(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-24
(45)【発行日】2022-02-01
(54)【発明の名称】ベルトコンベヤ装置
(51)【国際特許分類】
B65G 21/12 20060101AFI20220125BHJP
B65G 15/08 20060101ALI20220125BHJP
【FI】
B65G21/12 B
B65G15/08 A
(21)【出願番号】P 2017058232
(22)【出願日】2017-03-23
【審査請求日】2020-02-20
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104190
【氏名又は名称】酒井 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】細川 正宏
【審査官】小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-078320(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2002/0153231(US,A1)
【文献】特開2010-018378(JP,A)
【文献】特開昭52-118777(JP,A)
【文献】特開2010-080132(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 21/12
B65G 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状のベルト部材と、
前記ベルト部材の鉛直方向下側に配置され、前記ベルト部材に外周面を当接した状態で回転することにより当該ベルト部材を回転させるローラ部材と、
前記ローラ部材を回転可能に支持するローラ架台と、
前記ローラ架台を支持する駆体と、
軸部の外周面に雄ネジが切られた
頭部を有するボルト部材と当該ボルト部材の雄ネジに螺合する雌ネジが切られた締結部材とを備え、
前記駆体および当該駆体に対して鉛直方向下側に位置づけられる前記ローラ架台を、前記頭部が上側になるようにして上側から下側へ鉛直方向に貫通した状態の前記ボルト部材に前記締結部材を
前記頭部とによって当該駆体および当該ローラ架台を挟み込むように鉛直方向下側から螺合することによって前記駆体に前記ローラ架台を連結する連結機構と、
を備え、
前記連結機構は、前記ボルト部材または当該ボルト部材に螺合された前記締結部材を当該ボルト部材の軸部の軸心を中心として時計回りまたは反時計回りのいずれかの方向に回転させることによって、当該ボルト部材の軸部における当該締結部材の位置に応じて、当該ボルト部材の
前記頭部と当該締結部材との軸心方向の距離を接近させ
、前記駆体に前記ローラ架台を連結させて、当該ローラ架台を、前記ローラ部材が前記ベルト部材を回転させる位置と、当該ボルト部材の
前記頭部と当該締結部材との軸心方向の距離を離間させ
、当該駆体および当該ローラ架台との鉛直方向の距離を離間させて、前記ローラ部材が鉛直方向下側へ移動するように、前記ローラ部材と前記ベルト部材とが所定距離離間する位置と、の間において前記軸部に沿って移動可能に連結し、
前記ボルト部材の軸部の長さは、前記ローラ架台に対する前記ローラ部材の交換作業に際して当該ローラ部材と当該ベルト部材との間に確保する必要がある作業空間の高さ方向の寸法よりも長いことを特徴とするベルトコンベヤ装置。
【請求項2】
前記ボルト部材の軸部には、当該軸部に対する前記締結部材の位置を案内する指標が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のベルトコンベヤ装置。
【請求項3】
前記指標は、前記軸部の長さ方向に沿って等間隔で複数設けられていることを特徴とする請求項2に記載のベルトコンベヤ装置。
【請求項4】
前記連結機構は、単一の前記ローラ架台を、複数組の前記ボルト部材および前記締結部材によって前記駆体に連結することを特徴とする請求項2または3に記載のベルトコンベヤ装置。
【請求項5】
前記指標は、色が異なる複数のマークを、前記軸部の長さ方向に沿って配列することによって構成されていることを特徴とする請求項2~4のいずれか一つに記載のベルトコンベヤ装置。
【請求項6】
前記指標は、前記軸部の外周面であって、前記軸部の長さ方向における同一位置において環状に設けられていることを特徴とする請求項2~5のいずれか一つに記載のベルトコンベヤ装置。
【請求項7】
前記ボルト部材および前記締結部材は、少なくとも一方が、取り外し可能に設けられていることを特徴とする請求項1~6のいずれか一つに記載のベルトコンベヤ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、石炭などの搬送に用いるベルトコンベヤ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
帯状のコンベヤベルトをコンベヤローラによって所定方向に送ることによって、コンベヤベルト上に載置された石炭などを搬送するベルトコンベヤ装置がある。このようなベルトコンベヤ装置において、コンベヤローラは、ローラ架台によって回転可能に支持されている。ローラ架台は、コンベヤローラの下方からコンベヤローラを支持する。コンベヤベルトの上方には、コンベヤベルトからの石炭などの脱落を防止するスカートゴムなどのパーツが設けられている。
【0003】
コンベヤローラは使用や経時にともなって劣化する消耗品であるため、異音が発生した場合や破損した場合に別のコンベヤローラに取り替えている。従来、コンベヤローラの取り替えに際しては、ローラ架台を取り外したり、スカートゴムやコンベヤベルトを取り外したりしてコンベヤローラを露出させる。
【0004】
関連する技術として、具体的には、従来、たとえば、レバーの突出片が特定方向に向けられた状態のときは引き出すことはできないローラ台を、レバー操作によってベルトコンベアの幅方向にスライドさせながら引き出すことができるようにした技術があった(たとえば、下記特許文献1を参照。)。
【0005】
また、関連する技術として、具体的には、従来、たとえば、センターキャリアローラを支持する一対の内側アームの外側に外側アームを設け、外側アームと内側アームとの間でそれぞれサイドキャリアローラを支持し、各キャリアローラによって無端搬送ベルトの輸送面を船底状に保持するベルトコンベアのキャリアローラ支持装置において、外側アームのローラ軸受け部を無端搬送ベルトから離れる方向に移動可能とすることにより、ベルトコンベアの輸送面を持ち上げることなくサイドキャリアローラを側方に引き出すことができるようにした技術があった(たとえば、下記特許文献2を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-011175号公報
【文献】特開平11-029211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した従来の技術は、コンベヤローラの取り替えに際して、重量が大きいローラ架台を取り外したり、スカートゴムやコンベヤベルトを取り外したりしなくてはならず、作業が煩雑であり作業に時間がかかって作業者の負担が大きいという問題があった。また、上述した特許文献に記載された従来の技術は、構造が複雑であり、また、取り替え作業が煩雑であって作業者の負担が大きいという問題があった。
【0008】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、ローラ部材の取り替え作業を容易化し、作業者の負担軽減を図ることができるベルトコンベヤ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、この発明にかかるベルトコンベヤ装置は、環状のベルト部材と、前記ベルト部材に外周面を当接した状態で回転することにより当該ベルト部材を回転させるローラ部材と、前記ローラ部材を回転可能に支持するローラ架台と、前記ローラ架台を支持する駆体と、軸部の外周面に雄ネジが切られたボルト部材と当該ボルト部材の雄ネジに螺合する雌ネジが切られた締結部材とを備え、前記ローラ架台および前記駆体を貫通した状態の前記ボルト部材に前記締結部材を螺合することによって前記駆体に前記ローラ架台を連結する連結機構と、を備え、前記連結機構が、前記ボルト部材の軸部における前記締結部材の位置に応じて、前記ローラ架台を、前記ローラ部材が前記ベルト部材を回転させる位置と、前記ローラ部材と前記ベルト部材とが所定距離離間する位置と、の間において前記軸部に沿って移動可能に連結することを特徴とする。
【0010】
また、この発明にかかるベルトコンベヤ装置は、上記の発明において、前記ボルト部材の軸部には、当該軸部に対する前記締結部材の位置を案内する指標が設けられていることを特徴とする。
【0011】
また、この発明にかかるベルトコンベヤ装置は、上記の発明において、前記指標が、前記軸部の長さ方向に沿って等間隔で複数設けられていることを特徴とする。
【0012】
また、この発明にかかるベルトコンベヤ装置は、上記の発明において、前記連結機構が、単一の前記ローラ架台を、複数組の前記ボルト部材および前記締結部材によって前記駆体に連結することを特徴とする。
【0013】
また、この発明にかかるベルトコンベヤ装置は、上記の発明において、前記指標が、色が異なる複数のマークを、前記軸部の長さ方向に沿って配列することによって構成されていることを特徴とする。
【0014】
また、この発明にかかるベルトコンベヤ装置は、上記の発明において、前記指標が、軸部の外周面であって、軸部の長さ方向における同一位置において環状に設けられていることを特徴とする。
【0015】
また、この発明にかかるベルトコンベヤ装置は、上記の発明において、前記ボルト部材および前記締結部材の少なくとも一方が、取り外し可能に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
この発明にかかるベルトコンベヤ装置によれば、ローラ部材の取り替え作業を容易化し、作業者の負担軽減を図ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】この発明にかかる実施の形態のベルトコンベヤ装置の構成を示す説明図である。
【
図2】ボルト部材の構成を示す説明図(その1)である。
【
図3】ボルト部材の構成を示す説明図(その2)である。
【
図4】ボルト部材の構成を示す説明図(その3)である。
【
図5】ベルトコンベヤ装置におけるコンベヤローラの交換手順を示す説明図である。
【
図6】従来のベルトコンベヤ装置置におけるコンベヤローラの交換手順を示す説明図(その1)である。
【
図7】従来のベルトコンベヤ装置置におけるコンベヤローラの交換手順を示す説明図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかるベルトコンベヤ装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0019】
(ベルトコンベヤ装置の構成)
まず、この発明にかかる実施の形態のベルトコンベヤ装置の構成について説明する。
図1は、この発明にかかる実施の形態のベルトコンベヤ装置の構成を示す説明図である。
図1において、ベルトコンベヤ装置100は、コンベヤベルト(ベルト部材)101を備えている。
【0020】
コンベヤベルト101は、長尺状のベルトの両端をつないだ環状をなす。コンベヤベルト101は、プーリーローラなどによって構成される所定の支持機構によって、コンベヤベルト101がなす環を貫通する方向(コンベヤベルト101の軸心方向)が水平方向に略平行になる状態で支持されている。
【0021】
ベルトコンベヤ装置100は、コンベヤベルト101を一定の場所で循環するように回転させることにより、石炭などの搬送対象物を搬送する。ベルトコンベヤ装置100は、コンベヤベルト101を回転させ、コンベヤベルト101に搬送力を付与する搬送ユニットを備えている。ベルトコンベヤ装置100は、複数の搬送ユニット102を備えている。
【0022】
搬送ユニット102は、それぞれ、環状をなすコンベヤベルト101の内周側に設けられている。各搬送ユニット102は、それぞれ、複数(この実施の形態においては3つ)のコンベヤローラ(ローラ部材)103と、コンベヤローラ103を支持するローラ架台104と、によって構成されている。
【0023】
コンベヤローラ103は、略円柱形状をなし、コンベヤベルト101に鉛直方向側から外周面を当接させた状態で、軸心方向における両端部においてローラ架台104に支持されている。各搬送ユニット102において、コンベヤローラ103は、軸心方向に沿って直列に配置されている。コンベヤローラ103は、軸心方向がコンベヤベルト101の回転方向(ベルトコンベヤ装置100による搬送方向)に直交する方向に平行な状態で配置されている。
【0024】
ローラ架台104は、3本のコンベヤローラ103を、それぞれ回転可能に支持する。ローラ架台104は、コンベヤローラ103の軸心方向における両端位置を、コンベヤローラ103が回転可能な状態で支持する受け部を備えている。受け部は、各コンベヤローラ103の両端位置に対応する位置にそれぞれ設けられ、鉛直方向における上側ほど拡開する略U字形状をなす。
【0025】
各コンベヤローラ103は、両端位置を受け部にそれぞれ載置されることにより、ローラ架台104によって回転可能に支持される。コンベヤローラ103は、自重により、受け部に当接する方向(鉛直方向における下向き)に付勢され、これにより受け部に載置するだけで安定して回転することができる。
【0026】
ローラ架台104は、コンベヤベルト101の幅方向における中央部分が下側に凹んだ凹形状をなしている。各搬送ユニット102において、コンベヤローラ103は、それぞれ、ローラ架台104の凹面に沿って、凹面における底部と、コンベヤベルト101の幅方向における両側と、に配置されている。
【0027】
各ローラ架台104が支持する3本のコンベヤローラ103のうち、コンベヤベルト101の幅方向における両側に配置された2本のコンベヤローラ103は、コンベヤベルト101の幅方向における端部側ほど鉛直方向上側に位置するように、コンベヤベルト101の回転軸心方向に対して傾斜した姿勢で設けられている。これにより、コンベヤベルト101の蛇行を回避できる。
【0028】
コンベヤベルト101より鉛直方向上側には、スカート部材105および押さえ板106が設けられている。スカート部材105は、コンベヤベルト101の幅方向における両端側にそれぞれ設けられている。スカート部材105は、たとえば、ゴムやウレタンなどの所定の硬度と弾性とを備えた材料を用いて形成された平板形状をなす部材によって実現することができる。
【0029】
スカート部材105は、幅方向の一端がコンベヤベルト101より鉛直方向上方において固定され、幅方向の他端が固定された位置からコンベヤベルト101の搬送面側に垂れ下がるようにして配置されている。スカート部材105の他端は、コンベヤベルト101の搬送面に接触していてもよいし、コンベヤベルト101の搬送面から若干離間していてもよい。スカート部材105や押さえ板106を設けることにより、搬送対象物の落下や飛散を防止することができる。
【0030】
ローラ架台104は、駆体107によって支持されている。駆体107は、ベルトコンベヤ装置100が設置される床面などに対して位置固定された構造体によって実現することができる。ローラ架台104は、連結機構108を介して駆体107に取り付けられている。連結機構108は、ボルト部材109と締結部材110とによって構成されている。
【0031】
ボルト部材109は、円柱形状の軸部111と、軸部111の一端に設けられた頭部112と、を備えている。軸部111の外周面には、雄ネジが切られている。締結部材110は、環形状をなし、内周面に、ボルト部材109の雄ネジに螺合する雌ネジが切られている。締結部材110は、たとえば、ナットによって実現することができる。締結部材110は、単体で独立していてもよく、ローラ架台104などに固定されていてもよい。
【0032】
連結機構108は、駆体107およびローラ架台104にそれぞれ設けられた貫通孔に挿入されたボルト部材109の軸部111に締結部材110を螺合することによって、ローラ架台104を駆体107に連結する。駆体107およびローラ架台104にそれぞれ設けられた貫通孔は、それぞれ、鉛直方向に沿って、駆体107およびローラ架台104をそれぞれ貫通している。このため、ボルト部材109の軸部111は、鉛直方向に沿って駆体107および架台を貫通した状態で取り付けられる。
【0033】
ローラ架台104は、駆体107に対して鉛直方向下側に位置づけられる。連結機構108は、ボルト部材109の軸部111に螺合された締結部材110を締め付ける方向に回転させ、頭部112と締結部材110とによって駆体107およびローラ架台104を挟み込むことによって、コンベヤローラ103がコンベヤベルト101に当接する位置においてローラ架台104を駆体107に固定する。
【0034】
ボルト部材109は頭部112を鉛直方向における上側にした状態で取り付けられ、締結部材110は駆体107およびローラ架台104を間にして頭部112とは反対側である鉛直方向下側から軸部111に螺合される。このため、鉛直方向におけるローラ架台104の位置は、締結部材110によって規制される。
【0035】
ボルト部材109の軸部111は、軸心方向の寸法が、駆体107およびローラ架台104の厚み寸法よりも長い。軸部111の長さは、ローラ架台104に対するコンベヤローラ103の交換作業に際してコンベヤローラ103とコンベヤベルト101との間に確保する必要がある作業空間の高さ方向の寸法よりも長くする。作業空間は、コンベヤローラ103の直径寸法や、長さ寸法、および重量などによって適宜決定することができる。
【0036】
(ボルト部材109の構成)
つぎに、ボルト部材109の構成について説明する。
図2~
図4は、ボルト部材109の構成を示す説明図である。
図2~
図4に示すように、ボルト部材109の軸部111には、軸部111に対する締結部材110の位置を案内する指標が設けられている。指標は、軸部111に沿って複数設けられたマークによって実現することができる。
【0037】
複数のマークは、たとえば、
図2に示すように、定規の目盛りのように、軸部111の長さ方向に沿って等間隔で設けることができる。これにより、頭部112から何カ所目のマークであるかを確認することによって軸部111に対する締結部材110の位置、すなわち、駆体107に対するローラ架台104の下げ量を調整することができる。
【0038】
この場合、各マークの色や形状は一定であってもよく、マークごとに色を異ならせたり、形状を異ならせてもよい。具体的には、たとえば、軸部111のもっとも先端に設けられるマークのみ、他のマークの色あるいは形状と異ならせてもよい。これにより、締結部材110が軸部111の先端に近づいていることを容易かつ確実に案内することができ、締結部材110が不用意に脱落することを防止できる。
【0039】
あるいは、複数のマークは、
図3に示すように、踏切の遮断桿などのように、軸部111の長さ方向に沿って交互に異なる色が出現する各色の境目によって実現してもよい。交互に出現する色は、たとえば、黄色やオレンジなどの進出色と、黒色などの後退色(収縮色)と、によって実現することができる。この場合、各色の境目の他、頭部112から何カ所目のマークであるかを確認することによって軸部111に対する締結部材110の位置、すなわち、駆体107に対するローラ架台104の下げ量を調整することができる。
【0040】
あるいは、複数のマークは、
図4に示すように、軸部111の長さ方向に沿って異なる色が出現する各色の境目によって実現してもよい。この場合、各色の境目の他、何色のマークに締結部材110をあわせるかを確認することによって、駆体107に対するローラ架台104の下げ量を調整することができる。
【0041】
また、この場合、軸部111の先端側ほど、赤や黄色、あるいは黄色地に黒色の斜線など、警告の要素が強い色または模様を配置してもよい。これによっても、締結部材110が軸部111の先端に近づいていることを容易かつ確実に案内することができ、締結部材110が不用意に脱落することを防止できる。
【0042】
マークは、1つであってもよい。マークを1つ設ける場合、たとえば、マークとあわせて「ローラ交換位置」、「作業位置」などのようなコメントを設けてもよい。これにより、マークが1つしかないために見つけにくくなることを回避し、作業を確実かつ効率よくおこなわせることができる。
【0043】
また、マークを1つ設ける場合、コンベヤローラ103の交換作業に際してのローラ架台104の最適な位置に対応した締結部材110の位置、あるいは、軸部111の先端側に設けることが好ましい。これにより、作業者が迷うことなく締結部材110の位置すなわちローラ架台104の位置を定めることができ、作業を効率よくおこなうことができる。
【0044】
マークは、軸部111の外周面であって、軸部111の長さ方向における同一位置において環状に設けられていることが好ましい。これにより、いずれの方向からもマークを視認することができるので、ボルト部材109を軸心周りに回転させることによって軸部111に対する締結部材110の位置を調整することもでき、作業環境に応じてボルト部材109あるいは締結部材110のいずれに対しても作業をおこなうことができる。
【0045】
また、環状のマークとし、いずれの方向からもマークを視認することができることにより、締結部材110をローラ架台104に固定し、軸部111に対する締結部材110の位置を調整する際にはボルト部材109を回転させるように構成することもできる。これにより、締結部材110の不用意な落下や紛失を防止することができる。マークは、たとえば、塗装によって実現することができる。
【0046】
(コンベヤローラ103の交換手順)
つぎに、ベルトコンベヤ装置100におけるコンベヤローラ103の交換手順について説明する。
図5は、ベルトコンベヤ装置100におけるコンベヤローラ103の交換手順を示す説明図である。
【0047】
図5において、コンベヤローラ103の交換に際しては、まず、締結部材110を緩め、締結部材110を軸部111の軸心方向に沿って頭部112から離間させる。鉛直方向におけるローラ架台104の位置は締結部材110によって規制されているため、軸部111に対する締結部材110の螺合位置を調整し、頭部112と締結部材110との距離が、鉛直方向における駆体107およびローラ架台104の厚み寸法よりも長くなるようにすると、ローラ架台104は締結部材110の位置に追従して自重により下方へ移動する。
【0048】
これにより、ベルトコンベヤ装置100は、
図5における左側に示す状態から右側に示す状態に変化する。この実施の形態におけるベルトコンベヤ装置100によれば、
図5における右側に示す状態のように、ローラ架台104を駆体107に連結した状態で、ローラ架台104を駆体107から離間させ、コンベヤローラ103をコンベヤベルト101から離間させることができる。
【0049】
このため、コンベヤローラ103の交換作業に際して、ローラ架台104を駆体107から完全に取り外す場合と比較して、ローラ架台104が落下しないように支えたり、取り外したローラ架台104の運搬などにかかる作業をなくすことができ、作業効率の向上を図ることができる。また、このような作業をなくすことにより、作業者の負担を軽減および安全性の向上を図ることができる。
【0050】
上記のように、軸部111の長さはコンベヤローラ103の交換作業に要する作業空間の高さ方向の寸法よりも長いため、
図5における右側に示す状態のように、コンベヤローラ103をコンベヤベルト101から離間させることにより、コンベヤローラ103より鉛直方向上側に、コンベヤローラ103の交換作業にかかる作業空間を確保することができる。
【0051】
また、上記のように、コンベヤローラ103は、ローラ架台104が備える略U字型の受け部にそれぞれ載置されることによってローラ架台104に支持されているため、ローラ架台104を下げた状態でコンベヤローラ103のみを持ち上げることができ、ローラ架台104から容易に取り外し、新たなコンベヤローラ103などの別のコンベヤローラ103に交換することができる。
【0052】
ローラ架台104を下げた状態でコンベヤローラ103の交換をおこなった後は、締結部材110を締め、締結部材110を軸部111の軸心方向に沿って頭部112に近づける方向へ移動させる。これにより、頭部112と締結部材110との距離が徐々に小さくなり、ローラ架台104は締結部材110の位置に追従して自重により上方へ移動する。そして、頭部112と締結部材110とによって駆体107およびローラ架台104を挟み込む状態になるまで締結部材110を締めることによって、コンベヤローラ103がコンベヤベルト101に当接する位置においてローラ架台104を駆体107に固定する。
【0053】
この場合も、ローラ架台104を駆体107から完全に取り外す場合と比較して、駆体107に対するローラ架台104の位置を整えたり、そのためにローラ架台104を支えたりする作業をなくすことができるので、作業効率の向上を図り、作業者の負担を軽減および安全性の向上を図ることができる。
【0054】
この実施の形態のベルトコンベヤ装置100においては、軸部111に螺合された締結部材110の位置によって駆体107に対するローラ架台104の位置を定めることができる。これにより、頭部112と締結部材110との距離を調整することにより、駆体107に対するローラ架台104の位置を無段階に調整することができる。このため、頭部112と締結部材110との距離を調整することにより、スカート部材105とコンベヤベルト101との間隔が可能な限り小さくなるように調整することができ、搬送対象物の落下や飛散を防止することができる。
【0055】
コンベヤローラ103の交換作業に際しては、既設のコンベヤローラ103を材質や外形寸法などのサイズの異なる別のコンベヤローラ103に交換することもできる。この実施の形態のベルトコンベヤ装置100においては、交換前のコンベヤローラ103と交換後のコンベヤローラ103の外形寸法が異なる場合にも、頭部112と締結部材110との距離を調整することにより、駆体107に対するローラ架台104を任意の位置において固定することができ、コンベヤベルト101を確実に回転させることができる。
【0056】
この実施の形態のベルトコンベヤ装置100においては、軸部111の長さが異なるボルト部材109に交換することにより、ベルトコンベヤ装置100の設置後であっても、作業空間の高さ方向の最大寸法を調整することができる。これにより、たとえば、既設のコンベヤローラ103をサイズの異なる別のコンベヤローラ103に交換することができ、汎用性を高めることができる。そして、このような交換をおこなった場合にも、以降、ローラ架台104を駆体107に連結した状態で、ローラ架台104に対するコンベヤローラ103の交換作業をおこなうことができる。
【0057】
また、この実施の形態のベルトコンベヤ装置100においては、既設のローラ架台104をサイズの異なる別のローラ架台104に交換することも可能である。この実施の形態のベルトコンベヤ装置100によれば、駆体107およびローラ架台104の鉛直方向における寸法よりも軸部111が長く、かつ、作業空間の高さ方向の寸法を確保できる長さのボルト部材109を選択することにより、交換をおこなった場合にも、ローラ架台104を駆体107に連結した状態で、ローラ架台104に対するコンベヤローラ103の交換作業をおこなうことができる。
【0058】
以上説明したように、この発明にかかる実施の形態のベルトコンベヤ装置100は、環状のコンベヤベルト101と、コンベヤベルト101に外周面を当接した状態で回転することにより当該コンベヤベルト101を回転させるコンベヤローラ103と、コンベヤローラ103を回転可能に支持するローラ架台104と、ローラ架台104を支持する駆体107と、軸部111の外周面に雄ネジが切られたボルト部材109と当該ボルト部材109の雄ネジに螺合する雌ネジが切られた締結部材110とを備え、ローラ架台104および駆体107を貫通した状態のボルト部材109に締結部材110を螺合することによって駆体107にローラ架台104を連結する連結機構108と、を備えている。
【0059】
そして、連結機構108が、ボルト部材109の軸部111における締結部材110の位置に応じて、ローラ架台104を、コンベヤローラ103がコンベヤベルト101を回転させる位置と、コンベヤローラ103とコンベヤベルト101とが所定距離離間する位置と、の間において軸部111に沿って移動可能に連結することを特徴としている。
【0060】
この発明にかかる実施の形態のベルトコンベヤ装置100によれば、ボルト部材109の軸部111に対する締結部材110の螺合位置を変えることによって、ローラ架台104を駆体107から取り外すことなく軸部111に沿って移動させ、コンベヤローラ103の周囲に作業空間を確保することができる。これにより、ローラ架台104を駆体107に連結した状態でコンベヤローラ103の交換作業をおこなうことができる。
【0061】
ベルトコンベヤ装置100におけるコンベヤローラ103の交換に際しては、コンベヤローラ103の周囲に作業空間を確保する必要がある。従来のベルトコンベヤ装置600におけるローラの交換作業に際しては、たとえば、
図6に示すように、ボルト601からナット602を取り外し、駆体107からローラ架台104を取り外すことによってコンベヤローラ103の周囲に作業空間を確保する方法があった。
【0062】
しかしながら、石炭などのように重量物を搬送するベルトコンベヤ装置100においては、コンベヤローラ103の重量が重い。重いコンベヤローラ103を支持するローラ架台104も、また、強度や安定性を確保するため重量が重い。このため、従来のベルトコンベヤ装置600においては、駆体107からローラ架台104を取り外す作業や架台を駆体107に取り付ける作業に大きな労力を要していた。
【0063】
あるいは、従来のベルトコンベヤ装置600におけるローラの交換作業に際しては、たとえば、
図7に示すように、スカート部材105や押さえ板106およびコンベヤベルト101を取り外すことによってコンベヤローラ103の周囲に作業空間を確保する方法があった。しかしながら、スカートゴムやコンベヤベルト101は、搬送方向に沿って連続した長く大きい部材であるため、この方法を採用する場合、取り外す作業が煩雑であり時間がかかって作業者の負担が大きくなってしまう。
【0064】
これに対し、この発明にかかる実施の形態のベルトコンベヤ装置100によれば、ローラ架台104を駆体107に連結した状態で、コンベヤローラ103の周囲に作業空間を確保して、コンベヤローラ103の交換作業をおこなうことができるので、コンベヤローラ103の取り替え作業を容易化し、作業者の負担軽減を図ることができる。
【0065】
また、この発明にかかる実施の形態のベルトコンベヤ装置100によれば、連結機構108を介してローラ架台104を駆体107に連結することにより、鉛直方向におけるローラ架台104の位置の微調整をおこなうことができる。これにより、鉛直方向におけるコンベヤベルト101とスカート部材105との間隙を極力少なくすることができ、コンベヤベルト101からの落炭を防止することができる。
【0066】
また、この発明にかかる実施の形態のベルトコンベヤ装置100は、ボルト部材109の軸部111に、当該軸部111に対する締結部材110の位置を案内する指標が設けられていることを特徴としている。
【0067】
この発明にかかる実施の形態のベルトコンベヤ装置100によれば、指標と締結部材110との位置関係に基づいて、駆体107に対するローラ架台104の位置を案内することができる。これにより、作業者は、ローラ架台104をどの程度まで下げればよいかを容易かつ迅速に把握することができるので、コンベヤローラ103の取り替え作業を容易化し、作業者の負担軽減を図ることができる。
【0068】
また、この発明にかかる実施の形態のベルトコンベヤ装置100は、連結機構108が、単一のローラ架台104を、複数組のボルト部材109および締結部材110によって駆体107に連結することを特徴としている。
【0069】
この発明にかかる実施の形態のベルトコンベヤ装置100によれば、各ボルト部材109の軸部111にそれぞれ指標が設けられているため、単一のローラ架台104の連結にかかる各ボルト部材109の軸部111に対する締結部材110の位置を目視によって容易に確認することができる。これにより、複数のボルト部材109の軸部111に対する締結部材110の位置が均等になるように目視によって確認しながらローラ架台104を昇降させることができる。
【0070】
このように目視による確認ができることにより、単一のローラ架台104を複数組のボルト部材109および締結部材110によって駆体107に連結する構成であっても、ローラ架台104の水平度の維持を容易におこなうことができ、かつ、水平度を維持した状態でローラ架台104を昇降させることができる。
【0071】
ローラ架台104が水平方向に対して傾いてしまうと、たとえば、ボルト部材109の軸部111に対する締結部材110の位置がボルト部材109によってばらつき、特定のボルト部材109に荷重がかかってしまう。この場合、荷重がかかったボルト部材109が変形したり破損したりする懸念がある。
【0072】
これに対し、この発明にかかる実施の形態のベルトコンベヤ装置100によれば、ローラ架台104の水平度の維持を容易におこなうことができ、かつ、水平度を維持した状態でローラ架台104を昇降させることができるので、コンベヤローラ103の取り替え作業を容易化し、作業者の負担軽減を図ることができる。
【0073】
また、この発明にかかる実施の形態のベルトコンベヤ装置100によれば、各ボルト部材109の軸部111にそれぞれ指標が設けられているため、ローラ架台104を昇降させる作業を作業者1人でおこなうことも可能である。具体的には、単一のローラ架台104の連結にかかる各ボルトに対する締結部材110の位置を目視によって確認しながら少しずつ調整することで、ローラ架台104の水平度を維持した状態でローラ架台104を昇降させることができる。これによっても、コンベヤローラ103の取り替え作業を容易化し、作業者の負担軽減を図ることができる。
【0074】
このように、この発明にかかる実施の形態のベルトコンベヤ装置100によれば、作業者1人であっても複数であっても、コンベヤローラ103の取り替え作業を容易化し、作業者の負担軽減を図ることができる。
【0075】
また、この発明にかかる実施の形態のベルトコンベヤ装置100は、指標が、軸部111の外周面であって、軸部111の長さ方向における同一位置において環状に設けられていることを特徴としている。
【0076】
この発明にかかる実施の形態のベルトコンベヤ装置100によれば、ボルト部材109の外周面に対するいずれの方向からも指標の位置を確実に視認させることができる。これにより、作業者は、ボルト部材109に対する立ち位置などに左右されることなく、ボルト部材109の軸部111に対する締結部材110の位置を目視によって確認することができる。
【0077】
また、締結部材110の位置を固定してボルト部材109を回転させた場合にも、ボルト部材109の回転量にかかわらず、ボルト部材109の軸部111に対する締結部材110の位置を目視によって確認することができる。これにより、ローラ架台104の水平度を維持した状態でローラ架台104を容易に昇降させることができ、コンベヤローラ103の取り替え作業を容易化し、作業者の負担軽減を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
以上のように、この発明にかかるベルトコンベヤ装置は、環状のベルト部材によって搬送対象物を搬送するベルトコンベヤ装置に有用であり、特に、石炭などの搬送に用いるベルトコンベヤ装置に適している。
【符号の説明】
【0079】
100 ベルトコンベヤ装置
101 コンベヤベルト
103 コンベヤローラ
104 ローラ架台
107 駆体
108 連結機構
109 ボルト部材
110 締結部材
111 軸部