IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ マツダ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-車両用蓄電装置 図1
  • 特許-車両用蓄電装置 図2
  • 特許-車両用蓄電装置 図3
  • 特許-車両用蓄電装置 図4
  • 特許-車両用蓄電装置 図5
  • 特許-車両用蓄電装置 図6
  • 特許-車両用蓄電装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-24
(45)【発行日】2022-02-01
(54)【発明の名称】車両用蓄電装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/6571 20140101AFI20220125BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20220125BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20220125BHJP
   H01M 10/615 20140101ALI20220125BHJP
   H01M 10/658 20140101ALI20220125BHJP
   H01M 10/647 20140101ALI20220125BHJP
   H01M 10/6563 20140101ALI20220125BHJP
   H01M 50/103 20210101ALI20220125BHJP
   H01M 50/40 20210101ALI20220125BHJP
   H01M 10/654 20140101ALI20220125BHJP
   H01M 50/572 20210101ALI20220125BHJP
【FI】
H01M10/6571
H01M10/04 W
H01M10/625
H01M10/615
H01M10/658
H01M10/647
H01M10/6563
H01M50/103
H01M50/40
H01M10/654
H01M50/572
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018081167
(22)【出願日】2018-04-20
(65)【公開番号】P2019192379
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2021-02-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089004
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】増田 渉
(72)【発明者】
【氏名】花岡 輝彦
(72)【発明者】
【氏名】高橋 敏貴
(72)【発明者】
【氏名】大路 潔
【審査官】宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-538683(JP,A)
【文献】特開2017-068033(JP,A)
【文献】特開2014-030340(JP,A)
【文献】特開2017-076541(JP,A)
【文献】特開2013-235774(JP,A)
【文献】特開2013-025871(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/6571
H01M 10/04
H01M 10/625
H01M 10/615
H01M 10/658
H01M 10/647
H01M 10/6563
H01M 50/103
H01M 50/40
H01M 10/654
H01M 50/572
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直方体形状のケースを有する複数の蓄電池を備えた車両用蓄電装置において、
前記蓄電池は、正極板と負極板がセパレータを介して偏平状に巻回され且つ平行な1対の偏平面部を有する巻回体と、前記巻回体の外周を覆う絶縁性の断熱部材とを前記ケース内に収容し、
前記巻回体の少なくとも一方の偏平面部と前記断熱部材の間に絶縁部材を介して前記偏平面部に当接するヒータを備え
前記絶縁部材は、前記断熱部材の内側で前記巻回体の外周を覆い、前記偏平面部に接する領域に前記ヒータを収容するための袋状の収容部を備えたことを特徴とする車両用蓄電装置。
【請求項2】
直方体形状のケースを有する複数の蓄電池を備えた車両用蓄電装置において、
前記蓄電池は、正極板と負極板がセパレータを介して偏平状に巻回され且つ平行な1対の偏平面部を有する巻回体と、前記巻回体の外周を覆う絶縁性の断熱部材とを前記ケース内に収容し、
前記巻回体の少なくとも一方の偏平面部と前記断熱部材の間に絶縁部材を介して前記偏平面部に当接するヒータを備え、
前記断熱部材は、前記偏平面部に接する領域に絶縁シート部材が接着されて形成された前記ヒータを収容するための袋状の収容部を備えたことを特徴とする車両用蓄電装置。
【請求項3】
前記ヒータは、前記蓄電池の正極端子及び負極端子に接続されて前記蓄電池の電力によって作動し、前記ヒータの作動と非作動を所定の切替え温度で切替える温度スイッチを備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用蓄電装置。
【請求項4】
前記ヒータは、前記ヒータ作動時に前記ヒータの発熱と前記蓄電池の自己発熱によって前記切替え温度に維持されるように抵抗値が設定されたことを特徴とする請求項に記載の車両用蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載する車両用蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両に搭載する補機用の蓄電装置を構成する蓄電池を鉛蓄電池から鉛を含まないリチウムイオン二次電池に置き換えることが検討されている。リチウムイオン二次電池は同じ蓄電容量の鉛蓄電池と比べて小型化、軽量化を図ることができ、車両の軽量化や走行性の向上に寄与する。
【0003】
例えば角型のリチウムイオン二次電池は、アルミ合金製の直方体形状のケース内に正負の電極板と電解液を密閉状に収容して構成され、ある程度の耐衝撃性を備えている。そして、複数の角型のリチウムイオン二次電池によって補機用の蓄電装置を構成してエンジンルーム内に配設する。
【0004】
エンジンルーム内に配設された補機用の蓄電装置は、走行時にはエンジンの熱によって温められた空気にさらされ、冷間時には外気温度まで低下する。蓄電装置を構成するリチウムイオン二次電池にはその優れた性能を発揮できる使用温度域があり、この使用温度域外での充放電は性能を発揮できないばかりでなく劣化が進行する虞がある。そのため、補機用の蓄電装置はエンジンの熱の影響を受け難くする必要がある。また、外気温度が使用温度域の下限温度よりも低温の場合には、補機用の蓄電装置を使用温度域内の温度に維持するように加温する必要がある。
【0005】
蓄電装置を温める技術として、例えば特許文献1のように、角型の蓄電池の集合体底部側に配設されたヒータによって温める技術が知られている。また、特許文献2のように、セパレータ介して正極板と負極板を交互に重ねて絶縁フィルムで密封したラミネート型の蓄電池の間に、シート状のヒータを配設する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2008-103207号公報
【文献】特許第5609799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
角型の蓄電池で構成された蓄電装置を温める場合、特許文献1のように、ヒータがケースに近接又は当接するように配設され、通電により発生するジュール熱をケースに伝えて蓄電池を温めるので、特許文献2のように電極板の加温を効率的に行うことが困難である。具体的には、電極板以外のケース等の熱容量があるため、ヒータの熱が正負の電極板の加温以外にも使われる。
【0008】
また、ヒータの熱を逃がさないため、及びエンジンからの熱の影響も防ぐためにヒータと共に蓄電装置を断熱部材で覆うことも考えられるが、ヒータはケースの所定の面から温めるので、電極板は均一に温まり難く、蓄電池の加温には改善の余地があった。
【0009】
本発明の目的は、蓄電池の加温を効率的に行うことができる車両用蓄電装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、直方体形状のケースを有する複数の蓄電池を備えた車両用蓄電装置において、前記蓄電池は、正極板と負極板がセパレータを介して偏平状に巻回され且つ平行な1対の偏平面部を有する巻回体と、前記巻回体の外周を覆う絶縁性の断熱部材とを前記ケース内に収容し、前記巻回体の少なくとも一方の偏平面部と前記断熱部材の間に絶縁部材を介して前記偏平面部に当接するヒータを備え、前記絶縁部材は、前記断熱部材の内側で前記巻回体の外周を覆い、前記偏平面部に接する領域に前記ヒータを収容するための袋状の収容部を備えたことを特徴としている。
上記構成によれば、ヒータがケースを介さずに巻回体を広い偏平面部から温めると共に、断熱部材によってヒータの熱をケースに伝え難くして効率的に加温できる。また、巻回体とヒータを絶縁する絶縁部材に形成された収容部にヒータを収容することによって、巻回体の偏平面部にヒータを容易に固定することができる。
【0011】
請求項2の発明は、直方体形状のケースを有する複数の蓄電池を備えた車両用蓄電装置において、前記蓄電池は、正極板と負極板がセパレータを介して偏平状に巻回され且つ平行な1対の偏平面部を有する巻回体と、前記巻回体の外周を覆う絶縁性の断熱部材とを前記ケース内に収容し、前記巻回体の少なくとも一方の偏平面部と前記断熱部材の間に絶縁部材を介して前記偏平面部に当接するヒータを備え、前記断熱部材は、前記偏平面部に接する領域に絶縁シート部材が接着されて形成された前記ヒータを収容するための袋状の収容部を備えたことを特徴としている。
上記構成によれば、ヒータがケースを介さずに巻回体を広い偏平面部から温めると共に、断熱部材によってヒータの熱をケースに伝え難くして効率的に加温できる。また、巻回体の外周を覆う断熱部材に絶縁シート部材によって形成された収容部にヒータを収容し、巻回体の偏平面部に収容部が当接するように巻回体の外周を覆うことにより、巻回体とヒータを絶縁すると共に巻回体の偏平面部にヒータを容易に固定することができる。
【0012】
請求項の発明は、請求項1又は2の発明において、前記ヒータは、前記蓄電池の正極端子及び負極端子に接続されて前記蓄電池の電力によって作動し、前記ヒータの作動と非作動を所定の切替え温度で切替える温度スイッチを備えたことを特徴としている。
上記構成によれば、蓄電池自体が所定の切替え温度以上の温度を維持することができるので、外気温が低い環境に駐車している間も蓄電池の使用に適した温度を維持して、充放電可能な状態を維持することができる。
【0013】
請求項の発明は、請求項の発明において、前記ヒータは、前記ヒータ作動時に前記ヒータの発熱と前記蓄電池の自己発熱によって前記切替え温度に維持されるように抵抗値が設定されたことを特徴としている。
上記構成によれば、電力消費を最小限にして蓄電池のSOCの低下を緩やかにすることができる。
【0014】
【0015】
【発明の効果】
【0016】
本発明の車両用蓄電装置によれば、蓄電池の加温を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態による車両の構成を説明するブロック図である。
図2】本発明の実施形態による蓄電装置の要部分解斜視図である。
図3】本発明の実施形態による蓄電池の要部分解斜視図である。
図4図3のIV-IV線断面図である。
図5】収容部の1例を示す要部展開斜視図である。
図6】収容部の他の例を示す要部展開斜視図である。
図7】低温環境下に置いた蓄電池の温度変化を示す図である
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態による車両用蓄電装置について説明する。最初に、図1に基づいて車両の全体構成について説明する。
車両は、車両駆動装置1としてエンジンルーム内に、車両駆動用のエンジン2と、補機3としてエンジン2を始動させるスタータモータ4、エンジンルームに外気を送り込む送風ファン5、エンジン2の駆動力を利用して発電するオルタネータ6、温度センサ7を含む各種センサを備えている。また、エンジンルーム内に、エンジン2や補機3等に供給する電力を蓄える蓄電装置10(車両用蓄電装置)を備えている。そして、車両は、これらエンジン2、補機3、蓄電装置10等を制御する制御部(ECU8)を搭載している。
【0019】
ECU8は、CPUと各種プログラムを記憶するメモリと入出力装置等を備えたコンピュータにより構成されている。このECU8は、各種センサから周期的に出力される信号を処理して、エンジン2、送風ファン5、蓄電装置10等に対して適切に作動させるための制御信号を出力する。ECU8は蓄電装置10の充電状態(State Of Charge:SOC)を管理し、走行に支障がないようにオルタネータ6を駆動して充電する。
【0020】
次に、蓄電装置10について説明する。
蓄電装置10は、エンジン2を収容する車両のエンジンルーム内に配設されている。エンジン2は図示外の例えば水冷式の冷却機構により冷却されるが、エンジン2から放出される熱はエンジンルーム内の空気を温める。この空気は、走行風及び送風ファン5によってエンジンルーム内に導入された外気と共に外部に排出される。温度センサ7は、蓄電装置10の表面温度又はその近傍の温度を検知して温度データをECU8に出力し、ECU8は蓄電装置10の過度の温度上昇を予防するために送風ファン5を駆動して送風量を調整する。
【0021】
蓄電装置10は、複数の角型のリチウムイオン二次電池(蓄電池21)を直列に接続して補機3等に電力を供給するように構成されている。例えば図2に示すように、蓄電装置10は、4つの蓄電池21が夫々絶縁性のセパレータ13を間に挟んで密着状に1列に整列した状態を維持するように、1対の支持部材11と1対のエンドプレート12を連結して構成されている。これらの蓄電池21は、複数のバスバー14によって直列に接続され、その両端部に蓄電装置10の正極端子15と負極端子16を備えている。
【0022】
次に、蓄電池21について図3図5に基づいて説明する。
蓄電池21は、直方体形状のケース22を有し、蓋部材である上面部22aに蓄電池21の正極端子23と負極端子24が配設されている。ケース22は、その側面部面積が最大の互いに平行な第1側面部22b及び第2側面部22cと、これら第1,第2側面部22b,22cに直交し且つ互いに平行な第3側面部22d及び第4側面部22eと、上面部22aに対向する底面部22fを有する。このケース22内に、多孔性のセパレータ(第1セパレータ30a,第2セパレータ30b)を介して正極板30cと負極板30dとを水平軸心周りに偏平状に巻回して外周を絶縁部材33と断熱部材34で覆った巻回体30及び電解液(図示略)が収容され、蓋部材で密閉されている。
【0023】
巻回体30の水平軸心方向の一方(例えばケース22の第3側面部22d側)の端部領域では、正極板30cに連なる正極集電タブ31が上方に延びてケース22内で正極端子23に接続されている。巻回体30の水平軸心方向の他方(第4側面部22e側)の端部領域では、負極板30dに連なる負極集電タブ32が上方に延びてケース22内で負極端子24に接続されている。また、巻回体30は、第1側面部22b側及び第2側面部22c側にその外周部の広い面積を占める平坦且つ互いに略平行な1対の偏平面部を有する。
【0024】
巻回体30の外周を覆う絶縁部材33は、合成樹脂材料(例えばポリプロピレンやポリエチレン)で柔軟なシート状に形成されている。絶縁部材33で覆われた巻回体30は、少なくともその外周の過半領域をシート状の断熱部材34によって覆われており、水平軸心方向両端部も絶縁部材33で覆われていてもよい。この断熱部材34と絶縁部材33の間であって、巻回体30の少なくとも一方の偏平面部(例えば第1側面部22b側の偏平面部)に近接する領域に、その偏平面部から巻回体30を温めるためのシート状のヒータ35が配設されている。
【0025】
ヒータ35は、通電によりジュール熱が発生するように構成され、その1対の電源線35a,35bが夫々蓄電池21の正極端子23、負極端子24に接続されている。電源線35aは、上面部22aに配設された温度スイッチ25を介して正極端子23に接続されている。温度スイッチ25は、所定の温度未満で通電するように切替わり、蓄電池21の温度として上面部22aの温度又はケース22内の温度を検知して作動する。これにより蓄電池21は、それ自体に蓄えられた電力によりヒータ35を作動させて所定の温度を維持する。所定の温度は例えば-20℃であり、蓄電池21の仕様(使用温度域の下限値)によって適宜設定する。
【0026】
ヒータ35の抵抗値は、ジュール熱及びヒータ35作動時に電力を供給する蓄電池21の自己発熱により、断熱部材34で覆われた巻回体30が所定の温度を維持可能なように設定されている。例えば、-30℃の環境下で蓄電池21が-20℃を維持するために、ヒータ35の発熱量とケース22からの放熱量が釣合うようにヒータ35の抵抗値を設定する。蓄電池21の仕様によって放熱量は異なるので、この抵抗値は蓄電池21の仕様に応じて適宜設定する。これによりヒータ35の電力消費を最小限にして、SOCの低下を緩やかにしている。
【0027】
断熱部材34は、例えばシリカエアロゲル系の多孔性の中空構造体をその中空構造が外部に対して閉じるように屈曲可能なシート状に形成したものであり、絶縁部材33よりも巻回体30とケース22の間の熱伝導を抑える効果が高く、電解液が浸潤せず絶縁性を有している。巻回体30の外周を覆う絶縁部材33は、巻回体30の少なくとも一方の偏平面部(例えば第1側面部22b側の偏平面部)に当接する領域に合成樹脂製の絶縁シート部材を接着して形成された袋状の収容部33aを備えている。この収容部33aにヒータ35が密封状に収容され、ヒータ35は電解液及び巻回体30に直接接触しない。ヒータ35の電源線35a,35bは、夫々収容部33aの外側に延びて正極端子23,負極端子24に接続される。
【0028】
収容部33aの代わりに、図6に示すように、断熱部材34が巻回体30の例えば第1側面部22b側の偏平面部に近接する領域に、合成樹脂製の絶縁シート部材を接着して袋状の収容部34aを形成し、この収容部34aにヒータ35を収容して密封することもできる。また、図示を省略するが、合成樹脂製の絶縁シート部材で挟んで密封したヒータ35を、例えば第1側面部22b側の偏平面部に近接する領域に配設して、断熱部材34で覆って保持することもできる。これらの場合は、絶縁部材33を省略することもできる。
【0029】
ECU8は、温度センサ7の温度データに基づいて、ECU8が蓄電装置10の所定の使用温度域内で蓄電装置10がその性能を発揮できるように送風ファン5による冷却を制御する。例えば温度センサ7が、使用温度域の上限温度(例えば60℃)以上の温度を検知又は検知温度の上昇態様からその上限温度を超えることが予測された場合に、その使用温度域の上限温度より低い温度を維持するように送風ファン5を作動させる、又はその送風量を増加させる。蓄電池21の巻回体30は、断熱部材34により覆われているので、一時的な周囲の温度上昇の影響が低減される。
【0030】
一方、温度スイッチ25は、蓄電池21の温度が使用温度域の下限温度(例えば-20℃)未満の温度になるとヒータ35に通電し、少なくともその使用温度域の下限温度を維持するようにヒータ35が作動する。図7は、温度スイッチ25と断熱部材34とヒータ35を備えていないこと以外は蓄電池21と同等の従来の蓄電池と蓄電池21を、夫々25℃の状態から外気温度が-30℃の環境に置いたときの温度の変化を示している。従来の蓄電池は、破線で示すように使用温度域の下限温度-20℃に1.7時間程で降温し、その後も外気温度の-30℃まで降温して使用に適した状態ではなくなっている。一方、蓄電池21は、実線で示すように使用温度域の下限温度の-20℃に降温するまでの時間が従来の蓄電池よりも長い3時間程度になり、その後もヒータ35の作動により使用温度域の下限温度を維持している。
【0031】
次に、本発明の作用、効果について説明する。
エンジンルームに配設された蓄電装置10は、複数の蓄電池21で構成されている。各蓄電池21は、その直方体形状のケース22内に、絶縁部材33で覆われた巻回体30を断熱部材34で覆って収容している。絶縁部材33と断熱部材34の間には、巻回体30を温めるためのシート状のヒータ35が配設されている。従って、エンジン2の熱で温められた空気による巻回体30の温度上昇を断熱部材34で抑制すると共に、低温環境下においてヒータ35で加温する場合にケース22を介さずに広い偏平面部から巻回体30を均一に加温し、断熱部材34によってヒータ35の熱をケース22に伝え難くして効率的に加温できる。
【0032】
ヒータ35は、蓄電池21の正極端子23及び負極端子24に接続されてその蓄電池21の電力によって作動する。そして、ヒータ35の作動と非作動を所定の切替え温度で切替える温度スイッチ25を備えたので、蓄電池21自体が所定の切替え温度以上の温度を維持することができる。従って、外気温度が蓄電池21の使用温度域よりも低温の環境に駐車している間もその使用温度域内の温度を維持して、充放電可能な状態を維持することができる。
【0033】
その上、ヒータ35作動時にヒータ35の発熱と蓄電池21の自己発熱によって切替え温度に維持されるようにヒータ35の抵抗値が設定されたので、ヒータ35による電力の消費を最小限にして蓄電池21のSOCの低下を緩やかにすることができる。
【0034】
絶縁部材33は、巻回体30の外周を覆い、その巻回体30の偏平面部に近接する領域にヒータ35を収容するための袋状の収容部33aを備えたので、収容部33aにヒータ35を収容することによって、巻回体30の偏平面部にヒータ35を容易に固定することができる。
【0035】
断熱部材34の巻回体30の偏平面部に近接する領域に絶縁フィルムが接着されて形成された袋状の収容部34aを備えた場合には、この収容部34aにヒータ35を収容して巻回体30の偏平面部にヒータ35を容易に固定することができる。
【0036】
水平軸心周りに巻回した巻回体30の代わりに、鉛直軸心周りに巻回した巻回体や、セパレータを介して正負の電極板を交互に積層した電極体を使用した蓄電池においても、同様に構成することができる。また、エンジンルームに配設される補機用の蓄電装置10について説明したが、例えばハイブリッド車や電気自動車の駆動用モータに電力を供給する車両駆動用の蓄電装置として構成することもできる。その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく上記実施形態に種々の変更を付加した形態で実施可能であり、本発明はその種の変更形態をも包含するものである。
【符号の説明】
【0037】
1 :車両駆動装置
2 :エンジン
3 :補機
7 :温度センサ
8 :ECU
10 :蓄電装置
21 :蓄電池
22 :ケース
22b :第1側面部
22c :第2側面部
23 :正極端子
24 :負極端子
25 :温度スイッチ
30 :巻回体
30a :第1セパレータ
30b :第2セパレータ
30c :正極板
30d :負極板
33 :絶縁部材
33a :収容部
34 :断熱部材
34a :収容部
35 :ヒータ
35a,35b :電源線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7