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特許7013473眼または他の損傷を受けやすい組織を撮像および保護するための超音波システム
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  • 特許-眼または他の損傷を受けやすい組織を撮像および保護するための超音波システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-21
(45)【発行日】2022-01-31
(54)【発明の名称】眼または他の損傷を受けやすい組織を撮像および保護するための超音波システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/14 20060101AFI20220124BHJP
   A61B 3/10 20060101ALI20220124BHJP
【FI】
A61B8/14
A61B3/10 900
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019534153
(86)(22)【出願日】2017-12-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-02-13
(86)【国際出願番号】 US2017067103
(87)【国際公開番号】W WO2018118810
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2019-08-30
(31)【優先権主張番号】15/389,428
(32)【優先日】2016-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519019791
【氏名又は名称】フジフイルム ソノサイト インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】ケリー ジーナ
(72)【発明者】
【氏名】ランドバーグ アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムズ キース
(72)【発明者】
【氏名】ダンバー リー ディー
【審査官】冨永 昌彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-078016(JP,A)
【文献】特開2016-010715(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0082669(US,A1)
【文献】特開2015-084909(JP,A)
【文献】特開2015-188467(JP,A)
【文献】特開2010-259662(JP,A)
【文献】特開2015-024133(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0081667(US,A1)
【文献】特開平04-114624(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0196236(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 - 8/15
A61B 3/00 - 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波イメージングシステムであって、
受信した超音波信号から検査中の組織の画像を生成するように構成された画像プロセッサと、
プロセッサであって、
損傷を受けやすい組織に対して安全なエネルギーのレベルで超音波信号を生成することによって撮像を開始し、
撮像中の前記組織が損傷を受けやすい組織であるかどうかを決定するために前記画像を分析し、
前記組織が損傷を受けやすい組織であると決定することに応答して、損傷を受けやすい組織に対して安全なエネルギーのレベルで超音波信号を生成することを継続し、または
前記組織が損傷を受けやすい組織でないと決定することに応答して、前記超音波信号のエネルギー前記レベルを上昇させる、
ように構成されたプロセッサと、
を備える、超音波イメージングシステム。
【請求項2】
前記損傷を受けやすい組織が眼の組織である、請求項1に記載の超音波イメージングシステム。
【請求項3】
前記プロセッサが、目の中に存在する解剖学的構造の前記存在について前記組織の前記画像を分析するように構成される、請求項2に記載の超音波イメージングシステム。
【請求項4】
前記損傷を受けやすい組織が胎児の組織である、請求項1に記載の超音波イメージングシステム。
【請求項5】
前記プロセッサが、一つまたは複数のシステム設計が前記損傷を受けやすい組織の撮像に対して正確であることを確認するようにユーザに警告を発することによって伝えられた前記エネルギーが前記損傷を受けやすい組織に対して安全であることを確認するように構成される、請求項1に記載の超音波イメージングシステム。
【請求項6】
前記プロセッサが、生成された超音波信号の発信パワーを減少させることによって伝えられた前記エネルギーが損傷を受けやすい組織に対して安全であることを確認するように構成される、請求項1に記載の超音波イメージングシステム。
【請求項7】
前記プロセッサが、前記超音波信号の最大発信電圧を制御することによって生成された前記超音波信号のパワーレベルを制御するように構成される、請求項6に記載の超音波イメージングシステム。
【請求項8】
前記プロセッサが、前記超音波信号のデューティサイクルを制御することによって生成された前記超音波信号のパワーレベルを制御するように構成される、請求項6に記載の超音波イメージングシステム。
【請求項9】
前記プロセッサが、前記超音波信号を生成するトランスデューサ内の発信素子の数を制御することによって生成された前記超音波信号のパワーレベルを制御するように構成される、請求項6に記載の超音波イメージングシステム。
【請求項10】
前記プロセッサが、前記画像プロセッサによって生成された前記画像と眼の組織を表すことが分かっている一つまたは複数の超音波画像とを比較するように構成される、請求項2に記載の超音波イメージングシステム。
【請求項11】
前記プロセッサが目の中に存在することが分かっている一つまたは複数の解剖学的特徴の描写のために前記画像プロセッサによって生成された前記画像を分析するように構成される、請求項2に記載の超音波イメージングシステム。
【請求項12】
超音波イメージングシステムであって、
検査中の組織の画像を生成するように構成された画像プロセッサと、
プロセッサであって、
損傷を受けやすい組織に対して安全なエネルギーレベルで超音波信号を生成することにより撮像を開始し、
撮像中の前記組織が損傷を受けやすい組織であるかどうかを決定するために検査中の前記組織の画像を分析し、
前記組織が損傷を受けやすい組織であると決定することに応答して、損傷を受けやすい組織に対して安全なエネルギーのレベルで超音波信号を生成することを継続し、または
前記組織が損傷を受けやすい組織でないと決定することに応答して、前記超音波信号のエネルギーの前記レベルを上昇させる、
ように構成されるプロセッサと、
を備える超音波イメージングシステム。
【請求項13】
前記プロセッサが、ユーザに前記超音波システムの一つまたは複数の設定が損傷を受けやすい組織の撮像に適切であることを確認するように要求する警告を発するように構成される、請求項12に記載の超音波イメージングシステム。
【請求項14】
前記損傷を受けやすい組織が眼の組織である、請求項12に記載の超音波イメージングシステム。
【請求項15】
前記損傷を受けやすい組織が胎児の組織である、請求項12に記載の超音波イメージングシステム。
【請求項16】
前記プロセッサが、超音波プローブ上のカメラによって生成された画像を分析するように構成される、請求項12に記載の超音波イメージングシステム。
【請求項17】
前記プロセッサが、超音波プローブによって受信されたエコー信号から生成された画像を分析するように構成される、請求項12に記載の超音波イメージングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願]
本出願は2016年12月22日に出願された米国特許出願第15/389,428号に基づく優先権を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
[技術分野]
本開示技術は超音波イメージングシステムに関し、特には眼または他の損傷を受けやすい組織の撮像に有用な超音波イメージングシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
眼(例えば、目)を検査する非侵襲性の撮像技術である超音波は、組織の健康、外傷または病気を評価するためにますます使用されている。超音波イメージングを用いて、高周波の音波が組織内に発信され、対応するエコー信号が検出され分析される。それらの振幅、位相および周波数シフト等のエコー信号の一つまたは複数の特徴が分析され、組織の画像に描写される。
【0004】
超音波イメージングについての潜在的な危険性は組織内に伝えられるエネルギーが組織の加熱および/または体液のキャビテーションを引き起こすのに十分に大きい場合である。これらの影響は超音波信号が目に印加される場合に特に危険である。
【0005】
大部分の超音波オペレータが眼または他の損傷を受けやすい組織に安全なレベルの超音波エネルギーを印加するように訓練されているものの、このような検査は戦場、事故現場あるいは誤りが生じる可能性のある混沌とした状況で実行され得る。加えて、ヒューマンエラーにより、オペレータが損傷を受けやすい組織の検査の前に超音波イメージングシステムの発信パワーを適切なレベルに設定し忘れることが発生し得る。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本開示技術の一実施形態に基づく、眼の組織の画像を取得し表示するための超音波イメージングシステムの単純化されたダイアグラムである。
図2】本開示技術の一実施形態に基づく、超音波イメージングシステムのブロックダイアグラムである。
図3】目の組織の一般的な超音波画像を示す。
図4】画像が眼の組織を描写しているかどうかを決定するために超音波画像から取得することのできる測定結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下でさらに詳細に説明されるように、本開示技術は超音波イメージングシステムの改良に関し、特には、過度な音響エネルギーが眼の組織等の損傷を受けやすい組織に伝えられる可能性を低減する超音波イメージングシステムに関する。一実施形態では、プロセッサは撮像中の組織が眼の組織である可能性があるかを決定するために超音波画像を分析するようにプログラムされている。そうである場合、プロセッサは超音波マシンの設定がこのタイプの組織に対して適切であることおよび/または生成される音響エネルギーが許容可能な範囲内であることをオペレータが確認するように促す警告を発するように動作する。別の実施形態では、プロセッサはスキャンの開始前に、設定が適切であることおよび/または生成される信号の音響エネルギーが眼の組織に対して安全な範囲内であることを確認するようにプログラムされる。一実施形態では、超音波システムは組織の画像を取得し、プロセッサは組織が眼または他の損傷を受けやすい組織であるかどうかを決定するために画像を分析するように構成される。その組織が眼の組織でない場合、次にシステム設定および/または生成された音響エネルギーはプログラムの制御下で、またはオペレータにより変更することができる。他の実施形態もまた開示される。
【0008】
図1は、患者の目を撮像するための本開示技術を実装する例示的な超音波イメージングシステムを示す。開示される実施形態では、超音波イメージングシステム10はスキャン中の組織の画像を生成するために関心領域に超音波信号を発信し、対応するエコー信号を受信するためのトランスデューサプローブ12を使用する手持ち、携帯用またはカートベースのシステムとすることができる。プローブ12はビーム角の範囲にわたってトランスデューサを掃引するように機械的に移動する単一素子トランスデューサを含むことができる。あるいは、プローブ12は電気的に発信および受信ビーム角を選択的に変更することのできる一次元または二次元フェーズドアレイを含むことができる。
【0009】
超音波イメージングシステム10は、受信したエコー信号を、オペレータが見ることができ、デジタル記録保持のために電子的に格納することができ、または有線もしくは無線通信リンクを介して別のデバイスもしくは場所に送信することのできる画像に変換する。本開示技術のいくつかの実施形態に基づくと、超音波イメージングシステムは撮像中の組織が眼の組織である可能性があるかどうかを決定するようにプログラムされたプロセッサを含み、伝えられる超音波信号のエネルギーはそのような組織にとって安全な範囲内になるように選択されるべきである。
【0010】
いくつかの実施形態では、超音波イメージングシステム内のプロセッサはシステムによって生成された画像が眼の組織を表す可能性があるかどうかを決定するために画像認識技術を使用する。そうである場合、システム設定および/または発信エネルギーがそれらがそのような組織を撮像するために安全であることを確認するためにチェックされる。設定を誤っていたりまたは発信エネルギーが高すぎたりした場合、プロセッサは設定を変更するかもしくは発信レベルを引き下げるか、またはユーザに眼の組織に対して安全で適切な撮像状態を選択するようにユーザに警告するようにプログラムされる。別の実施形態では、システム設定は損傷を受けやすい組織に合わせて設定され、および/または撮像中の組織が損傷を受けやすい組織でないとプロセッサが決定できるまでは超音波システムの発信エネルギーは制限される。その組織が眼または他の損傷を受けやすい組織でないと決定されると、システム設定および/または発信エネルギーレベルはプロセッサまたはユーザによって引き上げることができる。
【0011】
さらに別の実施形態ではトランスデューサプローブは携帯電話にみられるのと同様の小型イメージングカメラを含むことができる。プローブが使用されているとき、または使用されようとしているとき、カメラによってキャプチャされた画像は検査中の組織のタイプを決定するためにプロセッサによって分析される。画像がその組織が眼の組織であることを示す場合、超音波システム内のプロセッサは警告を発するか、またはシステム設定および/または伝えられる超音波信号の発信エネルギーが安全な範囲内であるように設定することができる。
【0012】
図2は、本開示技術の実施形態に基づく超音波イメージングシステムの単純化されたブロックダイアグラムである。当業者には理解されるように、超音波システムはこれら示されているものとは異なる構成要素を用いて構成され得る。加えて、超音波システムは論じられておらず(例えば、電源等)、また本開示技術をどのように成し、使用するかを理解するために必要でない構成要素を含む。示されている実施形態では、以下でさらに詳細に説明されるように、超音波システムは超音波イメージングシステムを動作させるためにプロセッサによって実行可能な命令を含む内蔵または外部メモリ(図示されていない)を有するプロセッサ40を含む。発信経路において、超音波システムは発信ビームフォーマ42、発信利得制御増幅器44、および発信/受信スイッチ46を含む。超音波プローブ12がフェーズドアレイタイプである場合、発信ビームフォーマ42は所望の方向(所望のビーム角)で建設的に追加されるプローブのトランスデューサ素子から超音波ビームを生成するように選択された相対振幅および位相(タイミング)を有するいくつかの信号を生成するように動作する。発信ビームフォーマからの信号はトランスデューサ素子が検査中の組織内に所望の音響信号を生成させるのに十分に高い電圧レベルまで発信増幅器44によって増幅される。
【0013】
いくつかの実施形態では、プロセッサ40は0-225のデジタル値のような制御コマンドを供給するために生成される信号内のエネルギーの総量を制御するために発信利得制御増幅器に接続される。超音波信号のエネルギーを変える方法には、発信増幅器44上の電圧レール(+V、-V)を制御すること、または生成された信号の振幅もしくはデューティサイクルのうち一つまたは複数を変更すること、または信号パルスを発信する様々な数のトランスデューサ素子に信号を供給することを含む。
【0014】
増幅された発信信号が発信/受信スイッチ46を介してトランスデューサプローブ12に供給され、それらがトランスデューサプローブ12に伝えられるときに発信信号から高感度の受信電子機器を切断または遮断する。信号が発信された後、戻ってきた音波がトランスデューサ素子に衝突する際に生成される対応する電子エコー信号を検出するために、発信/受信スイッチ46はポジションを変更して受信電子機器をトランスデューサ素子に接続する。
【0015】
受信経路において、超音波イメージングシステムは低ノイズ増幅器50、時間利得制御(TGC)増幅器52、アナログ-デジタル変換器54、受信ビームフォーマ56および画像プロセッサ58を含む。撮像プローブによって生成されたアナログエコー信号は発信/受信スイッチ46を介してそれらが増幅される低ノイズ増幅器に向けられる。TGC増幅器52は(例えば深さに対する信号の減衰を打ち消すために撮像中の組織の深さに比例して)信号の戻り時間に応じて受信信号に様々な増幅率を適用する。増幅された信号は次にアナログ-デジタル変換器54によってデジタル形式に変換される。デジタル化されたエコー信号は次に画像プロセッサに供給される前に受信ビームフォーマ56によって遅延され、合計される。
【0016】
受信信号から画像プロセッサ58によって生成された画像はディスプレイ60に表示される。加えて、画像は将来呼び出して再検討するために画像メモリ(図示されていない)に記録することができる。いくつかの入力72は、オペレータが超音波イメージングシステムのオペレーティングパラメータを変更すること、および患者の名前や他の記録保持データ等のデータを入力することを可能にするために提供される。加えて、超音波イメージングシステムはシステムが有線(例えば、Ethernet、USB、Firewire等)または無線(例えば、802.11、セルラー、衛星、Bluetooth(登録商標)等)通信リンクを介してコンピュータ通信リンク(LAN、WAN、インターネット等)に接続することを可能にする入力/出力(I/O)回路を含む。I/O回路はユーザと通信するための一つまたは複数のスピーカーを含むこともできる。
【0017】
超音波イメージングシステムを構成する構成要素の詳細およびそれらがどのように動作するかは、一般に当業者には周知であると考えられる。超音波イメージングシステムが多くの別々の構成要素を有しているように示されているが、ASICまたはデジタル信号プロセッサ(DSP)等のデバイスがこれら個々の要素のうち複数のものの機能を実行するために使用され得ることを解されたい。
【0018】
前述のように、プロセッサ40は高出力の超音波信号が目等の損傷を受けやすい組織に印加される可能性を低減させるようにプログラムされる。一実施形態では、検査中の組織が眼の組織である場合、検査中の組織が超音波信号によって損傷することのないようにシステム設定をチェックし、伝えられるエネルギーを制御するようオペレータに警告を発するようにプログラムされる。本開示技術は眼の組織に伝えられるエネルギーの量を制限する文脈において説明されるが、本技術はまた胎児または他の損傷を受けやすい組織に伝えられるエネルギーの量を制限するために使用することもできる。
【0019】
一実施形態では、プロセッサ40は画像が眼の組織または他の損傷を受けやすい組織を表すかどうかを決定するために画像プロセッサ58によって生成された画像を分析するようにプログラムされ、組織に伝えられるエネルギーは制限されるべきである。別の実施形態では、プロセッサは検査中の組織が眼の組織でないことを決定するために画像プロセッサ58によって生成された画像を分析する。プロセッサは最初にシステム設定および/または発信パワーを損傷を受けやすい組織の撮像に適したレベルに設定し、プロセッサが撮像中の組織が眼または他の損傷を受けやすい組織でないと決定されるとプロセッサまたはユーザはシステム設定および/または発信パワーを変更することが可能になる。
【0020】
いくつかの実施形態では、超音波システムのプロセッサは発信電圧とメカニカルインデックス(MI)、サーマルインデックス(TI)、および空間ピーク時間平均強度(SPTA)等の一つまたは複数の撮像パラメータとを関連付ける認証モデルを使用して、組織に伝えられる超音波信号の起こり得る生物学的効果を推定するようにプログラムされる。損傷を受けやすい組織への損傷を防ぐために、プロセッサはこれらのパラメータのうちいずれかに対する推奨値を超えないであろう正確な発信電圧を決定するためにそのモデルを使用する。損傷を受けやすい組織への損傷を防ぐために、プロセッサは損傷を受けやすい組織が撮像されていることを検出し、パラメータ値がそのような組織に対して安全であることを確認するようにユーザに警告する。あるいは、そのような損傷を受けやすい組織が撮像されていないことが確認されるまで、プロセッサはそのような組織に対して安全なパラメータ値を選択し、またはそのような組織に対して安全な値を有するようにパラメータを設定することができる。他の実施形態では、そのようなイメージングモードが検査中の組織のタイプに対して安全であることが確認されるまではBモードまたはMモードイメージングよりも高いエネルギー発信を必要とするいくつかのイメージングモード(例えばカラードップラー)は可能にならない。
【0021】
図3は、目の一般的な超音波画像を示す。画像中の様々な解剖学的特徴は、小さなエコー信号が受信される低強度(例えば、黒色の)領域と比較して明るいエリアとして見ることができる。画像中で容易に検出できる二つの特徴は水晶体の裏面および網膜である。ほとんどの人は、これらの形状はかなり一定である傾向があり、一般に均一な大きさである。したがって、一実施形態では、プロセッサ(またはDSPまたはグラフィックプロセッサ)はこれらの特徴のうち一つまたは複数の有無を検出するためにグラフィックプロセッサによって生成された画像を分析するようにプログラムされる。これらの特徴のうち一つまたは複数が存在する場合、次にプロセッサは眼である可能性のある組織を分類するようにプログラムされる。これらの特徴が存在しない場合、次にプロセッサは眼ではなさそうな組織を分類することができる。いくつかの実施形態では、損傷を受けやすい組織の存在を検出するために診断に好適なフル解像度画像が分析される。別の実施形態では、迅速に処理するために画像が(例えばよりわずかなスキャンラインから)より小さい解像度を用いて生成される。いくつかの実施形態では、損傷を受けやすい組織の存在を検出するために複数の画像が分析され、結合される。
【0022】
図4は、眼の組織を識別する一つの方法を示す。このケースでは、プロセッサは水晶体および網膜が存在し得る構造を識別するための画像を備える画素の明度を分析するようにプログラムされる。いくつかの実施形態では、プロセッサは対応する暗い画素の付近にある明るい画素を配置するために画素強度および/または画素勾配を分析する。プロセッサは水晶体を表し得る一組の画素ポイント(L)および網膜を表し得るさらなる一組の画素ポイント(R)を識別するようにプログラムされる。二次元画像上では、各画素ポイントは対応するX、Y座標の対を有する。一実施形態では、プロセッサはどの解剖学的オブジェクトを表す可能性があるかを決定するために曲線を一組の座標に合わせ、その曲線を分析するようにプログラムされる。一実施形態では、プロセッサは、例えばトランスデューサから離れた距離およびその半径を決定するために一組のポイントLを表す曲線を分析する。それらの値が一般的に目の水晶体に関連付けられる範囲内に下がった場合、次にコンピュータは一組のポイントが水晶体を表す可能性があると決定することができる。一実施形態では、一組のポイントが網膜を表す可能性があるかどうかを決定するために一組のポイントR上で同様のステップが実行される。いくつかの実施形態では、それらの値が一般的に人間の目に関連付けられる範囲内に下がるかどうかを決定するためにトランスデューサと一組のポイントLとの間の距離D1、トランスデューサと一組のポイントRとの間の距離D2および一組のポイントLと一組のポイントRとの間の距離D3のうち一つまたは複数等の他の測定値を分析することができる。
【0023】
画像プロセッサ58によって生成された新しい超音波画像と目のスキャンを表すことがわかっているデータベースメモリ70に格納された一つまたは複数の超音波画像との比較等の他の技術を、例えば、差の平方和または他の画像比較アルゴリズムを使用して実行することができる。例えば、顔認証において使用されるような他のアルゴリズムをその組織の画像と眼の組織または他の損傷を受けやすい組織の周知の画像(例えば、胎児の画像)とを比較するために使用することができる。胎児の組織のような他の損傷を受けやすい組織のケースでは、プロセッサ40(またはDSPまたはGPU)はそのような組織内に共通にみられる特徴を表す画素についての画像を分析し、または画像比較アルゴリズムを使用して胎児の画像を比較するようにプログラムされる。
【0024】
撮像された組織が眼の組織でありそうか否かが決定されると、システム設定を変更することができ、またはトランスデューサによって生成される音響信号のエネルギーをエネルギーが高すぎる場合には下げるように、またはそうすることが安全な場合には上げるように、調整することができる。
【0025】
上記の説明は人間の眼の組織に関連して説明されているが、動物(猫、犬、馬等)の目が超音波イメージングシステムを獣医学用の設定で使用するために設計される場合に同じタイプの分析を実行することができるように十分に類似したものであることを理解されたい。同様に、胎児の組織等の他の損傷を受けやすい組織の存在について他の超音波画像を分析することができる。同様に、発信パワーを上昇させることを可能にする前にそのような損傷を受けやすい組織が無いことを確認するためにプロセッサによって超音波画像を分析することができる。
【0026】
いくつかの実施形態では、プロセッサがそのような組織が無いことを検出した場合、プロセッサはシステム設定が正確であることおよび/またはパワーレベルが撮像中の組織のタイプに対して適切であることを確認するようオペレータに警告するために(例えば、ディスプレイスクリーン60上に視覚的な、I/O74の一部であるスピーカー上に聴覚的な、または振動のような触覚的な)警報を発する。他の実施形態では、プロセッサはシステム設定を変更するか、または発信パワーをプログラムの制御下で低減させるようにプログラムされる。さらに他の実施形態では、プロセッサはそのような損傷を受けやすい組織に対して安全なパワーレベルで損傷を受けやすい組織に対して正確なシステム設定を用いて撮像を開始し、パワーレベルがそのような損傷を受けやすい組織が撮像されていないと決定されるような時まで上昇されるのを防ぐようにプログラムされる。
【0027】
いくつかの実施形態では、他のメカニズムを撮像中の組織を識別するために使用することができる。例えば、超音波トランスデューサは携帯電話に一般にみられるのと同様のカメラ80(図2)を用いて、または赤外線カメラを用いて装備することができる。カメラ制御チップ82はカメラ80と相互作用するためにプロセッサによって制御され、白黒またはカラーの画像を生成する。カメラ制御チップの出力は画像プロセッサ58、プロセッサ40に供給するか、またはメモリに格納することができる。カメラを用いて取得された画像は超音波イメージングマシンを用いて撮像される組織を識別するために特徴またはパターン認識ソフトウェアアルゴリズムを用いて分析することができる。例えば、超音波信号が印加される前にカメラが組織の画像を取得する場合、プロセッサはカラー化された画素(虹彩)によって囲まれた暗い画素の円(瞳孔)の存在について画像を分析するようにプログラムされる。画像がそれらの特徴を含む場合、プロセッサは眼の組織の安全のためにシステム設定および/またはトランスデューサによって生成された音響信号のパワーを調整することができる。
【0028】
本明細書で説明された主題および動作は、本明細書で開示された構造およびそれらの構造等価物、もしくはそれらのうち一つまたは複数の組み合わせを含むデジタル電子回路において、またはコンピュータソフトウェア、ファームウェア、もしくはハードウェアにおいて、実施することができる。本明細書で説明された主題の実施形態は、一つまたは複数のコンピュータプログラム、すなわちデータ処理装置による実行のため、またはその動作を制御するために、コンピュータストレージメディアにエンコードされたコンピュータプログラム命令の一つまたは複数のモジュールとして実施することができる。
【0029】
コンピュータストレージメディアはコンピュータ読み取り可能なストレージデバイス、コンピュータ読み取り可能なストレージ基板、ランダムもしくはシリアルアクセスメモリアレイもしくはデバイス、もしくはそれらのうち一つまたは複数の組み合わせとするか、またはそれに含むことができる。さらに、コンピュータストレージメディアは伝搬信号でないが、コンピュータストレージメディアは人工的に生成された伝搬信号にエンコードされたコンピュータプログラム命令の送信元または送信先とすることができる。コンピュータストレージメディアは一つまたは複数の別々の物理的な構成要素もしくはメディア(例えば、複数のCD、ディスク、または他のストレージデバイス)とするか、またはそれに含むことができる。本明細書で説明された動作は一つまたは複数のコンピュータ読み取り可能なストレージデバイスに格納されたデータ上でデータ処理装置によって実行される動作として実施されるか、または他の送信元から受信することができる。
【0030】
用語「プロセッサ(processor)」は、例としてプログラム可能なプロセッサ、コンピュータ、システムオンチップ、前述のものの複数のそれら、またはその組み合わせを含む、データ処理のためのあらゆる種類の装置、デバイス、および機械を包含する。装置は、特殊目的の論理回路、例えば、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)またはASIC(特定用途向け集積回路)を含むことができる。装置は、ハードウェアに加えて、問題のコンピュータプログラムのための実行環境を生成するコード、例えば、プロセッサファームウェア、プロトコルスタック、データベースマネジメントシステム、オペレーティングシステム、クロスプラットフォームランタイム環境、仮想マシン、またはそれらのうち一つまたは複数の組み合わせを構築するコードを含むこともできる。装置および実行環境はウェブサービス、分散コンピューティングおよびグリッドコンピューティングインフラストラクチャ等の様々な異なるコンピューティングモデルインフラストラクチャを実現することができる。
【0031】
(プログラム、ソフトウェア、ソフトウェアアプリケーション、スクリプト、もしくはコードとしても知られる)コンピュータプログラムはコンパイルまたはインタプリタ言語、宣言型または手続き型言語を含むあらゆる形態のプログラミング言語で記述することができ、スタンドアロンプログラムとしての形態、またはコンピューティング環境での使用に好適なモジュール、構成要素、サブルーティン、オブジェクト、もしくは他のユニットとしての形態を含むあらゆる形態で展開することができる。コンピュータプログラムはファイルシステム内のファイルに対応し得るが、必ずしもそうである必要はない。プログラムは他のプログラムもしくはデータ(例えば、マークアップ言語ドキュメントに格納された一つまたは複数のスクリプト)を保持するファイルの一部、問題のプログラムに割り当てられた単一のファイル、または複数の調整されたファイル(例えば、一つまたは複数のモジュール、サブプログラム、もしくはコードの一部を格納するファイル)に格納することができる。コンバータプログラムは、一つのコンピュータ上か、または一つのサイトにあるかもしくは複数のサイトにわたって分散し、通信ネットワークにより相互接続される複数のコンピュータ上で実行されるように展開することができる。
【0032】
本明細書に記載のプロセスおよび論理フローは入力データ上で動作することおよび出力を生成することによって動作を実行するために一つまたは複数のコンピュータプログラムを実行する一つまたは複数のプログラム可能なプロセッサによって実行することができる。特殊目的の論理回路、例えば、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)もしくはASIC(特定用途向け集積回路)によってプロセスおよび論理フローを実行することもでき、またはそれらとして装置を実装することもできる。
【0033】
コンピュータプログラムの実行のために好適なプロセッサは、例として、汎用および特殊目的のマイクロプロセッサ、およびあらゆる種類のデジタルコンピュータの任意の一つまたは複数のプロセッサを含む。一般に、プロセッサは読み取り専用メモリまたはランダムアクセスメモリまたはその両方から命令およびデータを受信するであろう。コンピュータの本質的な要素は、命令にしたがって動作を実行するためのプロセッサおよび命令およびデータを格納するための一つまたは複数のメモリデバイスである。一般に、コンピュータはそこからデータを受信するか、そこにデータを送信するかもしくはその両方を行うデータを格納するためのマスストレージデバイス、例えば、磁気、磁気光学ディスク、もしくは光学ディスクを含むかまたはそれに動作可能に結合する。しかしながら、コンピュータはそのようなデバイスを有する必要はない。コンバータプログラム命令およびデータを格納するのに好適なデバイスは、例としてEPROM、EEPROM、およびフラッシュメモリ等の半導体メモリデバイス、内蔵ハードディスクまたはリムーバブルディスク等の磁気ディスク、磁気光学ディスク、およびCD-ROMおよびDVD-ROMディスクを含む、不揮発性メモリ、メディアおよびメモリデバイスの全ての形態を含む。プロセッサおよびメモリは特殊目的の論理回路によって補われるか、またはそれに組み入れられることができる。
【0034】
上記の説明から、本発明の特定の実施形態が本明細書において例示の目的のために説明されてきたが、本発明の範囲から逸脱することなく様々な調整がなされ得ることを理解されたい。したがって、本発明は添付の特許請求の範囲による以外には制限されない。
図1
図2
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