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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-24
(45)【発行日】2022-02-01
(54)【発明の名称】排気浄化装置およびこれを備えた車両
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/24 20060101AFI20220125BHJP
【FI】
F01N3/24 N
F01N3/24 E
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017156864
(22)【出願日】2017-08-15
(65)【公開番号】P2019035369
(43)【公開日】2019-03-07
【審査請求日】2020-06-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤野 竜介
【審査官】沼生 泰伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-089327(JP,A)
【文献】特開平05-240030(JP,A)
【文献】米国特許第03820327(US,A)
【文献】特開2007-255368(JP,A)
【文献】実開昭62-108514(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00- 3/38
F01N 9/00-11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディーゼルエンジンの排気通路に設けられた排気浄化装置であって、
酸化触媒を内包するケーシングを覆うとともに開閉機構により開閉されるヒートプロテクタを有する酸化触媒装置と、
前記酸化触媒に流入する排気の温度が所定の目標温度以上であり、かつ、前記酸化触媒装置の下流側に設けられたPM除去用のフィルタが強制再生処理中ではない場合に、前記ヒートプロテクタを開くように前記開閉機構を制御し、前記フィルタが強制再生処理中である場合に、前記ヒートプロテクタを閉じるように前記開閉機構を制御する制御装置と、
を有し、
前記ヒートプロテクタは、前記ケーシングの前記排気通路における下流側端部の外周面に、固定箇所を支点として回動可能に固定されている複数のヒートプロテクタ片によって構成されており、
前記開閉機構は、前記ヒートプロテクタを開くように制御された場合、前記複数のヒートプロテクタ片の前記排気通路における上流側端部を、前記ケーシングの外周面から離れる方向に、放射状に回動させる、
排気浄化装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記ディーゼルエンジンが搭載された車両が走行中であるか否かを判定し、走行中ではないと判定した場合には、前記排気温度および前記フィルタ強制再生処理であるか否かにかかわらず前記ヒートプロテクタを閉じるように前記開閉機構を制御する、
請求項1に記載の排気浄化装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の排気浄化装置を有する、
車両。
【請求項4】
ディーゼルエンジンの排気通路に設けられた排気浄化装置であって、
酸化触媒を内包するケーシングを覆うとともに開閉機構により開閉されるヒートプロテクタを有する酸化触媒装置と、
前記酸化触媒の温度が所定の目標温度以上であり、かつ、前記酸化触媒装置の下流側に設けられたPM除去用のフィルタが強制再生処理中ではない場合に、前記ヒートプロテクタを開くように前記開閉機構を制御し、前記フィルタが強制再生処理中である場合に、前記ヒートプロテクタを閉じるように前記開閉機構を制御する制御装置と、
を有し、
前記ヒートプロテクタは、前記ケーシングの前記排気通路における下流側端部の外周面に、固定箇所を支点として回動可能に固定されている複数のヒートプロテクタ片によって構成されており、
前記開閉機構は、前記ヒートプロテクタを開くように制御された場合、前記複数のヒートプロテクタ片の前記排気通路における上流側端部を、前記ケーシングの外周面から離れる方向に、放射状に回動させる、
排気浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、排気ガスを浄化する排気浄化装置およびこれを備えた車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ディーゼルエンジンから排出された排気中の粒子状物質(PM)を浄化する排気浄化装置として、PM除去用のフィルタと、このフィルタよりも上流側に配置された酸化触媒とを有する排気浄化装置が知られている(例えば特許文献1参照)。このような排気浄化装置において、酸化触媒はその酸化触媒作用によって、排気中の一酸化窒素(NO)を二酸化窒素(NO)に変化させる酸化反応を促進させる。この酸化触媒において生成された二酸化窒素によって、フィルタに堆積したPMを燃焼させて、二酸化炭素(CO)として排出させることができる。これにより、フィルタを再生させることができる。
【0003】
また、従来、ディーゼルエンジンのフィルタを強制的に再生させるために、例えばポスト噴射等を行うことでディーゼルエンジンの排気の温度を所定のフィルタ強制再生温度(例えば600℃)以上に昇温させて、フィルタのPMを強制的に燃焼させて除去するフィルタ強制再生処理も一般に行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-188579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、酸化触媒は、フィルタ強制再生温度よりも低温の所定温度(例えば300℃~400℃)において、他の温度帯と比較して、二酸化窒素を効率的に生成できる。このため、酸化触媒の温度をこのような所定温度の近傍に調整することができれば、フィルタ強制再生温度よりも低温で酸化触媒にて生成された二酸化窒素がフィルタに効果的に供給され、フィルタにPMが堆積し難くすることができる。この結果、フィルタの強制再生処理の実行頻度を低減させることができ、燃費低減を図ることができる。
【0006】
本開示の目的は、酸化触媒の温度を好適に調整することができる排気浄化装置およびこれを備えた車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の排気浄化装置は、ディーゼルエンジンの排気通路に設けられた排気浄化装置であって、酸化触媒を内包するケーシングを覆うとともに開閉機構により開閉されるヒートプロテクタを有する酸化触媒装置と、前記酸化触媒に流入する排気の温度が所定の目標温度以上であり、かつ、前記酸化触媒装置の下流側に設けられたPM除去用のフィルタが強制再生処理中ではない場合に、前記ヒートプロテクタを開くように前記開閉機構を制御し、前記フィルタが強制再生処理中である場合に、前記ヒートプロテクタを閉じるように前記開閉機構を制御する制御装置と、を有し、前記ヒートプロテクタは、前記ケーシングの前記排気通路における下流側端部の外周面に、固定箇所を支点として回動可能に固定されている複数のヒートプロテクタ片によって構成されており、前記開閉機構は、前記ヒートプロテクタを開くように制御された場合、前記複数のヒートプロテクタ片の前記排気通路における上流側端部を、前記ケーシングの外周面から離れる方向に、放射状に回動させる。
【0008】
本開示の車両は、上記排気浄化装置を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、酸化触媒の温度を好適に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】排気浄化装置が適用されたディーゼルエンジンシステムの構成を模式的に示す構成図
図2】DOC装置の構成を説明するための図
図3A】ヒートプロテクタが開閉する様子について例示した図
図3B】ヒートプロテクタが開閉する様子について例示した図
図4A】ヒートプロテクタの開閉が行われる仕組みについて説明するための図
図4B】ヒートプロテクタの開閉が行われる仕組みについて説明するための図
図5】制御装置による排気温度調整制御について説明するためのフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の各実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。ただし、必要以上に詳細な説明、例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明等は省略する場合がある。
【0012】
図1は、本開示の実施の形態に係る排気浄化装置20が適用されたディーゼルエンジンシステム1の構成を模式的に示す構成図である。ディーゼルエンジンシステム1は、ディーゼルエンジン10と、排気通路12と、排気浄化装置20とを備えている。また、ディーゼルエンジン10は、複数の気筒11と、真空ポンプ14とを備えている。なお、本実施の形態において、ディーゼルエンジンシステム1は、車両、特に例えばトラックやバス等の大型の車両に搭載されることが想定されている。
【0013】
排気通路12は、ディーゼルエンジン10から排出された排気が通過する通路であり、その上流側端部は複数本に分岐して各々の気筒11の排気ポートに接続されている。真空ポンプ14は、後述するアクチュエータ37の負圧室371内を負圧にする。
【0014】
排気浄化装置20は、排気通路12の通路途中に配置されている。排気浄化装置20は、制御装置21、DOC(Diesel Oxidation Catalyst)装置30、フィルタ40を備えている。
【0015】
制御装置21は、CPU、ROM、RAM等を有するマイクロコンピュータを備えており、排気浄化装置20の各構成を制御する。制御装置21は、後述する排気温度調整処理等の種々の処理を実行する。なお、本実施の形態において、制御装置21は、排気浄化装置20の構成要素として示されるが、例えばディーゼルエンジンシステム1全体を制御するECU(Engine Control Unit)であってもよい。
【0016】
フィルタ40は、PM除去用のフィルタである。フィルタ40は、排気流動方向においてDOC装置30よりも下流側に配置される。具体的には、フィルタ40は、フィルタ40を通過する排気Gに含まれるPMを捕集することで、排気Gに含まれるPMを除去する。フィルタ40の具体的な種類については特に限定しないが、例えばウォールフロータイプのディーゼルパティキュレートフィルタをフィルタ40として用いればよい。
【0017】
DOC装置30は、例えば白金(Pt)、パラジウム(Pd)等の貴金属触媒が担持された構成を有している。DOC装置30は、その貴金属触媒の酸化触媒作用によって、排気G中の一酸化窒素(NO)を二酸化窒素(NO)に変化させる酸化反応を促進させる。DOC装置30で生成された二酸化窒素は、下流側のフィルタ40に堆積したPMを燃焼させ、二酸化炭素(CO)として排出させる。これにより、フィルタ40に堆積するPMの量が常時低減される。
【0018】
図1に示すように、DOC装置30は、開閉機構31と、DOC本体32とを有する。図2に示すように、DOC本体32は、酸化触媒33、ケーシング34、ヒートプロテクタ35を有する。図2は、DOC装置30の構成を説明するための図である。
【0019】
図2に示すように、DOC本体32において、酸化触媒33が金属製(例えば耐熱性に優れたSUS304等のステンレス材)のケーシング34内に内包されている。図2に示すように、ケーシング34の前半(上流側)部分は、例えば頂点部分に排気通路12Uが接続されたほぼ円錐形に形成されており、後半(下流側)部分は円錐の底面部分と同じ直径を有するほぼ円柱形に形成されている。この円柱形の後半部分の内部に酸化触媒33が内包されている。また、ケーシング34の後半部分には排気通路12Dが接続されている。なお、以下の説明において、排気通路12のうちDOC装置30より上流側を排気通路12U、下流側を排気通路12Dと記載することがある。このような形状により、排気通路12Uからケーシング34に流入した排気Gは、ケーシング34の円錐部分の側面に沿って広がり、好適に酸化触媒33と接触する。これにより、排気G中の一酸化窒素が酸化触媒33の酸化触媒作用により二酸化窒素に変化する。このようにして二酸化窒素を多く含む排気Gが排気通路12Dから流出する。
【0020】
酸化触媒33の入口部分、すなわちケーシング34の前半部分と後半部分との接続部分付近には、温度センサTSが設けられる。この温度センサTSは、例えばセンサ部分がケーシング34の内部に突出するように設けられたサーミスタである。温度センサTSは制御装置21に接続されており、制御装置21は温度センサTSにより酸化触媒33に流入する排気Gの温度を取得することができる。
【0021】
ケーシング34は、ヒートプロテクタ35に覆われている。ヒートプロテクタ35は、金属製(例えば加工性に優れるSUS430等のステンレス材)の板で形成される。ヒートプロテクタ35は後述するように開閉可能に構成されるが、閉じた状態では、図2に示すように、上記説明したケーシング34と同様の形状(すなわち前半部分の円錐形と、後半部分の円柱形とを組み合わせた形状)を有する。
【0022】
ヒートプロテクタ35は、酸化触媒33およびケーシング34を保温するため、および、DOC装置30周辺に存在する物体(例えばディーゼルエンジンシステム1が搭載された車両の構成部品)を排気Gの熱から防護するために設けられる部材である。すなわち、ヒートプロテクタ35によって、酸化触媒33を通過する排気Gがおよび酸化触媒33が保温されるとともに、DOC装置30の周辺に存在する物体が高温の酸化触媒33の放射熱から防護される。
【0023】
ヒートプロテクタ35は、後述するアクチュエータ37および移動部材38によって開閉可能に構成されている。図3Aおよび図3Bはヒートプロテクタ35が開閉する様子について例示した図である。図3Aはヒートプロテクタ35が閉まった状態を示す斜視図であり、図3Bはヒートプロテクタ35が開いた状態を示す斜視図である。なお、図3Aおよび図3Bにおいては、開閉機構31については図示を省略している。
【0024】
図3Aおよび図3Bに示すように、ヒートプロテクタ35は、複数のヒートプロテクタ片351によって構成されている。複数のヒートプロテクタ片351のそれぞれは同じ形状を有し、閉じた状態において複数のヒートプロテクタ片351が互いに隣接するように円周状に隙間なく配置されることでヒートプロテクタ35が構成されている。このようにヒートプロテクタ35は複数のヒートプロテクタ片351が隙間なく配置されることで構成されているので、ヒートプロテクタ35が閉じた状態において、ヒートプロテクタ35の内部に収納されたケーシング34が外気に触れることはない。
【0025】
図3Bに示すように、ヒートプロテクタ片351は、それぞれが最後部(最も下流側)において蝶番部材352により回動可能にケーシング34に固定されている。すなわち、複数のヒートプロテクタ片351のそれぞれは、この蝶番部材352を支点として開閉する。なお、図3Bにおいては、紙面手前側のヒートプロテクタ片351のみが開いた様子を示しているが、実際には紙面奥側にもヒートプロテクタ片351が存在し、手前側と同様に開くことになる。
【0026】
図4Aおよび図4Bは、ヒートプロテクタ35の開閉が行われる仕組みについて説明するための図である。図4Aおよび図4Bでは、図2と同様にDOC装置30の断面図が示されている。図4Aはヒートプロテクタ35が閉まった状態を示す断面概略図であり、図4Bはヒートプロテクタ35が開いた状態を示す断面概略図である。なお、図4Aおよび図4Bにおいては温度センサTSおよび蝶番部材352の図示を省略している。
【0027】
図2に示す開閉機構31は、図4Aおよび図4Bに示す開閉バルブ36、アクチュエータ37、負圧室371、駆動部材372、移動部材38、接続部材39により構成される。
【0028】
開閉バルブ36は例えばVSV(Vacuum Switching Valve)等のバルブであり、制御装置21の制御に基づいてアクチュエータ37の負圧室371の接続先を大気と真空ポンプ14との間で切り替える。
【0029】
アクチュエータ37は、例えば負圧式ダイアフラムであって、負圧室371を有し、真空ポンプ14によって負圧室371が負圧となることで駆動部材372を駆動させる。アクチュエータ37が駆動部材372を駆動させる方向は、図4Aおよび図4Bにおける左右方向、すなわち排気通路12と平行な方向である。アクチュエータ37は、負圧室371が負圧となると、駆動部材372を下流側(図4Aおよび図4Bにおける右方向)へ向かって駆動させる(図4Bに対応)。一方、アクチュエータ37は、負圧室371が大気圧となると、駆動部材372を上流側(図4Aおよび図4Bにおける左方向)へ向かって駆動させる(図4Aに対応)。なお、アクチュエータ37によって駆動部材372が駆動可能な範囲(以下、駆動可能範囲と称する)は予め決まっており、図4Aは駆動部材372が駆動可能範囲において最も上流側へ駆動された状態に、図4Bは駆動部材372が駆動可能範囲において最も下流側へ駆動された状態に、それぞれ対応している。
【0030】
駆動部材372のアクチュエータ37とは反対側の端部には、移動部材38が接続されている。アクチュエータ37により駆動部材372が上流側あるいは下流側へ向かって駆動されると、移動部材38も上流側あるいは下流側へ向かって移動する。すなわち、移動部材38は、排気通路12およびケーシング34に対して平行移動する。
【0031】
図4Aおよび図4Bにおいては一部のみ図示しているが、移動部材38とヒートプロテクタ35のヒートプロテクタ片351のそれぞれとは複数の接続部材39を介して接続されており、各ヒートプロテクタ片351が移動部材38の移動に伴って開閉される。移動部材38は、例えば直径がヒートプロテクタ35の閉じた状態より大きい円筒形状を有し、その円筒の内部には排気通路12が配置される。図4Aおよび図4Bでは図示していないが、移動部材38が上流側に移動したとき、その円筒の内部にはヒートプロテクタ35が存在してもよいし、移動部材が下流側に移動したときには、その円筒に内部にフィルタ40が存在してもよい。
【0032】
以上をまとめると、以下のようになる。制御装置21により開閉バルブ36が大気側に切り替えられると、アクチュエータ37の負圧室371内が大気圧となり、駆動部材372および移動部材38は駆動可能範囲において最も上流側へ移動した状態となる。この状態では、各ヒートプロテクタ片351が接続部材39による引っ張り力を受けず、図4Aに示すようにヒートプロテクタ35が閉じる。一方、開閉バルブ36が真空ポンプ14側へ切り替えられると、アクチュエータ37の負圧室371内が負圧となり、駆動部材372および移動部材38は駆動可能範囲において最も下流側へ移動した状態となる。この状態では、各ヒートプロテクタ片351が接続部材39による引っ張り力を受け、図4Bに示すようにヒートプロテクタ35が開く。
【0033】
このようにして、制御装置21が開閉バルブ36を切り替えることにより、ヒートプロテクタ35の開閉が行われる。なお、図4Aおよび図4Bでは簡単のため、一部のヒートプロテクタ片351のみの開閉を図示しているが、実際には図3Aおよび図3Bに示すように全てのヒートプロテクタ片351の開閉が同時に行われる。
【0034】
ヒートプロテクタ35が開かれると、ケーシング34が外気に曝される。ケーシング34が外気に曝された状態では、曝されていない状態(ヒートプロテクタ35が閉じた状態)と比較してケーシング34の表面からの放熱率が大幅に上昇し、ケーシング34に内包された酸化触媒33を通過する排気Gおよび酸化触媒33の温度が低減される。なお、本実施の形態において、図4Bに示すようにヒートプロテクタ35が上流側に向かって開くように構成されているのは、排気通路12の上流側は一般的に車両の前方に対応しており、車両の走行による走行風が開いた状態のヒートプロテクタ35に流入しやすいからである。
【0035】
このように、制御装置21は、開閉機構31を制御してヒートプロテクタ35を開閉することにより、酸化触媒33を通過する排気Gおよび酸化触媒33の温度を調整することができる。以下では、制御装置21による排気Gの温度調整制御の詳細について説明する。
【0036】
図5は、制御装置21による排気温度調整制御について説明するためのフローチャートである。
【0037】
ステップS1において、制御装置21は、ディーゼルエンジンシステム1を搭載した車両が走行中であるか否かを判定する。走行中であるか否かの判定は、例えば制御装置21が車両の速度センサ等を監視し、現在速度が0でないとき走行中であると判定し、現在速度が0であるとき走行中ではないと判定すればよい。あるいは、制御装置21が走行中であるか否かを判定する基準値を、0ではない所定速度(例えば時速5km/h)等としてもよい。この場合、制御装置21は、現在速度が所定速度以上であるとき走行中であると判定し、現在速度が所定速度未満であるとき走行中ではないと判定すればよい。
【0038】
ステップS1において走行中であると判定した場合(ステップS1:YES)、制御装置21は処理をステップS2に進め、そうでない場合(ステップS1:NO)、ステップS5に進める。
【0039】
次に、ステップS2において、制御装置21は、酸化触媒33に流入する排気Gの温度を監視し、当該温度が所定の目標温度、例えば300℃以上であるか否かを判定する。制御装置21が監視する排気Gの温度は、温度センサTSにより取得される。
【0040】
なお、ステップS2の判定の基準となる所定の目標温度は、酸化触媒において二酸化窒素を効率的に生成できる温度(一般的には300℃~400℃)に基づいて定められた値である。なお、本実施の形態では目標温度を300℃に設定するとしたが、本開示はこれに限定されず、目標温度は300℃~400℃の間で適宜設定されればよい。
【0041】
ステップS2において排気Gが300℃以上であると判定した場合(ステップS2:YES)、制御装置21は処理をステップS3に進め、そうでない場合(ステップS2:NO)、処理をステップS5に進める。
【0042】
ステップS3において、制御装置21は、フィルタ40が強制再生処理中であるか否かを判定する。フィルタ40の強制再生処理とは、排気Gを高温(例えば600℃以上)とすることで、フィルタ40に捕集されたPMを燃焼させてフィルタ40の目詰まりを防止・解消する処理である。制御装置21は、メイン噴射より後の時期に気筒11に対して燃料を噴射するポスト噴射制御をディーゼルエンジン10に対して実行し、排気Gの温度を強制的に上昇させることでフィルタ40の強制再生処理を行う。
【0043】
ステップS3において、フィルタ40の強制再生処理を実行中である場合(ステップS3:YES)、制御装置21は処理をステップS5に進め、そうでない場合(ステップS3:NO)、処理をステップS4に進める。
【0044】
以上をまとめると、以下のようになる。制御装置21は、ディーゼルエンジンシステム1を搭載した車両が走行中、かつ酸化触媒33に流入する排気Gの温度が目標温度である300℃以上、かつフィルタ40の強制再生処理中ではない場合、処理をステップS4に進める。一方、制御装置21は、車両が走行中ではない、または酸化触媒33に流入する排気Gの温度が300℃未満、またはフィルタ40の強制再生処理中である場合、処理をステップS5に進める。
【0045】
ディーゼルエンジンシステム1を搭載した車両が走行中、かつ酸化触媒33に流入する排気Gの温度が300℃以上、かつフィルタ40の強制再生処理中ではない場合、ステップS4において、制御装置21は開閉機構31を制御して、ヒートプロテクタ35を開かせる。そうすると、上記説明したように、開かれたヒートプロテクタ35の隙間から走行風が吹き込み、ケーシング34を介して酸化触媒33に流入する排気Gの温度が徐々に低減される。
【0046】
車両が走行中ではない場合、または酸化触媒33に流入する排気Gの温度が300℃未満である場合、またはフィルタ40の強制再生処理中である場合には、ステップS5において、制御装置21は開閉機構を制御して、ヒートプロテクタ35を閉じさせる。そうすると、ケーシング34が外気に直接曝されなくなるため、酸化触媒33に流入する排気Gの排気Gの温度が徐々に上昇する。
【0047】
なお、図5に示す排気温度調整制御においては、酸化触媒33に流入する排気Gの温度を用いて判定を行っているが、これは、本開示において、酸化触媒33に流入する排気Gの温度が、酸化触媒33を通過する排気Gの温度、ひいては酸化触媒33の温度とほぼ等しいと見なしているからである。
【0048】
図5には図示を省略するが、ステップS1~S5の温度調整制御は、所定時間毎に(例えば数ミリ秒~数秒程度のスパンで)繰り返される。このような制御により、酸化触媒33に流入する排気Gの温度は、走行中かつフィルタ40の強制再生処理中ではない場合は、目標温度近傍に保たれる。これにより、酸化触媒33の温度も目標温度近傍に保たれ、酸化触媒33において二酸化窒素が効率的に発生する。その結果、排気Gの温度調整制御を行わない場合と比較して、フィルタ40に堆積するPMの量を低減させることができる。このため、フィルタ40の強制再生処理の実行頻度を低減させることができるので、ディーゼルエンジンシステム1における燃費低減を図ることができる。
【0049】
そして、フィルタ4の強制再生処理中ではヒートプロテクタ35が閉じられるので、ポスト噴射によって排気Gの温度を好適に上昇させることができる。このため、効率よくフィルタ40の強制再生処理を行うことができる。
【0050】
また、車両が走行中ではない場合、すなわち例えば信号待ち、踏切等の一時停止中、路肩等への停車中、駐車場等における駐車中等においては、酸化触媒33に流入する排気Gの温度およびフィルタ強制再生処理中であるか否かにかかわらず、ヒートプロテクタ35が閉じられる。このような場合、ディーゼルエンジン10は停止されるか、アイドリング回転等の低い回転数に保たれるので、酸化触媒33に流入する排気Gの温度は徐々に低減していく。これにより、走行中ではない車両から多大な熱が放出され、車両周囲の事物に危険が及ぼされる事態を防止することができる。
【0051】
<作用・効果>
以上説明したように、本開示の実施の形態に係る排気浄化装置20は、ディーゼルエンジン10の排気通路12に設けられた排気浄化装置20であって、酸化触媒33を内包するケーシング34を覆うとともに開閉機構31により開閉されるヒートプロテクタ35を有するDOC装置(酸化触媒装置)30と、酸化触媒33に流入する排気Gの温度が所定の目標温度(例えば300℃)以上であり、かつ、DOC装置30の下流側に設けられたPM除去用のフィルタ40が強制再生処理中ではない場合に、ヒートプロテクタ35を開くように開閉機構31を制御し、フィルタ40が強制再生処理中である場合に、ヒートプロテクタ35を閉じるように開閉機構31を制御する制御装置21と、を有する。
【0052】
このような構成により、酸化触媒33に流入する排気Gの温度は、フィルタ40の強制再生処理中ではない場合、酸化触媒33において二酸化窒素が効率的に発生する温度である目標温度近傍に保たれる。これにより、排気Gの温度調整制御を行わない場合と比較して、酸化触媒33において効率よく二酸化窒素が発生するので、フィルタ40においてPMが好適に除去され、フィルタ40に堆積するPMの量を低減させることができる。このため、フィルタ40の強制再生処理の実行頻度を低減させることができるので、強制再生処理のためのポスト噴射の回数を低減でき、ディーゼルエンジンシステム1における燃費低減を図ることができる。
【0053】
また、フィルタ40の強制再生処理中である場合には、酸化触媒33に流入する排気Gの温度にかかわらずヒートプロテクタ35が閉じられるので、ポスト噴射によって排気Gの温度を好適に上昇させることができる。これにより、排気Gの温度が強制再生処理に好適な温度(600℃)まで速やかに上昇するので、効率よくフィルタ40の強制再生処理を行うことができる。
【0054】
一方、本開示の実施の形態に係る排気浄化装置20において、制御装置21は、車両が走行中であるか否かを判定し、走行中ではないと判定した場合には酸化触媒33に流入する排気Gの温度およびフィルタ強制再生処理中であるか否かにかかわらず、開閉機構31を制御してヒートプロテクタ35を閉じる。
【0055】
このような構成により、車両が走行中ではない場合、すなわち例えば信号待ち、踏切等の一時停止中、路肩等への停車中、駐車場等における駐車中等においては、排気Gの温度が所定の目標温度より高いか否か、およびフィルタ強制再生処理中であるか否かにかかわらず、ヒートプロテクタ35が閉じられる。このような場合、ディーゼルエンジン10は停止されるか、アイドリング回転等の比較的低い回転数に保たれるので、排気Gの温度は徐々に低減していく。これにより、走行中ではない車両から多大な熱が放出され、車両周囲の事物に危険が及ぼされる事態を防止することができる。
【0056】
以上、図面を参照しながら各種の実施形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しうることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。また、開示の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施の形態における各構成要素は任意に組み合わせてられてもよい。
【0057】
上述した実施の形態において、フィルタ40の強制再生処理の方法としてポスト噴射を行う方法について説明したが、本開示はこれには限定されない。他の例として、例えば、排気通路12のフィルタ40よりも上流側に、排気中に燃料を噴射する排気管インジェクタを設け、制御装置21が排気管インジェクタから燃料を噴射させることで排気温度をフィルタ強制再生温度以上に上昇させる方法を採用してもよい。
【0058】
上述した実施の形態において、ヒートプロテクタ35は排気通路12の上流側、すなわち車両の前方に向かって開く例について説明した。しかしながら、本開示はこれに限定されず、ヒートプロテクタ35は、例えば車両の後方や側面方向等、他の方向に向かって開くようにしてもよい。
【0059】
また、上述した実施の形態において、排気温度調整処理において酸化触媒33に流入する排気Gの温度を用いて判定を行ったが、本開示はこれに限定されない。例えば酸化触媒33の温度を直接測定または推測等によって取得し、当該温度を用いて排気温度調整処理を行うようにしてもよい。酸化触媒33の温度を取得する方法としては、例えば酸化触媒33の入口の排気温度と出口の排気温度との差分に基づいて、酸化触媒33の温度を推測する方法等が挙げられる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本開示は、排気ガスを浄化する排気浄化装置に有用である。
【符号の説明】
【0061】
1 ディーゼルエンジンシステム
10 ディーゼルエンジン
11 気筒
12 排気通路
12D 排気通路
12U 排気通路
14 真空ポンプ
20 排気浄化装置
21 制御装置
30 DOC装置
31 開閉機構
32 DOC本体
33 酸化触媒
34 ケーシング
35 ヒートプロテクタ
351 ヒートプロテクタ片
352 蝶番部材
36 開閉バルブ
37 アクチュエータ
371 負圧室
372 駆動部材
38 移動部材
39 接続部材
TS 温度センサ
40 フィルタ
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5