サブユニットを含有するGABARのアゴニズムに起因する塩化物イオン流に誘導される内向き電流を定量する。これらの結果から、GABAR受容体-リガンド相互作用の機能的活性を微細に区別可能であることを実証することができる。アフリカツメガエル卵母細胞を用いた電気生理学実験では(Ramerstorfer et al. European journal of pharmacology 2010, 636, 8-27)、成体の雌アフリカツメガエル(Nasco、フォートアトキンソン、ウィスコンシン州、米国)を、氷冷した0.17%のTricain(エチル-m-アミノベンゾエート)バス中で麻酔し、その後、断頭し、このカエルの卵巣をND96培地(96mMのNaCl、2mMのKCl、1mMのMgCl2、5mMのHEPES;pH7.5)に移した。1mg/mlのコラゲナーゼ(Sigma-Aldrich、セントルイス、ミズーリ州、米国)中で30分間のインキュベーションに続いて、ステージ5から6の卵母細胞を卵巣から選び出し、白金ワイヤループを用いて濾胞除去した。卵母細胞を、100U・mL-1のペニシリン、100μg・mL-1のストレプトマイシン、及び2.5mMのピルビン酸塩を添加したNDE培地(96mMのNaCl、2mMのKCl、1mMのMgCl2、5mMのHEPES、1.8mMのCaCl2;pH7.5)中に18℃で保存し、インキュベートした。卵母細胞にmRNAの水溶液を注入した。卵母細胞あたり合計で2.5ngのmRNAを注入した。サブユニット比は、αxβ3γ2(x=1、2、3、5)受容体の場合は1:1:5、α4β3γ2受容体の場合は3:1:5であった。注入された卵母細胞は、電気生理学記録の前に、少なくとも36時間インキュベートした。卵母細胞を、NDE培地のバス中のナイロングリッド上に置いた。電流測定のために、2MのKClを充填した2つのマイクロ電極(2~3MΩ)を卵母細胞に刺入した。卵母細胞を、GABA及び/又は薬物を含有するNDEに切り替え可能である6mL・分-1のNDE流によって洗浄し続けた。薬物は、ジメチルスルホキシド(DMSO)溶液からNDE中に希釈し、0.1%DMSOの最終濃度とした。mRNA注入卵母細胞で測定された最大電流は、すべての受容体サブタイプにおいてマイクロアンペアの範囲であった。化合物によるGABA誘導電流の変化を試験するために、個々の卵母細胞の対応する最大GABA誘導電流の3~5%(EC3~5)を引き起こすように滴定されたGABA濃度を、様々な濃度の試験化合物と一緒に細胞に適用した。記録はすべて、Warner OC-725C TEV(Warner Instrument、ハムデン、コネチカット州、米国)、又はDagan CA-1B Oocyte Clamp、又はDagan TEV-200A TEV(Dagan Corporation、ミネアポリス、ミネソタ州、米国)を用い、-60mVの保持電位において室温で行った。データは、Digidata 1322A又は1550データ取得システム(Axon Instruments、ユニオンシティ、カリフォルニア州、米国)を用いてデジタル化し、Clampex 10.5ソフトウェアを用いて記録し(Molecular Devices、サニーベール、カリフォルニア州、米国)、Clampfit 10.5及びGraphPad Prism 6.0(ラホヤ、カリフォルニア州、米国)を用いて分析した。濃度-応答データを、Hill方程式を用いてフィッティングした。データは、2つのバッチの少なくとも3つの卵母細胞から、平均±SEMで得られる。別の選択肢として、化合物のα4及びα5-GABARに対する選択性は、自動パッチクランプアッセイによって識別することもできる。したがって、パッチクランプアッセイでは:α1β3γ2 GABAAR又はα4β3γ2を安定に発現するHEK293Tを、10%(体積/体積)のウシ胎仔血清及び1%のペニシリン/ストレプトマイシンを添加したL-グルタミンを含むRPMI1640培地で維持した(Forkuo et al., Molecular Pharmaceutics 2016, 13, 2026-38)。簡潔に述べると、IonFluxのプレートレイアウトは、12ウェルのユニットから成り、2つのウェルは、細胞内液(ICS、140mMのCsCl、1mMのCaCl、1mMのMgCl、11mMのEGTA、10mMのHEPESを含有、CsOHによりpH7.2)を含有し、1つのウェルは、細胞外液(ECS、140mMのNaCl、5.4mMのKCl、1mMのCaCl、10mMのD-グルコース一水和物、及び10mMのHEPESを含有、NaOHによりpH7.4)に希釈した細胞を含有し、8つのウェルは、0.1%DMSOでのGABA(EC20濃度)の存在下、異なる濃度の1を含有する。ウェル1は、廃液回収用である。細胞は、陰圧を掛けることによって、懸濁液からアンサンブル記録アレイの微細チャネルに捕捉される。アレイがすべて占有されると、掛けられた陰圧が捕捉した細胞の膜を破壊し、ホールセル電圧固定が確立される。化合物の適用については、適切な化合物ウェルに圧力が掛けられ、それが、細胞上を高速で流れている細胞外液中に化合物を導入する。GABAR誘導電流の記録については、細胞アレイを、-80mVの過分極保持電位で電圧固定した。自動パッチクランプでの使用の前に、細胞を380gで5分間遠心分離し、ECSに緩やかに再懸濁させた。これをさらに2回繰り返した後、細胞をプレートに分配した。化合物の適用はすべて3秒間で行い、続いて5秒間の洗浄を行った。
【0151】
図1A及び1Bは、GABA受容体サブタイプ選択性を示す。図1Aでは、GABA受容体サブタイプα1β3γ2、α2β3γ2、α3β3γ2、α4β3γ2、及びα5β3γ2を発現するアフリカツメガエル卵母細胞上でのSH-053-2’F-R-CH-酸によるGABA(EC3~5濃度)誘導電流の用量依存的調節。データ点は、化合物の非存在下におけるコントロール電流(100%)に対して標準化した2バッチからの2~8つの卵母細胞からの平均±SEMを表す。SH-053-2’F-R-CH-酸は、正のα5β3γ2選択的GABA受容体モジュレーターである。図1Bは、RJ-02-50を用いた自動パッチクランプを示す。α1β3γ2又はα4β3γ2GABAARを発現するHEK293T細胞を用いた、EC20濃度のGABA及び一緒に3秒間適用された増加する濃度の化合物1の存在下における濃度依存的な負の電流応答。負の電流読み取りは、100%(n=16)に設定したEC20濃度のGABA応答に対して標準化した。RJ-02-50は、正のα4β3γ2選択的GABA受容体モジュレーターである。
【0152】
例15.化合物の細胞毒性の特定
生体外細胞毒性アッセイを用いて、増加した細胞毒性を有する化合物を識別することができる。したがって、ヒト胚性腎293T(HEK293T)細胞株を購入し(ATCC)、75cm2フラスコ(CellStar)で培養した。細胞を、非必須アミノ酸(Hyclone、#SH30238.01)、10mMのHEPES(Hyclone、#SH302237.01)、5×106ユニットのペニシリン及びストレプトマイシン(Hyclone、#SV30010)、並びに10%の熱失活ウシ胎仔血清(Gibco、#10082147)を添加したDMEM/高グルコース(Hyclone、#SH3024301)培地で増殖させた。0.05%のトリプシン(Hyclone、#SH3023601)を用いて細胞を回収した。細胞生存アッセイは、ルシフェラーゼ及びATP以外のそのすべての基質を含有するCellTiter-Glo(商標)発光細胞生存アッセイキット(Promega、マジソン、ウィスコンシン州)を用いて評価した。用いた細胞毒性アッセイのコントロールは、(E)-10-(ブロモトリフェニルホスホラニル)デシル4-(4-(tert-ブチル)フェニル)-4-オキソブタ-2-エノエート(DMSO中の400μM、ポジティブコントロール)及びDMSO(ネガティブコントロール)とした。発光の読み取りはすべて、Tecan Infinite M1000プレートリーダーを用いて行った。少量の移送は、100nLピンツール移送装置(V&P Scientific)を有するTecan Freedom EVOリキッドハンドリングシステムで行った。96ウェルポリプロピレンプレート(Corning,#3365)で段階希釈を行い、アッセイは、384ウェル白色オプティカルボトムプレートで行った。アッセイは、4つの反復サンプルで、3回の独立した実験で行った。データは、コントロールに対して標準化し、可能である場合は、非線形回帰によって分析した(GraphPad Prism)。
【0153】
【表1】
【0154】
例16.化合物によって誘導されたCNS作用を特定するためのロータロッドアッセイ
血液脳関門を透過して、マウスの感覚運動技能を調節するCNS作用を誘導する能力を有する化合物を、ロータロッドを用いて識別することができる。雌のスイスウェブスターマウスを、ロータロッド装置(Omnitech Electronics Inc.、ノバスコシア、カナダ)上で15rpmの一定速度でバランスを保つように、マウスが3回の連続する時間点で3分間行うことができるまで訓練した。マウスの別々の群に、媒体(10%DMSO、40%プロピレングリコール、及び50%PBS)中の化合物の腹腔内(i.p.)注射、又は媒体(2%ヒドロキシプロピルメチルセルロース及び2.5%ポリエチレングリコール)中での強制経口投与(p.o.)を、適切な体積である100μlで施した。各注射の10分後、30分後、及び60分後に、マウスを3分間ロータロッドに置いた。3分間の前にマウスがロータロッドから落下した場合は、その時間を記録し、マウスの群で平均した。独立t検定(GraphPad Prism)を用いて、p<0.05、**p<0.01、及び***p<0.001における有意差を判定した。図2は、感覚運動協調に対する化合物の効果を示す。スイスウェブスターマウスを、化合物曝露の10分後、30分後、及び60分後に、15rpmで3分間のロータロッドで試験した。マウス(N=10)に、試験化合物の単一注射(i.p.又はp.o.)を施した。3分までに落下した場合は、落下時間を記録した。データは、平均±SEM(N=10)で表す。スチューデントt検定を用いて、有意差:媒体処理マウスと比較した有意差(p<0.05)、**(p<0.01)、又は***(p<0.001)、を算出した。調べた化合物はいずれも、試験した濃度において感覚運動障害をまったく誘導しなかった。
【0155】
例17.化合物のミクロソーム安定性
生体内での化合物の代謝安定性を、肝臓ミクロソームの存在下での化合物の安定性によって推定することができる。したがって、最終濃度10μMの試験化合物の1mM DMSO溶液の4μLを、デジタルヒーティングシェイキングドライバス(Fischer scientific、ピッツバーグ、ペンシルベニア州)上において、282μLの水、80μLのリン酸緩衝液(0.5M、pH 7.4)、20μLのNADPH Regenerating System Solution A(BD Bioscience、サンノゼ、カリフォルニア州)、及び4μLのNADPH Regenerating System Solution B(BD Bioscience、サンノゼ、カリフォルニア州)を含有する混合物中の合計体積391.2μLで、37℃で5分間予備インキュベートした。予備インキュベーションの後、0.5mg/mLのタンパク質濃度のヒト肝臓ミクロソーム(BD Gentest、サンノゼ、カリフォルニア州)又はマウス肝臓ミクロソーム(Life technologies、ロックフォード、イリノイ州)のいずれかの8.8μLを添加することによって反応を開始した。0分(ミクロソームなし)、10分、20分、30分、40分、50分、及び60分の時間間隔で50μLのアリコートを取った。各アリコートを、1μMのベラパミルHClを内標準として含有する100μLの冷アセトニトリル溶液に添加した。続いて、10秒間の超音波処理、及び10000rpmで5分間の遠心分離を行った。上澄の100μLをSpin-X HPLCフィルターチューブ(Corning Incorporated、ニューヨーク州)に移し、13000rpmで5分間遠心分離した。ろ液を、100倍に希釈し、続いて、Shimadzu LCMS 8040(Shimadzu Scientific Instruments、コロンビア、メリーランド州)を用いたLC-MS/MSによって分析した。内標準及び試験化合物のピーク面積比を、すべての時間点で算出し、その比の自然対数を時間に対してプロットして、直線の傾き(k)を特定した。代謝速度(kC0/C)、半減期(0.693/k)、及び内部クリアランス(Vk)を算出し、ここで、kは、傾き、C0は、試験化合物の初期濃度、Cは、ミクロソームの濃度、及びVは、mg単位のミクロソームタンパク質あたりのμL単位のインキュベーション体積である。実験はすべて、3つの反復サンプルで2回繰り返した。
【0156】
【表2】
【0157】
例18.モルモット気道平滑筋の化合物による緩和
すべての実験は、コロンビア大学IACUCの承認後に行った。成体の雄ハートレーモルモットを、腹腔内ペントバルビタール投与(100mg/kg)によって安楽死させた。気管を外科切除し、2つの軟骨輪を含有する断面に切断した。軟骨輪を、少なくとも5回緩衝液を交換して1時間にわたって洗浄し、ペントバルビタールをすべて除去する。上皮をコットンスワブで除去した後、軟骨輪を4mLのジャケット付きオルガンバス(Radnoti Glass Technology)に2本のシルク糸で吊るし、筋張力を連続的にデジタル記録するために、一方の糸を、Biopacハードウェア及びAcknowledge7.3.3ソフトウェア(Biopac Systems)を介してコンピュータと結合されたGrass FT03力変換器(Grass-Telefactor)に取り付けた。軟骨輪を、10μMのインドメタシン(DMSO媒体最終濃度0.01%)を含む4mlのKH緩衝溶液(mM単位での組成:118 NaCl、5.6 KCl、0.5 CaCl、0.2 MgSO、25 NaHCO、1.3 NaHPO、5.6 D-グルコース)に浸漬し、pH7.4、37℃で、95%O及び5%COによって連続的にバブリングした。軟骨輪を、新しいKH緩衝液を15分毎に添加しながら、1gの等張性張力で1時間平衡化した。すべての軟骨輪を、10μMのN-バニリルノナンアミド(カプサイシン類似体)により、次に累積的に増加する濃度のアセチルコリン(0.1~100μM)のサイクル2回を、サイクル間及び2サイクル後に充分に緩衝液洗浄し静止張力を1.0gにリセットして行うことにより、予備収縮させた。テトロドトキシン(1μM)及びピリラミン(10μM)をバス中の緩衝液に添加して、気道神経及びヒスタミン受容体の交絡的影響を除去した。1.0gの静止張力での安定なベースラインが確立された後、気管軟骨輪を1μMの物質Pで収縮させた。ピーク収縮に到達した後、示した濃度の化合物又は媒体(0.1% DMSO)をバスに添加した。化合物曝露後の示した時間点で残留する初期収縮のパーセントを、媒体処理組織での残留収縮力のパーセントとして表し、群間で比較した。図3A~3Cは、モルモットの気管軟骨輪における気道平滑筋の収縮力を示す。気管軟骨輪を1mMの物質Pで収縮させ、次に50mMの化合物又は媒体コントロール(0.1%DMSO)で処理した。残留収縮力のパーセントを様々な時間点で測定し、初期物質P誘導収縮力に対するパーセントとして表した。(N>6)2元配置ANOVAを用いて、(p<0.05)、**(p<0.01)、又は***(p<0.001)での有意差を算出した。p-値は各条件に対して与えられる。RJ-03-57以外の調べた化合物はすべて、15分後に、少なくとも60分間にわたって気道平滑筋の狭窄を低減した。
【0158】
例19.ヒト気道平滑筋の化合物による緩和
ヒト気道平滑筋条片を、肺移植に伴う健康なドナー肺から得たヒト気管から切除した。実験は、コロンビア大学治験審査委員会(IRB)によるレビューを受け、ヒトを対象とする研究ではないと見なされた。条片を、上記のように、酸素添加KH緩衝液中、37℃、静止張力1.5gでオルガンバスに吊るした。15分毎に緩衝液を交換しながらの1時間の平衡化後、条片を、増加する濃度のアセチルコリン(100nM~1mM)のサイクルを3回、これらの予備収縮チャレンジの間及び後の充分な緩衝液交換と共に行うことで収縮させた。MK571(10μM)、ピリルアミン(10μM)、及びテトロドトキシン(1μM)を緩衝液に添加し、その後、各条片を、その個々に算出したアセチルコリンのEC50濃度に対して収縮させた。収縮力の増加が横ばい状態に達した時点で(典型的には15分)、100μMの化合物又はその媒体(0.2% エタノール)を緩衝液に添加し、収縮力の維持を1時間にわたって連続的に測定した。15分、30分、45分、及び60分での残留収縮力を、初期アセチルコリン誘導収縮力に対するパーセントとして表した。図4は、ヒト気道平滑筋における気道平滑筋収縮力を示す。ヒト気管気道平滑筋条片を、EC50濃度のアセチルコリン(Ach)で収縮させ、続いて100μMのSH-053-2F’F-R-CH3-酸又は媒体0.2%のエタノールで処理した。筋力は、化合物の添加後15分、30分、45分、及び60分に測定した。データは、初期Ach誘導収縮力に対するパーセントとして表す。少なくとも7人のヒトからの個々の筋肉条片を用いた。2元配置ANOVAを用いて、(p<0.05)、**(p<0.01)、又は***(p<0.001)での有意差を算出した。p-値は各条件に対して与えられる。SH-053-2F’F-R-CH3-酸は、15分後に、少なくとも60分間にわたってヒト気道平滑筋の狭窄を低減した。
【0159】
例20.アレルゲン誘導マウス喘息モデルに対する化合物の効果
薬物処理プロトコル:2%のヒドロキシプロピルメチルセルロース溶液(Sigma-Aldrich、セントルイス、ミズーリ州)及び2.5%のポリエチレングリコール(Sigma-Aldrich、セントルイス、ミズーリ州)中の化合物の経口投与用滅菌溶液を、生物学的安全キャビネットで調製した。この混合物を乳鉢と乳棒を用いて粉砕することによって、微細な懸濁液を得た。薬物を、20G強制経口投与針(Kent Scientific Corporation、トリントン、コネチカット州)を用いた強制経口投与(200ul)によって、ova s/c BALB/cの群に、ovaチャレンジ期間の5日間にわたり1日2回、個々に100mg/kgで投与した。マウスは、気道パラメータ測定の直前に、化合物の単一のp.o.投与を受けた。10%のDMSO、40%のプロピレングリコール、及び50%のPBS中のi.p.注射用の化合物を調製し、100ul注射として与えた。薬物投与後、マウスを毎日モニタリングした。気道過敏の評価:意識があり自発的に呼吸している動物におけるメタコリンに対する気道過敏を、DSIのBuxco(登録商標)FinePointe Non-Invasive Airway Mechanics(NAM)測定器によって測定した。測定を行う前に、マウスを、毎日15分間、5日間にわたってチャンバーに順応させた。加えて、卵白アルブミン感作及びチャレンジプロトコルは、2mgのミョウバン(Imject Alum;Thermo Scientific、Pierce、ロックフォード、イリノイ州)に乳化させた卵白アルブミン(Ova)(Sigma-Aldrich、セントルイス、ミズーリ州)の2mg/kg/日の腹腔内(i.p.)注射により、第0、7、及び14日に合計100μLの体積で3回感作された無作為化雄BALB/cマウスから成る。次に、マウスを、第23~27日の5日間にわたって1mg/kg/日のOvaによって鼻腔内(i.n.)チャレンジした。コントロールマウスは、Ovaで感作し、生理食塩水によってチャレンジした。データ収集の前には、チャンバーの校正も毎回行った。簡潔に述べると、胸部チャンバーと組み合わされた鼻部チャンバーにより、特異的気道抵抗(sRaw)の計算が可能となる。FinePointeソフトウェアは、NAM分析器によって得られた他のすべての呼吸パラメータを用いて、特異的気道抵抗(sRaw)の計算を行う。マウスを、エアロゾル化されたPBS(ベースライン測定のため)又はメタコリン(1.5625~12.5mg/mL)に1分間曝露し、各噴霧後の3分間にわたって値を読み取り、平均した。得られたデータを、エアロゾル生成に用いたメタコリン濃度(mg/mL)に対するsRawとして示した。図5A~5Fは、気道過敏に対する化合物の効果を示す。特異的気道抵抗(sRaw)を、DSIのBuxco FinePointe non-invasive airway mechanics測定器により、増加する用量のメタコリンで測定した。Ova s/c BALB/cマウスに、強制経口投与を介して、100mg/kgのすべての化合物を、1日2回、5日間にわたって投与した。データは、各群の10体のマウスからの平均±SEMを表す。**、及び***は、それぞれ、媒体処理したova s/c BALB/cマウスと比較した、p<0.05、p<0.01、p<0.001での有意差を示す。化合物RJ-03-57、RJ-03-30、及びGL-III-43は、気道過敏を軽減することができなかった。しかし、化合物SH-053-2F’F-R-CH3-酸、GL-II-93、及びRJ-02-50は、1又は複数の濃度のメタコリンでの気道過敏を低減した。
【0160】
例21.化合物の薬物動態分析
マウスでの薬物動態パラメータの特定.雌のスイスウェブスターマウスに、2%ヒドロキシプロピルメチルセルロース溶液及び2.5%ポリエチレングリコールに調合した媒体又は化合物の胃内強制投与を25mg/kgの用量で施した。10分、20分、40分 60分、120分、240分、480分、及び1440分に、血液(ヘパリン処理チューブに採取)、肺、及び脳を採取し、サンプルは、分析まで液体窒素中に保存した。サンプル調製及びLC/MS:血液サンプルを氷上で解凍し、10秒間ボルテックス撹拌し、100μLのアリコートを取り、[100nM 4,5-ジフェニルイミダゾール、100nM HZ-166、RJ-02-50、又はSH-053-2’RCH3-酸]内標準(I.S.)を含有する400μLの冷アセトニトリルに添加した。サンプルを30秒間ボルテックス撹拌し、10000RPMで10分間遠心分離した。次に、上澄層を清浄なチューブに移し、Speedvac濃縮装置を用いて蒸発させた。残渣を400μLの移動相で再構成し、0.22μmのナイロン遠心フィルターユニット(Costar)を通してスピンろ過した。再構成後、サンプルを適切に希釈し、ベラパミル又は4,5-ジフェニルイミダゾールを添加し、サンプルの5μLをLC-MS/MSに注入した。脳及び肺組織のサンプルを解凍し、秤量し、Cole Palmer LabGen 7Bホモジナイザーを用いて、I.S.を含有する400μLのアセトニトリル中に直接ホモジナイズした。サンプルを、10000RPMで10分間遠心分離した。次に、上澄を回収し、血液サンプルと同様にしてLC-MS/MS分析用に調製した。高速液体クロマトグラフィ(HPLC)を、Shimadzu Nexera X2 LC30ADシリーズポンプ(島津製作所、京都、日本)を用いて行った。分析物を、Restek Pinnacle II C18カラム(2.1mm×100mm、粒子サイズ5μm、Restek、カリフォルニア州、米国)により、0.5mL/分(SH-053-2’R-CH3-酸)、0.4mL/分(RJ-02-50)、及び0.6mL/分(RJ-03-57及びGL-II-93)の流速での勾配溶出下で分離した。移動相は、アセトニトリル又はメタノール及び水(いずれも0.1%ギ酸を含有)とした。時間プログラム:カラム温度:40℃で、20%B→70%B(3分間)→99%B(5分間)、99%Bで保持(8分間)、10%Bに戻す(9分間)、保持(9.5分間)(SH-053-2’R-酸)、70%B→70%B(6分間)(SH-053-2’F-R-CH3-酸に対して定組成)、20%B→70%B(2分間)→99%B(4分間)、99%Bで保持(4.5分間)、20%Bに戻す(4.75分間)、保持(5分間)(RJ-03-57)、及び20%B→70%B(2分間)→99%B(5分間)、99%Bで保持(5.5分間)、20%Bに戻す(5.75分間)、保持(6分間)(GL-II-93)。分析物は、ポジティブモード下、Shimadzu 8040三連四重極型質量分析計(島津製作所、京都、日本)により、エレクトロスプレーイオン化及び大気圧イオン化をデュアル(DUIS)モードで行ってモニタリングした。多重反応モニタリング(MRM)モードで以下のトランジションをモニタリングする。RJ-02-50に対するイオン対は、m/z 327.85>281.95、m/z 327.85>264.05、m/z 327.85>254.10、m/z 327.85>236.80、及びm/z 327.85>212.75である。SH-053-2’F-R-CH3-酸に対するトランジションイオン対は、m/z 360.0>342.10、m/z 360.0>316.00、m/z 360.0>301.10、m/z 360.0>249.05、及びm/z 360.0>219.90である。HZ-166に対するトランジション対は、m/z 356.90>311.15、m/z 356.90>283.15、及びm/z 356.90>282.15である。4,5-ジフェニルイミダゾールに対するトランジション対は、m/z 220.80>193、m/z 220.80>167、m/z 220.80>151.95、及びm/z 220.80>115であり、ベラパミル(内標準)に対するトランジション対は、m/z 454.70>165.05、m/z 454.70>150、及びm/z 454.70>303.0である。RJ-03-57に対するトランジション対は、m/z 337.85>265.95、m/z 337.85>252.05、m/z 337.85>238.0、337.83>224.95、及びm/z 337.85>209.85である。GL-II-93に対するトランジション対は、m/z 413.90>396、m/z 413.90>368、m/z 413.90>355.05、m/z 413.90>302.95、m/z 413.90>326.80、m/z 413.90>276.05、及びm/z 413.90>248.20である。衝突エネルギーを各トランジションに対して最適化して、最適感度を得る。質量分析計は、ヒートブロック温度を400℃、乾燥ガス流量を15L/分、脱溶媒管温度を250℃、霧化ガス流量を1.5L/分、並びに針電圧及びインターフェイス電圧をいずれも4.5kVとして運転した。応答の取得は、LabSolutionsソフトウェアを用いて行った。標準曲線を、線形回帰によってフィッティングし、確認サンプルは、その日の検量線から逆算した。平均及び変動係数(CV)を、それに応じて算出した。精度を、算出濃度を対応する公称値と比較することによって算出した。薬物動態パラメータを、PK solutions software2.0を用いて算出し、以下の式に当てはめた:c=A・e-at+B・e-bt+C・e-ct図6A~6Dは、マウスの血液、肺、及び脳における化合物の薬物動態プロファイルを示す。強制経口投与を介して25mg/kgで投与された化合物の時間依存的全身分布。RJ-02-50、SH-053-2F’F-R-CH3-酸、及びGL-II-93は、マウスにおける非常に優れた生体利用度を呈するが、一方RJ-03-57は、中程度の吸収及び素早いクリアランスを有する。
【0161】
例22.化合物によるマウスBALF中の炎症細胞数の変化
化合物の抗炎症特性の特定について、アレルゲン誘導マウス喘息モデルで調べた。分析の当日に、気管支肺胞洗浄(BAL)を、1mLのCa2+及びMg2+を含まないPBSで行った。赤血球(RBC)を、BD赤血球溶解緩衝液(BD Pharmingen、サンノゼ、カリフォルニア州)を用いて溶解した。BALFを4つの異なるチューブに分け、Fc受容体との非特異的結合のブロックを、6μg/mLの2.4G2 mouse BD Fc Block(商標)(BD Pharmingen、サンノゼ、カリフォルニア州)を用いて5分間行った。BALF細胞の染色を、最終濃度の以下の抗体:抗マウスCD45 APC(1:1000、30-F11、Affymetrix eBiosciences、サンディエゴ、カリフォルニア州)、FITCラット抗マウスCD4(1:500、RM4-5、BD Pharmingen、サンノゼ、カリフォルニア州)、PEラット抗マウスSiglec F(1:500、E50-2440、BD Pharmingen、サンノゼ、カリフォルニア州)、及びマウスCCR3 PE-結合抗体(1:40、83101、R&D systems Inc、ミネアポリス、ミネソタ州)、を含有する100μLのBSA染色緩衝液(BD Pharmingen、サンノゼ、カリフォルニア州)を用い、暗所において4℃で30分間行った。フローサイトメトリー実験を、BD FACS Calibur(BD Pharmingen、サンノゼ、カリフォルニア州)を用いて行い、続いて、Cell Quest proソフトウェア(BD Pharmingen、サンノゼ、カリフォルニア州)を用いてデータ分析を行った。続いて、免疫細胞に対する一般的なゲーティングを行った。合計炎症細胞カウントを、すべてのサンプルを高流量(60μL/分)で180秒間分析することによって得た。第四チャネル(FL4)におけるゲーティングした抗マウスCD45陽性イベントを用いて、合計炎症細胞カウントを細胞/mLで算出した。対応するゲートにおける好酸球の定量に用いられるCCR3+/Siglec Fの頻度及びCD4+T細胞数のためのCD4+の頻度を、合計炎症細胞カウント(細胞/mL)と掛け合わせて、分画細胞数を得た。統計分析:データを、GraphPad Prism 4(GraphPad Software、サンディエゴ、カリフォルニア州)を用いて分析し、平均±SEMとして表した。複数群の統計的差異のために、ダネットの事後検定を伴う1元配置分散分析(ANOVA)又はボンフェローニの事後検定を伴う2元配置ANOVAを行った。図7A~7Cは、炎症細胞に対する化合物の効果を示す。10体のova s/c BALB/cマウスの群に、化合物を、100mg/kgで1日2回、5日間にわたって投与した。BALFを各動物から採取し、(A)合計炎症細胞;(B)好酸球;(C)CD4T細胞の定量に用いた。細胞を、マウスCD45APC抗体で染色し、サンプルを、BD FACS Caliburを用いて、高流量(60μL/分)で180秒間分析した。第四チャネル(FL4)におけるゲーティングした陽性イベントを用いて、合計炎症細胞カウントを細胞/mlで算出した。特定の白血球集団の定量では、(B)好酸球(C)CD4T細胞集団を、特異的抗体で染色し、フローサイトメトリーで検出した。データは、各群の10体のマウスからの平均±SEMを表す。**、及び***は、 それぞれ、媒体処理したova s/c BALB/cマウスと比較した、p<0.05、p<0.01、及びp<0.001での有意差を示す。化合物GL-II-43、RJ-03-30、RJ-03-90は、炎症細胞の数を調節しなかった。しかし、RJ-02-50及びGL-II-93は、喘息マウスの肺において、好酸球及びCD4T細胞の数を減少させた。SH-053-2F’F-R-CH3-酸は、好酸球の数を減少させたが、CD4T細胞の数は減少させなかった。
【0162】
例23.化合物の存在下でのCD4Tリンパ球の電気生理学測定
リンパ球に対する化合物の効果を特定するために、Ova S/CマウスからのCD4T細胞を単離し、化合物とのその相互作用を、自動パッチクランプによって測定した。ova s/c BALB/cマウスからの脾細胞を、マウス脾細胞の調製のためのBD Biosciencesの説明書に従って調製し、赤血球は、BD Pharm Lyse(商標)溶解液(BD Biosciences、サンノゼ、カリフォルニア州)を用いて溶解した。細胞を、100μg/mLの卵白アルブミンの存在下又は非存在下で、10%(体積/体積)のウシ胎仔血清、10μMの2-メルカプトエタノール、及び1%のペニシリン/ストレプトマイシンを添加したL-グルタミンを含むRPMI1640培地(Thermo Fisher Scientific Inc.、ロックフォード、イリノイ州)中に懸濁して維持した。細胞を、5%のCO、95%の加湿空気中、37℃で48時間維持した。IonFluxのプレートレイアウトは、12ウェルのユニットから成り、2つのウェルは、細胞内液(ICS、346mM CsCl、1mM CaCl、1mM MgCl、11mM EGTA、10mM HEPESを含有、CsOHによりpH7.2)を含有し、1つのウェルは、細胞外液(ECS、140mM NaCl、5mM 349 KCl、2mM CaCl、1mM MgCl、5mM D-グルコース一水和物、及び10mM HEPESを含有、NaOHによりpH7.4)に希釈した細胞を含有し、8つのウェルは、ECSに希釈した対象の化合物を含有し、1つのウェルは、廃液回収用である。細胞は、陰圧を掛けることによって、懸濁液からアンサンブル記録アレイの微細チャネルに捕捉される。アレイがすべて占有されると、掛けられた陰圧が捕捉した細胞の膜を破壊し、ホールセル電圧固定が確立される。化合物の適用については、適切な化合物ウェルに圧力が掛けられ、それが、細胞上を高速で流れている細胞外液中に化合物を導入する。GABAR誘導電流の記録については、細胞アレイを、-50mVの過分極保持電位で電圧固定した。自動パッチクランプでの使用の前に、細胞を380gで5分間遠心分離し、ECSに緩やかに再懸濁させた。これをさらに2回繰り返した後、細胞をプレートに分配した。GABA及びムシモールをECS中に適切な濃度に希釈した後、適用及びデータ記録を行った。図8は、600nMのGABA及び一緒に3秒間適用された濃度を増加させた化合物の存在下、ova s/c BALB/cマウスの脾臓から単離したCD4+T細胞を用いた電流測定を示す。600nMのGABA及び濃度を増加させた化合物の存在下でのCD4+T細胞の濃度依存定電流応答を、N数16で行い、600nMのGABAの電流応答に対して標準化した。化合物RJ-02-50は、SH-053-2F’F-R-CH3-酸よりもGABA誘導膜電流を増強した。重要なことには、GL-II-93及びRJ-03-30は、非常に顕著なGABA誘導膜電流を引き起こした。
【0163】
例24.化合物による肺サイトカイン発現の生体内調節
サイトカイン産生に関する化合物の抗炎症特性を、AHR測定後、処理及び未処理Ova S/Cマウス(N=10)の肺を採取することによって調べた。全肺を、1×プロテアーゼ阻害剤カクテルを含有する200μLのT-PER(登録商標)組織タンパク質抽出試薬(Thermo Fisher Scientific Inc.、ロックフォード、イリノイ州)中に、ハンドヘルド組織ホモジナイザーを用いてホモジナイズした。ホモジナイズした肺サンプルを、10000RPMで5分間遠心分離して、細胞/組織デブリをペレット化した。組織上澄を回収し、BDサイトメトリックビーズアレイマウスTh1/Th2/Th17サイトカインキット(BD Biosciences、サンノゼ、カリフォルニア州)を製造元の説明書に従って用いてサイトカイン分析した。データを、GraphPad Prism 4(GraphPad Software、サンディエゴ、カリフォルニア州)を用いて分析し、平均±SEMとして表した。複数群の統計的差異のために、ダネットの事後検定を伴う1元配置分散分析(ANOVA)を行った。図9は、マウス肺におけるサイトカインレベルの定量を示す。試験したサイトカインの中でも、IL-10、IL-17A、TNF-α、及びIL-4が、正常BALB/cマウスと比較して、ova s/cマウスの肺では著しく高く発現された。データは、各群の10体のマウスからの平均±SEMを表す。**、及び***は、p<0.05、p<0.01、及びp<0.001での有意差を示す。ova s/cマウスは、正常マウスと比較して、IFN-γ、IL-6、及びIL-2をより高いレベルで発現したが、その変化は有意ではなかった。GL-II-93で処理したova s/cマウスは、マウスの肺におけるIL-17、TNFα、及びIL-4のレベルの低下を呈した。
【0164】
例25.化合物による粘液分泌過多調節の非存在
粘膜産生に関する化合物の薬力学的効果を、AHR測定後、処理及び未処理Ova S/Cマウスの肺を採取し、続いてホルマリン固定及びパラフィン包埋することによって調べた。切片を、1つの肺葉(大気道及び小気道を含む)から調製し、標準的なH&E染色(一般的な組織病理学及び炎症のため)及びPAS染色(粘液細胞のため;基底膜の細胞/mmとして)用に処理した。図10A~10Bは、ムチン産生に対する化合物の効果を示す:(A)ムチン体積密度の形態計測定量及び(B)過ヨウ素酸蛍光シッフ染色による気道上皮(緑色)中のムチン(赤色)の例示的画像。Balb/cマウスに、100mg/kgで5日間に2回化合物を投与した。データは、各群の5~7体のマウスからの平均±SEMを表す。スケールバーは、100μmを表す。GL-II-93、RJ-02-50、及びSH-053-2’F-R-CH3酸は、ムチンの産生を変化させなかった。
【0165】
例26化合物による肺細胞増殖の阻害
ASM過形成を、新たに形成された細胞のDNAにEdUを組込むことによって特定した。ここで、卵白アルブミン感作及びチャレンジプロトコルの終了後、マウスに、100mg/kgの用量でEdU(Invitrogen、カールズバッド、カリフォルニア州)の単一のi.p.注射を施した。マウスを注射の4時間後に安楽死させ、肺をホルマリン固定し、採取し、パラフィン包埋した。ホルマリン固定し、パラリン包埋した肺切片の6μm切片を、Fisherスーパーフロストプラススライドグラス上に載せた。EdUの染色を、Click-iT(商標)EdUイメージングキット(Invitrogen、カールズバッド、カリフォルニア州)を用い、製造元の説明書に従って行った。簡潔に述べると、肺をhistoclearで脱パラフィン処理し、段階的エタノールで再水和した。組織切片を、PBS中3%のウシ血清アルブミン(BSA)で2回洗浄し、PBS中0.5%のTriton X-100で20分間透過処理した。切片を再度PBS中3%のBSAで2回洗浄し、次にClick-iT(商標)反応緩衝液、CuSO4、Alexa Fluor(登録商標)488アジド、及び反応緩衝添加剤を含有するClick-iT(商標)反応カクテルと共に、暗所で30分間インキュベートした。切片をPBS中3%のBSAでさらに1回洗浄した。DNA染色については、切片をPBSで1回洗浄し、次に5μg/mLのHoechst33342と共に30分間インキュベートした。次に、スライドグラスをPBSで2回洗浄し、Permountマウント媒体でカバーグラスをかぶせた。工程はすべて室温で行った。図11は、肺細胞の増殖を示す。未処理及びGL-II-93処理Ova s/cマウスの肺切片を、蛍光アジドによるクリックケミストリー後に可視化可能であるチミジン類似体、EdUの組み込みについて分析した。ネガティブコントロールについては、EdUの注射を行わず、視認可能な蛍光が見られない結果となった。未処理Ova S/Cマウスは、GL-II-93処理動物と比較して、高い増殖率を示した。核特異的Hoechst33342染色により、図11で比較される2つの切片間の細胞密度が同様であることが確認される。
【0166】
例27.ウィルス誘導喘息モデル
慢性肺疾患におけるGABAR化合物の有効性を、ウィルス誘導喘息モデルで実験する。C57BL/6マウス(6~20週齢;10体の群)に、2×105pfuのSeV(菌株52;ATCC)又はUV不活化SeV(UV-SeV)(69)を、第0日に鼻腔内接種する。マウスを、体重及び活動について毎日モニタリングし、接種後(P-I)第49日までに、慢性疾患が充分に発症する。4つの実験群を準備し、試験化合物(又は媒体)を、第49~56日P-Iの間にi.p.投与する。予防実験では、治療剤を第13~21日の間に投与し、続いて疾患測定を第49~56日に行って、RSV曝露後の小児治療に対応する投与レジメンの模擬実験とする(したがって、ウィルス感染後の初期の、又は感染後急性期の間の免疫調節が、その後の炎症性肺疾患の発症に影響を与え得るかどうかを調べる)。第13、49、及び56日PIに、すべての群において、メタコリンに応答する連続的な非侵襲的AHR測定(sRAW)を行う。第56日のAHR測定後、動物を安楽死させ、BALF、血液、及び組織サンプルを採取する。BALFは、1mlのPBS中に採取し、遠心分離し、細胞上澄を採取して、上記のようにサイトカイン分析を行う。細胞ペレットは、RPMIに再懸濁させ、分画細胞カウント(Diff-Quik)及びフローサイトメトリー用のサンプルを取る。フローサイトメトリーについては、細胞製剤を、M2マクロファージの場合はCD1d(Invitrogen)及びMac-3(BD)に対する、又はNKT細胞の場合はCD3及びNK1.1(いずれもInvitrogen)に対するフルオロフォア標識モノクローナル抗体で染色する。抗体標識細胞を、FACS Calibur測定器(BD Biosciences)を用いて試験し、データ分析は、FlowJoソフトウェア(Tree Star、アッシュランド、オレゴン州)(69、70、84)を用いて行う。他のすべての肺組織及び生化学的試験、並びにデータ分析は、OVAモデルの場合と同様に行う。
【0167】
例28.慢性閉塞性肺疾患(COPD)モデル
ヒトCOPDのモデルとして、マウスにおけるリポ多糖(LPS)肺チャレンジによって、GABAR化合物の有効性を実験する。LPSは、煙草の煙、大気汚染、及び有機ダスト中の汚染物として存在する炎症誘発性刺激物質である。ヒトの場合、LPSを伴うダストへの慢性的な曝露は、肺機能の低下をもたらす結果となる。急性モデルでは、LPSは、気管支肺胞液中における好中球の増加、並びに腫瘍壊死因子(TNF)、IL-1、及び他のメディエーターの増加を伴う混合炎症反応を誘導する。投与の前に、各試験化合物を、緩衝溶液媒体(リン酸緩衝生理食塩水、pH7.4)で希釈し、滅菌ろ過する。試験化合物を、示した日の各々に(したがって、3回投与)、100ulの合計体積でi.p.投与する。最終i.p.化合物投与のおよそ1時間後、マウスに、非外科的手順を用いてLPSを気管内投与する。ケタミン塩酸塩及びキシラジン塩酸塩溶液(カタログ番号K113;Sigma;50mg/kg ケタミンHCl)での皮下(s.c.)注射によって、マウスをまず麻酔する。50μLの滅菌0.9% NaClに溶解したLPS(カタログ番号L2880;Sigma、タイプO55:B5)を、カニューレ及びシリンジ(2×25μl)を介して気管内(i.t.)に滴下注入(20μg LPS/マウス)し、続いて100μlの空気を注入する。シャム処理マウスには、50μLの滅菌0.9% NaClをi.t.で滴下注入する。i.t.処理の後、マウスを10分間直立姿勢に維持して、液体が肺全体に広がるようにする。マウスを麻酔から覚めさせ、24時間後に頸部CO窒息(cervical CO2 asphyxiation)を用いて屠殺する。血液を、心臓穿刺によってEDTA含有チューブに採取し、直ちに遠心分離し(2000×g、10分間、4℃)、血漿を-80℃で保存した。肺組織を取り出し、RNA単離及びMPO分析のために急速冷凍する。免疫組織化学的分析については、肺組織を、10%のリン酸緩衝ホルマリン(pH7.4)中に入れる。
【0168】
例29.免疫性関節炎モデル
8~10体の8~10週齢雄DBA/1jマウスの群(Jackson Laboratories、バーハーバー、メイン州、米国)を、50%のフロイント完全アジュバント中の200mgのウシII型コラーゲン(bCII、Chondrex、レッドモンド、ワシントン州、米国)で、尾の付け根に皮内で免疫化する。21日後に、フロイント不完全アジュバント中の100mgのbCIIでマウスを同様に追加免疫する。コントロールマウスの群は、bCIIを含まないシャム免疫で処理する。餌及び水の消費、体重、さらには臨床的に観察可能な関節炎を、処理の期間を通して測定する。最初の免疫化後に開始して、本発明のGABA受容体剤を、週3回、8週間にわたってマウスに投与する。化合物用量は、例22に記載のようにして決定する。個々のコントロール及び実験マウスにおける血清コラーゲン特異的IgG、IgG1、及びIgG2a抗体を、最終免疫化の8週間後に、マイクロタイタープレートELISAによって特徴付ける。ELISAでは、bCIIを、プレートウェルコーティングのための抗原として用い、アイソタイプ特異的フルオロフォア結合ウサギ抗マウス抗体を、一次抗体結合の定量に用いる。ELISAプレートのウェルは、標準的な蛍光プレートリーダーを用いて読み取る。化合物の有効性は、コントロールマウスと比較した処理マウスにおける臨床的関節炎の低減及び/又はbCIIに対するIgG抗体力価の減少によって裏付けられる。
【0169】
例30.自己免疫性糖尿病モデル
非肥満糖尿病(NOD)マウスは、糖尿病の実験に30年間使用されてきた。NODマウスは、膵島炎、膵島の白血球浸潤を特徴とする。膵インスリン含量の低下は、雌の場合は約12週齢で、雄の場合は数週間後に自然に発生する。糖尿病マウスは、低インスリン血及び高グルカゴン血であり、このことは、膵島ベータ細胞の選択的な破壊を示している。本発明の化合物を、投与経路(PO、IP、IM、SC)のうちの1つを介して、QD又はBIDで28日間にわたって投与し、コントロールマウスは、同様にして媒体の投与を受ける。用量は、例22に記載のようにして決定する。群あたり8~10体のマウスを割り当てる。動物を、体重、餌の消費、水の摂取、及び血中又は尿中グルコースについて週2回モニタリングし、測定する。尿中グルコースは、一般的に入手可能な試験紙を用いて特定することができる(Bayer Diastix)。化合物の有効性は、コントロール群に対する処理群におけるこれらの臨床マーカーのうちの1又は複数での減少によって裏付けられる。
【0170】
本明細書で引用されるすべての特許、刊行物、及び参考文献は、その全内容が参照により本明細書に援用される。本開示と援用される特許、刊行物、及び参考文献との間に矛盾が生じる場合、本開示が優先するべきである。
図1
図2
図3-1】
図3-2】
図4
図5-1】
図5-2】
図5-3】
図6-1】
図6-2】
図7-1】
図7-2】
図8
図9
図10
図11