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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-24
(45)【発行日】2022-02-01
(54)【発明の名称】異常点検装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 99/00 20110101AFI20220125BHJP
   H01Q 1/42 20060101ALI20220125BHJP
   G01N 21/84 20060101ALI20220125BHJP
   G01N 29/04 20060101ALI20220125BHJP
   G01N 29/12 20060101ALI20220125BHJP
   G01N 29/265 20060101ALI20220125BHJP
   G01N 29/22 20060101ALI20220125BHJP
   G01N 25/72 20060101ALI20220125BHJP
【FI】
G01M99/00 Z
H01Q1/42
G01N21/84 B
G01N21/84 D
G01N29/04
G01N29/12
G01N29/265
G01N29/22
G01N25/72 J
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2017238527
(22)【出願日】2017-12-13
(65)【公開番号】P2019105551
(43)【公開日】2019-06-27
【審査請求日】2020-10-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104190
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】藤井 敬三
(72)【発明者】
【氏名】双田 昌孝
(72)【発明者】
【氏名】本田 融
(72)【発明者】
【氏名】柚木 敏夫
(72)【発明者】
【氏名】若井 俊希
(72)【発明者】
【氏名】大田 良彦
【審査官】松岡 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-350283(JP,A)
【文献】特開2009-103462(JP,A)
【文献】特開2017-134074(JP,A)
【文献】特開平06-226477(JP,A)
【文献】特開昭63-252020(JP,A)
【文献】特表2009-506920(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 13/00-13/045、99/00
H01Q 1/42
G01N 21/84-21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円錐または半球形状をなすレドームの頂点に取り外し可能に取り付けられる固定用支点部と、
一端が前記固定用支点部に連結され他端が前記固定用支点部から離間する方向に延出する棒形状をなし、前記固定用支点部を中心として他端が前記円錐または半球形状の底面の円周上を移動するように回転可能な回転部材と、
前記回転部材に沿って移動可能な撮像装置と、
前記撮像装置によって撮像された画像に関する情報を出力する出力手段と、
を備えたことを特徴とする異常点検装置。
【請求項2】
前記回転部材の回転量と、前記回転部材における前記撮像装置の位置と、を制御する制御手段を備え、
前記出力手段は、前記制御手段により制御される前記回転量および前記撮像装置の位置に関する情報を関連づけた前記画像に関する情報を出力することを特徴とする請求項1に記載の異常点検装置。
【請求項3】
柄および当該柄の一端に取り付けられたヘッドを備えたハンマーと、前記ヘッドが前記レドームに対して接離する方向に揺動可能に前記ハンマーを支持する揺動機構と、前記ハンマーの近傍に位置づけられるマイクロフォンと、によって構成され、前記回転部材に沿って移動可能に設けられた打音点検部を備え、
前記制御手段は、前記回転部材における前記打音点検部の位置と、前記揺動機構による前記ハンマーの揺動動作と、を制御し、
前記出力手段は、前記制御手段により制御される前記打音点検部の位置および前記マイクロフォンによって集音された音声情報を含む前記画像に関する情報を出力することを特徴とする請求項2に記載の異常点検装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記マイクロフォンによって集音された音声情報に基づく周波数解析をおこない、
前記出力手段は、前記制御手段により制御される前記打音点検部の位置、および、前記マイクロフォンによって集音された音声情報または前記制御手段によっておこなわれた周波数解析による解析結果の少なくとも一方を含む前記画像に関する情報を出力することを特徴とする請求項3に記載の異常点検装置。
【請求項5】
前記撮像装置は、赤外線サーモグラフィカメラであることを特徴とする請求項1~4のいずれか一つに記載の異常点検装置。
【請求項6】
前記画像に関する情報を記憶する記憶部を備え、
前記出力手段は、前記記憶部に記憶された前記画像に関する情報を出力することを特徴とする請求項1~のいずれか一つに記載の異常点検装置。
【請求項7】
前記出力手段は、所定の端末装置に対して、前記画像に関する情報を無線通信により出力することを特徴とする請求項に記載の異常点検装置。
【請求項8】
前記回転部材における前記固定用支点部とは反対側に設けられた回転補助部材を備えたことを特徴とする請求項1~のいずれか一つに記載の異常点検装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、高所での目視による点検作業に用いる異常点検装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力会社は、6.5GHz帯、7.5GHz帯、12GHz帯などの周波数帯域(マイクロ波帯)の電波を用いた多重無線(マイクロ波無線)により大容量伝送を実現している。このようなマイクロ波無線に用いるパラボラアンテナ、無線鉄塔、導波管などの空中線施設は、5年に1回など、定期的に外観点検をおこなっている。
【0003】
従来、外観点検は、鉄塔部材や付属金物類に、異物が付着していないか、鳥などの小動物が営巣していないか、塗膜の状態が良好か、電波の通路に遮蔽物がないかなどを点検作業にかかる作業者が目視することによっておこなっていた。地上高20m~100m程度の高所に取り付けられているパラボラアンテナの外観点検は、墜落事故の危険を回避するため、柱上安全帯を装着しておこなっていた。
【0004】
関連する技術として、具体的には、従来、たとえば、レドームの表面を分割した複数の領域のうちの1つの対象領域につき、レドームの使用期間における太陽光紫外線日射エネルギー量の累積値を算出し、算出された累積値から対象領域における樹脂被膜の膜厚を推定し、推定された膜厚から対象領域における樹脂被膜の劣化の度合いを推定するレドーム樹脂被膜劣化推定方法に関する技術があった(たとえば、下記特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-136064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来の技術は、パラボラアンテナのレドームは、アンテナの前面を覗き込むために鉄塔やアンテナから身を乗り出す体勢をとらなくてはならず、安全帯を装着して外観点検をおこなっているものの、作業者の安全性において改善の余地があった。
【0007】
また、レドームを直接目視することによる外観点検に代えて、棒状部材の先端に取り付けた小型カメラによって撮像した画像を利用して外観点検する場合にも、棒状部材を突き出したり、レドームに対する小型カメラの位置を確認したりするためには、鉄塔やアンテナから身を乗り出す体勢をとらなくてはならず、作業者の安全性において改善の余地があった。
【0008】
この対策として、小型カメラを搭載したドローンを利用して外観点検をおこなうようにした場合、作業者の安全性を確保することはできるが、無線鉄塔の上部すなわち高所に設置されているパラボラアンテナの周囲には突風や強風が起こることがあり、ドローンを常時安定して空中浮揚(ホバリング)させる環境を確保することが難しく、外観点検の実施環境の自由度に制限があり実用性に劣るという問題があった。
【0009】
また、小型カメラを搭載したドローンを利用して外観点検をおこなう場合、人口集中地区の上空を飛行させるためには、航空法に基づき、安全性を確保するとともに飛行の許可を受ける手続きが必要であり、許可を受ける手続きが煩雑で作業性に劣るという問題があった。
【0010】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、外観点検作業にかかる作業者の安全性の確保および作業性の向上を図ることができる異常点検装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、この発明にかかる異常点検装置は、円錐または半球形状をなすレドームの中心に取り外し可能に取り付けられる固定用支点部と、一端が前記固定用支点部に連結され他端が前記固定用支点部から離間する方向に延出する棒形状をなし、前記固定用支点部を中心として他端が前記固定用支点部を中心とする円周上を移動するように回転可能な回転部材と、前記回転部材に沿って移動可能な撮像装置と、前記撮像装置によって撮像された画像に関する情報を出力する出力手段と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
また、この発明にかかる異常点検装置は、上記の発明において、前記回転部材の回転量と、前記回転部材における前記撮像装置の位置と、を制御する制御手段を備え、前記出力手段が、前記制御手段により制御される前記回転量および前記撮像装置の位置に関する情報を関連づけた前記画像に関する情報を出力することを特徴とする。
【0013】
また、この発明にかかる異常点検装置は、上記の発明において、柄および当該柄の一端に取り付けられたヘッドを備えたハンマーと、前記ヘッドが前記レドームに対して接離する方向に揺動可能に前記ハンマーを支持する揺動機構と、前記ハンマーの近傍に位置づけられるマイクロフォンと、によって構成され、前記回転部材に沿って移動可能に設けられた打音点検部を備え、前記制御手段が、前記回転部材における前記打音点検部の位置と、前記揺動機構による前記ハンマーの揺動動作と、を制御し、前記出力手段が、前記制御手段により制御される前記打音点検部の位置および前記マイクロフォンによって集音された音声情報を含む前記画像に関する情報を出力することを特徴とする。
【0014】
また、この発明にかかる異常点検装置は、上記の発明において、前記制御手段が、前記マイクロフォンによって集音された音声情報に基づく周波数解析をおこない、前記出力手段が、前記制御手段により制御される前記打音点検部の位置、および、前記マイクロフォンによって集音された音声情報または前記制御手段によっておこなわれた周波数解析による解析結果の少なくとも一方を含む前記画像に関する情報を出力することを特徴とする。
【0015】
また、この発明にかかる異常点検装置は、上記の発明において、前記撮像装置が、赤外線サーモグラフィカメラであることを特徴とする。
【0016】
また、この発明にかかる異常点検装置は、上記の発明において、一端が前記固定用支点部に固定され前記レドームの半径寸法より長い棒形状をなす固定部を備えたことを特徴とする。
【0017】
また、この発明にかかる異常点検装置は、上記の発明において、前記固定部が、長さ方向において伸縮可能であることを特徴とする。
【0018】
また、この発明にかかる異常点検装置は、上記の発明において、前記画像に関する情報を記憶する記憶部を備え、前記出力手段が、前記記憶部に記憶された前記画像に関する情報を出力することを特徴とする。
【0019】
また、この発明にかかる異常点検装置は、上記の発明において、前記出力手段が、所定の端末装置に対して、前記画像に関する情報を無線通信により出力することを特徴とする。
【0020】
また、この発明にかかる異常点検装置は、上記の発明において、前記回転部材における前記固定用支点部とは反対側に設けられた回転補助部材を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
この発明にかかる異常点検装置によれば、外観点検作業にかかる作業者の安全性の確保および作業性の向上を図ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】この発明にかかる実施の形態の異常点検装置の外観構造を示す説明図である。
図2】この発明にかかる実施の形態の異常点検装置の分解した状態を示す説明図である。
図3】この発明にかかる実施の形態の異常点検装置のハードウエア構成を示す説明図である。
図4】パラボラアンテナの一例を示す説明図(その1)である。
図5】パラボラアンテナの一例を示す説明図(その2)である。
図6】パラボラアンテナの一例を示す説明図(その3)である。
図7】この発明にかかる実施の形態の異常点検装置を用いた異常点検の作業手順を示す説明図(その1)である。
図8】この発明にかかる実施の形態の異常点検装置を用いた異常点検の作業手順を示す説明図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる異常点検装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0024】
(異常点検装置の外観構造)
まず、この発明にかかる実施の形態の異常点検装置の外観構造について説明する。図1は、この発明にかかる実施の形態の異常点検装置の外観構造を示す説明図である。図2は、この発明にかかる実施の形態の異常点検装置の分解した状態を示す説明図である。
【0025】
図1および図2において、この発明にかかる実施の形態の異常点検装置100は、固定用支点部110と、固定部120と、回転部材130と、撮像装置140と、を備えている。固定用支点部110は、円錐または半球形状をなすレドーム(図5および図6を参照)の中心に、取り外し可能に取り付けられる。
【0026】
具体的に、固定用支点部110は、たとえば、真空チャックなどと称される、対象を真空で吸引して固定するチャック装置によって実現することができる。真空チャックによって固定用支点部110を実現することにより、非磁性体の材料を用いて形成されたレドームワークに、異常点検装置100を確実に固定することができる。
【0027】
固定用支点部110を真空チャックによって実現する場合、負圧を発生させるコンプレッサが必要になる。近年、成人の両手に乗る程度のサイズに小型化されたコンプレッサが存在しており、固定用支点部110を真空チャックによって実現する場合にも、異常点検装置100の大型化・重量化を抑えることができる。コンプレッサの電源は、地上に設置された発電機などとコンプレッサとを接続して取得するようにしてもよい。
【0028】
固定用支点部110を真空チャックによって実現する場合、コンプレッサは、異常点検装置100とは別体とし、異常点検装置100を設置する現場において、異常点検装置100と接続する構成としてもよい。この場合、異常点検装置100とコンプレッサとを接続するチューブや電源線を確保することにより、コンプレッサおよび当該コンプレッサを動作させる電源を無線鉄塔の上部まで運搬することなく異常点検装置100を動作させることができる。固定用支点部110は、吸盤によって実現してもよい。吸盤の径は、固定用支点部110の重量、回転部材130の長さおよび重量、撮像装置140の重量などに応じて適宜設定することができる。
【0029】
固定部120は、棒形状をなす。固定部120は、長さ方向における一端が、固定用支点部110に固定されている。固定部120と固定用支点部110との位置関係は固定されている。固定部120は、長さ方向における他端が、固定用支点部110から離間する方向に延出している。固定部120の長さは、点検対象とするレドームのうち最大のレドームの半径寸法より長い。
【0030】
固定部120は、長さ方向において伸縮可能であってもよい。伸縮構造は、たとえば、断面が相似形をなす筒状部材を、径の長さにしたがった順で重ね合わせ、径が大きい筒状部材に対して径が小さい筒状部材を長さ方向に沿ってスライドさせる構造、いわゆる、テレスコピック構造とすることによって実現することができる。固定部120の外観は、図1図2に示すような角柱形状であってもよく、円柱形状であってもよい。
【0031】
異常点検作業に際しては、ロープなどを用いて、無線鉄塔を構成する鉄塔部材などの取付対象物に固定部120の他端側を固定してもよい。あるいは、固定部120の他端側には、レドームに対する固定部120の他端の位置を固定する取付機構部が設けられていてもよい。取付機構部は、たとえば、パラボラアンテナの縁を把持する把持金具によって実現することができる。あるいは、取付機構部は、たとえば、無線鉄塔を構成する鉄塔部材などの取付対象物を把持する把持金具と、把持金具と固定部120とを連結するアームとによって構成してもよい。
【0032】
回転部材130は、棒形状をなす。回転部材130は、長さ方向における一端が、固定用支点部110に連結されている。回転部材130は、長さ方向における他端が、固定用支点部110から離間する方向に延出している。回転部材130は、固定用支点部110に対して、固定用支点部110を中心として他端が固定用支点部110を中心とする円周上を移動するように回転可能に連結されている。
【0033】
回転部材130の回転中心位置の近傍には、回転用モータ131およびエンコーダ(図3を参照)が設けられている。回転用モータ131は、固定部120に固定され、1または複数のギアによって構成される所定の輪列131aを介して回転部材130に連結されている。これにより、固定用支点部110を中心として、回転部材130を回転させることができる。
【0034】
回転部材130の先端には、回転補助部材が設けられていてもよい。回転補助部材は、たとえば、回転部材130の軸心方向に平行な軸心周りに回転可能なコロや、スライドシューによって実現することができる。回転補助部材を設けることにより、回転部材130の回転を円滑にすることができる。コロやスライドシューは、たとえば、硬質シリコンゴムなどを用いて形成することができる。
【0035】
エンコーダは、LEDなどの発光素子、レンズ、回転スリット円板(コードホイール)、受光素子などを備えている(いずれも図示を省略する)。回転スリット円板は、1周にわたって等間隔で設けられた複数の穴を備えており、回転部材130の回転に連動して回転する。
【0036】
エンコーダは、発光素子が発行した錯乱光をレンズで集光して回転スリット円板に入斜させ、回転スリット円板の複数の穴を通った光を受光素子上のフォトダイオードに入射させた後に光電変換することによって、A相およびB相の2系統の方形波を出力する。エンコーダを設けることにより、回転部材130の回転量や回転方向を精度よく特定することができる。
【0037】
撮像装置140は、回転部材130に沿って移動可能に設けられている。撮像装置140は、回転部材130に沿って、直線的に往復動する。具体的には、たとえば、回転部材130と平行に設けられたネジ軸132aと、ネジ軸132aに螺合されたナット132bとを備え、回転運動を直線運動に変換するボールネジ132におけるナット132bに撮像装置140を連結することによって、当該撮像装置140を回転部材130に沿って直線的に往復動させることができる。ボールネジ132におけるネジ軸132aとナット132bとの間には、ネジ軸132aに対するナット132bの動きをスムーズにするためのボール(図示を省略する)が設けられていてもよい。
【0038】
ボールネジ132におけるネジ軸132aの一端には、移動用モータ133の駆動軸が連結されている。移動用モータ133は、たとえば、パルス電力に応じて一定の角度ずつ回転するステッピングモータを用いることができる。ステッピングモータを用いることにより、撮像装置140の位置を精度よく制御することができる。ボールネジ132におけるネジ軸132aの回転を検出するエンコーダを設けてもよい。
【0039】
異常点検装置100は、さらに、撮像装置140の移動をガイドする直動ガイド(図示を省略する)を備えていてもよい。この場合、直動ガイドは、回転部材130をレールとし、当該レールに噛み合わされるブロックを撮像装置140に連結する。レールとブロックとの間には、レールに対するブロックの動きをスムーズにするためのボールが設けられている。
【0040】
撮像装置140は、たとえば、人間の目に見える光線(可視光)を撮像する可視光カメラによって実現することができる。撮像装置140は、レンズや、レンズを通して入射した光が結像される撮像素子、撮像素子から出力される電気信号に基づく画像情報を生成して記憶する画像処理回路などを備えている。撮像素子は、たとえば、入射した光に応じた明暗を電荷の量に光電変換した電気信号を出力するCCD(Charge Coupled Device)などによって実現することができる。
【0041】
撮像素子をCCDによって実現する場合、画像処理回路は、CDS(Correlated Double Sampling:相関2重サンプリング)回路、AGC(Automatic Gain Control)回路、ADC(Analog/Digital Converter)によって構成されるAFE(Analog Front End)や、DSP(Digital Signal Processor)などによって構成することができる。
【0042】
AFEは、撮像素子(CCD)に結像された光信号に基づくアナログ信号をデジタル化したデジタル信号を生成する。DSPは、AFEが生成したデジタル信号に基づいてYUV信号を生成する。画像処理回路の構成および処理については、公知の技術を用いて容易に実現可能であるため、説明を省略する。
【0043】
あるいは、撮像装置140は、たとえば、対象物から出ている赤外線放射エネルギーを検出し、見かけの温度に変換して、温度分布を画像として撮像する赤外線サーモグラフィカメラであってもよい。赤外線サーモグラフィカメラによって撮像された画像は、温度によって色分けして表示される。異常点検装置100は、可視光カメラと赤外線サーモグラフィカメラとの両方を備えていてもよい。
【0044】
また、異常点検装置100は、回転部材130の回転および撮像装置140による撮像の開始を指示する点検開始スイッチを備えている。点検開始スイッチは、たとえば、固定部120の他端に設けることができる。回転部材130の回転および撮像装置140による撮像の開始の指示は、作業者が操作するタブレット端末などの所定の外部装置から出力される制御信号に基づいておこなわれるものであってもよい。
【0045】
また、異常点検装置100は、電源を備えている。電源は、たとえば、リチウムイオン電池を用いた大容量バッテリを用いることができる。電源は、固定部120の他端に設けられた制御ボックス150内に設けることができる。制御ボックス150には、電源の他、異常点検装置100の動作を制御するCPUを搭載した制御基板やメモリ、各種操作スイッチなどが設けられている(図3を参照)。
【0046】
電源は、異常点検装置100とは別体であってもよい。この場合、異常点検装置100は、たとえば固定部120などに、地上に設置される発電機などとの接続コネクタを備える。これにより、電源の供給能力を懸念することなく、異常点検装置100を動作させることができる。
【0047】
固定部120の一端側および回転部材130の一端側には、電源コード121や真空チャックのチューブなどを挿通する貫通孔122、134が設けられている。貫通孔122、134は、たとえば、楕円形状とすることができる。これにより、電源コード121やチューブの自由度を確保し、電源コード121やチューブが絡まることを防止できる。
【0048】
(異常点検装置100のハードウエア構成)
つぎに、異常点検装置100のハードウエア構成について説明する。図3は、この発明にかかる実施の形態の異常点検装置100のハードウエア構成を示す説明図である。図3において、異常点検装置100は、CPU(Central Processing Unit)301と、メモリ302と、回転用モータ131と、エンコーダ303と、移動用モータ133と、撮像装置140と、通信I/F304と、操作スイッチ305と、を備えている。これらの各部は、バス300によって接続されている。
【0049】
CPU301は、異常点検装置100の全体の制御をつかさどる。この実施の形態においては、CPU301、メモリ302、通信I/F304などによって、この発明にかかる制御手段を実現することができる。メモリ302は、異常点検装置100の制御にかかる各種のプログラムやデータなどを記憶している。また、メモリ302は、撮像装置140によって撮像された画像に関する情報を記憶する。
【0050】
メモリ302は、たとえば、フラッシュROM(Read-Only Memory)などの不揮発性の記憶媒体によって実現することができる。このようなメモリ302は、異常点検装置100と一体であってもよく、着脱可能な別体であってもよい。あるいは、画像に関する情報を記憶するメモリ302のみを異常点検装置100とは別体で設けてもよい。メモリ302は、CPU301のワークエリアとして使用されるRAMを含んでいてもよい。
【0051】
CPU301は、回転用モータ131や移動用モータ133に対してパルス信号(パルス電力)を出力することによりモータが正回転および逆回転するように駆動制御する。CPU301によって回転用モータ131や移動用モータ133の回転量および回転方向を制御することにより、回転部材130を回転させたり、撮像装置140を回転部材130に沿って往復動させたりすることができる。CPU301は、エンコーダ303が出力する2系統の方形波に基づいて、回転用モータ131すなわち回転部材130の回転方向、回転位置、回転速度などを特定する。
【0052】
CPU301は、撮像装置140を駆動制御して撮像をおこない、撮像装置140によって撮像された画像に関する情報をメモリ302に記憶させる。画像に関する情報は、RGBや透過率などの情報をあらわす画素情報に加えて、画像を撮像したタイミングにおける回転部材130の回転角度や回転部材130に対する撮像装置140の位置(ステッピングモータの駆動量)、撮像日時などを示す情報を含む。撮像日時は、CPU301が備えるリアルタイムクロックによって計時される時刻に基づいて取得することができる。
【0053】
通信I/F304は、異常点検装置100の内部と外部装置とのインターフェイスをつかさどる。具体的に、通信I/F304は、異常点検装置100の内部と、作業者が携帯し操作するタブレット端末などの外部装置と、の間におけるデータの入出力を制御する。通信I/F304は、無線LANなどを用いた無線通信をおこなうことができる。通信I/F304によるデータの入出力は、CPU301によって制御される。
【0054】
CPU301は、通信I/F304を介して、たとえば、撮像装置140によって撮像され、メモリ302に記憶された画像に関する情報を、タブレット端末などの外部装置に出力する。この実施の形態においては、CPU301、メモリ302、通信I/F304などによって、この発明にかかる出力手段を実現することができる。
【0055】
CPU301は、撮像装置140によって撮像された画像に基づいて、異常の有無を判断してもよい。異常の有無の判断は、たとえば、撮像装置140によって撮像された画像において濃度や色が急峻に変化するエッジを特定し、特定結果に基づいてひび割れパターンに該当するかどうかを判断することによって実現することができる。この場合、CPU301は、異常の有無の判断結果(ひび割れの有無)や、ひび割れの位置を示す情報を含む画像に関する情報を出力してもよい。あるいは、CPU301は、異常が発生している(ひび割れがある)と判断した場合にのみ、画像に関する情報を出力するようにしてもよい。
【0056】
(パラボラアンテナの一例)
つぎに、この発明にかかる実施の形態の異常点検装置100を用いた異常点検の作業の対象となるパラボラアンテナの一例について説明する。図4図6は、パラボラアンテナの一例を示す説明図である。図4に示すように、パラボラアンテナ400は、無線鉄塔401に取り付けられる。パラボラアンテナ400は、具体的には、たとえば、地上20メートルから100メートルの位置に取り付けられる。
【0057】
図5および図6に示すように、パラボラアンテナ400は、アンテナ部510とレドーム520とを備える。図6においては、パラボラアンテナ400を、パラボラアンテナ400の中心を通り、アンテナ部510とレドーム520との対向方向に沿って切断した断面の一部を示している。
【0058】
アンテナ部510は、一次放射器511と反射器512とを備える。一次放射器511は、マイクロ波を空間に送信したり、空間のマイクロ波を受信したりする。反射器512は、放物線を回転させた回転放物面の内面を反射面とする凹面鏡であって、回転軸に平行に入射する光線束を収差なく焦点に集めるために設けられている。一次放射器511は、反射器512における焦点に設けられている。
【0059】
レドーム520は、円錐または半球形状をなし、開口径は、3メートルから5メートル程度であって、風雨や降雪などからアンテナ部510を保護するため、一次放射器511および反射器512における反射面を覆うように設けられている。レドーム520を設けることにより、一次放射器511や反射面の劣化を緩和し、アンテナ部510の長寿命化を図ることができる。レドーム520は、たとえば、グラスファイバーやテフロン(登録商標)などと称されるポリテトラフルオロエチレンをはじめとするフッ素樹脂など、電波を通しやすい材料を用いて形成されている。
【0060】
(異常点検の作業手順)
つぎに、この発明にかかる実施の形態の異常点検装置100を用いた異常点検の作業手順について説明する。図7および図8は、この発明にかかる実施の形態の異常点検装置100を用いた異常点検の作業手順を示す説明図である。異常点検の作業に際しては、まず、作業者が異常点検装置100を、無線鉄塔401におけるパラボラアンテナ400の設置場所まで運搬する。
【0061】
つぎに、固定部120の他端を把持し、固定用支点部110をレドーム520の中心に位置づける。真空チャックを用いて固定用支点部110を実現している場合、真空チャックとコンプレッサおよび電源装置とが接続されていることを確認した後に、真空チャックのスイッチをON状態とし、固定用支点部110をレドーム520に固定する。
【0062】
つぎに、異常点検装置100に設けられた操作スイッチ305のうちの点検開始スイッチ、または、タブレット端末などの外部装置において点検開始の操作をおこなう。これにより、回転部材130の回転および撮像装置140による撮像が開始される。異常点検装置100は、撮像装置140によって撮像された画像に関する情報をメモリ302に記憶する(図7および図8を参照)。また、点検開始の操作がタブレット端末801などの通信機能を備えた外部装置から出力された制御信号に基づいておこなわれた場合、異常点検装置100は、画像に関する情報を当該タブレット端末801に出力してもよい。
【0063】
画像に関する情報をメモリ302に記憶する場合、作業者は、メモリ302に記憶された画像に関する情報を表示画面を備えたタブレット端末801において表示させることにより、レドーム520表面全体の状態を目視によって確認することができる。そして、レドーム520における異常の有無を目視によって判断することができる。
【0064】
画像に関する情報をタブレット端末801などの外部装置に出力する場合、当該タブレット端末801において画像に関する情報を表示することにより、作業者は、異常端末装置から離れた場所で、レドーム520表面全体の状態を目視によって確認し、レドーム520における異常の有無を目視によって判断することができる。
【0065】
上述した実施の形態においては、回転部材130に取り付けられた撮像装置140を用いて、レドーム520表面全体の外観状態の目視による確認を可能とする機能を備えた異常点検装置100について説明したが、この発明にかかる異常点検装置100は、外観状態を目視によって確認するものに限らない。この発明にかかる異常点検装置100は、外観状態に加えて、外観状態からは発見しにくいレドーム520全体にわたる異常の発生の有無を点検する機能を備えていてもよい。
【0066】
このような異常点検装置100は、撮像装置140に加えて、打音点検部を備えている。異常点検装置100は、撮像装置140に代えて打音点検部を備えていてもよい。打音点検部は、ハンマーと、揺動機構と、マイクロフォンと、を備えている(いずれも図示を省略する)。ハンマーは、柄および当該柄の一端に取り付けられたヘッドを備えている。
【0067】
揺動機構は、ハンマーを、ヘッドがレドーム520に対して接離する方向に揺動可能に支持する。揺動機構は、たとえば、柄の一部を軸支することによって、ハンマーを揺動可能に支持する。また、揺動機構は、揺動用モータや、揺動用モータの回転にともなって回転し所定の回転角度においてのみ柄の先端に接触する接触子などを備えている。このような揺動機構は、揺動用モータの回転にともなって接触子を柄の先端に断続的に接触させることによってハンマーを揺動させることができる。
【0068】
マイクロフォンは、ハンマーの近傍に位置づけられる。具体的に、マイクロフォンは、ハンマーが揺動することによってヘッドがレドーム520に当接する位置の近傍に位置づけられることが好ましい。マイクロフォンの周囲には、ハンマーによる打音を高精度で集音するためのフードが設けられていてもよい。打音点検部は、上記と同様に、たとえば、ボールネジ132におけるナット132bを介して回転部材130に沿って移動可能に設けられている。
【0069】
撮像装置140と打音点検部とを備える異常点検装置100においては、回転部材130を間にして、撮像装置140と打音点検部とを反対位置に設けてもよい。これにより、撮像装置140および打音点検部を、回転部材130の長さ方向における全体にわたって往復動させることができ、レドーム520全体にわたって精度よく異常の有無を点検することができる。
【0070】
このような打音点検部を備えた異常点検装置100におけるCPU301は、回転用モータ131や移動用モータ133および揺動用モータに対してパルス信号(パルス電力)を出力し、回転部材130を回転させたり、撮像装置140や打音点検部を回転部材130に沿って往復動させたりする。これにより、撮像装置140および打音点検部のいずれもが回転部材130の長さ方向全体にわたって移動することができ、詳細な点検をおこなうことができる。
【0071】
CPU301は、撮像装置140を駆動制御して撮像をおこなうとともに、打音点検部を駆動制御してレドーム520の音をマイクロフォンで取得する。そして、撮像装置140によって撮像された画像や、マイクロフォンによって取得された音および当該音が取得された位置などの音声情報を含む、画像に関する情報をメモリ302に記憶させる。
【0072】
また、CPU301は、マイクロフォンによって取得された音の周波数解析をおこなってもよい。具体的には、たとえば、CPU301において、フーリエ変換をベースとしたスペクトル解析をおこなうことによって周波数解析を実現することができる。フーリエ変換をベースとしたスペクトル解析により、レドーム520の打音による音声情報に、どのような周波数成分がどの程度分布しているのかを解析することができる。
【0073】
これにより、レドーム520の打音に基づいて、ひび割れなどの異常が発生している場合に生じる周波数成分があるか否かを判断することができる。そして、これにより、レドーム520における異常の有無を、迅速に発見することができ、外観点検作業にかかる作業性の向上を図ることができる。
【0074】
周波数解析をおこなう場合、CPU301は、周波数解析の解析結果を音声情報としてメモリ302に記憶させてもよい。この場合、マイクロフォンによって取得された音をあわせてメモリ302に記憶してもよい。そして、この場合、CPU301は、メモリ302に記憶された情報(マイクロフォンによって取得された音声情報や、周波数解析による解析結果など)を、通信I/F304を介して、タブレット端末などの外部装置に出力する。
【0075】
メモリ302に、マイクロフォンによって取得された音声情報および周波数解析による解析結果の両方を記憶させる場合であっても、タブレット端末などの外部装置に対しては、少なくとも一方を出力するようにしてもよい。具体的には、たとえば、メモリ302に記憶された情報を無線通信によってタブレット端末などの外部装置に出力する場合、メモリ302に記憶されているマイクロフォンによって取得された音声情報および周波数解析による解析結果のうち、少なくとも一方を出力するようにしてもよい。
【0076】
これにより、通信量を抑え、タブレット端末などのように電池で動作する電気機器の消耗を抑えることができる。マイクロフォンによって取得された音声情報を出力する場合、当該音声情報を受信したタブレット端末などの外部装置において周波数解析などをおこないレドーム520における異常の有無を判断することができる。
【0077】
異常点検装置100による異常点検に際しては、撮像装置140や打音点検部をレドーム520の表面全体において移動させ、レドーム520の全体にわたって異常の有無を点検してもよく、撮像装置140による撮像位置や打音点検部による打音位置は、あらかじめ決めておき、決められた位置においてのみ撮像や打音点検をおこなうようにしてもよい。
【0078】
また、この発明にかかる異常点検装置100は、レドーム520表面全体の外観状態の目視による確認を可能とする機能に加えて、レドーム520表面における劣化した部分を補修する機能を備えていてもよい。このような異常点検装置100は、撮像装置140に加えて、補修機構部を備えている。異常点検装置100は、撮像装置140に代えて補修機構部を備えていてもよい。
【0079】
補修機構部は、液体を収容するタンク、タンクに収容された液体をレドーム520表面に噴霧するスプレーヘッド、スプレーヘッドを動作させるヘッドモータ、ヘッドモータとスプレーヘッドとを連動させるリンク機構などによって構成することができる(いずれも図示を省略する)。タンクには、FRP(Fiber-Reinforced Plastics)などと称される繊維強化プラスチックを分散させたスチレンモノマーなどのFRP溶剤を充填する。補修機構部は、上記撮像装置140や打音点検部と同様に、たとえば、ボールネジ132におけるナット132bを介して回転部材130に沿って移動可能に設けられている。
【0080】
このような補修機構部を備えた異常点検装置100におけるCPU301は、回転用モータ131や移動用モータ133およびヘッドモータを駆動制御し、回転部材130を回転させたり、撮像装置140や補修機構部を回転部材130に沿って往復動させたりする。そして、画像に関する情報に基づいて、レドーム520においてひび割れが発生していると判断される箇所において補修機構部を動作させ、ひび割れと判断される箇所に対してFRP溶剤を噴霧する。
【0081】
これにより、軽度なひび割れであれば、レドーム520を取り外して修復したり、レドーム520を交換したり、作業者が別途足場を組んでレドーム520の補修をおこなったりすることなく、レドーム520の補修をおこなうことができる。そして、これにより、レドーム520の長寿命化を図ることができる。
【0082】
CPU301は、撮像装置140や打音点検部を用いた異常点検の結果に基づいて、異常の有無を判断する機能を設けてもよい。そして、この場合、ひび割れなどの異常があると判断された場合に、補修機構部を制御してFRP溶剤を噴霧するようにしてもよい。
【0083】
以上説明したように、この発明にかかる実施の形態の異常点検装置100は、円錐または半球形状をなすレドーム520の中心に取り外し可能に取り付けられる固定用支点部110と、一端が固定用支点部110に連結され他端が固定用支点部110から離間する方向に延出する棒形状をなし、固定用支点部110を中心として他端が固定用支点部110を中心とする円周上を移動するように回転可能な回転部材130と、回転部材130に沿って移動可能な撮像装置140と、を備え、撮像装置140によって撮像された画像に関する情報を出力するようにしたことを特徴とする。
【0084】
この発明にかかる実施の形態の異常点検装置100によれば、レドーム520の中心に取り付けた固定用支点部110を中心として回転部材130を回転させながら、当該固定用支点部110に沿って撮像装置140を移動させることにより、レドーム520表面全体の画像を得ることができる。
【0085】
これにより、外観点検作業をおこなう作業者は、鉄塔やアンテナから長時間にわたって身を乗り出すことなく、レドーム520表面全体の状態を目視によって確認することができる。そして、これによって、外観点検作業にかかる作業者の安全性の確保および作業性の向上を図ることができる。
【0086】
上述した特許文献1に記載されたレドーム樹脂被膜劣化推定方法では、レドームに対する太陽光エネルギー量または太陽光紫外線日射エネルギー量からレドームの樹脂被膜の劣化の度合いを正確に推定することを目的としており、現場における外観点検を想定していない。また、上述した特許文献1に記載されたレドーム樹脂被膜劣化推定方法では、レドームの劣化の原因として太陽光の紫外線のみを対象としており、飛来物によるレドームの損傷や、風雨や降雪などによるレドームの劣化については対象とされていない。
【0087】
これに対し、この発明にかかる実施の形態の異常点検装置100によれば、現場において実際に外観点検をおこなうことにより、太陽光の紫外線のみならず、飛来物によるレドームの損傷や、風雨や降雪などによるレドームの劣化などの有無にかかる外観点検を、当該外観点検作業にかかる作業者の安全性の確保および作業性の向上を図ることができる。
【0088】
また、この発明にかかる実施の形態の異常点検装置100は、回転部材130の回転量と、回転部材130における撮像装置140の位置と、を制御し、回転部材の回転量および撮像装置140の位置に関する情報を関連づけた画像に関する情報を出力するようにしたことを特徴としている。
【0089】
この発明にかかる実施の形態の異常点検装置100によれば、回転部材130の回転量と、回転部材130における撮像装置140の位置に関する情報を関連づけた画像に関する情報を出力することにより、画像に基づきレドーム520表面のひび割れなどの異常が視認された場合に、当該異常が発生している位置を容易かつ確実に特定することができる。
【0090】
これにより、異常が発生している位置を特定するために再度外観点検をおこなうことなく、異常を修復するための準備を迅速かつ的確におこなうことができる。そして、これによって、外観点検作業にかかる作業者の安全性の確保および作業性の向上を図ることができる。
【0091】
また、この発明にかかる実施の形態の異常点検装置100は、柄および当該柄の一端に取り付けられたヘッドを備えたハンマーと、ヘッドがレドーム520に対して接離する方向に揺動可能にハンマーを揺動させる揺動機構と、ハンマーの近傍に位置づけられるマイクロフォンと、によって構成され、回転部材130に沿って移動可能に設けられた打音点検部を備え、回転部材130における打音点検部の位置と、揺動機構によるハンマーの揺動動作と、を制御しながら、打音点検部の位置およびマイクロフォンによって集音された音声情報を出力するようにしてもよい。
【0092】
このような異常点検装置100によれば、レドーム520の中心に取り付けた固定用支点部110を中心として回転部材130を回転させながら、当該固定用支点部110に沿って打音点検部を移動させることにより、打音に基づいて、レドーム520全体にわたる異常の発生の有無を点検することができる。また、打音と回転部材130における打音点検部の位置とに基づいて、異常が発生している位置を容易かつ確実に特定することができる。
【0093】
これにより、無線鉄塔401やパラボラアンテナ400から身を乗り出すことなく、レドーム520全体にわたって、レドーム520表面およびレドーム520内部における異常の発生の有無を点検することができる。そして、これによって、外観点検作業にかかる作業者の安全性の確保および作業性の向上を図ることができる。
【0094】
また、この発明にかかる実施の形態の異常点検装置100は、マイクロフォンによって集音された音声情報に基づく周波数解析をおこない、打音点検部の位置、および、マイクロフォンによって集音された音声情報または周波数解析による解析結果の少なくとも一方を含む、画像に関する情報を出力するようにしてもよい。
【0095】
このような異常点検装置100によれば、異常点検装置100においてマイクロフォンによって集音された音声情報に基づく周波数解析をおこなうことにより、レドーム520における異常の有無を、迅速に発見することができる。これにより、外観点検作業にかかる作業性の向上を図ることができる。
【0096】
また、この発明にかかる実施の形態の異常点検装置100は、撮像装置140が、赤外線サーモグラフィカメラであってもよい。
【0097】
このような異常点検装置100によれば、赤外線サーモグラフィカメラを用いてレドーム520表面全体の赤外線画像(熱画像)を撮像することにより、レドーム520表面における正常な部分と異常が発生している部分との熱伝導率の違いを利用して、レドーム520表面全体の状態を目視によって確認することができる。
【0098】
これにより、点検環境の明暗を問わず点検作業をおこなうことができるので、夕方や夜間などであっても点検をおこなうことができ、点検作業にかかる自由度の向上を図ることができる。そして、これによって、外観点検作業にかかる作業者の安全性の確保および作業性の向上を図ることができる。
【0099】
また、この発明にかかる実施の形態の異常点検装置100は、一端が固定用支点部110に固定されレドーム520の半径寸法より長い棒形状をなす固定部120を備えたことを特徴としている。
【0100】
この発明にかかる実施の形態の異常点検装置100によれば、作業者に対して、固定用支点部110をレドーム520の中心に取り付けたり取り外したりする作業を、固定部120の他端を掴んでおこなわせることができる。これにより、作業者は、鉄塔やアンテナから長時間にわたって身を乗り出したり、ヤットコなどの工具を別途用いたりすることなく、固定用支点部110をレドーム520の中心に取り付けたり取り外したりする作業をおこなうことができる。そして、これによって、外観点検作業にかかる作業者の安全性の確保および作業性の向上を図ることができる。
【0101】
また、この発明にかかる実施の形態の異常点検装置100は、固定部120が、長さ方向において伸縮可能であることを特徴としている。
【0102】
この発明にかかる実施の形態の異常点検装置100によれば、レドーム520の大きさに応じて固定部120を伸縮させることができる。これにより、固定部120の長さが異なる複数の異常点検装置100を携行することなく、1台の異常点検装置100によって大きさの異なる複数のレドーム520の点検をおこなうことができる。そして、これによって、外観点検作業にかかる作業者の作業性の向上を図ることができる。
【0103】
また、この発明にかかる実施の形態の異常点検装置100は、画像に関する情報を記憶する記憶部としてのメモリ302を備え、メモリ302に記憶された画像に関する情報を出力するようにしたことを特徴としている。
【0104】
この発明にかかる実施の形態の異常点検装置100によれば、異常点検装置100が備える記憶部に撮像装置140によって撮像された画像に関する情報を記憶し、記憶された画像に関する情報を出力することにより、異常点検装置100によって撮像された画像を、異常点検装置100とは別体のディスプレイを備えた端末装置において確認する場合に、異常点検装置100における処理速度を低下させることなく撮像をおこなうことができる。これにより、作業者は、地上などの足場の確保された場所で画像の確認を迅速におこなうことができるので、外観点検作業にかかる作業者の安全性の確保および作業性の向上を図ることができる。
【0105】
また、この発明にかかる実施の形態の異常点検装置100によれば、画像に関する情報を記憶部に記憶することにより、たとえば、メモリ302と所定の端末装置との間におけるデータ転送を、CPU301を介することなくバスを通じて直接おこなうDMA(Direct Memory Access)転送をおこなうことができる。これにより、作業者は、地上などの足場の確保された場所で画像の確認をより迅速におこなうことができるので、外観点検作業にかかる作業者の安全性の確保および作業性の向上を図ることができる。
【0106】
また、この発明にかかる実施の形態の異常点検装置100は、タブレット端末801などの所定の端末装置に対して、画像に関する情報を無線通信により出力するようにしたことを特徴としている。
【0107】
この発明にかかる実施の形態の異常点検装置100によれば、画像に関する情報を無線通信により出力することにより、異常点検装置100と端末装置との有線での接続を不要とし、画像の確認をおこなう場所の自由度を高めることができる。これにより、作業者は、地上などの足場の確保された場所で画像の確認をおこなうことができるので、外観点検作業にかかる作業者の安全性の確保および作業性の向上を図ることができる。
【0108】
また、この発明にかかる実施の形態の異常点検装置100は、回転部材130における固定用支点部110とは反対側に設けられた回転補助部材としてのコロやスライドシューを備えたことを特徴としている。
【0109】
この発明にかかる実施の形態の異常点検装置100によれば、回転部材130の回転を円滑にすることができる。これにより、回転部材130からの振動によって、撮像装置140によって撮像した画像がぶれてしまうことを防止し、精度の高い外観点検をおこなうことができる。
【産業上の利用可能性】
【0110】
以上のように、この発明にかかる異常点検装置は、高所での目視による点検作業に用いる異常点検装置に有用であり、特に、マイクロ波無線に用いるパラボラアンテナのレドームの目視による点検に用いる異常点検装置に適している。
【符号の説明】
【0111】
100 異常点検装置
110 固定用支点部
120 固定部
130 回転部材
131 回転用モータ
133 移動用モータ
140 撮像装置
301 CPU
302 メモリ
303 エンコーダ
304 通信I/F
400 パラボラアンテナ
510 アンテナ部
520 レドーム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8