(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-21
(45)【発行日】2022-01-31
(54)【発明の名称】洗浄方法
(51)【国際特許分類】
B08B 3/02 20060101AFI20220124BHJP
B08B 5/02 20060101ALI20220124BHJP
【FI】
B08B3/02 B
B08B3/02 D
B08B5/02 Z
(21)【出願番号】P 2020077361
(22)【出願日】2020-04-24
【審査請求日】2021-04-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000132161
【氏名又は名称】株式会社スギノマシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】グローバル・アイピー東京特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】晴▲まき▼ 大樹
【審査官】新井 浩士
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-260321(JP,A)
【文献】特開2011-062577(JP,A)
【文献】特開2020-037178(JP,A)
【文献】特開2017-062657(JP,A)
【文献】特開平08-085063(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 3/02,5/02
B23P 17/00
B23D 23/79
B23Q 11/00
B23B 47/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
境界部で互いに交差する第1洗浄面と第2洗浄面を有する対象物を、テーブル回転軸を中心に回転または揺動させ、
前記テーブル回転軸と平行なノズル回転軸を有するノズルパイプであって、ノズル回転モータによって回転可能なノズルパイプに配置されたノズルが
、洗浄流体を噴射軸線に沿って噴射し、
前記
ノズル回転軸を中心に、前記噴射軸線が前記第1洗浄面と一定の衝突角度を保つように前記
ノズルパイプを揺動させて、前記第1洗浄面を洗浄し、
前記境界部に前記噴射軸線が到達したときに、前記第2洗浄面と前記噴射軸線とのなす角度が前記衝突角度に達するまで、前記噴射軸線が前記境界部と交差するように、前記ノズル回転軸を中心に前記
ノズルパイプを回転し、
前記ノズル回転軸を中心に、前記噴射軸線が前記第2洗浄面と一定の前記衝突角度を保つように前記
ノズルパイプを揺動させて、前記第2洗浄面を洗浄する、
洗浄方法。
【請求項2】
前記ノズルが、前記ノズル回転軸を通る噴射平面上に配置された前記噴射軸線に沿って噴射する、
請求項1に記載の洗浄方法。
【請求項3】
前記噴射平面が、前記第1洗浄面と一定の前記衝突角度を保つように、前記
ノズルパイプの位相を前記対象物の位相に同期させる、
請求項2に記載の洗浄方法。
【請求項4】
前記対象物が一回転する毎に、前記
ノズルパイプがステップ幅だけ上昇または下降する、
請求項1~3のいずれかに記載の洗浄方法。
【請求項5】
前記対象物を、前記テーブル回転軸を中心に一定の角速度で回転させる、
請求項1~
4のいずれかに記載の洗浄方法。
【請求項6】
複数の前記ノズルが洗浄流体を噴射する、
請求項1~
5のいずれかに記載の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
対象物が固定されたテーブルを回転し、テーブルの側方に設置されたノズルから洗浄流体を噴射して対象物に吹き付けて、対象物を洗浄する方法が利用されている(例えば、特開2016-055275号公報)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
対象物の形状によっては、対象物の隅々にまで洗浄流体の噴流が衝突せず、十分に洗浄できない場合があった。
本発明は、対象物の隅々まで十分に洗浄可能な洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の観点は、
第1洗浄面を有する対象物を、テーブル回転軸を中心に回転または揺動させ、
ノズルが洗浄流体を噴射軸線に沿って噴射し、
前記テーブル回転軸と平行なノズル回転軸を中心に、前記噴射軸線が前記第1洗浄面と一定の衝突角度を保つように前記ノズルを揺動させて、前記対象物を洗浄する、
洗浄方法である。
【0004】
洗浄流体は、例えば、圧縮空気、乾燥空気、洗浄液である。洗浄流体が洗浄液であるとき、ノズルは洗浄液を平面上に広がるように噴出して良い。乾燥空気は、例えば、ブロアから供給される。洗浄流体は、加熱されても良い。
【0005】
対象物は、回転または揺動するテーブルに固定される。
テーブルの位相に対して、ノズルを単振動させても良い。そうすれば、洗浄面が平面であれば、洗浄面と噴射軸線との交点が描く軌跡は正弦波となる。
洗浄液は、好ましくは、直線棒状または扇型に噴出される。洗浄液が扇形に噴出されるとき、噴流は、ノズル回転軸の方向に広がる。より好ましくは、洗浄液は噴射平面から3度~45度傾斜した平面上に広がる。
【0006】
洗浄流体は、テーブル回転軸の延びる方向に噴出されても良い。洗浄流体は、例えば、テーブルの上方から下方に向けて噴射される。
衝突角度は、好ましくは60度~90度、より好ましくは80度~90度である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の洗浄方法によれば、対象物の隅々まで十分に洗浄できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図4】実施形態1の洗浄軸線と洗浄面との交点の軌跡および噴流の衝突範囲
【
図7】実施形態2の洗浄軸線と洗浄面との交点の軌跡および噴流の衝突範囲
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施形態1)
図1に示すように、実施形態1の洗浄機10は、モータ(テーブル回転モータ)11と、テーブル15と、モータ(ノズル回転モータ)17と、ノズル進退装置18と、ノズルパイプ20と、複数のノズル21と、制御装置22とを有する。
モータ11は、テーブル15に接続する。モータ11は、減速機(不図示)を有しても良い。テーブル15には、対象物1が固定される。例えば、テーブル15は、鉛直なテーブル回転軸13を中心に一定の角速度で回転する。
モータ17は、ノズルパイプ20と接続する。モータ17は、減速機(不図示)を有しても良い。好ましくは、モータ17は、同期モータである。
【0010】
ノズルパイプ20は、対象物1が回転する領域を囲むように、L字状をなす。ノズルパイプ20は、噴射平面23に沿って折れ曲がっている。ノズルパイプ20の下方をさらに折り曲げてU字状をなしても良い。ノズルパイプ20は、直線状でも良い。ノズルパイプ20は、ノズル回転軸19を中心に揺動する。ノズル回転軸19は、テーブル回転軸13と平行である。ノズル進退装置18は、ノズルパイプ20をノズル回転軸19に沿って進退させる。
【0011】
ノズル21は、ノズルパイプ20の内側に並べて固定される。ノズルパイプ20の鉛直部分について、上方から1番目のノズルをノズル21a、2番目のノズルをノズル21bとする。ノズル21は、噴射軸線25に沿って洗浄液を噴射する。噴射軸線25は、噴射平面23上に配置される。噴射平面23は、ノズル回転軸19を通る。対象物1の側方に配置されたノズル21においては、噴射軸線25は、ノズル回転軸19に直交する。すなわち、噴射軸線25は、水平に延びる。対象物1の上方に配置されたノズル21においては、噴射軸線25は、ノズル回転軸19と平行である。すなわち、噴射軸線25は、鉛直方向に延びる。
ノズル21は、扇形噴射ノズルである。ノズル21は、ノズルパイプ20と一体となって揺動する。モータ11と、モータ17と、ノズル進退装置18は、制御装置22によって制御される。
なお、本実施形態のテーブル回転軸13は鉛直であるが、これに限定されない。例えば、テーブル回転軸13は水平に、又は、傾斜して設置されても良い。
【0012】
対象物1は、例えば、箱型である。対象物1は、洗浄面3と、境界部5を有する。複数の洗浄面3(例えば、洗浄面3a,3b)は、テーブル回転軸13の周方向に配置される。洗浄面3は、切削面、鋳肌や圧延材の未加工表面である。境界部5は、洗浄面3aと洗浄面3bの交差部である。なお、境界部5は、鋭利なエッジ、鋳肌や圧延材の未加工表面でも良い。
【0013】
図2に示すように、実施形態1の洗浄方法では、対象物1をテーブル15に固定し(S1)、テーブル15を回転し(S2)、ノズル21が洗浄液を噴射し(S3)、ノズル21を対象物1に同期させて揺動し(S4)、ノズルを昇降し(S5)、噴射を停止し(S6)、スピンドライを行う(S7)。ステップS2、S3、S4は、同時に開始しても良いし、順序を入れ替えても良い。ステップS5、S7は、省いても良い。
【0014】
洗浄液の噴射圧力は、例えば、1.5MPa~20MPaである。好ましくは、噴射圧力は3MPa~15MPaである。ノズル1本当たりの洗浄液の噴射流量は、例えば、0.2L/s~1L/sである。噴射圧力や噴射流量が大きくなれば、洗浄力が向上する。他方、噴射圧力や噴射流量の上昇に伴って装置が大型になり、消費電力が上昇する傾向にある。噴射圧力や噴射流量は合理的な範囲で決定される。
【0015】
図3A~
図3Cに従って、ステップS4について詳細に説明する。
図3Aに示すように、ノズル21は、噴射軸線25に沿って噴流29を噴射する。噴流29は、噴射平面23から、噴射軸線25に向かって見ると、角度37だけ傾斜した平面上に広がる(
図4参照)。噴射軸線25は、洗浄面3aとあらかじめ定められた衝突角度27で交差するように、対象物1の回転に同期して回転する。
図3Bに示すように、噴射軸線25が境界部5に到達すると、ノズル21は、噴射軸線25が境界部5と衝突し続けるように、対象物1の回転に同期して回転を続ける。噴射平面23も、洗浄面3aと衝突角度27で交差する。
図3Cに示すように、噴射軸線25と次の洗浄面3bとのなす角度が衝突角度27に到達すると、洗浄面3Bについて洗浄を開始する。つまり、噴射軸線25が境界部5から離れて、噴射軸線25と洗浄面3bとが衝突角度27を保つように、ノズル21が回転する。噴射平面も、洗浄面3bと衝突角度27を保つ。
【0016】
ステップS5では、
図4に示すように、テーブル15が一回転する毎に、一定距離33だけノズルが下降する。
図4は、テーブルが2周して洗浄面3aの全面を洗浄する場合における、軌跡31a1、31a2、31b1、31b2、及び、噴流29の衝突する範囲35a1、35a2、35b1、35b2を示す。ノズルは、テーブル15が一回転する毎に上昇しても良い。ノズルの下降と上昇を組み合わせても良い。
【0017】
軌跡31a1、31a2、31b1、31b2は、ノズル21aの1周目、ノズル21aの2周目、ノズル21bの1周目、ノズル21bの2周目における、噴射軸線25と洗浄面3aとの交点の軌跡を示す。軌跡31a1、31a2、31b1、31b2は、水平に延びる直線となる。
範囲35a1、35a2、35b1、35b2は、ノズル21aの1周目、ノズル21aの2周目、ノズル21bの1周目、ノズル21bの2周目の衝突範囲をそれぞれ示す。衝突範囲35a1は、洗浄面3aの上端よりも上方にはみ出ている。衝突範囲35a1、35a2、35b1、35b2は、隣り合った衝突範囲とそれぞれ重なる。噴流29の広がる方向が、噴射軸線25の方向から見て傾斜しているため、隣り合う噴流29同士が衝突しない。
【0018】
図4では、2周することで対象物1の全面を洗浄したが、ノズル21の設置数を増加させるか、ノズル21の噴射角を広くすることにより、1周で全面を洗浄しても良い。言い換えると、隣り合うノズル21が生成した噴流が洗浄面3aと衝突する範囲が重なっても良い。この場合には、ステップS5を省いてよい。
【0019】
(実施形態2)
実施形態2においても、実施形態1の洗浄機10が用いられる。ただし、対象物1は単一の洗浄面3aを有する。
図5に示すように、本実施形態では、テーブル15は揺動する(S12)。テーブル15の揺動幅は、一定である。好ましくは、テーブル15は、加減速を除いて、揺動幅の中央の大半の範囲において一定の速度で揺動する。
【0020】
図6A~
図6Cに従って、ステップS14について詳細に説明する。
図6Aの洗浄面3aの洗浄方法は、実施形態1と実質的に同一である。
図6Bに示すように、噴射軸線25が境界部5に到達すると、テーブル15の回転方向を反転させる。同時に、ノズル21の回転方向も反転する。
図6Cに示すように、再び噴射軸線25と洗浄面3aとのなす衝突角度27が予め定められた角度を保つように、ノズル21が回転する。
なお、
図6Aにおける時計回りの回転時と、
図6Cにおける半時計回りの回転時において、衝突角度27を変更しても良い。例えば、
図6Aにおける衝突角度27を70度に、
図6Cにおける衝突角度を110度にしても良い。
【0021】
なお、前述の実施形態では、洗浄流体として洗浄液を使用したが、洗浄流体として圧縮空気又は乾燥空気を利用しても良い。圧縮空気又は乾燥空気は、噴射平面23上に、又は、噴射平面23に沿って噴射される。洗浄流体が圧縮空気である場合、ノズル21は、直進型のノズル(例えば、パイプノズル)である。ノズル21は、圧縮空気や乾燥空気を、直線棒状又は平面状に噴出してよい。ノズル21は、互いに近づけて束にして複数の空気噴流を噴出させても良い。洗浄流体が乾燥空気である場合、スリット状のノズル21が利用できる。
【0022】
本発明は前述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが本発明の対象となる。前記実施形態は、好適な例を示したものであるが、当業者ならば、本明細書に開示の内容から、各種の代替例、修正例、変形例あるいは改良例を実現することができ、これらは添付の特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0023】
1 対象物
3、3a、3b 洗浄面
13 テーブル回転軸
15 テーブル
21 ノズル
27 噴射角度