(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-24
(45)【発行日】2022-02-01
(54)【発明の名称】車両の前部車体構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/08 20060101AFI20220125BHJP
B62D 25/20 20060101ALI20220125BHJP
【FI】
B62D25/08 E
B62D25/20 C
(21)【出願番号】P 2018059480
(22)【出願日】2018-03-27
【審査請求日】2021-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】山内 一樹
(72)【発明者】
【氏名】松岡 秀典
(72)【発明者】
【氏名】田代 邦芳
【審査官】米澤 篤
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-73495(JP,A)
【文献】特開2010-83196(JP,A)
【文献】特開2018-16101(JP,A)
【文献】特開2017-171102(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0375855(US,A1)
【文献】特開2004-338597(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/08
B62D 25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車室部における車両前方の隔壁をなすダッシュパネルと、
該ダッシュパネルの両端に連結されるとともに、車両上下方向に延びる左右一対のヒンジピラーと、
前記ダッシュパネルの上端に連結されるとともに、左右の前記ヒンジピラーを車幅方向に連結するカウルボックスと、
フロントサスダンパの上端を支持するサスタワーとを備えた車両の前部車体構造であって、
前記ダッシュパネルが、
正面視において、車幅方向略中央近傍に配設されたフロアトンネルに対応して下端が車両上方へ突出したトンネル対応下端を有するダッシュ本体と、
前記ダッシュ本体の下部前面に接合されるとともに、左右の前記ヒンジピラーの下部を車幅方向に連結するダッシュクロスメンバと、
該ダッシュクロスメンバよりも車両上方の前記ダッシュ本体に接合されたダッシュパネル補強部材とを備え、
前記ダッシュクロスメンバが、
前記ダッシュ本体の前記トンネル対応下端に沿って形成された正面視略門型形状のメンバ門型部を備え、
前記ダッシュパネル補強部材が、
正面視において、下端が前記メンバ門型部を跨いで前記ダッシュクロスメンバに連結されるとともに、上端が前記カウルボックスに近接する正面視略門型形状
の補強本体部と、
正面視において、前記補強本体部の内側に配設された略平板状の平板部とで一体的に形成された
車両の前部車体構造。
【請求項2】
車両の車室部における車両前方の隔壁をなすダッシュパネルと、
該ダッシュパネルの両端に連結されるとともに、車両上下方向に延びる左右一対のヒンジピラーと、
前記ダッシュパネルの上端に連結されるとともに、左右の前記ヒンジピラーを車幅方向に連結するカウルボックスと、
フロントサスダンパの上端を支持するサスタワーとを備えた車両の前部車体構造であって、
前記ダッシュパネルが、
正面視において、車幅方向略中央近傍に配設されたフロアトンネルに対応して下端が車両上方へ突出したトンネル対応下端を有するダッシュ本体と、
前記ダッシュ本体の下部前面に接合されるとともに、左右の前記ヒンジピラーの下部を車幅方向に連結するダッシュクロスメンバと、
該ダッシュクロスメンバよりも車両上方の前記ダッシュ本体に接合されたダッシュパネル補強部材とを備え、
前記ダッシュクロスメンバが、
前記ダッシュ本体の前記トンネル対応下端に沿って形成された正面視略門型形状のメンバ門型部を備え、
前記ダッシュパネル補強部材が、
前記ダッシュクロスメンバに連結された下端から車両上方に延びる左右一対の脚部と、
前記脚部の上端同士を車幅方向に連結するとともに、前記カウルボックスに上端が近接する橋架部と、
該橋架部よりも車両下方で、左右の前記脚部を車幅方向に連結する少なくとも1つの連結部とで、
下端が前記メンバ門型部を跨いで前記ダッシュクロスメンバに連結されるとともに、上端が前記カウルボックスに近接する正面視略門型形状に形成された
車両の前部車体構造。
【請求項3】
前記ダッシュパネル補強部材が、
前記ダッシュ本体とで閉断面をなす形状に形成された
請求項1
または請求項2に記載の車両の前部車体構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばダッシュパネルの撓み変形を抑制する補強部材を、ダッシュパネルに備えたような車両の前部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両には、例えば、路面の凹凸に応じて伸縮することで、車体の上下動を抑制して、乗員に対する乗り心地を確保するフロントサスペンションダンパ(以下、「フロントサスダンパ」と呼ぶ)が、サスタワーを介して車体の骨格部材に連結されている。
【0003】
一般的に、サスタワーには、フロントサスダンパを介して比較的大きな荷重エネルギーが作用し易いため、フロントサスダンパを介して作用する荷重エネルギーによって、サスタワーが撓み変形することがある。このような撓み変形がサスタワーに生じると、操安性の低下、あるいは車室内へ伝達される振動騒音の増加要因となるおそれがあった。
【0004】
そこで、一端がサスタワーに連結された連結部材によって、サスタワーの剛性を向上する車両の車体構造が知られている。
例えば、特許文献1には、フロントサスダンパ(ショックアブソーバ)を支持する左右一対のサスタワー(7)と、ダッシュパネル(6)の前面に設けたダッシュクロスメンバ(11)とを連結する左右一対の補強部材(16)を、車両の前部車体に備えていることが開示されている。
【0005】
これにより、特許文献1は、サスタワー(7)の剛性を向上できるとともに、サスタワーに作用する荷重エネルギーを、補強部材(16)を介して前部車体に分散伝達して、左右のサスタワー(7)間の剛性を確保できるとされている。
【0006】
ところで、特許文献1のダッシュパネルは、フロアトンネルの前端形状に対応するダッシュクロスメンバの部分(特許文献1の中間部12、及び立設部13)よりも車両上方部分の剛性が、左右のヒンジピラー近傍における剛性や、ダッシュクロスメンバが接合された下部の剛性に比べて低くなり易い。
【0007】
このような特許文献1の前部車体において、例えば、左右のサスタワーに異なるタイミングで荷重エネルギーが作用すると、ダッシュパネルにおける車両右側部分と車両左側部分とが、それぞれ異なる方向へ変形することになる。つまり、左右のサスタワーに異なるタイミングで荷重エネルギーが作用した際、特許文献1は、左右のサスタワーに略同時に荷重エネルギー作用した場合に比べて、ダッシュパネルにおける車両右側部分と車両左側部分との変位差が大きくなり易い。
【0008】
このため、特許文献1は、左右のサスタワーに異なるタイミングで荷重エネルギーが作用した際、ダッシュパネルに大きな変形が生じることで、乗員に対する乗り心地が悪化するおそれがあり、さらなる改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述の問題に鑑み、左右のサスタワーに異なるタイミングで荷重エネルギーが作用した場合であっても、サスタワーに作用した荷重エネルギーによるダッシュパネルの変形を抑制できる車両の前部車体構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、車両の車室部における車両前方の隔壁をなすダッシュパネルと、該ダッシュパネルの両端に連結されるとともに、車両上下方向に延びる左右一対のヒンジピラーと、前記ダッシュパネルの上端に連結されるとともに、左右の前記ヒンジピラーを車幅方向に連結するカウルボックスと、フロントサスダンパの上端を支持するサスタワーとを備えた車両の前部車体構造であって、前記ダッシュパネルが、正面視において、車幅方向略中央近傍に配設されたフロアトンネルに対応して下端が車両上方へ突出したトンネル対応下端を有するダッシュ本体と、前記ダッシュ本体の下部前面に接合されるとともに、左右の前記ヒンジピラーの下部を車幅方向に連結するダッシュクロスメンバと、該ダッシュクロスメンバよりも車両上方の前記ダッシュ本体に接合されたダッシュパネル補強部材とを備え、前記ダッシュクロスメンバが、前記ダッシュ本体の前記トンネル対応下端に沿って形成された正面視略門型形状のメンバ門型部を備え、前記ダッシュパネル補強部材が、正面視において、下端が前記メンバ門型部を跨いで前記ダッシュクロスメンバに連結されるとともに、上端が前記カウルボックスに近接する正面視略門型形状の補強本体部と、正面視において、前記補強本体部の内側に配設された略平板状の平板部とで一体的に形成された
ことを特徴とする。
【0012】
正面視略門型形状とは、車両下方が開口した正面視略コ字状、正面視略逆U字状、正面視略V字状、あるいは正面視略M字状などを含むものとする。
この発明により、左右のサスタワーに異なるタイミングで荷重エネルギーが作用した場合であっても、サスタワーに作用した荷重エネルギーによるダッシュパネルの変形を抑制することができる。
【0013】
具体的には、ダッシュクロスメンバとカウルボックスとの間に配設したダッシュパネル補強部材により、車両の前部車体構造は、ダッシュ本体におけるメンバ門型部よりも車両上方部分の剛性を向上できるとともに、ダッシュ本体におけるメンバ門型部よりも車両上方部分が応力集中部位となることを抑制できる。
【0014】
これにより、車両の前部車体構造は、例えば、左右のサスタワーに異なるタイミングで荷重エネルギーが作用した際、ダッシュパネルの車両右側部分と、ダッシュパネルの車両左側部分とに生じる変位差を抑えることができる。
【0015】
さらに、車両の前部車体構造は、ダッシュパネル補強部材によって、ダッシュパネルにおける荷重エネルギー伝達効率を向上できるため、例えば、サスタワーに作用する荷重エネルギーを、ヒンジピラーを介して車体のより遠方へ確実に伝達することができる。
【0016】
従って、車両の前部車体構造は、左右のサスタワーに異なるタイミングで荷重エネルギーが作用した場合であっても、ダッシュパネル補強部材によって、サスタワーに作用した荷重エネルギーによるダッシュパネルの変形を抑制することができる。
【0017】
さらにこの発明は、前記ダッシュパネル補強部材が、正面視略門型形状の補強本体部と、正面視において、前記補強本体部の内側に配設された略平板状の平板部とで一体的に形成されたことを特徴とする。
この構成により、車両の前部車体構造は、ダッシュパネル補強部材の剛性をより向上することができる。このため、車両の前部車体構造は、ダッシュ本体におけるメンバ門型部よりも車両上方部分の剛性をダッシュパネル補強部材によってより確実に向上することができる。
【0018】
従って、車両の前部車体構造は、左右のサスタワーに異なるタイミングで荷重エネルギーが作用した場合であっても、補強本体部と平板部とで構成されたダッシュパネル補強部材によって、サスタワーに作用した荷重エネルギーによるダッシュパネルの変形をより確実に抑制することができる。
【0019】
またこの発明は、車両の車室部における車両前方の隔壁をなすダッシュパネルと、該ダッシュパネルの両端に連結されるとともに、車両上下方向に延びる左右一対のヒンジピラーと、前記ダッシュパネルの上端に連結されるとともに、左右の前記ヒンジピラーを車幅方向に連結するカウルボックスと、フロントサスダンパの上端を支持するサスタワーとを備えた車両の前部車体構造であって、前記ダッシュパネルが、正面視において、車幅方向略中央近傍に配設されたフロアトンネルに対応して下端が車両上方へ突出したトンネル対応下端を有するダッシュ本体と、前記ダッシュ本体の下部前面に接合されるとともに、左右の前記ヒンジピラーの下部を車幅方向に連結するダッシュクロスメンバと、該ダッシュクロスメンバよりも車両上方の前記ダッシュ本体に接合されたダッシュパネル補強部材とを備え、前記ダッシュクロスメンバが、前記ダッシュ本体の前記トンネル対応下端に沿って形成された正面視略門型形状のメンバ門型部を備え、前記ダッシュパネル補強部材が、前記ダッシュクロスメンバに連結された下端から車両上方に延びる左右一対の脚部と、前記脚部の上端同士を車幅方向に連結するとともに、前記カウルボックスに上端が近接する橋架部と、該橋架部よりも車両下方で、左右の前記脚部を車幅方向に連結する少なくとも1つの連結部とで、下端が前記メンバ門型部を跨いで前記ダッシュクロスメンバに連結されるとともに、上端が前記カウルボックスに近接する正面視略門型形状に形成されたことを特徴とする。
【0020】
この発明により、車両の前部車体構造は、ダッシュパネル補強部材の剛性をさらに向上することができる。このため、車両の前部車体構造は、ダッシュ本体におけるメンバ門型部よりも車両上方部分の剛性をダッシュパネル補強部材によってさらに向上することができる。
【0021】
従って、車両の前部車体構造は、左右のサスタワーに異なるタイミングで荷重エネルギーが作用した場合であっても、脚部を連結する連結部を有するダッシュパネル補強部材によって、サスタワーに作用した荷重エネルギーによるダッシュパネルの変形をさらに抑制することができる。
【0022】
この発明の態様として、前記ダッシュパネル補強部材が、前記ダッシュ本体とで閉断面をなす形状に形成されてもよい。
この発明により、車両の前部車体構造は、ダッシュ本体におけるメンバ門型部よりも車両上方部分の剛性をダッシュパネル補強部材によってより向上することができる。
【0023】
このため、車両の前部車体構造は、左右のサスタワーに異なるタイミングで荷重エネルギーが作用した場合であっても、ダッシュパネルとで閉断面をなすダッシュパネル補強部材によって、サスタワーに作用した荷重エネルギーによるダッシュパネルの変形をより抑制することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明により、左右のサスタワーに異なるタイミングで荷重エネルギーが作用した場合であっても、サスタワーに作用した荷重エネルギーによるダッシュパネルの変形を抑制できる車両の前部車体構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図2】車両の前部車体における車両前方上方からの外観を示す外観斜視図。
【
図4】
図1中のB-B矢視における要部の断面を示す要部断面図。
【
図5】A-A矢視における車両左側要部の断面を示す要部断面図。
【
図6】車両の前部車体における要部の外観を示す平面図。
【
図7】
図6中のC-C矢視における要部の断面を示す要部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
なお、
図1は車両1の前部車体における外観の平面図を示し、
図2は車両1の前部車体における車両前方上方からの外観斜視図を示し、
図3は
図1中のA-A矢視断面図を示し、
図4は
図1中のB-B矢視における要部の要部断面図を示し、
図5はA-A矢視における車両左側要部の要部断面図を示し、
図6は車両1の前部車体における要部の平面図を示し、
図7は
図6中のC-C矢視における要部の要部断面図を示している。
【0027】
また、図示を明確にするため、
図2中において、車両左側のサイドシル7のサイドシルアウタ、及びヒンジピラー9のヒンジピラーアウタの図示を省略するとともに、車両左側のフロントピラー8、サスタワー5、エプロンレインフォースメント4、及び遮熱部材アウタ61の図示を省略している。
さらに、図示を明確にするため、
図6中において、カウルボックス13のカウルアッパ132の図示を省略している。
【0028】
また、図中において、矢印Fr及びRrは前後方向を示しており、矢印Frは前方を示し、矢印Rrは後方を示している。
さらに、矢印Rh及びLhは幅方向を示しており、矢印Rhは右方向を示し、矢印Lhは左方向を示している。加えて、矢印INは車幅方向内側を示し、矢印OUTは車幅方向外側を示している。
【0029】
本実施形態における車両1の車体構造は、
図1及び
図2に示すように、乗員が乗り込む車室部2と、車室部2よりも車両前方に配設された左右一対のフロントサイドフレーム3、左右一対のエプロンレインフォースメント4、左右一対のサスタワー5、及び左右一対の遮熱部材6とで構成されている。
【0030】
車室部2は、
図1及び
図2に示すように、車幅方向に所定間隔を隔てた位置で車両前後方向に延びる左右一対のサイドシル7と、サイドシル7よりも車両上方に配設された左右一対のフロントピラー8と、サイドシル7の前端、及びフロントピラー8の前端を車両上下方向に連結するヒンジピラー9と、左右のサイドシル7の間で車室部2の床面をなすフロアパネル10と、フロアパネル10の下面を車両前後方向に延びる左右一対のフロアフレーム11と、車室部2の前壁をなすダッシュパネル12、及びカウルボックス13と、左右のヒンジピラー9を連結するインパネメンバ14とで構成されている。
【0031】
左右のサイドシル7は、詳細な図示を省略するが、車幅方向内側に配設されたサイドシルインナ7aと、サイドシルインナ7aに対して車幅方向外側に配設されたサイドシルアウタとで、車幅方向に沿った縦断面における断面形状が閉断面をなすよう構成されている。
【0032】
例えば、サイドシル7は、
図2に示すように、車幅方向に沿った縦断面における断面形状が、車幅方向内側に突出した断面略ハット状のサイドシルインナ7aと、車幅方向に沿った縦断面における断面形状が、車幅方向外側に突出した断面略ハット状のサイドシルアウタとを車幅方向で当接させるとともに、互いに接合することで、車幅方向に沿った縦断面における断面形状が閉断面をなすよう構成されている。
【0033】
また、左右のフロントピラー8は、詳細な図示を省略するが、車幅方向内側に配設されたフロントピラーインナと、フロントピラーインナに対して車幅方向外側に配設されたフロントピラーアウタとで、車幅方向に沿った縦断面が閉断面をなすよう構成されている。このフロントピラー8は、
図1及び
図2に示すように、前端に対して後端が車両後方上方に位置するよう配設されている。
【0034】
例えば、フロントピラー8は、車幅方向に沿った水平断面における断面形状が、車幅方向内側に突出した断面略ハット状のフロントピラーインナと、車幅方向に沿った水平断面における断面形状が、車幅方向外側に突出した断面略ハット状のフロントピラーアウタとを車幅方向で当接させるとともに、互いに接合することで、車幅方向に沿った縦断面における断面形状が閉断面をなすよう構成されている。
【0035】
また、左右のヒンジピラー9は、詳細な図示を省略するが、車幅方向内側に配設されたヒンジピラーインナ9aと、ヒンジピラーインナ9aに対して車幅方向外側に配設されたヒンジピラーアウタとで、車両前後方向に沿った水平断面が閉断面をなすよう構成されている。
【0036】
例えば、ヒンジピラー9は、
図2に示すように、略平板状のサイドシルインナ7aと、車両前後方向に沿った水平断面における断面形状が、車幅方向外側に突出した断面略ハット状のヒンジピラーアウタとを車幅方向で当接させるとともに、互いに接合することで、車幅方向に沿った水平断面における断面形状が閉断面をなすよう構成されている。
なお、ヒンジピラーインナ9aは、
図2に示すように、サイドシル7の前端、及び後述するダッシュパネル12よりも車両前方に前縁が位置する大きさで形成されている。
【0037】
また、フロアパネル10は、
図1及び
図2に示すように、左右のサイドシル7を連結して、車室部2の床面をなすパネル部材であって、その車幅方向略中央に車両上方へ向けて膨出するとともに、車両前後方向に延びるフロアトンネル10aが形成されている。このフロアパネル10の前端縁は、ダッシュパネル12(後述するダッシュパネル本体15)に接合されている。
【0038】
また、左右のフロアフレーム11は、
図2に示すように、サイドシル7とフロアトンネル10aとの間にそれぞれ配設されている。このフロアフレーム11は、車幅方向に沿った縦断面における断面形状が、車両下方に突出した断面略ハット状であって、フロアパネル10の下面に接合されることで、車幅方向に沿った縦断面における断面形状が閉断面をなすよう形成されている。
【0039】
また、ダッシュパネル12は、
図2から
図4に示すように、車室部2の前壁をなすダッシュパネル本体15と、ダッシュパネル本体15の前面に接合された左右一対のトルクボックス16、ダッシュクロスメンバ17、及びダッシュパネル補強部材18とで構成されている。
【0040】
ダッシュパネル本体15は、
図2から
図4に示すように、車両前後方向に所定の厚みを有するパネル部材であって、車幅方向の両端がそれぞれ左右のヒンジピラー9に接合されている。さらに、ダッシュパネル12は、車両後方へ向けて折り返した下端が、フロアパネル10の前端下面に接合されている。
【0041】
なお、ダッシュパネル本体15における車幅方向略中央近傍の下端は、
図3に示すように、正面視において、フロアパネル10のフロアトンネル10aに沿うように、車両上方へ略逆U字状に突出した形状に形成されている。このフロアトンネル10aに沿った形状に形成された部分を、トンネル対応部分15aとする。
【0042】
トルクボックス16は、
図3に示すように、ダッシュパネル本体15の下部前面に接合されるとともに、サイドシル7の前端と、フロアフレーム11における車幅方向外側の側面とを車幅方向に連結している。
【0043】
より詳しくは、トルクボックス16は、
図3及び
図5に示すように、サイドシル7の前端と、サイドシル7に対して車幅方向内側で隣接するダッシュパネル12の下部前面と、フロアフレーム11の前端近傍の側面とで、車両前後方向に沿った水平断面における断面形状が閉断面をなす略ボックス状に形成されている。
【0044】
ダッシュクロスメンバ17は、
図2から
図4に示すように、トルクボックス16よりも車両上方のダッシュパネル本体15の下部前面に接合されるとともに、左右のヒンジピラー9のヒンジピラーインナ9aを車幅方向に連結している。
【0045】
このダッシュクロスメンバ17は、
図2から
図4に示すように、車両前後方向に沿った縦断面において、車両前方へ突出した断面略ハット状の開断面を、ダッシュパネル本体15の下部前面に沿って延設した形状に形成されている。このため、ダッシュクロスメンバ17は、ダッシュパネル本体15の下部前面とで、車両前後方向に沿った縦断面における断面形状が閉断面をなすよう構成されている。
【0046】
より詳しくは、ダッシュクロスメンバ17は、
図3に示すように、正面視において、ダッシュパネル本体15のトンネル対応部分15aに沿うように車両上方へ突出した略逆U字状の正面視略門型形状のメンバ門型形状部17aと、メンバ門型形状部17aの下端からそれぞれ左右のヒンジピラーインナ9aへ向けて車幅方向内側に延設された左右一対のメンバ水平部17bとで一体形成されている。
【0047】
ダッシュパネル補強部材18は、
図2及び
図3に示すように、ダッシュクロスメンバ17のメンバ門型形状部17aよりも車両上方のダッシュパネル本体15の前面に配設されるとともに、下端がダッシュクロスメンバ17に接合され、上端が後述するカウルボックス13に接合されている。
【0048】
このダッシュパネル補強部材18は、
図2及び
図3に示すように、車両下方が開口した正面視略門型形状の補強部材本体181と、補強部材本体181で囲われた部分を覆う略平板状の平板部182とで一体形成されている。
補強部材本体181は、
図3及び
図4に示すように、車両前後方向に沿った縦断面における断面形状が、車両前方へ突出した断面略ハット状であって、断面略ハット状の開断面を正面視略門型状に延設した形状に形成されている。
【0049】
より詳しくは、補強部材本体181は、
図3に示すように、正面視において、ダッシュクロスメンバ17のメンバ門型形状部17aにおける頂部を挟んで、車幅方向に所定間隔を隔てた位置で車両上下方向に延びる脚部181aと、脚部181aの上端を車幅方向に連結する橋架部181bとで正面視略門型形状に形成されている。
【0050】
そして、補強部材本体181の脚部181aは、
図3に示すように、その下端が、ダッシュクロスメンバ17のメンバ門型形状部17aにおける頂部よりも車幅方向外側の部分に接合され、脚部181aの下端から上端に至る範囲が、ダッシュパネル12の前面に接合されている。一方、補強部材本体181の橋架部181bは、
図3及び
図4に示すように、その下端が、ダッシュパネル12の前面に接合され、上端が、後述するカウルボックス13のロア前壁部131bに接合されている。
【0051】
平板部182は、
図3及び
図4に示すように、補強部材本体181における左右の脚部181a、及び橋架部181bで囲われた部分を覆う略平板状部材であって、ダッシュパネル12の前面に接合されている。なお、平板部182の下部前面には、ダッシュクロスメンバ17におけるメンバ門型形状部17aの上端が接合されている。
【0052】
さらに、平板部182には、
図3及び
図4に示すように、車両上下方向に所定間隔を隔てた位置で、車両前方へ向けて突出するとともに、車幅方向に延びる2つのビード182aが形成されている。なお、2つのビード182aは、車幅方向の両端が、左右の脚部181aに連結するように形成されている。
換言すると、ダッシュパネル補強部材18は、車両上下方向に所定間隔を隔てた位置で、補強部材本体181における左右の脚部181aを連結する連結部分として、2つのビード182aが形成されている。
【0053】
また、カウルボックス13は、
図1及び
図2に示すように、平面視において、車幅方向略中央が車両前方へ突出した平面視略円弧状であって、左右のヒンジピラー9を車幅方向に連結するとともに、ダッシュパネル12の上端に接合されている。
【0054】
このカウルボックス13は、
図4に示すように、ダッシュパネル12の上端に接合されたカウルロア131と、カウルロア131を車両上方から覆うカウルアッパ132とで、車両前後方向に沿った縦断面における断面形状が閉断面をなすよう形成されている。
【0055】
より詳しくは、カウルロア131は、
図4に示すように、車両上下方向に所定の厚みを有するロア前縁部131aと、ロア前縁部131aから車両後方下方へ延設されたロア前壁部131bと、ロア前壁部131bの下端から車両後方へ向けて延設されたカウル底部131cと、カウル底部131cから車両後方上方へ向けて僅かに延設したのち、車両後方へ向けて延設されたロア後縁部131dとで一体形成されている。
【0056】
一方、カウルアッパ132は、
図4に示すように、車両上下方向に厚みを有する略平板状のアッパ前縁部132aと、アッパ前縁部132aの後端から車両上方へ僅かに延設したのち、車両後方上方へ向けて延設したアッパ前壁部132bと、アッパ前壁部132bの上端から車両後方へ延設されたカウル天板部132cと、カウル天板部132cの後端から車両後方下方へ延設されたアッパ後壁部132dと、アッパ後壁部132dの下端から車両後方へ延設されたアッパ後縁部132eとで一体形成されている。
【0057】
そして、カウルボックス13は、
図4に示すように、ロア前縁部131aとアッパ前縁部132aとを接合するとともに、ロア後縁部131dとアッパ後縁部132eとを接合することで、車両前後方向に沿った縦断面における断面形状が閉断面となすよう形成されている。
【0058】
また、インパネメンバ14は、
図1、
図2、及び
図7に示すように、所定の内外径を有する略円筒状であって、カウルボックス13に対して車両後方に所定間隔を隔てた位置で、ヒンジピラー9の上部を車幅方向に連結している。このインパネメンバ14は、詳細な図示を省略するが、例えば、ステアリングシャフトや、車両1の車載機器、あるいは車載機器同士を電気的に接続するワイヤーハーネスを支持する支持部材として配設されている。
【0059】
また、左右のフロントサイドフレーム3は、
図1及び
図2に示すように、平面視において、ヒンジピラー9よりも車幅方向内側、かつフロアトンネル10aよりも車幅方向外側の位置に配設されるとともに、その後端がフロアフレーム11の前端に接合されている。
【0060】
より詳しくは、フロントサイドフレーム3は、詳細な図示を省略するが、車幅方向内側に配設されたフロントサイドフレームインナと、フロントサイドフレームインナに対して車幅方向外側に配設されたフロントサイドフレームアウタとで、車幅方向に沿った縦断面における断面形状が閉断面をなすよう形成されている。
【0061】
例えば、フロントサイドフレーム3は、車幅方向に沿った縦断面における縦断面形状が、車幅方向内側に突出した断面略ハット状のフロントサイドフレームインナと、車幅方向に沿った縦断面における縦断面形状が、車幅方向外側に突出した断面略ハット状のフロントサイドフレームアウタとを車幅方向で当接させるとともに、互いに接合することで、車幅方向に沿った縦断面における断面形状が閉断面をなすよう構成されている。
【0062】
そして、フロントサイドフレーム3の後端は、
図2に示すように、フロアフレーム11の前端、及びダッシュクロスメンバ17のメンバ水平部17bにおける車幅方向内側の端部近傍に接合されている。なお、フロントサイドフレーム3の前端には、図示を省略したクラッシュカンが連結される。
【0063】
また、左右のエプロンレインフォースメント4は、
図1及び
図2に示すように、フロントサイドフレーム3よりも車幅方向外側、かつ車両上方の位置に配設されている。より詳しくは、エプロンレインフォースメント4は、ヒンジピラー9の上端から車両前方、やや車幅方向内側へ向けて延設した形状に形成されている。
【0064】
また、左右のサスタワー5は、
図1及び
図2に示すように、ダッシュパネル12に対して車両前方に所定間隔を隔てた所望位置において、フロントサスペンションにおけるフロントサスダンパ(図示省略)の上端を支持可能な形状に形成されている。
【0065】
より詳しくは、サスタワー5は、
図2に示すように、サスダンパの上端が挿入される挿入開口が設けられたタワー上面部5aと、タワー上面部5aにおける車幅方向内側から車両下方へ延設されたタワー側壁部5bと、タワー上面部5aの後端から車両下方へ延設されたタワー後面部分とで一体形成されている。
そして、サスタワー5は、タワー側壁部5bの下端がフロントサイドフレーム3に接合され、タワー上面部5aにおける車幅方向外側の縁端が、エプロンレインフォースメント4に接合されている。
【0066】
また、左右の遮熱部材6は、
図1及び
図3に示すように、ダッシュパネル12とサスタワー5との間に、保温または遮熱のための遮熱空間Sを形成する構造体である。この遮熱部材6は、
図3に示すように、車幅方向外側に配設された左右一対の遮熱部材アウタ61と、遮熱部材アウタ61に対して車幅方向内側に配設されるとともに、サスタワー5とダッシュパネル12とを連結する左右一対の遮熱部材インナ62とで構成されている。
【0067】
左右の遮熱部材アウタ61は、
図1及び
図3に示すように、例えば、車載バッテリなどが載置固定される部材であって、車幅方向に沿った縦断面における断面形状が断面略L字状になるように形成されている。
【0068】
より詳しくは、遮熱部材アウタ61は、
図3に示すように、車両上下方向に所定の厚みを有する略平板状で、フロントサイドフレーム3の上面に接合されるアウタ底部61aと、アウタ底部61aにおける車幅方向外側から車両上方へ延設されるとともに、ヒンジピラー9のヒンジピラーインナ9aに接合されるアウタ側壁部61bとで一体形成されている。
【0069】
左右の遮熱部材インナ62は、
図1から
図3に示すように、遮熱部材インナ62の上部を構成する遮熱インナ上部621と、遮熱部材インナ62の下部を構成する遮熱インナ下部622とで構成されている。
【0070】
左右の遮熱インナ上部621は、
図1及び
図2に示すように、平面視において、サスタワー5の上部と、サスタワー5よりも車幅方向内側におけるダッシュパネル12の前面(ダッシュパネル補強部材18)とを連結している。この遮熱インナ上部621は、
図3及び
図5に示すように、車幅方向に沿った縦断面における断面形状が、車幅方向外側が開口した断面略コ字状の開断面形状に形成されている。
【0071】
より詳しくは、遮熱インナ上部621は、
図3及び
図5に示すように、車幅方向に沿った縦断面において、車両上下方向に所定の厚みを有するとともに、遮熱インナ上部621における上面部分をなす上面部621aと、上面部621aにおける車幅方向内側から車両下方へ延設された側壁部621bと、側壁部621bの下端から車幅方向外側へ延設された下面部621cとで一体形成されている。
【0072】
なお、遮熱インナ上部621の後端近傍は、車幅方向内側へ向けて屈曲するとともに、ダッシュパネル補強部材18における補強部材本体181の外形に沿った形状に形成されている。
この遮熱インナ上部621は、
図6に示すように、平面視において、側壁部621bの前端に対して側壁部621bの後端が、車幅方向内側に位置するように配設されている。
【0073】
すなわち、遮熱インナ上部621は、平面視において、車幅方向内側の縁辺が車両後方ほど車幅方向内側に位置するように傾斜するように配設されている。
そして、遮熱インナ上部621は、
図3及び
図7に示すように、前端がサスタワー5に接合され、後端近傍の屈曲した部分が、ダッシュパネル補強部材18における脚部181aの上部に接合されている。換言すると、遮熱インナ上部621は、ダッシュパネル補強部材18を介してダッシュパネル本体15に連結されている。
【0074】
一方、左右の遮熱インナ下部622は、
図1及び
図2に示すように、平面視において、サスタワー5の下部と、ダッシュパネル補強部材18よりも車幅方向外側のダッシュパネル本体15とを連結するとともに、サスタワー5の下部とフロントサイドフレーム3の後端とを連結している。
【0075】
なお、
図3中において、車両右側の遮熱インナ下部622と、車両左側の遮熱インナ下部622とが異なる形状に形成されているが、本実施形態では、略同一形状として車両左側の遮熱インナ下部622を用いて説明する。
【0076】
より詳しくは、遮熱インナ下部622は、
図3及び
図5に示すように、車幅方向に沿った縦断面において、車両上下方向に厚みを有するとともに、遮熱インナ下部622の上面部分をなす上面部622aと、上面部622aの車幅方向外側からフロントサイドフレーム3の上面へ向けて延設された側壁部622bと、フロントサイドフレーム3における車幅方向内側の側面に沿うように、側壁部622bの下端からさらに車両下方へ延設された下端部622cとで一体形成されている。
【0077】
この遮熱インナ下部622には、
図2に示すように、上面部622aの後端、及び側壁部622bの後端から車両上方、及び車幅方向外側へ延設されたフランジ状部分が形成されている。そして、遮熱インナ下部622のフランジ状部分が、ダッシュパネル本体15の前面に接合されている。
【0078】
さらに、遮熱インナ下部622の下端部622cは、
図3及び
図5に示すように、ダッシュクロスメンバ17におけるメンバ水平部17bの前面からフロントサイドフレーム3における車幅方向内側の側面に亘って湾曲した形状に形成されている。そして、この遮熱インナ下部622の下端部622cは、
図2及び
図3に示すように、ダッシュクロスメンバ17、及びフロントサイドフレーム3の双方に接合されている。
【0079】
加えて、遮熱インナ下部622の下端部622cには、
図2、
図3、及び
図5に示すように、ダッシュクロスメンバ17とフロントサイドフレーム3との接合箇所を跨ぐように、車幅方向内側へ平面視略三角形状に膨出した膨出部分622dが形成されている。このため、遮熱インナ下部622の膨出部分622dは、車幅方向に沿った水平断面、及び縦断面において、ダッシュクロスメンバ17とフロントサイドフレーム3とで閉断面をなしている。
【0080】
このような車両1の前部車体には、
図6及び
図7に示すように、カウルボックス13とインパネメンバ14とを連結する左右一対のインパネ連結部材19、及びカウルボックス13の内部に配設された左右一対の連結補助部材20を備えている。
【0081】
左右のインパネ連結部材19は、
図6及び
図7に示すように、車両前後方向に長い平面視略矩形で、インパネ連結部材19の上面部分をなす連結上面部19aと、連結上面部19aの車幅方向両端からそれぞれ車両下方へ延設された左右の連結側面部19bとで、車幅方向に沿った縦断面における断面形状が断面略門型形状になるように構成されている。
なお、インパネ連結部材19の連結上面部19aは、前端近傍がカウルボックス13の下面に当接可能に形成され、後端がインパネメンバ14の上部に当接可能に形成されている。
【0082】
一方、インパネ連結部材19の連結側面部19bは、
図7に示すように、側面視において、側面視略三角形の略平板における前端上部を車両前方へ延設した形状に形成されている。さらに、インパネ連結部材19の連結側面部19bは、
図7に示すように、側面視において、その後端が、インパネメンバ14の周面に沿った形状に形成されている。
【0083】
このインパネ連結部材19は、
図6及び
図7に示すように、遮熱部材インナ62における遮熱インナ上部621の後端と略同じ車幅方向の位置、かつ遮熱インナ上部621の後端と略同じ車両上下方向の位置に前端が位置するよう配設されている。換言すると、インパネ連結部材19の前端は、遮熱部材インナ62における遮熱インナ上部621の後端に対して、ダッシュパネル12を挟んで車両前後方向に所定間隔を隔てた位置に対向配置されている。
【0084】
そして、インパネ連結部材19は、その後部がインパネメンバ14の外周面に接合され、連結上面部19aの先端近傍が、カウルボックス13のカウル底部131c、及びロア後縁部131dに車両下方から接合されている。つまり、インパネ連結部材19は、カウルボックス13を介して、ダッシュパネル12に連結されている。
【0085】
一方、左右の連結補助部材20は、
図6及び
図7に示すように、車両前後方向に延びる略円筒状体であって、カウルボックス13の内部で車両前後方向に対向する内面、すなわち、カウルロア131のロア前壁部131bと、カウルアッパ132のアッパ後壁部132dとに接合されている。
【0086】
より詳しくは、連結補助部材20は、
図6及び
図7に示すように、その前端が、遮熱部材インナ62における遮熱インナ上部621の後端と略同じ車幅方向の位置において、カウルロア131のロア前壁部131bに接合され、後端が、インパネ連結部材19の前端と略同じ車幅方向の位置において、カウルアッパ132のアッパ後壁部132dに接合されている。
【0087】
以上のように、車両1の車室部2における車両前方の隔壁をなすダッシュパネル12と、ダッシュパネル12の両端に連結されるとともに、車両上下方向に延びる左右一対のヒンジピラー9と、ダッシュパネル12の上端に連結されるとともに、左右のヒンジピラー9を車幅方向に連結するカウルボックス13と、フロントサスダンパの上端を支持するサスタワー5とを備えた車両1の前部車体構造は、ダッシュパネル12が、正面視において、車幅方向略中央近傍に配設されたフロアトンネル10aに対応して下端が車両上方へ突出したトンネル対応部分15aを有するダッシュパネル本体15と、ダッシュパネル本体15の下部前面に接合されるとともに、左右のヒンジピラー9の下部を車幅方向に連結するダッシュクロスメンバ17と、ダッシュクロスメンバ17よりも車両上方のダッシュパネル本体15に接合されたダッシュパネル補強部材18とを備え、ダッシュクロスメンバ17が、ダッシュパネル本体15のトンネル対応部分15aに沿って形成された正面視略門型形状のメンバ門型形状部17aを備え、ダッシュパネル補強部材18が、正面視において、下端がメンバ門型形状部17aを跨いでダッシュクロスメンバ17に連結されるとともに、上端がカウルボックス13に近接する正面視略門型形状に形成されたことにより、左右のサスタワー5に異なるタイミングで荷重エネルギーが作用した場合であっても、サスタワー5に作用した荷重エネルギーによるダッシュパネル12の変形を抑制することができる。
【0088】
具体的には、ダッシュクロスメンバ17とカウルボックス13との間に配設したダッシュパネル補強部材18により、車両1の前部車体構造は、ダッシュパネル本体15におけるメンバ門型形状部17aよりも車両上方部分の剛性を向上できるとともに、ダッシュパネル本体15におけるメンバ門型形状部17aよりも車両上方部分が応力集中部位となることを抑制できる。
【0089】
これにより、車両1の前部車体構造は、例えば、左右のサスタワー5に異なるタイミングで荷重エネルギーが作用した際、ダッシュパネル12の車両右側部分と、ダッシュパネル12の車両左側部分とに生じる変位差を抑えることができる。
【0090】
さらに、車両1の前部車体構造は、ダッシュパネル補強部材18によって、ダッシュパネル12における荷重エネルギー伝達効率を向上できるため、例えば、サスタワー5に作用する荷重エネルギーを、ヒンジピラー9を介して車体のより遠方へ確実に伝達することができる。
【0091】
従って、車両1の前部車体構造は、ダッシュパネル補強部材18によって、左右のサスタワー5に異なるタイミングで荷重エネルギーが作用した場合であっても、サスタワー5に作用した荷重エネルギーによるダッシュパネル12の変形を抑制することができる。
【0092】
また、ダッシュパネル補強部材18が、ダッシュパネル本体15とで閉断面をなす形状に形成されたことにより、車両1の前部車体構造は、ダッシュパネル本体15におけるメンバ門型形状部17aよりも車両上方部分の剛性をダッシュパネル補強部材18によってより向上することができる。
【0093】
このため、車両1の前部車体構造は、左右のサスタワー5に異なるタイミングで荷重エネルギーが作用した場合であっても、ダッシュパネル12とで閉断面をなすダッシュパネル補強部材18によって、サスタワー5に作用した荷重エネルギーによるダッシュパネル12の変形をより抑制することができる。
【0094】
また、ダッシュパネル補強部材18が、正面視略門型形状の補強部材本体181と、正面視において、補強部材本体181の内側に配設された略平板状の平板部182とで一体的に形成されたことにより、車両1の前部車体構造は、ダッシュパネル補強部材18の剛性をより向上することができる。
【0095】
このため、車両1の前部車体構造は、ダッシュパネル本体15におけるメンバ門型形状部17aよりも車両上方部分の剛性をダッシュパネル補強部材18によってより確実に向上することができる。
【0096】
従って、車両1の前部車体構造は、左右のサスタワー5に異なるタイミングで荷重エネルギーが作用した場合であっても、補強部材本体181と平板部182とで構成されたダッシュパネル補強部材18によって、サスタワー5に作用した荷重エネルギーによるダッシュパネル12の変形をより確実に抑制することができる。
【0097】
また、ダッシュパネル補強部材18が、正面視において、ダッシュクロスメンバ17に連結された下端から車両上方に延びる左右一対の脚部181aと、脚部181aの上端同士を車幅方向に連結するとともに、カウルボックス13に上端が近接する橋架部181bと、橋架部181bよりも車両下方で、左右の脚部181aを車幅方向に連結する少なくとも1つのビード182aとを備えたことにより、車両1の前部車体構造は、ダッシュパネル補強部材18の剛性をさらに向上することができる。
【0098】
このため、車両1の前部車体構造は、ダッシュパネル本体15におけるメンバ門型形状部17aよりも車両上方部分の剛性をダッシュパネル補強部材18によってさらに向上することができる。
従って、車両1の前部車体構造は、左右のサスタワー5に異なるタイミングで荷重エネルギーが作用した場合であっても、脚部181aを連結するビード182aを有するダッシュパネル補強部材18によって、サスタワー5に作用した荷重エネルギーによるダッシュパネル12の変形をさらに抑制することができる。
【0099】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明のトンネル対応下端は、実施形態のトンネル対応部分15aに対応し、
以下同様に、
ダッシュ本体は、ダッシュパネル本体15に対応し、
メンバ門型部は、メンバ門型形状部17aに対応し、
補強本体部は、補強部材本体181に対応し、
脚部は、脚部181aに対応し、
連結部は、ビード182aに対応するが、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【0100】
例えば、上述した実施形態において、カウルロア131とカウルアッパ132とで車両前後方向に沿った縦断面における断面形状が閉断面をなすカウルボックス13としたが、これに限定せず、連結補助部材20の前端、及び後端が接合される内面を有する形状であれば、例えば、車両前後方向に沿った縦断面における断面形状が、車両上方が開口した開断面形状であってもよい。
【0101】
また、正面視略門型形状のダッシュパネル補強部材18としたが、これに限定せず、正面視略逆U字状、正面視略逆V字状、あるいは正面視略M字状のダッシュパネル補強部材としてもよい。
また、遮熱インナ上部621と遮熱インナ下部622とが別体で構成された遮熱部材6の遮熱部材インナ62としたが、これに限定せず、遮熱インナ上部621と遮熱インナ下部622とが一体形成された遮熱部材インナとしてもよい。
【符号の説明】
【0102】
1…車両
2…車室部
9…ヒンジピラー
5…サスタワー
10a…フロアトンネル
12…ダッシュパネル
13…カウルボックス
15…ダッシュパネル本体
15a…トンネル対応部分
17…ダッシュクロスメンバ
17a…メンバ門型形状部
18…ダッシュパネル補強部材
181…補強部材本体
181a…脚部
181b…橋架部
182…平板部
182a…ビード