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特許7013501ヘキサフルオロプロペンから出発する5-フルオロ-1H-ピラゾール類の調製のための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-21
(45)【発行日】2022-01-31
(54)【発明の名称】ヘキサフルオロプロペンから出発する5-フルオロ-1H-ピラゾール類の調製のための方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 231/16 20060101AFI20220124BHJP
   C07D 231/38 20060101ALI20220124BHJP
   C07D 403/04 20060101ALI20220124BHJP
【FI】
C07D231/16
C07D231/38 Z
C07D403/04
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020021851
(22)【出願日】2020-02-12
(62)【分割の表示】P 2016569756の分割
【原出願日】2015-05-26
(65)【公開番号】P2020097612
(43)【公開日】2020-06-25
【審査請求日】2020-03-13
(31)【優先権主張番号】14169990.0
(32)【優先日】2014-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508270727
【氏名又は名称】バイエル・アニマル・ヘルス・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】BAYER ANIMAL HEALTH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】セルギー、パゼノク
(72)【発明者】
【氏名】ノルベルト、ルイ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン、フンケ
【審査官】小森 潔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/012975(WO,A1)
【文献】特開平06-234672(JP,A)
【文献】特開昭49-134614(JP,A)
【文献】特表2006-523225(JP,A)
【文献】特表2012-507482(JP,A)
【文献】特表2014-509598(JP,A)
【文献】特表2014-510049(JP,A)
【文献】国際公開第2012/080376(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/069366(WO,A1)
【文献】Tetrahedron Letters,1974年,24,p.2129-2132
【文献】BERGAMOVA M D; MOTSISHKITE S M; KNUNYANTS I L,5-FLUORO-SUBSTITUTED PYRAZOLES,BULLETIN OF THE ACADEMY OF SCIENCES OF THE USSR, DIVISION OF CHEMICAL SCIENCES,米国,SPRINGER,1991年,VOL:39, NR:11,PAGE(S):2338 - 2344,http://dx.doi.org/10.1007/BF00958848
【文献】KI-WHAN CHI; SUNG-JUN KIM; TAE-HO PARK; ET AL,SYNTHESIS OF FLUORINATED N-ARYLPYRAZOLES WITH PERFLUORO-2-METHYL-2-PENTENE AND ARYLHYDRAZINES,JOURNAL OF FLUORINE CHEMISTRY,NL,ELSEVIER,1999年08月10日,VOL:98, NR:1,PAGE(S):29 - 36,http://dx.doi.org/10.1016/S0022-1139(99)00079-2
【文献】Journal of Fluorine Chemistry,1976年,8,p.535-540
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I):
【化1】
[式中、Rは、ハロゲン化されていてもよい(C~C)アルキルまたはハロゲン化されていてもよいシクロプロピルを表す。]
の5-フルオロ-1H-ピラゾールを合成する方法であって、
-工程1において、パーフルオロ-4-メチル-2-ペンテンの二量体を形成するための触媒の存在下で、ヘキサフルオロプロペン(化合物(1)):
【化2】
を反応させることによって、パーフルオロ-4-メチル-2-ペンテン(中間体(2)):
【化3】
を調製する工程、および
-工程2において、パーフルオロ-4-メチル-2-ペンテンを、パーフルオロ-2-メチル-2-ペンテンへ異性化することによって、パーフルオロ-2-メチル-2-ペンテン(中間体(3)):
【化4】
を調製する工程、および
-工程3において、パーフルオロ-2-メチル-2-ペンテンを水および塩基と反応させることによって、パーフルオロ-2-メチル-2-ペンテン-)3-エノラート(中間体(4)):
【化5】
[式中、Catは、正電荷の有機イオン、アルカリ金属カチオンまたはアルカリ土類金属カチオンを表す。]
を調製する工程、および
-工程4において、式(5):
【化6】
[式中、Rは、ハロゲン化されていてもよいC~Cアルキルまたはハロゲン化されていてもよいシクロプロピルを表す。]
のヒドラジンと工程4における中間体(4)を反応させることによって、式(I)の化合物を調製する工程を含んでなる、方法。
【請求項2】
式(IV):
【化7】
[式中、
は、水素、ハロゲン化されていてもよいC~Cアルキルまたはハロゲン化されていてもよいシクロプロピルであり、かつ
は、C-Rであり、かつ
は、水素、フッ素、塩素、臭素、CN、NO、ハロゲン化されていてもよいC~Cアルキル、ハロゲン化されていてもよいC~Cアルコキシ、ハロゲン化されていてもよいC~Cアルキルスルホニル、ハロゲン化されていてもよいC~Cアルキルスルフィニル、またはN-シクロプロピルアミノカルボニル(-C(=O)-NH-シクロプロピル)であり、かつ
は、C-Rまたは窒素であり、かつ
は、水素、メチル、フッ素、または塩素であり、かつTは、下記に列挙されるT1~T9基:
【化8】
または
【化9】
[式中、ピラゾールヘッド基との結合はアスタリスク*で記され、かつ、
は、互いに独立して、ハロゲン、シアノ、ニトロ、アミノ、または置換されていてもよいC~Cアルキル、C~Cアルキルオキシ、C~Cアルキルカルボニル、C~Cアルキルスルファニル、C~Cアルキルスルフィニル、C~Cアルキルスルホニルを表し、かつ
nは、0~2の値を表し、ただし、T5、T6、およびT8においてnが0または1であることを条件とし、かつ、T7においてnが0であることを条件とする。]の1つを表し、かつ
Qは、水素、シアノ、ヒドロキシ、ホルミルであるか、あるいは、ヒドロキシ、ニトロ、アミノ、ハロゲン、C~Cアルコキシ、シアノ、ヒドロキシカルボニル、C~Cアルコキシカルボニル、C~Cアルキルカルバモイル、C~Cシクロアルキルカルバモイルからなる群から独立して選択される1つ、2つ、3つ、4つ、または5つの置換基で置換されていてもよく、かつ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、ヒドロキシカルボニル、C~Cアルキルカルバモイル、C~Cアルキル、C~Cハロアルキル、およびC~Cアルコキシ置換フェニルからなる群から選択される1つ、2つ、または3つの置換基で独立して置換されていてもよい、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルキニル、C~Cシクロアルキル、C~Cヘテロシクロアルキル、C~Cアルコキシ、C~C15アルキルシクロアルキル、C~C15シクロアルキルアルキル、C~Cヒドロキシアルキル、Cアリール-C~Cアルキル、C~Cヘテロアリール-C~Cアルキル、C~Cアミノアルキル、アミノカルボニル-C~Cアルキル、またはC~Cアルキル-アミノ-C~Cアルキルの群分けのうちの1つである。]
の化合物を製造する方法であって、請求項1に記載の工程1、2、3および4を含んでなる、方法。
【請求項3】
式(IV)の化合物が、式(II):
【化10】
化合物である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
式(IV)の化合物が、化合物(IIa):
【化11】
の化合物である、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
-工程5において、化合物(I)をシアノ供与体と反応させて、式(6):
【化12】
[式中、Rは、ハロゲン化されていてもよいC~Cアルキル、またはハロゲン化されていてもよいシクロプロピルである。]
の中間体を調製する工程、および
-工程6において、第1の加水分解工程において化合物(6)を無機強塩基と反応させ、続いて第2の加水分解工程において無機酸を添加して、式(7):
【化13】
[式中、Rは、ハロゲン化されていてもよいC~Cアルキル、またはハロゲン化されていてもよいシクロプロピルである。]
の中間体を調製する工程、および
-工程8において、式(8)の化合物またはその塩(8’)を化合物(7)の活性型(7’)と反応させて、式(II)の化合物を調製する工程:
【化14】
[式中、
、A、A、およびQは、請求項2において定義されたとおりであり、LGは、任意の脱離基である。]
をさらに含んでなる、請求項2~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
式(IV)の化合物が、式(III):
【化15】
[式中、
は、水素、ハロゲン化されていてもよいC~Cアルキル、またはハロゲン化されていてもよいシクロプロピルであり
は、C-Rであり、
は、水素、フッ素、塩素、臭素、CN、NO、ハロゲン化されていてもよいC~Cアルキル、ハロゲン化されていてもよいC~Cアルコキシ、ハロゲン化されていてもよいC~Cアルキルスルホニル、ハロゲン化されていてもよいC~Cアルキルスルフィニル、またはN-シクロプロピルアミノカルボニル(-C(=O)-NH-シクロプロピル)であり
は、C-Rまたは窒素であり、
は、水素、メチル、フッ素、または塩素であり
Qは、水素、シアノ、ヒドロキシ、ホルミルであるか、あるいは、ヒドロキシ、ニトロ、アミノ、ハロゲン、C~Cアルコキシ、シアノ、ヒドロキシカルボニル、C~Cアルコキシカルボニル、C~Cアルキルカルバモイル、C~Cシクロアルキルカルバモイルからなる群から独立して選択される1つ、2つ、3つ、4つ、または5つの置換基で置換されていてもよく、かつ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、ヒドロキシカルボニル、C~Cアルキルカルバモイル、C~Cアルキル、C~Cハロアルキル、およびC~Cアルコキシ置換フェニルからなる群から選択される1つ、2つ、または3つの置換基で独立して置換されていてもよい、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルキニル、C~Cシクロアルキル、C~Cヘテロシクロアルキル、C~Cアルコキシ、C~C15アルキルシクロアルキル、C~C15シクロアルキルアルキル、C~Cヒドロキシアルキル、Cアリール-C~Cアルキル、C~Cヘテロアリール-C~Cアルキル、C~Cアミノアルキル、アミノカルボニル-C~Cアルキル、またはC~Cアルキル-アミノ-C~Cアルキルの群分けのうちの1つであり
Tは、以下に列挙される5員複素芳香族T1~T8:
【化16】
[式中、
ピラゾールヘッド基との結合はアスタリスク*で記され、
は、互いに独立して、ハロゲン、シアノ、ニトロ、アミノ、または置換されていてもよいC~Cアルキル、C~Cアルキルオキシ、C~Cアルキルカルボニル、C~Cアルキルスルファニル、C~Cアルキルスルフィニル、C~Cアルキルスルホニルを表し、
nは、0~2の値を表し、ただし、T5、T6、およびT8においてnが0または1であることを条件とし、かつ、T7においてnが0であることを条件とする。]
のうちの1つを表す。]
の化合物である、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
式(III)の化合物が、式(III’):
【化17】
化合物である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
請求項1に記載の工程1~4を含んでなり、さらに、
- 式(I)の化合物の環位におけるフッ化物の求核置換によって、式(I)の化合物を式(11)の中間体と反応させて(工程9と称される)、式(12)の中間体を調製する工程:
【化18】
[式中、
は、ハロゲン化されていてもよい(C~C)アルキル、またはハロゲン化されていてもよいシクロプロピルであり、かつ
Uは、臭素、ヨウ素、トリフレート、ボロン酸、ボロン酸エステル、またはトリフルオロボロネートを表し、かつ
~E、炭素、および窒素の5員環は、以下からなる群から選択される5員複素環:、
【化19】
[式中、
は、互いに独立して、ハロゲン、シアノ、ニトロ、アミノ、または置換されていてもよいC~Cアルキル、C~Cアルキルオキシ、C~Cアルキルカルボニル、C~Cアルキルスルファニル、C~Cアルキルスルフィニル、C~Cアルキルスルホニルを表し、かつ
nは、0~2の値を表し、ただし、T5、T6、およびT8においてnが0または1であることを条件とし、かつ、T7においてnが0であることを条件とする。]
を表す。]
および、
- 式(12)の化合物と式(13)の化合物とを反応させて(工程10と称される)、式(III)の化合物を調製する工程:
【化20】
[式中、
、A、A、およびQは、式(III)の化合物について定義されたとおりであり、かつ、
Uは、臭素、ヨウ素、トリフレート、ボロン酸、ボロン酸エステル、またはトリフルオロボロネートを表し、
かつ
~E、炭素、および窒素の5員環は、以下からなる群から選択される5員複素環:
【化21】
[式中、
は、互いに独立して、ハロゲン、シアノ、ニトロ、アミノ、または置換されていてもよいC~Cアルキル、C~Cアルキルオキシ、C~Cアルキルカルボニル、C~Cアルキルスルファニル、C~Cアルキルスルフィニル、C~Cアルキルスルホニルを表し、かつ
nは、0~2の値を表し、ただし、T5、T6、およびT8においてnが0または1であることを条件とし、かつ、T7においてnが0であることを条件とする。]を表し、
Uがボロン酸、ボロン酸エステル、またはトリフルオロボロネートを表す際に、Mは、臭素、ヨウ素またはトリフレートを表し、
Uが臭素、ヨウ素またはトリフレートを表す際に、Mは、ボロン酸、ボロン酸エステル、またはトリフルオロボロネートを表す。]
を含んでなる、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
式(IV)の化合物が、式(III’’):
【化22】
化合物である、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
請求項1に記載の工程1~4を含んでなり、さらに、請求項8に記載の工程9および10か、あるいは
-式(I)の化合物とアジド供与体(azide-donoer)とを反応させて、中間体(14)を調製する工程(工程11と称される):
【化23】
[式中、Rは、式(III)の化合物について定義されたとおりである。]、および、
-中間体(14)を式(15)の中間体と反応させて、中間体(III’’*)をもたらす工程(工程12と称される):
【化24】
[式中、
、R、A、およびAは、化合物(III)について定義されたとおりであり、nは、0または1であり、
PGは、 ~C アルキルのようなカルボキシル基の任意の保護基である。]
を含んでいてもよい、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
がメチルである、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
工程1の触媒および工程2のフッ化物供与体が同一である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
工程3および工程4の溶剤が同一である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
がメチルであり、
が塩素であり、
が水素であり、
nが0であり、
Qがシクロプロピル、1-シアノ-シクロプロピル、またはベンジル(-CH -C )である、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
請求項1に記載の方法を含んでなる、式(6)、(6a)、(7)、(7a)、(I)、(Ia)、(II)、(IIa)、(III)、(III’)、(IIIa)、(III’’)、(III’’’)、(IIIb)、および(IV)からなる群から選択される化合物の調製のための、ヘキサフルオロプロペンの使用。
【化25】
(上記式中、A 、A 、R 、R 、Q、Tおよびnは請求項2に定義される通りである。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
5-フルオロ-1H-ピラゾール類、特に5-フルオロ-1-メチル-3-ペンタフルオロエチル-4-トリフルオロメチル-1H-ピラゾールは、国際公開第2010051926号、国際公開第2012/069366号、国際公開第2012/0803876号および国際公開第2012/107343号に記載されるような作物保護用化学物質の調製に重要な構成要素である。
【背景技術】
【0002】
ヘキサフルオロプロペン(HFP)からパーフルオロ-4-メチル-2-ペンテンへの二量化のために、異なる触媒および方法が用いられてきた。
【0003】
パーフルオロ-2-メチル-2-ペンテンは市販されている(Fa. Daikin)およびP&M Invest (ロシア)。しかしこの化合物は有毒である。
【0004】
代わりに、パーフルオロ-2-メチル-2-ペンテンは、ヘキサフルオロプロペンの二量化を介して調製することができる(例えば、米国特許第5,254,774号、R. Haszeldiner et al, Journal of the Chemical Society D: Chemical Communications (1970), (21), 1444-1445参照)。
【0005】
ドイツ国特許第4228592号には、N,N,N,N-テトラメチルエチレンジアミンおよびカリウムフッ化物の存在下でのパーフルオロ-4-メチル-2-ペンテンの調製が記載されている。
【0006】
Pazenok et al.は、アンモニアおよびホスホニウムパーフルオロシクロブタンイリドの存在下でのパーフルオロ-4-メチル-2-ペンテンの調製を記載している (Pazenok et al., Tetrahedron Letters, (1996), 52(29), 9755-9758)。
【0007】
米国特許第5,254,774号には、シアン化カリウムの存在下でのヘキサフルオロプロペンオリゴマーの調製が記載されている。
【0008】
米国特許第2,918,501号には、アミド類、フェニルアミンまたはスルホキシド等の異なる溶剤中のフッ化物の存在下における内部不飽和パーフルオロオレフィンの調製が記載されている。
【0009】
パーフルオロ-4-メチル-2-ペンテンからパーフルオロ-2-メチル-2-ペンテンへの変換のために、通常フッ化物が用いられる (Brunskill et al, Chem. Com. 1970, 1444)。
【0010】
またヘキサフルオロプロペンからカルバニオンを発生させるために「プロトンスポンジ」フッ化水素が用いられてきた(Chambers et al, J. of Fluorine Chemistry (1994), 69(1), 103-108)。
【0011】
米国特許第4,377,717号には、活性炭の存在下でヘキサフルオロプロピレンを加熱することによるパーフルオロ-2-メチル-2-ペンテンの生産が開示されている。
【0012】
米国特許第4,093,670号(ドイツ国特許第2706603A1号)には、パーフルオロ-4-メチル-2-ペンテンの生産が開示されている。それぞれ0.00025molのKFおよび18-クラウン-6エーテルの存在下で、MeCN中で3時間40℃で加熱することにより、(E)-(CFCFCF=CF(CF)をより安定なパーフルオロ-2-メチル-2-ペンテンへ異性化した。他の例として、18-クラウン-6エーテルをベンゾ-15-クラウン-5エーテルおよびジベンゾ-およびジシクロヘキシル-18-クラウン-6エーテルで置換した。
【0013】
中国特許第103483139号には、パーフルオロ-2-メチル-2-ペンテン調製方法が開示されている。この方法は、パーフルオロ-2-メチル-2-ペンテンを、原材料のパーフルオロ-4-メチル-2-ペンテンを接触異性反応を介して調製することを可能とする。
【0014】
パーフルオロ-2-メチル-2-ペンテン-)3-エノラートの調製方法は、V.Snegirev et al Izvestiya Akademii Nauk SSR, Seriya Khimicheskaya (1986), N. 1, pp. 106-119、およびT.Martini, J.Fluor.Chem. (1976), 8, 535-540に記載されている。
【0015】
5-フルオロ-1-メチル-3-ペンタフルオロエチル-4-トリフルオロメチル-1H-ピラゾールは、-50℃のジエチルエーテル中で、ヘキサフルオロプロペンの二量体を水非含有N,N-ジメチルヒドラジンで処理し、続いてこの中間体を120℃で加熱することによって調製され得ることが知られている(Knunyants et al. Izv. Akad. Nauk SSSR (1990) 2583-2589)。
【化1】
【0016】
しかしながら、この2工程転換は、第1の工程に低温を必要とし、第2の工程における熱の排除中にCHFの形成をもたらすため、この方法は、高価であり、環境上好ましくなく、かつ工業化が特に困難である。
【0017】
パーフルオロ-2-メチル-2-ペンテンおよびフェニルヒドラジンから出発し、-50℃のトリエチルアミンの存在下で、1-フェニルピラゾールは、90%の収率で得ることができると示されている(旧ソ連第1456419号)。
【0018】
Chi et al. J.Fluor.Chem. 98 (1999) 29は、CHCN中のパーフルオロ-2-メチル-2-ペンテン(3)とフェニルヒドラジンとの反応が、4:1の比における異性体ピラゾールaとbの混合物をもたらしたと報告した。
【化2】
【0019】
モノアルキルヒドラジン類は(特に水溶液の形態で)低コストで市販されているが、該ピラゾール類の位置選択的合成のために使用することは、先行技術からは知られていない。さらに本方法は、選択的でなく、3つの異なる生成物(a-c)の形成をもたらす。
【0020】
Bargamova et al. Div. Chem.Sciences, 39, 2129-32 (1991)では、-30℃で乾燥モノグリム中でのヘキサフルオロメチルイソプロピル-ペンタフルオロエチル-ケトンのエノラートとフェニルヒドラジン(phenylphydrazine)との反応を介した1-フェニル-3-ペンタフルオロエチル-4-トリフルオロエチル-5-フルオロ-ピラゾールの調製が記載されている。しかしながら、反応では約60%の控えめな収率しかもたらされず、大規模な取り組みには好適ではない。
【0021】
Martini et al. J. Flourine Chem., 8, 535-40 (1976)では、パーフルオロ-2-メチル-2-ペンテンから出発するヘキサフルオロメチルイソプロピル-ペンタフルオロエチル-ケトンのエノラートの調製が記載されている。
【0022】
パーフルオロ-2-メチル-2-ペンテン(ヘキサフルオロプロペンの活性二量体)とアリールヒドラジン類との相互作用は、1-フェニル-3-パーフルオロエチル-4-トリフルオロメチル-5-フルオロ-1H-ピラゾールが主要であるにも関わらず、2つの異性体の形成につながる。その形成のメカニズムは、下記図式において示されている。遊離NH基による二重結合への最初の攻撃によって位置異性体の構造が定まる。別の状況は、パーフルオロ-2-メチル-2-ペンテンとN-アルキルヒドラジンとの反応の最中である。アルキル基と結合したN-原子の方が求核的であるため、パーフルオロ-2-メチル-2-ペンテンとN-アルキルヒドラジン(N-Aklyhdrazine)との相互反応は、相応しくない異性体の形成につながるはずである。
【化3】
【発明の概要】
【0023】
二量体と水との反応の最中に形成されたエノラートは、所望の位置異性体(regiosomer)を選択的に形成しながらアルキルおよびアリールヒドラジンと容易に反応することが見出された。本発明工程(this inventive step)において、アルキルヒドラジンまたはアリールヒドラジンは、エノラートのCF基と反応し、1個の異性体しか生成しない。
【化4】
【0024】
本発明が解決しようとする課題は、利用可能なフルオロアルケン類および一置換ヒドラジン類から5-フルオロ-1H-ピラゾール類を調製するための平易かつ選択的な方法を特定することであり、これは工業規模の方法に特に適するであろう。追加の利点として、本方法は、安全性および不必要な廃棄物の生成に関する有利な特性を有するであろう。
【0025】
本発明の第一の態様は、一般式(I)の5-フルオロ-1H-ピラゾール類:
【化5】
[式中、Rは、ハロゲン化されていてもよい(C~C)アルキルまたはハロゲン化されていてもよいシクロプロピル、好ましくはメチルである。]
を合成する方法であって、以下:
-工程1において、パーフルオロ-4-メチル-2-ペンテンの二量体を形成するための触媒の存在下でヘキサフルオロプロペン(化合物(1)):
【化6】
を反応させることによって、パーフルオロ-4-メチル-2-ペンテン(中間体(2)):
【化7】
を調製する工程、および、
-工程2において、パーフルオロ-4-メチル-2-ペンテンをパーフルオロ-2-メチル-2-ペンテンへ異性化することによって、パーフルオロ-2-メチル-2-ペンテン(中間体(3)):
【化8】
を調製する工程、および、
-工程3において、パーフルオロ-2-メチル-2-ペンテンを水と塩基で反応させることによって、パーフルオロ-2-メチル-2-ペンテン-)3-エノラート(中間体(4)):
【化9】
[式中、Catは、正電荷の、有機イオン、アルカリ金属カチオンまたはアルカリ土類金属カチオンを表す。]
を調製する工程、および、
-工程4において、式(5):
【化10】
[式中、Rは、ハロゲン化されていてもよい(C~C)アルキルまたはハロゲン化されていてもよいシクロプロピルである。]
のヒドラジンと工程4における中間体(4)を反応させることによって、式(I)の化合物を調製する工程を含んでなる、方法に言及する。
【0026】
さらなる態様は、式(IV):
【化11】
[式中、
は、水素、ハロゲン化されていてもよいC~Cアルキルまたはハロゲン化されていてもよいシクロプロピル、好ましくはメチルであり、かつ
は、C-Rであり、かつ
は、水素、フッ素、塩素、臭素、CN、NO、ハロゲン化されていてもよいC~Cアルキル、ハロゲン化されていてもよいC~Cアルコキシ、ハロゲン化されていてもよいC~Cアルキルスルホニル、ハロゲン化されていてもよいC~Cアルキルスルフィニル、またはN-シクロプロピルアミノカルボニル(-C(=O)-NH-シクロプロピル)、好ましくは水素、フッ素、塩素、臭素、CN、NO、メチル、エチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、1-メチルエトキシ、フルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、クロロジフルオロメトキシ、ジクロロフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、2,2,2-トリフルオロエトキシ、2-クロロ-2,2-ジフルオロエトキシ、ペンタフルオロエトキシ、メチルスルホニル、メチルスルフィニル、トリフルオロメチルスルホニル、トリフルオロメチルスルフィニル、またはN-シクロプロピルアミノカルボニル、より好ましくは水素、フッ素、塩素、臭素、CN、NO、メチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、メトキシ、エトキシ、またはペンタフルオロエトキシ、好ましくは水素、フッ素、塩素、臭素、最も好ましくは塩素であり、かつ
は、C-Rまたは窒素であり、かつ
は、水素、メチル、フッ素、または塩素、好ましくは水素であり、かつ
Tは、下記に列挙されるT1~T9基:
【化12】
または
【化13】
[式中、
ピラゾールヘッド基[N(C)(CF)]との結合はアスタリスク*で記され、かつ
は、互いに独立して、ハロゲン、シアノ、ニトロ、アミノ、または置換されていてもよいC~Cアルキル、C~Cアルキルオキシ、C~Cアルキルカルボニル、C~Cアルキルスルファニル、C~Cアルキルスルフィニル、C~Cアルキルスルホニルを表し、かつ
nは、0~2、好ましくは0の値を表し、ただし、T5、T6、およびT8においてnが0または1であることを条件とし、かつ、T7においてnが0であることを条件とする。]
の1つを表し、かつ
Qは、水素、シアノ、ヒドロキシ、ホルミルであるか、あるいは、ヒドロキシ、ニトロ、アミノ、ハロゲン、C~Cアルコキシ、シアノ、ヒドロキシカルボニル、C~Cアルコキシカルボニル、C~Cアルキルカルバモイル、C~Cシクロアルキルカルバモイルからなる群から独立して選択される1つ、2つ、3つ、4つ、または5つ、好ましくは1つまたは2つ、より好ましくは1つの置換基で置換されていてもよく、かつ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、ヒドロキシカルボニル、C~Cアルキルカルバモイル、C~Cアルキル、C~Cハロアルキル、およびC~Cアルコキシ置換フェニルからなる群から選択される1つ、2つ、または3つの置換基で独立して置換されていてもよい、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルキニル、C~Cシクロアルキル、C~Cヘテロシクロアルキル、C~Cアルコキシ、C~C15アルキルシクロアルキル、C~C15シクロアルキルアルキル、C~Cヒドロキシアルキル、Cアリール-C~Cアルキル、C~Cヘテロアリール-C~Cアルキル、C~Cアミノアルキル、アミノカルボニル-C~Cアルキル、またはC~Cアルキル-アミノ-C~Cアルキルの群分けのうちの1つであり、好ましくは、Qは、C~Cシクロアルキルであるか、または塩素、フッ素、臭素、ヨウ素、シアノ、およびヒドロキシからなる群から選択される少なくとも1つの置換基で置換されたC~Cシクロアルキルであるか、またはCアリール-C~Cアルキルであり、より好ましくはシクロプロピル、1-シアノ-シクロプロピル、またはベンジル(-CH-C)である。]
の化合物を製造する方法であって、段落0025に記載された工程1、2、3および4を含んでなる、方法に言及する。
【0027】
好ましい一つの態様は、上記に記載された式(IV)の化合物を製造する方法であって、式(IV)の化合物が、式(II)、好ましくは(II’)の化合物である、方法に言及する(例えば、段落0119を参照のこと)。
【0028】
別の好ましい態様は、上記に記載された式(IV)の化合物を製造する方法であって、式(IV)の化合物が、式(IIa):
【化14】
の化合物である、方法に言及する(例えば、段落0120を参照のこと)。
【0029】
別の好ましい態様は、上記に記載された式(IV)の化合物を製造する方法であって、
-工程5において、化合物(I)をシアノ供与体と反応させて、式(6):
【化15】
[式中、Rは、ハロゲン化されていてもよいC~Cアルキル、またはハロゲン化されていてもよいシクロプロピル、好ましくはメチルである。]
の中間体を調製する工程、および、
-工程6において、第1の加水分解工程において化合物(6)を無機塩基と反応させ、続いて第2の加水分解工程において無機酸を添加して、式(7):、
【化16】
[式中、Rは、ハロゲン化されていてもよいC~Cアルキル、またはハロゲン化されていてもよいシクロプロピル、好ましくはメチルである。]
の中間体を調製する工程、および、
-工程8において、式(8)の化合物またはその塩(8’)を化合物(7)の活性型(7’)と反応させて、式(II)の化合物を調製する工程:
【化17】
[式中、R、A、A、およびQは、請求項2において定義されたとおりであり、LGが、任意の脱離基である。]、
をさらに含んでなる、方法に言及する。
【0030】
別の好ましい態様は、上記に記載された式(IV)の化合物を製造する方法であって、式(IV)の化合物が式(III)の化合物である、方法に言及する。
【0031】
別の好ましい態様は、上記に記載された式(III)の化合物を製造する方法であって、式(III)の化合物が、式III’の化合物、好ましくは化合物(IIIa)または化合物(IIIb):
【化18】
である、方法に言及する(例えば、段落0150~0152および0160を参照のこと)。
【0032】
別の好ましい態様は、式(III)の化合物を調製するために請求項1において記載された工程1~4を含んでなり、さらに、
-式(I)の化合物の環位におけるフッ化物の求核置換によって、式(I)の化合物を式(11)の化合物と反応させて、式(12)の化合物を調製する工程(工程9と称される):
【化19】
[式中、
は、ハロゲン化されていてもよい(C~C)アルキル、またはハロゲン化されていてもよいシクロプロピルであり、好ましくはメチルであり、
Uは、臭素、ヨウ素、トリフレート、ボロン酸、ボロン酸エステル、またはトリフルオロボロネートを表し、
-E、炭素、および窒素の5員環は、以下からなる群から選択される5員複素環:
【化20】
[式中、
は、互いに独立して、ハロゲン、シアノ、ニトロ、アミノ、または置換されていてもよいC~Cアルキル、C~Cアルキルオキシ、C~Cアルキルカルボニル、C~Cアルキルスルファニル、C~Cアルキルスルフィニル、C~Cアルキルスルホニルを表し、
nは、0~2、好ましくは0の値を表し、ただし、T5、T6、およびT8においてnが0または1であることを条件とし、かつ、T7においてnが0であることを条件とする。]
を表す。]
、および、
- 式(12)の化合物と式(13)の化合物とを反応させて、式(III)の化合物を調製する工程(工程10と称される):
【化21】
[式中、
、A、A、およびQは、式(III)(またはそれぞれについてIV)の化合物について定義されたとおりであり、UおよびTは、化合物(11)(およびそれぞれについて化合物(12))について定義されたとおりであり、かつ
Uがボロン酸、ボロン酸エステル、またはトリフルオロボロネートを表す際に、Mは、臭素、ヨウ素またはトリフレートを表し、
Uが臭素、ヨウ素またはトリフレートを表す際に、Mは、ボロン酸、ボロン酸エステル、またはトリフルオロボロネートを表す。]
を含んでなる、式(III)の化合物を製造する方法に言及する。
【0033】
別の好ましい態様は、上記に記載された式(IV)の化合物を製造する方法であって、式(IV)の化合物が、式(III’’)の化合物、好ましくは式(III’’’)の化合物である、方法に言及する(例えば、段落0159を参照のこと)。
【0034】
別の好ましい態様は、上記に記載された工程1~4を含んでなり、さらに、上記に記載された工程9および10か、または
-式(I)の化合物とアジド供与体とを反応させて、中間体(14):
【化22】
[式中、Rは、式(III)の化合物について定義されたとおりである。]
を調製する工程(工程11と称される)、および、
-中間体(14)を式(15)の中間体と反応させて、中間体(III’’*)をもたらす工程(工程12と称される):
【化23】
[式中、
、R、A、およびAは、化合物(III)について定義されたとおりであり、
nは、0または1であり、
PGは、C~Cアルキル(例えば、メチル)などのカルボキシル基の任意の保護基である。]
を含んでいてもよい、上記に記載された式(III’’)の化合物、好ましくは式(III’’’)の化合物を製造する方法に言及する。
【0035】
別の好ましい態様は、Rがメチルである、上記に記載された方法に言及する。
【0036】
別の好ましい態様は、工程1における触媒および工程2におけるフッ化物供与体が同一である、上記に記載された方法に言及する。
【0037】
別の好ましい態様は、工程3および工程4における溶剤が同一、好ましくは塩化メチレンである、上記に記載された方法に言及する。
【0038】
別の好ましい態様は、工程3における塩基が、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、DBU、DABCO,N-エチルジイソプロピルアミン、N-ブチルイミダゾール、ベンジルジメチルアミン(benzyldimethyamine)、ピリジンまたはピコリンである、上記に記載された方法に言及する。
【0039】
式(6)、(6a)、(7)、(7a)、(I)、(Ia)、(II)、(IIa)、 (III)、(III’)、(IIIa)、(III’’)、(III’’’)、(IIIb)、および(IV)からなる群から選択される化合物の調製のためのヘキサフルオロプロペンの使用。
【0040】
別の態様は、本明細書に記載された工程1、工程2、工程3および工程4を含む方法に従って調製された式(II)の化合物、好ましくは化合物(IIa)に言及する。
【0041】
別の態様は、本明細書に記載された工程1、工程2、工程3および工程4を含む方法に従って調製された式(III)の化合物、好ましくは化合物(IIIa)に言及する。
【0042】
別の態様は、本明細書に記載された工程1、工程2、工程3および工程4を含む方法に従って調製された式(III’’)の化合物、好ましくは化合物(IIIb)に言及する。
【発明の具体的説明】
【0043】
定義
本明細書において用いられている用語「アルキル」とは、直鎖状、分岐状または環式飽和ヒドロカルビル基を指す。定義C~Cアルキルは、アルキル基について本明細書で定義される最も広い範囲を含む。好ましいアルキルは、C~Cアルキル、より好ましくはC~Cアルキル、さらにより好ましくはC~Cアルキルである。特に、この定義は例えば、メチル、エチル、n-、イソプロピル、n-、イソ-、sec-およびt-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、1,3-ジメチルブチルおよび3,3-ジメチルブチルの意味を含む。
【0044】
本明細書において用いられている用語「シクロアルキル」とは、3~9個の(C~Cシクロアルキル)、および好ましくは3~6個の炭素環員(C~Cシクロアルキル)を有する単環式、飽和ヒドロカルビル基(例えば、(特に限定されないが)シクロプロピル、シクロペンチルおよびシクロヘキシル)を指す。この定義は、他で定義されていない限り、複合置換基の一部としてのシクロアルキル(例えば、シクロアルキルアルキル等)にも適用される。
【0045】
本明細書において用いられている用語「ハロゲン」とは、周期表の第7主族の元素およびそれらの基を指し、好ましくは、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素ならびにそれらの基を指す。より好ましいハロゲンは、塩素およびフッ素である。
【0046】
本明細書において用いられている用語「ハロゲン化されていてもよいアルキル」または「ハロゲン化されていてもよいシクロプロピル」または他の「ハロゲン化されていてもよい」基または「ハロアルキル」または「ハロシクロアルキル」または類似の「ハロ」基は、アルキル/シクロアルキル/シクロプロピル等部分を指し、炭素原子に結合した少なくとも1の(1)水素原子が、好ましくはF、Cl、I、またはBrから選択される、より好ましくはFまたはClから選択されるハロゲンで置換されている。従って、n個の炭素原子および、従って2n+1個の水素を有する、アルキル部分のハロゲン化された形態は、1~2n+1個のハロゲン置換基を有していてもよい(即ち、メチル部分の1、2または3個の水素は、それぞれハロゲンで置換され、エチル部分の1、2、3、4または5個の水素は、それぞれハロゲンで置換され、プロピル部分の1、2、3、4、5、6または7個の水素は、それぞれハロゲンで置換され、またはブチル部分の1、2、3、4、5、6、7、8または9個の水素は、それぞれハロゲンで置換される)。好ましくは、アルキル部分の全ての水素は、ハロゲンで置換される(パーハロゲン化された部分)。より好ましくは、パーハロゲン化された部分の全てのハロゲンは、ClまたはFまたはそれらの組合せから選択される。さらにより好ましくは、アルキル部分の全ての水素は、Fで置換される。従って、5個の水素を有するシクロプロピル部分のハロゲン化された形態は、1、2、3、4または5個のハロゲン置換基を有してもよく、好ましくはClまたはFまたはそれらの組合せから選択され、より好ましくは部分がパーフルオロ化されている。
【0047】
本発明において「アルコキシ」は、例えば、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシおよびtert-ブトキシ等の、好ましくは1~6個またはさらに1~4個の炭素原子を有する直鎖または分岐状-O-アルキルである。1~4個の炭素原子を有するアルコキシ基も好ましい。
【0048】
本発明において「ヘテロシクロアルキル」は、少なくとも1個の炭素原子が、ヘテロ原子、好ましくはN、O、S、P、B、Si、Seからなる群からのヘテロ原子で置換された、少なくとも1個の環を有し、かつ本明細書で記載される化合物の主要構造への結合が環原子上に位置している飽和、不飽和または芳香族複素環式であって炭素環式の環系である。他に定義されていない限り、複素環式環は、好ましくは3~9個の環原子、特に3~6個の環原子を含んでなり、1~5個の環原子が炭素原子であるが、但し複素環中で1個以上、好ましくは1~4個、特に1、2または3個の環原子がヘテロ原子である。好ましくは、複素環原子は、N、OおよびSからなる群から選択され、しかしながら、2個の酸素原子は直接隣接されるべきではない。複素環式環は、通常4個以下の窒素原子、および/または2個以下の酸素原子および/または2個以下の硫黄原子を含んでなる。もしヘテロシクリル基または複素環式環が場合により置換されていた場合、他の炭素環または複素環と縮合することができる。場合により置換されたヘテロシクリルの場合、本発明は、例えば、8-アザビシクロ[3.2.1]オクタニルまたは1-アザビシクロ[2.2.1]ヘプチル等の多環系も含む。場合により置換されたヘテロシクリルの場合、本発明は、例えば、1-オキサ-5-アザスピロ[2.3]ヘキシル等のスピロ環式系も含む。
【0049】
本発明において「アルキルシクロアルキル」は、1個以上のアルキル基で置換された単環式、二環式または三環式シクロアルキル基であって、好ましくは例えば、エチルシクロプロピル、イソプロピルシクロブチル、3-メチルシクロペンチルおよび4-メチルシクロヘキシル等の、シクロアルキルおよび置換基のアルキル部分の炭素原子の和が、4~15個または4~9個の炭素原子である。とりわけエチルシクロプロピルまたは4-メチルシクロヘキシル等の4,5または7個の炭素原子を有するアルキルシクロアルキルも好ましい。好ましくは、アルキルシクロアルキル置換基のアルキル部分は、CまたはCアルキル(-CHまたは-C)である。
【0050】
本発明において「シクロアルキルアルキル」は、1個以上の単環式、二環式または三環式シクロアルキル基で置換されたアルキル基であって、好ましくは例えば、シクロプロピルメチル、シクロブチルメチル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチルおよびシクロペンチルエチル等の、シクロアルキルおよび置換基のアルキル部分の炭素原子の和が、4~15個、より好ましくは4~9個の炭素原子である。とりわけシクロプロピルメチルまたはシクロブチルメチル等の4,5または7個の炭素原子を有するシクロアルキルアルキルも好ましい。好ましくは、シクロアルキルアルキル置換基のアルキル部分は、CまたはCアルキレン(-CH-または-C-)である。
【0051】
本発明において「アリール」とは、芳香族ヒドロカルビル基(アリール)である。好ましくはC~C14アリール、即ち、6~14個の炭素環原子を有するアリール基である。また、本発明において「ヘテロアリール」とは、O、N、PおよびSからなる群から独立して選択された、少なくとも1個のヘテロ原子環原子を含んでなる芳香族基を意味する(例えば、1、2、3、4または4個以上のヘテロ原子環原子、とはいえ1、2、3または4個のヘテロ原子環原子を有するヘテロアリールが好ましい)。定義C~C14ヘテロアリールは、O、N、PおよびSからなる群から独立して選択された、少なくとも1個のヘテロ原子環原子を含んでなるアリール基を指し、上記で定義された少なくとも1個のヘテロ原子環原子を含む環原子の和が、5~14個である。例えば、用語Cヘテロアリールは、フラン(酸素環原子1個および炭素環原子4個)またはイミダゾール(窒素環原子2個および炭素環原子3個)を含む。より好ましいアリール化合物は、Cアリール、CヘテロアリールまたはCヘテロアリールである。例として、フェニル、シクロヘプタトリエニル、シクロオクタテトラエニル、ナフチルおよびアントラセニル、2-フリル、3-フリル、2-チエニル、3-チエニル、2-ピロリル、3-ピロリル、3-イソオキサゾリル、4-イソオキサゾリル、5-イソオキサゾリル、3-イソチアゾリル、4-イソチアゾリル、5-イソチアゾリル、3-ピラゾリル、4-ピラゾリル、5-ピラゾリル、2-オキサゾリル、4-オキサゾリル、5-オキサゾリル、2-チアゾリル、4-チアゾリル、5-チアゾリル、2-イミダゾリル、4-イミダゾリル、1,2,4-オキサジアゾール-3-イル、1,2,4-オキサジアゾール-5-イル、1,2,4-チアジアゾール-3-イル、1,2,4-チアジアゾール-5-イル、1,2,4-トリアゾール-3-イル、1,3,4-オキサジアゾール-2-イル、1,3,4-チアジアゾール-2-イルおよび1,3,4-トリアゾール-2-イル;1-ピロリル、1-ピラゾリル、1,2,4-トリアゾール-1-イル、1-イミダゾリル、1,2,3-トリアゾール-1-イル、1,3,4-トリアゾール-1-イル;3-ピリダジニル、4-ピリダジニル、2-ピリミジニル、4-ピリミジニル、5-ピリミジニル、2-ピラジニル、1,3,5-トリアジン-2-イルおよび1,2,4-トリアジン-3-イルが挙げられる。
【0052】
本発明において「アリールアルキル」および「ヘテロアリールアルキル」は、それぞれについて1個以上のアリール基または1個以上のヘテロアリール基で置換されたアルキル基(アルキレン鎖)である。アルキレン鎖は好ましくは、1~6個の炭素原子(C~Cアルキレン鎖)、好ましくは1~3個の炭素原子を有する。定義C~C20アリールアルキル基は、アリール環系およびアルキレン鎖の組合せにおける合計7~20個の原子を有するアリールアルキル基について本明細書で定義された最も広い範囲を含む。好ましいアリールアルキル類は、C~Cアリールアルキル(例えば、ベンジル(-CH-C)、フェニルエチル(-CH-CH-C)またはフェニルプロピル(-(CH-C)等のCアリール-C~Cアルキル)である。定義C6~20-ヘテロアリールアルキル基は、ヘテロアリール環系中の少なくとも1個の環原子がヘテロ原子であるヘテロアリール環系およびアルキレン鎖の組合せ中に、合計6~20個の原子を有するヘテロアリールアルキル基について本明細書で定義された最も広い範囲を含む。好ましいヘテロアリールアルキルは、C~Cアリールアルキル(例えば、ピロール-2-イル-メチル(-CH-CNH)等のCヘテロアリール-C~C-アルキルまたは2-ピリジン-2-イル-メチル(-CH-CNH)等のCヘテロアリール-C~Cアルキル)である。
【0053】
本発明において「アルキルアリール」は、1個以上のアルキル基、好ましくはC~Cアルキル基、より好ましくはC~Cアルキル基で置換されたアリール基である。定義C~C20アルキルアリール基は、アリール環系およびアルキル基、好ましくはC~Cアルキル-Cアリール等のC~Cアルキルアリール中に合計7~20個の原子を有するアルキルアリールについて本明細書で定義された最も広い範囲を含む。特にこの定義は、例えば、トリル(-C-CH)、エチルフェニル(-C-C)、または2,3-,2,4-,2,5-,2,6-,3,4-または3,5-ジメチルフェニルの意味を含む。
【0054】
同様に「アルキルヘテロアリール」基は、1個以上のアルキル基で置換された本明細書において定義されたヘテロアリール基である。定義C~C20アルキルヘテロアリール基は、ヘテロアリール環系およびアルキル基中に合計6~20個の原子を有するアルキルヘテロアリールについて本明細書において定義された最も広い範囲を含み、独立して好ましくは、C~Cアルキル基、より好ましくはC~Cアルキル基である。好ましくは、アルキルヘテロアルキルはC~Cアルキルヘテロアリールである。例として、2-メチル-ピリジル(-CNH-CH)、2-エチル-ピリジル、2,3-ジメチル-ピリジルまたは2-メチル-3-エチル-ピリジル等のC~C-アルキル-C-ヘテロアリールが挙げられる。
【0055】
本発明において「アルキルカルボニル」は、直鎖状または分岐状アルキル-C(=O)であり、好ましくは、メチルカルボニル、エチルカルボニル、n-プロピルカルボニル、イソプロピルカルボニル、sec-ブチルカルボニルおよびtert-ブチルカルボニル等の2~7個の炭素原子を有する(-C(=O)-C~C-アルキル)。好ましいアルキルカルボニルは、1~4個の炭素原子を有する(C~C-アルキル-C(=O))。
【0056】
本発明において「アルキルアルデヒド」は、C(=O)H基で置換された直鎖状または分岐状アルキル(-アルキル-CH(=O))であり、好ましくは2~7個の炭素原子を有する(-C~C-アルキル-CH(=O))。好ましいアルキルカルボニルは、2~4個の炭素原子(-C~C-アルキル-CH(=O))を有する。
【0057】
本発明において「アミノアルキル」、「アルキルアミノアルキル」(第2級アミン)および「アミノカルボニルアルキル」は、それぞれアミノ(-NH)、アミノアルキル(-NHアルキル)および(-C(=O)-NH)、それぞれ置換したアルキレン鎖を指す。好ましくは、3つの列挙されたアミノ置換基のアルキルは、C~Cアルキル、より好ましくはC~Cアルキルであり、例えば、Cアルキルアミノは-CH-NHを指し、C-アルキルアミノ-C-アルキルは-CH-NH-CHを指し、かつC-アルキルカルボニルアミノは-CH-C(=O)-NHを指す。
【0058】
本明細書における「置換されていてもよい」基は、ヒドロキシ、ニトロ、アミノ、ハロゲン、C~Cアルコキシ、シアノ、ヒドロキシカルボニル、C~Cアルコキシカルボニル、C~Cアルキルカルバモイル、C~Cシクロアルキルカルバモイルおよびフェニルからなる群から独立して選択された1、2、3、4、5、好ましくは1または2の置換基で置換される。
【0059】
当業者は、本願で使用される「一つの(a)」および「一つの(an)」という用語は、状況により、「一つの(one (1))」「一つ以上の(one (1) or more)」または「少なくとも一つの(at least one (1))」を意味してもよいことを承知している。
【0060】
本明細書に含まれていないのは、自然法則に反し、当業者が自らの専門知識に基づいて除外するであろう化学構造および態様の組合せである。例えば、3個以上の隣接した酸素原子を有する環状構造は除外される。
【0061】
本明細書において使用される「中間体」は、本発明の工程において発生し、かつさらなる化学的加工のために調製され、かつ別の物質に変換されるためにそこで消費されるかまたは使用される物質を指す。中間体は、しばしば単離され中間的に保管され得るかまたは続く反応段階で事前に単離されることなく使用される。用語「中間体」は、多段階反応(段階的反応)で一時的に発生する一般的に不安定および短命な中間体をも含み、ごく僅かな反応のエネルギープロファイルが割り当てられる。
【0062】
本発明の化合物は、任意の異なる可能な異性体特に立体異性体(例えば、EおよびZ異性体、トレオおよびエリトロ異性体、および光学異性体)もよいが、もし適切であれば互変異性体、の混合物として存在していてもよい。EおよびZ異性体の両方とも、記載され請求され、同様にトレオおよびエリトロ異性体、および同様に光学異性体、これらの異性体の任意の混合物、および同様に可能な互変異性体も記載され請求される。
【0063】
以下において、本発明および本発明の多様な態様がより詳細に記載されている。当業者にとって全ての態様は、単独でまたは組み合わせて存在しうることが明白である。
【0064】
驚くべきことに、一般式(I):
【化24】
[式中、Rは、水素、ハロゲン化されていてもよいC~Cアルキルまたはハロゲン化されていてもよいシクロプロピル、好ましくはメチルである。]
の5-フルオロ-1Hーピラゾールは、工程1においてヘキサフルオロプロペン(1)をパーフルオロ-4-メチル-2-ペンテン(中間体(2))へ反応させ、工程2において(2)からパーフルオロ-2-メチル-2-ペンテン(中間体(3))へ異性化させ、工程3において中間体(4)に向けて(3)を水および塩基と反応させ、続けて式(5)のヒドラジン類と(4)を反応させる(工程4)ことで、高い純度で、ならびに短くかつ単純な工程で調製することができ、結果として式(I):
【化25】
[式中、Rは、水素、ハロゲン化されていてもよい(C~C)アルキルまたはハロゲン化されていてもよいシクロプロピル、好ましくはメチルを表す。]
の化合物をもたらす。用語「塩基」および「Cat+」は、段落0083~0088において定義されるとおりである。
【0065】
工程1:ヘキサフルオロプロペンの二量体化
【化26】
典型的には、反応は、フッ化物(F)供与体(例えば、MeNF、BuNF、NaF、KHF、KFまたはCsF)等の触媒の存在において実施される。好ましい触媒は、KHF、KFおよびCsF、より好ましくは、KFまたはCsFである。
【0066】
典型的な溶剤は、グリム(式C~CアルキルOCHCHOHまたはベンジルOCHCHOHまたはフェニルOCHCHOHのモノグリコールエーテル等のグリコールエーテル類、式C~CアルキルOCHCHO-C~CアルキルのジアルキルエーテルまたはC~CアルキルOCHCHOCOCHのエステル類、好ましくはジメトキシエタン)、アセトニトリル、DMF(ジメチルホルムアミド)、DMA(ジメチルアセタミド)、N-メチルピロリドン、スルホラン、ベンゾニトリル、ジメトキシエタン、ジエチルエグルキコルジメチルエーテル(diethyleglkykoldimethylether)等の極性溶剤である。反応温度は、10°C~50°C、好ましくは20°C~40°Cの間である。
【0067】
反応時間は、反応規模に依存し、典型的には1分から30時間である。
【0068】
二量体(2)の精製工程および/または工程1後の溶剤の除去または交換を工程2の前に行ってもよいが、工程1および工程2をワンポット(one pot)反応として実行することができる。
【0069】
「ワンポット反応」は、他の記載がない限り、第一反応工程後および第二工程の実行前に中間精製工程がなく、および/または溶剤交換の必要なく実施される2つの反応工程(例えば、工程3および工程4)を指す。
【0070】
本願における「精製工程がない」とは 、蒸発による、反応混合物の溶剤の10%を超えた除去(例えば、低減された圧力および/または加熱下、反応混合物の溶剤とは異なる溶剤中で反応工程から得られた中間体または化合物の結晶化、あるいはクロマトグラフィー)からなる群から選択された精製工程がないことを指す。
【0071】
本願における「溶剤の交換」とは、反応混合物に大部分となる量の異なる種類の溶剤が添加されないことを意味する。「大部分となる量ではない」とは、反応混合物における溶剤の体積に対して50体積%より少ない体積を指す。例えば、200mlの塩化メチレンを含む反応混合物への5mlのアセトニトリルの添加は、たとえ反応混合物の溶剤の50体積%等の反応混合物の溶剤の一部が、例えば相分離によって除去されたとしても溶剤の交換には当たらない。しかし、溶剤としての200mlの塩化メチレンを含む反応混合物へ100mlを超えたアセトニトリル(異なる種類の溶剤)を添加することは、たとえ塩化メチレンがアセトニトリルの添加前に除去されなかったとしても、溶剤の交換とみなされる。例えば異なる種類(例えば、ジクロロメタン)の添加が続く、相分離による第一反応工程後、反応混合物中で第一溶剤(例えば、アセトニトリル)の少なくとも95体積%を除去した場合も溶剤の交換とみなされる。
【0072】
必須ではないが、ワンポット反応は好ましくは同一の反応容器で実施される。
【0073】
工程2:パーフルオロ-4-メチル-2-ペンテン(不活性二量体)からパーフルオロ-2-メチル-2-ペンテンの異性化
【化27】
典型的には、異性化はフッ化物供与体の存在下で実施される。
【0074】
NaF、KF、KHF、AlFまたはCsFを、1種以上の、エチレングリコールジメチルエーテル(ethylenglykoldimethylether)、スルホラン、15-クラウンエーテル-5および18-クラウンエーテル-6、(テトラアルキルアンモニウムフッ化物、二フッ化水素酸塩等(例えば、KHF等のアルカリ二フッ化水素酸塩)塩酸塩または臭化水素)等の第四級アンモニウム塩またはPhPCl、PhPBr、PhPBrまたはPhPHF等のテトラ-C~Cアルキルホスホニウム塩またはテトラフェニルホスホニウム塩を含んでなる補助触媒と組み合わせて用いることができる。
【0075】
好ましいフッ化物供与体は、NaF、KF、KHF、CsF、AlFであり、より好ましくは、KFである。
【0076】
異性化は、通常は25~60°Cの上昇した温度で、通常の圧力で進行するが、反応は、6barまでの圧力下で、かつ60~80℃の温度条件下で実行することができる。
【0077】
典型的には、溶剤は、グリム、アセトニトリル、DMF、DMA、ベンゾニトリル、ジメトキシエタンまたはジエチレングリコールジメチルエーテルあるいはそれらの組合せ等の極性溶剤である。より好ましい溶剤は、アセトニトリル、DMFまたはDMAである。
【0078】
反応時間は通常1時間~10時間であり、例えば2時間~8時間である。
【0079】
好ましい一つの態様において、工程1および工程2における溶剤は同一であり、好ましくはアセトニトリルである。
【0080】
別の好ましい態様において、工程3および工程4は、ワンポット反応として反応させ、工程3および工程4の溶剤は同一であり、好ましくはアセトニトリルまたは塩化メチレン、より好ましくは 塩化メチレンである。
【0081】
中間体(3)の精製工程および/または工程2後の溶剤の交換を工程3の前に行うことができるが、工程1~3または工程2および工程3をワンポット反応として実行できる、言い換えれば、それぞれについて、工程3の実行前に中間体(2)および/または中間体(3)の精製工程なく、かつ/または工程2および工程3を実行する前にまたは工程3を実行する前に溶剤の交換なく実行できる。
【0082】
工程3:水および塩基とのパーフルオロ-2-メチル-2-ペンテン(3)の反応
【化28】
[式中、塩基およびCat+は、下記に定義されるとおりである。]
驚くべきことに第1の工程において、式(3)のフルオロアルケン類を、水および塩基と相互作用させ、続いて形成された式(4)の中間体を式(7)のヒドラジン類と反応させることにより、高収率での唯一またはほぼ唯一の式(I)の異性体ピラゾールの形成に位置選択的に進行することが見出された。
【0083】
反応は、有機塩基および/または無機塩基の存在下で実行される。本明細書において使用される有機塩基は、少なくとも1つのプロトンを結合することができ、正電荷有機イオン(カチオン)をもたらす、有機分子である。例えば、トリエチルアミン等の有機分子は、1個のプロトンと結合できて(有機分子H)イオンをもたらす。また、無機アルカリ金属またはアルカリ土類金属塩は、アルカリまたはアルカリ土類金属が、それぞれ反応混合物中でそのカチオンの形態で存在する。
【0084】
本明細書における用語「Cat」は、正電荷イオン(カチオン)を指すが、ただしカチオンは、単一プロトンではなく、好ましくは正電荷有機イオン(有機分子H)(例えば、プロトン化有機塩基、またはアルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属イオン)である。Catは、1価の正電荷分子、または例えば、アルカリ土類金属イオンの場合、2価の正電荷分子のいずれかを指す。好ましくはCatは、アルカリ金属イオン(HN(メチル)、(HN(エチル)、またはH(N(プロピル)等の1価の正電荷分子である。
【0085】
工程3において使用される典型的な有機塩基類(有機分子)は、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、メチジイソプロピルアミン、N-メチルモルホリン、ピリジン、アルキルピリジン類、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド(trimethylbenzylammonium hydroxide)、テトラブチルアランモニムヒドロキシド(tetrabutylalammonim hydroxide)、ヒューニッヒ塩基(N-エチルジイソプロピルアミン)、DBU(1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデス-7-エン)、DABCO(1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン)、N-ブチルイミダゾール、ベンジルジメチアミン)である。
【0086】
好ましい有機塩基は、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、DBU、DABCO、N-エチルジイソプロピルアミン、N-ブチルイミダゾール、ベンジルジメチアミン、ピリジンまたはピコリンである。特に好ましいのは、トリメチルアミン、トリエチルアミンである。
【0087】
反応を実施するための典型的な無機塩基は、アルカリ金属水酸化物類、ハロゲン化物類、炭酸塩類または炭酸水素塩類、アルカリ土類金属水酸化物類、NaHCO、KCO、NaOH、NaHCO、KF、CsOH、LiOH、CsCO等の炭酸塩類または炭酸水素塩類である。好ましい無機塩基は、KCO、NaHCO、KF、CsCOである。
【0088】
典型的には、Catは、反応において使用される塩基の選択に依存する。好ましくは、Catは、Li、Na、K、Cs、(Nアルキル、(HNアルキルから選択される。最も好ましくは、Catは(HNアルキル)である。(N(アルキル)または(HN(アルキル)に関して、用語(Nアルキル、(HNアルキル中の用語アルキルがN(メチル)、N(エチル)、またはN(プロピル)等の(C~C20)アルキル、好ましくは(C~C10)アルキル、より好ましくは(C~C)アルキルを指す。
【0089】
式(4)の好ましい化合物は、化合物(4a)および(4b):
【化29】
の化合物である。
【0090】
工程3における典型的な溶剤は、ヘキサン類(例えば、シクロヘキサンまたはメチルシクロヘキサン)、ハロアルカン類(例えば、ジクロロメタン、ジクロルエタン)等のアルカン類、およびグリム、アセトニトリル、DMF、DMA、ベンゾニトリル、ジメトキシエタン、ジエチルエグルキコルジメチルエーテル等の極性溶剤である。好ましい溶剤は、ジクロロメタンおよびアセトニトリルである。
【0091】
本発明のさらに好ましい態様によると、反応において使用される水の量は、式(3)の化合物の1当量あたり、1~10当量、好ましくは1~7当量、より好ましくは1~5当量である。
【0092】
塩基の量は、式(3)の化合物の1当量あたり、1~7当量、好ましくは1.5~7当量、より好ましくは1.5~5当量である。
【0093】
好ましくは、塩基対水の比は1:1であるか、または塩基は水の量と比較して過剰であっても存在する、例えば、1.5:1または2:1~7:1または好ましくは5:1まで等である。
【0094】
反応温度は、-10~30°Cである。反応時間は決定的ではなく、規模に依存し、通常0.5~2時間である。反応は発熱性である。
【0095】
一般的に、工程3の実行に対する反応時間は、決定的に重要ではなく、とりわけ反応体積、用いられる塩基の特性に依存し得る。好ましくは0.5~5時間、より好ましくは1~3時間である。
【0096】
中間体(4)の精製工程および/または工程3後の溶剤の除去または交換を、工程4の前に行ってもよいが、工程1~4または工程2~4または工程3および工程4をワンポット反応として実行することができる。即ち、工程4を実行する前に二量体(2)および/または中間体(3)および/または中間体(4)の精製工程なく、かつ/または工程4を実行する前に溶剤を除去または交換する必要なく、実行することができる。
【0097】
工程4:式(4)の化合物と式(5)のヒドラジン類との反応
【化30】
[式中、Rは、水素、ハロゲン化されていてもよい(C~C)アルキル、(例えば、ハロゲン化されていてもよいメチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、1-ブチル、2-ブチル、2-メチル-1-プロプ-1-イル(2-methyl-prop-1-yl)または好ましくは2-メチル-2-プロプ-2-イル(2-methyl-prop-2-yl))、またはハロゲン化されていてもよいシクロプロピルであり、好ましくは、Rはメチルである。]
【0098】
化合物(4)が、その異性化および分解を防ぐ条件下で好ましく存在する本発明の実行のためには、例えば相当するケトンの形成によって(例えば酸性化を介して)である。これは典型的には、pHの調節、または化合物(4)を安定化させるための適切な塩基の選択によって確保される。好ましくは、pHは5~12、より好ましくは6~11であり、さらにより好ましくは7以上(8以上等)、最も好ましくは7~10または8~10である。
【0099】
式(4)の化合物および式(5)の化合物の比は、広い範囲内で変動し得、式(4)の化合物の1当量あたり、好ましくは0.9~3.5当量、より好ましくは1~2.5当量、さらにより好ましくは1~1.5当量の(5)である。
【0100】
本発明の更なる態様によると、環化は、-5℃~50℃の範囲の温度で、より好ましくは0℃~30℃の範囲の温度で、最も好ましくは0℃~室温で実行される(例えば、0℃~約20℃、0℃~17℃または0℃~23℃等)。
【0101】
環化(工程4)は、以下から選択される異なる溶剤中で実行され得る。
-ヘキサン類、例えばシクロヘキサンまたはメチルシクロヘキサンのようなアルカン類、
-ハロアルカン類、好ましくはジクロロメタン、ジクロルエタン(dichlorethane)、
-アルコール類、好ましくはメタノール、エタノール、またはイソプロパノール、
-ニトリル類、好ましくはアセトニトリル、またはブチロニトリル、
-アミド類、好ましくはジメチルホルムアミド、またはジメチルアセトアミド、
-ジエチルエーテル、メチルtert.ブチルエーテル、ジメトキシエタン、ジグリムのようなエーテル類、
-ベンゼン、トルエン、ジクロロベンゼン、クロロベンゼン。
【0102】
環化のための特に好ましい溶剤は、ジクロロメタン、ジクロロエタン、アセトニトリル、およびブチロニトリルであり、この反応に最も好ましい溶剤は、ジクロロメタン、アセトニトリル、およびブチロニトリルである。
【0103】
概して、反応時間は決定的に重要ではなく、反応体積に依存し得、好ましくは3~20時間の範囲内、より好ましくは1~5時間の範囲内である。
【0104】
本発明の特に好ましい態様は、ヘキサフルオロプロペンから出発する式(Ia):
【化31】
[式中、式(5)のヒドラジンは、(CH)NHNHである。]
の化合物の調製方法に関する。
【0105】
工程5
工程5において、式(I)の化合物、好ましくは化合物(Ia)は、それぞれ式(6):
【化32】
[式中、Rは、水素、ハロゲン化されていてもよい(C~C)アルキル、またはハロゲン化されていてもよいシクロプロピル、好ましくはメチルである。]
または(6a)のそのCN類似体に変換することができ、
好ましくは、式(6)の化合物は、式(6a):
【化33】
の化合物であり、この変換は、化合物(I)、好ましくは化合物(Ia)をアルカリ性シアン化物(例えば、NaCN、KCN、CsCN、またはCuCN)等のCN-供与体と反応させることによる。
【0106】
典型的な溶剤は、アセトニトリル、DMF、DMA、N-メチルピロリドン(NMP)、スルホラン、ジメトキシエタン、ジグリムである。好ましい溶剤は、アセトニトリル、DMF、またはDMAである。
【0107】
典型的に、この反応のための温度は、30℃~120℃、好ましくは40℃~110℃、より好ましくは60℃超、例えば60℃~120℃、または60℃~100℃などである。
【0108】
概して、反応時間は決定的に重要ではなく、反応体積に依存し得る。好ましくは、反応時間は、2時間~8時間、より好ましくは4~8時間である。
【0109】
工程6
工程6では、式(6)、好ましくは(6a)の化合物は、当該技術分野で既知の加水分解工程に従って、それぞれ式(7):
【化34】
[式中、Rは、水素、ハロゲン化されていてもよいC~Cアルキル、またはハロゲン化されていてもよいシクロプロピル、好ましくはメチルである。]
のカルボン酸類似体、好ましくは式(7a)のカルボン酸類似体に変換され得、
好ましくは、式(7)の化合物は、式(7a):
【化35】
の化合物である。
【0110】
シアノ基(-CN)からカルボキシル基(-COOH)への変換は、概して、酸性または塩基性条件下で実行される。
【0111】
酸性加水分解の場合、鉱酸類、例えばHSO、HCl、HSOCl、HF、HBr、HI、HPOまたは有機酸類、例えばCFCOOH、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸が好ましい。この反応は、触媒、例えばFeCl、AlCl、BF、SbCl、NaHPOの添加により加速され得る。この反応は、同様に、酸の添加を伴わず、水中のみで実行されてもよい。
【0112】
塩基性加水分解は、アルカリ金属水酸化物類、例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、または水酸化カリウム、アルカリ金属炭酸塩類、例えばNaCO,KCO、およびアルカリ金属酢酸塩類、例えばNaOAc、KOAc、LiOAc、およびアルカリ金属アルコキシド類、例えばNaOMe、NaOEt、NaOt-Bu、KOt-Buなどの無機塩基類、ならびにトリアルキルアミン類、アルキルピリジン類、ホスファゼン類、および1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン(DBU)などの有機塩基類の存在下で行われる。無機塩基類、例えばNaOH、KOH、NaCOまたはKCOが好ましい。それぞれ式(7)または(7a)のプロトン化酸性形態を生成するには、以下の酸性化の工程が続く必要がある。
【0113】
典型的に、塩基性加水分解の完了後に酸性化を実行するのに好適な無機酸類は、それぞれ式(7)または(7a)の化合物の脱プロトン化型よりも強力な任意の酸である。鉱酸類、例えばHSO、HCl、HF、HBr、HI、HPO、または有機酸類、例えばCFCOOH、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸が好ましい。この酸性化のための好ましい酸は、HClまたはHSOである。
【0114】
この反応工程は、物質中または溶剤中で実行され得る。溶剤中で反応を実行するのが好ましい。好適な溶剤は、例えば、水、アルコール類(例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、またはブタノールなど)、フッ素原子および塩素原子により置換され得る脂肪族および芳香族炭化水素類、例えばn-ヘキサン、ベンゼン、またはトルエン(例えば塩化メチレン、ジクロロエタン、クロロベンゼン、またはジクロロベンゼンなど)、エーテル類(例えばジエチルエーテル、ジフェニルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、イソプロピルエチルエーテル、ジオキサン、ジグリム、ジメチルグリコール、ジメトキシエタン(DME)、またはTHF)、ニトリル類(例えばメチルニトリル、ブチルニトリル、またはフェニルニトリルなど)、アミド類(ジメチルホルムアミド(DMF)またはN-メチルピロリドン)、あるいはかかる溶剤の混合物からなる群から選択され、水、アセトニトリル、ジクロロメタン、およびアルコール類(エタノール)が特に好ましい。好ましくは、この反応は、水中で実施される。本発明の方法工程は、概して、標準圧力下で実行される。しかしながら、代替的に、真空下または昇圧下での作業(例えば、水性HClを用いたオートクレーブ内での反応)も可能である。
【0115】
反応時間は、バッチサイズおよび温度に従って、1時間~数時間、例えば1時間~30時間、好ましくは3時間~20時間などの範囲内で選択され得る。
【0116】
塩基性加水分解、続いて酸性化の手段による変換が好ましい。
【0117】
本発明の方法工程は、好ましくは20℃~150℃の温度範囲内で、より好ましくは30℃~110℃の温度で、最も好ましくは30℃~80℃で実行される。
【0118】
概して、反応時間は、バッチサイズおよび温度に従って、1時間~数時間、例えば1時間~30時間、好ましくは3時間~20時間などの範囲内で選択され得る。
【0119】
式(II)の化合物
本発明はまた、式(II):
【化36】
[式中、
は、水素、ハロゲン化されていてもよいC~Cアルキル、またはハロゲン化されていてもよいシクロプロピル、好ましくはメチルであり、
は、C-Rであり、
は、水素、フッ素、塩素、臭素、CN、NO、ハロゲン化されていてもよいC~Cアルキル、ハロゲン化されていてもよいC~Cアルコキシ、ハロゲン化されていてもよいC~Cアルキルスルホニル、ハロゲン化されていてもよいC~Cアルキルスルフィニル、またはN-シクロプロピルアミノカルボニル(-C(=O)-NH-シクロプロピル)、好ましくは水素、フッ素、塩素、臭素、CN、NO、メチル、エチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、1-メチルエトキシ、フルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、クロロジフルオロメトキシ、ジクロロフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、2,2,2-トリフルオロエトキシ、2-クロロ-2,2-ジフルオロエトキシ、ペンタフルオロエトキシ、メチルスルホニル、メチルスルフィニル、トリフルオロメチルスルホニル、トリフルオロメチルスルフィニル、またはN-シクロプロピルアミノカルボニル、より好ましくは水素、フッ素、塩素、臭素、CN、NO、メチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、メトキシ、エトキシ、またはペンタフルオロエトキシ、好ましくは水素、フッ素、塩素、臭素、最も好ましくは塩素であり、
は、C-Rまたは窒素であり、
は、水素、メチル、フッ素、または塩素、好ましくは水素であり、
Qは、水素、シアノ、ヒドロキシ、ホルミルであるか、あるいは、ヒドロキシ、ニトロ、アミノ、ハロゲン、C~Cアルコキシ、シアノ、ヒドロキシカルボニル、C~Cアルコキシカルボニル、C~Cアルキルカルバモイル、C~Cシクロアルキルカルバモイルからなる群から独立して選択される1つ、2つ、3つ、4つ、または5つ、好ましくは1つまたは2つ、より好ましくは1つの置換基で置換されていてもよく、かつ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、ヒドロキシカルボニル、C~Cアルキルカルバモイル、C~Cアルキル、C~Cハロアルキル、およびC~Cアルコキシ置換フェニルからなる群から選択される1つ、2つ、または3つの置換基で独立して置換されていてもよい、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルキニル、C~Cシクロアルキル、C~Cヘテロシクロアルキル、C~Cアルコキシ、C~C15アルキルシクロアルキル、C~C15シクロアルキルアルキル、C~Cヒドロキシアルキル、Cアリール-C~Cアルキル、C~Cヘテロアリール-C~Cアルキル、C~Cアミノアルキル、アミノカルボニル-C~Cアルキル、またはC~Cアルキル-アミノ-C~Cアルキルの群分けのうちの1つであり、好ましくは、Qは、C~Cシクロアルキルであるか、または塩素、フッ素、臭素、ヨウ素、シアノ、およびヒドロキシからなる群から選択される少なくとも1つの置換基で置換されたC~Cシクロアルキルであるか、またはCアリール-C~Cアルキルであり、より好ましくはシクロプロピル、1-シアノ-シクロプロピル、またはベンジル(-CH2-C)である。]
の殺虫性化合物、好ましくは式(II’)の殺虫性化合物、より好ましくは式(IIa)の殺虫性化合物を製造する方法に言及する。式(II)の化合物は、例えば、国際公開第2010/051926号から既知である。
好ましくは、式(II)の化合物は、式(II’):
【化37】
[式中、AおよびAならびにQは、式(II)での化合物について定義されたとおりである。]
の化合物である。
【0120】
好ましい一つの実施態様では、式(II)の化合物は、以下の置換基によって定義される化合物(IIa)である。
【表1】
【0121】
式(II)、好ましくは(II’)、より好ましくは(IIa)の化合物を製造するための新しく発明的な方法は、段落0063~0104に記載された工程1~4によって、場合により段落0105~0118に記載された工程5および工程6によって、場合により下記に記載された後続の工程8によって特徴化される。場合により、工程8における化合物(8)は、以下に記載される工程7に示される反応によって生成され得る:
【化38】
[式中、
およびAおよびAおよびQは、式(II)の化合物について記載された意味を有し、
LGは、任意の所望の脱離基、例えばハロゲンまたは無水物である。]。
【0122】
典型的に、式(8)のアミン誘導体は、アミンだけでなくその塩形態(8)Hも指し、式中、Wは、、Cl、Br、J、HSO 、CHCOO、BF 、CHSO 、トルエンスルホン酸、CFCOO-、またはCFSO から選択される:
【化39】
[式中、Wは、、Cl、Br、J、HSO 、CHCOO、BF 、CHSO 、トルエンスルホン酸、CFCOO、またはCFSO から選択される。]。
【0123】
したがって、好ましい一つの実施態様は、工程8の反応に言及し、ここで式(8)の化合物は、その塩形態(8)Hで存在し、式中、Wは、、Cl、Br、J、HSO 、CHCOO、BF 、CHSO 、トルエンスルホン酸、CFCOO、またはCFSO から選択される。
【0124】
もう1つの好ましい実施態様では、式(8)の化合物は、化合物(8a)および/またはその塩(8a’)である:
【化40】
[式中、W(化合物(8a’)の場合)は、F、Cl、Br、J、HSO 、CHCOO、BF 、CHSO 、トルエンスルホン酸、CFCOO、またはCFSO からなる群から選択される。]。
【0125】
工程8
工程8では、本発明によるタイプ(II)の化合物は、好ましくは(II’)の化合物は、より好ましくは(IIa)の化合物は、一般構造(8)のアミン類(またはそれらの塩)を、式(7)のカルボン酸誘導体、好ましくは式(7a)のカルボン酸誘導体の活性型である中間体(7’):
【化41】
[式中、Rは、水素、ハロゲン化されていてもよいC~Cアルキル、またはハロゲン化されていてもよいシクロプロピル、好ましくはメチルである。]
と反応させることによって合成され得る。この反応は、溶剤の有無を問わず実施され得る。この工程では、好適な塩基が同様に使用され得る。
【0126】
-C(=O)LG基内に任意の脱離基LGを有することにより、上記の工程8の反応スキームに示される、式7、好ましくは式(7a)のカルボン酸誘導体の活性型は、a)それぞれ式(7)または(7a)の類似体(式中、COOH基内のOHは、ハロゲンなどの好適な脱離基で置換される)、b)それぞれ式(7)または(7a)の化合物の無水物、あるいは、c)本発明の意味では、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは1-ヒドロキシベンゾトリアゾールなどのカップリング試薬(その存在はそれぞれ式(7)または(7a)の化合物を活性化させる)の存在下の、それぞれ式(7)または(7a)の化合物を包含する。カルボン酸の無水物の好適な脱離基調製、または酸/アミン反応およびかかる化合物の調製のための好適なカップリング試薬は、当業者に認識されている。好ましい脱離基は、カルボン酸塩化物またはフッ化物などのカルボン酸ハロゲン化物である。
【0127】
とりわけ一般構造(7’)によって表される環状カルボン酸ハロゲン化物は、化合物(7)の複素環式カルボン酸を、塩化チオニル、臭化チオニル、塩化ホスホリル、塩化オキサリル、三塩化リンなどのハロゲン化試薬と反応させることにより、平易に調製され得る(Houben-Weyl (1952) vol. VIII, p.463 ff.)。
【0128】
式(7)のアミン誘導体およびそれらの塩は、当該技術分野で既知であるか、市販されているか、または既知の様式で調製され得る(例えば、国際公開第2010/051926号参照)。
【0129】
しかしながら、式(II)、好ましくは(II’)、より好ましくは(IIa)によって表されるカルボキサミド類の合成は、ジシクロヘキシルカルボジイミドなどのカップリング試薬、および1-ヒドロキシベンゾトリアゾールなどの添加剤を使用して実施されてもよい(Konig et al. Chem. Ber. (1970), 788-798)。1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、1,1’-カルボニル-1H-イミダゾール、および同様の化合物などのカップリング試薬を使用することも可能である。
【0130】
この合成方法の実施に使用されるカップリング試薬は、エステルまたはアミド結合の調製に好適であるもの全てである(例えば、Bodansky et al., Peptide Synthesis, 2nd ed., Wiley & Sons, New York, 1976; Gross, Meienhofer, The Peptide: Analysis, Synthesis, Biology (Academic Press, New York, 1979参照)。
【0131】
さらに、混合無水物も、(II)、好ましくは(II’)、より好ましくは(IIa)の合成に使用され得る(例えば、e.g., Anderson et al, J. Am. Chem. Soc (1967), 5012-5017参照)。この方法では、例えば、イソブチルクロロ炭酸塩、イソプロピルクロロ炭酸塩などの様々なクロロ炭酸塩類を使用することが可能である。同様に、塩化ジエチルアセチル、塩化トリメチルアセチルなどがこれに使用され得る。
【0132】
概して、工程8は、場合により/適切な場合、好適な希釈剤/溶剤の存在下で、かつ、場合により/適切な場合、好適な塩基性反応補助剤の存在下で実施され得る。
【0133】
本発明による方法は、希釈剤/溶剤の存在下で実行されてもよい。この目的のために有用な希釈剤としては、全ての不活性有機溶剤、好ましくは脂肪族、脂環式、もしくは芳香族炭化水素類、例えば石油エーテル、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、またはデカリン;ハロゲン化炭化水素類、例えばクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン、ジクロロエタン、またはトリクロロエタン;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルt-ブチルエーテル、メチルt-アミルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、またはアニソールなどのエーテル類;アセトン、ブタノン、メチルイソブチルケトン、またはシクロヘキサノンなどのケトン類;アセトニトリル、プロピオニトリル、n-もしくはi-ブチロニトリル、またはベンゾニトリルなどのニトリル類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルホルムアニリド、N-メチルピロリドン、またはヘキサメチルホスホラミドなどのアミド類が挙げられ、より好ましくは、クロロベンゼンおよびトルエンが使用される。
【0134】
好ましい希釈剤は、脂肪族、脂環式、または芳香族炭化水素類、例えば石油エーテル、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、またはデカリン、およびハロゲン化炭化水素類、例えばクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン、ジクロロエタン、またはトリクロロエタン、例えばトルエンまたはクロルベンゼン(chlorbenzene)である。
【0135】
使用され得る溶剤は、反応に有害に影響しない任意の溶剤、例えば水などである。ベンゼンまたはトルエンなどの芳香族炭化水素類、ジクロロメタン、クロロホルム、またはテトラクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、または1,2-ジメトキシエタンなどの開環または環状エーテル類、酢酸エチルおよび酢酸ブチルなどのエステル類、例えばアセトン、メチルイソブチルケトン、およびシクロヘキサノンなどのケトン類、ジメチルホルムアミドおよびジメチルアセトアミドなどのアミド類、アセトニトリルなどのニトリル類、ならびに1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンなどの他の不活性溶剤が好適であり、溶剤は、単独で、または2つ以上の組み合わせで使用され得る。
【0136】
使用される塩基(塩基性反応補助剤)は、トリエチルアミン、エチルジイソプロピルアミン、トリ-n-ブチルアミン、ピリジン、および4-ジメチルアミノピリジンなどの有機塩基などの酸受容体であり得、さらに、例えば以下の塩基:例えば水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物類、炭酸水素ナトリウムおよび炭酸カリウムなどの炭酸塩類、リン酸水素二カリウムおよびリン酸二ナトリウムなどのリン酸塩類、水素化ナトリウムなどのアルカリ金属水素化物類、ナトリウムメタノレートおよびナトリウムエタノレートなどのアルカリ金属アルコラート類が使用され得る。これらの塩基は、(8)および(7’)に基づいて、0.01~5.0モル当量の比で使用され得る。さらに、シアン化銀(I)も塩基および活性化剤として使用され得る(例えば、Journal of Organic Chemistry. 1992, 57, 4394-4400; Journal of Medicina Chemistry 1992, 35, 3905-3918; Journal of Organic Chemistry 2003, 68, 1843-1851参照)。
【0137】
しかしながら、本発明の好ましい一つの実施態様では、工程8は、酸受容体の非存在下で実施され、脱離基は、ClまたはF、より好ましくはClである。
【0138】
本発明の文脈において、「酸受容体の非存在下」とは、アミン反応体(8)以外の酸受容体の非存在下、すなわち、換言すれば、「追加の酸受容体の非存在下を意味し、ここで「追加の」とは、反応の一部である式(8)のアミン誘導体(またはその塩(8’)に加えてを意味する。本発明の意味での「追加の酸受容体」は、本発明によるアミン化合物、または、反応(脱離基アニオンに水素カチオンを加える)の間に形成される強酸を不溶性塩および弱酸に変換することができる、塩などの形成された酸の強度を低減させる化合物、例えばシアン化銀(AgCN)に加えての塩基であり得る(例えば、形成されるHCl(脱離基が塩素の場合)は、AgCNと反応して不溶性AgClおよび弱塩基HCNとなる)。
【0139】
驚くべきことに、式(II)のカルボキサミド類は、高い純度および選択性で良好な収率を有しながら酸受容体の非存在下で調製され得る。本発明による方法のさらなる利点は、酸受容体が必要とされないため後処理がより平易であることである。これは廃水をほとんどまたは全く生じさせず、同じ反応槽内に脂肪族アルコールを添加することによる事前単離を伴わないことより容易な精製方法であり、本方法は、より高い濃度で実施し得る。酸受容体の存在下の以前の条件が概して90%未満に近い純度をもたらすのに対し、このように得られる生成物は、より少ない試薬および労力だけで、90%に勝る、またはさらには100%に近い驚くべき純度で、得られている。本発明による方法は、より経済的に実行可能となる。
【0140】
したがって、好ましい一つの実施態様は、式(IIa)の化合物を生成するための反応:
【化42】
[式中、脱離基LGは、F、Cl、Br、またはI、好ましくはFまたはClを指す。]
に言及し、この反応は、化合物(8a)に加えて、酸受容体の非存在下におけるものである。
【0141】
好適な反応温度は、-20℃から最大で特定の溶剤の沸点までの範囲内である。概して、反応温度は、70℃~150℃、好ましくは80℃~140℃、例えば100℃または約100℃、例えば80℃~130℃または80℃~120℃などである。
【0142】
反応時間は、体積、反応体、溶剤、および反応温度の選択に依存して、1分~96時間である。
【0143】
工程8の目的のために、ピラゾール-カルボキサミド誘導体(7’)1モル当たり、概して、0.8~1.5mol、好ましくは0.8~1.4mol、0.9~1.4mol、等モル量、または1~1.2molの式(8)のアミン誘導体もしくはその塩、好ましくは(8a)または(8a’)が使用される。
【0144】
好ましい一つの実施態様は、それぞれ化合物(8a)またはその塩(8a’)と、化合物(7’)との反応に言及し、式中、XはClであり、化合物(8a)(またはその塩(8a’))と(7’)(式中、XはClである)との比は、1:1~1:1.3、好ましくは1:1~1:2、例えば1:1~1:1など、またはさらには1:1である。
【0145】
体積、反応体、溶剤、および反応温度の選択に依存して、反応時間は、1分~96時間で変動し得る。典型的に、反応時間は最大15時間であるが、この反応は、完全変換の場合、さらに早く終了してもよい。5~10時間の反応時間が好ましい。
【0146】
工程8の反応は、概して、標準圧力下で実行される。しかしながら、昇圧または減圧下(一般的に0.1バール~10バール)で作業することが可能である。反応体積からHClを除去するために、減圧下で作業することが好ましい。
【0147】
工程8の反応は、概して、大気圧下で実行されてもよい。しかしながら、アルゴンまたは窒素などの保護ガス下で本方法を実施するのが好ましい。
【0148】
さらに、当業者であれば、式(7’)の化合物を式(8*)の化合物と反応させることも可能であることを理解するであろう(式(8)の化合物の-C(=O)-NH-Q部分は、式(8*)の化合物中のC(=O)-OHまたはC(=O)-PG部分で置換され、PGは、カルボキシル基の任意の保護基を表す(例えばメチルエステル、すなわち、PGは-O-メチルを表す))。式(II)の化合物に至るための、化合物(8*)との反応から得られる化合物(II*)のカルボキシル部分の脱保護、および/またはカルボキシル部分の活性化、および/アミンとのカップリングは、当業者に周知である。一般構造(II*)の化合物は、一般構造(7)のアミンを、一般構造(8*)の活性化カルボン酸誘導体と反応させることによって合成され得る。これに関して、上に記載された(II)の合成と同じ条件が、溶剤、反応条件、反応時間、および試薬の選択に当てはまる。
【0149】
工程7
一般構造(8)の化合物は、一般構造(10)のアミンを、一般構造(9)の活性化カルボン酸誘導体と反応させることによって合成され得る。これに関して、上の工程8に記載された(II)の合成、好ましくは(II’)の合成、より好ましくは(IIa)の合成と同じ条件が、溶剤、反応条件、反応時間、および試薬の選択に当てはまる。
【0150】
式(III)の化合物
本発明はまた、式(III):
【化43】
[式中、
は、水素、ハロゲン化されていてもよいC~Cアルキル、またはハロゲン化されていてもよいシクロプロピル、好ましくはメチルであり、
は、C-Rであり、
は、水素、フッ素、塩素、臭素、CN、NO、ハロゲン化されていてもよいC~Cアルキル、ハロゲン化されていてもよいC~Cアルコキシ、ハロゲン化されていてもよいC~Cアルキルスルホニル、ハロゲン化されていてもよいC~Cアルキルスルフィニル、またはN-シクロプロピルアミノカルボニル(-C(=O)-NH-シクロプロピル)、好ましくは水素、フッ素、塩素、臭素、CN、NO、メチル、エチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、1-メチルエトキシ、フルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、クロロジフルオロメトキシ、ジクロロフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、2,2,2-トリフルオロエトキシ、2-クロロ-2,2-ジフルオロエトキシ、ペンタフルオロエトキシ、メチルスルホニル、メチルスルフィニル、トリフルオロメチルスルホニル、トリフルオロメチルスルフィニル、またはN-シクロプロピルアミノカルボニル、より好ましくは水素、フッ素、塩素、臭素、CN、NO、メチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、メトキシ、エトキシ、またはペンタフルオロエトキシ、好ましくは水素、フッ素、塩素、臭素、最も好ましくは塩素であり、
は、C-Rまたは窒素であり、
は、水素、メチル、フッ素、または塩素、好ましくは水素であり、
Qは、水素、シアノ、ヒドロキシ、ホルミルであるか、あるいは、ヒドロキシ、ニトロ、アミノ、ハロゲン、C~Cアルコキシ、シアノ、ヒドロキシカルボニル、C~Cアルコキシカルボニル、C~Cアルキルカルバモイル、C~Cシクロアルキルカルバモイルからなる群から独立して選択される1つ、2つ、3つ、4つ、または5つ、好ましくは1つまたは2つ、より好ましくは1つの置換基で置換されていてもよく、かつ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、ヒドロキシカルボニル、C~Cアルキルカルバモイル、C~Cアルキル、C~Cハロアルキル、およびC~Cアルコキシ置換フェニルからなる群から選択される1つ、2つ、または3つの置換基で独立して置換されていてもよい、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルキニル、C~Cシクロアルキル、C~Cヘテロシクロアルキル、C~Cアルコキシ、C~C15アルキルシクロアルキル、C~C15シクロアルキルアルキル、C~Cヒドロキシアルキル、Cアリール-C~Cアルキル、C~Cヘテロアリール-C~Cアルキル、C~Cアミノアルキル、アミノカルボニル-C~Cアルキル、またはC~Cアルキル-アミノ-C~Cアルキルの群分けのうちの1つであり、好ましくは、Qは、C~Cシクロアルキルであるか、または塩素、フッ素、臭素、ヨウ素、シアノ、およびヒドロキシからなる群から選択される少なくとも1つの置換基で置換されたC~Cシクロアルキルであるか、またはCアリール-C~Cアルキルであり、より好ましくはシクロプロピル、1-シアノ-シクロプロピル、またはベンジル(-CH-C)であり、
Tは、以下に列挙される5員複素芳香族T1~T8:
【化44】
[式中、
ピラゾールヘッド基との結合はアスタリスク*で記され、
は、互いに独立して、ハロゲン、シアノ、ニトロ、アミノ、または置換されていてもよいC~Cアルキル、C~Cアルキルオキシ、C~Cアルキルカルボニル、C~Cアルキルスルファニル、C~Cアルキルスルフィニル、C~Cアルキルスルホニルを表し、
nは、0~2、好ましくは0の値を表し、ただし、T5、T6、およびT8においてnが0または1であることを条件とし、かつ、T7においてnが0であることを条件とする。]
のうちの1つを表す。]
の殺虫性化合物、または式(III’)の殺虫性化合物を製造する方法に言及する。
好ましくは、式(III)の化合物は、式(III’):
【化45】
[式中、AおよびAならびにTおよびQは、式(III)の化合物について上に記載された意味を有する。]
の化合物である。
【0151】
明確にするために、本明細書に記載されるいずれかの式のnが0(ゼロ)である場合、自由原子価を有する炭素環原子は、水素で置換される。
【0152】
好ましい一つの実施態様では、式(III)の化合物は、以下の置換基によって定義される化合物(IIIa)である。
【表2】
【0153】
式(III)の化合物、好ましくは(III’)の化合物、より好ましくは(IIIa)の化合物を調製するための新しく発明的な方法は、段落0063~0104に記載された工程1~4によって特徴化され、さらに後続の工程9および工程10:
【化46】
によって特徴化されていてもよい。
【0154】
ラジカルA、A、R、およびQは、化合物(III)について記載された意味を有する。好ましくは、Rはメチルである。E~E、炭素、および窒素の5員環は、Tで定義された5員複素環を表す。Mがボロン酸、ボロン酸エステル、またはトリフルオロボロネートを表す場合、Uは、臭素、ヨウ素、またはトリフレートを表す。Mが臭素、ヨウ素、またはトリフレートを表す場合、Uは、ボロン酸、ボロン酸エステル、またはトリフルオロボロネートを表す。
【0155】
工程9
一般構造(12)の化合物は、式(I)、好ましくは(Ia)、および(11)の適切な出発材料から、例えば、芳香族環におけるFの求核置換(国際公開第2007-107470号、Sakya et al., Tetrahedron Letters 2003, 44, 7629-7632)により、文献から既知である方法によって調製され得る。
【0156】
工程10
式(III)または(III’)の化合物、好ましくは化合物(IIIa)は、反応相手(12)および(13)を用いるパラジウム触媒反応を使用することによって調製され得る(例えば、国際公開第2005/040110号または国際公開第2009/089508号参照)。一般構造(13)の化合物は、市販されているか、または当業者に既知の方法によって調製され得るかのいずれかである。
【0157】
さらに、式(12)の化合物を式(13*)の化合物と反応させることが代替的に可能であることは当業者に認識されている(式(13)の化合物の-C(=O)-NH-Q部分は、式(13*)の化合物中のC(=O)-OHまたはC(=O)-PG部分で置換され、PGは、カルボキシル基の任意の保護基を表す(例えばメチルエステルなどのアルキルエステル、すなわち、PGは-O-メチルを表す))。式(III)の化合物に至るための、化合物(13*)との反応から得られる化合物(III*)のカルボキシル部分の脱保護、および/またはカルボキシル部分の活性化、および/アミンとのカップリングは、当業者に周知である。
【0158】
要約すると、一般構造(III)の化合物は、一般構造(10)のアミンを、一般構造(III*)の活性化カルボン酸誘導体と反応させることによって合成され得る。これに関して、上の工程8に記載された(II)の合成と同じ条件が、溶剤、反応条件、反応時間、および試薬の選択に当てはまる。
【0159】
式(III’’)の化合物
別の好ましい実施態様では、本発明は、例えば、国際公開第2012/107434号から既知の、式(III’’):
【化47】
[式中、R、R、n、A、A、およびQは、好ましくは化合物(III)について定義されたとおりである。]
の化合物、好ましくは式(III’’’)の化合物を製造する方法に言及し、
好ましくは、式(III’’)の化合物は、式(III’’’):
【化48】
[式中、R、n、A、A、およびQは、好ましくは式(III)の化合物について定義されたとおりであり、nは0である。]
の化合物である。
【0160】
好ましい一つの実施態様では、式(III’’’)の化合物は、以下の置換基によって定義される化合物(IIIb)である。
【表3】
【0161】
式(III’’)の化合物、好ましくは(III’’’)の化合物、より好ましくは(IIIb)の化合物を調製するための方法は、段落0063~0104に記載された工程1~4によって特徴化され、さらに、段落0153~0158に記載された後続の工程9および10によって特徴化されていてもよく、または、さらに後続の工程11および12によって特徴化されていてもよい。工程11および12は、当該技術分野で既知である(例えば、国際公開第2012/107434号参照)。
【0162】
工程11
工程11では、式(I)、好ましくは式(Ia)の化合物は、それぞれ、式(14):
【化49】
[式中、Rは、水素、ハロゲン化されていてもよいC~Cアルキル、またはハロゲン化されていてもよいシクロプロピル、好ましくはメチルである。]
または(14a)のアジド類似体に変換され得、
好ましくは、式(14)の化合物は、化合物(14a):
【化50】
の化合物であり、この変換は、化合物(I)、好ましくは化合物(Ia)を、アルカリ金属アジド(例えば、NaN)のようなアジド供与体と反応させることによる。
【0163】
好ましくは、この反応は、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸エチル(EtOAc)、アセトン、ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトビトリル(acetobitrile)、またはジメチルスルホキシド(DMSO)などの極性非プロトン性溶剤中で実施される。好ましい溶剤の1つは、DMSOである。
【0164】
典型的に、反応温度は、0℃~60℃、好ましくは10℃~30℃、より好ましくは20℃~30℃である。
【0165】
反応時間は、とりわけ反応体積に依存し得、通常0.5時間~30時間である。
【0166】
工程12
工程12では、式(14)、好ましくは式(14a)の中間体は、式(15)の中間体と反応して、式(III’’*)の中間体、または好ましくは式(III’’’*)の化合物をもたらし、R1は、それぞれメチルである:
【化51】
[式中、
、R、AおよびAは、化合物(III)について定義されたとおりであり、
nは、0または1であり、
PGは、C~Cアルキル(例えば、メチル)などのカルボキシル基の任意の保護基である。]。
好ましくは、式(III’’*)の化合物中のRは、メチル(式(III’’’*)の化合物)である。より好ましくは、式(III’’*)中のRはメチルであり、式(III’’*)中のnは0である。
【0167】
式(15)の化合物は、市販されているか、または当該技術分野で既知の方法に従って調製され得る。
【0168】
典型的に、工程12の反応のための溶剤は、水、ギ酸、n-ブタノール、イソプロパノール、ニトロメタン、エタノール、メタノール、酢酸、またはこれらの組み合わせなどの極性プロトン性溶剤である。好ましくは、溶剤は、n-ブタノール、イソプロパノール、エタノール、水、またはこれらの組み合わせである。
【0169】
この反応は、硫酸銅またはヨウ化銅(I)などの銅または銅触媒の存在下で、場合によりN-エチルジイソプロピルアミンなどの塩基の存在下で実施される。しかしながら、他の有機塩基類も好適である。Cu(II)触媒の場合、アスコルビン酸ナトリウムなどの還元剤が使用され得る。アミン塩などのCu(0)触媒の場合、酸化剤が使用され得る(例えば、Angewandte Chemie, International Edition (2009), 48(27), 4900-4908および引用文献、Lutz., Angew. Chem. Int. Ed. 2008, 47, 2182 - 2184および引用文献、ならびにBock et al., Eur. J. Org. Chem.(2006), 51-68および引用文献を参照されたい)。
【0170】
式(III’’*)の化合物から出発して、式(III)、(III’)、(III’’)、(III’’’)、(IIIb)、(III’’’’)、(IV)、または(IV’)の化合物が、当該技術分野で既知の方法に従って容易に調製され得る(例えば、国際公開第2012/107434号参照)。
【0171】
工程13
式(III’’’’):
【化52】
[式中、R、R、n、AおよびAは、化合物(III)について定義されたとおりであり、好ましくは、R1はメチルであり、nは0である。]
の化合物は、O-PGはC~Cアルコキシである式(III’’*)の化合物の反応によって、加水分解を介して調製され得る。例えば、-O-PGがメトキシまたはエトキシである場合、加水分解は、水および塩基、例えば水酸化カリウムまたは水酸化リチウムなどを用いて、例えばテトラヒドロフランまたはメタノールなどの溶剤の非存在下または存在下で行われ得る。Rが、例えば、tert-ブトキシである場合、加水分解は、トリフルオロ酢酸または塩酸などの酸の存在下で行われる。この反応は、-120℃~130℃、好ましくは-100℃~100℃の温度で実施される。
【0172】
一般構造(III)の化合物は、一般構造(10)のアミンと、一般構造(III’’’’)の活性化カルボン酸誘導体と反応させることによって合成され得る。これに関して、上の工程8に記載された(II)の合成と同じ条件が、溶剤、反応条件、反応時間、および試薬の選択に当てはまる。
【0173】
式(IV)の化合物
本発明の一つの態様は、式(IV):
【化53】
[式中、
は、水素、ハロゲン化されていてもよいC~Cアルキル、またはハロゲン化されていてもよいシクロプロピル、好ましくはメチルであり、
は、C-Rであり、
は、水素、フッ素、塩素、臭素、CN、NO、ハロゲン化されていてもよいC~Cアルキル、ハロゲン化されていてもよいC~Cアルコキシ、ハロゲン化されていてもよいC~Cアルキルスルホニル、ハロゲン化されていてもよいC~Cアルキルスルフィニル、またはN-シクロプロピルアミノカルボニル(-C(=O)-NH-シクロプロピル)、好ましくは水素、フッ素、塩素、臭素、CN、NO、メチル、エチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、1-メチルエトキシ、フルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、クロロジフルオロメトキシ、ジクロロフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、2,2,2-トリフルオロエトキシ、2-クロロ-2,2-ジフルオロエトキシ、ペンタフルオロエトキシ、メチルスルホニル、メチルスルフィニル、トリフルオロメチルスルホニル、トリフルオロメチルスルフィニル、またはNシクロプロピルアミノカルボニル、より好ましくは水素、フッ素、塩素、臭素、CN、NO、メチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、メトキシ、エトキシ、またはペンタフルオロエトキシ、好ましくは水素、フッ素、塩素、臭素、最も好ましくは塩素であり、
は、C-Rまたは窒素であり、
は、水素、メチル、フッ素、または塩素、好ましくは水素であり、
Tは、以下に列挙される5員複素芳香族T1~T9:
【化54】
または
【化55】
[式中、
ピラゾールヘッド基との結合はアスタリスク*で記され、
は、互いに独立して、ハロゲン、シアノ、ニトロ、アミノ、または置換されていてもよいC~Cアルキル、C~Cアルキルオキシ、C~Cアルキルカルボニル、C~Cアルキルスルファニル、C~Cアルキルスルフィニル、C~Cアルキルスルホニルを表し、
nは、0~2、好ましくは0の値を表し、ただし、T5、T6、およびT8においてnが0または1であることを条件とし、かつ、T7においてnが0であることを条件とする。]
のうちの1つを表し、
Qは、水素、シアノ、ヒドロキシ、ホルミルであるか、あるいは、ヒドロキシ、ニトロ、アミノ、ハロゲン、C~Cアルコキシ、シアノ、ヒドロキシカルボニル、C~Cアルコキシカルボニル、C~Cアルキルカルバモイル、C~Cシクロアルキルカルバモイルからなる群から独立して選択される1つ、2つ、3つ、4つ、または5つ、好ましくは1つまたは2つ、より好ましくは1つの置換基で置換されていてもよく、かつ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、ヒドロキシカルボニル、C~Cアルキルカルバモイル、C~Cアルキル、C~Cハロアルキル、およびC~Cアルコキシ置換フェニルからなる群から選択される1つ、2つ、または3つの置換基で独立して置換されていてもよい、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルキニル、C~Cシクロアルキル、C~Cヘテロシクロアルキル、C~Cアルコキシ、C~C15アルキルシクロアルキル、C~C15シクロアルキルアルキル、C~Cヒドロキシアルキル、Cアリール-C~Cアルキル、C~Cヘテロアリール-C~Cアルキル、C~Cアミノアルキル、アミノカルボニル-C~Cアルキル、またはC~Cアルキル-アミノ-C~Cアルキルの群分けのうちの1つであり、好ましくは、Qは、C~Cシクロアルキルであるか、または塩素、フッ素、臭素、ヨウ素、シアノ、およびヒドロキシからなる群から選択される少なくとも1つの置換基で置換されたC~Cシクロアルキルであるか、またはCアリール-C~Cアルキルであり、より好ましくはシクロプロピル、1-シアノ-シクロプロピル、またはベンジル(-CH-C)である。]
の化合物、好ましくは式(IV’)の化合物を製造する方法であって、
好ましくは、式(IV)の化合物は、式(IV’):
【化56】
[式中、T、A、A、およびQは、式(IV)の化合物について定義されたとおりであり、好ましくは、TはT3、T8、またはT9から選択される。]
の化合物であり、
-工程1において、ヘキサフルオロプロペン(1):
【化57】
をその二量体パーフルオロ-4-メチル-2-ペンテン(2):
【化58】
を形成するための触媒の存在下で反応させる工程、
-工程2において、(2)をパーフルオロ-2-メチル-2-ペンテン(3):
【化59】
へ異性化する工程、
-工程3において、水と塩基で中間体(4):
【化60】
へ反応させる工程、
[式中、Catは、正電荷有機イオン、アルカリ金属カチオンまたはアルカリ土類金属カチオンを指す。]
-工程4において、式(4)の化合物と式(5):
【化61】
[式中、Rは、式(I)の化合物:
【化62】
を調製するために、ハロゲン化されていてもよい(C~C)アルキル、またはハロゲン化されていてもよいシクロプロピル、好ましくはメチルである。]
のヒドラジンを反応させる工程、を含んでなる、方法に言及する。
【0174】
好ましい一つの態様は、本明細書に開示されるRが存在する全ての式中のRがメチルを表す、化合物(IV)を製造する方法に言及する。
【0175】
別の好ましい態様は、本明細書に開示されるnが存在する全ての式中のnが0を表す、化合物(IV)を製造する方法に言及する。
【0176】
別の好ましい態様は、本明細書に開示されるAが存在する全ての式中のAがC-Rを表し、Rが水素、フッ素、塩素、または臭素を表し、最も好ましくはRが塩素を表す、化合物(IV)を製造する方法に言及する。
【0177】
別の好ましい態様は、本明細書に開示されるAが存在する全ての式中のAがC-Rを表し、Rが水素を表す、化合物(IV)を製造する方法に言及する。
【0178】
別の好ましい態様は、式(IV)、および本明細書に開示されるTが存在する全てのさらなる式中のTがT3、T8、またはT9を表す、化合物(IV)の調製を製造する方法に言及する。
【0179】
別の好ましい態様は、本明細書に開示されるQが存在する全ての式中のQが、シアノで置換されていてもよいC~CシクロアルキルまたはCアリール-C~Cアルキルを表し、さらにより好ましくは、Qが、シアノで置換されていてもよいCシクロアルキルまたはベンジルを表し、さらにより好ましくは、Qが、シアノで置換されたシクロプロピル(例えば、1-シアノ-シクロプロピル)またはベンジルを表す、化合物(IV)を製造する方法に言及する。
【0180】
別の好ましい態様は、本明細書に開示されるRが存在する全ての式中のRがメチルを表し、本明細書に開示されるnが存在する全ての式中のnが0を表し、本明細書に開示されるAが存在する全ての式中のAがC-Clを表し、本明細書に開示されるAが存在する全ての式中のAがC-Hを表し、式(IV)、および本明細書に開示されるTが存在する全てのさらなる式中のTが、T3、T8、またはT9を表し、本明細書に開示されるQが存在する全ての式中のQが、シアノで置換されていてもよいC~CシクロアルキルまたはCアリール-C~Cアルキルを表す、化合物(IV)を製造する方法に言及する。
【0181】
別の好ましい態様は、本明細書に開示されるRが存在する全ての式中のRがメチルを表し、本明細書に開示されるTが存在する全ての式中のTが、T3、T8、またはT9を表し、本明細書に開示されるnが存在する全ての式中のnが0を表し、本明細書に開示されるAが存在する全ての式中のAがC-Clを表し、本明細書に開示されるAが存在する全ての式中のAがC-Hを表し、本明細書に開示されるQが存在する全ての式中のQが、シアノで置換されたシクロプロピル(例えば、1-シアノ-シクロプロピル)またはベンジルを表す、化合物(IV)を製造する方法に言及する。
【0182】
本発明の別の態様は、段落0063~0104に記載された工程1~4を含んでなる、化合物(II)を製造する方法に言及する。
【0183】
本発明の一つの態様は、式(IV)の化合物が化合物(IIa)であり、段落0063~0104に記載された工程1~4を含んでなる、化合物(IV)を製造する方法に言及する。
【0184】
好ましい態様において、式(IV)の化合物が化合物(IIa)である、化合物(IV)を製造する方法は、段落0063~0104に記載された工程1~4および段落0105~0118に記載された工程5および工程6を含んでなる。
【0185】
別の好ましい態様において、式(IV)の化合物が化合物(IIa)である、化合物(IV)を製造する方法は、段落0063~0104に記載された工程1~4および段落0105~0118に記載された工程5および工程6、ならびに段落0125~0148に記載された工程8を含んでなる。
【0186】
別の好ましい態様において、式(IV)の化合物が化合物(IIa)である、化合物(IV)を製造する方法は、段落0063~0104に記載された工程1~4および段落0105~0118に記載された工程5および工程6、ならびに段落0125~0148に記載された工程8を含んでなり、工程8の反応が酸受容体なしに実施される。
【0187】
本発明の別の態様は、段落0063~0104に記載された工程1~4を含んでなる、化合物(III)を製造する方法に言及する。
【0188】
本発明の別の態様は、式(IV)の化合物が化合物(IIIa)であり、段落0063~0104に記載された工程1~4を含んでなる、化合物(IV)を製造する方法に言及する。
【0189】
好ましい態様において、式(IV)の化合物が化合物(IIIa)である、化合物(IV)を製造する方法は、段落0063~0104に記載された工程1~4および段落0153~0158に記載された工程9および工程10を含んでなる。
【0190】
本発明の別の態様は、段落0063~0104に記載された工程1~4を含んでなる、化合物(III’’)を製造する方法に言及する。
【0191】
本発明の別の態様は、式(IV)の化合物が化合物(IIIb)であり、段落0063~0104に記載された工程1~4を含んでなる、化合物(IV)を製造する方法に言及する。
【0192】
好ましい態様において、式(IV)の化合物が化合物(IIIb)である、化合物(IV)を製造する方法は、段落0063~0104に記載された工程1~4および段落0153~0158に記載された工程9および工程10を含んでなる。
【0193】
好ましい態様において、式(IV)の化合物が化合物(IIIb)である、化合物(IV)を製造する方法は、段落0063~0104に記載された工程1~4および段落0162~0172に記載された工程11および工程12を含んでなる。
【0194】
本発明は、段落0063~0104に記載された工程1~4を含んでなる、式(6)の化合物を製造する方法、好ましくは式(6a)の化合物を製造する方法にも言及する。
【0195】
本発明は、段落0063~0104に記載された工程1~4および段落0105~0118に記載された工程5および工程6を含んでなる、式(6)の化合物を製造する方法、好ましくは式(6a)の化合物を製造する方法にも言及する。
【0196】
本発明は、段落0063~0104に記載された工程1~4を含んでなる、式(7)の化合物を製造する方法、好ましくは式(7a)の化合物を製造する方法にも言及する。
【0197】
本発明は、段落0063~0104に記載された工程1~4および段落0105~0118に記載された工程5および工程6を含んでなる、式(7)の化合物を製造する方法、好ましくは式(7a)の化合物を製造する方法にも言及する。
【0198】
本発明は、化合物(I)、(II)、(III)または(IV)を製造する方法にも言及し、工程3および工程4が、同一の溶剤、好ましくはアセトニトリルまたは塩化メチレンにより、より好ましくは塩化メチレンにより実施される。
【0199】
本発明は、化合物(I)、(II)、(III)または(IV)を製造する方法にも言及し、工程3および工程4が、同一の溶剤、好ましくはアセトニトリルまたは塩化メチレンにより、より好ましくは塩化メチレン中でワンポット反応として実施される。
【0200】
本発明は、化合物(I)、(II)、(III)または(IV)を製造する方法にも言及し、工程2、工程3および工程4が、同一の溶剤で実施される。
【0201】
本発明は、化合物(I)、(II)、(III)または(IV)を製造する方法にも言及し、工程2、工程3および工程4が、同一の溶剤中でワンポット反応として実施される。
【0202】
一つの態様において、本発明は、式(I)の化合物、好ましくは式(Ia)の化合物を製造するための、式(1)の化合物の使用にも言及する。
【0203】
一つの態様において、本発明は、式(II)の化合物、好ましくは式(IIa)の化合物を調製するための、式(1)の化合物の使用にも言及する。
【0204】
さらに、本発明は、式(III)の化合物、好ましくは式(III’)の化合物、さらに好ましくは式(IIIa)の化合物を製造するための、式(1)の化合物の使用にも言及する。
【0205】
さらに本発明は、式(III’’)の化合物、好ましくは式(III’’’)の化合物、さらに好ましくは式(IIIb)の化合物を調製するための、式(1)の化合物の使用にも言及する。
【0206】
さらに本発明は、式(IV)の化合物、好ましくは式(IV’)の化合物を調製するための、式(1)の化合物の使用にも言及する。
【実施例
【0207】
実施例1(工程1
パーフルオロ-2-メチル-4-ペンテン(中間体(2))の調製
CsF(CHCN)5gを含有した100mlのアセトニトリル懸濁液に300gのヘキサフルオロプロペン(HFP)を、反応器内の温度を30℃未満に保つために緩徐に導入した。HFPの導入後、混合物を8時間50~55°Cで加熱し、10°Cに冷却した。底層を分離し、蒸留して、収量260gのパーフルオロ-2-メチル-4-ペンテンを得た。収率87%、沸点(B.p.)50°C。
【0208】
実施例2(工程2)
パーフルオロ-2-メチル-2-ペンテン(中間体(3))の調製
210gのパーフルオロ-2-メチル-4-ペンテンおよび1gの乾燥CsFを含んだ300mlCHCNを8時間、50~55°Cで加熱した。混合物を5~10°Cに冷却し、相を分離した。実施例3に従い、(パーフルオロ-2-メチル-2-ペンテン-)-3-トリエチルアンモニウム-エノラートの調製のために195g(93%)(純粋パーフルオロ-2-メチル-2-ペンテン)の底相を精製することなく使用した。
【0209】
実施例3(工程3)Martini et al. (1976)によるCH CN中でのエノラートの調製
(パーフルオロ-2-メチル-2-ペンテン-)3-トリエチルアンモニウム-エノラート(中間体(4))の調製
凝縮器、温度計、および滴下漏斗を備えた3口フラスコ内に、1300mlのCHCNおよびパーフルオロ-2-メチル-2-ペンテン(196g、0.65mol)を入れ、次いで12gの水を添加した。混合物を0℃に冷却し、EtN(164g、1.6mol)を0°C~5°Cの温度で添加した。
【0210】
混合物を1時間10°Cで撹拌した。参照値に対する19F NMRデータに基づく収率:76~78%。溶液を単離することなく、次の工程で使用した。
【0211】
実施例4(CH Cl 中のエノラートから出発する工程4)
CH Cl 中の単離されたエノラートから出発するN-メチル-3-ペンタフルオロエチル-4-トリフルオロメチル-5-フルオロ-1H-ピラゾール(化合物(Ia))の調製
凝縮器、温度計、および滴下漏斗を備えた3口フラスコ内に、100mlの塩化メチレンおよび(パーフルオロ-2-メチル-2-ペンテン-)3-トリエチルアンモニウム-エノラート(25.9g、0.065mol)を入れ、次いでN-メチルヒドラジンの40%水溶液(8g)をこの混合物に0℃で緩徐に添加した。反応混合物を5℃で1時間、最終的には20℃で2時間撹拌した。混合物を水(3x50ml)で洗浄し、有機層をNaSOで乾燥させ、溶剤を大気圧下で留去した。この粗生成物を真空蒸留によって精製した。N-メチル-3-ペンタフルオロエチル-4-トリフルオロメチル-5-フルオロ-1H-ピラゾールの収量は15.8g(収率:パーフルオロ-2-メチル-2-ペンテンに対して85%)(沸点:17mbarにおいて62~65℃)であった。
【0212】
19F NMR δ: 53.7(3F)、83.9(3F)、112.1(2F)、125.1(1F)ppm。
【0213】
実施例5(工程3+工程4、ワンポット反応)
CH Cl 中のパーフルオロ-2-メチル-2-ペンテンから出発する、N-メチル-3-ペンタフルオロエチル-4-トリフルオロメチル-5-フルオロ-1H-ピラゾール(化合物(Ia))の調製
凝縮器、温度計、および滴下漏斗を備えた3口フラスコ内に、1300mlの塩化メチレンおよびパーフルオロ-2-メチル-2-ペンテン(196g、0.65mol)を入れ、次いで12gの水を添加した。この混合物を-0℃に冷却し、EtN(164g、1.6mol)を0°~5℃の範囲の温度で添加した。この混合物を15~30分間この温度で撹拌し、メチルヒドラジンの40%水溶液(80g)を、この混合物に0℃で緩徐に添加した。この反応混合物を5℃で1時間、および最終的に20℃で8時間撹拌した。この混合物を水(3x150ml)で洗浄し、有機層をNaSOで乾燥させ、溶剤を大気圧下で留去した。この粗生成物を真空蒸留によって精製した。N-メチル-3-ペンタフルオロエチル-4-トリフルオロメチル-5-フルオロ-1H-ピラゾールの収量は150g(収率:81%パーフルオロ-2-メチル-2-ペンテン)(沸点:17mbarにおいて62~65℃)であった。
【0214】
19F NMR δ: 53,7 (3F), 83,9 (3F), 112,1 (2F), 125,1 (1F) ppm。
【0215】
実施例6(工程2+工程3+工程4、CH 3 CN中でのワンポット反応)
N-メチル-3-ペンタフルオロエチル-4-トリフルオロメチル-5-フルオロ-1H-ピラゾール(化合物(Ia))の調製
1300mlのCHCN中のパーフルオロ-2-メチル-4-ペンテン(196g、0,65mol)および2gの乾燥CsFを50~55℃で8時間加熱した。混合物を10℃に冷却し、15gの水を添加した。この混合物を0℃に冷却し、EtN(164g、1.6mol)を0°~5℃の範囲の温度で添加した。この混合物を15~30分間この温度で撹拌し、N-メチルヒドラジンの40%水溶液(80g)を、この混合物に0℃で緩徐に添加した。この反応混合物を5℃で1時間、および最終的に20℃で12時間撹拌した。溶剤を真空下(500mbar)で留去し、油性生成物を400mlのMTBE中で溶解した。有機溶液を水(3x150ml)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、溶剤を大気圧下で留去した。この粗生成物を真空蒸留によって精製した。N-メチル-3-ペンタフルオロエチル-4-トリフルオロメチル-5-フルオロ-1H-ピラゾールの収量は139g(収率74%)(沸点:17mbarにおいて62~65℃)であった。
【0216】
19F NMR δ: 53.7 (3F)、83.9 (3F)、112.1 (2F)、125.1 (1F) ppm。
【0217】
実施例7(工程5)
5-シアノ-1-メチル-3-ペンタフルオロエチル-4-トリフルオロメチル-1H-ピラゾール(中間体(6a))の調製
【化63】
28.6g(0.1mol)の5-フルオロ-1-メチル-3-ペンタフルオロエチル-4-トリフルオロメチルピラゾール(化合物(Ia))、および9.7g(0.15mol)のシアン化カリウムを、150mlのアセトニトリル中に懸濁させ、次いで保護ガス雰囲気下で5時間還流させながら加熱する。冷却した後、沈降物(KCN、KF)を濾去し、300mbarの真空中で溶剤を除去して、ブローン油(27.8g、95%)をもたらし、これを一切精製せずにさらなる工程のために使用した。
【0218】
1H-NMR (400 MHz, d3-アセトニトリル): δ = 4.11 (s, 3H, CH3) ppm。
【0219】
19F-NMR (400 MHz, CDCl3): δ = -56.7 (3F), -111.4 (3F), -111.6 (2F) ppm。
【0220】
GC-MS: 保持時間2.67分、質量 (m/z): 224 (M)+
【0221】
実施例8(工程6)
1-メチル-3-ペンタフルオロエチル-4-トリフルオロメチル-1H-ピラゾール-5-カルボン酸(中間体(7a))の調製
【化64】
29.3g(0.1M)の5-シアノ-1-メチル-3-ペンタフルオロエチル-4-トリフルオロメチルピラゾール(化合物(6a))、および110gの10% NaOHを、透明な溶液が形成するまで100℃の油浴内で6時間加熱した。5℃に冷却した後、この反応混合物を、37% HClの添加によってpH1に緩徐に酸性化させて、白色の結晶をもたらし、これを濾去し、40mlの冷水で洗浄し、乾燥させ、28g(7a)の1-メチル-3-ペンタフルオロエチル-4-トリフルオロメチルピラゾール-5-カルボン酸を、120~122℃の融点(m.p.)を有する白色の固体として得た。
【0222】
1H-NMR (400 MHz、d3-アセトニトリル) δ = 4.08 (s、3H、CH3) ppm、
【0223】
HPLC-MS a): logP = 1.86、質量(m/z): 313.0 (M+H)+
【0224】
実施例9(工程9)
4-ブロモ-2’-メチル-5’-(ペンタフルオロエチル)-4’-(トリフルオロメチル)-2’H-1,3’-ビピラゾール(中間体(12))の調製
2.00g(6.99mmol)の5-フルオロ-1-メチル-3-(ペンタフルオロエチル)-4-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール(化合物(Ia))、1.03g(6.99mmol)の4-ブロモ-1H-ピラゾール(式(11)の化合物)、および1.93gの炭酸カリウムを、50mlのテトラヒドロフランp.a中に懸濁させる。この反応混合物を、16時間還流させながら加熱する。冷却された反応混合物を濾過し、溶剤を減圧下で除去する。この残渣を、シリカゲル上のカラムクロマトグラフィーによって精製する。
【0225】
これは、0.69gの4-ブロモ-2’-メチル-5’-(ペンタフルオロエチル)-4’-(トリフルオロメチル)-2’H-1,3’-ビピラゾールを、無色の固体としてもたらす。
【0226】
1H-NMR (400 MHz, d3-アセトニトリル): δ = 8.00 (s、1H)、7.91 (s、1H)、3.71 (s、 3H)。
【0227】
HPLC-MSa): logP = 4.14、質量 (m/z) =413 [M+H]+
【0228】
実施例10(工程10)
2-クロロ-N-1-シアノ-シクロプロピル-5-[2’-メチル-5’-(ペンタフルオロエチル)-4’-(トリフルオロメチル)-2’H-1,3’-ビピラゾール-4-イル]ベンズアミド(化合物(IIIa))の調製
【化65】
150mg(0.36mmol)の4-ブロモ-2’-メチル-5’-(ペンタフルオロエチル)-4’-(トリフルオロメチル)-2’H-1,3’-ビピラゾール、126mg(0.36mmol)の2-クロロ-N-(1-シアノシクロプロピル)-5-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ベンズアミド、21mg(0.01mmol)のテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、および1.1mlの1M水性重炭酸ナトリウムを、10.5mlのイソプロパノールと混合し、3時間還流させながら加熱した。溶剤を減圧下で除去し、この残渣を酢酸エチル(ethylacetat)中に溶解させる。有機相を水で2回洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過した。溶剤を減圧下で除去する。この残渣を、シリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィーによって精製し、98mgの2-クロロ-N-(1-シアノシクロプロピル)-5-[2’-メチル-5’-(ペンタフルオロエチル)-4’-(トリフルオロメチル)-2’H-1,3’-ビピラゾール-4-イル]ベンズアミドを、無色の固体として得た。
【0229】
1H-NMR (400 MHz、d3-アセトニトリル): δ = 1H-NMR (400 MHz、d3-アセトニトリル): δ = 8.27 (s、1H)、8.25 (s、1H)、7.75 (d、1H)、7.70 (dd、1H)、7.62 (s、1H)、7.51 (d、1H)、3.75 (s、3H)、1.56~1.60 (m、2H)、1.33~1.36(m、2H)。
【0230】
HPLC-MSa): logP = 3.72、質量(Masse) (m/z) = 553.1 [M+H]+
【0231】
実施例11(工程11)
国際公開第2012/107434号による5-アジド-1-メチル-3-ペンタフルオロエチル-4-トリフルオロメチル-1H-ピラゾール(中間体(VI))の調製
5-フルオロ-1-メチル-3-ペンタフルオロエチル-4-トリフルオロメチル-1H-ピラゾール(工程1~4に従って調製、7mmol)を、ジメチルスルホキシド(DMSO)の混合物(10ml)に添加する。次いで、アジ化ナトリウム(0.5g、7.7mmol)をこの混合物中に添加し、これを室温で保持する。この混合物を室温(RT)で一晩撹拌する。この反応が完了した後、水(100mL)とジエチルエーテル(100mL)との混合物を添加する。相を分離させ、水相をジエチルエーテルで2回抽出する。この化合物を、追加の精製なしで使用する。
【0232】
実施例12(工程12)
国際公開第2012/107434号による2-クロロ-5-[1-(2-メチル-5-ペンタフルオロエチル-4-トリフルオロメチル-2H-ピラゾール-3-イル)-1H-[1,2,3]トリアゾール-4-イル]-安息香酸メチルエステル(式(VIII)の化合物)の調製
2-クロロ-5-エチニル-安息香酸メチルエステル(1.13g、5.8mmol)、および5-アジド-1-メチル-3-ペンタフルオロエチル-4-トリフルオロメチル-1H-ピラゾール(1.80g、5.8mmol)を、水とt-BuOHとの混合物(30ml)中に懸濁させる。アスコルビン酸ナトリウム(0.600mlの1M水溶液、新しく調製)、続いて硫酸銅(II)五水和物(0.015g)を、この混合物に添加する。得られる不均質混合物を、96時間勢いよく撹拌する。この反応混合物を水で希釈し、この生成物を酢酸エチルで抽出する。有機相をブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、蒸発させる。この残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(c-HEX/EtOAc=3:l)にかけ、所望の生成物である2-クロロ-5-[1-(2-メチル-5-ペンタフルオロエチル-4-トリフルオロメチル-2H-ピラゾール-3-イル)-1H-[1,2,3]トリアゾール-4-イル]-安息香酸メチルエステルを得る(収率53%)。
【0233】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 8.47(s、1H)、8.12 (Is、1H)、8.0 (d、1H)、7.62 (d、1H)、3.98 (s、3H)、3.87 (s、3H) ppm。
【0234】
LC-MS RT 2.12, 504 (M+H+)、545 (M+CH3CN+H+)。
【0235】
実施例13(工程13)
2-クロロ-5-[1-(2-メチル-5-ペンタフルオロエチル-4-トリフルオロメチル-2H-ピラゾール-3-イル)-1H-[L2,3]トリアゾール-4-イル]-安息香酸(式(IX)の化合物)の調製
【化66】
2-クロロ-5-[1-(2-メチル-5-ペンタフルオロエチル-4-トリフルオロメチル-2H-ピラゾール-3-イル)-1H-[1,2,3]トリアゾール-4-イル]-安息香酸メチルエステル(1.53g、3.0mmol)を、水とテトラヒドロフランとの混合物(1:3、50mL)中に懸濁させ、水酸化リチウム(0.22g、9.1mmol)を添加する。得られる混合物を、60℃で5時間勢いよく撹拌する。この反応混合物を水で希釈し、塩化水素(2N)で酸性化する。水相をAcOEtで2回抽出し、MgS04で乾燥させ、真空下で凝縮して、所望の生成物である2-クロロ-5-[1-(2-メチル-5-ペンタフルオロエチル-4-トリフルオロメチル-2H-ピラゾール-3-イル)-1H-[1,2,3]トリアゾール-4-イル]-安息香酸を得る。この化合物を、追加の精製なしで使用した。
【0236】
1H-NMR (400 MHz、CDCl3): δ = 8.52(s、1H)、8.18 (Is、1H)、8.09 (d、1H)、7.66 (d、1H)、3.88 (s、3H) ppm。
【0237】
LC-MS RT 2.08、488 (M+H+)。
【0238】
実施例14(工程8)
国際公開第2010/051926号によるN-[4-クロロ-3-(ベンジルカルバモイル)フェニル]-1-メチル-3-(ペンタフルオロエチル)-4-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-カルボキサミド(化合物(IIa))の調製
【化67】
560mg(1.79mmol)の1-メチル-3-ペンタフルオロエチル-4-トリフルオロメチルピラゾール-5-カルボン酸を、10mlのジクロロメタン中に懸濁させた。この懸濁液を0℃に冷却し、その後次いで0.02mlのN,N-ジメチルホルムアミドおよび188μl(2.15mmol、1.2当量)の塩化オキサリルと混和した。この反応混合物を、まず0℃で0.5時間、次いで室温で3時間撹拌した。溶剤を回転蒸発器上で減圧下で除去した。得られた1-メチル-3-(ペンタフルオロエチル)-4-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-カルボニルクロリドを、さらなる後処理なしで後続の合成工程のために使用した。
【0239】
88.7mg(0.34mmol)の5-アミノ-N-ベンジル-2-クロロベンズアミド、2.77mg(0.02mmol)のN,N-ジメチルピリジン-4-アミン(DMPA)を、2.5mlの酢酸エチル中に溶解させる。この溶液を、氷浴を使用して0℃に冷却し、119μl(0.68mmol)のN-エチルジイソプロピルアミンと混和する。75.0mg(0.22mmol)の1-メチル-3-(ペンタフルオロエチル)-4-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-カルボニルクロリドを、2.5mlの酢酸エチル中に懸濁させ、次いで冷却された反応溶液に添加する。この反応混合物を、50℃で4時間加熱し、次いで室温で16時間撹拌する。この反応溶液を10.0mlの酢酸エチルで希釈する。有機相を、1M塩酸で3回、1M水酸化ナトリウム溶液で2回、そして飽和塩化ナトリウム溶液で1回洗浄する。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、溶剤を回転蒸発器上で減圧下で除去する。これは、140mg(0.17mmol)のN-[4-クロロ-3-(ベンジルカルバモイル)フェニル]-1-メチル-3-(ペンタフルオロエチル)-4-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-カルボキサミド(97%)を、白色の固体としてもたらす。
【0240】
1H-NMR (400MHz、d3-アセトニトリル): δ =9.29 (bs、1H)、7.78 (d、1H)、7.67 (dd、 1H)、7.48(d、1H)、7.21~7.52 (m、6H)、4.54 (d、2H)、3.97 (s、3H)ppm。
【0241】
HPLC-MSa): logP = 3.90質量 (m/z) = 555.1 [M+H]+
記載された質量は、最高の強度を有する[M+H]イオンの同位体パターンのピークである。
a) logP値の決定および質量検出に関する注記:与えられるlogP値は、位相反転カラム(C18)上のHPLC(高速液体クロマトグラフィー)によって、EEC指令79/831付属書V.A8に従って決定した。Agilent 1100LCシステム、50*4.6 Zorbax Eclipse Plus C18(1.8ミクロン)、溶離剤A:アセトニトリル(0.1%のギ酸)、溶離剤B:水(0.09%のギ酸)、4.25分でアセトニトリル10%からアセトニトリル95%への直線勾配、次いでさらに1.25分にわたりアセトニトリル95%、炉温度55℃、流量:2.0ml/分。質量検出は、Agilend MSDシステムによって実施する。