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特許7013486スパンボンド不織布、衛生材料、及びスパンボンド不織布の製造方法
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  • 特許-スパンボンド不織布、衛生材料、及びスパンボンド不織布の製造方法 図1A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-21
(45)【発行日】2022-01-31
(54)【発明の名称】スパンボンド不織布、衛生材料、及びスパンボンド不織布の製造方法
(51)【国際特許分類】
   D04H 3/007 20120101AFI20220124BHJP
   D04H 3/16 20060101ALI20220124BHJP
   D01F 6/46 20060101ALI20220124BHJP
   C08L 23/12 20060101ALI20220124BHJP
   C08L 23/14 20060101ALI20220124BHJP
   C08L 23/06 20060101ALI20220124BHJP
   D01F 8/06 20060101ALI20220124BHJP
   D04H 3/153 20120101ALI20220124BHJP
【FI】
D04H3/007
D04H3/16
D01F6/46 D
C08L23/12
C08L23/14
C08L23/06
D01F8/06
D04H3/153
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019567120
(86)(22)【出願日】2019-01-23
(86)【国際出願番号】 JP2019002122
(87)【国際公開番号】W WO2019146656
(87)【国際公開日】2019-08-01
【審査請求日】2020-07-03
(31)【優先権主張番号】P 2018009762
(32)【優先日】2018-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】市川 泰一郎
(72)【発明者】
【氏名】島田 幸一
(72)【発明者】
【氏名】本村 茂之
(72)【発明者】
【氏名】松原 暁雄
【審査官】長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-179658(JP,A)
【文献】特開平06-179658(JP,A)
【文献】特開2011-214163(JP,A)
【文献】国際公開第2017/006972(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K3/00-13/08
C08L1/00-101/14
D01F1/00-9/04
D04H1/00-18/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
融点140℃以上のプロピレン単独重合体と、ポリエチレンと、下記(I)に示す重合体及び下記(II)に示す重合体からなる群より選択される少なくとも一種の重合体と、を含む組成物からなる繊維を含み、
前記ポリエチレンの含有量が、前記組成物の全量に対して1.0質量%以上15.0質量%以下であり、
下記(I)に示す重合体及び下記(II)に示す重合体からなる群より選択される少なくとも一種の重合体の含有量が、前記組成物の全量に対して5.0質量%以上30.0質量%以下であり、
前記融点140℃以上のプロピレン単独重合体の含有量が、前記組成物の全量に対して55.0質量%以上90.0質量%以下であり、
前記繊維が、前記融点140℃以上のプロピレン単独重合体を含む海相と、前記ポリエチレンを含む島相と、からなる海島構造を有し、前記繊維の長軸方向に沿った断面における島相の平均長さが1μm以上500μm以下である、スパンボンド不織布。
(I)プロピレンと、エチレン及び炭素数が4以上20以下であるα-オレフィンから選ばれる少なくとも1種と、のランダム共重合体
(II)下記(a)~(f)を満たす融点120℃未満のプロピレン単独重合体
(a)[mmmm]=20モル%以上60モル%以下
(b)[rrrr]/(1-[mmmm])≦0.1
(c)[rmrm]>2.5モル%
(d)[mm]×[rr]/[mr]≦2.0
(e)重量平均分子量(Mw)=10,000以上200,000以下
(f)分子量分布(Mw/Mn)<4
(a)~(d)中、[mmmm]はメソペンタッド分率であり、[rrrr]はラセミペンタッド分率であり、[rmrm]はラセミメソラセミメソペンタッド分率であり、[mm]、[rr]及び[mr]はそれぞれトリアッド分率である。
【請求項2】
前記ポリエチレンの密度が、0.941g/cm以上0.970g/cm以下の範囲にある、請求項に記載のスパンボンド不織布。
【請求項3】
前記組成物が炭素数15以上22以下の脂肪酸アミドを含み、前記炭素数15以上22以下の脂肪酸アミドの含有量が、前記組成物の全量に対して0.1質量%以上5.0質量%以下である、請求項1又は請求項2に記載のスパンボンド不織布。
【請求項4】
前記(I)に示す重合体が、プロピレンに由来する構成単位とエチレンに由来する構成単位とを少なくとも含むランダム共重合体である、請求項1~請求項のいずれか1項に記載のスパンボンド不織布。
【請求項5】
請求項1~請求項のいずれか1項に記載のスパンボンド不織布を含む衛生材料。
【請求項6】
ポリエチレンを180℃以上200℃以下で溶融し、溶融した前記ポリエチレンを目開き65μm以下の篩を通す、ろ過工程と、
前記ろ過工程にて前記篩を通ったポリエチレンと、融点140℃以上のプロピレン単独重合体と、下記(I)に示す重合体及び下記(II)に示す重合体からなる群より選択される少なくとも一種の重合体と、を混合して組成物を得る混合工程と、
前記混合工程で得られた前記組成物からスパンボンド法にて不織布を得る不織布形成工程と、
を含み、前記ろ過工程にて前記篩を通った前記ポリエチレンにより形成された膜中に含まれる直径0.2mm以下の粒子の数が25個/g以下であ前記混合工程に用いる前記ポリエチレンの含有量が、前記組成物の全量に対して1.0質量%以上15.0質量%以下であり、前記混合工程に用いる下記(I)に示す重合体及び下記(II)に示す重合体からなる群より選択される少なくとも一種の重合体の含有量が、前記組成物の全量に対して5質量%以上30質量%以下であり、前記混合工程に用いる前記融点140℃以上のプロピレン単独重合体の含有量が、前記組成物の全量に対して55.0質量%以上90.0質量%以下である、スパンボンド不織布の製造方法。
(I)プロピレンと、エチレン及び炭素数が4以上20以下であるα-オレフィンから選ばれる少なくとも1種と、のランダム共重合体
(II)下記(a)~(f)を満たす融点120℃未満のプロピレン単独重合体
(a)[mmmm]=20モル%以上60モル%以下
(b)[rrrr]/(1-[mmmm])≦0.1
(c)[rmrm]>2.5モル%
(d)[mm]×[rr]/[mr]≦2.0
(e)重量平均分子量(Mw)=10,000以上200,000以下
(f)分子量分布(Mw/Mn)<4
(a)~(d)中、[mmmm]はメソペンタッド分率であり、[rrrr]はラセミペンタッド分率であり、[rmrm]はラセミメソラセミメソペンタッド分率であり、[mm]、[rr]及び[mr]はそれぞれトリアッド分率である。
【請求項7】
前記混合工程が、炭素数15以上22以下の脂肪酸アミドを更に混合して組成物を得る工程であり、前記炭素数15以上22以下の脂肪酸アミドの含有量が、前記組成物の全量に対して0.1質量%以上5.0質量%以下である、請求項に記載のスパンボンド不織布の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スパンボンド不織布、衛生材料、及びスパンボンド不織布の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、不織布は通気性及び柔軟性に優れることから各種用途に幅広く用いられている。不織布の代表的な用としては、例えば、紙おむつ、生理用ナプキン等の吸収性物品、衛生マスク、医療用ガーゼ、湿布材の基布等が挙げられる。
このような不織布には、使用される箇所によって伸長性を有すること等が求められる。
【0003】
例えば、特表平9-512313号公報には、複合不織布に含まれる不織布として、ポリエチレンとプロピレンポリマーとを含む、伸張性が良好な密着型伸張性不織布に関する技術が提案されている。
また、国際公開第2014/050965号には、柔軟性を有する不織布としては、融点の互いに異なる2種以上のポリプロピレンと特定の脂肪酸アミドとを含む組成物からなるスパンボンド不織布が提案されている。
更に、特開2015-071854号公報には、衛生材料に好適な、伸縮性、触感の良好なスパンボンド不織布として、熱可塑性ポリウレタンエラストマーに、エチレンビスオレイン酸アミド及び/又は架橋有機微粒子を含有させ、硬度を75~85の範囲とする熱可塑性ポリウレタンエラストマーを用いてなるスパンボンド不織布が提案されている。
加えて、国際公開第2017/006972号には、低温でのヒートシール性、延伸加工適性が良好なスパンボンド不織布として、比較的融点の高いプロピレン単独重合体と、ポリエチレンに加え、更に、特定の炭素数を有するα-オレフィンとプロピレンとのランダム共重合体と比較的低融点であり特定のメソペンタッド分率、ラセミペンタッド分率であるプロピレン単独重合体とからなる群より選ばれる重合体を含むスパンボンド不織布が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特表平9-512313号公報に記載の密着型伸張性不織布では、複合不織布として、第二の伸張性層を有する態様が想定されているものの、単独の不織布として使用するには、伸長性の向上が求められる場合がある。
国際公開第2014/050965号に記載のスパンボンド不織布は、伸長性の向上が求められる場合がある。
特開2015-071854号公報に記載のスパンボンド不織布は、熱可塑性ポリウレタンエラストマーを用いているため、耐熱性が充分ではないため、加工性の改善が求められる場合がある。
国際公開第2017/006972号に記載のスパンボンド不織布に対しては、伸長性をより向上させることが求められる場合がある。
【0005】
本発明の一実施形態の課題は、熱可塑性ポリウレタンエラストマーを用いることなく、伸長性に優れたスパンボンド不織布、及びスパンボンド不織布を用いた衛生材料を提供することにある。
本発明の別の一実施形態の課題は、伸長性に優れたスパンボンド不織布の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段には、以下の実施形態が含まれる。
<1>
融点140℃以上のプロピレン単独重合体と、ポリエチレンと、下記(I)に示す重合体及び下記(II)に示す重合体からなる群より選択される少なくとも一種の重合体と、を含む組成物からなる繊維を含み、
前記繊維が海島構造を有し、前記繊維の長軸方向に沿った断面における島相の平均長さが1μm以上500μm以下である、スパンボンド不織布。
(I)プロピレンと、エチレン及び炭素数が4以上20以下であるα-オレフィンから選ばれる少なくとも1種と、のランダム共重合体
(II)下記(a)~(f)を満たす融点120℃未満のプロピレン単独重合体
(a)[mmmm]=20モル%以上60モル%以下
(b)[rrrr]/(1-[mmmm])≦0.1
(c)[rmrm]>2.5モル%
(d)[mm]×[rr]/[mr]≦2.0
(e)重量平均分子量(Mw)=10,000以上200,000以下
(f)分子量分布(Mw/Mn)<4
(a)~(d)中、[mmmm]はメソペンタッド分率であり、[rrrr]はラセミペンタッド分率であり、[rmrm]はラセミメソラセミメソペンタッド分率であり、[mm]、[rr]及び[mr]はそれぞれトリアッド分率である。
【0007】
<2>
前記ポリエチレンの含有量が、前記組成物の全量に対して1.0質量%以上15.0質量%以下である、<1>に記載のスパンボンド不織布。
【0008】
<3>
前記(I)に示す重合体及び(II)に示す重合体からなる群より選択される少なくとも一種の重合体の含有量が、前記組成物の全量に対して5.0質量%以上30.0質量%以下である、<1>又は<2>に記載のスパンボンド不織布。
【0009】
<4>
前記融点140℃以上のプロピレン単独重合体の含有量が、前記組成物の全量に対して55.0質量%以上90.0質量%以下である、<1>~<3>のいずれか1に記載のスパンボンド不織布。
【0010】
<5>
前記ポリエチレンの密度が、0.941g/cm以上0.970g/cm以下の範囲にある、<1>~<4>のいずれか1に記載のスパンボンド不織布。
【0011】
<6>
前記組成物が炭素数15以上22以下の脂肪酸アミドを含み、前記炭素数15以上22以下の脂肪酸アミドの含有量が、前記組成物の全量に対して0.1質量%以上5.0質量%以下である、<1>~<5>のいずれか1に記載のスパンボンド不織布。
【0012】
<7>
前記(I)に示す重合体が、プロピレンとエチレンとを少なくとも含むランダム共重合体である、<1>~<6>のいずれか1に記載のスパンボンド不織布。
【0013】
<8>
<1>~<7>のいずれか1に記載のスパンボンド不織布を含む衛生材料。
【0014】
<9>
ポリエチレンを180℃以上200℃以下で溶融し、溶融した前記ポリエチレンを目開き65μm以下の篩を通す、ろ過工程と、
前記ろ過工程にて前記篩を通ったポリエチレンと、融点140℃以上のプロピレン単独重合体と、下記(I)に示す重合体及び下記(II)に示す重合体からなる群より選択される少なくとも一種の重合体と、を混合して組成物を得る混合工程と、
前記混合工程で得られた前記組成物からスパンボンド法にて不織布を得る不織布形成工程と、
を含み、前記ろ過工程にて前記篩を通った前記ポリエチレンにより形成された膜中に含まれる直径0.2mm以下の粒子の数が25個/g以下である、スパンボンド不織布の製造方法。
(I)プロピレンと、エチレン及び炭素数が4以上20以下であるα-オレフィンから選ばれる少なくとも1種と、のランダム共重合体
(II)下記(a)~(f)を満たす融点120℃未満のプロピレン単独重合体
(a)[mmmm]=20モル%以上60モル%以下
(b)[rrrr]/(1-[mmmm])≦0.1
(c)[rmrm]>2.5モル%
(d)[mm]×[rr]/[mr]≦2.0
(e)重量平均分子量(Mw)=10,000以上200,000以下
(f)分子量分布(Mw/Mn)<4
(a)~(d)中、[mmmm]はメソペンタッド分率であり、[rrrr]はラセミペンタッド分率であり、[rmrm]はラセミメソラセミメソペンタッド分率であり、[mm]、[rr]及び[mr]はそれぞれトリアッド分率である。
【0015】
<10>
前記混合工程に用いる前記ポリエチレンの含有量が、前記組成物の全量に対して1.0質量%以上15.0質量%以下である、<9>に記載のスパンボンド不織布の製造方法。
【0016】
<11>
前記混合工程に用いる前記(I)に示す重合体及び(II)に示す重合体からなる群より選択される少なくとも一種の重合体の含有量が、前記組成物の全量に対して5質量%以上30質量%以下である、<9>又は<10>に記載のスパンボンド不織布の製造方法。
【0017】
<12>
前記混合工程に用いる前記融点140℃以上のプロピレン単独重合体の含有量が、前記組成物の全量に対して55.0質量%以上90.0質量%以下である、<9>~<11>のいずれか1に記載のスパンボンド不織布の製造方法。
【0018】
<13>
前記混合工程が、炭素数15以上22以下の脂肪酸アミドを更に混合して組成物を得る工程であり、前記炭素数15以上22以下の脂肪酸アミドの含有量が、前記組成物の全量に対して0.1質量%以上5.0質量%以下である、<9>~<12>のいずれか1に記載のスパンボンド不織布の製造方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一実施形態によれば、伸長性に優れたスパンボンド不織布、及びスパンボンド不織布を用いた衛生材料が提供される。
本発明の別の一実施形態によれば、伸長性に優れたスパンボンド不織布の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1A】実施例1のスパンボンド不織布における繊維の断面を透過型電子顕微鏡で観察したときの像である。
図1B】比較例1のスパンボンド不織布における繊維の断面を透過型電子顕微鏡で観察したときの像である。
図2】密閉式スパンボンド法の概略図である。
図3】ギア延伸装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態(以下、「本実施形態」ともいう)について説明する。
但し、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合、原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本発明を制限するものではない。
【0022】
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本明細書において組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
【0023】
<スパンボンド不織布>
本実施形態のスパンボンド不織布は、融点140℃以上のプロピレン単独重合体と、ポリエチレンと、下記(I)に示す重合体及び下記(II)に示す重合体からなる群より選択される少なくとも一種の重合体と、を含む組成物からなる繊維を含み、繊維が海島構造を有し、繊維の長軸方向に沿った断面における島相の平均長さが1μm以上500μm以下である、スパンボンド不織布である。
(I)プロピレンと、エチレン及び炭素数が4以上20以下であるα-オレフィンから選ばれる少なくとも1種と、のランダム共重合体
(II)下記(a)~(f)を満たす融点120℃未満のプロピレン単独重合体
(a)[mmmm]=20モル%以上60モル%以下
(b)[rrrr]/(1-[mmmm])≦0.1
(c)[rmrm]>2.5モル%
(d)[mm]×[rr]/[mr]≦2.0
(e)重量平均分子量(Mw)=10,000以上200,000以下
(f)分子量分布(Mw/Mn)<4
(a)~(d)中、[mmmm]はメソペンタッド分率であり、[rrrr]はラセミペンタッド分率であり、[rmrm]はラセミメソラセミメソペンタッド分率であり、[mm]、[rr]及び[mr]はそれぞれトリアッド分率である。
なお、「(I)に示す重合体及び(II)に示す重合体からなる群より選択される少なくとも一種の重合体」を総じて、「特定重合体」と称することがある。
また、本実施形態のスパンボンド不織布を構成する繊維は、上記各成分を含む組成物からなるため、繊維中の各成分の含有量は、組成物中の各成分の含有量と同様である。
【0024】
本実施形態のスパンボンド不織布は、比較的融点の高いプロピレン単独重合体、ポリエチレン、及び、特定重合体を含む組成物からなる繊維により構成されるものであって、繊維が海島構造を有し、繊維の長軸方向に沿った断面における島相の平均長さが1μm以上500μm以下である。
本発明者らは、上記のような海島構造を有する繊維を含み、繊維の長軸方向に沿った断面における島相の平均長さが1μm以上500μm以下であることで、得られたスパンボンド不織布の伸長性が高まるという新たな知見を得た。上記のように繊維が海島構造を有することで、ポリプロピレンの配向結晶化を阻害して伸長性が高まるものと推測されるが、島相の平均長さが上記範囲内であると伸長性がより高まる理由は明らかではない。
【0025】
本実施形態のスパンボンド不織布は、海島構造を有する繊維により構成される。そして、繊維の海島構造における島相の平均長さが1μm以上500μm以下である。島相の長さは、1μm以上100μm以下が好ましく、3μm以上50μm以下がより好ましい。
島相の長さが1μm以上500μm以下であることで、上述のように、優れた伸長性が得られる。
【0026】
ここで、繊維の海島構造における島相の長さについては、以下のように測定する。
まず、スパンボンド不織布から繊維を取り出し、パラフィンに包埋し、測定試料を作製する。そして、測定試料を、繊維の長軸方向と刃が平行するようにミクロトームに設置し、繊維の長軸方向に沿ってスライスする。その後、スライスして得られた繊維にカーボン補強を施した後、その断面について、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)を用いて観察し、任意の100個の島相の長さを計測し、平均長さを求める。
ここで、透過型電子顕微鏡としては、日立ハイテク(株)製の透過型電子顕微鏡型式:H-7650を用いる。観察倍率は、島相の長さを計測できれば特に制限されないが、例えば8000倍である。
また、繊維の末端がエンボス加工により観察できない場合は、もう一方の末端からエンボス加工の境目までの島相の長さを計測すればよい。繊維の両末端がエンボス加工により観測できない場合は、一方のエンボス加工の境目から、もう一方のエンボス加工の境目までの島相の長さを計測すればよい。
つまり、本発明における「繊維の海島構造における島相の長さ」は、島相の一方の末端からエンボス加工の境目までの島相の長さである場合、また、一方のエンボス加工の境目からもう一方のエンボス加工の境目までの島相の長さである場合を含む。
【0027】
図1に、透過型電子顕微鏡での観察した繊維の断面像を示す。図1Aは、実施例1のスパンボンド不織布における繊維の断面像であり、図1Bは、比較例1のスパンボンド不織布における繊維の断面像である。
【0028】
本実施形態のスパンボンド不織布を構成する組成物又は組成物からなる繊維に上記各成分が含まれることは、公知の方法により、適宜、確認することができる。
なお、(II)に示す重合体における融点120℃未満のプロピレン単独重合体の、メソペンタッド分率[mmmm]、ラセミペンタッド分率[rrrr]、ラセミメソラセミメソペンタッド分率[rmrm]、トリアッド分率[mm]、[rr]及び[mr]は、以下に詳述するように、エイ・ザンベリ(A.Zambelli)等により「Macromolecules,6,925(1973)」で提案された方法に準拠して算出することができる。
【0029】
本実施形態における組成物において、ポリエチレンの含有量は、組成物の全量に対して、1.0質量%以上15.0質量%以下であることが好ましく、3.0質量%以上12.0質量%以下であることがより好ましく、6.0質量%以上10.0質量%以下が更に好ましい。
ポリエチレンの含有量が上記範囲であることで、得られるスパンボンド不織布の伸長性の向上が図れる。
【0030】
また、ポリエチレンは、スパンボンド不織布の強度の向上の観点から、密度が0941g/cm以上0.970g/cm以下の範囲にあることが、得られるスパンボンド不織布の伸長性及び柔軟性をより向上させる観点から好ましい。
ポリエチレンの密度が上記範囲であることで、得られるスパンボンド不織布の強度の向上が図れる。
【0031】
本実施形態における組成物において、特定重合体の含有量は、組成物の全量に対して、5.0質量%以上30.0質量%以下であることが好ましく、10.0質量%以上30.0質量%以下であることがより好ましく、15.0質量%以上25.0質量%以下が更に好ましい。
特定重合体の含有量が上記範囲であることで、得られるスパンボンド不織布の伸長性の向上が図れる。
【0032】
本実施形態における特定重合体は、得られるスパンボンド不織布の伸長性をより向上させる観点から、(I)プロピレンに由来する構成単位とエチレンに由来する構成単位とを少なくとも含むランダム共重合体、又は、(II)(a)~(f)を満たす融点120℃未満のプロピレン単独重合体が好ましい。同様の観点から、特定重合体は、プロピレンに由来する構成単位とエチレンに由来する構成単位とを少なくとも含むランダム共重合体がより好ましく、プロピレンに由来する構成単位及びエチレンに由来する構成単位のみからなるランダム共重合体が更に好ましい。
【0033】
本実施形態における組成物において、融点140℃以上のプロピレン単独重合体の含有量は、組成物の全量に対して、55.0質量%以上90.0質量%以下であることが好ましく、60.0質量%以上85.0質量%以下であることがより好ましく、65.0質量%以上80.0質量%以下が更に好ましい。
融点140℃以上のプロピレン単独重合体の含有量が上記範囲であることで、得られるスパンボンド不織布の伸長性の向上が図れると共に、スパンボンド不織布の強度物性が良好な範囲に維持され、低目付で柔軟な不織布が得られ易い。
【0034】
本実施形態における組成物は、炭素数15以上22以下の脂肪酸アミドを含むことが好ましい。組成物が炭素数15以上22以下の脂肪酸アミドを含有することで、組成物により形成されるスパンボンド不織布の繊維表面に、炭素数15以上22以下の脂肪酸アミドが吸着し、繊維表面が改質される。その結果、スパンボンド不織布の伸長性及び柔軟性がより向上する。
炭素数15以上22以下の脂肪酸アミドの含有量は、組成物の全量に対して、0.1質量%以上5.0質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上3.0質量%以下がより好ましく、0.1質量%以上1.0質量%以下が更に好ましい。
【0035】
〔スパンボンド不織布の態様及び物性〕
以下に、本実施形態のスパンボンド不織布の好ましい態様及び物性を挙げる。
【0036】
(5%強度を不織布の目付で割った値及び50%延伸時の応力積分値の積算値)
本実施形態のスパンボンド不織布は、5%強度を不織布の目付で割った値が0.2N/25mm/(g/m)以上であり、且つ、50%延伸時の応力積分値の積算値が70N/(g/m)以下であることが好ましい。
5%強度を不織布の目付で割った値とは、不織布製造時の流れ方向(即ち、MD方向)について、JIS L 1906の6.12.1[A法]に準拠して引張試験を行い、引張試験開始状態から5%延伸された状態のときの引張荷重であるMD5%強度を、不織布の単位面積あたりの重量である目付で割った値を指す。また、50%延伸時の応力積分値とは、JIS L 1906の6.12.1[A法]に準拠して引張試験を行い、引張試験開始状態から50%延伸された状態までの応力積分値の積算値を、不織布の単位面積あたりの重量である目付で割った値を指す。
この好ましい物性を有するスパンボンド不織布は、後述する開放式スパンボンド法を用いて得ることができる。
【0037】
本実施形態のスパンボンド不織布の目付は特に制限されない。
本実施形態のスパンボンド不織布は、柔軟性と強度とを両立するという観点からは、通常、目付が30g/m以下であることが好ましく、28g/m以下であることがより好ましく、25g/m以下であることが更に好ましく、5g/m以上20g/m以下の範囲であることが最も好ましい。本実施形態のスパンボンド不織布を後述する衛生材料等に適用する場合、スパンボンド不織布の目付は、5g/m以上19g/m以下の範囲にあることが好ましい。
目付は、後述する実施例で用いた方法により測定することができる。
【0038】
(繊維径)
本実施形態のスパンボンド不織布を構成する繊維は、通常、繊維径が50μm以下であることが好ましく、40μm以下であることがより好ましく、30μm以下であることが更に好ましく、最も好ましくは20μm以下である。繊維径は小さいほど不織布の柔軟性に優れる。ハンドリング性、製造適性及び得られた不織布の毛羽立ち発生抑制の観点からは、繊維径は10μm以上であることが好ましい。
【0039】
(ヒートシール性)
本実施形態のスパンボンド不織布の物性の一つとしてヒートシール性が挙げられる。
スパンボンド不織布のヒートシール性は、2枚の不織布を重ね合わせ、ヒートシール試験機でヒートシールした場合、180℃以下の温度にてヒートシールし得ることが好ましく、160℃以下の温度でヒートシールし得ることがより好ましい。
また、上記条件にてヒートシールした場合の焼け、即ち加熱による変色が抑制されることが好ましい。
ヒートシールを行なった2枚のスパンボンド不織布の引張剥離強度(ヒートシール強度ともいう)を確認することで、ヒートシール性の有無を評価してもよい。例えば、ヒートシール強度は、スパンボンド不織布の使用目的により適宜定められるが、一般的には、0.05N/20mm以上であることが好ましく、0.1N/20mm以上であることがより好ましい。
なお、ヒートシール性の有無は、例えば、後述する実施例で用いた方法により確認される。
【0040】
(エンボス残存率)
本実施形態のスパンボンド不織布の物性の一つとしてエンボス残存率が挙げられる。
スパンボンド不織布の延伸加工後のエンボス残存率は40%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、70%以上であることが更に好ましい。
延伸加工後のエンボス残存率が40%以上であると、スパンボンド不織布の触感がより良好となる。
エンボス残存率は、後述する実施例で用いた方法により測定することができる。
【0041】
(柔軟性)
本実施形態のスパンボンド不織布の物性の一つとして柔軟性が挙げられる。
スパンボンド不織布の柔軟性は不織布の使用感に大きな影響を与える。柔軟性としては、手触りによる官能評価による柔軟性(例えば、実施例にて詳述する方法での柔軟性)と剛軟度とが挙げられる。JIS L 1096:2010の8.21.1[A法(45°カンチレバー法)]に準拠して測定することができる。
【0042】
(最大伸度及び最大強度)
本実施形態のスパンボンド不織布の好ましい物性の一つとして、最大伸度及び最大強度が挙げられる。
本実施形態のスパンボンド不織布は、少なくとも一方向の最大伸度が70%以上であることが好ましく、100%以上であることがより好ましく、140%以上であることが更に好ましい。
また、本実施形態のスパンボンド不織布は、少なくとも一方向の最大強度が10N/50nn以上であることが好ましく、15N/50nn以上であることがより好ましく、20N/50nn以上であることが更に好ましい。
また、弾性回復が殆どない性質を有するスパンボンド不織布が好ましい。
スパンボンド不織布の最大伸度及び最大強度は、実施例にて詳述するように、JIS L 1906の6.12.1[A法]に準拠して測定することができる。
【0043】
本実施形態のスパンボンド不織布は、以下に詳述する組成物の1種又は2種以上を用いて常法により製造することができる。
【0044】
〔組成物に含まれる各成分〕
本実施形態のスパンボンド不織布を構成する組成物は、既述のように、融点140℃以上のプロピレン単独重合体(以下、「特定ポリプロピレン」と称することがある)と、ポリエチレンと、前記(I)で示す重合体及び前記(II)で示す重合体からなる群より選択される少なくとも一種の重合体(特定重合体)と、を含有する。
以下、組成物に含まれる各成分について詳述する。
【0045】
本実施形態の目的を効果的に達成する観点からは、組成物の総質量中の特定ポリプロピレン及び特定重合体の合計含有率は80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、92質量%以上であることが更に好ましい。
【0046】
[融点140℃以上のプロピレン単独重合体(特定ポリプロピレン)]
融点140℃以上のプロピレン単独重合体は、プロピレンに由来する構成単位のみを含み、融点が140℃以上の重合体である。
プロピレン単独重合体の融点は150℃以上であることが好ましい。プロピレン単独重合体の融点の上限は、例えば、166℃である。
【0047】
特定ポリプロピレンは、ポリプロピレンの名称で製造又は販売されている結晶性樹脂であって、融点(Tm)が140℃以上の樹脂であれば使用することができる。市販品としては、例えば、融点が155℃以上、好ましくは157℃以上166℃以下の範囲にあるプロピレンの単独重合体が挙げられる。
なお、特定ポリプロピレンの融点は、後述する重合体(I)の融点と同様の定義で示され、後述する重合体(I)の融点と同様の方法で測定することができる。
【0048】
特定ポリプロピレンは、溶融紡糸し得る限り、メルトフローレート(MFR:ASTM D 1238、測定条件:温度230℃、荷重2160g)は特に限定はされない。特定ポリプロピレンの上記メルトフローレートとしては、通常、1g/10分以上1000g/10分以下、好ましくは5g/10分以上500g/10分以下、更に好ましくは10g/10分以上100g/10分以下の範囲にある。
【0049】
特定ポリプロピレンは、組成物に1種のみを用いてもよく、融点、分子量、結晶構造などが互いに異なる2種以上を用いてもよい。
組成物の全量に対する特定ポリプロピレンの好ましい含有量は、既述の通りである。
【0050】
〔ポリエチレン〕
ポリエチレンは、エチレンに由来する構成単位を含むポリエチレンであれば特に制限はなく、具体的には、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(所謂LLDPE)、高密度ポリエチレン(所謂HDPE)などのエチレン単独重合体等が挙げられる。
中でも、ポリエチレンとしては、既述の通り、密度が0.941g/cm以上0.970g/cm以下の範囲にある高密度ポリエチレンであることが、伸長性、柔軟性、及び破断強度をより向上させる観点から好ましい。
【0051】
ポリエチレンは、ポリエチレンにより膜を形成したとき、この膜中に含まれる直径0.2mm以下の粒子の数が25個/g以下となるポリエチレンであるが好ましい。
また、ポリエチレンは、ポリエチレンにより膜を形成したとき、この膜中に含まれる直径2mm以下の粒子の数が10個/g以下となるポリエチレンであるが好ましい。
【0052】
ポリエチレンは、組成物に1種のみを用いてもよく、融点、分子量、結晶構造などが互いに異なる2種以上を用いてもよい。
組成物の全量に対するポリエチレンの好ましい含有量は、既述の通りである。
【0053】
〔特定重合体〕
本実施形態において、特定重合体を含む組成物を用いることで、得られたスパンボンド不織布は、良好な柔軟性や伸長性を維持しながらも極めて優れた延伸加工適性を得ることができる。
【0054】
[(I)で示す重合体:プロピレンと、エチレン及び炭素数が4以上20以下であるα-オレフィンから選ばれる少なくとも1種と、のランダム共重合体]
(I)で示す重合体(以下、重合体(I)と称することがある)は、プロピレンに由来する構成単位と、エチレン及び炭素数4以上20以下のα-オレフィンから選ばれる少なくとも1種のオレフィンに由来する構成単位と、を含むランダム共重合体である。
重合体(I)がランダム共重合体であることで、得られたスパンボンド不織布にべたつき感が発生せずに柔軟性が向上する観点から好ましい。
重合体(I)としては、上記構成単位を含むランダム共重合体であれば特に制限されない。
【0055】
プロピレンと共重合し得る構成単位としては、エチレンに由来する構成単位;1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテン等の炭素数4以上20以下のα-オレフィンに由来する構成単位等が挙げられる。
中でも、エチレンに由来する構成単位及び炭素数4以上8以下のα-オレフィンに由来する構成単位が好ましい。
重合体(I)に含まれるα-オレフィンに由来する構成単位は1種のみでもよく、2種以上であってもよい。
重合体(I)としては、具体的には、プロピレン・1-ブテンランダム共重合体、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・エチレン・1-ブテンランダム共重合体などが好ましい例として挙げられる。
【0056】
本実施形態の目的を効果的に達成する観点からは、重合体(I)に含まれる全構成単位中のプロピレンに由来する構成単位及びエチレンなどのプロピレン以外の前記オレフィンに由来する構成単位の合計の割合は80モル%以上であることが好ましく、85モル%以上であることがより好ましく、90モル%以上であることが更に好ましい。
【0057】
重合体(I)は、融点が100℃以上であることが好ましく、130℃以上であることがより好ましく、140℃以上であることが更に好ましい。
重合体(I)の融点は、示差走査型熱量計(DSC)を用いて、窒素雰囲気下-40℃で5分間保持した後10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブの最も高温側に観測されるピークのピークトップとして定義される。
具体的には、示差走査型熱量計(パーキン・エルマー社製、DSC-7)を用い、試料5mgを窒素雰囲気下-40℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブの最も高温側に観測されるピークのピークトップとして求めることができる。
【0058】
重合体(I)の結晶化度は、15%以下であることが好ましく、10%以下がより好ましく、8%以下が更に好ましい。
重合体(I)の結晶化度は、示差走査型熱量計(DSC)を用いて、窒素雰囲気下-40℃で5分間保持した後10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブのうち主成分の融解に由来する融解熱カーブより算出される。
具体的には、示差走査型熱量計(パーキン・エルマー社製、DSC-7)を用い、試料5mgを窒素雰囲気下-40℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブのうち主成分の融解に由来する融解熱カーブより下記の式を用いて算出することができる。
結晶化度=ΔH/ΔH0×100(%)
式中、ΔHはエチレンとプロピレンを含むα-オレフィン共重合体の主成分の融解に由来する融解熱カーブより求めた融解熱量(J/g)であり、ΔH0は主成分の完全結晶の融解熱量(J/g)である。つまり、主成分がエチレンの場合、ΔH0は293J/gであり、主成分がプロピレンの場合、ΔH0は210J/gである。
【0059】
重合体(I)は、JIS K 7161:2011に準拠した方法で測定される引張り弾性率が、100MPa以下であることが好ましく、40MPa以下であることがより好ましく、25MPa以下であることが更に好ましい。
【0060】
重合体(I)は、ASTM D 1238に準拠した方法で測定されるメルトフローレート(MFR、測定条件:温度230℃、荷重2160g)が、良好な紡糸性と優れた延伸加工適性を得る点より、通常、1g/10分以上100g/10分以下の範囲にあることが好ましく、5g/10分以上100g/10分以下の範囲にあることがより好ましく、30g/10分以上70g/10分以下の範囲にあることが更に好ましい。
【0061】
重合体(I)の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比:Mw/Mn(分子量分布)は、通常1.5以上5.0以下である。紡糸性がより良好で、かつ繊維強度が特に優れる複合繊維が得られる観点から、重合体(I)の分子量分布(Mw/Mn)は、更に1.5以上3.0以下が好ましい。
なお、良好な紡糸性とは、紡糸ノズルから重合体(I)の吐き出し時及び延伸中に糸切れを生じず、且つ、フィラメントの融着が生じないことをいう。
重合体(I)のMw及びMnは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によって、公知の方法で測定することができる。
なお、重合体(I)ののMw及びMnは、後述する重合体(II)のMw及びMnと同様の方法で測定することができる。
【0062】
[(II)で示す重合体:下記(a)~(f)の要件を満たすプロピレン単独重合体]
(II)で示す重合体(以下、重合体(II)と称することがある)は、下記(a)~(f)の要件を満たす重合体である。
まず、(a)~(f)の要件について説明する。
【0063】
・(a)[mmmm]=20モル%以上60モル%以下
重合体(II)のメソペンタッド分率[mmmm]が20モル%以上であると、べたつきの発生が抑制され、60モル%以下であると、結晶化度が高くなりすぎることがないので、弾性回復性が良好となる。
このメソペンタッド分率[mmmm]は、好ましくは30モル%以上50モル%以下であり、より好ましくは40モル%以上50モル%以下である。
【0064】
メソペンタッド分率[mmmm]、後述するラセミペンタッド分率[rrrr]及びラセミメソラセミメソペンタッド分率[rmrm]は、エイ・ザンベリ(A.Zambelli)等により「Macromolecules,6,925(1973)」で提案された方法に準拠し、13C-NMRスペクトルのメチル基のシグナルにより測定されるポリプロピレン分子鎖中のペンタッド単位でのメソ分率、ラセミ分率、及びラセミメソラセミメソ分率である。メソペンタッド分率[mmmm]が大きくなると、立体規則性が高くなる。また、後述するトリアッド分率[mm]、[rr]及び[mr]も上記方法により算出される。
【0065】
なお、13C-NMRスペクトルの測定は、エイ・ザンベリ(A.Zambelli)等により「Macromolecules,8,687(1975)」で提案されたピークの帰属に従い、下記の装置及び条件にて行うことができる。
【0066】
装置 :日本電子(株)製JNM-EX400型13C-NMR装置
方法 :プロトン完全デカップリング法
濃度 :220mg/ml
溶媒 :1,2,4-トリクロロベンゼンと重ベンゼンの90:10(容量比)混合溶媒
温度 :130℃
パルス幅 :45°
パルス繰り返し時間 :4秒
積算 :10000回
【0067】
[計算式]
M=m/S×100
R=γ/S×100
S=Pββ+Pαβ+Pαγ
S:全プロピレン単位の側鎖メチル炭素原子のシグナル強度
Pββ:19.8ppm以上22.5ppm以下
Pαβ:18.0ppm以上17.5ppm以下
Pαγ:17.5ppm以上17.1ppm以下
γ:ラセミペンタッド連鎖:20.7ppm以上20.3ppm以下
m:メソペンタッド連鎖:21.7ppm以上22.5ppm以下
【0068】
・(b)[rrrr]/(1-[mmmm])≦0.1
[rrrr]/[1-mmmm]の値は、上記のペンタッド単位の分率から求められ、重合体(II)におけるプロピレン由来の構成単位の規則性分布の均一さを示す指標である。この値が大きくなると、既存触媒系を用いて製造される従来のポリプロピレンのように高規則性ポリプロピレンとアタクチックポリプロピレンの混合物となり、べたつきの原因となる。
重合体(II)において、[rrrr]/(1-[mmmm])が0.1以下であると、得られるスパンボンド不織布におけるべたつきが抑制される。このような観点から、[rrrr]/(1-[mmmm])は、好ましくは0.05以下であり、より好ましくは0.04以下である。なお、[rrrr]/(1-[mmmm])の下限は、0.01である。
【0069】
・(c)[rmrm]>2.5モル%
重合体(II)のラセミメソラセミメソ分率[rmrm]が2.5モル%を超える値であると、該重合体(II)のランダム性が増加し、スパンボンド不織布の弾性回復性が更に向上する。[rmrm]は、好ましくは2.6モル%以上であり、より好ましくは2.7モル%以上である。重合体(II)のラセミメソラセミメソ分率[rmrm]の上限は、通常10モル%程度である。
【0070】
・(d)[mm]×[rr]/[mr]≦2.0
[mm]×[rr]/[mr]は、重合体(II)のランダム性の指標を示し、この値が2.0以下であると、弾性不織布は十分な弾性回復性が得られ、且つ、べたつきも抑制される。[mm]×[rr]/[mr]は、0.25に近いほどランダム性が高くなる。上記十分な弾性回復性を得る観点から、[mm]×[rr]/[mr]は、好ましくは0.25を超え1.8以下であり、より好ましくは0.5以上1.5以下である。
【0071】
・(e)重量平均分子量(Mw)=10,000以上200,000以下
プロピレン単独重合体である重合体(II)において重量平均分子量が10,000以上であると、当該重合体(II)の粘度が低すぎず適度のものとなるため、組成物により得られるスパンボンド不織布の製造時の糸切れが抑制される。また、重量平均分子量が200,000以下であると、当該重合体(II)の粘度が高すぎず、紡糸性が向上する。
この重量平均分子量は、好ましくは10,000以上150,000以下である。
重合体(II)の重量平均分子量の測定法については後述する。
【0072】
・(f)分子量分布(Mw/Mn)<4
重合体(II)において、分子量分布(Mw/Mn)が4未満であると、得られるスパンボンド不織布におけるべたつきの発生が抑制される。この分子量分布は、好ましくは1.5以上3以下である。
上記重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、下記の装置及び条件で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量である。また、上記分子量分布(Mw/Mn)は、重量平均分子量(Mw)と同様にして測定した数平均分子量(Mn)及び上記重量平均分子量(Mw)より算出した値である。
【0073】
[GPC測定装置]
カラム :TOSO GMHHR-H(S)HT
検出器 :液体クロマトグラム用RI検出器 WATERS 150C
[測定条件]
溶媒 :1,2,4-トリクロロベンゼン
測定温度 :145℃
流速 :1.0ml/分
試料濃度 :2.2mg/ml
注入量 :160μl
検量線 :Universal Calibration
解析プログラム :HT-GPC(Ver.1.0)
【0074】
重合体(II)は、更に、以下の(g)の要件を満たすことが好ましい。
(g)融点(Tm-D)=0℃以上120℃以下
重合体(II)の融点(Tm-D)は、(g)示差走査型熱量計(DSC)を用いて、窒素雰囲気下-10℃で5分間保持した後10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブの最も高温側に観測されるピークのピークトップとして定義される融点(Tm-D)である。
重合体(II)の融点(Tm-D)が0℃以上であると、組成物により形成されるスパンボンド不織布のべたつきの発生が抑制され、120℃以下であると、十分な弾性回復性が得られる。このような観点から、融点(Tm-D)は、より好ましくは0℃以上100℃以下であり、更に好ましくは30℃以上100℃以下である。
【0075】
なお、上記融点(Tm-D)は、示差走査型熱量計(パーキン・エルマー社製、DSC-7)を用い、試料10mgを窒素雰囲気下-10℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブの最も高温側に観測されるピークのピークトップとして求めることができる。
【0076】
重合体(II)は、ASTM D 1238に準拠した方法で測定されるメルトフローレート(MFR、測定条件:230℃、荷重2160g)が、良好な紡糸性と優れた延伸加工適性を得る点より、通常、1g/10分以上100g/10分以下の範囲にあることが好ましく、5g/10分以上100g/10分以下の範囲にあることがより好ましく、30g/10分以上70g/10分以下の範囲にあることが更に好ましい。
【0077】
重合体(II)は、例えば、国際公開第2003/087172号に記載されているような、所謂メタロセン触媒と呼ばれる均一系の触媒を用いて合成することができる。
【0078】
[添加剤]
組成物は、本実施形態の目的を損なわない範囲で、任意成分として、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、帯電防止剤、スリップ剤、防曇剤、滑剤、染料、顔料、天然油、合成油、ワックス、脂肪酸アミド等の種々公知の添加剤を含んでもよい。
【0079】
(脂肪酸アミド)
組成物には、既述の通り、炭素数15以上22以下の脂肪酸アミドを含有することが好ましい。
組成物が脂肪酸アミドを含有することで、組成物により形成されるスパンボンド不織布の繊維表面に脂肪酸アミドが吸着し、繊維表面が改質されて柔軟性、触感、耐ブロッキング性等がより向上する。その結果、エンボス加工等で使用する装置内の各種回転機器等の部材への不織布繊維の付着がより効果的に抑制されると考えられる。
【0080】
炭素数15以上22以下の脂肪酸アミドとしては、脂肪酸モノアミド化合物、脂肪酸ジアミド化合物、飽和脂肪酸モノアミド化合物、不飽和脂肪酸ジアミド化合物が挙げられる。
なお、本明細書における脂肪酸アミドの炭素数とは、分子中に含まれる総炭素数を意味し、アミドを構成する-CONHにおける炭素も炭素数に含まれる。脂肪酸アミドの炭素数は、より好ましくは18以上22以下である。
【0081】
脂肪酸アミドとしては、具体的には、パルミチン酸アミド(炭素数16)、ステアリン酸アミド(炭素数18)、オレイン酸アミド(炭素数18)、エルカ酸アミド(炭素数22)などが挙げられる。
脂肪酸アミドは、組成物に1種のみ用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
脂肪酸アミドの組成物の全量に対する含有量の好ましい範囲は、既述の通りである。
【0082】
<スパンボンド不織布の製造方法>
本実施形態のスパンボンド不織布は、既述の組成物の1種又は2種以上を用いて常法により製造することができる。
具体的には、本実施形態のスパンボンド不織布は、以下に示す本実施形態のスパンボンド不織布の製造方法により製造されることが好ましい。
本実施形態のスパンボンド不織布の製造方法は、ポリエチレンを180℃以上200℃以下で溶融し、溶融したポリエチレンを180℃以上200℃以下に加温した目開き65μm以下の篩に通す、ろ過工程と、ろ過工程にて篩を通ったポリエチレンと、融点140℃以上のプロピレン単独重合体と、特定重合体と、を混合して組成物を得る混合工程と、混合工程で得られた組成物からスパンボンド法にて不織布を得る不織布形成工程と、を含み、ろ過工程にて篩を通ったポリエチレンにより形成された膜中に含まれる直径0.2mm以下の粒子の数が25個/g以下である、スパンボンド不織布の製造方法である。
以下、各工程について説明する。
【0083】
〔ろ過工程〕
ろ過工程では、ポリエチレンを180℃以上200℃以下で溶融し、溶融したポリエチレンを目開き65μm以下の篩を通す。
ポリエチレンの溶融温度が180℃以上であることで、篩の目詰まりを起こし難く、ろ過工程が安定に行われる。また、ポリエチレンの溶融温度が200℃以下であることで、ポリエチレンの劣化が抑制され、伸長性に優れたスパンボンド不織布が得られる。同様の理由から、ポリエチレンの溶融温度は、185℃以上195℃以下が好ましい。
【0084】
本工程では、目開き65μm以下の篩を用いる。篩としては、より優れた伸張性を有するスパンボンド不織布を得る観点から、62μm以下が好ましく、59μm以下がより好ましい。
また、篩としては、ろ過工程の効率の観点から、目開き30μm以上が好ましく、40μm以上がより好ましい。
上記の温度に加温した目開き65μm以下の篩にて、溶融したポリエチレンをろ過することで、スパンボンド不織布を構成する繊維中の島相の長さが短くなり、島相の平均長さ500μm以下が達成される。
【0085】
本工程に用いる篩は、溶融したポリエチレンと接触する前に加温されていることが好ましい。
具体的には、篩は、100℃以上300℃以下に加温されていることがより好ましく、150℃以上220℃以下に加温されていることがより好ましい。
篩を加温することで、篩の目詰まりを抑制できる傾向にある。
【0086】
本工程に用いる篩としては、目開きが65μm以下のものであれば制限はないが、加温に耐えうるよう、金属製(例えば、ステンレス製等)であることが好ましい。
【0087】
本工程にて篩を通ったポリエチレンについては、以下に示す物性を満たす。
即ち、篩を通ったポリエチレンにより形成された膜中に含まれる直径0.2mm以下の粒子の数が25個/g以下であり、20個/g以下であることが好ましく、15個/g以下であることが更に好ましい。
以下、ポリエチレンにより形成された膜中に含まれる「直径0.2mm以下の粒子」を「小粒子」と称する。
小粒子が25個/g以下であることで、得られたスパンボンド不織布を構成する繊維中の島相の長さが短くなり、伸長性の向上が図れる。
【0088】
また、篩を通ったポリエチレンにより形成された膜中に含まれる直径2mmを超える粒子の数が10個/g以下であることが好ましく、5個/g以下であることがより好ましく、1個/g以下であることが更に好ましい。
以下、ポリエチレンにより形成された膜中に含まれる「直径2mmを超える粒子」を「大粒子」と称する。
大粒子が10個/g以下であることで、紡糸の際の糸切れが抑制され易く、紡糸性に優れ、生産性の向上が図れる。
【0089】
上記のポリエチレンにより形成された膜中に含まれる粒子の数は、以下のようにして求める。
即ち、本工程にて篩を通ったポリエチレンを、押出機にて280℃で30分間溶融混練し、280℃のTダイから押出成形して、厚さ55μmのフィルムを得る。
得られたフィルムを100cm×25cmに切断し、その重さを量り、これを測定試料とする。測定試料は3片採取する。
得られた測定試料3片のそれぞれについて、表面を目視にて観察し、発見した粒子の直径を光学顕微鏡にて観察及び確認し、測定試料中に含まれる粒子の直径を測り、大粒子又は小粒子に分類される粒子の個数を数える。測定試料3片から得られた大粒子又は小粒子の合計の個数を、測定試料3片の合計の重さで除して、測定試料1gあたりの大粒子又は小粒子の個数を求める。
【0090】
〔混合工程〕
混合工程では、ろ過工程にて篩を通ったポリエチレンと、融点140℃以上のプロピレン単独重合体と、特定重合体と、を混合して組成物を得る。
また、本工程で用いる、ポリエチレン以外の成分、即ち、融点140℃以上のプロピレン単独重合体、特定重合体、及び添加剤(炭素数15以上22以下の脂肪酸アミド等の任意成分)は、それぞれ、溶融した状態のものであってもよいし、固体であってもよい。
本工程は、不織布形成工程にて用いる押出機中で行ってもよい。
【0091】
本工程に用いるポリエチレンの含有量は、組成物の全量に対して1.0質量%以上15.0質量%以下であることが好ましい。
また、本工程に用いる特定重合体の含有量は、組成物の全量に対して5質量%以上30質量%以下であることが好ましい。
更に、本工程で用いる融点140℃以上のプロピレン単独重合体の含有量は、組成物の全量に対して55.0質量%以上90.0質量%以下であることが好ましい。
【0092】
更に、本工程は、炭素数15以上22以下の脂肪酸アミドを更に混合して組成物を得る工程であることが好ましい。
つまり、本工程は、ろ過工程にて篩を通ったポリエチレンと、融点140℃以上のプロピレン単独重合体と、特定重合体と、炭素数15以上22以下の脂肪酸アミドと、を混合して組成物を得る工程であることが好ましい。
そして、本工程で用いる炭素数15以上22以下の脂肪酸アミドの含有量は、組成物の全量に対して0.1質量%以上5.0質量%以下であることが好ましい。
【0093】
〔不織布形成工程〕
不織布形成工程では、混合工程で得られた組成物からスパンボンド法にて不織布を得る。
本工程では、例えば、以下の方法で、不織布を得る。
即ち、混合工程で得られた組成物を、押出機を用いて溶融し、溶融した組成物を、複数の紡糸口金を有するスパンボンド不織布成形機を用いて溶融紡糸し、紡糸により形成された長繊維を必要に応じて冷却した後、スパンボンド不織布成形機の捕集面上に堆積させ、エンボスロールで加熱加圧処理する方法である。
【0094】
組成物の溶融温度は、紡糸に使用される組成物の軟化温度或いは融解温度以上で且つ熱分解温度未満であれば特に限定はされず、用いる組成物の物性等により適宜決定すればよい。
紡糸口金の温度は、用いる組成物に依存するが、本工程で用いる組成物がプロピレン含有重合体の含有量が多い組成物であるため、180℃以上240℃以下であることが好ましく、190℃以上230℃以下であることがより好ましく、200℃以上225℃以下であることが更に好ましい。
【0095】
紡糸した長繊維を冷却する場合、長繊維が冷却されながら延伸されるよう、長繊維に対し冷却風をあてる手法を用いることが好ましい。
紡糸した長繊維を冷却する冷却風の温度は、組成物が固化する温度であれば特に限定はされない。冷却風の温度は、一般的には、5℃以上50℃以下が好ましく、10℃以上40℃以下がより好ましく、15℃以上30℃以下の範囲であることが更に好ましい。
紡糸した長繊維を冷却風により延伸する場合、冷却風の風速は、通常、100m/分以上10,000m/分以下の範囲、好ましくは500m/分以上10,000m/分以下の範囲である。
【0096】
以下、図面を参照して、不織布形成工程について詳細に説明する。
図2は、不織布の原料である組成物を用いて、溶融紡糸された長繊維が密閉空間中で冷却されながら延伸されることで製造される密閉式スパンボンド法の概略図である。
【0097】
図2に示すスパンボンド法は、密閉空間(密閉された冷却室13)を有する密閉式スパンボンド不織布製造装置により行われる。具体的には、図2に示す密閉式スパンボンド法では、まず、紡糸口金11から吐出された組成物は、密閉式スパンボンド不織布製造装置の喉部12を通り、密閉された冷却室13にて冷却され、長繊維18が形成される。形成された長繊維18は、捕集装置20に到達し、堆積することで、スパンボンド不織布21が形成される。
なお、冷却室13の内部には、ルーパ14を備えたブロワー15からフィルター17を経て冷却風が供給される。冷却風の冷却室13への供給量は、ブロワー15、ブロワー15へ送る冷却風を調整する切換弁19、及びダンパー16の開閉により調整される。
【0098】
本工程について、密閉式スパンボンド法を例にとり説明したが、本工程は密閉式スパンボンド法に限定されず、例えば、開放空間中で冷却する開放式スパンボンド法であってもよい。
【0099】
本工程で得られるスパンボンド不織布の繊維は、一部を熱融着させてもよい。また、本工程で得られるスパンボンド不織布の繊維は、熱融着する前に、ニップロールを用いて、押し固めておいてもよい。
【0100】
以上のように、ろ過工程、混合工程、及び不織布形成工程を経ることで、本実施形態のスパンボンド不織布が得られる。
【0101】
〔不織布積層体〕
本実施形態のスパンボンド不織布は、単独で用いてもよいし、目的に応じて、本実施形態のスパンボンド不織布と他の層とを積層した不織布積層体としてもよい。
本実施形態のスパンボンド不織布を用いて不織布積層体とする場合、本実施形態のスパンボンド不織布以外の他の層は、1層であってもよいし、又は2層以上有していてもよい。
【0102】
本実施形態のスパンボンド不織布以外の他の層として、具体的には、編布、織布、本実施形態のスパンボンド不織布以外の不織布、フィルム等が挙げられる。
本実施形態のスパンボンド不織布に他の層を更に積層する(貼り合せる)方法は、特に制限されず、熱エンボス加工、超音波融着等の熱融着法、ニードルパンチ、ウォータージェット等の機械的交絡法、ホットメルト接着剤、ウレタン系接着剤等の接着剤を用いる方法、押出しラミネート等の種々の方法を採り得る。
【0103】
本実施形態のスパンボンド不織布と積層して不織布積層体を形成し得る他の不織布としては、本実施形態のスパンボンド不織布以外のスパンボンド不織布、メルトブローン不織布、湿式不織布、乾式不織布、乾式パルプ不織布、フラッシュ紡糸不織布、開繊不織布等の、種々公知の不織布が挙げられる。
これらの不織布は伸縮性不織布であっても、非伸縮性不織布であってもよい。
ここで非伸縮性不織布とは、MD(即ち、不織布の流れ方向、縦方向)又はCD(即ち、不織布の流れ方向(又はMD方向)に直角の方向、横方向)に伸張後、戻り応力を発生させないものをいう。
【0104】
本実施形態のスパンボンド不織布と積層して不織布積層体を形成し得るフィルムとしては、不織布積層体が通気性を必要とする場合には、通気性フィルム、透湿性フィルム等が好ましい。
通気性フィルムとしては、透湿性を有するポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー等の熱可塑性エラストマーからなるフィルム、無機微粒子又は有機微粒子を含む熱可塑性樹脂からなるフィルムを延伸して多孔化してなる多孔フィルム等の、種々の公知の通気性フィルムが挙げられる。
多孔フィルムに用いる熱可塑性樹脂としては、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(所謂、LLDPE)、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリプロピレンランダム共重合体、これらの組み合わせ等のポリオレフィンが好ましい。
また、不織布積層体が通気性を必要としない場合には、ポリエチレン、ポリプロピレン等から選ばれる1種以上の熱可塑性樹脂からなるフィルムを用いることができる。
【0105】
不織布積層体の一部を熱融着する場合の熱融着方法としては、種々公知の方法、例えば、超音波等の手段を用いる方法、エンボスロールを用いる熱エンボス加工、又はホットエアースルーが挙げられる。
中でも、熱エンボス加工が、不織布積層体を延伸する際に、長繊維が効率よく延伸されるため好ましい。
【0106】
熱エンボス加工により不織布積層体の一部を熱融着する場合は、通常、エンボス面積率が5%以上30%以下、好ましくは5%以上20%以下、非エンボス単位面積が0.5mm以上、好ましくは4mm以上40mm以下の範囲である。
非エンボス単位面積とは、四方をエンボス部で囲まれた最小単位の非エンボス部において、エンボスに内接する四角形の最大面積である。また、エンボス部の刻印形状は、円、楕円、長円、正方、菱、長方、四角やそれら形状を基本とする連続した形が例示される。
【0107】
得られた不織布積層体を延伸することによって、伸縮性を有する伸縮性不織布積層体とすることができる。
延伸加工の方法は特に制限されず、従来公知の方法を適用できる。
延伸加工の方法は、部分的に延伸する方法であってもよく、全体的に延伸する方法であってもよい。また、一軸延伸する方法であっても、二軸延伸する方法であってもよい。
機械の流れ方向(所謂MD方向)に延伸する方法としては、たとえば、2つ以上のニップロールに部分的に融着した混合繊維を通過させる方法が挙げられる。このとき、ニップロールの回転速度を、機械の流れ方向の順に速くすることによって部分的に融着した不織布積層体を延伸できる。また、ギア延伸装置を用いてギア延伸加工することもできる。
【0108】
延伸倍率は、好ましくは50%以上、より好ましくは100%以上、更に好ましくは200%以上であり、且つ、好ましくは1000%以下、より好ましくは400%以下である。
【0109】
一軸延伸の場合には機械の流れ方向(所謂MD方向)の延伸倍率、又は、これに垂直な方向(所謂CD方向)のいずれかが上記延伸倍率を満たすことが好ましい。二軸延伸の場合には機械の流れ方向(所謂MD方向)とこれに垂直な方向(所謂CD方向)のうち、少なくとも一方が上記延伸倍率を満たすことが好ましい。
【0110】
このような延伸倍率で延伸加工することにより、スパンボンド不織布における弾性を有する長繊維は延伸され、延伸性を有しない長繊維は、塑性変形して、上記延伸倍率に応じて伸張される。
また、積層される他の層においても、同様に弾性を有する層は弾性変形し、弾性を有しない層は塑性変形する。
不織布積層体を形成する際に、弾性を有する層と弾性を有しない層とを積層して、延伸した後、応力が解放されると、弾性を有する層(層を構成する長繊維)は弾性回復し、弾性を有しない長繊維は、弾性回復せずに褶曲し、不織布積層体に嵩高感を発現させることができる。塑性変形した長繊維は細くなるので柔軟性及び触感が良くなるとともに、不織布積層体に伸び止り機能を付与することができる。
【0111】
<衛生材料>
本実施形態の衛生材料は、既述の本実施形態のスパンボンド不織布を含む。
本発明のスパンボンド不織布は、伸長性に優れるものである。そのため、本実施形態のスパンボンド不織布は、衛生材料に好適に用いられる。
【0112】
衛生材料としては、紙おむつ、生理用ナプキン等の吸収性物品、包帯、医療用ガーゼ、タオル等の医療用衛生材用、衛生マスク等が挙げられる。
本実施形態のスパンボンド不織布が含まれ得る衛生材料はこれらに制限されず、伸長性、柔軟性を求められる各種の衛生材料用途のいずれにも好適に使用し得る。
衛生材料は、本実施形態のスパンボンド不織布を、本実施形態のスパンボンド不織布とその他の層とを含む不織布積層体として含んでいてもよい。
【実施例
【0113】
以下、実施例に基づいて本発明の実施形態について更に具体的に説明するが、本発明は、本発明の一実施形態であるこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例及び比較例における物性値等は、以下の方法により測定した。
【0114】
(1)島相の平均長さ〔μm〕
スパンボンド不織布から繊維を取り出し、パラフィンに包埋し、測定試料を作製した。そして、測定試料を、繊維の長軸方向と刃が平行するようにミクロトームに設置し、繊維の長軸方向に沿ってスライスした。その後、スライスして得られた繊維にカーボン補強を施した後、その断面について、スライスして得られた繊維の断面について、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)を用いて観察し、任意の100個の島相の長さを計測し、平均長さを求めた。
ここで、透過型電子顕微鏡としては、日立ハイテク(株)製の透過型電子顕微鏡型式:H-7650を用い、観察倍率は8000倍であった。
【0115】
(2)目付〔g/m
スパンボンド不織布から、流れ方向(MD)が300mm、横方向(CD)が250mmの試験片を10枚採取した。なお、採取箇所は任意の10箇所とした。次いで、採取した各試験片の質量(g)を、上皿電子天秤(研精工業社製)を用いてそれぞれ測定した。各試験片の質量の平均値を求めた。求めた平均値から1m当たりの質量(g)に換算し、小数点第1位を四捨五入して、スパンボンド不織布の目付〔g/m〕とした。
【0116】
(3)最大伸度〔%〕及び最大強度〔N/50mm〕
スパンボンド不織布から、JIS L 1906の6.12.1[A法]に準拠して、以下のようにして最大伸度及び最大強度を測定した。
JIS Z 8703(試験場所の標準状態)に規定する温度20±2℃、湿度65±2%の恒温室内で、流れ方向(所謂MD方向)に25cm、横方向(所謂CD方向)に5cmの試験片を5枚採取した。得られた試験片を、チャック間100mm、引張速度300mm/分の条件で、引張り試験機(インストロンジャパンカンパニイリミテッド製、インストロン5564型)を用いて引張試験を行い、5枚の試験片について引張荷重を測定し、それらの最大値の平均値を最大強度〔N/50mm〕とした。
また、最大強度における伸度を最大伸度〔%〕とした。
【0117】
(4)ヒートシール性評価
[ヒートシール方法]
スパンボンド不織布から、流れ方向(所謂MD方向)が100mm、横方向(所謂CD方向)が100mmの試験片を10点採取した。次いで、この試験片をMD方向が同じ向きになるように2枚重ね合せ、テスター産業(株)製のヒートシール試験機(製品名:ヒートシールテスター)を使用し、下記の条件でヒートシールを行った。
シールバー幅:10.0mm
シール圧力 :2.0kg/cm
シール時間 :1.0秒
シール温度 :上部バー及び下部バーを同一温度に設定(145℃又は155℃)
シール方向 :MD方向と垂直
【0118】
[ヒートシール強度の確認]
定速度引張試験機((株)東洋精機社製、製品名:ストログラフ)を用いて、上記条件でヒートシールを行なった試験片の引張剥離試験を、下記の条件で各々5枚ずつ実施して、剥離の有無を確認し、剥離がなかった場合を「ヒートシール性有り」と評価した。
試験片形状 :幅20mm、長さ50mm
引張速度 :30mm/分
測定時雰囲気温度:23℃
【0119】
(5)エンボス残存率〔%〕
スパンボンド不織布から、流れ方向(所謂MD方向)が250mm、横方向(所謂CD方向)が200mmの試験片を1枚採取した。得られた試験片を、図3に示す如きギア延伸装置(即ちギア加工機)のロール回転方向と試験片のCD方向が一致するように挿入し、MD方向(即ち不織布の流れ方向)にギア延伸されたスパンボンド不織布を得た。ギア加工機に搭載されるギアロールは各々直径が200mm、ギアピッチが2.5mmであり、両ロールの噛み合い深さを5.5mmとなるように調整した。
上記のようにギア延伸されたスパンボンド不織布について、SEMによる形態観察を行い、ギア延伸された後のエンボスの残存率を評価した。エンボス残存率が高いほど、触感が良好であるとした。エンボス残存率は下記の式を用いて算出した。
エンボス残存率=(破壊されていないエンボス数/観察されたエンボス数)×100
なお、ギア延伸されたスパンボンド不織布のSEMによるエンボス部の観察により、エンボス部での孔あき、繊維の脱離、及びエンボス部とその境界における繊維切れのいずれもが確認されなかったエンボス部を「破壊されていないエンボス」とした。
ギア加工機を用いた延伸加工により形成されたエンボスの残存率が良好であり、延伸加工時にエンボス部とその境界におけるスパンボンド不織布の繊維切れ、及び繊維切れに起因する不織布の破れが発生しないことにより、スパンボンド不織布の延伸加工適性が良好であることを確認できる。
【0120】
(6)柔軟性評価
スパンボンド不織布に関し、直接手で触れた際の触感(手触り)を官能評価し、以下の基準に基づいて評価を行った。官能評価はモニター10名で行ない、最も回答の多かった評価結果を採用した。
なお、最も回答が多かった評価結果が複数あった場合、より優れる結果の方を採用した。
-評価基準-
A:手触りが非常に良好で柔軟性に優れていた
B:手触りが良好で、下記C評価に比べれば柔軟性に優れていた。
C:手触りに硬さがあり柔軟性が劣っていた。
【0121】
[実施例1]
<スパンボンド不織布の製造>
-ろ過工程-
まず、MFR(ASTM D 1238に準拠して、温度190℃、荷重2.16kgで測定)5g/10分、密度0.95g/cm、融点134℃の高密度ポリエチレンを、190℃に加熱し、溶融した。
そして、溶融状態のまま、190℃に加温した金属製の篩(目開き58μm)を通し、ろ過を行った。
【0122】
上記ろ過工程にて篩を通ったポリエチレンにより形成された膜中に含まれる小粒子及び大粒子の数について、既述の方法で、求めた。
結果を表1に示す。
【0123】
-混合工程-
上記ろ過工程にて、篩を通ったポリエチレン7質量%と、MFR(ASTM D 1238に準拠して、温度230℃、荷重2.16kgで測定)60g/10分、密度0.91g/cm、融点160℃のプロピレン単独重合体72.7質量%と、MFR(ASTM D 1238に準拠して、温度230℃、荷重2.16kgで測定)60g/10分、密度0.91g/cm、融点142℃のプロピレンランダム共重合体(プロピレンとエチレンとの共重合体、重合モル比97:3、重合体(I))20質量%と、エルカ酸アミド0.3質量%と、を混合して、組成物を得た。
【0124】
-不織布形成工程-
上記混合工程で得られた組成物を、75mmφの押出機を用い溶融し、孔数2557ホールの紡糸口金を有するスパンボンド不織布製造装置(図2に示す密閉式スパンボンド法に用いる装置、捕集面上の機械の流れ方向に垂直な方向の長さ:800mm)を用いて、組成物の溶融温度とダイ温度が共に220℃、冷却風温度20℃、延伸エア風速5233m/分の条件で、密閉式スパンボンド法により溶融紡糸を行った。
紡糸された長繊維を捕集面上に堆積させ、エンボスロールで加熱加圧処理(エンボス面積率(熱圧着率)18%、エンボス温度116℃)して総目付量が18g/mであるスパンボンド不織布を作製した。
【0125】
得られた実施例1のスパンボンド不織布を既述の評価方法にて評価した。
結果を下記表1に示す。
【0126】
[実施例2]
<スパンボンド不織布の製造>
実施例1のスパンボンド不織布の製造におけるろ過工程にて、目開き58μmの金属製篩の代わりに目開き64μmの金属製の篩を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエチレンのろ過を行い、その後、ろ過後のポリエチレンを用いて組成物を得て、続いて、スパンボンド不織布を作製した。
【0127】
得られた実施例2のスパンボンド不織布を既述の評価方法にて評価した。
結果を下記表1に示す。
【0128】
[実施例3]
<低結晶性ポリプロピレンの合成>
攪拌機付き、内容積0.2mのステンレス製反応器に、n-ヘプタンを20L/hで、トリイソブチルアルミニウムを15mmol/hで、更に、ジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレートと(1,2’-ジメチルシリレン)(2,1’-ジメチルシリレン)-ビス(3-トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロライドとトリイソブチルアルミニウムとプロピレンとを事前に接触させて得られた触媒成分をジルコニウムあたり6μmol/hで連続供給した。
重合温度70℃で気相部水素濃度を8mol%、反応器内の全圧を0.7MPa・Gに保つようにして、プロピレンと水素を連続供給した。
得られた重合溶液に、SUMILIZER GP(住友化学社製)を1000ppmになるように添加し、溶媒を除去することにより、プロピレン重合体を得た。
得られたプロピレン重合体の重量平均分子量(Mw)は1.2×10、Mw/Mn=2であった。また、NMR測定から求めた[mmmm]が46モル%、[rrrr]/(1-[mmmm])が0.038、[rmrm]が2.7モル%、[mm]×[rr]/[mr]が1.5であった。
上記のように得られた低結晶性ポリプロピレン(重合体(II))を、以下、「LMPP1」と記載する。
【0129】
<スパンボンド不織布の製造>
実施例1のスパンボンド不織布の製造における混合工程にて、MFR(ASTM D 1238に準拠して、温度230℃、荷重2.16kgで測定)60g/10分、密度0.91g/cm、融点142℃のプロピレンランダム共重合体(プロピレンとエチレンとの共重合体、重合モル比97:3、重合体(I))20質量%の代わりに、上記で合成したLMPP1:20質量%を用いた以外は、実施例1と同様にして、組成物を得て、続いて、スパンボンド不織布を作製した。
【0130】
得られた実施例3のスパンボンド不織布を既述の評価方法にて評価した。
結果を下記表1に示す。
【0131】
[実施例4]
<スパンボンド不織布の製造>
実施例1のスパンボンド不織布の製造における混合工程にて、MFR(ASTM D 1238に準拠して、温度230℃、荷重2.16kgで測定)60g/10分、密度0.91g/cm、融点160℃のプロピレン単独重合体の量を74.7質量%に変え、且つ、ろ過後のポリエチレンの量を5質量%に変えた以外は、実施例1と同様にして、組成物を得て、続いて、スパンボンド不織布を作製した。
【0132】
得られた実施例4のスパンボンド不織布を既述の評価方法にて評価した。
結果を下記表1に示す。
【0133】
[比較例1]
<スパンボンド不織布の製造>
実施例1のスパンボンド不織布の製造におけるろ過工程にて、目開き58μmの金属製篩の代わりに目開き69μmの金属製の篩を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエチレンのろ過を行い、その後、ろ過後のポリエチレンを用いて組成物を得て、続いて、スパンボンド不織布を作製した。
【0134】
得られた比較例1のスパンボンド不織布を既述の評価方法にて評価した。
結果を下記表1に示す。
【0135】
[比較例2]
<スパンボンド不織布の製造>
実施例3のスパンボンド不織布の製造におけるろ過工程にて、目開き58μmの金属製篩の代わりに目開き69μmの金属製の篩を用いた以外は、実施例3と同様にして、ポリエチレンのろ過を行い、その後、ろ過後のポリエチレンを用いて組成物を得て、続いて、スパンボンド不織布を作製した。
【0136】
得られた比較例2のスパンボンド不織布を既述の評価方法にて評価した。
結果を下記表1に示す。
【0137】
[比較例3]
<スパンボンド不織布の製造>
実施例4のスパンボンド不織布の製造におけるろ過工程にて、目開き58μmの金属製篩の代わりに目開き69μmの金属製の篩を用いた以外は、実施例4と同様にして、ポリエチレンのろ過を行い、その後、ろ過後のポリエチレンを用いて組成物を得て、続いて、スパンボンド不織布を作製した。
【0138】
得られた比較例3のスパンボンド不織布を既述の評価方法にて評価した。
結果を下記表1に示す。
【0139】
下記表1に、ろ過工程における条件、ろ過工程にて篩を通ったポリエチレンにより形成された膜に含まれる小粒子及び大粒子の数、混合工程で用いる各成分の添加量、不織布形成工程における条件、並びに、測定及び評価結果を示す。
なお、表1中、「-」は、該当する成分を含まないことを意味する。
【0140】
【表1】
【0141】
表1の結果より、実施例1~実施例4で得た本実施形態のスパンボンド不織布は、伸長性が優れることが分かる。
【0142】
また、上記表1に示すように、実施例1~実施例4のスパンボンド不織布は、いずれも、伸長性に優れることに加え、ヒートシール性が良好であり、エンボス残存率が良好であることから延伸加工適性に優れることが分かる。更に、実施例1~実施例4のスパンボンド不織布は、いずれも柔軟性に優れていることも分かる。
これらの評価結果より、本実施形態のスパンボンド不織布は、伸長性、柔軟性、及び加工適性を必要とする衛生材料の用途に好適であることが分かる。
【0143】
2018年1月24日に出願された日本国特許出願2018-009762の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
図1A
図1B
図2
図3