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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-21
(45)【発行日】2022-02-15
(54)【発明の名称】アモルファス固体分散体
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4985 20060101AFI20220207BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20220207BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20220207BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20220207BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220207BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20220207BHJP
【FI】
A61K31/4985
A61K47/38
A61K9/20
A61K9/48
A61P43/00 111
A61P25/00 101
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2019519720
(86)(22)【出願日】2017-10-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-12-05
(86)【国際出願番号】 US2017054962
(87)【国際公開番号】W WO2018071233
(87)【国際公開日】2018-04-19
【審査請求日】2020-10-01
(31)【優先権主張番号】62/407,285
(32)【優先日】2016-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507401225
【氏名又は名称】イントラ-セルラー・セラピーズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】INTRA-CELLULAR THERAPIES, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】ペン・リ
【審査官】今村 明子
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-514135(JP,A)
【文献】特表2011-523949(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0210117(US,A1)
【文献】特表2004-534812(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0004237(US,A1)
【文献】米国特許第06828314(US,B2)
【文献】米国特許出願公開第2016/0235720(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0031804(US,A1)
【文献】特開2000-229887(JP,A)
【文献】特表2011-513485(JP,A)
【文献】米国特許第07183282(US,B1)
【文献】AAPS Pharm.Sci. Tech.,2011年03月,Vol.12, No.1,p.388-400
【文献】Psychopharmacology,2015年,Vol.232,p.605-621
【文献】Chem.Pharm. Bull.,Vol.45, No.10,p.1688-1693
【文献】Drugs of the Future,Vol.40, No.10,2015年,p.643-650
【文献】Drug Discovery Today:Technologies ,2012年,Vol.9, No.2,e79-e85
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00- 9/72
A61K 31/00-31/80
A61K 33/00-33/44
A61K 47/00-47/69
A61P 1/00-43/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)酢酸セルロース賦形剤を1-(4-フルオロ-フェニル)-4-((6bR,10aS)-3-メチル-2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H,7H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8-イル)-ブタン-1-オン(ITI-007)遊離塩基対酢酸セルロースの重量比5:95~50:50で;または
(b)酢酸フタル酸セルロース賦形剤をITI-007遊離塩基対酢酸フタル酸セルロースの重量比25:75~75:25で;または
(c)HPMC-P賦形剤をITI-007遊離塩基対HPMC-Pの重量比25:75~75:25で
含む、1-(4-フルオロ-フェニル)-4-((6bR,10aS)-3-メチル-2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H,7H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8-イル)-ブタン-1-オン(ITI-007)遊離塩基のアモルファス固体分散体
【請求項2】
分散体が酢酸セルロース賦形剤をITI-007遊離塩基対酢酸セルロースの重量比5:95~50:50で含む、請求項1記載の分散体。
【請求項3】
分散体がITI-007遊離塩基および酢酸セルロースを重量比5:95~50:50(重量比50:50を除く)で含む、請求項1または2記載の分散体。
【請求項4】
分散体が酢酸フタル酸セルロース賦形剤をITI-007遊離塩基対酢酸フタル酸セルロースの重量比25:75~75:25で含む、請求項1記載の分散体。
【請求項5】
分散体がITI-007遊離塩基および酢酸フタル酸セルロースを重量比25:75~75:25(重量比25:75および75:25を除く)で含む、請求項1または4記載の分散体。
【請求項6】
分散体がHPMC-P賦形剤をITI-007遊離塩基対HPMC-Pの重量比25:75~75:25で含む、請求項1記載の分散体。
【請求項7】
分散体がITI-007遊離塩基およびHPMC-Pを重量比25:75~75:25(重量比25:75および75:25を除く)で含む、請求項1または6記載の分散体。
【請求項8】
分散体がX線アモルファスである、請求項1~7いずれか1項記載の分散体。
【請求項9】
X線回折パターンが賦形剤に特徴的なピークを含まない、請求項1~8いずれか1項記載の分散体。
【請求項10】
分散体が75℃以上の単一のガラス転移点(Tg)を示す、請求項1~9いずれか1項記載の分散体。
【請求項11】
分散体が100℃の温度までに10%未満の重量減少を示す、請求項1~10いずれか1項記載の分散体。
【請求項12】
分散体が、40℃にて相対湿度75%で7日後に、外観またはテクスチャーの変化を示さない、請求項1~11いずれか1項記載の分散体。
【請求項13】
分散体が、40℃にて相対湿度75%で7日後に、ITI-007の90%を超える化学的安定性を示す、請求項1~12いずれか1項記載の分散体。
【請求項14】
(a)適切な溶媒または溶媒混合物中にて1-(4-フルオロ-フェニル)-4-((6bR,10aS)-3-メチル-2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H,7H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8-イル)-ブタン-1-オン(ITI-007)遊離塩基を選択された賦形剤と合わせる工程;および
(b)溶媒を除去し、このようにして形成されたアモルファス固体分散体を回収する工程
を含む、請求項1~13いずれか1項記載の分散体の製造方法。
【請求項15】
薬学的に許容される希釈剤または担体と組み合わせてまたはそれとともに(in combination or association with)請求項1~14いずれか1項記載の分散体を含む医薬組成物。
【請求項16】
組成物が経口投与用の錠剤またはカプセル剤の剤形である、請求項15記載の医薬組成物。
【請求項17】
組成物が持効性注射剤(LAI)として使用するためのデポ製剤の剤形である、請求項15または16記載の医薬組成物。
【請求項18】
5-HT2A受容体、セロトニントランスポーター(SERT)および/またはドーパミンD1/D2受容体シグナル伝達経路が関与しているかまたはこれらによって媒介される疾患または異常状態、例えば、肥満症、食欲不振症、過食症、うつ病、不安、精神病、統合失調症、片頭痛、強迫性障害、性障害、うつ病、統合失調症、片頭痛、注意欠陥障害、注意欠陥多動障害、強迫性障害、睡眠障害、頭部痛関連状態、社会恐怖症、または認知症から選択される障害の予防または治療に用いるための、請求項1517いずれか1項記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2016年10月12日に出願された米国仮出願第62/407,285号の優先権および利益を主張する(その内容は出典明示によりその全体として本明細書の一部を構成する)。
【0002】
本開示は、置換複素環縮合γカルボリンのある種の新規アモルファス固体分散製剤、そのような分散体の製造、そのような分散体を含む医薬組成物、ならびに、例えば5-HT2A受容体、セロトニントランスポーター(SERT)および/またはドーパミンD1/D2受容体シグナル伝達経路が関与しているかまたはこれらによって媒介される疾患または異常状態の処置における、その使用に関する。
【背景技術】
【0003】
1-(4-フルオロ-フェニル)-4-((6bR,10aS)-3-メチル-2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H,7H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8-イル)-ブタン-1-オン(しばしば、4-((6bR,10aS)-3-メチル-2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8(7H)-イル)-1-(4-フルオロフェニル)-1-ブタノン、またはルマテペロン(Lumateperone)もしくはITI-007と称される)は、以下の構造:
【化1】
を有する。
【0004】
ITI-007は、ドーパミン(DA)D2受容体(Ki=32nM)およびセロトニントランスポーター(SERT)(Ki=62nM)に対して強い親和性を有する強力な5-HT2A受容体リガンド(Ki=0.5nM)であるが、抗精神病薬の認知性および代謝性副作用と関連する受容体(例えば、H1ヒスタミン作動性受容体、5-HT2C受容体およびムスカリン受容体)とはほとんど結合しない。ITI-007は、すなわち統合失調症の処置について、現在臨床試験中である。ITI-007は有望な薬物であるが、その製造および製剤化は明確な課題を提示している。遊離塩基形態において、ITI-007は、水に溶けにくい、油状で粘着性のある固体である。該化合物の塩を製造することは非常に困難であることが証明されている。米国特許第7,183,282号にはITI-007の塩酸塩形態が開示されているが、この塩は吸湿性であり、安定性が低い。ITI-007のトルエンスルホン酸付加塩(トシラート)が最終的には同定され、国際公開第2009/114181号に記載されている。これらの刊行物はどちらも出典明示によりその全体として本明細書の一部を構成する。
【0005】
それにもかかわらず、依然として、ガレヌス製剤(galenic formulation)に容易に配合することができる、ITI-007の代替の安定な薬学的に許容される固体形態が必要とされている。
【0006】
多くの薬物について、アモルファス形態は、同じ薬物の結晶形態と比較して、異なる溶出特性、および、場合によっては異なるバイオアベイラビリティパターンを示すことが開示されている。いくつかの治療適応症については、あるバイオアベイラビリティパターンが他のバイオアベイラビリティパターンよりも好まれ得る。例えば、セフロキシムアキセチル(Cefuroxime axetil)のアモルファス形態は、結晶形態よりも高いバイオアベイラビリティを示す。したがって、アモルファス固体分散体は、伝統的な結晶性活性医薬成分の有望な代替物である。
【0007】
純粋なアモルファス薬物形態は、不安定な傾向にある。アモルファス形態は、対応する結晶形態と比べて熱力学的に不安定であるので、アモルファス形態が安定な結晶形態に戻ることは周知である。これは、通常、様々な湿度および温度条件下での貯蔵の間に生じる。したがって、薬物のアモルファス形態を利用するためには、それを安定化させて、製品貯蔵期間中に活性な薬物の結晶化を阻害することが必要である。
【0008】
いくつかの賦形剤は薬物と化学的に反応するかまたはその分解を促進するが、他の賦形剤は、物理的に安定ではないか、化学的に安定ではないか、またはその両方である均一な固体分散体を形成するので、医薬品のアモルファス形態を安定させる適切な賦形剤の発見は課題である。
【発明の概要】
【0009】
概要
ITI-007の塩の製造に関与する困難を考慮して、化合物を物理的および化学的に安定なアモルファス固体分散体として製剤化することができるか否かを検討することを決定した。異なる比率での薬剤の様々な組合せを使用し、様々な製造方法を使用して、賦形剤の広範なスクリーニングを行った。分散体は、物理的外観およびテクスチャー、粉末X線回折(XRPD)、変調示差走査熱量測定(mDSC)、熱重量分析(TGA)、および高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に基づいて評価した。16種類の賦形剤候補を合計44種類の条件下でスクリーニングし、3種類の薬学的に許容されるアモルファス固体分散体を見いだした。
【0010】
本開示は、(1)酢酸セルロース賦形剤との重量比5:95~50:50のITI-007遊離塩基;(2)酢酸フタル酸セルロース賦形剤との重量比25:75~75:25のITI-007遊離塩基;および(3)フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース賦形剤との重量比25:75~75:25のITI-007遊離塩基を含む、ITI-007遊離塩基の3種類のアモルファス固体分散体を提供する。
【0011】
したがって、本開示は、ITI-007遊離塩基の新規アモルファス固体分散体形態を提供し、該分散体は、その製造および使用の方法と共に、ガレヌス製剤の調製における使用にとって特に有利である。
【0012】
本発明のさらなる適用分野は、以下に提供される詳細な説明から明らかになるであろう。詳細な説明および具体的な例は、本発明の好ましい実施態様を示しているが、例示目的のみを意図しており、発明の範囲を限定することを意図していないと解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明は、詳細な説明および添付の図面からより完全に理解されるようになる:
【0014】
図1図1は、ITI-007遊離塩基の酢酸セルロースとの分散体の粉末X線回折パターンのオーバーレイを示す。
【0015】
図2図2は、ITI-007遊離塩基の酢酸フタル酸セルロースとの分散体の粉末X線回折パターンのオーバーレイを示す。
【0016】
図3図3は、ITI-007遊離塩基のフタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(グレード55)(HPMC-P)との分散体の粉末X線回折パターンのオーバーレイを示す
【0017】
図1、2および3のそれぞれについて、1番上のパターンは、生成時の25:75 ITI-007遊離塩基/賦形剤分散体であり;2番目のパターンは、ストレス後の25:75分散体であり;3番目のパターンは、生成時の50:50 ITI-007遊離塩基/賦形剤分散体であり;1番下のパターンは、ストレス後の50:50分散体である。
【0018】
図4図4は、ITI-007遊離塩基の酢酸セルロースとの25:75分散体のmDSCおよびTGAサーモグラフィーを示す。
【0019】
図5図5は、ITI-007遊離塩基の酢酸フタル酸セルロースとの50:50分散体のmDSCおよびTGAサーモグラフィーを示す。
【0020】
図6図6は、ITI-007遊離塩基のHPMC-Pとの50:50分散体のmDSCおよびTGAサーモグラフィーを示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
詳細な説明
以下の好ましい実施態様の記載は、単に例示的な性質のものであり、如何なる場合も本発明、その適用または使用を限定することを意図していない。
【0022】
全体を通して使用されるように、範囲は、その範囲内にあるそれぞれのおよび全ての値の記載の省略表現として使用される。範囲内の値は、範囲外範囲の終点として選択され得る。加えて、本明細書で引用した全ての参考文献は、出典明示によりその全体として本明細書の一部を構成する。本開示における定義と引用文献の定義との間に矛盾がある場合には、本開示が支配する。
【0023】
他に特定されない限り、本明細書および本明細書の他の箇所に表されるすべての百分率および量は、重量百分率をいうと解されるべきである。与えられた量は材料の有効重量に基づいている。
【0024】
第1の実施態様において、本開示は、1-(4-フルオロ-フェニル)-4-((6bR,10aS)-3-メチル-2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H,7H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8-イル)-ブタン-1-オン(ITI-007)遊離塩基対酢酸セルロースの比率5:95~50:50で酢酸セルロース賦形剤を含むアモルファス固体分散体の形態のITI-007遊離塩基(分散体1)を提供する。本開示は、また、以下の組成物を提供する:
1.1.分散体が重量比5:95~50:50(比率50:50を除く)でITI-007遊離塩基および酢酸セルロースを含む、分散体1。
1.2.分散体が重量比5:95~49:51、例えば、5:95~45:55、または10:90~40:60、または15:85~35:65、または20:80~30:70、または22:78~28:82、または23:77~27:83、または24:76~26:74、または約25:75でITI-007遊離塩基および酢酸セルロースを含む、分散体1または1.1。
1.3.分散体が、例えばXRPD分析によって示されるように、X線アモルファスである、いずれかの前記分散体。
1.4.X線回折パターンが賦形剤に特徴的なピークを含まない、いずれかの前記分散体。
1.5.分散体が、例えばmDSC分析によって示されるように、75℃以上、例えば100℃以上の温度または150℃以上の温度の、単一のガラス転移点(Tg)を示す、いずれかの前記分散体
1.6.分散体が160℃以上、または165℃~170℃、または約167℃の、単一のガラス転移点を示す、分散体1.5。
1.7.分散体が、例えばmDSCによって示されるように、0.1~0.5J/g・℃、例えば、0.2~0.3J/g・℃、または約0.2J/g・℃の熱容量の変化(ΔCp)を示す、いずれかの前記分散体。
1.8.分散体が、例えばTGA分析によって示されるように、100℃の温度までに10%未満の重量減少を示す、いずれかの前記分散体。
1.9.分散体が、100℃の温度までに8%未満の重量減少、例えば100℃の温度までに7%未満の重量減少または6%未満の重量減少または5%重量減少または4%未満の重量減少または3%未満の重量減少を示す、分散体1.8。
1.10.分散体が、40℃にて相対湿度75%で7日後に外観またはテクスチャーの変化を示さない、いずれかの前記分散体。
1.11.分散体が、例えばHPLCによって判断されるように、40℃にて相対湿度75%で7日後にITI-007の90%を超える化学的安定性を示す、いずれかの前記分散体。
1.12.分散体が、40℃にて相対湿度75%で7日後にITI-007の95%を超えるかまたは96%を超えるかまたは97%を超えるかまたは98%を超えるかまたは99%を超える化学的安定性を示す、分散体1.11。
1.13.分散体が、ITI-007遊離塩基および選択された賦形剤を適切な溶媒または溶媒混合物に溶解し、例えば溶液を凍結乾燥することにより、溶媒を除去して、アモルファス固体分散体を得ることを含む方法によって製造される、いずれかの前記分散体。
1.14.溶媒または溶媒混合物がジオキサン、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、アセトンおよびそれらの混合物から選択される、分散体1.13。
1.15.溶媒または溶媒混合物が、ジオキサン、メタノール、または例えばジオキサン対メタノールの比率90:10~98:2またはジオキサン対メタノールの比率92:8~95:5または比率約93:7のジオキサン/メタノール混合物から選択される、分散体1.13。
1.16.分散体が1.1~1.15に記載の特徴の組合せを示す、いずれかの前記分散体。
【0025】
第2の実施態様において、本開示は、ITI-007遊離塩基対酢酸フタル酸セルロースの比率25:75~75:25で酢酸フタル酸セルロース賦形剤を含むアモルファス固体分散体の形態のITI-007遊離塩基(分散体2)を提供する。本開示は、また、以下の組成物を提供する:
2.1.分散体が重量比25:75~75:25(比率25:75および75:25を除く)でITI-007遊離塩基および酢酸フタル酸セルロースを含む、分散体2。
2.2.分散体が重量比26:74~74:26、例えば30:70~70:30、または35:65~65:35、または40:60~60:40、または42:58~58:42、または44:56~56:44、または45:55~55:45、または47:53~53:47、または48:52~52:48、または49:51~51:49、または約50:50でITI-007遊離塩基および酢酸フタル酸セルロースを含む、分散体2または2.1。
2.3.分散体が、例えばXRPD分析によって示されるように、X線アモルファスである、いずれかの前記分散体。
2.4.X線回折パターンが賦形剤に特徴的なピークを含まない、いずれかの前記分散体。
2.5.分散体が、例えばmDSC分析によって示されるように、75℃以上、例えば85℃以上の温度または95℃以上の温度の、単一のガラス転移点(Tg)を示す、いずれかの前記分散体。
2.6.分散体が、100℃以上、または105℃~115℃、または約107℃の、単一のガラス転移点を示す、分散体2.5。
2.7.分散体が、例えばmDSCによって示されるように、0.1~0.6J/g・℃、例えば0.2~0.5J/g・℃、または約0.4J/g・℃の熱容量の変化(ΔCp)を示す、いずれかの前記分散体。
2.8.分散体が、例えばTGA分析によって示されるように、100℃の温度までに10%未満の重量減少を示す、いずれかの前記分散体。
2.9.分散体が、100℃の温度までに8%未満の重量減少、例えば100℃の温度までに7%未満の重量減少または6%未満の重量減少または5%未満の重量減少または4%未満の重量減少または3%未満の重量減少を示す、分散体2.8。
2.10.分散体が、40℃にて相対湿度75%で7日後に外観またはテクスチャーの変化を示さない、いずれかの前記分散体。
2.11.分散体が、例えばHPLCによって判断されるように、40℃にて相対湿度75%で7日後にITI-007の90%を超える化学的安定性を示す、いずれかの前記分散体。
2.12.分散体が、40℃にて相対湿度75%で7日後にITI-007の95%を超えるかまたは96%を超えるかまたは97%を超えるかまたは98%を超えるかまたは99%を超える化学的安定性を示す、分散体2.11。
2.13.分散体が、ITI-007遊離塩基および選択された賦形剤を適切な溶媒または溶媒混合物に溶解し、例えば溶液を凍結乾燥することにより、溶媒を除去して、アモルファス固体分散体を得ることを含む方法によって製造される、いずれかの前記分散体。
2.14.溶媒または溶媒混合物がジオキサン、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、アセトンおよびそれらの混合物から選択される、分散体2.13。
2.15.溶媒または溶媒混合物が、ジオキサン、メタノール、または例えばジオキサン対メタノールの比率90:10~98:2またはジオキサン対メタノールの比率92:8~95:5または比率約93:7のジオキサン/メタノール混合物から選択される、分散体2.13。
2.16.分散体が2.1~2.15に記載の特徴の組合せを示す、いずれかの前記分散体。
【0026】
第3の実施態様において、本開示は、ITI-007遊離塩基対HPMC-Pの比率25:75~75:25でフタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC-P)賦形剤を含むアモルファス固体分散体の形態のITI-007遊離塩基(分散体3)を提供する。本開示は、また、以下の組成物を提供する:
3.1.分散体が重量比25:75~75:25(比率25:75および75:25を除く)でITI-007遊離塩基およびHPMC-Pを含む、分散体3。
3.2.分散体が重量比26:74~74:26、例えば30:70~70:30、または35:65~65:35、または40:60~60:40、または42:58~58:42、または44:56~56:44、または45:55~55:45、または47:53~53:47、または48:52~52:48、または49:51~51:49、または約50:50でITI-007遊離塩基およびHPMC-Pを含む、分散体3または3.1。
3.3.分散体が、例えばXRPD分析によって示されるように、X線アモルファスである、いずれかの前記分散体。
3.4.X線回折パターンが賦形剤に特徴的なピークを含まない、いずれかの前記分散体。
3.5.分散体が、例えばmDSC分析によって示されるように、75℃以上、例えば、80℃以上の温度または85℃以上の温度の、単一のガラス転移点(Tg)を示す、いずれかの前記分散体。
3.6.分散体が、90℃以上、または92℃~98℃、または約95℃の、単一のガラス転移点を示す、分散体3.5。
3.7.分散体が、例えばmDSCによって示されるように、0.1~0.5J/g・℃、例えば、0.2~0.4J/g・℃、または約0.3J/g・℃の熱容量の変化(ΔCp)を示す、いずれかの前記分散体。
3.8.分散体が、例えばTGA分析によって示されるように、100℃の温度までに10%未満の重量減少を示す、いずれかの前記分散体。
3.9.分散体が、100℃の温度までに8%未満の重量減少、例えば100℃の温度までに7%未満の重量減少または6%未満の重量減少または5%未満の重量減少または4%未満の重量減少または3%未満の重量減少を示す、分散体3.8。
3.10.分散体が、40℃にて相対湿度75%で7日後に外観またはテクスチャーの変化を示さない、いずれかの前記分散体。
3.11.分散体が、例えばHPLCによって判断されるように、40℃にて相対湿度75%で7日後にITI-007の90%を超える化学的安定性を示す、いずれかの前記分散体。
3.12.分散体が、40℃にて相対湿度75%で7日後にITI-007の95%を超えるかまたは96%を超えるかまたは97%を超えるかまたは98%を超えるかまたは99%を超える化学的安定性を示す、分散体3.11。
3.13.分散体が、ITI-007遊離塩基および選択された賦形剤を適切な溶媒または溶媒混合物に溶解し、例えば溶液を凍結乾燥することにより、溶媒を除去して、アモルファス固体分散体を得ることを含む方法によって製造される、いずれかの前記分散体。
3.14.溶媒または溶媒混合物がジオキサン、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、アセトンおよびそれらの混合物から選択される、分散体3.13
3.15.溶媒または溶媒混合物が、ジオキサン、メタノール、または例えばジオキサン対メタノールの比率90:10~98:2またはジオキサン対メタノールの比率92:8~95:5または比率約93:7のジオキサン/メタノール混合物から選択される、分散体3.13。
3.16.分散体が3.1~3.15に記載の特徴の組合せを示す、いずれかの前記分散体。
【0027】
第2の態様において、本開示は、
(a)例えばジオキサン、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、アセトンおよびそれらの混合物から選択される、適切な溶媒または溶媒混合物中にて1-(4-フルオロ-フェニル)-4-((6bR,10aS)-3-メチル-2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H,7H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8-イル)-ブタン-1-オン(ITI-007)遊離塩基を選択された賦形剤と合わせる工程;および
(b)溶媒を除去し、このようにして形成されたアモルファス固体分散体を、例えば溶液の凍結乾燥により、回収する工程
を含む、分散体1およびそれ以降(et seq.)、または分散体2およびそれ以降、または分散体3およびそれ以降の製造方法(製造法1)を提供する。
【0028】
第2の態様の別の実施態様において、製造法1のための溶媒または溶媒混合物は、ジオキサン、メタノール、または例えばジオキサン対メタノールの比率90:10~98:2もしくは92:8~95:5またはジオキサン対メタノールの比率約93:7のジオキサン/メタノール混合物から選択され、該溶媒は凍結乾燥によって除去されてもよい。
【0029】
固体分散体とは、本明細書で用いる場合、医薬活性成分、すなわちITI-007の、不活性賦形剤またはマトリックス(担体)中の分散体をいい、該活性成分は、微結晶、可溶化またはアモルファスの状態で存在し得る。固体分散体中の賦形剤は典型的にはポリマーである。固体分散体中のポリマーの最も重要な役割は、貯蔵中の相分離および医薬活性成分の再結晶を回避するために医薬活性成分の分子運動性を低下させることである。該活性成分のアモルファス形態は、その結晶性対応体と比較してより高いエネルギー状態と関連しており、したがって、溶出(例えば、胃腸管または体内の他の場所において)を達成するために必要とされる外部エネルギーは有意に少ない。
【0030】
第3の態様において、本開示は、薬学的に許容される希釈剤または担体と組み合わせてまたはそれとともに(in combination or association with)、分散体1およびそれ以降または分散体2およびそれ以降または分散体3およびそれ以降を含む医薬組成物(組成物1)を提供する。いくつかの実施態様において、医薬組成物は、経口投与用の錠剤またはカプセル剤の剤形のものである。いくつかの実施態様において、医薬組成物は、持効性注射剤(LAI)として使用するためのデポ製剤の剤形のものである。医薬組成物は、また、適切な薬学的に許容される賦形剤、例えば:希釈剤、例えばデンプン、アルファ化デンプン、ラクトース、粉末セルロース、微結晶セルロース、リン酸二カルシウム、リン酸三カルシウム、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、糖など;結合剤、例えばアカシア、グアーガム、トラガント、ゼラチン、ポリビニルピロリドン(例えば、ポリビニルピロリドン(PVP K-30、K-90)、ポリ(ビニルピロリドン-co-酢酸ビニル)(PVP-VA)など)、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸セルロース、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC-AS)など;崩壊剤、例えばデンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、アルファ化デンプン、クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウムなど;滑沢剤、例えばステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛など;流動促進剤、例えばコロイド状二酸化ケイ素など;溶解度または湿潤増強剤、例えば陰イオン性または陽イオン性または中性界面活性剤;マルトデキストリン、複合体形成剤、例えば種々のグレードのシクロデキストリンおよび樹脂;放出速度制御剤、例えばヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、種々のグレードのメタクリル酸メチル、ワックスなど;ならびにフィルム形成剤、可塑剤、着色剤、矯味矯臭剤、甘味剤、増粘剤、保存剤、抗酸化剤などを含み得る。
【0031】
第3の態様の別の実施態様において、組成物は、また、1種類以上の抗酸化剤、例えば、トコフェロール、酪酸ヒドロキシトルエン(BHT)、没食子酸プロピル(OPG)、またはおよびアスコルビン酸などを含み得る。抗酸化剤を含むことは、また、ITI-007活性成分の酸化的化学分解を防止することにより分散体の化学的安定性を向上させることができる。別の実施態様において、分散体自体がこのような抗酸化剤を含むように製剤化される。
【0032】
別の態様において、本開示は、5-HT2A受容体、セロトニントランスポーター(SERT)および/またはドーパミンD1/D2受容体シグナル伝達経路が関与しているかまたはこれらによって媒介される疾患または異常状態、例えば、肥満症、食欲不振症、過食症、うつ病、不安、精神病、統合失調症、片頭痛、強迫性障害、性障害、うつ病、統合失調症、片頭痛、注意欠陥障害、注意欠陥多動障害、強迫性障害、睡眠障害、頭部痛関連状態(conditions associated with cephalic pain)、社会恐怖症、または認知症から選択される障害の処置に使用するための、分散体1およびそれ以降、または分散体2およびそれ以降、または分散体3およびそれ以降、または、分散体1およびそれ以降もしくは分散体2およびそれ以降もしくは分散体3およびそれ以降を含む医薬組成物、例えば組成物1を提供する。
【0033】
別の実施態様において、本発明は、5-HT2A受容体、セロトニントランスポーター(SERT)および/またはドーパミンD1/D2受容体シグナル伝達経路が関与しているかまたはこれらによって媒介される疾患または異常状態、例えば、肥満症、食欲不振症、過食症、うつ病、不安、精神病、統合失調症、片頭痛、強迫性障害、性障害、うつ病、統合失調症、片頭痛、注意欠陥障害、注意欠陥多動障害、強迫性障害、睡眠障害、頭部痛関連状態、社会恐怖症、または認知症から選択される障害に罹患しているヒトの予防または治療方法であって、該予防または治療を必要とする患者に、分散体1およびそれ以降、または分散体2およびそれ以降、または分散体3およびそれ以降、または、分散体1およびそれ以降もしくは分散体2およびそれ以降もしくは分散体3およびそれ以降を含む医薬組成物、例えば組成物1の治療上有効量を投与することを含む、方法を提供する。
【実施例
【0034】
例示される共結晶形態を単離して特徴付けるために、以下の装置および方法が使用される:
【0035】
粉末X線回折(XRPD): PANalytical X'Pert PRO MPD回折計を用いて、Optixロングファインフォーカス線源を使用して生成されたCu線の入射ビームを使用して、粉末X線回折実験を行う。楕円形に傾斜した多層ミラーを用いて、CuKαX線が検体を通過して検出器上で焦点を結ぶようにする。分析前に、ケイ素検体を分析して、観察されたSi(111)ピークの位置を確認する(NIST認証の位置、NIST SM 640eと一致)。試料検体を3ミクロン厚のフィルムの間に挟み、透過幾何学で解析を行う。ビームストップ、短い散乱線除去エクステンション、および散乱線除去ナイフエッジを使用して、空気により生じるバックグラウンドを最小限にする。入射ビームおよび回折ビーム用のソーラースリットを使用して、軸発散による広がりを最小限にする。検体から240mmに配置された走査位置感受性検出器(X'Celerator)を使用して、回折パターンを収集する。Data Collectorソフトウェアv. 2.2bを解析に用いる。
【0036】
熱重量分析(TGA): TA Instruments Q5000またはDiscovery熱重量分析器を使用して、TGAを行う。試料をアルミニウム試料パンに置き、TG炉内に入れる。試料を室温から250℃まで10℃/分の速度で加熱する。較正基準としてニッケルおよびアルメルを使用する。
【0037】
変調示差走査熱量測定(mDSC): 冷凍冷却システム(refrigerated cooling system)を装備したTA Instruments Q2000または2920示差走査熱量計でmDSCデータを得る。NISTトレーサブルインジウム金属を使用して、温度較正を行う。アルミニウムT-zero DSCパンに試料を入れ、蓋をし、重量を正確に記録する。試料パンとして構成された秤量済のアルミニウムパンをセルの参照側に置く。典型的には、開始温度は-50℃であり、終了温度は250℃であり、振幅変調は±1℃、基礎加熱速度2℃/分で50秒間である。
【0038】
高速液体クロマトグラフィー(HPLC): ダイオードアレイ検出器、脱気装置、4元ポンプおよびオートサンプラーを装備したAgilent 1100シリーズ液体クロマトグラフを使用して高速液体クロマトグラフィー分析を行う。カラムは、水移動相A中0.1%TFAおよびアセトニトリル移動相B中0.1%TFAを流速0.500mL/分で流す2.5ミクロンパッキング(XSelect)を有する4.6×100mm CSH C18カラムである。勾配は、最初の22分間で95%Aから73%、続いて73%Aで6分間、続いて次の22分間で73%Aから30%Aまでである。カラム温度は、15.0℃に設定され、検出器波長は254nmであり、バンド幅は100nmであり、参照波長は360nmである。注入量は2.0μlである。
【0039】
実施例1: 分散体の調製
まず、種々の溶媒におけるITI-007遊離塩基および種々の賦形剤の溶解度を評価する。ITI-007遊離塩基は、アセトン、エタノール、メタノール、ジオキサンおよび2,2,2-トリフルオロエタノール(TFE)において良好な溶解度(>50mg/mL)を示すが、tert-ブタノール/水混合物においては相対的に低い溶解度(5~50mg/mL)を示すことが判明する。しかしながら、ITI-007遊離塩基のTFE中溶液は、活性成分の分解に起因して急速に変色することが判明する。
【0040】
評価された賦形剤は、Eudragit L100、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマー、ポリビニルピロリドンK-90、ポリビニルピロリドンS-630、酢酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、Gelucire 50/13、モノステアリン酸グリセリル、ヒドロキシプロピルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC-P)、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチル(HPMC-AS)、ポリエチレングリコール(PEG)、コハク酸PEG-100、Pluronic F-127およびSoluplusである。賦形剤は、ITI-007遊離塩基対賦形剤の比率25:75、50:50および75:25のうち1つ以上で評価した。
【0041】
溶解度分析に基づいて、3:1のアセトン-エタノールで種々の賦形剤とITI-007遊離塩基との溶液を調製する。溶媒を除去するためにロータリーエバポレーションが試みられるが、これにより、全ての場合において、固体ではなく油状物質が生じる。
【0042】
固体分散体は、ITI-007遊離塩基および賦形剤のジオキサンまたはジオキサン-メタノール(90:10、91:9、92:8、93:7もしくは94:6)中溶液から凍結乾燥により成功裏に調製される。まず、溶液をドライアイス/アセトン浴中にて凍結させ、次いで、棚を-75℃に予め冷却しておいた凍結乾燥器に入れる。試料を-50℃で一夜乾燥し、続いて、-20℃、次いで、0℃で2日間にわたって乾燥する。次いで、試料を20℃で4時間二次乾燥し、窒素でパージし、次いで、試験まで乾燥剤を入れた冷凍庫で貯蔵する。
【0043】
実施例2: 予備スクリーニング
実施例1から得られた固体分散体をまずXRPDによって評価して、それらがアモルファスかどうかを決定する。アモルファス賦形剤を使用した凍結乾燥試料は全てXRPDによってX線アモルファスであることが判明する。結晶性賦形剤(Gelucire 50/13、PEG、コハク酸PEG-1000、Pluronic F-127)を使用した凍結乾燥試料は、存在するピークが賦形剤のみに対応していて無秩序である(disordered)ことが判明する。固体の外観のさらなる観察結果を下記の表1に示す。50:50のITI-007/コハク酸PEG-1000分散体は、非常に粘着性であることが判明し、さらには評価されない。
【0044】
実施例3: 安定性評価
実施例1からの固体分散体を蓋のない透明な硝子バイアルに入れ、該バイアルを、相対湿度75%および温度40℃で7日間維持した容器に入れる。並行して、ITI-007遊離塩基の試料を対照として分析する。試料は、目視で、および偏光顕微鏡(0.8~10倍の倍率、ならびに交差偏光子(crossed polarizers)および一次赤色補償板(first order red compensator))によって観察した。観察結果を表1に示す。大部分のサンプルは外観またはテクスチャーの変化を示し、これは物理的に不安定なアモルファス分散体の形成を示している。例えば、いくつかは目視できる結晶化を示すが、他のものは粘着性の固体または油状物となる。
【0045】
物理的に安定な易流動性(free-flowing)の固体である分散体をさらにXRPDによって分析して、それらがX線アモルファスのままであるかまたは賦形剤ピークのみで無秩序であるかを確認する。XRPD結果により、目視的に安定な試料がX線アモルファス分散体のままであることが確認される。
【0046】
物理的に安定な易流動性の試料に対してmDSCおよびTGA分析を行う。mDSCにおける単一ガラス転移点は、固体が非結晶性混和性分散体であるという結論を支持する。2つのPEG分散体は、9℃または10℃で許容されない低温ガラス転移を示すが、モノステアリン酸グリセリル分散体はガラス転移を示さない。50:50の酢酸セルロース分散体は、2つのガラス転移点を示すが、許容されない相分離した物質を示唆する。25:75の酢酸セルロース分散液、25:75の酢酸フタル酸セルロース分散液、50:50の酢酸フタル酸セルロース分散液、25:75のHPMC-AS分散液、50:50のHPMC-AS分散液、25:75のHPMC-P分散液および50:50のHPMC-P分散液のみが75℃を超える許容される単一ガラス転移点を示す。
【0047】
次いで、7日間研究の間、mDSCおよびTGAを受けた全ての試料にHPLC分析を受けさせて、ITI-007活性薬剤の化学的安定性を決定する。対照として、ITI-007遊離塩基試料もまたHPLCにより分析する。全ての結果を、7日間研究の前にHPLCにより示されたITI-007含有量に正規化させる。HPLCによるITI-007の減少が5%未満である場合には満足のいくものと考えられる。
【0048】
両方のHPMC-AS分散体、および25:75のHPMC-P分散体は、HPLCにより非常に高い物質減少を示す。25:75の酢酸フタル酸セルロース分散体は、物質の、低いが許容されない減少を示す。7種類の分散体だけが満足のいく結果を生じる:25:75の酢酸セルロース、50:50の酢酸セルロース、50:50の酢酸フタル酸セルロース、50:50のHPMC-P、25:75のPEG、50:50のPEGおよび25:75のステアリン酸グリセリル。したがって、これらの分散体は化学的に安定である。
【0049】
試験結果を合わせて下記の表1に示す。
【表1-1】
【表1-2】
【0050】
試験した分散体のうち、3つだけが化学的に安定でありかつ物理的に安定であることが判明する:25:75の酢酸セルロース、50:50の酢酸フタル酸セルロースおよび50:50のHPMC-P。
【0051】
ITI-007遊離塩基の代わりにITI-007トシラート塩を使用して行った同様の実験では安定なアモルファス分散体が得られないことに留意される。ITI-007トシラート分散体のほとんどが初期スクリーンを通過する(X線アモルファスであるかまたは賦形剤に起因するX線ピークのみを示す)が、得られた初期分散体の全てが強い物理的不安定性(色および外観の変化、分散体からの活性薬物の結晶化を含む)または化学的不安定性(HPLCによる10~68%分解)を示す。例えば、ITI-007トシラートと酢酸セルロースとの25:75分散体はエージング実験中にITI-007の結晶化を生じた;TI-007トシラートと酢酸フタル酸セルロースとの50:50分散体は、HPLCによりITI-007含有量の約52%減少を示した;ITI-007トシラートとHPMC-Pとの50:50分散体はHPLCによりITI-007含有量の約68%の減少を示した。ITI-007トシラートはITI-007遊離塩基よりも化学的に安定であるので、これらの結果は予想外である。このように、ITI-007遊離塩基の3つの特定のアモルファス固体分散体が物理的および化学的に安定であるのに対して、ITI-007トシラートの対応する分散体がそうではないことは特に予想外である。
本願は、下記の態様も含んでいる。
[態様1]
(a)酢酸セルロース賦形剤をITI-007遊離塩基対酢酸セルロースの比率5:95~50:50で;または
(b)酢酸フタル酸セルロース賦形剤をITI-007遊離塩基対酢酸フタル酸セルロースの比率25:75~75:25で;または
(c)HPMC-P賦形剤をITI-007遊離塩基対HPMC-Pの比率25:75~75:25で
含む、アモルファス固体分散体の形態の1-(4-フルオロ-フェニル)-4-((6bR,10aS)-3-メチル-2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H,7H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8-イル)-ブタン-1-オン(ITI-007)遊離塩基。
[態様2]
分散体が酢酸セルロース賦形剤をITI-007遊離塩基対酢酸セルロースの比率5:95~50:50で含む、態様1記載の分散体。
[態様3]
分散体がITI-007遊離塩基および酢酸セルロースを重量比5:95~50:50(比率50:50を除く)で含む、態様2記載の分散体。
[態様4]
分散体が酢酸フタル酸セルロース賦形剤をITI-007遊離塩基対酢酸フタル酸セルロースの比率25:75~75:25で含む、態様1記載の分散体。
[態様5]
分散体がITI-007遊離塩基および酢酸フタル酸セルロースを重量比25:75~75:25(比率25:75および75:25を除く)で含む、態様4記載の分散体。
[態様6]
分散体がHPMC-P賦形剤をITI-007遊離塩基対HPMC-Pの比率25:75~75:25で含む、態様1記載の分散体。
[態様7]
分散体がITI-007遊離塩基およびHPMC-Pを重量比25:75~75:25(比率25:75および75:25を除く)で含む、態様6記載の分散体。
[態様8]
分散体がX線アモルファスである、態様1記載の分散体。
[態様9]
X線回折パターンが賦形剤に特徴的なピークを含まない、態様1記載の分散体。
[態様10]
分散体が75℃以上の単一のガラス転移点(T g )を示す、態様1記載の分散体。
[態様11]
分散体が100℃の温度までに10%未満の重量減少を示す、態様1記載の分散体。
[態様12]
分散体が、40℃にて相対湿度75%で7日後に、外観またはテクスチャーの変化を示さない、態様1記載の分散体。
[態様13]
分散体が、40℃にて相対湿度75%で7日後に、ITI-007の90%を超える化学的安定性を示す、態様1記載の分散体。
[態様14]
分散体が、ITI-007遊離塩基および選択された賦形剤を適切な溶媒または溶媒混合物に溶解し、該溶媒を除去してアモルファス固体分散体を得ることを含む方法によって製造される、態様1記載の分散体。
[態様15]
溶媒または溶媒混合物がジオキサン、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、アセトンおよびそれらの混合物から選択される、態様14記載の分散体。
[態様16]
溶媒または溶媒混合物がジオキサン、メタノール、またはジオキサン/メタノール混合物から選択される、態様14記載の分散体。
[態様17]
溶媒または溶媒混合物が、ジオキサン対メタノールの比率90:10~98:2、またはジオキサン対メタノールの比率92:8~95:5、もしくは93:7のジオキサンおよびメタノールである、態様16記載の分散体。
[態様18]
(a)適切な溶媒または溶媒混合物中にて1-(4-フルオロ-フェニル)-4-((6bR,10aS)-3-メチル-2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H,7H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8-イル)-ブタン-1-オン(ITI-007)遊離塩基を選択された賦形剤と合わせる工程;および
(b)溶媒を除去し、このようにして形成されたアモルファス固体分散体を回収する工程
を含む、態様1記載の分散体の製造方法。
[態様19]
薬学的に許容される希釈剤または担体と組み合わせてまたはそれとともに(in combination or association with)態様1記載の分散体を含む医薬組成物。
[態様20]
組成物が経口投与用の錠剤またはカプセル剤の剤形である、態様19記載の組成物。
[態様21]
組成物が持効性注射剤(LAI)として使用するためのデポ製剤の剤形である、態様19記載の組成物。
[態様22]
5-HT 2A 受容体、セロトニントランスポーター(SERT)および/またはドーパミンD 1 /D 2 受容体シグナル伝達経路が関与しているかまたはこれらによって媒介される疾患または異常状態、例えば、肥満症、食欲不振症、過食症、うつ病、不安、精神病、統合失調症、片頭痛、強迫性障害、性障害、うつ病、統合失調症、片頭痛、注意欠陥障害、注意欠陥多動障害、強迫性障害、睡眠障害、頭部痛関連状態、社会恐怖症、または認知症から選択される障害に罹患しているヒトの予防方法または治療方法であって、該予防または治療を必要とする患者に、態様1記載の分散体の治療上有効量を投与することを含む、方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6