(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-24
(45)【発行日】2022-02-01
(54)【発明の名称】小便器
(51)【国際特許分類】
E03D 5/10 20060101AFI20220125BHJP
E03D 13/00 20060101ALI20220125BHJP
【FI】
E03D5/10
E03D13/00
(21)【出願番号】P 2018039753
(22)【出願日】2018-03-06
【審査請求日】2021-01-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(72)【発明者】
【氏名】古田 祐一
(72)【発明者】
【氏名】永冨 洋文
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-61070(JP,A)
【文献】特開2014-238006(JP,A)
【文献】特開2017-137713(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 1/00- 7/00
E03D 11/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トイレに設置され、器具排水管によって横に延びる排水横枝管の途中に接続される小便器であって、
尿流を受けるボウル部と、このボウル部の底部に開口した排水口と、この排水口から流入する尿及び洗浄水を溜めるとともに排水として前記器具排水管に排出するトラップ部と、を有する小便器本体と、
前記小便器本体の前方の使用者を検知する検知手段と、
前記ボウル部に洗浄水を供給するための給水手段と、
前記ボウル部への洗浄水の供給を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、
前記検知手段が使用者の立ち去りを検知すると、前記ボウル部を洗浄し且つ前記トラップ部内の尿を排出する本洗浄モードと、
前記本洗浄モードが実行された後、一部の洗浄水が前記排水横枝管内を前記器具排水管が接続された接続部より上流側を洗浄する第一洗浄モードと、
を有し、
前記制御手段は、さらに、
前記本洗浄モードを実行してから前記第一洗浄モードの実行を開始するまでに前記検知手段が使用者の接近を検知したとき、予定されていた前記第一洗浄モードの実行をキャンセルすると共に前記ボウル部への洗浄水の供給を強制的に開始する強制開始モードを有することを特徴とする小便器。
【請求項2】
前記制御手段は、前記第一洗浄モードが実行された後から、前記第一洗浄モードにより前記接続部よりも上流側を洗浄した洗浄水が前記接続部よりも下流側に流下すると想定される所定時間を経過した後、一部の洗浄水が前記接続部よりも上流側を洗浄する第二洗浄モードを有し、前記第一洗浄モードを実行してから前記第二洗浄モードの実行を開始するまでに前記検知手段が使用者の接近を検知したとき、予定されていた前記第二洗浄モードの実行をキャンセルすると共に前記強制開始モードを実行する請求項1に記載の小便器。
【請求項3】
前記制御手段は、前記小便器を使用した使用者数のカウントが所定人数を超えたときに、前記強制開始モードを実行する請求項1又は2に記載の小便器。
【請求項4】
トイレに設置され、器具排水管によって横に延びる排水横枝管の途中に接続される小便器であって、
尿流を受けるボウル部と、このボウル部の底部に開口した排水口と、この排水口から流入する尿及び洗浄水を溜めるとともに排水として前記器具排水管に排出するトラップ部と、を有する小便器本体と、
前記小便器本体の前方の使用者を検知する検知手段と、
前記ボウル部に洗浄水を供給するための給水手段と、
前記ボウル部への洗浄水の供給を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、
前記検知手段が使用者の接近を検知すると、前記ボウル部に洗浄水を供給する前洗浄モードと、
前記検知手段が使用者の立ち去りを検知すると、前記ボウル部を洗浄し且つ前記トラップ部内の尿を排出する本洗浄モードと、
前記本洗浄モードが実行された後、一部の洗浄水が前記排水横枝管内を前記器具排水管が接続された接続部より上流側を洗浄する第一洗浄モードと、
前記制御手段は、さらに、
前記本洗浄モードを実行してから前記第一洗浄モードの実行を開始するまでに前記検知手段が使用者の接近を検知したとき、予定されていた前記第一洗浄モードの実行をキャンセルすると共に前記ボウル部への洗浄水の供給量が通常時よりも多い前記前洗浄モードを実行することを特徴とする小便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トイレに設置され、器具排水管によって排水横枝管に接続される小便器に関する。
【背景技術】
【0002】
連立設置した小便器に接続された排水横枝管では、小便器から排水された排水初期の尿濃度の高い洗浄水の一部が合流部において上流側に逆流してしまうことがある。このようにして最初に上流側へ逆流した尿濃度の高い洗浄水は、逆流した後に合流部へ流入する洗浄水によってより上流側に押し上げられ、その後本洗浄が終了して合流部へ流入する洗浄水量が少なくなってから下流側へと流れる。したがって、最後に尿濃度の高い洗浄水が排水横枝管内を通過することになり、尿濃度の高い洗浄水が最後まで流れきれずに排水横枝管内に滞留する滞留事象が生じることがある。この滞留事象が生じることで、排水横枝管内に尿石が発生してしまうおそれがある。
【0003】
この滞留事象による尿石の発生を抑制するために、特許文献1の小便器では、本洗浄モードを実行した後に、第一設備洗浄モードおよび第二設備洗浄モードを実行することにより、尿濃度の比較的低い洗浄水が最後に排水横枝管内を流れるようにしている。
【0004】
また、特許文献2の小便器では、本洗浄を第一洗浄モードと第二洗浄モードとに分けることで、同じく尿濃度の比較的低い洗浄水が最後に排水横枝管内を流れるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-61070号公報
【文献】特許第5692422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方で、特許文献1のような小便器において、滞留事象の発生を抑制するためには本洗浄モードが終了してから一定時間が経った後に第一設備洗浄モードおよび第二設備洗浄モードを実行する必要がある。そのため、前の使用者と次の使用者の入れ替わりが早かった場合は、第一設備洗浄モードもしくは第二設備洗浄モードを実行している途中に次の使用者が放尿を開始してしまうおそれがある。そうすると、第一設備洗浄モードおよび第二設備洗浄モードで排水横枝管内へ供給される洗浄水は尿混じりの洗浄水となってしまい、第一設備洗浄モードおよび第二設備洗浄モードが上述した滞留事象による尿石発生を抑制する役割を果たすことができず、無駄水となってしまう。
また、特許文献2の小便器も同じように、前の使用者と次の使用者の入れ替わりが早かった場合は、第二洗浄モードを実行している途中に次の使用者が放尿を開始してしまうおそれがあり、そうすると、第二洗浄モードで排水横枝管内へ供給される洗浄水は尿混じりの洗浄水となってしまい、第二洗浄モードが上述した滞留事象による尿石発生を抑制する役割を果たすことができず、無駄水となってしまう。
【0007】
本発明は、上述した問題を解決するためになされたものであり、滞留事象による排水横枝管内の尿石発生を抑制した小便器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る小便器は、トイレに設置され、器具排水管によって横に延びる排水横枝管の途中に接続される小便器であって、尿流を受けるボウル部と、このボウル部の底部に開口した排水口と、この排水口から流入する尿及び洗浄水を溜めるとともに排水として前記器具排水管に排出するトラップ部と、を有する小便器本体と、前記小便器本体の前方の使用者を検知する検知手段と、前記ボウル部に洗浄水を供給するための給水手段と、前記ボウル部への洗浄水の供給を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記検知手段が使用者の立ち去りを検知すると、前記ボウル部を洗浄し且つ前記トラップ部内の尿を排出する本洗浄モードと、前記本洗浄モードが実行された後、一部の洗浄水が前記排水横枝管内を前記器具排水管が接続された接続部より上流側を洗浄する第一洗浄モードと、を有し、前記制御手段は、さらに、前記本洗浄モードを実行してから前記第一洗浄モードの実行を開始するまでに前記検知手段が使用者の接近を検知したとき、予定されていた前記第一洗浄モードの実行をキャンセルすると共に前記ボウル部への洗浄水の供給を強制的に開始する強制開始モードを有する。
【0009】
この構成によれば、使用者は小便器に接近してから放尿を開始するまでに所定の準備時間を必要とするため、強制開始モードにおいて器具配水管および排水横枝管に流れ込む小便器からの排水は、ほとんど尿が含まれていない比較的きれいな水である。したがって、強制開始モードの実行により、使用者が放尿している状態で第一洗浄モードを実施する場合に比べて、滞留事象による排水横枝管の尿石発生を抑制することができる。
【0010】
本発明の一態様に係る小便器において、好ましくは、前記制御手段は、前記第一洗浄モードが実行された後から、前記第一洗浄モードにより前記接続部よりも上流側を洗浄した洗浄水が前記接続部よりも下流側に流下すると想定される所定時間を経過した後、一部の洗浄水が前記接続部よりも上流側を洗浄する第二洗浄モードを有し、前記第一洗浄モードを実行してから前記第二洗浄モードの実行を開始するまでに前記検知手段が使用者の接近を検知したとき、予定されていた前記第二洗浄モードの実行をキャンセルすると共に前記強制開始モードを実行する。
【0011】
この構成によれば、使用者が放尿している状態で第二洗浄モードを実施する場合に比べて、滞留事象による排水横枝管の尿石発生を抑制することができる。
【0012】
本発明の一態様に係る小便器において、好ましくは、前記制御手段は、前記小便器を使用した使用者数のカウントが所定人数を超えたときに、前記強制開始モードを実行する。
【0013】
この構成によれば、節水化を実現しつつ、滞留事象による排水横枝管の尿石発生を抑制することができる。
【0014】
本発明の一態様に係る小便器は、トイレに設置され、器具排水管によって横に延びる排水横枝管の途中に接続される小便器であって、尿流を受けるボウル部と、このボウル部の底部に開口した排水口と、この排水口から流入する尿及び洗浄水を溜めるとともに排水として前記器具排水管に排出するトラップ部と、を有する小便器本体と、前記小便器本体の前方の使用者を検知する検知手段と、前記ボウル部に洗浄水を供給するための給水手段と、前記ボウル部への洗浄水の供給を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記検知手段が使用者の接近を検知すると、前記ボウル部に洗浄水を供給する前洗浄モードと、前記検知手段が使用者の立ち去りを検知すると、前記ボウル部を洗浄し且つ前記トラップ部内の尿を排出する本洗浄モードと、前記本洗浄モードが実行された後、一部の洗浄水が前記排水横枝管内を前記器具排水管が接続された接続部より上流側を洗浄する第一洗浄モードと、前記制御手段は、さらに、前記本洗浄モードを実行してから前記第一洗浄モードの実行を開始するまでに前記検知手段が使用者の接近を検知したとき、予定されていた前記第一洗浄モードの実行をキャンセルすると共に前記ボウル部への洗浄水の供給量が通常時よりも多い前記前洗浄モードを実行する。
【0015】
この構成によれば、前洗浄モードにおいて洗浄水の供給量を通常時よりも多くすることで第一洗浄モードの役割の一部を果たすことができるため、使用者が放尿している状態で第一洗浄モードを実施する場合に比べて、滞留事象による排水横枝管の尿石発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の小便器によれば、滞留事象による横引配管内の尿石発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態による小便器を示す概略断面図である。
【
図2】本発明の実施形態による小便器の上部の収納室内部を上面から見た概略上面図である。
【
図3】本発明の実施形態による小便器の自動便器洗浄ユニットの内部構造を概略的に示すブロック図である。
【
図4】本発明の実施形態による小便器の洗浄動作の第1例を示すタイムチャートである。
【
図5】本発明の実施形態による小便器の洗浄動作の第2例を示すタイムチャートである。
【
図6】本発明の実施形態による小便器の本洗浄モードM0において、洗浄水及び尿が小便器から器具排水管及び排水横枝管内に流れる様子を概略的に示す図である。
【
図7】本発明の実施形態による小便器の第一洗浄モードM1において、洗浄水が小便器から器具排水管及び排水横枝管内に流れる様子を概略的に示す図である。
【
図8】本発明の実施形態による小便器の第二洗浄モードM2において、洗浄水が小便器から器具排水管及び排水横枝管内に流れる様子を概略的に示す図である。
【
図9】
図9(a)本発明の実施形態による小便器の下流側に延びる排水横枝管において、本洗浄モードM0が実行された場合に尿及び洗浄水が排水横枝管内を流れる様子を示す図である。
図9(b)本発明の実施形態による小便器の下流側に延びる排水横枝管において、第一洗浄モードM1が実行された場合に尿混じり洗浄水及び洗浄水が排水横枝管内を流れる様子を示す図である。
図9(c)本発明の実施形態による小便器の下流側に延びる排水横枝管において、第二洗浄モードM2が実行された場合に洗浄水が排水横枝管内を流れる様子を示す図である。
【
図10】本発明の実施形態による小便器の洗浄動作の第3例を示すタイムチャートである。
【
図11】本発明の変形例による小便器の洗浄動作の一例を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
添付図面を参照して、本発明の実施形態による小便器を説明する。先ず、
図1及び
図2により小便器の基本構造を説明する。
図1は本発明の実施形態による小便器を示す概略断面図であり、
図2は本発明の実施形態による小便器の上部の収納室内部を上面から見た概略上面図である。
【0019】
図1、符号1は、本発明の実施形態による小便器を示し、小便器1は、建物、例えばトイレの壁面2の表側に複数個並んで設置され又は単独で配置されている。小便器1の壁面2側の下部から建築物の壁面2を通って壁面2の裏側に延びる器具排水管4が、この小便器1の設置された壁面2の裏側下方において、わずかに下り傾斜しながら横向きに延びる排水用の排水横枝管6と接続されている。排水横枝管6は、水平方向よりも傾斜が付けられて配置されており、この傾斜の上り側を上流側、この傾斜の下り側を下流側として説明する。この排水横枝管6は、下流側において、縦排水管(図示せず)に接続されている。それぞれの小便器1は、自身を洗浄した洗浄水(給水される上水のみの状態及び/又は上水が尿混じりの洗浄水となって排水される状態を含む)を、壁面2の裏側に延びる器具排水管4を通して、排水横枝管6に排水するようになっている。なお本件発明は上記壁排水小便器に限定されるわけではなく、床に器具排水管や排水横枝管に設置される床排水小便器にも適用することができる。
【0020】
図1及び
図2に示すように、この小便器1は、陶器製の小便器本体8と、この小便器本体8を洗浄するための自動便器洗浄ユニット10を備えている。小便器1は背後の壁面2に沿って取付けられる壁掛け式の小便器であるが、小便器1は床面上に直接配置される床置き式の小便器であってもよい。また、小便器1は、例えば、洗浄時に0.5L~2.0L(好ましくは、0.8L~1.0L)の洗浄水量で洗浄する節水型の小便器であってもよい。以下、小便器1の正面側を前方側、その背面側を後方側(奥側)、小便器1の正面から見て左側を左側、小便器1の正面から見て右側を右側として説明する。
【0021】
小便器1の小便器本体8は、上方端に自動便器洗浄ユニット10を収納するための収納室12と、この収納室12の前面14から下方に延びるボウル面を形成するボウル部16と、このボウル部16の底部に形成された排水口部18と、排水口部18の下流側において溜水Wを貯溜して封水を形成するトラップ部20と、 このトラップ部20の下流側の排水器具接続部22とを備えている。
小便器本体8の排水器具接続部22には、排水ソケット24が接続され、排水ソケット24には、排水用の器具排水管4が接続され、器具排水管4が壁面2の表側から裏側まで延びて排水横枝管6に接続されている。
【0022】
次に、
図2及び
図3に示す自動便器洗浄ユニット10について説明する。
図3は本発明の実施形態による小便器の自動便器洗浄ユニットの概略構成を示す図である。
収納室12は、小便器本体8と別体である蓋23により形成されている。また、収納室12の前面14は、後方に向かって傾斜して形成されている。収納室12に収納される自動便器洗浄ユニット10は、水道等の給水源から洗浄水を供給する給水管26と、給水管26に設けられる止水弁28と、止水弁28の下流側に設けられたバルブユニット30と、バルブユニット30から供給される洗浄水をボウル部16に吐水する吐水部であるスプレッダ(給水手段)32とを備えている。
【0023】
バルブユニット30は、給水管26を主給水流路36と電解水流路42とに分岐する分岐部34と、主給水流路36に設けられる定流量弁38と、定流量弁38の下流側に設けられて主給水の供給及び停止を行う主給水流路電磁弁40と、電解水流路42に設けられる定流量弁44と、定流量弁44の下流側に設けられて電解水を含む給水の供給及び停止を行う電解水流路電磁弁46と、電解水流路電磁弁46の下流側に設けられる逆止弁48と、電解水(除菌水)を注入する電解水注入ユニット50とを備えている。また、スプレッダ32には、ボウル部16の前面に向けられ、使用者の有無を検知する人体検知センサ(検知手段)52が取付けられている。ここで、電解水注入ユニット50は、電解水注入ユニット50中の電解槽において洗浄水中の塩化物イオンから次亜塩素酸を生成して電解水(除菌水)を生成できる機構を有し、この生成した電解水(除菌水)を洗浄水に注入することができる。電解水(除菌水)とは、洗浄水中の塩化物イオンから次亜塩素酸を生成した成分を含む水であり、尿石菌、バクテリア等の殺菌消毒効果及び増殖抑制効果を有している。
【0024】
自動便器洗浄ユニット10は、さらに、人体検知センサ52からの検知信号及び所定の制御プログラム等に基づいて主給水流路電磁弁40等を制御することができる制御ユニット54(制御手段)を備えている。
具体的には、制御ユニット54は、人体検知センサ52からの検知信号及び所定の制御プログラム等に基づいて、主給水流路電磁弁40を開閉制御し、洗浄水をスプレッダ32からボウル部16に吐水させるようになっている。スプレッダ32から吐水される洗浄水の給水流量は、主給水流路電磁弁40を開弁している時間により決定される。
【0025】
次に、ボウル部16は、水平方向においてその上部が比較的大きな曲率半径を有する円弧面を形成し、その下部が比較的小さな曲率半径を有する円弧面を形成している。スプレッダ32は、このボウル部16の左右中心軸線上の中央より上方の高さ位置に設けられている。
排水口部18には、上流側のその入口部18aにおいて目皿58が配置されている。さらに、排水口部18には、下流側のその出口部18bにおいてトラップ部20の入口を構成する排水口60が形成されている。
【0026】
トラップ部20の下流側には、排水器具接続部22が設けられ、排水器具接続部22に排水ソケット24が接続されるようになっているが、排水ソケット24を省略し、排水器具接続部22に器具排水管4を接続することもできる。
【0027】
次に、
図4乃至
図9により、本発明の実施形態による動作(作用)について説明する。
図4は本発明の実施形態による小便器の洗浄動作の第1例を示すタイムチャートであり、
図5は本発明の実施形態による小便器の洗浄動作の第2例を示すタイムチャートであり、
図6は本発明の実施形態による小便器の本洗浄モードM0において、洗浄水及び尿が小便器本体から器具排水管及び排水横枝管内に流れる様子を概略的に示す図であり、
図7は本発明の実施形態による小便器の第一洗浄モードM1において、洗浄水が小便器本体から器具排水管及び排水横枝管内に流れる様子を概略的に示す図であり、
図8は本発明の実施形態による小便器の第二洗浄モードM2において、洗浄水が小便器本体から器具排水管及び排水横枝管内に流れる様子を概略的に示す図であり、
図9(a)は本発明の実施形態による小便器の下流側に延びる排水横枝管において、本洗浄モードM0が実行された場合に尿及び洗浄水が排水横枝管内を流れる様子を示す図であり、
図9(b)は本発明の実施形態による小便器の下流側に延びる排水横枝管において、第一洗浄モードM1が実行された場合に尿混じり洗浄水及び洗浄水が排水横枝管内を流れる様子を示す図であり、
図9(c)は本発明の実施形態による小便器の下流側に延びる排水横枝管において、第二洗浄モードM2が実行された場合に洗浄水が排水横枝管内を流れる様子を示す図である。
図4及び
図5において、横軸は時刻を表し、縦軸方向の上段において、人体検知センサ52が使用者を検知していない状態であるOFF状態と使用者を検知している状態であるON状態との変化を示し、縦軸方向の下段において、主給水流路電磁弁40が閉弁されて洗浄水がスプレッダ32から吐水されていない状態であるOFF状態と主給水流路電磁弁40が開弁されて洗浄水がスプレッダ32から吐水されている状態であるON状態との変化を示している。
【0028】
先ず、本発明の実施形態による小便器の洗浄動作の第1例について説明する。
図4に示すように、待機状態(時刻t0~t1)において、通常、使用者が小便器1の前に立つとき(時刻t1)、人体検知センサ52が使用者の存在を検出して検出情報を制御ユニット54に送り、制御ユニット54は使用者の存在を認識する。使用者が放尿する前の待機状態においてはトラップ部20内には主に洗浄水が溜水Wとして存在している状態になっている。
使用者が小便器1のボウル部16に放尿を行うとき(時刻t1~t2)、ボウル部16の底部16aからトラップ部20内に尿が流れ込み、流れ込んだ尿によってもともと存在した溜水Wの大部分が排出される(置換される)。尿がトラップ部20内に流れ込んだ直後は尿自身もトラップ部20の下流側の器具排水管4及び排水横枝管6に流れ出している状態となる。トラップ部20内には尿と水とが混ざり合った尿濃度の非常に高い液体が存在する又はほぼ尿がそのまま存在する新たな溜水Wとして存在する状態となる。このトラップ部20内に存在する尿と水とが混ざり合った尿濃度の非常に高い液体又は尿そのものを、以下尿Uとして説明する。
【0029】
使用者が小便器1のボウル部16に放尿を終え、放尿を済ませた使用者が小便器1の前から立ち去るときに、人体検知センサ52が使用者の存在を検出しなくなる状態に変化する(時刻t2)。人体検知センサ52が一定時間以上の間検出状態を継続した後に、人体検知センサ52が非検出状態に変わると、制御ユニット54は使用者が小便器1から立ち去ったと認識して、本洗浄モードM0を開始し、小便洗浄動作を開始する(時刻t2)。
【0030】
本洗浄モードM0においては、使用者の尿を受けたボウル部16を洗浄し且つトラップ部20内の尿を排出する。
具体的には、制御ユニット54は、主給水流路電磁弁40に制御信号を送って主給水流路電磁弁40を開き、先に決定した量の洗浄水Wfをスプレッダ32からボウル部16に吐水させる。吐水される洗浄水の量は単位時間あたりほぼ一定の瞬間流量(例えば、9L/min)に設定されている。この洗浄水Wfは、ボウル部16を流下して、排水口部18に到達する。この流下する洗浄水Wfは、トラップ部20を通過する際に流路抵抗を受けるため、トラップ部20の入口近傍に一時的に貯まるような状態となり、この一時的に溜まった洗浄水の水頭高さ(通常の溜水面からの水頭高さ)が、トラップ部20から排水される洗浄水に圧力を及ぼし、洗浄水の瞬間流量を変化させることとなる。
図6に示すように、洗浄水Wfは、トラップ部20内に存在する尿Uを押し出すようにしながら、尿Uとともに下流側に流れる。スプレッダ32から吐水される洗浄水Wfの水量又は瞬間流量、前記水頭高さ等から、洗浄水Wf及び尿Uが、トラップ部20から下流側に排出される排出水量又は排出瞬間流量の値が決定される。例えば、トラップ部20から下流側に排出される排出瞬間流量の値は7L/minとなっている。
【0031】
図6(a)乃至(d)に示すように、洗浄水Wf及び尿Uは、トラップ部20から排水器具接続部22及び排水ソケット24を介して器具排水管4に排水される。洗浄水Wf及び尿Uは、矢印Bに示すように、器具排水管4に沿って小便器後方に流れ、排水横枝管6との接続部56に到達する。
図6(a)に示すように、本洗浄モードにおいてトラップ部20から器具排水管4に排水される洗浄水は、主に、新たに流入する洗浄水Wfが、トラップ部20内の尿Uを押し流すように流れる。この流れが器具排水管4から接続部56に到達するとき、流れが比較的速い流れであるので、尿Uが排水横枝管6の上流側Fの上流側領域6dにおける部分と下流側Eの下流側領域6eにおける部分とに分かれるように押し出される。
図6(b)に示すように、さらに後続の洗浄水Wfが流入すると、尿Uが上流側の尿Ufと下流側の尿Ueとに分断される。
引き続いて、
図6(c)に示すように、洗浄水Wfの供給が終了すると(時刻t3)、洗浄水Wfは下流側の尿Ueとともに下流側に流下していく。このとき、上流側Fの方向に逆流した尿Ufが洗浄水Wfとともに流れることなく取り残された状態となる。
図6(d)に示すように、本洗浄モード終了後においては、このように取り残された尿Ufが、排水横枝管6内の内壁に付着して残存した状態の尿Uf0となる。
【0032】
また、本洗浄モードM0の排水の最中において、本洗浄モードM0の洗浄水量及び排出瞬間流量は、毎回ほぼ一定に設定されていることから、
図9(a)に示すように、排水時の排水横枝管6内の最高高さ位置の喫水面(水面)WL0の高さは毎回ほぼ一定にされている。よって、排水横枝管6内の内側壁面6aと、高さWL0の高さ位置の尿U(及び/又は洗浄水Wf)の水面とが接する境界部6b上にバクテリアが増殖しやすく、尿石6cの付着(発生)が生じやすくなる。
【0033】
本洗浄モードM0においては、制御ユニット54は、所定時間(時刻t2~t3の間)にわたって主給水流路電磁弁40を開弁し、例えば約0.8Lの洗浄水Wfをスプレッダ32から吐水させるようになっている。このとき、本洗浄モードM0におけるトラップ部20から下流側に排出される洗浄水量は0.8Lとなる。制御ユニット54は、所定時間経過後、主給水流路電磁弁40を閉弁し、本洗浄モードを終了させる(時刻t3)。
【0034】
次に、制御ユニット54は、本洗浄モードM0が終了(時刻t3)してから、例えば約20秒の所定時間(時刻t3~t4の間)経過後に、第一洗浄モードM1を開始させる。
第一洗浄モードM1は、本洗浄モードM0が実行された後、排水横枝管6内を器具排水管4が接続された接続部56より上流側まで洗浄するようになっている。
具体的には、制御ユニット54は、主給水流路電磁弁40に制御信号を送って主給水流路電磁弁40を開き、先に決定した量の洗浄水Wfをスプレッダ32からボウル部16に吐水させる。なお、第一洗浄モードM1の吐水開始直前においては、トラップ部20内には主に本洗浄モードM0において供給された洗浄水Wfが溜水Wとして存在している状態になっている。トラップ部20内の溜水Wにおける尿濃度は本洗浄モードM0の開始前と比べて相当低下された状態となっている。
【0035】
第一洗浄モードM1において、洗浄水Wfは、ボウル部16を流下して、排水口部18に到達する。この流下する洗浄水Wfは、トラップ部20を通過する際に流路抵抗を受けるため、トラップ部20の入口の排水口60近傍に水頭高さH1まで一時的に貯まるような状態となり、この一時的に溜まった洗浄水の通常の溜水面からの水頭高さH1が、トラップ部20から排水される洗浄水に圧力を及ぼすこととなる。このように水頭高さは供給瞬間流量がほぼ一定の場合であっても供給水量等によって変化することとなる。洗浄水Wfは、トラップ部20内に存在する尿Uを押し出すようにしながら、尿Uとともに下流側に流れる。スプレッダ32から吐水される洗浄水Wfの水量又は瞬間流量、前記水頭高さ等から、洗浄水Wf及び尿Uが、トラップ部20から下流側に排出される排出水量又は排出瞬間流量の値が決定される。
第一洗浄モードM1において、トラップ部20の入口近傍における洗浄水の水頭高さはH1となり、これに対応する、トラップ部20から下流側に排出される洗浄水の排出瞬間流量はF1となっている。例えば、トラップ部20から下流側に排出される排出瞬間流量F1の値は7~8L/minとなっている。
【0036】
図7(a)乃至(c)に示すように、洗浄水Wfは、矢印Bに示すように、トラップ部20から器具排水管4に沿って小便器後方に流れ、排水横枝管6との接続部56に到達する。
図7(a)に示すように、第一洗浄モードM1においてトラップ部20から器具排水管4に排水される洗浄水は、主に、新たに流入する洗浄水Wfが、トラップ部20内の主に本洗浄モードM0において供給された洗浄水Wfを押し流すように流れる。この洗浄水Wfの流れが器具排水管4から接続部56に到達するとき、流れが比較的速い流れであるので、洗浄水Wfが排水横枝管6の上流側Fと下流側Eとに分かれるように広がる。洗浄水Wfのうち上流側Fに向かう部分が付着した状態の尿Uf0の上流側を覆うように逆流する(上流側に遡り流れる)。従って、洗浄水Wfが、接続部よりも上流側Fに存在する付着した状態の尿Uf0についても、洗浄することができる。
図7(b)に示すように、第一洗浄モードM1において、洗浄水Wfが排水横枝管6の上流側Fにおいて到達する最高到達点T1は、本洗浄モードM0において、尿Uf(又は洗浄水Wf)が排水横枝管6の上流側Fにおいて到達する最高到達点T0よりも上流側に位置している。
洗浄水Wfの供給が終了すると(時刻t5)、洗浄水Wfは尿Uf0とともに下流側に流下していく。このとき、上流側Fの方向に逆流した洗浄水Wf及び尿Uf0のうち一部の尿混じり水Uf1が、洗浄水Wfとともに流れることなく取り残された状態となる場合がある。よって、
図7(c)に示すように、第一洗浄モードM1終了後においては、このように取り残された比較的低濃度の尿混じり水Uf1が、排水横枝管6内の内壁に付着して残存した状態となる。
【0037】
また、第一洗浄モードM1の排水の最中において、第一洗浄モードM1におけるトラップ部20から下流側に排出される排出水量又は排出瞬間流量の値が、本洗浄モードM0におけるトラップ部20から下流側に排出される排出水量又は排出瞬間流量の値以上の値となるように設定されている。従って、
図9(b)に示すように、第一洗浄モードM1における排水時の排水横枝管6内の最高高さ位置の喫水面(水面)WL1は、本洗浄モードM0における排水時の排水横枝管6内の最高高さ位置の喫水面(水面)WL0よりも高い位置に上昇している。よって、通常の本洗浄モードM0において比較的尿石6cが生じやすい境界部6b上の部分を、境界部6b以上の最高高さ位置の喫水面WL1まで到達する洗浄水により洗浄することができ、境界部6b上のバクテリアの増殖を抑制し、尿石6cの付着(発生)を抑制することができる。なお、第一洗浄モードM1における喫水面WL1が境界部6bの喫水面WL0と同じ高さであったとしても、比較的きれいな洗浄水により、境界部6bを洗浄することができるため、境界部6b上のバクテリアの増殖を抑制し、尿石6cの付着(発生)を抑制することができる。
また、第一洗浄モードM1において、排水横枝管6内を流れる洗浄水Wf及び尿混じり水Uf1の尿濃度は、本洗浄モードM0において排水横枝管6内を流れる尿U及び洗浄水Wfの尿濃度よりも低減されている。従って、第一洗浄モードM1においては、比較的きれいな洗浄水により、境界部6bを洗浄することができる。
【0038】
第一洗浄モードM1においては、制御ユニット54は、所定時間(時刻t4~t5の間)にわたって主給水流路電磁弁40を開弁し、例えば約1.0Lの洗浄水Wfをスプレッダ32から吐水させるようになっている。このとき、第一洗浄モードM1におけるトラップ部20から下流側に排出される洗浄水量は1.0Lとなる。制御ユニット54は、所定時間経過後、主給水流路電磁弁40を閉弁し、第一洗浄モードM1を終了させる(時刻t5)。
【0039】
次に、制御ユニット54は、第一洗浄モードM1が終了(時刻t5)してから、例えば約20秒の所定時間(時刻t5~t6の間)経過後に、第二洗浄モードM2を開始させる(時刻t6)。すなわち、第二洗浄モードM2は、第一洗浄モードM1が実行された後から、第一洗浄モードM1により接続部56よりも上流側Fの上流側領域6dを洗浄した洗浄水が概ね接続部56よりも下流側Eに流下すると想定される所定時間を経過した後、再び、接続部56よりも上流側の上流側領域6dを洗浄するように開始される。
具体的には、制御ユニット54は、主給水流路電磁弁40に制御信号を送って主給水流路電磁弁40を開き、第二洗浄モードM2の先に決定した量の洗浄水Wfをスプレッダ32からボウル部16に吐水させる。なお、第二洗浄モードM2の吐水開始直前においては、トラップ部20内には主に第一洗浄モードM1において供給された洗浄水Wfが溜水Wとして存在している状態になっている。トラップ部20内の溜水Wにおける尿濃度は第一洗浄モードM1の開始前と比べて低下された状態となっている。
【0040】
第二洗浄モードM2において、洗浄水Wfは、ボウル部16を流下して、排水口部18に到達する。この流下する洗浄水Wfは、トラップ部20を通過する際に流路抵抗を受けるため、トラップ部20の入口の排水口60近傍に一時的に貯まるような状態となり、この一時的に溜まった洗浄水の水頭高さH2(通常時の溜水Wの面からの高さ)が、トラップ部20から排水される洗浄水に圧力を及ぼし、洗浄水の瞬間流量を変化させることとなる。洗浄水Wfは、トラップ部20内に存在する洗浄水Wfを押し出すようにしながら、洗浄水Wfとともに下流側に流れる。スプレッダ32から吐水される洗浄水Wfの水量又は瞬間流量、前記水頭高さ等から、洗浄水Wfが、トラップ部20から下流側に排出される排出水量又は排出瞬間流量の値が決定される。
第二洗浄モードM2において、ボウル部16の底部における洗浄水の水頭高さはH2であり、これに対応する、トラップ部20から下流側に排出される排出瞬間流量はF2となっている。例えば、トラップ部20から下流側に排出される排出瞬間流量F2の値は7~9L/minとなっている。
【0041】
図8(a)乃至
図8(c)に示すように、洗浄水Wfは、矢印Bに示すように、トラップ部20から器具排水管4に沿って小便器後方に流れ、排水横枝管6との接続部56に到達する。
図8(a)に示すように、第二洗浄モードM2においてトラップ部20から器具排水管4に排水される洗浄水は、主に、新たに流入する洗浄水Wfが、トラップ部20内の主に第一洗浄モードM1において供給された洗浄水Wfを押し流すように流れる。この洗浄水Wfの流れが器具排水管4から接続部56に到達するとき、流れが比較的速い流れであるので、洗浄水Wfが排水横枝管6の上流側Fの上流側領域6dにおける部分と下流側Eの下流側領域6eにおける部分とに分かれるように広がる。洗浄水Wfのうち上流側Fに向かう部分が付着した状態の尿混じり水Uf1の上流側を覆うように逆流(上流側に遡り)する。従って、洗浄水Wfが、接続部よりも上流側Fに存在する付着した状態の尿混じり水Uf1についても、洗浄することができる。
第二洗浄モードM2において、洗浄水Wfが排水横枝管6の上流側Fにおいて到達する最高到達点T2は、第一洗浄モードM1において、洗浄水Wfが排水横枝管6の上流側Fの上流側領域6dにおいて到達する最高到達点T1よりも上流側に位置している。
図8(b)に示すように、洗浄水Wfの供給が終了すると(時刻t7)、洗浄水Wfは尿混じり水Uf1とともに下流側に流下していく。このとき、接続部56より上流側Fの領域において尿混じり水Uf1は取り残されていない状態であり、仮に水分が残っている状態であっても、尿の成分濃度が2回の洗浄によって相当低下された状態の洗浄水に起因する水分が残る状態であると考えられるから、排水横枝管6内への尿石の付着を抑制することができる。
よって、
図8(c)に示すように、第二洗浄モードM2終了後においては、洗浄水Wfが尿混じり水Uf1とともに排水され、排水横枝管6は、尿の残存が抑制されるようにきれいに洗浄された状態となる。
【0042】
また、第二洗浄モードM2の排水の最中において、第二洗浄モードM2におけるトラップ部20から下流側に排出される排出水量又は排出瞬間流量の値が、第一洗浄モードM1におけるトラップ部20から下流側に排出される排出水量又は排出瞬間流量の値以上の値となるように設定されている。従って、
図9(c)に示すように、第二洗浄モードM2における排水時の排水横枝管6内の水面(喫水面)の喫水面WL2は、第一洗浄モードM1における排水時の排水横枝管6内の水面(喫水面)の喫水面WL1よりも高い位置に上昇している。よって、通常の本洗浄モードM0において比較的尿石6cが生じやすい境界部6b上の部分を、境界部6bより上方の最高高さ位置の喫水面WL2まで到達する洗浄水により洗浄することができ、境界部6b上のバクテリアの増殖を抑制し、尿石6cの付着(発生)を抑制することができる。また、第二洗浄モードM2において、排水横枝管6内を流れる洗浄水Wfの尿濃度は、本洗浄モードM0において排水横枝管6内を流れる尿U及び洗浄水Wfの尿濃度よりも低減され、さらに、第一洗浄モードM1において排水横枝管6内を流れる尿Uf1及び洗浄水Wfの尿濃度よりも低減されている。従って、第二洗浄モードM2においては、比較的きれいな洗浄水により、境界部6bを洗浄することができる。
【0043】
第二洗浄モードM2においては、制御ユニット54は、第一洗浄モードM1の主給水流路電磁弁40を開弁した所定時間よりも長い所定時間(時刻t6~t7の間)にわたって主給水流路電磁弁40を開弁し、例えば約1.2Lの洗浄水Wfをスプレッダ32から吐水させるようになっている。このとき、第二洗浄モードM2におけるトラップ部20から下流側に排出される洗浄水量は1.2Lとなる。制御ユニット54は、所定時間経過後、主給水流路電磁弁40を閉弁し、第二洗浄モードM2を終了させる(時刻t7)。
【0044】
なお、制御ユニット54は、例えば、第二洗浄モードM2が終了した後に、必要に応じて、電解水流路電磁弁46を開弁し、電解水(例えば次亜塩素酸を含む除菌水)の注入された洗浄水をスプレッダ32からボウル部16に吐水させる電解水洗浄モードDを実行することができる。排水横枝管6内が洗浄された後に電解水を流すことで、トラップ部20及び排水横枝管6内を殺菌消毒することができ、トラップ部20及び排水横枝管6内に残存する水分中における尿石菌等の繁殖を抑制し、長期間にわたり尿石の付着(発生)を抑制することができる。また、電解水(例えば次亜塩素酸を含む除菌水)の注入された洗浄水を注入する時期は第一洗浄モードM1の実行時、若しくは第二洗浄モードM2の実行時又は第一洗浄モードM1及び第二洗浄モードM2の両方の実行時であってもよい。
【0045】
第二洗浄モードM2が終了した後、制御ユニット54は、さらに一定の所定時間が経過するまでの間、例えば約2時間の所定時間が経過するまでの間、設備洗浄待機状態を継続し、この一定の所定時間が経過した場合、制御ユニット54は、再び第一洗浄モードM1を開始させる。このように第二洗浄モードM2の終了から所定期間を経過する毎に、第一洗浄モードM1及び第二洗浄モードM2をさらに繰り返し行うことで、排水横枝管6内の尿石の付着(発生)を抑制することができる。
【0046】
次に、制御ユニット54は、上述のように、再び第一洗浄モードM1を開始させる(時刻t8)。この第一洗浄モードM1における洗浄動作については、前述の第一洗浄モードM1における洗浄動作と同様であるので説明を省略する。
第一洗浄モードM1において、洗浄水が、排水横枝管6内の上流側領域6d、及び下流側領域6eを洗浄することができ、バクテリアの増殖を抑制し、尿石6cの付着(発生)を抑制することができる。
また、第一洗浄モードM1において、洗浄水が、排水横枝管6内の境界部6b以上の最高高さ位置まで到達する喫水面WL1により洗浄することができ、境界部6b上のバクテリアの増殖を抑制し、尿石6cの付着(発生)を抑制することができる。
【0047】
次に、制御ユニット54は、第一洗浄モードM1が終了(時刻t9)してから、例えば約20秒の所定時間(時刻t9~t10の間)経過後に、さらに、第二洗浄モードM2を開始させる(時刻t10)。この第二洗浄モードM2における洗浄動作については、前述の第二洗浄モードM2における洗浄動作と同様であるので説明を省略する。
第二洗浄モードM2において、洗浄水が、排水横枝管6内の上流側領域6d、及び下流側領域6eをより効果的に洗浄することができ、バクテリアの増殖を抑制し、尿石6cの付着(発生)を抑制することができる。
また、第二洗浄モードM2において、洗浄水が、排水横枝管6内の境界部6b以上の最高高さ位置の喫水面WL2まで到達する洗浄水により洗浄することができ、境界部6b上のバクテリアの増殖を抑制し、尿石6cの付着(発生)を抑制することができる。
【0048】
以降、この第二洗浄モードM2が終了した後、設備洗浄待機状態を継続し、さらに一定の所定時間が経過した場合、例えば約2時間の所定時間が経過した場合、制御ユニット54は、再び第一洗浄モードM1及び第二洗浄モードM2をさらに繰り返し行うように制御することができる。別の言い方によれば、制御ユニット54は、本洗浄モードM0の終了後に、第一洗浄モードM1及び第二洗浄モードM2の組を、所定時間おきに繰り返し実行するように制御することができる。
【0049】
続いて、
図10を参照しながら、使用者の入れ替わりが早かった場合の小便器1の洗浄動作について説明する。
図10は、本発明の実施形態による小便器の洗浄動作の第3例を示すタイムチャートである。
【0050】
図10に示すように、時刻t2において、制御ユニット54は、使用者が小便器1から立ち去ったと認識したときに本洗浄モードM0を開始し、小便洗浄動作を開始する。そして、本来であれば、この本洗浄モードM0が時刻t3で終了してから、約20秒の所定時間が経過後に第一洗浄モードM1を開始させるが、ここでは時刻t3から約20秒の所定時間が経過する前に新たな使用者の存在を認識している(時刻t4)。
この時刻t4において、制御ユニット54は、予定されていた第一洗浄モードM1および第二洗浄モードM2の実行をキャンセルすると共に、ボウル部16への洗浄水の供給を強制的に開始する強制開始モードM3を実行する。この強制開始モードM3は、時刻t4から時刻t5にかけて実行される。
【0051】
また、時刻t6において、制御ユニット54は、使用者が小便器1から立ち去ったと認識したときに本洗浄モードM0を開始し、小便洗浄動作を開始する。時刻t6から時刻t7にかけて本洗浄モードM0を実行し、この本洗浄モードM0が時刻t7で終了してから、約20秒の所定時間が経過後に第一洗浄モードM1を開始させる(時刻t8)。この第一洗浄モードM1は、時刻t8から時刻t9にかけて実行される。
そして、本来であれば、この第一洗浄モードM1が時刻t9で終了してから、約20秒の所定時間が経過後に第二洗浄モードM2を開始させるが、ここでは時刻t9から約20秒の所定時間が経過する前に新たな使用者の存在を認識している(時刻t10)。
この時刻t10において、制御ユニット54は、予定されていた第二洗浄モードM2の実行をキャンセルすると共に、ボウル部16への洗浄水の供給を強制的に開始する強制開始モードM3を実行する。この強制開始モードM3は、時刻t10から時刻t11にかけて実行される。
【0052】
つぎに、上述した本発明の実施形態による小便器1における作用効果について説明する。
本発明の実施形態による小便器1において、
図10で示したように、制御ユニット54は、本洗浄モードM0を実行してから第一洗浄モードM1もしくは第二洗浄モードM2を実行するまでに人体検知センサ52が使用者の接近を検知したとき、予定されていた第一洗浄モードおよび第二洗浄モードの実行をキャンセルすると共にボウル部16への洗浄水の供給を強制的に開始する強制開始モードM3を有する。これにより、使用者は小便器に接近してから放尿を開始するまでに所定の準備時間を必要とするため、強制開始モードM3において器具配水管4および排水横枝管6に流れ込む小便器1からの排水は、ほとんど尿が含まれていない比較的きれいな水である。したがって、強制開始モードM3の実行により、使用者が放尿している状態で第一洗浄モードM1および第二洗浄モードM2を実施する場合に比べて、滞留事象による排水横枝管6の尿石発生を抑制することができる。
【0053】
なお、上述した実施形態においては、本洗浄モードM0を実行してから第一洗浄モードM1もしくは第二洗浄モードM2を実行するまでに使用者の接近を検知する度に強制開始モードM3を実行することとしたが、本発明はこれに限らず、例えば小便器1を使用した使用者数をカウントし、そのカウントが所定人数を超えた状態において強制開始モードM3を実行する条件を満たしたときに、強制開始モードM3を実行することとしてもよい。
【0054】
また、上述した実施形態においては、第一洗浄モードM1の実行を終了してから約20秒の所定時間経過後に第二洗浄モードM2を実行することとしたが、本発明はこれに限らず、第二洗浄モードM2を実行しなくてもよい。
【0055】
続いて、
図11を参照しながら、本発明の変形例による小便器の洗浄動作について説明する。
図11は、本発明の変形例による小便器の洗浄動作の一例を示すタイムチャートである。
【0056】
本発明の変形例による小便器100は、上述した本発明の実施形態による小便器1に対して、本洗浄モードM0、第一洗浄モードM1、第二洗浄モードM2を有する点については同様であるが、前洗浄モードN0を有する点について異なる。
図11に示すように、小便器100の制御ユニット154は、時刻t1において使用者が小便器100に接近したことを認識すると、小便器100のボウル部116に洗浄水を供給する前洗浄モードN0を実行する。この前洗浄モードN0を実行することにより、ボウル部116の表面が洗浄水によって濡れるため、尿がボウル部116の表面に直接付着することを抑制することができる。この前洗浄モードN0は、時刻t1から時刻t2にかけて実行される。
【0057】
時刻t3において、制御ユニット154は、使用者が小便器1から立ち去ったと認識したときに本洗浄モードM0を開始し、小便洗浄動作を開始する。そして、本来であれば、この本洗浄モードM0が時刻t4で終了してから、約20秒の所定時間が経過後に第一洗浄モードM1を開始させるが、ここでは時刻t3から約20秒の所定時間が経過する前に新たな使用者の存在を認識している(時刻t5)。
この時刻t4において、制御ユニット154は、予定されていた第一洗浄モードM1および第二洗浄モードM2の実行をキャンセルすると共に、前洗浄モードN0を実行する。この前洗浄モードN0は、時刻t4から時刻t5にかけて実行されるが、ここで実行する前洗浄モードN0については、ボウル部116へ供給する洗浄水の供給量は、通常の前洗浄モードN0(例えば、時刻t1から時刻t2にかけて実行される前洗浄モードN0)においてボウル部116へ供給する洗浄水の供給量よりも多くする。
【0058】
したがって、本洗浄モードM0を実行してから第一洗浄モードM1を実行するまでに使用者の接近を検知したとき、予定された第一洗浄モードM1および第二洗浄モードM2の実行をキャンセルすると共にボウル部116への洗浄水の供給量が通常時よりも多い前洗浄モードN0を実行することで、この前洗浄モードN0が第一洗浄モードM1の役割の一部を果たすことができるため、使用者が放尿している状態で第一洗浄モードM1および第二洗浄モードM2を実施する場合に比べて、滞留事象による排水横枝管の尿石発生を抑制することができる。
【0059】
前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0060】
1 小便器
2 壁面
4 器具排水管
6 排水横枝管
6a 内側壁面
6b 境界部
6c 尿石
6d 上流側領域
6e 下流側領域
8 小便器本体
10 自動便器洗浄ユニット
12 収納室
14 前面
16 ボウル部
16a 底部
18 排水口部
18a 入口部
18b 出口部
20 トラップ部
22 排水器具接続部
23 蓋
24 排水ソケット
26 給水管
28 止水弁
30 バルブユニット
32 スプレッダ
34 分岐部
36 主給水流路
38 定流量弁
40 主給水流路電磁弁
42 電解水流路
44 定流量弁
46 電解水流路電磁弁
48 逆止弁
50 電解水注入ユニット
52 人体検知センサ
54 制御ユニット
56 接続部
58 目皿
60 排水口
B 矢印
E 下流側
F 上流側
M0 本洗浄モード
M1 第一洗浄モード
M2 第二洗浄モード
M3 強制開始モード
N0 前洗浄モード
T0 最高到達点
T1 最高到達点
T2 最高到達点
U 尿
W 溜水
Wf 洗浄水
WL0 喫水面
WL1 喫水面
WL2 喫水面