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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-24
(45)【発行日】2022-02-01
(54)【発明の名称】ダンパ装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/134 20060101AFI20220125BHJP
   F16F 1/12 20060101ALI20220125BHJP
   F16F 3/04 20060101ALI20220125BHJP
   F16D 13/64 20060101ALI20220125BHJP
【FI】
F16F15/134 D
F16F15/134 B
F16F1/12 N
F16F3/04 A
F16D13/64 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018044897
(22)【出願日】2018-03-13
(65)【公開番号】P2019157983
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-02-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(72)【発明者】
【氏名】久保田 悟史
(72)【発明者】
【氏名】林 大介
(72)【発明者】
【氏名】▲浜▼口 徹
(72)【発明者】
【氏名】徳森 慎平
(72)【発明者】
【氏名】鍋田 大
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-106143(JP,A)
【文献】特開2005-024056(JP,A)
【文献】特開2000-205295(JP,A)
【文献】特開平09-053655(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/134
F16F 1/12
F16F 3/04
F16D 13/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸回りに回転可能な第1回転部材と、
該第1回転部材と対向配置され、前記回転軸回りに回転可能な第2回転部材と、
前記第1及び第2回転部材における周方向において、前記第1及び第2回転部材を弾性的に連結し、前記第1及び第2回転部材間の回転変動を減衰する第1コイルスプリングと、
該第1コイルスプリングの内周側に配置される第2コイルスプリングと、
前記第1及び第2コイルスプリングの両端面にそれぞれ配置されて該両端面を挟持すると共に、前記第1コイルスプリングの前記両端面の一端面を支持する支持面の径方向外側部分から前記周方向に突出し、前記第1コイルスプリングの、前記第1及び第2回転部材における径方向外側への移動を規制する凸部と、前記支持面に前記周方向に窪んで形成され、前記第1コイルスプリングの前記内周側に位置し、前記第1コイルスプリングの内径よりも小さく、前記第2コイルスプリングの外径より大きく開口し、前記第2コイルスプリングの前記径方向外側への移動を規制する凹部と、を有する一対のシート部材とを備える、ダンパ装置。
【請求項2】
前記凸部は、前記第1コイルスプリングの外径より大きな曲率半径をもって、前記第1コイルスプリングの巻回方向に沿う円弧状に湾曲して形成される第1規制面を含み、
前記凹部は、前記第2コイルスプリングの前記外径より大きな曲率半径をもって、前記第2コイルスプリングの巻回方向に沿う円状に形成される内周面を含む、
請求項1に記載のダンパ装置。
【請求項3】
前記凸部は、前記第1コイルスプリングの中心軸に平行して延在する第1規制面を含み、
前記凹部は、前記第2コイルスプリングの中心軸に平行して延在する内周面を含む、
請求項1に記載のダンパ装置。
【請求項4】
前記凸部は、該凸部の先端に近づくに連れて前記第1コイルスプリングのコイル中心から離間するように形成される第2規制面を含む、
請求項1から3のいずれか1項に記載のダンパ装置。
【請求項5】
前記凸部と前記凹部は、前記第1コイルスプリングのコイル線径より大きく離間する、
請求項1から4のいずれか1項に記載のダンパ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、回転部材間の回転変動を減衰するダンパ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、クラッチに用いられるクラッチディスク等のダンパ機構に設置されるスプリング組立体として、入力側回転部材と出力側回転部材とを回転方向において弾性的に連結するように配置され、クラッチ接続時に入力側及び出力側回転部材が相対回転することで圧縮されるスプリング組立体が知られている。
【0003】
スプリング組立体は、第1コイルスプリングと、その内周側に配置される第2コイルスプリングと、第1コイルスプリングの両端面に対向してそれぞれ配置される一対のスプリングシートとを備えている。スプリングシートは、第1コイルスプリングの端部を支持する支持部と、支持部に設けられ、第1コイルスプリングの内周に係合可能かつ第2コイルスプリングの一端面及び他端面に当接可能な円柱状の突起部と、突起部に固定され、第2コイルスプリングの内周に嵌合される円柱状の位置決め部材とを有している。
【0004】
この構成によると、突起部によって第1コイルスプリングの作動する軌道が、位置決め部材によって第2コイルスプリングの作動する軌道が、それぞれ安定して維持されるため、第1コイルスプリングの内周と第2コイルスプリングの外周とが接触しにくくなり、生じ得る摩耗を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-24056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術の構成では、スプリングシートに対して、第1コイルスプリングの内周側に円柱状の突起部を設けるために、第1コイルスプリングの内径寸法は突起部の外径寸法以上となるように制限される。よって、第1コイルスプリングの径寸法が内側から制限され、例えば、所望のコイル線径寸法が得られない恐れがある。
【0007】
また、スプリングシートに対して、第2コイルスプリングの内周側に、その内周と嵌合する円柱状の位置決め部材を設けるために、上述した関係と同様、第2コイルスプリングの径寸法が制限される。さらに、第2コイルスプリングの端面に突起部を設けるために、第2コイルスプリングの軸方向長さは制限される。例えば、第2コイルスプリングの軸方向長さは、第1コイルスプリングに対して、突起部の長さ分だけ短くならざるを得ない。
【0008】
よって、第1、第2コイルスプリングは、コイル線径寸法や軸方向長さ等の設計自由度が制限され、クラッチ接続時に圧縮されて発生するたわみ量に応じた付勢力を発生させることができず、ダンパ装置として所望の捩じれ特性が得られない恐れがある。
【0009】
そこで、本発明はこうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、コイルスプリングの設計自由度が得られるダンパ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために、本発明の一態様に係るダンパ装置は、回転軸回りに回転可能な第1回転部材と、第1回転部材と対向配置され、回転軸回りに回転可能な第2回転部材と、第1及び第2回転部材における周方向において、第1及び第2回転部材を弾性的に連結し、第1及び第2回転部材間の回転変動を減衰する第1コイルスプリングと、第1コイルスプリングの内周側に配置される第2コイルスプリングと、第1及び第2コイルスプリングの両端面にそれぞれ配置されて両端面を挟持すると共に、第1コイルスプリングの両端面の一端面を支持する支持面の径方向外側部分から周方向に突出し、第1コイルスプリングの、第1及び第2回転部材における径方向外側への移動を規制する凸部と、支持面に周方向に窪んで形成され、第1コイルスプリングの内周側に位置し、第1コイルスプリングの内径よりも小さく、第2コイルスプリングの外径より大きく開口し、第2コイルスプリングの径方向外側への移動を規制する凹部と、を有する一対のシート部材とを備える構成とした。
【0011】
これにより、シート部材の凸部が第1コイルスプリングの外周側に配設されるため、第1、第2コイルスプリングの内径寸法は制限されない。また、第1コイルスプリングの一端面を支持する支持面より窪んで形成される凹部が、第2コイルスプリングの一端面を支持することになるため、第2コイルスプリングの軸方向長さは短くなる方へ制限されず、第1コイルスプリングに対して長く設定することも可能である。よって、コイルスプリング(第1、第2コイルスプリング)の設計自由度が得られうる。
【0012】
好ましくは、凸部は第1コイルスプリングの外径より大きな曲率半径をもって、第1コイルスプリングの巻回方向に沿う円弧状に湾曲して形成される第1規制面を含み、凹部は第2コイルスプリングの外径より大きな曲率半径をもって、第2コイルスプリングの巻回方向に沿う円状に形成される内周面を含むと良い。
【0013】
これにより、第1規制面、内周面はそれぞれ、第1、第2コイルスプリングの外径より曲率半径が大きいため、第1、第2コイルスプリングはそれぞれの外周を安定して保持され得る。よって、第1、第2コイルスプリングの作動する軌道が安定して維持されるため、第1コイルスプリングの内周と第2コイルスプリングの外周とが接触しにくくなり、生じ得る摩耗を低減することができる。
【0014】
また、好ましくは、凸部は第1コイルスプリングの中心軸に平行して延在する第1規制面を含み、凹部は第2コイルスプリングの中心軸に平行して延在する内周面を含むと良い。
【0015】
これにより、第1規制面、内周面はそれぞれ、第1、第2コイルスプリングの中心軸方向に、第1、第2コイルスプリングの外周に沿って延在することで、外周と安定して当接するため、第1、第2コイルスプリングはそれぞれの外周を安定して保持され得る。よって、第1、第2コイルスプリングの作動する軌道が安定して維持されるため、第1コイルスプリングの内周と第2コイルスプリングの外周とが接触しにくくなり、生じ得る摩耗を低減することができる。
【0016】
また、好ましくは、凸部は凸部の先端に近づくに連れて第1コイルスプリングのコイル中心から離間するように形成される第2規制面を含むと良い。
【0017】
これにより、第2規制面は、径方向外側へ移動した第1コイルスプリングを安定して保持し得る。よって、第1コイルスプリングは、作動する軌道を安定して維持され得る。
【0018】
また、好ましくは、凸部と凹部は、第1コイルスプリングのコイル線径より大きく離間すると良い。
【0019】
これにより、第1コイルスプリングの径方向外側の外周と凸部の第1規制面とが当接し、第2コイルスプリングの径方向外側の外周と凹部の内周面とが当接した際に、第1コイルスプリングの径方向内側の内周と第2コイルスプリングの径方向内側の外周とが接触しにくくなり、生じ得る摩耗を低減し得る。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一態様に係るダンパ装置によれば、コイルスプリングの設計自由度が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るダンパ装置の構成を示す平面図である。
図2図1に示すダンパ装置のII-II断面図である。
図3図1に示すダンパ装置のシート部材部分を拡大した模式図である。
図4図3のシート部材が、第1、第2コイルスプリングの径方向外側への移動を規制している状態を説明する模式図である。
図5】別の実施形態に係るシート部材が、第1、第2コイルスプリングの径方向外側への移動を規制している状態を説明する模式図である。
図6図1に示すダンパ装置の別の実施形態に係るシート部材部分を拡大した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態を説明する。その際、特に言及しない限り、径方向、周方向、軸方向は、図1、2に示す回転軸Axのそれぞれ径方向、周方向、軸方向を指す。
【0023】
図1は本発明の一実施形態に係るダンパ装置の構成を示す平面図、図2図1に示すダンパ装置のII-II断面図である。ダンパ装置1は、例えば自動車のエンジンと変速機との間に配設される摩擦クラッチのクラッチディスクとして用いられる。この場合は、ディスク部材20のフェーシング26A、26Bが、駆動軸(不図示)に連結されるフライホイール(不図示)とプレッシャプレート(不図示)との間に適宜挟持され、ハブ部材10が出力軸としての変速機インプットシャフト(不図示)にスプライン嵌合される。また、ダンパ装置1の回転中心である回転軸Axは、駆動軸及び変速機インプットシャフトと略一致する。
【0024】
図1図2に示すように、ダンパ装置1は、上述のハブ部材10と、ディスク部材20と、両者を周方向において弾性的に連結する弾性部材組立体30と、ヒステリシス発生部材40とを備える。ここで、ハブ部材10は第1回転部材の、ディスク部材20は第2回転部材の一例である。
【0025】
図2に示すように、ハブ部材10は、筒状部11aとフランジ部11bとを有するインナーハブ11と、インナーハブ11の外周側に同軸配置されるリング状のアウターハブ12とを有する。筒状部11aは、変速機インプットシャフトを囲うように、回転軸Axと同軸となる円筒状に形成され、スプライン嵌合によって変速機インプットシャフトに結合され、一体回転する。フランジ部11bは、筒状部11aの軸方向略中央部分から径方向外側へ延在する、回転軸Axと直交するリング状かつプレート状に形成される。また、アウターハブ12は、インナーハブ11に相対回転可能に配設される。
【0026】
ディスク部材20は、インナーハブ11及びアウターハブ12の軸方向の両側に同軸かつ相対回転可能に配設されるサイドプレート21、22を有する。サイドプレート21、22は、インナーハブ11の筒状部11aの径方向外側に配置される、回転軸Axと直交するリング状かつプレート状に形成される。サイドプレート21、22は、ピン23によって、アウターハブ12の径方向外側で、互いに一定の間隔を保って連結され、さらに、サイドプレート21の外径端には、ピン23によって、リング状のクッショニングプレート24が固定される。
【0027】
クッショニングプレート24は、フェーシング26A、26Bへの軸方向の押圧に対して弾性力を発生するリング状の部材である。クッショニングプレート24の軸方向の一方の面(図2の左側の面)には、リベット25Aによってフェーシング26Aが、他方の面(図2の右側の面)には、リベット25Bによってフェーシング26Bが、それぞれ固着される。ここで、フェーシング26A、26Bは、摩擦材であり、例えば、ゴム、樹脂、繊維(短繊維、長繊維)、摩擦係数μ調整用粒子などを含むものを用いると良い。
【0028】
弾性部材組立体30は、アウターハブ12とサイドプレート21、22とを周方向に弾性的に連結する第1コイルスプリング31と、その内周側に収容され並列配置される第2コイルスプリング32と、第1、第2コイルスプリング31、32の両端面に配置される一対のシート部材33A、33Bとを有する。例えば、シート部材33A、33Bは、第1、第2コイルスプリング31、32の摩耗を低減するために樹脂によって成形され、第1、第2コイルスプリング31、32は、撓み時に大きな復元力を生じさせるために、金属ばねが採用される。
【0029】
また、ここでは、第1、第2コイルスプリング31、32は共に、等巻ピッチを採用するが、例えば、巻き端近傍の巻ピッチに対して、中央側の巻ピッチを密とするような第1コイルスプリング31としても良い。また、第1、第2コイルスプリング31、32は互いに、巻回方向を逆にすると良い。これらにより、第1コイルスプリング31が、その巻線間に第2コイルスプリング32の巻線を噛み込みづらく成り得る。
【0030】
また、第1、第2コイルスプリング31、32、シート部材33A、33Bは、アウターハブ12とサイドプレート21、22とにそれぞれ、周方向に等間隔をもって、数カ所、例えば4カ所に設けられる収容窓12aと収容窓22a、22bとの内側に配置、収容される。その一組を例にとって、以下に説明する。
【0031】
収容窓12aは、アウターハブ12の外周部に配設される、径方向外側への切り欠き形状に形成される。収容窓22a、22bはそれぞれ、サイドプレート21、22を軸方向に貫通する窓孔であり、例えばプレス加工によって打ち抜かれて成形される。収容窓22a、22bは、半袋状に形成され、シート部材33A、33Bを、その一部を覆う態様で収容する。また、収容窓22a、22bの周方向端面は、シート部材33A、33Bと接離可能に接している。
【0032】
図1に示すように、シート部材33A、33Bはそれぞれ、収容窓12aの周方向端面に対向する部分に凹部形状が形成されており、収容窓12aの周方向端面に形成される凸部12a1(図1)が嵌まり込む態様で、アウターハブ12に周方向両側から挟持される。よって、第1、第2コイルスプリング31、32は、シート部材33A、33Bを介して、サイドプレート21、22及びアウターハブ12に挟持される。
【0033】
サイドプレート21、22が回転すると、シート部材33A、33Bを介して、第1、第2コイルスプリング31、32に撓みが発生し、その復元力がアウターハブ12を回転させる。逆に、アウターハブ12が回転すると、第1、第2コイルスプリング31、32に撓みが発生し、その復元力がサイドプレート21、22を回転させる。
【0034】
ここで、図1に示すように、シート部材33A、33Bの一部は、アウターハブ12の外周面12bよりも径方向外側に位置する。これにより、第1、第2コイルスプリング31、32は、収容窓12a、収容窓22a、22b内で可能な限り径方向外側に配置でき、大径化でき、例えば自動車のエンジンによる大きなトルク変動に対応可能になり得る。
【0035】
図3は、図1に示すダンパ装置のシート部材部分を拡大した模式図である。図3に示すシート部材33A、33Bはそれぞれ、第1コイルスプリング31の両端面の一端面に当接することで支持するように、支持面33aが平面形状に形成される。例えば、支持面33aは、第1コイルスプリング31の外径De1より大きく形成されると良く、第1コイルスプリング31との接触面積が大きく取れ、接触面圧が下がり、強度が確保しやすく成り得る。
【0036】
さらに、支持面33aには、凸部33bと凹部33cが形成される。凸部33bは、支持面33aの径方向外側部分33a1から周方向に突出するように形成される。さらに、凸部33bの径方向内側部分には、第1コイルスプリング31の径方向外側の外周と当接することで、第1コイルスプリング31の径方向外側への移動を規制する第1規制面33b1、第2規制面33b2が形成され、凸部33bの径方向外側部分には、収容窓22a、22bに沿う案内面33b4が形成される。
【0037】
第1規制面33b1は、図2にも示すように、第1コイルスプリング31の外径De1より大きな曲率半径をもって第1コイルスプリング31の巻回方向に沿う円弧状に湾曲して形成される。言い換えると、第1規制面33b1は、第1コイルスプリング31の中心軸Ac1に直交する平面で凸部33bを切断した断面形状において、第1コイルスプリング31の外周と当接する側の形状が、第1コイルスプリング31の外径De1に沿う、その外径De1より大きな曲率半径をもった円弧状となるように形成される。
【0038】
さらに、第1規制面33b1は、支持面33aから所定の長さH1まで、第1コイルスプリング31の中心軸Ac1と平行に形成される。所定の長さH1は、第1コイルスプリング31の線径、巻き数等に応じて調整され、第1規制面33b1が第1コイルスプリング31の端部の外周と当接する長さに設定される。例えば、第1コイルスプリング31の巻き数1.5巻分に相当する長さにすると良い。
【0039】
第2規制面33b2は、所定の長さH1を超えて周方向に延在して形成される凸部33bの径方向内側に形成され、所定の長さH1を超えて凸部33bの先端に近づくに連れて、第1コイルスプリング31のコイル中心C1から離間する、言い換えると、コイル中心C1からの距離Dが次第に大きくなるように形成される。例えば、軸方向から見て、回転軸Axを中心とした半径Rの円弧状の面に構成される。
【0040】
ここでは、半径Rを、例えば、ダンパ装置1が回転し遠心力が発生している時の、第1コイルスプリング31の径方向外側への移動量を基に決定し、第2規制面33b2が、その時の第1コイルスプリング31の外周に沿うように設定する。この半径Rは、実験等によって決定すると良い。これにより、第2規制面33b2は、遠心力が発生する場合にも、径方向外側へ移動した第1コイルスプリング31の、端部から離れた部分の、外周をより安定して保持し得る。
【0041】
案内面33b4は、軸方向から見て略円弧状に形成される。例えば、アウターハブ12とサイドプレート21、22との相対回転角度がゼロの状態(図1)において、収容窓22a、22bの径方向内側の形状に沿う形状とすると良く、アウターハブ12とサイドプレート21、22とが相対回転を始める際の、シート部材33A、33Bと収容窓22a、22bとの摺動抵抗が低減され得る。あるいは、アウターハブ12とサイドプレート21、22との相対回転角度が最大角度θ1に達した時点において、収容窓22a、22bの径方向内側の形状に沿う形状としても良く、シート部材33A、33Bは収容窓22a、22bによって安定して保持され得る。
【0042】
凹部33cは、支持面33aに周方向に窪んで形成される。凹部33cは、第1コイルスプリング31の内周側に位置し、第1コイルスプリング31の内径Di1よりも小さく、第2コイルスプリング32の外径De2より大きく開口する。よって、第2コイルスプリング32は、その端部を凹部33cに収容され、その両端面に配されるシート部材33A、33Bのそれぞれの凹部33cの底面33c1に挟持される。
【0043】
さらに、凹部33cには、第2コイルスプリング32の外径De2より大きな曲率半径をもって、第2コイルスプリング32の巻回方向に沿う円状に形成される内周面33c2が形成される。内周面33c2は、第1規制面33b1と同軸であると良い。ここで、第1規制面33b1、内周面33c2の径はそれぞれ、第1、第2コイルスプリング31、32の外径De1、De2、さらに、アウターハブ12とサイドプレート21、22との相対回転角度が最大角度θ1に達し、第1、第2コイルスプリング31、32がそれぞれ周方向に撓んだことにより、外周側へ膨らんだ新たな外径De1、De2と等しい径、又はこれより大きい径とすると良い。
【0044】
これにより、アウターハブ12とサイドプレート21、22とに相対回転が生じる場合でも、第1規制面33b1、内周面33c2はそれぞれ、第1、第2コイルスプリング31、32の外周より曲率半径が大きいため、第1、第2コイルスプリング31、32はそれぞれの外周を安定して保持され得る。よって、第1、第2コイルスプリング31、32の作動する軌道が安定して維持されるため、第1コイルスプリング31の内周と第2コイルスプリング32の外周とが接触しにくくなり、生じ得る摩耗を低減することができる。
【0045】
また、第2コイルスプリング32は、外周側へ膨らむ際にも、凹部33cの内周面33c2で規制されることがないため、第2コイルスプリング32の外周と内周面33c2との抉り・摺動による摩耗が低減され得る。
【0046】
また、凹部33cは、支持面33aから所定の深さH2の深さを有する。所定の深さH2は、第2コイルスプリング32の線径、巻き数等に応じて調整し、内周面33c2が第2コイルスプリング32の端部の外周と当接する長さに設定し、例えば、第2コイルスプリング32の巻き数1.5巻分に相当する長さにすると良い。
【0047】
さらに、図4図3のシート部材が、第1、第2コイルスプリングの径方向外側への移動を規制している状態を説明する模式図)に示すように、凸部33bと凹部33cは第1コイルスプリング31のコイル線径dc1より大きく離間して配設される。その離間する量を、第1コイルスプリング31のコイル線径dc1に所定量Lを加えた量とし、例えば、所定量Lを、ゼロより大きく、かつ第1コイルスプリング31の内径Di1から第2コイルスプリング32の外径De2を減じた値より小さく、設定すると良い。
【0048】
これにより、第1コイルスプリング31の径方向外側の外周と凸部33bの第1規制面33b1とが当接し、第2コイルスプリング32の径方向外側の外周と凹部33cの内周面33c2とが当接する際に、第1コイルスプリング31の径方向内側の内周と第2コイルスプリング32の径方向内側の外周とが接触しにくくなり、生じ得る摩耗を低減し得る。
【0049】
また、図5(別の実施形態に係るシート部材が、第1、第2コイルスプリングの径方向外側への移動を規制している状態を説明する模式図)に示すように、例えば、所定量Lを、ゼロより大きく、かつ第1コイルスプリング31の内径Di1から内周面33c2の径Bを減じた値より小さく、設定すると良い。これにより、第1コイルスプリング31の径方向外側の外周と凸部33bの第1規制面33b1とが当接し、第2コイルスプリング32の径方向外側の外周と凹部33cの内周面33c2とが当接する際に、第1コイルスプリング31の径方向内側の内周と第2コイルスプリング32の径方向内側の外周とが接触しにくくなると共に、さらに、第1コイルスプリング31の端部が凹部33cに、特に径方向内側の凹部33cに落ち込みにくくなり、第1コイルスプリング31は支持面33aに安定して支持され得る。
【0050】
さらに、ダンパ装置1が回転し遠心力が発生している際の第1コイルスプリング31の径方向外側への移動量を移動量s(図4)とし、所定量Lに移動量sを加えた量を新たな所定量Lとする。移動量sは例えば、実験によって決定する。そして、凸部33bと凹部33cとが離間する量を、第1コイルスプリング31のコイル線径dc1に、新たな所定量Lを加えた量とすると良い。これにより、ダンパ装置1が回転する場合においても、第1コイルスプリング31の径方向内側の内周と第2コイルスプリング32の径方向内側の外周とが接触しにくくなり、生じ得る摩耗を低減し得る。
【0051】
本実施例では、第1コイルスプリング31の径方向外側への移動を規制する凸部33b(第1規制面33b1、第2規制面33b2)を設けているが、加えて、図6に示すように、第1コイルスプリング31の径方向内側への移動を規制する第3規制面33b3を設けても良い。図6は、図1に示すダンパ装置の別の実施形態に係るシート部材部分を拡大した模式図である。例えば、支持面33aの径方向内側部分33a2から周方向へ突出する第2の凸部33dを設け、第2の凸部33dの径方向外側に第3規制面33b3を形成し、第1コイルスプリング31の径方向内側の外周と第3規制面33b3とを当接させると良い。
【0052】
これにより、ダンパ装置1の回転停止時又は低速回転時に、重力等によって径方向内側へ移動しようとする第1コイルスプリング31は、第3規制面33b3に移動を規制されることで、作動する軌道を安定して維持される。また、第2コイルスプリング32は、凹部33cの内周面33c2の径方向内側の面により径方向内側への移動を規制されることで、作動する軌道を安定して維持される。よって、第1コイルスプリング31の径方向外側の内周と第2コイルスプリング32の径方向外側の外周とが接触しにくくなり、生じ得る摩耗が低減され得る。
【0053】
ところで、第1、第2コイルスプリング31、32の内外周の接触による摩耗・摺動が懸念される状況は、第1、第2コイルスプリング31、32が伸縮しながら接触する状況、つまり、ダンパ装置1が回転している時に、トルク変動が入力されて、アウターハブ12とサイドプレート21、22とに相対回転が生じている状況である。その状況では、発生した遠心力によって、第1、第2コイルスプリング31、32は、径方向外側へ移動していると想定される。よって、第1、第2コイルスプリング31、32の径方向外側への移動を規制する凸部33b(第1規制面33b1、第2規制面33b2)、凹部33c(内周面33c2)を設けることの方が、第2の凸部33d(第3規制面33b3)を設けるより、効果的である。
【0054】
さらに、図3に示すように、シート部材33A、33Bはそれぞれ、収容窓12a、収容窓22a、22b内で互いに対向するシート部材33A、33Bに向かって突出するストッパ部33eを備えると良い。
【0055】
ストッパ部33eは、例えば、第2コイルスプリング32の内周側に位置し、凹部33cの底面33c1から周方向に突出して形成される、端部に向かうにつれて先細り状となる略円錐台形状を有する。ストッパ部33eの外周面は、径方向内側又は外側へ移動した第2コイルスプリング32の内周との間に隙間を有する。
【0056】
ストッパ部33eは、先端に平坦部33e1を有する。シート部材33A、33Bの平坦部33e1同士は、アウターハブ12とサイドプレート21、22との相対回転角度が最大角度θ1に達した時点で、平行になり、当接するように構成される。平坦部33e1同士が当接する位置はストッパ位置となり、それ以上の相対回転は許容されない。
【0057】
また、ストッパ部33eは、図には示さないが、別の例として、凸部33bが周方向に延在して形成されても良い。これにより、第2コイルスプリング32の内周側に略円錐台形状を形成するよりも、シート部材33A、33Bの体積は小さくなり、その体積に相当する質量及びそれに起因する回転慣性が低減でき、ダンパ装置1における弾性部材組立体30を保持する部位の強度確保が容易になり得る。
【0058】
次に、図1に示すように、ダンパ装置1は、インナーハブ11とアウターハブ12とを周方向に弾性的に連結するサブコイルスプリング34と、サブコイルスプリング34の両端面に配置される一対のサブシート部材35A、35Bとを有する。
【0059】
サブコイルスプリング34は、インナーハブ11、アウターハブ12のそれぞれに設けられる切り欠き11c、12cによって形成される空間に配置される。切り欠き11cはインナーハブ11のフランジ部11bの外周部に、切り欠き12cはアウターハブ12の内周部に設けられ、それぞれ径方向に対向して配置される。
【0060】
さらに、サブコイルスプリング34は、サブシート部材35A、35Bで両端面を支持され、サブシート部材35A、35Bはそれぞれ、径方向の半分ずつを、切り欠き11c、12cによって周方向に挟持される。よって、アウターハブ12がインナーハブ11に対して相対回転すると、サブコイルスプリング34に撓みが発生し、その復元力がインナーハブ11を回転させる。
【0061】
インナーハブ11には径方向外側へ突出した突起11dが、アウターハブ12には径方向内側へ突出した突起12dが形成され、アウターハブ12がインナーハブ11に対して相対回転し、相対回転角度が所定角度θ2に達した時点で、突起11dと突起12dとが当接し相対回転が規制される。
【0062】
第1、第2コイルスプリング31、32の合成ばね定数K1は、サブコイルスプリング34のばね定数K2よりも数倍大きく設定すると良い。エンジンからのトルクがフェーシング26A、26Bの摩擦係合によりサイドプレート21に入力されると、合成ばね定数K1がばね定数K2よりも十分大きいため、第1、第2コイルスプリング31、32は直ちに弾縮せず、サイドプレート21、22とアウターハブ12とは一体回転する。この一体回転により、アウターハブ12がインナーハブ11に対して相対回転し、サブコイルスプリング34の弾縮が発生し、トルクはインナーハブ11を介して変速機インプットシャフトに伝達される。
【0063】
アウターハブ12とインナーハブ11との間で相対回転が進み、相対回転角度が所定角度θ2に達すると、突起11d、12dが当接し、アウターハブ12とインナーハブ11とは一体回転するようになる。さらに、第1、第2コイルスプリング31、32は縮み始めて、サイドプレート21、22とアウターハブ12とは相対回転を開始する。さらに大きなトルクが入力されると、相対回転角度が最大角度θ1に達し、サイドプレート21、22とアウターハブ12とインナーハブ11とは一体回転し、トルクはダイレクトに変速機インプットシャフトに伝達される。
【0064】
この2段の相対回転機構によれば、本実施例のダンパ機構1は、エンジンの燃焼等に起因する小さなトルク変動は小さいばね定数K2のサブコイルスプリング34で吸収し、車両の変速やアクセルのオン、オフ等による大きなトルク変動は大きい合成ばね定数K1の第1、第2コイルスプリング31、32で吸収する。よって、ダンパ機構1は、エンジンのトルク変動を効果的に吸収できる。
【0065】
次に、図2に示すように、ヒステリシス発生部材40は、インナーハブ11、アウターハブ12とサイドプレート21との間に配設される第1インナースラスト部材41、第1アウタースラスト部材42と、インナーハブ11、アウターハブ12とサイドプレート22との間に配設される第2インナースラスト部材43、第2アウタースラスト部材44と、第2インナースラスト部材43をインナーハブ11側へ付勢するインナー皿ばね45と、第2アウタースラスト部材44をアウターハブ12側へ付勢するアウター皿ばね46とを有する。第1インナースラスト部材41、第1アウタースラスト部材42、第2インナースラスト部材43、第2アウタースラスト部材44は、例えば、樹脂からなる部材である。
【0066】
第1インナースラスト部材41は、サイドプレート21と、互いに設けられた回り止め突出部41a(図1)と回り止め溝21a(図1)との嵌合よって、一体回転する。また、第1インナースラスト部材41の、一端面はインナーハブ11のフランジ部11bに接触し、他端面はサイドプレート21に接触する。第2インナースラスト部材43は、インナーハブ11を挟んで、第1インナースラスト部材41に対向して配置される。インナー皿ばね45は、第2インナースラスト部材43とサイドプレート22との間に配置される。
【0067】
また、サイドプレート21とサイドプレート22とは、外径端にてピン23で連結されているため、インナー皿ばね45の付勢力によって、インナーハブ11と第1、第2インナースラスト部材41、43との間には、一定の押圧力が発生する。インナーハブ11のフランジ部11bと第1、第2インナースラスト部材41、43との両接触面の相互関係で決まる摩擦係数と、押圧力との関係から、インナーハブ11とサイドプレート21、22との相対回転時の回転方向の最大静止摩擦トルクTSinと動摩擦トルクTDinが決まる。
【0068】
ここで、エンジンの燃焼等に起因する小さなトルク変動がインナーハブ11に伝達される際に、そのトルク変動の絶対値が最大静止摩擦トルクTSinよりも小さい場合は、第1、第2インナースラスト部材41、43とインナーハブ11との間で回転方向の滑りは発生せず、トルク変動はダイレクトに変速機インプットシャフトに伝達される。この場合、トルク変動は十分小さいため、車両内部には振動や騒音がほとんど発生しない。
【0069】
伝達されたトルク変動の絶対値が最大静止摩擦トルクTSinよりも大きい場合は、滑りが発生し、サブコイルスプリング34が弾縮することで、サイドプレート21、22とインナーハブ11とのトルク変動は、ダンパ機構1により吸収され、変速機インプットシャフトへ伝達されるトルク変動が抑えられ得る。
【0070】
また、第1アウタースラスト部材42は、サイドプレート21と、互いに設けられた回り止め部42a(図1)と回り止め孔21b(図1)との嵌合によって、一体回転する。また、第1アウタースラスト部材42の、一端面はアウターハブ12に接触し、他端面はサイドプレート21に接触する。第2アウタースラスト部材44は、アウターハブ12を挟んで、第1アウタースラスト部材42に対向して配置される。アウター皿ばね46は、第2アウタースラスト部材44とサイドプレート22との間に配置される。
【0071】
また、サイドプレート21とサイドプレート22とは、外径端にてピン23で連結されているため、アウター皿ばね46の付勢力によって、アウターハブ12と第1、第2アウタースラスト部材42、44との間には、一定の押圧力が発生する。アウターハブ12と第1、第2アウタースラスト部材42、44との両接触面の相互関係で決まる摩擦係数と、押圧力との関係から、アウターハブ12とサイドプレート21、22との相対回転時の回転方向の最大静止摩擦トルクTSoutと動摩擦トルクTDoutが決まる。
【0072】
ここで、アクセルペダルの全開による加速や全閉による減速等に起因する大きいトルク変動がインナーハブ11に伝達される際に、インナーハブ11とアウターハブ12とが相対回転し、突起11dと12dとが当接し、インナーハブ11とアウターハブ12とが一体回転を開始する。その際に、トルク変動の絶対値が最大静止摩擦トルクTSoutよりも小さい場合は、第1、第2アウタースラスト部材42、44とアウターハブ12との間で回転方向の滑りは発生せず、トルク変動はダイレクトに変速機インプットシャフトに伝達される。
【0073】
伝達されたトルク変動の絶対値が最大静止摩擦トルクTSoutよりも大きい場合は、滑りが発生し、第1、第2コイルスプリング31、32が弾縮することで、サイドプレート21、22とアウターハブ12とのトルク変動は、ダンパ機構1により吸収され、変速機インプットシャフトへ伝達されるトルク変動が抑えられ得る。
【0074】
また、第1、第2インナースラスト部材41、43のインナーハブ11との接触面には、それぞれの外周部を基準として、軸方向に、インナーハブ11と接触しない向きに形成されるテーパ41b、43aを形成すると良い。これにより、第1、第2インナースラスト部材41、43は、それぞれの外周部でインナーハブ11と接触し、さらに製造ばらつきによる波状のうねりや突出が有っても、その影響を低減するように変形し、それぞれの外周部でインナーハブ11と、一定に接触し得る。
【0075】
第1、第2アウタースラスト部材42、44のアウターハブ12との接触面には、それぞれの外周部を基準として、軸方向に、アウターハブ12と接触しない向きに形成されるテーパ42b、44aを形成すると良い。これにより、第1、第2アウタースラスト部材42、44は、それぞれの外周部でアウターハブ12と接触し、さらに製造ばらつきによる波状のうねりや突出が有っても、その影響を低減するように変形し、それぞれの外周部でアウターハブ12と、一定に接触し得る。
【0076】
このようなテーパ41b、43a、42b、44aによって、初期組立時において、スラスト部材41、42、43、44はインナーハブ11、アウターハブ12と均一に当接し、摩擦トルクを発生するため安定したヒステリシス特性を発揮し得る。なお、テーパ41b、43a、42b、44aは、同一形状又は非同一形状としても良く、各々テーパの角度等は所望のヒステリシス特性に応じて適宜設定すると良い。
【0077】
以上、説明したように、本実施形態では、例えば、支持面33aの径方向外側部分33a1から周方向に突出する凸部33bと、支持面33aに周方向に窪んで形成され、第1コイルスプリング31の内周側に位置し、第1コイルスプリング31の内径Di1よりも小さく、第2コイルスプリング32の外径De2より大きく開口する凹部33cとを有する一対のシート部材33A、33Bを備える。
【0078】
これにより、例えば、シート部材33A、33Bの凸部33bが第1コイルスプリング31の外周側に配設されるため、第1、第2コイルスプリング31、32の内径寸法は制限されない。また、第1コイルスプリング31の一端面を支持する支持面33aより窪んで形成される凹部33cが、第2コイルスプリング32の一端面を支持することになるため、第2コイルスプリング32の軸方向長さは短くなる方へ制限されず、第1コイルスプリング31に対して長く設定することも可能である。よって、コイルスプリング(第1、第2コイルスプリング31、32)の設計自由度が得られうる。
【0079】
また、本実施形態では、例えば、凸部33bは第1コイルスプリング31の外径De1より大きな曲率半径をもって、第1コイルスプリング31の巻回方向に沿う円弧状に湾曲して形成される第1規制面33b1を含み、凹部33cは第2コイルスプリング32の外径De2より大きな曲率半径をもって、第2コイルスプリング32の巻回方向に沿う円状に形成される内周面33c2を含む。これにより、例えば、第1規制面33b1、内周面33c2はそれぞれ、第1、第2コイルスプリング31、32の外径より曲率半径が大きいため、第1、第2コイルスプリング31、32はそれぞれの外周を安定して保持され得る。よって、第1、第2コイルスプリング31、32の作動する軌道が安定して維持されるため、第1コイルスプリング31の内周と第2コイルスプリング32の外周とが接触しにくくなり、生じ得る摩耗を低減することができる。
【0080】
また、本実施形態では、例えば、凸部33bは第1コイルスプリング31の中心軸Ac1に平行して延在する第1規制面33b1を含み、凹部33cは第2コイルスプリング32の中心軸Ac2に平行して延在する内周面33c2を含むと良い。これにより、例えば、第1規制面33b1、内周面33c2はそれぞれ、第1、第2コイルスプリング31、32の中心軸Ac1、Ac2方向に、第1、第2コイルスプリング31、32の外周に沿って延在することで、外周と安定して当接するため、第1、第2コイルスプリング31、32はそれぞれの外周を安定して保持され得る。よって、第1、第2コイルスプリング31、32の作動する軌道が安定して維持されるため、第1コイルスプリング31の内周と第2コイルスプリング32の外周とが接触しにくくなり、生じ得る摩耗を低減することができる。
【0081】
また、本実施形態では、例えば、凸部33bは凸部33bの先端に近づくに連れて第1コイルスプリング31のコイル中心C1から離間するように形成される第2規制面33b2を含む。よって、例えば、第2規制面33b2は、径方向外側へ移動した第1コイルスプリング31を安定して保持し得る。よって、第1コイルスプリング31は、作動する軌道を安定して維持され得る。
【0082】
また、本実施形態では、例えば、凸部33bと凹部33cは、第1コイルスプリング31のコイル線径dc1より大きく離間する。これにより、例えば、第1コイルスプリング31の径方向外側の外周と凸部33bの第1規制面33b1とが当接し、第2コイルスプリング32の径方向外側の外周と凹部33cの内周面33c2とが当接した際に、第1コイルスプリング31の径方向内側の内周と第2コイルスプリング32の径方向内側の外周とが接触しにくくなり、生じ得る摩耗を低減し得る。
【0083】
また、上述した実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。上述した実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、様々の省略、置換、変更を行うことができる。上述した実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0084】
1 ダンパ装置
10 ハブ部材(第1回転部材)
20 ディスク部材(第2回転部材)
30 弾性部材組立体
31 第1コイルスプリング
32 第2コイルスプリング
33A シート部材
33B シート部材
33a 支持面
33a1 径方向外側部分
33a2 径方向内側部分
33b 凸部
33b1 第1規制面
33b2 第2規制面
33c 凹部
33c2 内周面
40 ヒステリシス発生部材
Ax 回転軸
Ac1 第1コイルスプリング31の中心軸
Ac2 第2コイルスプリング32の中心軸
Di1 第1コイルスプリング31の内径
Di2 第2コイルスプリング32の内径
De1 第1コイルスプリング31の外径
De2 第2コイルスプリング32の外径
dc1 第1コイルスプリング31のコイル線径
C1 第1コイルスプリング31のコイル中心
図1
図2
図3
図4
図5
図6