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特許7013582電流遮断装置及びその反転部材、電池カバープレートアセンブリ、単電池、電池モジュール、動力電池並びに電気自動車
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-21
(45)【発行日】2022-01-31
(54)【発明の名称】電流遮断装置及びその反転部材、電池カバープレートアセンブリ、単電池、電池モジュール、動力電池並びに電気自動車
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/578 20210101AFI20220124BHJP
   H01M 50/15 20210101ALI20220124BHJP
   H01M 50/531 20210101ALI20220124BHJP
【FI】
H01M50/578
H01M50/15
H01M50/531
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020532772
(86)(22)【出願日】2018-12-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-22
(86)【国際出願番号】 CN2018120764
(87)【国際公開番号】W WO2019114773
(87)【国際公開日】2019-06-20
【審査請求日】2020-08-12
(31)【優先権主張番号】201711330221.5
(32)【優先日】2017-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】510177809
【氏名又は名称】ビーワイディー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100132698
【弁理士】
【氏名又は名称】川分 康博
(72)【発明者】
【氏名】▲蒋▼露霞
(72)【発明者】
【氏名】王▲飛▼▲飛▼
(72)【発明者】
【氏名】▲湯▼道毅
(72)【発明者】
【氏名】周江涛
(72)【発明者】
【氏名】朱建▲華▼
【審査官】近藤 政克
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-229416(JP,A)
【文献】特開2013-171817(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/578
H01M 50/15
H01M 50/531
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切り込み部材(101)および反転部材(102)を含む電流遮断装置であって、
前記反転部材は、気圧の作用下で動作して前記切り込み部材(101)上の切り込み(104)を引き裂くことができ、
前記反転部材に、前記切り込み部材(101)に電気的に接続するための第1の接続領域(115)と、電池の電極外部端子(112)に電気的に接続するための第2の接続領域(116)とが、形成されており、
前記反転部材に、さらに、変形緩衝領域(117)が形成されており、
前記変形緩衝領域(117)は、前記第1の接続領域(115)と前記第2の接続領域(116)との間であって、かつ、前記第1の接続領域(115)の周囲に配置されており、
前記反転部材(102)は、前記第1の接続領域(115)を介して前記切り込み部材(101)に電気的に接続され、
前記切り込み部材(101)は、
前記切り込み(104)が形成された切り込み領域(105)と、
前記反転部材(102)に電気的に接続する第1の溶接領域(103)と、
電極内部端子(109)に電気的に接続する第2の溶接領域(107)と
を含み、
前記第2の溶接領域(107)、前記切り込み領域(105)及び前記第1の溶接領域(103)は、径方向に沿って外から内へ順に配置されており、外から内へ前記反転部材(102)に徐々に近づく段差構造に形成され、
前記切り込み(104)は、前記第1の溶接領域(103)の周囲に配置されている、
電流遮断装置。
【請求項2】
前記反転部材(102)は、円錐台を形成するシート状構造であり、
前記円錐台の上底側端部は、前記第1の接続領域(115)として形成され、
前記円錐台の下底側端部は、前記切り込み部材から離れて前記第2の接続領域(116)として形成される、
請求項1に記載の電流遮断装置。
【請求項3】
前記変形緩衝領域(117)は、前記第1の接続領域(115)を囲む環状溝構造を形成する、
請求項1又は2に記載の電流遮断装置。
【請求項4】
前記環状溝構造の径方向断面は、円弧状又は角型である、
請求項3に記載の電流遮断装置。
【請求項5】
前記切り込み部材(101)に、前記切り込み領域(105)から突出するボス(106)が形成され、
前記ボス(106)の上表面であって前記切り込み領域に平行に、前記第1の溶接領域(103)が形成され、
前記上表面の外周縁に、環状の溶接結合点が配置されている、
請求項1~4のいずれか1項に記載の電流遮断装置。
【請求項6】
前記切り込み領域(105)の外周縁に前記ボスとは逆方向に突出する環状壁(108)が形成され、
前記第2の溶接領域(107)は、前記環状壁(108)の外周縁に、前記切り込み領域(105)と平行に形成され、
前記第2の溶接領域(107)の外周縁に、環状の溶接結合点が形成されている、
請求項に記載の電流遮断装置。
【請求項7】
電池カバープレートアセンブリであって、
カバープレート(110)と、
前記カバープレート(110)の内側に位置する電極内部端子(109)と、
前記カバープレート(110)の外側に位置する電極外部端子(112)と
を含み、
前記電極内部端子(109)と前記電極外部端子(112)とが電流遮断装置によって電気的に接続されており、
前記電流遮断装置は、切り込み部材(101)および反転部材(102)を含み、
前記反転部材は、気圧の作用下で動作して前記切り込み部材(101)上の切り込み(104)を引き裂くことができ、
前記反転部材に、前記切り込み部材(101)に電気的に接続するための第1の接続領域(115)と、電池の電極外部端子(112)に電気的に接続するための第2の接続領域(116)とが、形成されており、
前記反転部材に、さらに、変形緩衝領域(117)が形成されており、
前記変形緩衝領域(117)は、前記第1の接続領域(115)と前記第2の接続領域(116)との間であって、かつ、前記第1の接続領域(115)の周囲に配置されており、
前記反転部材(102)は、前記第1の接続領域(115)を介して前記切り込み部材(101)に電気的に接続され、
前記電極外部端子(112)が前記反転部材(102)に電気的に接続され、
前記切り込み部材(101)が前記電極内部端子(109)に電気的に接続されており、
支持環(113)は、前記反転部材(102)の外周縁の下側と、前記カバープレート(110)との間を密封するように接続し、
前記電極外部端子(112)の外周縁は、前記反転部材(102)の外周縁の上側に電気的に接続されている、
電池カバープレートアセンブリ。
【請求項8】
支持フランジ(114)は、前記支持環(113)の内壁に形成され、
前記反転部材(102)および前記電極外部端子(112)の外周縁は、前記支持フランジ(114)の上表面に支持されている、
請求項に記載の電池カバープレートアセンブリ。
【請求項9】
ケース(111)と、
ケース内に収容されるセルと、
前記ケースを封止する電池カバープレートアセンブリと
を含む単電池であって、
前記電池カバープレートアセンブリは、請求項のいずれか1項に記載の電池カバープレートアセンブリであり、
前記電極内部端子(109)は、前記セルに電気的に接続され、
前記反転部材(102)は、前記ケースの内部ガスと連通している、
単電池。
【請求項10】
内部に請求項に記載の単電池が配置されている、
電池モジュール。
【請求項11】
パック本体と、
前記パック本体内に設けられる電池モジュールと
を含む動力電池であって、
前記電池モジュールは、請求項10に記載の電池モジュールである、
動力電池。
【請求項12】
請求項11に記載の動力電池が内部に配置されている、
電気自動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、ビーワイディー カンパニー リミテッドが2017年12月13日に提出した、発明の名称「電流遮断装置及びその反転部材、電池カバープレートアセンブリ、単電池、電池モジュール、動力電池並びに電気自動車」の中国特許出願第「201711330221.5」号の優先権を主張するものであり、その全ての内容は参照により本願に組み込まれるものとする。
【0002】
本開示は、電池の分野に関し、電流遮断装置及びその反転部材、該電流遮断装置を用いる電池カバープレートアセンブリ、該電池カバープレートアセンブリを用いる単電池、該単電池を用いる電池モジュール、該電池モジュールを用いる動力電池並びに該動力電池を用いる車両に関する。
【背景技術】
【0003】
電池は、エネルギー貯蔵ユニットとして、様々な産業分野において重要な役割を果たしている。例えば、動力電池が新エネルギー自動車などの分野に広く用いられている。充放電が可能となるように、動力電池の電池パック内に、複数の単電池が互いに直列接続されるか又は並列接続されてなる電池モジュールを有してよい。動力電池は、充放電過程において、一般的にBMS(電池管理システム)によって電圧及び電流の変化を監視し、かつ充電状態を計算する。電圧サンプリングに問題が生じると、電池が過充電となる恐れがある。特に三元系にとって過充電となりうる。過充電がある水準に達すると、電池が燃焼して爆発するおそれがある。
【0004】
関連技術では、電池の電圧及び電流を監視し、電流積算法及び開放電圧法により電池残量を計算して、電池の充放電を制御する。しかし、欠点があり、例えば、電池の電圧サンプリング又は電流サンプリングの故障又はソフトウェアの故障により、電池が長時間充電されて制御されていないようになり、特に充電スポットで充電する場合、充電スポットと電池マネージャとが通信不能になると、過充電が制御できなくなり、電池がある程度に充電されて電池膨れひいては爆発発火を引き起こす。
【0005】
したがって、強制的に電流遮断可能な電流遮断技術は、大変重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、電流遮断装置及びその反転部材、該電流遮断装置を用いる電池カバープレートアセンブリ、該電池カバープレートアセンブリを用いる単電池、該単電池を用いる電池モジュール、該電池モジュールを用いる動力電池並びに該動力電池を用いる車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本開示は、切り込み部材に互いに電気的に接続され、かつ気圧の作用下で動作して前記切り込み部材上の切り込みを引き裂くことができ、前記切り込み部材に電気的に接続するための第1の接続領域と電池の電極外部端子に電気的に接続するための第2の接続領域とが形成され、さらに前記第1の接続領域と前記第2の接続領域との間に前記第1の接続領域の周囲に設けられた変形緩衝領域が形成されている電流遮断装置の反転部材を提供する。
【0008】
いくつかの実施例では、前記反転部材は、円錐台形状に形成されたシート状構造であり、円錐台形状の上底側端部は、前記第1の接続領域として形成され、下底側端部は、前記切り込み部材から離れて前記第2の接続領域として形成される。
【0009】
いくつかの実施例では、前記変形緩衝領域は、前記第1の接続領域を囲む環状溝構造に形成される。
【0010】
いくつかの実施例では、前記環状溝構造の径方向断面は、円弧状又は角型である。
【0011】
本開示は、切り込み部材及び反転部材を含み、前記反転部材が本開示に係る前記反転部材であり、前記第1の接続領域を介して前記切り込み部材に電気的に接続される電流遮断装置をさらに提供する。
【0012】
いくつかの実施例では、前記切り込み部材は、前記切り込みが形成された切り込み領域と、反転部材に互いに電気的に接続するための第1の溶接領域と、電極内部端子に電気的に接続するための第2の溶接領域とを含み、前記第2の溶接領域、前記切り込み領域及び前記第1の溶接領域は、径方向に沿って外から内へ順に配置されているとともに、外から内へ前記反転部材に徐々に近づく段差構造に形成され、前記切り込みは、前記第1の溶接領域の周囲に設けられる。
【0013】
いくつかの実施例では、前記切り込み部材に該切り込み領域から突出するボスが形成され、前記第1の溶接領域は、前記ボスの上表面によって形成され、かつ前記切り込み領域と平行であり、該上表面の外周縁に環状の溶接接合点が設けられる。
【0014】
いくつかの実施例では、前記切り込み領域の外周縁に前記ボスとは逆方向に突出する環状壁が形成され、前記第2の溶接領域は、前記環状壁の外周縁に形成され、かつ前記切り込み領域と平行であり、前記第2の溶接領域の外周縁に環状の溶接接合点が形成される。
【0015】
本開示は、カバープレートと、該カバープレートの内側に位置する電極内部端子と、該カバープレートの外側に位置する電極外部端子とを含み、前記電極内部端子と前記電極外部端子とが電流遮断装置によって電気的に接続され、前記電流遮断装置が本開示に係る電流遮断装置であり、前記電極外部端子が前記反転部材に電気的に接続され、前記切り込み部材が前記電極内部端子に電気的に接続される、電池カバープレートアセンブリをさらに提供する。
【0016】
いくつかの実施例では、前記反転部材の外周縁の下側と前記カバープレートとの間に支持環が密封接続され、前記電極外部端子の外周縁が前記反転部材の外周縁の上側に電気的に接続される。
【0017】
いくつかの実施例では、前記支持環の内壁に支持フランジが形成され、前記反転部材及び前記電極外部端子の外周縁が前記支持フランジの上表面に支持される。
【0018】
本開示は、ケースと、ケース内に収容されるセルと、前記ケースを封止する電池カバープレートアセンブリとを含み、前記電池カバープレートアセンブリが本開示に係る電池カバープレートアセンブリであり、前記電極内部端子が前記セルに電気的に接続され、前記反転部材が前記ケースの内部ガスと連通する、単電池をさらに提供する。
【0019】
本開示は、内部に本開示に係る単電池が設けられている電池モジュールをさらに提供する。
【0020】
本開示は、パック本体と、該パック本体内に設けられる電池モジュールとを含み、前記電池モジュールが本開示に係る電池モジュールである動力電池をさらに提供する。
【0021】
本開示は、本開示に係る動力電池が設けられている電動自動車をさらに提供する。
【発明の効果】
【0022】
上記技術手段によれば、反転部材が変形緩衝領域を有し、外部衝撃を受ける場合に第1の接続領域への衝撃を緩衝するため、第1の接続領域及び切り込み部材上の切り込みの予期せぬ破断を回避し、信頼性が高い。
【0023】
本開示の他の特徴及び利点については、発明を実施するための形態において詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図面は、本開示のさらなる理解を提供し、かつ本明細書の一部を構成するものであり、以下の発明を実施するための形態とともに本開示を説明するものであり、本開示を限定するものではない。図面において、
【0025】
図1】本開示の例示的な実施形態における電池モジュールの部分分解概略斜視図である。
図2】本開示の第1の例示的な実施形態における電流遮断装置の断面図である。
図3】本開示の第2の例示的な実施形態における電流遮断装置の断面図である。
図4】本開示の第2の例示的な実施形態に係る切り込み部材の立体構造概略図である。
図5】本開示の第1の例示的な実施形態に係る反転部材の立体構造概略図である。
図6】本開示の第1の実施形態に係る電流遮断装置の電池カバープレートアセンブリの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら、本開示の発明を実施するための形態を詳細に説明する。ここで記述した発明を実施するための形態が本開示を説明し解釈するためのものに過ぎず、本発明を限定するものではないことを理解されたい。
【0027】
本開示では、逆に説明しない場合に、使用される「上、下、左、右」のような方位詞は、一般的には対応する図面の図面方向を基準として定義され、「内、外」とは、対応する部材輪郭の内と外を意味する。
【0028】
図1図6に示すように、本開示は、電流遮断装置及びその切り込み部材、反転部材、該電流遮断装置を用いる電池カバープレートアセンブリ、該電池カバープレートアセンブリを用いる単電池、該単電池を用いる電池モジュール、該電池モジュールを用いる動力電池並びに該動力電池を用いる車両の技術手段を提供する。図1に示すように、電流遮断装置は、電極外部端子112と対応する電極内部端子との間に設けられて、電池の内部及び外部の回路を遮断する。単電池において、複数の単電池を直列接続又は並列接続することにより電池モジュールを構成し、電池パック内に入れて動力電池を形成することができる。また、動力電池の分野の他、本開示に係る様々な技術手段は、他の電池の分野においても広く適用することができる。本開示は、2つの実施形態により、係る電流遮断装置を説明する。以下、図面を参照しながら各実施形態を詳細に説明する。
【0029】
まず、図1及び図2に示すように、本開示の各実施形態は、いずれも複数の単電池を含む電池モジュールを提供し、単電池は、ケース111と、ケース内に収容されるセルと、該セルに電気的に接続される電極内部端子109と、ケースを封止するカバープレート110とを含んでよく、電極外部端子112は、カバープレートに設けられて、様々な電極リード119により電流の入出力を完了する。電流遮断装置は、電極外部端子と電極内部端子との間に設けられて電極端子の電流の入出力を制御する。即ち、電流遮断装置は、通常状態で、セルが導通の状態にあり、この場合、電極端子は、電流の入出力を正常に行って、単電池の充放電動作を完了することができるが、危険状態で、例えば、電池が過充電されると、電流遮断装置は、電極端子の電流入力を遮断することにより電池の過充電等の問題を回避することができる。したがって、重要な安全対策として、電流遮断装置の信頼性が非常に重要となり、即ち、電流遮断装置は、速やかに応答する必要がある。
【0030】
本開示において、各実施形態における電流遮断装置は、いずれも気圧を感知する機械的構造であり、いくつかの実施例では、電流遮断装置は、単電池のケース内部のガスと連通し、かつ気圧の作用下で流れる電流を遮断することができる。いくつかの実施例では、内部の部材接続を切断して電流の伝達を遮断することにより、電池の充放電をタイムリーに遮断することができる。利用される気圧は、電池が過充電等の危険状態にある場合、電池の内部にガスが発生してケース内部の気圧が上昇するか、又は電池が使用中に異常が発生して電池の温度が上昇する場合、電池の内部の気圧が上昇することにより、電流遮断装置を駆動する気圧動力が発生することに由来する。
【0031】
図2図3に示すような実施形態を例として、該電流遮断装置は、切り込み部材101と、該切り込み部材101に互いに電気的に接続される反転部材102とを有し、かつ気圧の作用下で反転部材102が電極内部端子109から電気的に切り離すことができる。本開示の実施形態では、両者のうち少なくとも一方が破壊される。例えば、一方の部材に壊れやすい切り込みを加工しておくことによって、電気的な接続を遮断することができる。いくつかの実施例では、切り込み部材101に切り込み104が形成されている。即ち、内部の気圧の作用下で、反転部材102の反転動作によって切り込み104を引き裂き両者の電気的な接続の切断を実現することにより、電流の伝達を切断するという目的を達成することができる。
【0032】
このような方式を用いる原因として、動力電池の分野では、通過する電流が大きいことが考えられるため、切り込み部材201と反転部材202との溶接構造の安定性を保証し、大電流による溶接構造の溶断を回避する必要がある。このように、切り込み部材101に切り込み104を設け、即ち、対応する部分に他の領域よりも強度が小さい脆弱部を加工することにより、切り込み部材101と反転部材102の完全な切断を完了することができ、切り込みが一般的には切り込み部材と反転部材との溶接領域の周囲に設けられて、両者の完全な切断を保証する。
【0033】
以下、図2及び図3を参照しながら本開示の2種の実施形態における切り込み部材101及び反転部材102を説明する。
【0034】
図2及び図3に示すように、本開示は、電流遮断装置の切り込み部材を提供し、該切り込み部材101は、切り込み104が形成された切り込み領域105と、反転部材102に電気的に接続するための第1の溶接領域103と、電極内部端子109に電気的に接続するための第2の溶接領域107とを含み、反転部材102は、気圧作用下で動作して切り込み104を引き裂くことにより切り込み部材101から電気的に切り離すことができ、反転部材102が切り込み104を引き裂いた後、反転部材102が第2の溶接領域107から電気的に切り離され、さらに電極内部端子109から電気的に切り離され、本開示では、切り込み104は、第1の溶接領域103の周囲に設けられ、第1の溶接領域103を囲む環状であってよく、かつ該第1の溶接領域103、第2の溶接領域107のうちの少なくとも1つと異なる面に設けられる。即ち、切り込み104の所在する平面と第1の溶接領域103及び第2の溶接領域107のうちの少なくとも1つとは一平面上に位置せず、このように、反転部材10からの外力による切り込み部材101上の切り込み104への機械的な衝撃を効果的に解消し、かつ溶接領域の溶接応力による切り込み104の所在する領域への熱影響を解消することができる。これにより、本開示に係る電流遮断装置の信頼性を向上させる。第1の溶接領域103を囲む切り込み104は、電池の内部の気圧の作用下で切断されてよく、この場合、反転部材102と切り込み部材101との電気的な接続を全体的に切断することにより電流遮断の作用を果たす。

【0035】
図3及び図4に示すように、第2の実施形態では、切り込み104は、第1の溶接領域103及び第2の溶接領域107が配置されていると面とは、異なる面に設けられ、いくつかの実施例では、第2の溶接領域107、切り込み領域105、第1の溶接領域103は、径方向に沿って外から内へ順に配置されているとともに、外から内に反転部材102に徐々に近づく段差構造に形成され、第2の溶接領域107も切り込み領域105と異なる面に設けられ、かつ三者で構成された段差構造は、緩衝作用を有し、2つの溶接領域の溶接応力による切り込み104への熱影響を回避し、また、電極内部端子の方向からの外力を緩衝することができることにより、電流遮断装置の信頼性をさらに向上させる。
【0036】
いくつかの実施例では、本開示の2つの実施形態では、図2及び図3に示すように、切り込み部材101は、該切り込み領域105から突出するボス106を含み、第1の溶接領域103は、ボス106に形成され、切り込み領域105に形成された切り込み104は、ボス106の周囲に設けられる。これにより、両者の所在する領域が異なる面に設けられることを実現し、いくつかの実施例では、第1の溶接領域103は、ボス106の上表面によって形成され、かつ切り込み領域105と平行であり、該上表面の外周縁に環状の溶接接合点が設けられる。これに対応して、反転部材102の第1の接続領域115は、該ボス106を収容する接続孔として形成されてよい。これにより、環状の溶接接合点によりボスの外周縁と接続孔の内壁とを強固に溶接する。ボスは、円柱状構造であってもよく、円柱状構造の軸方向に貫通孔構造を有してもよく、他の実施形態では、さらに様々な突起構造又は窪み構造により、両者の領域が異なる面に設けられることを実現してもよい。
【0037】
図2に示すように、第1の実施形態では、電池の電極内部端子109に電気的に接続するために、一般的には電極内部端子109の先端に収容溝を設け、そのため、切り込み領域105の外周縁にボスと同方向に突出する環状壁108が形成され、環状壁108の上縁部とボス106の上縁部とは高さ方向に面一であり、第2の溶接領域107は、環状壁108の外周縁に形成され、かつボスの上縁部と高さ方向に面一であり、即ち、該環状壁の外壁の上縁部は、電池の電極内部端子109に電気的に接続されて第2の溶接領域を形成し、電極内部端子109の収容溝の溝壁形状に合わせて環状の溶接接合点で溶接され、また、このような実施形態では、切り込み部材101は、電極内部端子109の収容溝に完全に収容されてよく、構造が安定する。即ち、第1の実施形態では、第1の溶接領域103と第2の溶接領域107が面一であるとともに、切り込み領域105と異なる面に設けられる。
【0038】
図3に示すように、第2の実施形態では、電極内部端子109に依然として収容溝が設けられるが、切り込み部材101のボス106は、該収容溝から突出し、いくつかの実施例では、切り込み領域105の外周縁にボス106とは逆方向に突出する環状壁108が形成され、第2の溶接領域107は、環状壁108の外周縁に形成され、かつ切り込み領域105と平行であることにより、切り込み部材101は上記段差構造に形成され、第2の溶接領域107の外周縁に電池の電極内部端子109に電気的に接続するための環状の溶接接合点が形成され、いくつかの実施例では、第2の溶接領域107の下表面が収容溝の底壁に配置され、外周縁と収容溝の側壁とが環状の溶接接合点により溶接されてもよく、構造が同様に安定する。即ち、第2の実施形態では、第1の溶接領域103、切り込み領域105及び第2の溶接領域107はいずれも異なる面に設けられる。
【0039】
第2の実施形態では、図3に示すように、ボスの側壁と環状壁108は、それぞれ切り込み領域105と垂直であり、他の実施形態では、一定の角度を有し、例えばZ字形の段差を形成してよい。また、第1の溶接領域103、切り込み領域105及び第2の溶接領域107は、それぞれ環状構造であってもよく、即ち、第1の溶接領域103は、中心孔を有し、他の実施形態では、第1の溶接領域103は、中心孔を有しなくてもよい。
【0040】
以上、2つの実施形態における切り込み部材101について説明しており、以下、2つの実施形態における反転部材102について説明する。
【0041】
図2図5に示すように、反転部材102には、切り込み部材101に電気的に接続するための第1の接続領域115と、電池の電極外部端子112に電気的に接続するための第2の接続領域116とが形成されている。図2及び図5に示すように、反転部材102には、第1の接続領域115と第2の接続領域116との間に第1の接続領域115の周囲に設けられた変形緩衝領域117がさらに形成されている。変形緩衝領域とは、外力作用下で該領域が反転部材102、第1の接続領域115、第2の接続領域116及び切り込み部材101の中で、先に変形することにより該外力を緩衝する領域を指す。さらに外力による第1の接続領域115及び切り込み部材101上の切り込み104への衝撃を緩和して、電流遮断装置の信頼性を向上させる。
【0042】
本開示の2つの実施形態では、反転部材102は、円錐台形状に形成されたシート状構造であり、円錐台の上底は第1の接続領域115として形成され、下底は切り込み部材101から離れて第2の接続領域116として形成される。円錐台形状により、第1の接続領域115と第2の接続領域116を異なる面に設けることができ、かつ反転部材102が力を受けて上向きに反転するスペースを提供して、切り込み104を引き裂くことができる。他の可能な実施形態では、反転部材は、さらに弾性を有する平面部材等であってもよい。
【0043】
図2及び図5に示すように、本開示における変形緩衝領域117は、第1の接続領域115を囲む環状溝構造に形成される。このように、外力作用下で、環状溝の溝壁の間の相対運動により変形緩衝の作用を実現することができる。他の可能な実施形態では、変形緩衝領域117は、さらに変形チャンバなどの構造又は弾性材料により実現されてもよい。
【0044】
図2及び図5に示すように、第1の実施形態では、環状溝構造の径方向断面は、円弧状であり、例えば、電極外部端子112に向かって突出した半円形状である。このように、第2の接続領域116からの外力は、円弧状の溝壁の変形によって吸収されて、第1の接続領域115及び切り込み部材101への衝撃を低減することができる。他の可能な実施形態では、環状溝の断面は、角型であってもよく、即ち、断面が角度をなす2つの辺を有し、同様に緩衝作用を果たすことができる。
【0045】
図3に示すように、第2の実施形態では、第2の実施形態における切り込み部材101のボス106は、電極内部端子の収容溝に突出する。
【0046】
図2及び図3に示すように、本開示の2つの実施形態では、電池内部のガスにより作用できることを保証するために、反転部材102の外周縁の下側とカバープレート110との間に支持環113が密封接続され、電極外部端子112の外周縁が反転部材102の外周縁の上側に電気的に接続され、このように、電池内部から発生したガスは、反転部材102に作用して外部に漏れないようにすることができる。反転部材102を正常に動作させることができるために、電極外部端子112は、キャップ構造に形成され、かつ反転部材102の動作時にガスを排出するための貫通孔118が形成されることにより、気圧の作用下で反転部材の動作に影響を与えることを回避する。また、カバープレート110の帯電と絶縁との2つの実施形態では、支持環113は、絶縁材料又は導電性材料を用いて支持されてよい。一般的には、支持環113は、カバープレート110が絶縁されて帯電しないように、セラミック環であってよい。いくつかの実施例では、支持環113の内壁に支持フランジ114が形成され、反転部材102及び電極外部端子112の外周縁が支持フランジ114の上表面に支持されることにより、電流遮断装置の安定動作を保証する。
【0047】
本開示に係る電流遮断装置は、上記切り込み部材101及び上記反転部材102を含み、切り込み部材101は、第1の溶接領域103を介して反転部材102に互いに電気的に接続される。
【0048】
本開示に係る電池カバープレートアセンブリは、図6に示すように、カバープレート110と、該カバープレート110の内側に位置する電極内部端子109と、該カバープレート110の外側に位置する電極外部端子112とを含み、電極内部端子109と電極外部端子112とが上記電流遮断装置によって電気的に接続され、電極外部端子112が反転部材102に電気的に接続され、切り込み部材101が電極内部端子109に電気的に接続される。
【0049】
電極内部端子と、セルに電気的に接続されたインナーリード120とが溶接され、いくつかの実施例では、インナーリード120に溶接孔を形成することができ、電極内部端子109は、柱状構造に形成され、かつ該溶接孔に嵌め込まれてインナーリード120と溶接される。カバープレート110が帯電することを回避するために、カバープレート110とインナーリード120との間にカバープレート絶縁部材122が設けられ、電極内部端子は、隙間を有して該カバープレート絶縁部材を貫通して切り込み部材101と溶接することができ、また、密封性を保証するために、支持環113の下端がカバープレートに溶接され、セラミックを材料として選択して、電流遮断装置とカバープレート110との絶縁を保証することができ、カバープレートに孔路が形成されて、電流遮断装置の取り付けに役立つ。また、電池内部のガスが反転部材102に作用できることを保証するために、インナーリード120に気孔121が形成されることにより、ガスは該気孔121により反転部材102に作用することができる。
【0050】
本開示に係る単電池は、ケース111と、ケース内に収容されたセルと、ケースを封止する上記電池カバープレートアセンブリとを含み、電極内部端子109がセルに電気的に接続され、かつ反転部材102がケースの内部ガスと連通する。電流遮断装置の反転部材は、前記反転部材102が切り込み部材101に互いに電気的に接続され、かつ気圧の作用下で動作して前記切り込み部材101上の切り込み104を引き裂くことができ、切り込み104を引き裂いた後に電極内部端子109から電気的に切り離すことができ、前記反転部材102には、前記切り込み部材101に電気的に接続するための第1の接続領域115と電池の電極外部端子112に電気的に接続するための第2の接続領域116とが形成され、さらに前記第1の接続領域115と前記第2の接続領域116との間に前記第1の接続領域115の周囲に設けられた変形緩衝領域117が形成されている。
【0051】
いくつかの実施例では、前記反転部材102は、円錐台形状に形成されたシート状構造であり、円錐台形状の上底側の端部は前記第1の接続領域115として形成され、下底側の端部は前記切り込み部材から離れて前記第2の接続領域116として形成される。
【0052】
いくつかの実施例では、前記変形緩衝領域117は、前記第1の接続領域115を囲む環状溝構造に形成される。
【0053】
いくつかの実施例では、前記環状溝構造の径方向断面は、円弧状又は角型である。
【0054】
電流遮断装置は、切り込み部材101及び反転部材102を含み、前記反転部材102は、上記のいずれかに記載の反転部材102であり、前記第1の接続領域115を介して前記切り込み部材101に電気的に接続される。
【0055】
いくつかの実施例では、前記切り込み部材101は、前記切り込み104が形成された切り込み領域105と、反転部材102に互いに電気的に接続するための第1の溶接領域103と、電極内部端子109に電気的に接続するための第2の溶接領域107とを含み、前記第2の溶接領域107、前記切り込み領域105及び前記第1の溶接領域103は、径方向に沿って外から内へ順に配置されているとともに、外から内へ前記反転部材102に徐々に近づく段差構造に形成され、前記切り込み104は、前記第1の溶接領域103の周囲に設けられる。
【0056】
いくつかの実施例では、前記切り込み部材101に該切り込み領域105から突出するボス106が形成され、前記第1の溶接領域103は、前記ボス106の上表面によって形成され、かつ前記切り込み領域と平行であり、該上表面の外周縁に環状の溶接接合点が設けられる。
【0057】
いくつかの実施例では、前記切り込み領域105の外周縁に前記ボスとは逆方向に突出する環状壁108が形成され、前記第2の溶接領域107は、前記環状壁108の外周縁に形成され、かつ前記切り込み領域105と平行であり、前記第2の溶接領域107の外周縁に環状の溶接接合点が形成される。
【0058】
電池カバープレートアセンブリは、カバープレート110と、該カバープレート110の内側に位置する電極内部端子109と、該カバープレート110の外側に位置する電極外部端子112とを含み、前記電極内部端子109と前記電極外部端子112とが電流遮断装置によって電気的に接続され、前記電流遮断装置は、上記のいずれかに記載の電流遮断装置であり、前記電極外部端子112が前記反転部材102に電気的に接続され、前記切り込み部材101が前記電極内部端子109に電気的に接続される。
【0059】
いくつかの実施例では、前記反転部材102の外周縁の下側と前記カバープレート110との間に支持環113が密封接続され、前記電極外部端子112の外周縁が前記反転部材102の外周縁の上側に電気的に接続される。
【0060】
いくつかの実施例では、前記支持環113の内壁に支持フランジ114が形成され、前記反転部材102及び前記電極外部端子112の外周縁が前記支持フランジ114の上表面に支持される。
【0061】
単電池は、ケース111と、ケース内に収容されるセルと、前記ケースを封止する電池カバープレートアセンブリとを含み、前記電池カバープレートアセンブリは、上記のいずれかに記載の電池カバープレートアセンブリであり、前記電極内部端子109が前記セルに電気的に接続され、前記反転部材102が前記ケースの内部ガスと連通する。
【0062】
本開示に係る電池モジュールは、内部に上記単電池が設けられている。
【0063】
本開示に係る動力電池は、パック本体と、該パック本体内に設けられる上記電池モジュールとを含む。
【0064】
本開示に係る電動自動車は、上記動力電池が設けられている。
【0065】
以上、図面を参照しながら本開示の5つの実施形態を詳細に説明したが、本開示は、上記実施形態の具体的な内容に限定されるものではなく、本開示の技術的思想の範囲内に、本開示の技術手段に対して複数の簡単な変更を行うことができ、これらの簡単な変更がいずれも本開示の保護範囲に属する。
【0066】
なお、上記具体的な実施形態に説明された各具体的な技術的特徴は、矛盾しない場合に、いずれの適当な方式によって組み合わせることができ、不要な重複を回避するために、本開示は、可能なあらゆる組み合わせ方式を別途に説明しない。
【0067】
また、本開示の様々な実施形態は、任意に組み合わせることができ、本開示の思想から逸脱しない限り、同様に本開示に開示されている内容と見なすべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6