IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ マシネンファブリック アルフィング ケスラー ゲーエムベーハーの特許一覧

特許7013492クランクシャフトの渡り部を衝撃処理するための方法及び装置
<>
  • 特許-クランクシャフトの渡り部を衝撃処理するための方法及び装置 図1
  • 特許-クランクシャフトの渡り部を衝撃処理するための方法及び装置 図2
  • 特許-クランクシャフトの渡り部を衝撃処理するための方法及び装置 図3
  • 特許-クランクシャフトの渡り部を衝撃処理するための方法及び装置 図4
  • 特許-クランクシャフトの渡り部を衝撃処理するための方法及び装置 図5
  • 特許-クランクシャフトの渡り部を衝撃処理するための方法及び装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-21
(45)【発行日】2022-01-31
(54)【発明の名称】クランクシャフトの渡り部を衝撃処理するための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   B23P 9/04 20060101AFI20220124BHJP
   F16C 3/08 20060101ALI20220124BHJP
   C21D 7/04 20060101ALI20220124BHJP
【FI】
B23P9/04
F16C3/08
C21D7/04 Z
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2019569838
(86)(22)【出願日】2018-05-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-10-29
(86)【国際出願番号】 EP2018063689
(87)【国際公開番号】W WO2018228790
(87)【国際公開日】2018-12-20
【審査請求日】2020-02-19
(31)【優先権主張番号】102017113065.9
(32)【優先日】2017-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591025923
【氏名又は名称】マシネンファブリック アルフィング ケスラー ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】MASCHINENFABRIK ALFING KESSLER GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】特許業務法人南青山国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【弁理士】
【氏名又は名称】折居 章
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100168745
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 彩子
(74)【代理人】
【識別番号】100176131
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197398
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100197619
【弁理士】
【氏名又は名称】白鹿 智久
(72)【発明者】
【氏名】レーブ、アルフォンス
(72)【発明者】
【氏名】シュミット、ヨヘン
(72)【発明者】
【氏名】グリム、コンラッド
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102005032185(DE,A1)
【文献】米国特許第04171654(US,A)
【文献】国際公開第2009/104798(WO,A1)
【文献】特開2010-077518(JP,A)
【文献】特表2007-524761(JP,A)
【文献】特開昭53-062295(JP,A)
【文献】欧州特許第00788419(EP,B1)
【文献】米国特許第05806184(US,A)
【文献】特開平11-188587(JP,A)
【文献】特表2001-526317(JP,A)
【文献】特開2004-344978(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01612290(EP,A1)
【文献】特開2005-321086(JP,A)
【文献】特開2006-315168(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102006058710(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第102007028888(DE,A1)
【文献】特表2009-538234(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02218542(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21D 7/00-8/10
B23P 9/04
B23P 23/00-25/00
B24B 5/00-7/30
F16C 3/00-9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランクシャフト(4、4')の渡り部(8)、特に前記クランクシャフト(4、4')の連接棒軸受ジャーナル(5、5')とクランクウェブ(7、7')との間の渡り部(8)及び/又は主軸受ジャーナル(6、6')と前記クランクウェブ(7、7')との間の渡り部(8)に衝撃を与えて硬化させるための方法であって、
駆動装置(3、3')により、前記クランクシャフト(4、4')を最初に回転方向に沿って所望の領域に衝撃力を導入するための衝撃位置に回転させ、
前記クランクシャフト(4、4')を前記衝撃位置で拘束するために、拘束装置(12)が設けられ、その後、少なくとも1つの衝撃ツール(16、16')により、少なくとも1つの渡り部(8)に衝撃力が導入されることを特徴とする
衝撃硬化方法。
【請求項2】
請求項1に記載の衝撃硬化方法であって、
前記駆動装置(3、3')の動作について、前記クランクシャフト(4、4')を前記衝撃位置に回転させるために、閉ループ位置制御を用いて、前記クランクシャフト(4、4')が段階的に又は経時的に回転することを特徴とする
衝撃硬化方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の衝撃硬化方法であって、
前記クランクシャフト(4、4')が前記衝撃位置で停止したときのみ前記拘束装置(12)が前記クランクシャフト(4、4')を拘束するように、前記駆動装置(3、3')のコントローラ及び前記拘束装置(12)のコントローラを相互に同期させることを特徴とする
衝撃硬化方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1つに記載の衝撃硬化方法であって、
前記クランクシャフト(4、4')が前記衝撃位置で拘束されたときのみ前記少なくとも1つの衝撃ツール(16、16')が前記衝撃力を前記クランクシャフト(4、4')の前記少なくとも1つの渡り部(8)に導入するように、前記拘束装置(12)のコントローラ及び前記少なくとも1つの衝撃ツール(16、16')のコントローラを同期させることを特徴とする
衝撃硬化方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1つに記載の衝撃硬化方法であって、
前記駆動装置(3、3')がダイレクトドライブ、または、クラッチなしのダイレクトドライブとして設計されることを特徴とする
衝撃硬化方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1つに記載の衝撃硬化方法であって、
前記拘束装置(12)及び前記駆動装置(3、3')は、相互に別々に配置されることを特徴とする
衝撃硬化方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1つに記載の衝撃硬化方法であって、
前記拘束装置(12)が、回転可能な締結装置(9、9')、または、前記締結装置(9、9')の締結フランジ(10、10')を拘束することにより、前記クランクシャフト(4、4')を間接的に拘束して、
前記クランクシャフト(4、4')は、前記締結フランジ又は前記締結装置に固定されることを特徴とする
衝撃硬化方法。
【請求項8】
請求項7に記載の衝撃硬化方法であって、
前記拘束装置(12)が、外周の領域において、前記締結装置(9、9')又は前記締結フランジ(10、10')に係合することを特徴とする
衝撃硬化方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1つに記載の衝撃硬化方法であって、
前記クランクシャフト(4、4')が、前記クランクシャフト(4、4')の一回転方向に対して逆回転する、かつ/または、前記クランクシャフト(4、4')の一回転方向において回転することを防止するように、前記拘束装置(12)が設計されることを特徴とする
衝撃硬化方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1つに記載の衝撃硬化方法であって、
前記衝撃ツール(16、16')の衝撃ヘッド(21)の衝撃痕(28)が、前記連接棒軸受ジャーナル(5、5')及び/又は前記主軸受ジャーナル(6、6')の周囲を環状に取り囲むように延びるそれぞれの前記渡り部(8)に沿って形成される方法で、重なり合うように衝撃硬化を行うことを特徴とする
衝撃硬化方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1つに記載の衝撃硬化方法であって、
前記少なくとも1つの衝撃ツール(16、16')が、周期的に、0.1Hz~50Hzのタイミング、0.5Hz~5Hzのタイミング、又は、0.5Hz~3Hzのタイミングで、衝撃運動を行うか又は前記衝撃力を導入することを特徴とする
衝撃硬化方法。
【請求項12】
クランクシャフト(4、4')の渡り部(8)、特に前記クランクシャフト(4、4')の連接棒軸受ジャーナル(5、5')とクランクウェブ(7、7')との間の渡り部(8)及び/又は主軸受ジャーナル(6、6')と前記クランクウェブ(7、7')との間の渡り部(8)に衝撃を与えて硬化させるための装置であって、
前記クランクシャフト(4、4')を所望の領域に衝撃力を導入するための衝撃位置に回転させるための駆動装置(3、3')を備え、
前記クランクシャフト(4、4')を前記衝撃位置で拘束するための、拘束装置(12)が設けられ、
さらに、少なくとも1つの渡り部(8)に前記衝撃位置で衝撃力を導入するための、少なくとも1つの衝撃ツール(16、16')が設けられることを特徴とする
衝撃硬化装置。
【請求項13】
請求項12に記載の衝撃硬化装置であって、
前記駆動装置(3、3')及び前記拘束装置(12)が相互に別々に構成及び配置されることを特徴とする
衝撃硬化装置。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の衝撃硬化装置であって、
前記クランクシャフト(4、4')を固定するための、回転可能な締結装置(9、9')が設けられ、
前記拘束装置(12)は、前記クランクシャフト(4、4')用の前記締結装置(9、9')を拘束するように配置及び設計されることを特徴とする
衝撃硬化装置。
【請求項15】
請求項14に記載の衝撃硬化装置であって、
前記締結装置(9、9')は、前記拘束装置(12)によって拘束可能な締結フランジ(10、10')を有し、
前記拘束装置(12)は、前記締結フランジの外周領域に係合することを特徴とする
衝撃硬化装置。
【請求項16】
請求項14又は15に記載の衝撃硬化装置であって、
前記締結装置(9、9')を回転させるように、または、前記締結装置(9、9')の入力シャフト(13、13')を軸として前記締結装置を回転させるように、前記駆動装置(3、3')が配置及び設計されることを特徴とする
衝撃硬化装置。
【請求項17】
請求項12~16のいずれか1つに記載の衝撃硬化装置であって、
前記駆動装置(3、3')の回転運動、及び/又は、前記拘束装置(12)のコントローラ、及び/又は、前記少なくとも1つの衝撃ツール(16、16')のコントローラを得る及び/又は同期させるために、開ループ及び/又は閉ループ制御装置(29)またはマイクロプロセッサを備えた開ループ及び/又は閉ループ制御装置(29)が設けられることを特徴とする
衝撃硬化装置。
【請求項18】
請求項1~11のいずれか1つに記載の衝撃硬化方法を実行するためのプログラムコード手段を備えたコンピュータプログラムであって、
開ループ及び/又は閉ループ制御装置(29)、特にマイクロプロセッサ上で実行されることを特徴とする
コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルに記載の、クランクシャフトの渡り部、特に連接棒軸受ジャーナルとクランクウェブとの間の渡り部及び/又は主軸受ジャーナルとクランクシャフトのクランクウェブとの間の渡り部に衝撃を与えて硬化させる(以下、衝撃硬化とする)ための方法に関する。
【0002】
本発明はまた、請求項12に記載の、クランクシャフトの渡り部を衝撃硬化するための装置に関する。
【0003】
本発明はまた、プログラムコード手段を有するコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0004】
内燃機関の開発が継続的に進められ、その性能が向上し、当該内燃機関には厳しい排出要件が課せられるようになったため、現代のエンジンには、これまで以上に大きな負荷がかけられている。このため、自動車産業においては、特に、高負荷を受け、かつ、内燃機関の機能にとって重要なクランクシャフトの強度に関して高い要求が課されている。ここで、構造の観点から要求されることが多いのは、クランクシャフトの軽量化と必要スペースの縮小である。これは、クランクシャフトの設計においては、断面積の増加、すなわち、クランクシャフトの断面係数ではなく、可能な限り、局所的な内部圧縮応力状態によって負荷容量を増加させるべきであるということを意味する。このため、現代のクランクシャフトは、さらなる高レベルのエンジン出力にさらされるので、様々な機械加工及び熱処理方法を使用して製造される。
【0005】
このような方法の例として、誘導及び表面硬化、レーザ硬化、又は窒化による表面硬化法等の熱処理、並びにディープローリング、ショットピーニング、又は衝撃硬化等のひずみ硬化法が挙げられる。これらの方法は一般的、かつ、よく確立された方法であることがほとんどであり、様々な目的に適している。
【0006】
このような方法の例に関して、以下の文献を参照する:EP 1 479 480 A1、EP 0 788 419 B1、 EP 1 612 290 A1、DE 10 2007 028 888 A1、及び EP 1 034 314 B1。
【0007】
特に、衝撃硬化は、クランクシャフトの疲労強度、特に、曲げ疲労強度及びねじり疲労強度を高めるために有利な方法である。ここでは、断面の渡り及び断面の移行部の負荷領域において、冷間加工、好ましくは、特別な衝撃ツールによる打撃によってクランクシャフトに衝撃力を導入することにより、疲労強度を高める。このような処理の例として、DE 34 38 742 C2及びEP 1 716 260 B1を参照する。
【0008】
局所的な打撃中の剪断応力の好ましくない導入を防ぐために、DE 34 38 742 C2では、圧力パルス動作時、パルス印加体とツール表面との間に、パルス方向に対して横方向に相対的な動きが生じないようにすることが提案されている。この目的のため、衝撃ツールによる内部圧縮応力の導入中の送り運動は、段階的に実行されるであろう。
【0009】
この方法をさらに発展させたものとして、EP 1 716 260 B1には、機械加工処理中にクランクシャフトを連続的に回転させ、機械加工されるクランクシャフトセグメントに対する衝撃ツールの衝撃による内部圧縮応力の導入中、当該衝撃ツールがクランクシャフトに作用している間は、クランクシャフトの回転運動を停止させることが提案されている。ここで、衝撃圧力は、クランクシャフトの回転運動が当該衝撃運動によって強制的に停止するように選択される。
【0010】
ただし、この目的で、駆動装置が「強制停止」によって損傷するのを防ぐために、駆動装置内にトランスミッション、クラッチ、及び/又はスプリング・システム等の複雑な部品が必要となる。さらに、クランクシャフトの回転運動(点火時調整)と内部圧縮応力の導入は、処理に関して信頼できる方法で同期しなければならない。ここで、堅牢な装置を保証するために必要な機械部品は、複雑で高価である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】EP 1 479 480 A1
【文献】EP 0 788 419 B1
【文献】EP 1 612 290 A1
【文献】DE 10 2007 028 888 A1
【文献】EP 1 034 314 B1
【文献】DE 34 38 742 C2
【文献】EP 1 716 260 B1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、クランクシャフトの疲労強度を高めるための、費用効果が高く信頼できる方法及び装置を提供するという目的に基づいている。
【0013】
最後に、本発明は、クランクシャフトの疲労強度を高める改善された方法を実施するためのプログラムコード手段を有するコンピュータプログラムを提供するという目的にも基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的は、方法については、請求項1において特定された特徴により、装置については、請求項12において特定された特徴により達成される。
【0015】
コンピュータプログラムに関して、当該目的は、請求項18において特定された特徴により達成される。
【0016】
以下に記載の従属請求項及び特徴は、本発明の有利な実施形態及び変形例に関する。
【0017】
本発明に係る衝撃硬化方法において、クランクシャフトの渡り部、特に、連接棒軸受ジャーナルとクランクウェブとの間の渡り部及び/又は主軸受ジャーナルとクランクシャフトのクランクウェブとの間の渡り部が衝撃硬化されるようになっている。この場合、クランクシャフトは、最初に駆動装置により、回転方向に沿って衝撃位置に回転される。
【0018】
以下、簡潔にするため、連接棒軸受ジャーナル及び主軸受ジャーナルを単に「ジャーナル」と呼ぶ場合もある。ここで、「ジャーナル」という表現は、連接棒軸受ジャーナル及び主軸受ジャーナルの両方を指す場合があり、あるいは、連接棒軸受ジャーナルのみ若しくは主軸受ジャーナルのみを指す場合もある。特に明記されていない限り、本明細書において、この3パターンのジャーナルはすべて「ジャーナル」という表現に包含される。
【0019】
本発明は、例えば、長さ0.2~8mまたはそれ以上のクランクシャフト及び/もしくは直径30~500mmまたはそれ以上の主軸受ジャーナル及び連接棒軸受ジャーナルを有するクランクシャフトの疲労強度を高めるのに特に好適である。しかしながら、本発明は、長さ1.5~8mまたはそれ以上の大きなクランクシャフト及び/もしくは直径100~500mmまたはそれ以上の主軸受ジャーナル及び連接棒軸受ジャーナルを有する大きなクランクシャフトの疲労強度を高めるのに特に大変好適である。
【0020】
クランクシャフトは、様々な種類の渡り部、例えば、3心アーチ形状等を有するフィレット部分又はアンダーカット部分若しくは渡りを伴う部分を有していてもよい。渡り部は、例えば、主軸受ジャーナル及び連接棒軸受ジャーナルの軸受ジャーナルポイント又は走行面に対して接線方向に設けられてもよい。
【0021】
これは、接線部分及びアンダーカット部分の両方について、フランジ、ジャーナル、及び断面における他の幾何学的移行部への渡りに対しても当てはまる。
【0022】
クランクシャフトは、通常、断面における渡り、すなわち、移行部のすべてにおいて渡り部を有する。これは、特に、軸受ジャーナルとクランクウェブとの間の断面における移行部に当てはまる。本発明は、これらに特に適している。ただし、断面における他の移行部、特に、クランクシャフトの端部、特に、フランジ、ディスク、又はシャフト等への渡りにおける断面の移行部に対して、渡り部が設けられてもよい。
したがって、本発明に係る方法及び/又は本発明に係る装置によって疲労強度が改善される渡り部は、連接棒軸受ジャーナルとクランクウェブとの間又は主軸受ジャーナルとクランクウェブとの間に必ずしも存在する必要はなく、むしろ、クランクシャフトの任意の位置に配置されてもよい。「連接棒軸受ジャーナル」、「主軸受ジャーナル」、「フランジ」、「ジャーナル」、及び/又は「クランクウェブ」という表現は、当業者によって適宜再解釈されてもよい。
【0023】
連接棒軸受ジャーナルとクランクウェブとの間及び/又は主軸受ジャーナルとクランクウェブとの間の渡り部の硬化に実質的に基づいて、本発明を以下に説明する。ただし、これは限定的なものとして理解されるべきものではなく、単に理解度の向上又は読みやすさの向上を目的としている。本発明の文脈において渡り部について言及する場合、この渡り部は、基本的に、クランクシャフトの任意の位置における渡り部であってもよい。
【0024】
本発明によれば、衝撃位置でクランクシャフトを拘束するために拘束装置が設けられ、その後、少なくとも1つの衝撃ツールにより、衝撃力が少なくとも1つの渡り部に導入される。
【0025】
衝撃力の導入は、衝撃ツールの衝撃ヘッド、又は、衝撃装置のいわゆる「ヘッダー」が、硬化対象のクランクシャフトの領域(本例では、渡り部)に衝突することを意味すると理解できる。ここで、衝突は、ジャーナルの周囲を環状に取り囲むように延びる渡り部に沿って、所望の衝撃位置で、目的に応じて行われる。通常、衝撃ヘッドに(例えば、空気圧、油圧、及び/又は電気で発生した)強いパルス又は衝撃を伝達する衝撃ピストンを使用する。
【0026】
衝撃力に応じて、それぞれの衝撃位置に衝撃ヘッドの目に見える衝撃痕が形成される。衝撃痕の深さ及び導入された内部圧縮応力の質又は深さの影響は、この場合、選択した衝撃力に依存する。ツール及び処理パラメータは、それぞれのクランクシャフト及び、ここでは、適切な場合、部分的な幾何学的移行部(断面における移行部)と正確に整合されることが好ましい。
【0027】
本発明に係る方法では、(寄生)剪断応力を完全ではなくても、実質的に防止する。
【0028】
クランクシャフトの回転運動を衝撃ツール自体ではなく駆動装置によって衝撃位置で停止させることにより、駆動装置の機械部品に対する要求、及び場合によっては駆動装置の耐用年数さえも改善される。さらに、拘束装置により、特に目的に応じて所望の領域に衝撃力を導入することができる。これが可能なのは、衝撃ツールによる衝撃時にクランクシャフトが望ましくない方法で回転方向に沿って回転したり又は逆回転したりできないからである。
【0029】
したがって、本発明に係る方法により、非常に正確な加工又は衝撃硬化を保証することができる。衝撃の間隔を目的に応じて特に大変小さな許容差で実現することができる。
【0030】
拘束装置は、好ましくは非積極的にロックする方法及び/又は積極的にロックする方法でクランクシャフトを拘束し、又はこの目的でドライブトレイン又は装置に係合する装置であってもよい。好ましくは、非積極的にロックする拘束手段が設けられ、拘束力は、衝撃力の導入中にクランクシャフトの回転が防止又は少なくとも抑制されるように選択される。
【0031】
拘束装置は、油圧式、空気圧式、及び/又は電動式の拘束装置であってもよい。
【0032】
拘束装置は、1つ以上のブレーキシュー、例えば、2つのブレーキシュー、3つのブレーキシュー、4つのブレーキシュー、又はそれ以上のブレーキシューを有することが好ましい。
【0033】
拘束装置は、ワーク駆動部に取り付けられていることが好ましい。例えば、拘束装置は、ジョーチャック、クランプフランジ、締結フランジ、又はワーク駆動装置の面板に配置してもよく、あるいは、モータ又はドライブに直接配置してもよい。
【0034】
本発明に係る方法及び本発明に係る装置は、その疲労強度特性を高めるために他の方法を使用して予め機械加工されたクランクシャフトの場合であっても、適用又は使用してもよい。例えば、本発明に係る方法に従って内部圧縮応力を導入することにより、高周波焼入れにより硬化したクランクシャフトも、その曲げ疲労強度及びねじり疲労強度に関して遡及的に改善することができる。
【0035】
本発明の一改良形態では、駆動装置の動作について、クランクシャフトを衝撃位置に回転させるために、閉ループ位置コントローラを使用してもよく、クランクシャフトは、好ましくは、段階的に又は経時的に回転される。
【0036】
したがって、閉ループ位置コントローラを用いて、クランクシャフトのポイント・ツー・ポイントの移動を実現することができる。例えば、クランクシャフトをある衝撃位置から次の衝撃位置まで段階的又は経時的に回転させるために、開ループ位置コントローラを使用してもよい。最も単純な場合、この目的のために、開ループPTPコントローラ又はポイントコントローラを設けてもよい。
【0037】
駆動装置は、モータ、特に電気モータを備えていてもよい。電気モータは、基本的には、任意の電気モータ、例えば、三相モータ(特に、三相非同期機)、交流モータ、直流モータ、又はユニバーサルモータであってもよい。
【0038】
好ましくは、ステッピングモータを用いてもよい。
【0039】
二部駆動装置を設けることも可能であり、その場合、例えば、クランクシャフトの各端部にモータを設け、すなわち、クランクシャフトの同期駆動又は両側駆動とする。
【0040】
本発明の一改良形態では、クランクシャフトが衝撃位置で停止しているときにのみ拘束装置がクランクシャフトを拘束するように、駆動装置のコントローラと拘束装置のコントローラが相互に同期するようにしてもよい。
【0041】
対応する設計の場合、例えば、非積極的なロックに基づく設計の場合、拘束装置を、基本的に、クランクシャフトの回転運動を制動するために使用してもよい。ただし、衝撃位置でクランクシャフトを拘束するためだけに拘束装置を使用するのが特に好ましく、これにより、クランクシャフトの動力学、すなわち回転が行動装置によってのみ影響を受ける。すなわち、クランクシャフトの加速(又は制動)をもたらすトルクは、駆動装置によってのみ導入されるのが好ましい。例えば、駆動装置のコントローラ(例えば、閉ループ位置コントローラ)及び/又は拘束装置のコントローラを、特に単純な構造のものとすることができる。したがって、駆動装置及び拘束装置がクランクシャフトに作用する時点を、対応する時間管理により単に同期させるだけで十分である可能性がある。したがって、駆動装置及び拘束装置は、同時にクランクシャフトに作用しないことが好ましい。
【0042】
本発明の一改良形態では、さらに、少なくとも1つの衝撃ツールにより、クランクシャフトが衝撃位置で拘束されたときのみクランクシャフトの少なくとも1つの渡り部に衝撃力が導入されるように、拘束装置のコントローラ及び少なくとも1つの衝撃ツールのコントローラを相互に同期するようにしてもよい。
【0043】
このようにして、望ましくない剪断応力を完全に防止することができる。
【0044】
ただし、クランクシャフトが衝撃位置でまだ完全には停止していないときに、衝撃力の導入を開始することも基本的に可能である。
【0045】
個々の部品がクランクシャフトに作用する時点又は時間範囲が少なくとも部分的に重なるように、駆動装置、拘束装置、及び/又は少なくとも1つの衝撃ツールのコントローラを同期させてもよい。このようにして、方法全体のタイミングを高速化することができる。
【0046】
本発明の一改良形態では、駆動装置をダイレクトドライブとして設計するようにしてもよい。
【0047】
クラッチのない駆動装置を設けるのが好ましい。
【0048】
本例では、ダイレクトドライブは、モータ、好ましくは電気モータ、及び駆動シャフトが直接又は伝達比なしで接続又は結合される場合の駆動を意味すると理解されるべきである。特に、トランスミッションが省略される。
【0049】
本発明に係る方法を用いる場合、好ましくは、クラッチ、特にスリッピングクラッチを省略することも可能である。特に部品保護のために使用されるスリッピングクラッチは、例えば、EP 1 716 260 B1に係る方法において、衝撃ヘッドによる衝撃の結果、クランクシャフトが強制停止したときに駆動装置又は装置が損傷しないようにするために設けられる。本明細書において説明する方法の場合、このような損傷は除外され、これにより、スリッピングクラッチを不要とすることができる。
【0050】
このようにして、駆動装置の構造が非常に単純になり、したがって、経済的である。
【0051】
本発明の一改良形態では、特に、拘束装置及び駆動装置を相互に別々に配置するようにしてもよい。
【0052】
例えば、拘束装置を、閉ループ位置制御のために必要とされる可能性がある駆動装置内の制動装置として設計しないのが好ましい。通常、電気モータを備え、かつ、閉ループ位置コントローラによりポイント・ツー・ポイント動作を実行する駆動装置では、電気モータの閉ループ電圧又は電流制御によってトルクが生成されるため、いずれの場合も制動装置は設けられない。ただし、駆動装置が従来の制動装置を含む場合、これに加えて本発明に係る拘束装置が設けられ、かつ、独立したアセンブリとして設計されるようにしてもよい可能性がある。
【0053】
拘束装置は、基本的に、駆動装置内に個別に配置してもよい。この場合も、これら拘束装置が空間的に分離し、かつ/あるいは、機能的に独立した、相互に独立した部品であることが好ましい。
【0054】
好ましくない代替実施形態では、駆動装置の制動装置を使用してもよい。この目的のため、衝撃力の導入中にクランクシャフトが回転しないように、上記制動装置を適切に設計する必要がある。
【0055】
本発明の一改良形態では、さらに、回転可能な締結装置、好ましくは、締結装置の締結フランジ又はクランプフランジを拘束する拘束装置によって、クランクシャフトを間接的に拘束するようにしてもよい。当該フランジ又は締結装置にクランクシャフトが固定される。
【0056】
締結フランジの代わりに、あるいは、締結フランジに加えて、締結装置が面板又は他の何らかのクランプ手段を備えていてもよい。
【0057】
特に、複数のクランプジョー、例えば、2、3、4、5、6、又はそれ以上のクランプジョーを有する面板を設けてもよい。このようにして、直径の異なる複数種類のクランクシャフトを固定することができる。
【0058】
クランクシャフトは、その処理のために、締結装置によって、通常、駆動シャフトに回転可能に固定されている。
【0059】
その衝撃位置でクランクシャフトを拘束するために、拘束装置は、基本的には、駆動装置又はクランクシャフトに機械的に結合した任意の所望の位置で係合してもよい。例えば、拘束装置は、クランクシャフト自体に係合してもよく、駆動装置内で、例えば、駆動シャフトに係合してもよく、駆動装置の外側で、例えば、駆動シャフトに係合してもよく、あるいは、特に好ましくは、締結装置、特に締結フランジ、面板、又は何らかのクランプ手段に係合してもよい。
【0060】
本発明の一改良形態では、特に、拘束装置が外周の領域において、締結装置、締結フランジ、面板、又はクランプフランジに係合するようにしてもよい。
【0061】
拘束装置が上記板又はシャフトの外周の領域に係合することにより、付与しなければならない又は必要とされる拘束力を低減させることができる。駆動シャフトの回転軸に対する拘束装置の半径方向の位置に応じて、回転軸に対する半径方向の間隔が大きいほど、ねじりモーメントをブロックするのに必要な力が小さくなる。ここで、クランクシャフトがすでに衝撃位置で停止しているときにのみ拘束装置が係合すると特に有利である。
【0062】
拘束装置は、基本的に、衝撃硬化装置内の複数の場所で係合してもよい。例えば、拘束装置が、クランクシャフトの両端の領域におけるそれぞれの場合について適切な場所、例えば、その場所に位置する締結フランジに係合するようにしてもよい。
【0063】
クランクシャフトを駆動装置から離れた端部で回転可能に支持又は固定するために、テールストックのような支持体を設けてもよい。
【0064】
そして、拘束装置は、例えば、駆動装置又は駆動シャフトの領域及び/又は支持体の領域に係合してもよい。この場合にも、上述のように拘束装置が締結装置、好ましくは締結フランジに係合するのが好ましい。
【0065】
本発明の一改良形態では、クランクシャフトの回転方向と反対方向及び/又は回転方向にクランクシャフトが回転することを防止するように拘束装置を設計するようにしてもよい。
【0066】
本発明の一改良形態では、衝撃ツールの衝撃ヘッドの衝撃痕が、連接棒軸受ジャーナル又は主軸受ジャーナルの周囲を環状に取り囲むように延びるそれぞれの渡り部に沿って形成される方法で、重なり合うように衝撃硬化を行ってもよい。
【0067】
特に、ジャーナルの周囲を環状に取り囲むように延びるそれぞれの渡り部に沿った衝撃ヘッドの衝撃痕が重なり合うことを意図している場合、すなわち、衝撃位置の間隔が狭い場合、非常に正確に、かつ、目的に応じて衝撃力が導入されるようにしてもよい。これは、衝撃ヘッドが以前の衝撃の衝撃痕に侵入した場合、衝撃力の導入中にクランクシャフトが1つの衝撃位置から以前の衝撃位置に少なくとも部分的に回転するので、本発明に係る拘束装置を使用しないと困難である。衝撃痕を重ね合わせること、又は衝撃位置を密接に配置し、正確に定義することにより、疲労強度又は曲げ疲労強度及びねじり疲労強度を特に効果的に高められることが分かっているので、本発明は、特に衝撃痕が重なり合うか、あるいは、交差するように、密接及び/又は正確な衝撃間隔の導入と組み合わせると特に有利である。
【0068】
本発明の一改良形態では、少なくとも1つの衝撃ツールは、周期的に、好ましくは、0.5Hz~30Hzのタイミング、すなわち、衝撃周波数、特に好ましくは0.5Hz~5Hzのタイミング、特に大変好ましくは0.5Hz~3Hzのタイミングで衝撃運動を実行するか、あるいは、衝撃力を導入することができる。
【0069】
他のタイミング、例えば、0.1Hzから50Hzまでの衝撃周波数を用いてもよいことは自明であるが、上記の値は特に大変適している。
【0070】
衝撃力を生成するために衝撃ピストンが印加できる衝撃圧力は、動作モードに応じて、10~300バール、好ましくは30~180バール、特に好ましくは50~130バールである。
【0071】
クランクシャフトセグメントの領域又は機械加工される渡り部の温度は、65°C以下であることが好ましく、12°C~25°Cの値が好ましい。
【0072】
経験上、伝播することができないマイクロクラックは、エンジン又は試験台での動的荷重の後、クランクシャフトの表面に形成されることが分かっている。これらマイクロクラックは、疲労強度特性には影響しないが、外観を損なわせる可能性がある。
【0073】
好ましくは15mm又はそれ以上の深さまで内部圧縮応力を導入することができるので、これは、クランクシャフトの曲げ疲労強度及びねじり疲労強度、すなわち、疲労強度に悪影響を与えることなく、クランクシャフトの表面領域を数ミリメートル、例えば、0.1~3mm、好ましくは0.5mm除去できることを意味する。
【0074】
試験により、このような測定により疲労強度がわずかに、例えば最大5%増加することが示されている。
【0075】
表面の除去は、様々な方法、例えば、研削、旋削、フライス加工、ロータリフライス加工、剥離、又は研磨により実行してもよい。
【0076】
本発明はまた、クランクシャフトを衝撃位置に回転させるための駆動装置を有し、クランクシャフトの渡り部、特にクランクシャフトの連接棒軸受ジャーナルとクランクウェブとの間の渡り部及び/又は主軸受ジャーナルとクランクウェブとの間の渡り部を衝撃硬化するための装置に関する。
本発明によれば、クランクシャフトを衝撃位置で拘束するために拘束装置が設けられ、さらに、衝撃力を衝撃位置で少なくとも1つの渡り部に導入するために少なくとも1つの衝撃ツールが設けられる。
【0077】
この装置は、接線部分及びアンダーカット部分の両方について、フランジ、ジャーナル、及び断面における他の幾何学的移行部への渡りの衝撃硬化にも適している。
【0078】
本発明に係る方法に関連して既に説明した特徴は、本発明に係る装置についても有利に実現可能であり、その逆もまた同様であることは自明である。さらに、本発明に係る方法に関連して既に説明した利点は、本発明に係る装置に関連するものとして理解することができ、その逆もまた同様である。
【0079】
共通の衝撃装置において2つの衝撃ツールを使用するようにしてもよい。これら衝撃ツールは、連接棒軸受ジャーナル又は主軸受ジャーナルの両方の渡り部に同時に衝撃力を導入する。衝撃ツールを偏向部により結合してもよく、したがって、好ましくは、共通の衝撃ピストンによって衝撃ツールを操作してもよい。
【0080】
(例えば、1つ以上の衝撃ツールをそれぞれ有する複数の衝撃装置を使用することにより)相互に独立して使用できる複数の衝撃ツールを設けることもできる。これら複数の衝撃ツールによりそれぞれの衝撃力をクランクシャフトの任意の渡り部に導入することができ、駆動装置のコントローラ相互間及び/又は拘束装置のコントローラ相互間及び/又は別の衝撃ツール相互間又はそれらの間の対応する同期を提供してもよい。
【0081】
使用する衝撃ツールを1つだけにするようにしてもよい。
【0082】
特に、複数の衝撃ツールを使用する場合、衝撃ツール用の(共同又は個別の)油圧、空気圧、機械的及び/又は電気的手段により衝撃ツールに対応する衝撃力を生成することができる共通の圧力パルス装置を設けてもよい。
【0083】
本発明の一改良形態では、駆動装置及び拘束装置が相互に別々に形成され、配置されるようにしてもよい。
【0084】
本発明の一改良形態では、さらに、クランクシャフトを固定するために、回転可能な締結装置を設けることができ、当該クランクシャフト用の締結装置を拘束するように拘束装置を配置及び設計する。
【0085】
本発明の一改良形態では、さらに、締結装置が、拘束装置、好ましくは外周の領域で締結フランジに係合する拘束装置によって拘束可能な締結フランジを有するようにしてもよい。
【0086】
本発明の一改良形態では、締結装置を回転させるように、好ましくは締結装置の入力シャフトの周りに締結装置を回転させるように駆動装置を配置及び設計するようにしてもよい。締結装置の入力シャフトは、駆動装置、例えば電気モータの出力シャフトであってもよい。
【0087】
締結装置は、駆動装置の出力シャフトとクランクシャフトとの間に配置されるのが好ましい。
【0088】
本発明の一改良形態では、駆動装置の回転運動及び/又は拘束装置のコントローラ及び/又は少なくとも1つの衝撃ツールのコントローラを実現及び/又は同期させるために、開ループ及び/又は閉ループ制御装置、好ましくはマイクロプロセッサを備える開ループ及び/又は閉ループ制御装置を配置してもよい。
【0089】
拘束装置、駆動装置、及び/又は少なくとも1つの衝撃ツールのコントローラを備える開ループ及び/又は閉ループ制御装置を設けてもよい。
【0090】
マイクロプロセッサの代わりに、開ループ及び/又は閉ループ制御装置を実装するための他の任意の装置、例えば、回路基板、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)、特定用途向け集積回路(ASIC)、又は、他のプログラマブル回路上のディスクリート電子部品、例えば、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プログラマブルロジックアレンジメント(PLA)、及び/又は市販のコンピュータのうちの1つ以上の装置を準備するようにしてもよい。
【0091】
本発明はまた、上記方法を実施するためのプログラムコード手段を有するコンピュータプログラムに関し、開ループ及び/又は閉ループ制御装置、特にマイクロプロセッサで当該プログラムが実行されることにより、本発明に係る方法が実施される。
【0092】
本発明に係る装置のいくつかの構成要素は、基本的に、その構造に関して、EP 1 716 260 B1による装置に対応し、そのため、EP 1 716 260 B1に開示された内容は、その全体が、参照により本開示に援用される。
【図面の簡単な説明】
【0093】
図1図1は、本発明に係る第1の実施形態における方法を実施するための装置全体を概略的に示す図である。
図2図2は、本発明に係る方法の概略的なフロー図である。
図3図3は、本発明に係る第2の実施形態における方法を実施するための装置の一部を概略的に示す斜視図である
図4図4は、図1の詳細「A」による拡大図における2つの衝撃ツールを有する衝撃装置を概略的に示す図である。
図5図5は、衝撃ツールを1つのみ有する衝撃装置を概略的に示す図である。
図6図6は、拘束装置の使用中における概略的なフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0094】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
【0095】
各図は、好ましい例示的な実施形態を示しており、本発明の個々の特徴が相互に組み合わせて示されている。例示的な実施形態の特徴はまた、同一の例示的な実施形態の他の特徴と別個に実現可能であり、したがって、別の有意義な組み合わせ及び部分的組み合わせを作るために、当業者によって他の例示的な実施形態の特徴と容易に組み合わせることができる。
【0096】
各図において、機能的に同一の要素は、同一の参照符号で示されている。
【0097】
図1の全体図に示す装置は、基本的に、その構造に関して、1つ以上の衝撃装置1を有するDE 34 38 742 C2及びEP 1 716 260 B1のような装置に対応する。そのため、以下、重要な部分及び従来技術との相違点のみを詳細に説明する。
【0098】
上記装置は、機械ベッド2及び駆動装置3を有する。駆動装置3は、回転方向に沿ってクランクシャフト4を衝撃位置に移動又は回転させるために使用される。
【0099】
クランクシャフト4は、連接棒軸受ジャーナル5及び主軸受ジャーナル6を複数有し、それら各々の間にクランクウェブ7が複数配置される。渡り部8(図4~6参照)は、連接棒軸受ジャーナル5とクランクウェブ7との間、及び主軸受ジャーナル6とクランクウェブ7との間、すなわち、一般的に、クランクシャフト4の断面における渡り部分に形成される。
【0100】
クランクシャフト4の駆動装置3に面する側には、クランプディスク又は締結フランジ10を有する締結装置9が設けられる。クランクシャフト4の駆動装置3から離れた側には、支持体11、好ましくはテールストックのような支持体11が設けられ、当該支持体11は、クランクシャフト4を回転可能に収容又は回転可能に固定するための別の締結装置9を有する。任意選択的に又は支持体11に加えて、回転対象位置に配置されたバックレストを設けてもよい。
【0101】
本発明によれば、締結装置9の外周の領域に係合する拘束装置12が設けられる。基本的に、駆動装置3の出力シャフト、又は本例において当該出力シャフトと同一である締結装置9の入力シャフト13に拘束力を印加するため、したがってクランクシャフト4に拘束力を印加するために、装置内の任意の所望の位置に拘束装置12を配置してもよい。拘束装置12は、装置の複数の位置に係合してもよい。例として、支持体11の領域で締結装置9と係合する拘束装置12の第2の部分も同様に破線で示す。
【0102】
拘束装置12は、例えば、単に概略的に示されたブレーキシュー装置14を使用した非積極的な拘束作用に基づいている。
【0103】
駆動装置3は、クランクシャフト4を回転軸Cに沿って回転運動させることができる。ここで、クランクシャフト4の主回転軸CKWが、図1及び図3に示すように、駆動装置3の回転軸Cから偏心して配置されるようにしてもよい。この目的のため、締結装置9の領域に位置合わせ手段17(図3参照)を設けられることが好ましい。ここで、位置合わせ手段17が、硬化されるジャーナル5、5'又は6、6'の中心軸を変位させ、ジャーナル5、5'又は6、6'の中心軸が回転軸C上にあるようにしてもよい。
【0104】
駆動装置3に対して、ダイレクトドライブ、好ましくはクラッチなしのダイレクトドライブが設けられる。したがって、駆動装置3のモータ、好ましくは電気モータを伝達比なしで、すなわちトランスミッションなしで締結装置9又はクランクシャフト4に結合することができる。
【0105】
以下に例として詳細に説明する衝撃装置1は、連接棒軸受ジャーナル5及び主軸受ジャーナル6の位置とクランクシャフト4の長さとに適合させるための、変位及び調整装置15の各々において調整可能に保持される。
【0106】
図1の二重矢印で示すように、支持体11を変位可能に設計してもよい。
【0107】
図1には2つの衝撃装置1が示されているが、基本的には、任意の数、例えば、1つのみの衝撃装置1を設けてもよい。
【0108】
図2は、基本的に4つのステップ(回転、拘束、衝撃、解放)を備える方法を示す。
【0109】
好ましくは電気モータを備える駆動装置3の動作のために、閉ループ位置制御を用いて、クランクシャフト4をそれぞれの衝撃位置に回転させてもよく、クランクシャフト4は段階的に又は経時的に回転されることが好ましい。
【0110】
クランクシャフト4を駆動装置3により衝撃位置に回転させた後、クランクシャフト4は最初に衝撃位置で拘束装置12に拘束される。
【0111】
続いて、衝撃力が、少なくとも1つの衝撃ツール16によってクランクシャフト4の少なくとも1つの渡り部8に導入される(例えば、図4及び図5)。
【0112】
好ましくは、駆動装置3のコントローラ及び拘束装置12のコントローラは、クランクシャフト4が衝撃位置で停止しているときのみ拘束装置12がクランクシャフト4を拘束するように、相互に同期するのが好ましい。
【0113】
さらに、少なくとも1つの衝撃ツール16により、クランクシャフト4が衝撃位置で拘束されたときのみ衝撃力がクランクシャフト4の渡り部8に導入されるように、拘束装置12のコントローラ及び少なくとも1つの衝撃ツール16(又は少なくとも1つの衝撃装置1)のコントローラを同期させることもできる。その後、クランクシャフト4の拘束が再び解除される。
【0114】
この方法は、その後、渡り部8に沿って、好ましくは完全に1回転させるために渡り部8の周囲に沿って、又は環状に取り囲む渡り部8に沿って、必要に応じて何度でも繰り返すことができる。2回以上、例えば2回転又は3回転させることも可能である。ただし、完全に回転させる必要はない。
【0115】
渡り部8を所望の方法で衝撃硬化した後、衝撃ツール16又は衝撃装置1全体を硬化対象の次の渡り部8に移動させることができ、その後、ジャーナルの周囲を環状に取り囲むように延びる次の渡り部8に沿って上記方法(回転、拘束、衝撃、解放)を繰り返すことができる。
【0116】
少なくとも1つの衝撃ツール16又は少なくとも1つの衝撃装置1は、周期的に、例えば、0.1Hz~50Hzのタイミング、好ましくは0.3Hz~10Hzのタイミング、特に好ましくは0.5Hz~5Hzのタイミング、特に大変好ましくは0.5Hz~3Hzのタイミングで衝撃運動又は衝撃力を導入してもよい。
【0117】
上記方法を実施するために、開ループ及び/又は閉ループ制御装置29、好ましくはマイクロプロセッサを備える開ループ及び/又は閉ループ制御装置29を設けてもよい。開ループ及び/又は閉ループ制御装置29は、例えば、駆動装置3、拘束装置12及び/又は少なくとも1つの衝撃ツール16のそれぞれのコントローラを備えてもよく、あるいは、それらコントローラを実装及び/又は同期させてもよい。
【0118】
特に、本発明に係る方法を実施するために、プログラムコード手段を有するコンピュータプログラムを設けてもよく、開ループ及び/又は閉ループ制御装置29、特にマイクロプロセッサで当該プログラムが実行されることにより、本発明に係る方法が実施される。
【0119】
図3は、本発明に係る方法を実施するための別の装置の詳細を斜視図で示しているが、衝撃装置が含まれていない。ここで、図3に示す装置は、図1に示す装置と実質的に同一であるため、以下、重要な相違点のみ詳細に言及する。
【0120】
駆動装置3'が再び設けられる。ただし、図3に示す実施形態では、拘束装置が(見えないように)駆動装置3'内に配置されている。拘束装置12は、図1に示すように配置されるのが好ましいが、駆動装置3'内に拘束装置を収容してもよい。
それにもかかわらず、ここでは、拘束装置が駆動装置3'とは別個に作動可能であるようにされる。図3では、拘束装置は、駆動装置3'の構成部品ではない。駆動装置3'は、場合によっては、さらに専用の制動装置を有してもよい。
【0121】
さらに、締結フランジ10'と、それに締結された、クランクシャフト4'を固定するためのクランプジョーを有する面板とを有する締結装置9'が設けられる。締結装置9'のクランプジョーを有する面板は、締結フランジ10'上の位置合わせ手段17上で調整可能に配置され、これにより、クランクシャフト4'の縦軸CKWを駆動シャフト13'の回転軸Cに対して変位させることができる。
【0122】
図3に示すクランクシャフト4'は、図1に示すクランクシャフト4から逸脱する構成を有するが、基本的には、同様に、連接棒軸受ジャーナル5'、主軸受ジャーナル6'、及びクランクウェブ7'を備える。
【0123】
図3図1と同様)において、省略してもよいが、駆動装置3から離れたクランクシャフト4の端部に別の締結装置9、9'を設けてもよい。
【0124】
図1に示す衝撃装置1は、図4に示す例により詳細に示されている。本発明は、基本的には、任意の衝撃装置1で実施することができる。しかしながら、以下に説明する衝撃装置1が特に適している。この衝撃装置1は、本体18を有する。本体18は、機械加工されるクランクシャフトセグメントの部分に対応して角柱状のアバットメントを有していてもよく、支持面内に2つの衝撃ツール16をガイドし、偏向部20の周りの支持角又は衝撃角度に関して、対応する自由度をそれら衝撃ツール16に付与するガイド19を有することが好ましく、クランクシャフト4の寸法条件への適合に有利である。いずれの場合も、衝撃ヘッドとして1つのボールを2つの衝撃ツール16の前端に配置する。中間部22は、衝撃ピストン23と偏向部20とを接続し、衝撃エネルギーを衝撃ツール16に伝達する。中間部22は省略してもよい。
【0125】
衝撃の有効性を高めるために、本体18から離れたジャーナル5又は6側にクランプナット27を有する調整可能なクランプボルト26により、スプリング25を介して、クランププリズム24を締結してもよい。ここで、他の構造的な解決法も可能である。
【0126】
機械加工されるクランクシャフト4の長さにわたって複数の衝撃装置1を配置することにより、必要に応じて、クランクシャフト4のすべての中央領域と、場合によっては、偏心した領域とを同時に機械加工することができる。
【0127】
図5は、1つのみの衝撃ツール16'を備える衝撃装置1'を示す。例示的な実施形態では、衝撃装置1'は、特に、衝撃装置1'の縦軸に対して同軸に配置された衝撃ツール16'が、機械加工されるクランクシャフトセグメントの領域、本例では、機械加工される渡り部8の領域に対して垂直に衝撃を与えるように、クランクシャフト4に対して傾斜していることが好ましい。この場合、それぞれ、1つのクランクシャフトセグメントのみを機械加工することが可能であるが、衝撃装置1'による構造設計と力の伝達が良好かつ簡単である。このツールにより、定常位でボア端部をさらに硬化させることができる。
【0128】
本実施形態は、クランクシャフト4の端部領域及びオイルボア端部等の非対称のクランクシャフトセグメントでの使用に特に有利であることが証明されている。
【0129】
図6は、主軸受ジャーナル6とクランクウェブ7との間の例示的な渡り部8を示し、本例では、衝撃ツール16、16'の衝撃ヘッド21による衝撃痕28が、主軸受ジャーナル6の周囲を環状に取り囲むように延びる渡り部8に沿って重なり合うように衝撃硬化を行う。
【0130】
このような衝撃硬化を実現するために、装置による非常に正確な加工又は動作が必要である。
【0131】
特に、衝撃間隔が狭く設定されている場合、その後の衝撃の間、衝撃ヘッド21が先行する衝撃の衝撃痕28に少なくとも部分的に侵入する。これにより、その衝撃力がクランクシャフト4、4'のリセット回転動作を引き起こす。このような回転運動を防止するために、拘束装置12を設計してもよい。駆動装置3、3'の回転方向と反対にクランクシャフト4、4'が回転することを防止するように拘束装置12を設計することが特に有利である。
【0132】
主軸受ジャーナル6の渡り部8を衝撃硬化するために少なくとも1つの衝撃装置1を設計及び構成し、連接棒軸受ジャーナル5の渡り部8を衝撃硬化するために1つの衝撃装置1を設計及び構成するようにしてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6