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特許7013485水素化マグネシウムの製造装置及び水素化マグネシウムの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-21
(45)【発行日】2022-01-31
(54)【発明の名称】水素化マグネシウムの製造装置及び水素化マグネシウムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 6/04 20060101AFI20220124BHJP
   C22C 23/02 20060101ALI20220124BHJP
   C22C 23/06 20060101ALI20220124BHJP
   C22C 23/00 20060101ALI20220124BHJP
   B22F 1/00 20220101ALN20220124BHJP
【FI】
C01B6/04
C22C23/02
C22C23/06
C22C23/00
B22F1/00 N
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2019564434
(86)(22)【出願日】2018-02-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-26
(86)【国際出願番号】 CN2018076672
(87)【国際公開番号】W WO2019052120
(87)【国際公開日】2019-03-21
【審査請求日】2021-02-12
(31)【優先権主張番号】201710830552.9
(32)【優先日】2017-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519410677
【氏名又は名称】シャンハイ エムジー パワー テクノロジー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゾウ,ジエンシン
(72)【発明者】
【氏名】ディン,ウェンジアン
【審査官】青木 千歌子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102583244(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第101117211(CN,A)
【文献】特開2013-023406(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101767773(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 6/04
C22C 23/00-23/06
B22F 1/00-8/00
H01M 8/04-8/0668
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素化マグネシウム製造装置であって、
供給口を備える移行チャンバと、
第1のバルブによって前記移行チャンバに接続され、不活性ガス充填のための加熱チャンバガス充填口をさらに備える加熱チャンバと、
上端に開口部を有し、前記第1のバルブによって前記移行チャンバと前記加熱チャンバとの間を移送することが可能で、前記加熱チャンバ内において、その中に置かれたマグネシウム原料を加熱、蒸発させてマグネシウム蒸気とするために使用される加熱装置と、
パイプによって前記加熱チャンバと連通しており、前記パイプを通った前記マグネシウム蒸気を凝結させてマグネシウム粉末として収集する収集チャンバと、
前記マグネシウム粉末を受け取るために第2のバルブによって前記収集チャンバと連通し、水素を受け取るために外部の水素源と連通している反応チャンバと、
を備える水素化マグネシウム製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載の水素化マグネシウム製造装置であって、
前記移行チャンバと接続されている真空ポンプ装置をさらに備え、前記移行チャンバには、不活性ガス充填用の移行チャンバガス充填口がさらに設けられる水素化マグネシウム製造装置。
【請求項3】
請求項1に記載の水素化マグネシウム製造装置であって、
前記移行チャンバと前記加熱チャンバに配置され、前記第1のバルブを通過するガイドレールをさらに備え、前記ガイドレールは第1の制御電源に接続されて前記加熱装置を移送する水素化マグネシウム製造装置。
【請求項4】
請求項1に記載の水素化マグネシウム製造装置であって、
前記加熱装置は
前記マグネシウム原料を収容するための、窒化ホウ素、黒鉛、酸化マグネシウム及びステンレス鋼のうちの1つを材料とするるつぼと、
前記マグネシウム原料を加熱するために前記るつぼの外側の周囲に配置されるインダクタンスコイルと
加熱温度を制御するために前記インダクタンスコイルに配線で接続されている第2の制御電源と、
を備える水素化マグネシウム製造装置。
【請求項5】
請求項1に記載の水素化マグネシウム製造装置であって、
前記パイプの前記加熱チャンバに接続される端部は、断面積が増大する第1の開口部を有し、前記第1の開口部は、マグネシウム蒸気を収集するために前記加熱装置の上端に向けて配置される水素化マグネシウム製造装置。
【請求項6】
請求項5に記載の水素化マグネシウム製造装置であって、
第1の抵抗線断熱層が前記パイプの外側に配置され、前記第1の抵抗線断熱層は第3の制御電源に接続されている水素化マグネシウム製造装置。
【請求項7】
請求項1に記載の水素化マグネシウム製造装置であって、
前記収集チャンバは、
水平ロッドと垂直ロッドを有し、前記水平ロッドの各端部には前記収集チャンバの内壁と接触可能なブラシヘッドが設けられ、前記垂直ロッドは、前記水平ロッドが第4の制御電源の制御の下で前記垂直ロッドの周りに水平方向に回転可能で、かつ前記垂直ロッドの軸方向に沿って上下に移動可能であるように、前記水平ロッドの中間位置に接続されている電気ブラシと、
前記収集チャンバの底部に配置され、前記第2のバルブと連通しているマグネシウム粉末出口と、
前記収集チャンバの中のマグネシウム蒸気を冷却するために前記収集チャンバの外側に配置され、外部の水源と連通している循環水冷却層である冷却層と、
を備える水素化マグネシウム製造装置。
【請求項8】
請求項1に記載の水素化マグネシウム製造装置であって、
前記パイプの前記収集チャンバに接続される端部は、断面積が増大する第2の開口部を有する水素化マグネシウム製造装置。
【請求項9】
請求項1に記載の水素化マグネシウム製造装置であって、
前記反応チャンバは第2の抵抗線断熱層をさらに備え、前記第2の抵抗線断熱層は第5の制御電源に接続されている水素化マグネシウム製造装置。
【請求項10】
請求項1に記載の水素化マグネシウム製造装置であって、
前記マグネシウム原料は、純マグネシウムと、マグネシウム・アルミニウム合金と、マグネシウム‐希土類と、マグネシウム・ジルコニウム合金と、マグネシウム‐ニッケルと、マグネシウム‐マンガンとの1以上の組み合わせであり、前記マグネシウム原料中のマグネシウムの含有量は、60重量%乃至99.999重量%の間であり、その他の元素の含有量は0.001重量%乃至40重量%の間である水素化マグネシウム製造装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の水素化マグネシウム製造装置を使用する水素化マグネシウム製造方法であって、
前記加熱装置が前記移行チャンバに移送され、前記第1のバルブが閉じられ、マグネシウム原料が前記供給口を通して前記加熱装置に供給される工程と、
前記加熱装置を前記加熱チャンバに移送するために第1のバルブが開放され、前記第1のバルブが閉じられ、前記加熱チャンバの中で前記加熱装置を用いて前記マグネシウム原料が加熱されてマグネシウム蒸気を生成する工程と、
前記収集チャンバでマグネシウム粉末を収集するために、前記マグネシウム蒸気が前記パイプを通って前記収集チャンバに入る工程と、
前記収集されたマグネシウム粉末が前記第2のバルブを通って前記反応チャンバに入った後、前記加熱装置の加熱操作が停止され、前記第2のバルブが閉じられる工程と、
前記マグネシウム粉末との反応のために、水素が前記反応チャンバの中に導入されて水素化マグネシウム粒子を生成する工程と、
を備える水素化マグネシウム製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載の水素化マグネシウム製造方法であって、
前記移行チャンバは真空ポンプ装置に接続され、前記移行チャンバは移行チャンバガス充填口をさらに備え、
前記水素化マグネシウム製造方法は、
前記マグネシウム原料が前記加熱装置に加えられた後で前記加熱装置が前記加熱チャンバに移送される前に、前記真空ポンプ装置を用いて前記移行チャンバに対して真空ポンプ操作が実行されて、前記移行チャンバガス充填口を通して不活性ガスが前記移行チャンバに充填され、前記真空ポンプ装置は前記移行チャンバを10-4Pa乃至10-2Paの間の圧力に真空化し、前記不活性ガスはアルゴンであり、前記充填される不活性ガスの圧力は0.005MPa乃至0.1MPaの間である工程をさらに備える水素化マグネシウム製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の水素化マグネシウム製造方法であって、
前記加熱チャンバは加熱チャンバガス充填口をさらに備え、
前記水素化マグネシウム製造方法は、
前記加熱装置が前記加熱チャンバに移送され、前記第1のバルブが閉じられた後、前記加熱装置を用いて前記マグネシウム原料が加熱される前に、不活性ガスが前記加熱チャンバガス充填口を通して前記加熱チャンバに充填され、前記不活性ガスはアルゴンであり、前記充填される不活性ガスの圧力は0.005MPa乃至0.1MPaの間である工程をさらに備える水素化マグネシウム製造方法。
【請求項14】
請求項11に記載の水素化マグネシウム製造方法であって、
前記移行チャンバと前記加熱チャンバの中には、ガイドレールが設けられ、前記ガイドレールは第1の制御電源に接続されており、
前記水素化マグネシウム製造方法は、
前記第1の制御電源は前記ガイドレールに制御信号を送信し、
前記ガイドレールは、前記制御信号の制御の下で、前記加熱装置を前記加熱チャンバの中の特定の位置に移送する工程をさらに備える水素化マグネシウム製造方法。
【請求項15】
請求項11に記載の水素化マグネシウム製造方法であって、
前記加熱装置は、るつぼと、前記るつぼの外側に配置されるインダクタンスコイルと、前記インダクタンスコイルに接続されている第2の制御電源とを備え、
前記加熱装置を用いて前記マグネシウム原料を加熱する前記工程は、
前記インダクタンスコイルの加熱温度が摂氏650度乃至摂氏1100度の間になるように前記第2の制御電源が前記インダクタンスコイルに電力を供給する工程をさらに備える水素化マグネシウム製造方法。
【請求項16】
請求項11に記載の水素化マグネシウム製造方法であって、
第1の抵抗線断熱層は前記パイプの外側に配置され、前記第1の抵抗線断熱層は第3の制御電源に接続され、前記マグネシウム蒸気が前記パイプを通って前記収集チャンバに入る前記工程は、
前記第3の制御電源が前記第1の抵抗線断熱層の断熱温度が摂氏650度乃至摂氏1000度の間になるように前記第1の抵抗線断熱層に電力を供給する工程と、
前記収集されたマグネシウム粉末が前記第2のバルブを通って前記反応チャンバに入った後、前記第3の制御電源が前記第1の抵抗線断熱層に電力を供給することを停止する工程とをさらに備える水素化マグネシウム製造方法。
【請求項17】
請求項11に記載の水素化マグネシウム製造方法であって、
前記パイプの前記加熱チャンバに接続される端部は、断面積が増大する開口部を有し、前記開口部は前記マグネシウム蒸気を収集するために前記加熱装置の上端に向けて配置される水素化マグネシウム製造方法。
【請求項18】
請求項11に記載の水素化マグネシウム製造方法であって、
前記収集チャンバは、第4の制御電源に接続されている電気ブラシと、マグネシウム粉末出口と、冷却層とをさらに備え、
前記電気ブラシには、水平ロッドと垂直ロッドとが設けられ、前記水平ロッドには接続端部にブラシヘッドが設けれ、前記マグネシウム粉末出口は前記第2のバルブと連通し、前記冷却層は前記収集チャンバの外側に配置され、前記収集チャンバでマグネシウム粉末を収集する前記工程は、
前記マグネシウム蒸気が前記パイプを通って前記収集チャンバに入る工程と、
前記冷却層が開放されてマグネシウム蒸気を凝結してマグネシウム粉末にする工程と、
前記電気ブラシが前記第4の制御電源により始動され、前記水平ロッドが、前記垂直ロッドの周りに水平方向に回転し、かつ前記垂直ロッドの軸方向に沿って上下に移動して、前記収集チャンバの側壁に付着したマグネシウム粉末を取り除く工程と、
前記マグネシウム粉末が前記マグネシウム粉末出口と前記第2のバルブとを通って前記反応チャンバに入る工程と、
を備える水素化マグネシウム製造方法。
【請求項19】
請求項18に記載の水素化マグネシウム製造方法であって、
前記冷却層は循環水冷却層であり、前記循環水冷却層中の循環水の温度は摂氏20度乃至摂氏50度の間であり、圧力は0.5MPa乃至2MPaの間である水素化マグネシウム製造方法。
【請求項20】
請求項11に記載の水素化マグネシウム製造方法であって、
前記パイプの前記収集チャンバに接続される端部は、断面積が増大する開口部を有する水素化マグネシウム製造方法。
【請求項21】
請求項11に記載の水素化マグネシウム製造方法であって、
前記反応チャンバは、第2の抵抗線断熱層をさらに備え、前記第2の抵抗線断熱層は第5の制御電源に接続され、前記反応により水素化マグネシウム粒子を製造する前記工程は、
前記第2の抵抗線断熱層の断熱温度が摂氏200度乃至摂氏450度の間になるように前記の制御電源が前記第2の抵抗線断熱層に電力を供給する工程をさらに備える水素化マグネシウム製造方法。
【請求項22】
請求項11に記載の水素化マグネシウム製造方法であって、
水素と前記マグネシウム粉末の反応時間は、1時間乃至40時間の間である水素化マグネシウム製造方法。
【請求項23】
請求項11に記載の水素化マグネシウム製造方法であって、
前記マグネシウム原料は、純マグネシウムと、マグネシウム・アルミニウム合金と、マグネシウム‐希土類と、マグネシウム・ジルコニウム合金と、マグネシウム‐ニッケルと、マグネシウム‐マンガンとの1以上の組み合わせであり、前記マグネシウム原料中のマグネシウムの含有量は60重量%乃至99.999重量%の間であり、その他の元素の含有量は0.001重量%乃至40重量%の間である水素化マグネシウム製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水素化マグネシウムの製造、より具体的には水素化マグネシウムの製造装置と水素化マグネシウムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水素化マグネシウム(MgH2)は、オフホワイトの粉末であり、常温常圧における高い安定性、密度1.45g/cm3、及び、マグネシウム系水素吸蔵合金水素化物やその他の金属水素化物より遥かに大きい、7.6%の水素吸蔵能力を有する単一の軽金属水素化物である。水素化マグネシウムは、常温で水と反応して水素を生成することができる。それに加えて、水素化マグネシウムは、触媒及び還元剤等として使用することもできる。
【0003】
マグネシウム系材料は、貯蔵が容易な、中温水素吸蔵合金に属し、温和な反応条件と環境に優しい副生成物を有し、有望な水素貯蔵材料である。他の金属の水素吸蔵材料と比べて、マグネシウム系水素吸蔵材料は、以下の利点を有する。すなわち、高い水素吸蔵能力、資源が豊富でかつ低価格であり、マグネシウム系水素吸蔵材料は良好な水素の吸収と脱離安定状態を有するため水素の利用率が向上し、水素化物はかなり安定であるため、水素の脱離には高い温度が必要とされ、水素脱離温度の多くは摂氏200度以上である。
【0004】
水素化マグネシウムの製造方法には、アルキルマグネシウムの熱分解による水素化マグネシウムの製造、常圧下でのマグネシウム粉末による水素化マグネシウムの触媒による合成、並びにマグネシウム粉末の加熱、水素化及び加圧による水素化マグネシウムの製造が含まれる。
【0005】
市販の水素化マグネシウムは粒径が大きくかつ高価であり、加水分解による水素製造中に、不動態被膜が未反応の水素化マグネシウムの表面に容易に形成され、それが反応の進行を妨げる。そのため、市販の水素化マグネシウムは、水素製造用にそのまま使用することはできない。従って、マグネシウム系金属からマグネシウム粉末を製造し、次にそれを水素化して水素化マグネシウムを製造することが考えられる。
【0006】
既存の水素化マグネシウムの製造方法は、すべて、2以上の上記の装置又は機器を順次又は同時に使用して、粉末製造、収集及び水素化のプロセスを実現する。例えば、ゾルゲル法を使用する場合には、超音波処理、遠心分離、洗浄、加熱及び保温等の操作が必要とされる。既存の周知の知識に基づく以外の特別な指示がなしでは、これらの操作は、超音波加工機や遠心分離機等の異なる機能を有する機器と装置とで実行する必要があり、また、例えば、焼結後、前駆体が、ボールミリングと粉砕又は破砕によって最初に得られ、次に水素化のために水素環境下に置かれ、そして水素化プロセスも、ボールミル、すり鉢及び管式加熱炉等の異なる機器と装置で行う必要があると考えられている。これらの方法はいずれも、単一の装置で水素化マグネシウムの粉末の統合的製造を実現することはできず、そのため処理と製造に困難をもたらす。従って、統合的な粉末製造と水素化のための装置を提供することが特に必要である。
【0007】
その一方で、既存の水素化マグネシウム製造方法によって製造される水素化マグネシウム粉末は、粒子の均一性が悪い、あるいは粒径が大きすぎる(通例、150μm以上)又は小さすぎる(通例、1μm以下)等がある。粒径が大きすぎると水素製造用にそのまま使用することができない結果となる一方で、粒径が小さすぎると水素化マグネシウムの収量の低下と過酷で危険な反応条件をもたらす。従って、粉末の粒径分布を制御するためにより完全で進歩した製造技術と装置が必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の技術的課題を解決するため、本発明の一局面において、水素化マグネシウム製造装置が提案される。前記水素化マグネシウム製造装置は、
供給口を備える移行チャンバと、
第1のバルブによって前記移行チャンバに接続され、好適には、不活性ガス充填のための加熱チャンバガス充填口をさらに備える加熱チャンバと、
上端に開口部を有し、前記第1のバルブによって前記移行チャンバと前記加熱チャンバとの間を移送することが可能で、前記加熱チャンバ内において、その中に置かれたマグネシウム原料を加熱するために使用される加熱装置と、
マグネシウム粉末を収集するためにパイプによって前記加熱チャンバと連通している収集チャンバと、
マグネシウム粉末を受け取るために第2のバルブによって前記収集チャンバと連通し、水素を受け取るために外部の水素源と連通している反応チャンバと、
を備える。
【0009】
一実施形態において、水素化マグネシウム製造装置は、前記移行チャンバと接続されている真空ポンプ装置をさらに備え、前記移行チャンバには、不活性ガス充填用の移行チャンバガス充填口がさらに設けられる。
【0010】
一実施形態において、水素化マグネシウム製造装置は、前記移行チャンバと前記加熱チャンバに配置され、前記第1のバルブを通過するガイドレールをさらに備え、前記ガイドレールは第1の制御電源に接続されて前記加熱装置を移送する。
【0011】
一実施形態において、前記加熱装置は
前記マグネシウム原料を収容するための、好適には、窒化ホウ素、黒鉛、酸化マグネシウム及びステンレス鋼のうちの1つを材料とするるつぼと、
前記マグネシウム原料を加熱するために前記るつぼの外側の周囲に配置されるインダクタンスコイルと
加熱温度を制御するために前記インダクタンスコイルに配線で接続されている第2の制御電源と、を備える。
【0012】
一実施形態において、前記パイプの前記加熱チャンバに接続される端部は、断面積が増大する第1の開口部を有し、前記第1の開口部は、マグネシウム蒸気を収集するために前記加熱装置の上端に向けて配置される。
【0013】
一実施形態において、第1の抵抗線断熱層が前記パイプの外側に配置され、前記第1の抵抗線断熱層は第3の制御電源に接続されている。
【0014】
一実施形態において、前記収集チャンバは、
水平ロッドと垂直ロッドを有し、前記水平ロッドの各端部には前記収集チャンバの内壁と接触可能なブラシヘッドが設けられ、前記垂直ロッドは、前記水平ロッドが第4の制御電源の制御の下で前記垂直ロッドの周りに水平方向に回転可能で、かつ前記垂直ロッドの軸方向に沿って上下に移動可能であるように、前記水平ロッドの中間位置に接続されている電気ブラシと、
前記収集チャンバの底部に配置され、前記第2のバルブと連通しているマグネシウム粉末出口と、
前記収集チャンバの中のマグネシウム蒸気を冷却するために前記収集チャンバの外側に配置され、好適には、外部の水源と連通している循環水冷却層である冷却層とを備える。
【0015】
一実施形態において、前記パイプの前記収集チャンバに接続される端部は、断面積が増大する第2の開口部を有する。
【0016】
一実施形態において、前記反応チャンバは、第2の抵抗線断熱層をさらに備え、前記第2の抵抗線断熱層は第5の制御電源に接続されている。
【0017】
一実施形態において、前記マグネシウム原料は、純マグネシウムと、マグネシウム・アルミニウム合金と、マグネシウム‐希土類と、マグネシウム・ジルコニウム合金と、マグネシウム‐ニッケルと、マグネシウム‐マンガンとの1以上の組み合わせであり、前記マグネシウム原料中のマグネシウムの含有量は60重量%乃至99.999重量%の間であり、その他の元素の含有量は0.001重量%乃至40重量%の間である。
【0018】
本発明の他の局面によれば、水素化マグネシウム製造装置を使用する水素化マグネシウム製造方法が提案される。前記水素化マグネシウム製造方法は、
前記加熱装置が前記移行チャンバに移送され、前記第1のバルブが閉じられ、マグネシウム原料が前記供給口を通して前記加熱装置に供給される工程と、
前記加熱装置を前記加熱チャンバに移送するために第1のバルブが開放され、前記第1のバルブが閉じられ、前記加熱チャンバの中で前記加熱装置を用いて前記マグネシウム原料が加熱されてマグネシウム蒸気を生成する工程と、
前記収集チャンバでマグネシウム粉末を収集するために、前記マグネシウム蒸気が前記パイプを通って前記収集チャンバに入る工程と、
前記収集されたマグネシウム粉末が前記第2のバルブを通って前記反応チャンバに入った後、前記加熱装置の加熱操作が停止され、前記第2のバルブが閉じられる工程と、
前記マグネシウム粉末との反応のために、水素が前記反応チャンバの中に導入されて水素化マグネシウム粒子を生成する工程と、
を備える。
【0019】
一実施形態において、前記移行チャンバは真空ポンプに接続され、前記移行チャンバは移行チャンバガス充填口をさらに備え、
前記水素化マグネシウム製造方法は、
前記マグネシウム原料が前記加熱装置に加えられた後で前記加熱装置が前記加熱チャンバに移送される前に、前記真空ポンプを用いられて前記移行チャンバに対して真空ポンプ操作を実行し、前記移行チャンバガス充填口を通して不活性ガスを前記移行チャンバに充填し、好適には前記真空ポンプ装置は前記移行チャンバを10-4Pa乃至10-2Paの間の圧力に真空化し、好適には、前記不活性ガスはアルゴンであり、より好適には前記充填される不活性ガスの圧力は0.005MPa乃至0.1MPaの間である工程をさらに備える。
【0020】
一実施形態において、前記加熱チャンバは、加熱チャンバガス充填口をさらに備え、前記水素化マグネシウム製造方法は、
前記加熱装置が前記加熱チャンバに移送され、前記第1のバルブが閉じられた後、前記加熱装置を用いて前記マグネシウム原料が加熱される前に、不活性ガスが前記加熱チャンバガス充填口を通して前記加熱チャンバに充填され、好適には、前記不活性ガスはアルゴンであり、好適には、前記充填される不活性ガスの圧力は0.005MPa乃至0.1MPaの間である工程をさらに備える。
【0021】
一実施形態において、前記移行チャンバと前記加熱チャンバの中には、ガイドレールが設けられ、前記ガイドレールは前記第1の制御電源に接続されており、前記水素化マグネシウム製造方法は、
前記第1の制御電源は前記ガイドレールに制御信号を送信し、
前記ガイドレールは、前記制御信号の制御の下で、前記加熱装置を前記加熱チャンバの中の特定の位置に移送する工程をさらに備える。
【0022】
一実施形態において、前記加熱装置は、るつぼと、前記るつぼの外側に配置されるインダクタンスコイルと、前記インダクタンスコイルに接続されている第2の制御電源とを備え、
前記加熱装置を用いて前記マグネシウム原料を加熱する前記工程は、
前記インダクタンスコイルの加熱温度が摂氏650度乃至摂氏1100度の間になるように前記第2の制御電源は前記インダクタンスコイルに電力を供給する工程をさらに備える。
【0023】
一実施形態において、前記第1の抵抗線断熱層は前記パイプの外側に配置され、前記第1の抵抗線断熱層は第3の制御電源に接続され、前記マグネシウム蒸気が前記パイプを通って前記収集チャンバに入る前記工程は、
前記第3の制御電源が前記第1の抵抗線断熱層の断熱温度が摂氏650度乃至摂氏1000度の間になるように前記第1の抵抗線断熱層に電力を供給する工程と、
前記収集されたマグネシウム粉末が前記第2のバルブを通って前記反応チャンバに入った後、前記第3の制御電源は前記第1の抵抗線断熱層に電力を供給することを停止する工程とをさらに備える。
【0024】
一実施形態において、前記パイプの前記加熱チャンバに接続される端部は、断面積が増大する開口部を有し、前記開口部は前記マグネシウム蒸気を収集するために前記加熱装置の上端に向けて配置される。
【0025】
一実施形態において、前記収集チャンバは、第4の制御電源に接続されている電気ブラシと、マグネシウム粉末出口と、冷却層とをさらに備え、
前記電気ブラシには、水平ロッドと垂直ロッドとが設けられ、前記水平ロッドには接続端部にブラシヘッドが設けれ、前記マグネシウム粉末出口は前記第2のバルブと連通し、前記冷却層は前記収集チャンバの外側に配置され、前記収集チャンバでマグネシウム粉末を収集する前記工程は、
前記マグネシウム蒸気が前記パイプを通って前記収集チャンバに入る工程と、
前記冷却層が開放されてマグネシウム蒸気を凝結してマグネシウム粉末にする工程と、
前記電気ブラシが前記第4の制御電源により始動され、前記水平ロッドが、前記垂直ロッドの周りに水平方向に回転しかつ前記垂直ロッドの軸方向に沿って上下に移動して、前記収集チャンバの側壁に付着したマグネシウム粉末を取り除く工程と、
前記マグネシウム粉末が前記マグネシウム粉末出口と前記第2のバルブとを通って前記反応チャンバに入る工程とを備える。
【0026】
一実施形態において、前記冷却層は循環水冷却層であり、好適には、前記循環水冷却層中の循環水の温度は摂氏20度乃至摂氏50度の間であり、圧力は0.5MPa乃至2MPaの間である。
【0027】
一実施形態において、前記パイプの前記収集チャンバに接続される端部は、断面積が増大する開口部を有する。
【0028】
一実施形態において、前記反応チャンバは、第2の抵抗線断熱層をさらに備え、前記第2の抵抗線断熱層は第5の制御電源に接続され、前記反応により水素化マグネシウム粒子を製造する前記工程は、
前記第2の抵抗線断熱層の断熱温度が摂氏200度乃至摂氏450度の間になるように前記第の制御電源が前記第2の抵抗線断熱層に電力を供給する工程をさらに備える。
【0029】
一実施形態において、水素と前記マグネシウム粉末の反応時間は、1時間乃至40時間の間である。
【0030】
一実施形態において、前記マグネシウム原料は、純マグネシウムと、マグネシウム・アルミニウム合金と、マグネシウム‐希土類と、マグネシウム・ジルコニウム合金と、マグネシウム‐ニッケルと、マグネシウム‐マンガンとの1以上の組み合わせであり、前記マグネシウム原料中のマグネシウムの含有量は60重量%乃至99.999重量%の間であり、その他の元素の含有量は0.001重量%乃至40重量%の間である。
【0031】
本発明で提案する前記水素化マグネシウムの製造装置と前記水素化マグネシウムの製造方法は、既存の水素化マグネシウムの製造プロセスにおける困難な粉末収集の問題を克服し、簡易な製造工程を有し、周期的な自動的マグネシウム粉末収集と水素化反応を統合する。前記マグネシウム原料の加熱温度と、前記移行チャンバのアルゴン圧力と、前記パイプの外側の前記第1の抵抗線断熱層の断熱温度と、前記冷却層の冷却温度とを制御することによって、水素化マグネシウム粉末の粒径分布の制御を実現し、前記装置と方法によって製造される水素化マグネシウム粉末の粒径分布が1μm乃至60μmの範囲になるように確保し、それにより粒径が大きすぎる又は小さすぎるという問題を解決できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の例示的な実施形態に係る水素化マグネシウムの製造装置の構造的概略図を示す。
図2】本発明の実施例1に従って製造された水素化マグネシウム粉末のXRDスペクトルを示す。
図3】本発明の実施例1に従って製造された水素化マグネシウム粉末の径分布図を示す。
図4】本発明の実施例2に従って製造された水素化マグネシウム粉末のXRDスペクトルを示す。
図5】本発明の実施例2に従って製造された水素化マグネシウム粉末の径分布図を示す。
図6】本発明の実施例3に従って製造された水素化マグネシウム粉末のXRDスペクトルを示す
図7】本発明の実施例3に従って製造された水素化マグネシウム粉末の径分布図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の例示的で非限定的な実施形態について、以下に添付図面を参照して詳細に説明する。そして、本発明の水素化マグネシウムの製造装置及び水素化マグネシウムの製造方法をさらに説明する。
【0034】
図1を参照すると、本発明の態様に従って、水素化マグネシウムの製造装置が提案されている。製造装置は、移行チャンバ1と、加熱チャンバ2と、加熱装置(るつぼ61とインダクタンスコイル62とを有する。)6と、収集チャンバ4と、反応チャンバ5を備える。移行チャンバ1は、第1のバルブ12を通して加熱チャンバ2に接続され、加熱チャンバ2は、パイプ3を通して収集チャンバ4に接続され、収集チャンバ4は、第2のバルブ44を通して反応チャンバ5に接続され、加熱装置6は、移行チャンバ1と加熱チャンバ2との間で移動してマグネシウム原料の供給と加熱を完結させることができる。
【0035】
移行チャンバ1は、加熱装置6が反応チャンバ5に入る前に、移行チャンバとしての役割を果たし、供給操作を完結するために使用される。移行チャンバ1は、移行チャンバ1に設置された加熱装置6にマグネシウム原料を供給する供給口11を備える。これに加えて、真空環境と不活性ガス環境もまた移行チャンバ1の中に生成されて、マグネシウム原料中のマグネシウム元素が空気中の酸素等と反応することを防止することができる、これについては下記で詳細に説明する。一実施形態において、マグネシウム原料は、純マグネシウムと、マグネシウム・アルミニウム合金と、マグネシウム‐希土類と、マグネシウム・ジルコニウム合金と、マグネシウム・ニッケルと、マグネシウム・マンガンとの1以上の組み合わせであり、またマグネシウム原料中のマグネシウム元素の含有量は60重量%乃至99.999重量%の間であり、他の元素含有量は0.001重量%乃至40重量%の間である。しかしながら、当業者は、水素化マグネシウムの製造用に使用されるマグネシウム原料が上記に挙げられた物に限定されないことが理解されよう。
【0036】
加熱チャンバ2は、第1のバルブ12によって移行チャンバ1に接続されている。好適には、加熱チャンバ2は、加熱チャンバ2に不活性雰囲気を生成するために、不活性ガスを充填するための加熱チャンバ2のガス充填口(図示せず)をさらに備える。移行チャンバ1に供給した後、加熱装置6は、第1のバルブ12を通って加熱チャンバ2に入り、次に第1のバルブ12が閉じられて、加熱チャンバ2内でマグネシウム原料を加熱する。
【0037】
加熱装置6は、その中に収容されるマグネシウム原料を加熱することができる容器であり、上端に開口部を有する加熱装置6は、蒸発したマグネシウム蒸気が上昇してパイプ3を通って収集チャンバ4に入ることを可能にする。一実施形態において、水素化マグネシウム製造装置は、ガイドレール63をさらに備える。ガイドレール63は移行チャンバ1と加熱チャンバ2とに配置され、第1のバルブ12を通過する。このようにして、加熱装置6を移行チャンバ1から加熱チャンバ2に移送することが必要である場合に、第1の制御電源は、ガイドレール63に制御信号を送信し、かつガイドレール63を始動させるために電気エネルギを供給し、ガイドレール63は、加熱装置6を加熱チャンバ2に移送して自動制御を実現する。
【0038】
収集チャンバ4は、マグネシウム蒸気を受け取るために、パイプ3によって加熱チャンバ2と連通している。マグネシウム蒸気は、収集チャンバ4の中で徐々に凝結することができてマグネシウム粉末になり、その後水素化反応用のマグネシウム粉末がさらに収集される。
【0039】
反応チャンバ5は、マグネシウム粉末を受け取るために、第2のバルブ44によって収集チャンバ4と連通しており、また反応チャンバ5は、水素注入口52を通して外部の水素源(図示せず)と連通しており、外部の水素源は、反応チャンバ5に対して、水素と水素化反応に適した水素圧を供給することができる。マグネシウム粉末は、第2のバルブ44を通って反応チャンバ5に入った後に反応チャンバ5の水素と反応し、水素化マグネシウム粒子が得られる。
【0040】
引き続き図1を参照すると、本発明に一実施形態において、水素化マグネシウム製造装置は、移行チャンバ1に真空ポンプ操作を行うために、移行チャンバ1に接続された真空ポンプ装置13をさらに備える。移行チャンバ1には、不活性ガス充填用の移行チャンバガス充填口がさらに設けられている。このようにして、マグネシウム原料が移行チャンバ1の中の加熱装置6に供給された後、第1のバルブ12が閉じられて、真空ポンプ装置13が使用されて移行チャンバ1に真空ポンプ操作が行われ、次に移行チャンバガス充填口を通して不活性ガスが移行チャンバ1に充填される。それによって、移行チャンバ1に不活性環境が生成されて、空気が第1のバルブ12から加熱チャンバ2に入ることを防止する。
【0041】
一実施形態において、加熱装置6は、るつぼ61と、インダクタンスコイル62と、第2の制御電源(図示せず)を備える。
【0042】
るつぼ61は、上端に開口部を有する容器で、マグネシウム原料を収容するために使用される。インダクタンスコイル62は、るつぼ61の外側の周囲に配置されて、電源がオンされた通電中に、るつぼ61の中のマグネシウム原料を加熱する。第2の制御電源はインダクタンスコイル62に配線で接続され、第2の制御電源は、マグネシウム原料中のマグネシウムの蒸発のために必要とされる温度に従ってインダクタンスコイル62に電気エネルギを供給し、それによってマグネシウム原料の加熱温度の自動制御を実現することができる。本発明のるつぼ61の材料は、窒化ホウ素、黒鉛、酸化マグネシウム及びステンレス鋼のうちの1つであるが、これに限定されない。
【0043】
一実施形態において、パイプ3の加熱チャンバ2に接続される端部は、断面積が増大する第1の開口部を有し、第1の開口部は、マグネシウム蒸気を収集するために加熱装置6の上端(るつぼ61の開口部)に向けて配置される。さらに、パイプ3の収集チャンバ4に接続される端部は、断面積が増大する第2の開口部を有する。このようにして、断面積が増大する第1の開口部を通して、加熱装置6で蒸発したマグネシウム蒸気をできるだけ多く収集することによって、マグネシウム原料の利用率を向上することができる。断面積が増大する第2の開口部を通して、マグネシウム蒸気が収集チャンバ4に放出する速度を加速することによって、マグネシウム蒸気の凝結速度を加速することができる。さらに、加熱チャンバ2から収集チャンバ4への流動プロセスにおいてマグネシウム蒸気の凝結を防止するために、第1の抵抗線断熱層31がパイプ3の外側に配置される。第1の抵抗線断熱層31は、第3の電源(図示せず)に接続されており、第3の電源は、パイプ3の中の温度がマグネシウム蒸気の凝結点以上であることを確保するために、第1の抵抗線断熱層31に供給される電流を制御することによって、第1の抵抗線断熱層31の温度を制御する。さらに、収集チャンバ4の全てのマグネシウム粉末が反応チャンバ5に入った場合、第3の制御電源は第1の抵抗線断熱層31への電力供給を停止する。
【0044】
引き続き図1を参照すると、本発明で提案される水素化マグネシウム製造装置の収集チャンバ4は、電気ブラシ42と、マグネシウム粉末出口43と、冷却層41とをさらに備える。
【0045】
電気ブラシ42は、収集チャンバ4の内部に配置され、水平ロッドと垂直ロッドとが設けられている。水平ロッドの各端部には、収集チャンバ4の内壁と接触可能なブラシヘッドが設けられており、垂直ロッドは、水平ロッドが第4の制御電源(図示せず)の制御の下で垂直ロッドの周りに水平方向に回転し、垂直ロッドの軸方向に沿って上下に移動できるように、水平ロッドの中間位置に接続されている。このようにして、第4の制御電源の制御の下で、水平ロッドは、同時に又は非同時に、上下に移動し、垂直ロッドの周りに水平方向に回転して、収集チャンバ4の内壁に付着したマグネシウム粉末を取り除き、それによってマグネシウム粉末の収集効率を向上する。マグネシウム粉末出口43は、収集チャンバ4の底部に配置され、第2のバルブ44と連通しており、収集チャンバ4に収集されたマグネシウム粉末は、マグネシウム粉末出口43と第2のバルブ44を通って反応チャンバ5に入る。その一方で、マグネシウム蒸気の凝結速度を上げるために、冷却層41が収集チャンバ4の外側に配置されている。冷却層41は循環水冷却層41であることが好ましく、循環水冷却層41は外部の水源(図示せず)と連通している。
【0046】
図1を参照すると、本発明で開示される水素化マグネシウム製造装置の反応チャンバ5は、第5の制御電源(図示せず)に接続されている第2の抵抗線断熱層51をさらに備える。このようにして、反応チャンバ5のマグネシウム粉末が水素と水素化反応を受けている場合、第5の制御電源は、適切な反応温度を確保するために水素化反応に必要とされる温度に従って第2の抵抗線断熱層51に電気エネルギを供給し、それによって、水素化効率を向上する目的を達成する。
【0047】
上記の説明より、本発明によって提供される水素化マグネシウム製造装置は、マグネシウム粉末製造と水素化反応を1組の設備に統合するので、従来の製造プロセスにおける困難な粉末収集の問題を克服する。これに加えて、水素化マグネシウム製造装置は、簡易な構造を有し、マグネシウム粉末製造及び水素化マグネシウム製造の様々な工程において、温度、圧力等の条件を自動的に制御することができる。
【0048】
本発明の別の態様に従って、上記の水素化マグネシウム製造装置を用いることによる水素化マグネシウム製造方法が提供される。添付図面と実施形態を併せて、水素化マグネシウム製造方法を以下にさらに説明する。
【0049】
図1を参照すると、水素化マグネシウム製造方法は以下の工程を備える。
【0050】
まず、加熱装置6は移行チャンバ1に移送され、マグネシウム原料が供給口11を通して加熱装置6に供給される。供給プロセスにおいて、移行チャンバ1と加熱チャンバ2を隔離するために移行チャンバ1と加熱チャンバ2との間の第1のバルブ12が閉じられ、加熱チャンバ2中のガスに対する移行チャンバ1中のガスの汚染を低減させる。加熱チャンバ2中のガスに対する移行チャンバ1中のガスの汚染物質をさらに低減するために、本発明の一実施形態において、水素化マグネシウム製造方法は以下の工程をさらに備える。マグネシウム原料が加熱装置6に供給された後、加熱装置6が加熱チャンバ2に移送される前に、真空ポンプを使用して移行チャンバ1に真空ポンプ操作を行い、移行チャンバガス充填口を通して不活性ガスを移行チャンバ1に充填する。すなわち、移行チャンバ1の中のマグネシウムと反応する可能性があるガスを排出し、移行チャンバ1の中の空気が加熱チャンバ2に入り、マグネシウム原料の加熱プロセス中に、マグネシウムが空気中の他のガスと反応を引き起こすことを防止する。それによって、マグネシウム粉末の製造効率を向上し、原料の汚染を防止する。真空ポンプ装置13は、移行チャンバ1を10-4Pa乃至10-2Paの間の圧力に真空化することが好ましい。一実施形態において、不活性ガスはアルゴンである。充填される不活性ガスの圧力は、0.005MPa乃至0.1MPaの間が好ましい。当業者は、移行チャンバ1の中に充填される不活性ガスの種類が、それに限定されないことを理解されよう。
【0051】
加熱装置6を加熱チャンバ2に移送するために第1のバルブ12が開き、その後第1のバルブ12が閉じられ、そしてマグネシウム蒸気を生成するために加熱装置6を用いてマグネシウム原料が加熱チャンバ2の中で加熱される。一実施形態において、加熱装置6は、移行チャンバ1と加熱チャンバ2とに配置されたガイドレール63によって移送される。すなわち、第1の制御電源は、ガイドレール63に制御信号を送信し、ガイドレール63が加熱装置6を加熱チャンバ2の特定の位置に移送させることを可能にすることによって、加熱装置6の移行プロセスの自動制御を実現する。さらに、加熱チャンバ2の不活性雰囲気を生成するために、加熱装置6が加熱チャンバ2に移送されて第1のバルブ12が閉じられた後、マグネシウム原料が加熱装置6を用いて加熱される前に、不活性ガスが加熱チャンバガス充填口を通して加熱チャンバ2に充填される。好適には、不活性ガスはアルゴンである。充填される不活性ガスの圧力は0.005MPa乃至0.1MPaの間である。本発明の一実施形態において、加熱装置6を用いてマグネシウム原料を加熱するための方法は、以下のとおりである。第2の制御電源を通してインダクタンスコイル62に電力が供給され、インダクタンスコイル62に供給される電流を制御することにより、第2の制御電源は、インダクタンスコイル62の加熱温度を摂氏650度乃至摂氏1100度の間になるように制御し、その結果マグネシウム原料中のマグネシウムが蒸発してマグネシウム蒸気を生成する。
【0052】
加熱チャンバ2で生成されたマグネシウム蒸気は、パイプ3を通って収集チャンバ4に入り、収集チャンバ4の中で徐々に凝結してマグネシウム粉末になる。こうしてマグネシウム粉末の収集が収集チャンバ4で行われる。パイプ3の中をマグネシウム蒸気が流れる間、マグネシウム蒸気が凝結しないことを確保するために、第3の制御電源を通してパイプ3の外側に巻かれた第1の抵抗線断熱層31に電力が供給され、その結果、第1の抵抗線断熱層31はマグネシウム蒸気を断熱する役割を果たしてマグネシウム蒸気の利用効率を向上する。第3の制御電源は、第1の抵抗線断熱層31に供給される電流を制御することにより、第1の抵抗線断熱層31の断熱温度が摂氏650度乃至摂氏1000度の間になるように制御する。一実施形態において、マグネシウム粉末を収集チャンバ4に収集する工程は、マグネシウム蒸気がパイプ3を通って収集チャンバ4に入る工程と、マグネシウム蒸気を凝結させてマグネシウム粉末にするために冷却層41が開放される工程と、電気ブラシ42が第4の制御電源により始動して、水平ロッドが垂直ロッドの周りに水平方向に回転し、同時に又は非同時に垂直ロッドの軸方向に沿って上下に移動して収集チャンバ4の側壁に付着したマグネシウム粉末を取り除く工程と、収集されたマグネシウム粉末が、収集チャンバ4の底部に配置されたマグネシウム粉末出口43と第2のバルブ44を通って反応チャンバ5に入る工程をさらに備える。一実施形態において、最良の冷却効果を達成するために、冷却層41の中に流れ込む冷却水の温度は摂氏20度乃至摂氏50度の間であり、圧力は0.5MPa乃至2MPaの間である。
【0053】
収集チャンバ4で収集されたマグネシウム粉末が、第2のバルブ44を通って反応チャンバ5に入った後、水素化マグネシウム粒子を生成するために、水素がマグネシウム粉末との反応のために反応チャンバ5の中に導入される。水素化プロセスにおいて、第5の制御電源は、第2の抵抗線断熱層51に供給される電流を制御することにより、第2の抵抗線断熱層51の断熱温度が摂氏200度乃至摂氏450度の間になるように制御する。さらに、反応チャンバ5の中の水素とマグネシウム粉末の反応時間は1時間乃至40時間の間である。これに加えて、収集チャンバ4で収集されたマグネシウム粉末が第2のバルブ44を通って反応チャンバ5に入った後、水素が反応チャンバ5の中に導入される前に、加熱装置6の加熱が停止され、第3の制御電源から第1の抵抗線断熱層31への電力供給が停止され、第4の制御電源から電気ブラシ42への電力供給が停止され、そして第2のバルブ44が閉じられる。
【0054】
本発明により提供される水素化マグネシウム製造装置と水素化マグネシウム製造方法に用いることよって水素化マグネシウムを製造する例を、添付図面と併せて以下にさらに説明する。
【0055】
[実施例1]
移行チャンバ1の供給口11が開かれ、純マグネシウム原料が移行チャンバ1の加熱装置6の中に供給され、移行チャンバ1の供給口11が閉じられ、それと同時に第1のバルブ12が閉じられる。真空ポンプ装置13を使用して移行チャンバ1中で真空環境が生成され、圧力0.02MPaのアルゴンガスが移行チャンバガス充填口を通して移行チャンバ1の中に充填される。
【0056】
第1のバルブ12が開放され、第1の制御電源によりガイドレール63が始動して加熱装置6がガイドレール63に沿って加熱チャンバ2に移送され、次にそれと同時に第1のバルブ12が閉じられる。加熱チャンバ2のガス充填口を通して圧力0.02MPaのアルゴンガスが加熱チャンバ2に充填され、第2の制御電源を通して加熱装置6のインダクタンスコイル62に電力が供給され、加熱装置6のるつぼ61の中の温度を摂氏800度に上昇させる。その結果、るつぼ61の中の純マグネシウム原料は融解し、蒸発してマグネシウム蒸気になる。
【0057】
マグネシウム蒸気は、パイプ3を通って収集チャンバ4に入り、それと同時に、温度摂氏20度で圧力2MPaの循環する冷却水が冷却層41の中に導入される。その結果、冷却する収集チャンバ4中のマグネシウム蒸気は凝結してマグネシウム粉末になる。そして、電気ブラシ42が第4の制御電源により回転するように制御されてマグネシウム粉末を収集する。
【0058】
マグネシウム粉末が第2のバルブ44を通って反応チャンバ5に入った後、加熱装置6の加熱が停止され、パイプ3の加熱と保温が停止され、第2のバルブ44が閉じられ、第5の制御電源を通して第2の抵抗線断熱層51に電力が供給されて反応チャンバ5の温度を摂氏400度に維持し、水素化を開始するために4MPaの水素ガスが反応チャンバ5に導入される。
【0059】
10時間の水素化反応の後、水素注入口52は閉じられ、反応生成物の粉末は反応チャンバ5から収集される。
【0060】
XRD試験が実施例1で製造された粉末に対して実施され、図2に示されるように、XRDパターンは、実施例1で製造された粉末中の純粋な水素化マグネシウム(MgH2)の含有量はかなり高く、MgH2結晶面の特性ピークと少量のMgの特性ピークが現れていることを示している。実施例1で製造された粉末は、ナノ粒径試験を受けて、図3に示されるように、粉末粒子の体積平均粒径は、高い一貫性を持って、15.211μmである。
【0061】
[実施例2]
移行チャンバ1の供給口11が開放され、マグネシウム・アルミニウム合金原料が移行チャンバ1中の加熱装置6の中に供給されて、移行チャンバ1の供給口11が閉じられ、それと同時に第1のバルブ12が閉じられる。真空ポンプ装置13を使用して移行チャンバ1に真空環境を生成し、移行チャンバガス充填口を通して圧力0.03MPaのアルゴンガスが移行チャンバ1に充填される。
【0062】
第1のバルブ12が開放され、第1の制御電源によりガイドレール63が始動して加熱装置6がガイドレール63に沿って加熱チャンバ2に移送され、次にそれと同時に第1のバルブ12が閉じられる。加熱チャンバ2には、加熱チャンバ2のガス充填口を通して圧力0.03MPaのアルゴンガスが充填され、第2の制御電源を通して加熱装置6のインダクタンスコイル62に電力が供給されて加熱装置6のるつぼ61の中の温度を摂氏750度に上昇させる。その結果、るつぼ61の中のマグネシウム・アルミニウム合金原料が融解してマグネシウム蒸気を生成する。
【0063】
第3の制御電源を通して第1の抵抗線断熱層31に電力が供給されてパイプ3の中の温度を摂氏750度に維持する。マグネシウム蒸気は、パイプ3を通って収集チャンバ4に入り、それと同時に温度摂氏30度で圧力1MPaの循環する冷却水が冷却層41に導入される。その結果、冷却する収集チャンバ4の中のマグネシウム蒸気は凝結してマグネシウム粉末になる。そして電気ブラシ42は、第4の制御電源により回転するように制御されてマグネシウム粉末を収集する。
【0064】
マグネシウム粉末が第2のバルブ44を通って反応チャンバ5に入った後、加熱装置6の加熱は停止され、パイプ3の加熱と保温は停止され、第2のバルブ44は閉じられ、第5の制御電源を通して第2の抵抗線断熱層51に電力が供給されて反応チャンバ5の温度を摂氏360度に維持して、水素化を開始するために3MPaの水素ガスが反応チャンバ5の中に導入される。
【0065】
15時間の水素化反応の後、水素注入口52が閉じられ、そして反応生成物の粉末が反応チャンバ5から収集される。
【0066】
実施例2において製造された粉末に対するXRD試験が実施され、図4に示されるように、実施例2において製造された粉末中にMgH2とMgの両方が含まれること、そして主要成分はMgH2であることをXRDパターンは示している。実施例2において製造された粉末はナノ粒径試験を受け、図5に示されるように、粉末粒子の体積平均粒径は18.646μmであり、粒径は正規分布を有する。
【0067】
[実施例3]
移行チャンバ1の供給口11が開放され、マグネシウム・アルミニウム合金原料が移行チャンバ1の中の加熱装置6の中に供給されて、移行チャンバ1の供給口11が閉じられ、それと同時に第1のバルブ12が閉じられる。真空ポンプ装置13を使用して移行チャンバ1に真空環境を生成し、移行チャンバガス充填口を通して圧力0.03MPaのアルゴンガスが移行チャンバ1に充填される。
【0068】
第1のバルブ12が開放され、第1の制御電源によりガイドレール63が始動して加熱装置6がガイドレール63に沿って加熱チャンバ2に移送され、次にそれと同時に第1のバルブ12が閉じられる。加熱チャンバ2には、加熱チャンバ2のガス充填口を通して圧力0.03MPaのアルゴンガスが充填され、第2の制御電源を通して加熱装置6のインダクタンスコイル62に電力が供給されて加熱装置6のるつぼ61の中の温度を摂氏750度に上昇させる。その結果、るつぼ61の中のマグネシウム・アルミニウム合金原料が融解してマグネシウム蒸気を生成する。
【0069】
第3の制御電源を通して第1の抵抗線断熱層31に電力が供給されてパイプ3の中の温度を摂氏750度に維持する。マグネシウム蒸気は、パイプ3を通って収集チャンバ4に入り、それと同時に温度摂氏25度で圧力1MPaの循環する冷却水が冷却層41に導入される。その結果、冷却する収集チャンバ4の中のマグネシウム蒸気は凝結してマグネシウム粉末になる。そして電気ブラシ42は、第4の制御電源により回転するように制御されてマグネシウム粉末を収集する。
【0070】
マグネシウム粉末が第2のバルブ44を通って反応チャンバ5に入った後、加熱装置6の加熱は停止され、パイプ3の加熱と保温は停止され、第2のバルブ44は閉じられ、第5の制御電源を通して第2の抵抗線断熱層51に電力が供給されて反応チャンバ5の温度を摂氏380度に維持して、水素化を開始するために3MPaの水素ガスが反応チャンバ5の中に導入される。
【0071】
5時間の水素化反応の後、水素注入口52が閉じられ、そして反応生成物の粉末が反応チャンバ5から収集される。
【0072】
実施例3において製造された粉末に対するXRD試験が実施され、図6に示されるように、実施例3において製造された粉末は、MgH2の含有量が95%に達するMgH2とMgの混合粉末であることをXRDパターンは示している。実施例3において製造された粉末はナノ粒径試験を受け、図7に示されるように、粉末粒子の体積平均粒径は5.922μmであり、粒径は正規分布を有する。
【0073】
上記の実施形態と実施例から分かるように、本発明で提案される水素化マグネシウム製造装置と水素化マグネシウム製造方法は、既存の水素化マグネシウム製造プロセスにおける困難な粉末収集の問題を克服し、簡易な製造工程を有するとともに周期的な自動的マグネシウム粉末収集と水素化反応を統合する。マグネシウム原料の加熱温度と、移行チャンバのアルゴン圧力と、パイプの外側の第1の抵抗線断熱層の断熱温度と、冷却層の冷却温度を制御することにより、水素化マグネシウム粉末の粒径分布の制御を実現し、装置と方法によって製造される水素化マグネシウム粉末の粒径分布は1μm乃至60μmの範囲になるように確保され、これによって、粒径が大きすぎる又は小さすぎるという問題を解決できる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7