(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-24
(45)【発行日】2022-02-15
(54)【発明の名称】遮断機
(51)【国際特許分類】
E01F 13/04 20060101AFI20220207BHJP
【FI】
E01F13/04 A
(21)【出願番号】P 2018124597
(22)【出願日】2018-06-29
【審査請求日】2020-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 信悟
(72)【発明者】
【氏名】中村 雅美
(72)【発明者】
【氏名】福島 秀城
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-035196(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-0777657(KR,B1)
【文献】韓国登録特許第10-1097001(KR,B1)
【文献】実開昭53-041093(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 1/00
13/00-15/14
G08G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の通路
を通行する者の進行を遮断する第1遮断位置と、前記第1遮断位置から
前記第1の通路を通行する者の進行方向前方に変位して前記第1の通路の通行を許容する第1許容位置との間で回動可能とされ、常態では前記第1遮断位置に位置するように構成された第1遮断棒と、
前記第1遮断棒に対して取り付けられ、前記第1遮断位置と前記第1許容位置との間の回動軸を構成する第1シャフトと、
前記第1シャフトの回転に連動して回転する第2シャフトと、
前記第2シャフトに対して取り付けられ、前記第2シャフトからの動力を伝達する伝達部材と、
第2の通路の通行を遮断する第2遮断位置と、前記第2遮断位置から起立して前記第2の通路の通行を許容する第2起立位置との間で回動可能とされ、自重により前記第2遮断位置から前記第2起立位置に起立するように構成された第2遮断棒と、を備え、
前記第1遮断棒が前記第1遮断位置から前記第1許容位置に変更されるのに伴って前記伝達部材から伝達される動力を利用して、前記第2遮断棒が前記第2起立位置から前記第2遮断位置に変更され、
前記第2遮断位置に変更された前記第2遮断棒が、自重により前記第2遮断位置から前記第2起立位置に変更されるように構成された遮断機。
【請求項2】
前記第2遮断棒を前記第2遮断位置にロック可能なロック機構を更に備え、
前記ロック機構により前記第2遮断棒が前記第2遮断位置にロックされた状態において、前記第1遮断棒が前記第1許容位置から前記第1遮断位置に変更され、
前記第1遮断棒が前記第1遮断位置に変更される過程で、前記伝達部材から伝達される動力を利用して、前記ロック機構による前記第2遮断棒のロックが解除され、
前記ロック機構によるロックが解除された前記第2遮断棒が、自重により前記第2遮断位置から前記第2起立位置に変更されるように構成されている請求項1に記載の遮断機。
【請求項3】
前記伝達部材は、前記第2シャフトに接続された本体部と、前記本体部から張り出して前記第2遮断棒に動力を伝達するとともに前記ロック機構に動力を伝達するように構成された動力伝達部と、を有する請求項2に記載の遮断機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される技術は、遮断機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、さおの基端にバランスウェイトを取り付けると共に、該バランスウェイト近くのさおを回転可能に軸で支承した第1のさお及び第2のさおとを向かい合わせに配設し、両側から開閉する遮断機タイプの安全柵が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
2つの遮断棒を備えた遮断機において、機械的な構成のみで2つの遮断棒を同期させつつ動作させる構成のものが求められている。
【0005】
本明細書によって開示される技術は、機械的な構成のみで2つの遮断棒を同期させつつ動作させ、通行者が安全に通路を通行することができる遮断機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書によって開示される遮断機は、第1の通路の通行を遮断する第1遮断位置と、前記第1遮断位置から進行方向前方に変位して前記第1の通路の通行を許容する第1許容位置との間で回動可能とされ、常態では前記第1遮断位置に位置するように構成された第1遮断棒と、前記第1遮断棒に対して取り付けられ、前記第1遮断位置と前記第1許容位置との間の回動軸を構成する第1シャフトと、前記第1シャフトの回転に連動して回転する第2シャフトと、前記第2シャフトに対して取り付けられ、前記第2シャフトからの動力を伝達する伝達部材と、第2の通路の通行を遮断する第2遮断位置と、前記第2遮断位置から起立して前記第2の通路の通行を許容する第2起立位置との間で回動可能とされ、自重により前記第2遮断位置から前記第2起立位置に起立するように構成された第2遮断棒と、を備え、前記第1遮断棒が前記第1遮断位置から前記第1許容位置に変更されるのに伴って前記伝達部材から伝達される動力を利用して、前記第2遮断棒が前記第2起立位置から前記第2遮断位置に変更され、前記第2遮断位置に変更された前記第2遮断棒が、自重により前記第2遮断位置から前記第2起立位置に変更されるように構成されている。
【0007】
このような遮断機によれば、第1の通路を通行する者が、第1遮断棒を第1遮断位置から第1許容位置に変更することにより、第2遮断棒を第2遮断位置に変更することができる。そして、第1遮断棒が第1遮断位置から第1許容位置に変更された後には、第1遮断棒が第1許容位置から第1遮断位置に変更されるとともに、自重により第2遮断棒が第2遮断位置から第2起立位置に自動で変更されることとなる。このため、機械的な構成のみで2つの遮断棒を同期させつつ動作させ、第1の通路を通行する者が通行する際に、第2の通路を通行する者の通行を遮断することができ、両者が交錯することなく、安全に通路を通行することができる。
ところで、第1遮断棒による遮断状態を解除して第1の通路の通行を許容するための構成として、例えば、第1許容位置を第1遮断位置から起立した位置とする構成も考えられる。しかしながら、そのような構成では、第1遮断棒が第1遮断位置に復帰する際に、第1遮断棒の起立角度が小さくなる程、第1遮断棒に作用する重力により第1遮断棒の回転速度が大きくなる。一方、上記構成のように、第1遮断棒の第1許容位置が第1遮断位置から進行方向前方に変位した位置とされる構成によれば、第1遮断棒が第1遮断位置に復帰する際に、第1遮断棒に作用する重力の影響を小さくすることができ、第1遮断棒の回転速度を調整し易い。このため、第1遮断棒の回転速度を適宜調整するためのダンパ等の部品を廃止ないし小型化することができ、遮断機の小型化に寄与することができる。
【0008】
前記第2遮断棒を前記第2遮断位置にロック可能なロック機構を更に備え、前記ロック機構により前記第2遮断棒が前記第2遮断位置にロックされた状態において、前記第1遮断棒が前記第1許容位置から前記第1遮断位置に変更され、前記第1遮断棒が前記第1遮断位置に変更される過程で、前記伝達部材から伝達される動力を利用して、前記ロック機構による前記第2遮断棒のロックが解除され、前記ロック機構によるロックが解除された前記第2遮断棒が、自重により前記第2遮断位置から前記第2起立位置に変更されるように構成されていてもよい。
【0009】
このような遮断機によれば、第1遮断棒が第1遮断位置から第1許容位置に変更された後において、所定時間経過後に、第2遮断棒が第2遮断位置から第2起立位置に自動で変更されることとなる。このため、第1の通路を通行する者が通行する際に、所定時間が経過するまでの間、第2の通路を通行する者の通行を遮断することができ、より一層好適に、両者が交錯することなく、安全に通路を通行することができる。
【0010】
前記伝達部材は、前記第2シャフトに接続された本体部と、前記本体部から張り出して前記第2遮断棒に動力を伝達するとともに前記ロック機構に動力を伝達するように構成された動力伝達部と、を有していてもよい。
【0011】
動力伝達部から第2遮断棒とロック機構の双方に動力を伝達することにより、第2遮断棒に動力を伝達する部分とロック機構に動力を伝達する部分を別体的に設ける構成に比して、部品点数を低減することができるとともに、遮断機の小型化及び軽量化に寄与することができる。
【発明の効果】
【0012】
本明細書によって開示される技術によれば、機械的な構成のみで2つの遮断棒を同期させつつ動作させ、通行者が安全に通路を通行することができる遮断機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】一実施形態に係る遮断機の初期の作動態様を示す説明図
【
図2】作動してから所定時間経過前における遮断機の作動態様を示す説明図
【
図3】第1遮断棒を屈曲姿勢とする際の遮断機の作動態様を示す説明図
【
図6】第1遮断棒の第1遮断位置において、遮断機を上方から視た平面図
【
図7】第1遮断棒の第1許容位置において、遮断機を上方から視た平面図
【
図8】第1遮断棒の第1遮断位置において、遮断機を外方から視た拡大側面図(一部構成を省略して示す)
【
図9】第1遮断棒が第1遮断位置から第1許容位置に変更される過程において、遮断機を外方から視た拡大側面図(一部構成を省略して示す)
【
図10】第1遮断棒の第1許容位置において、遮断機を外方から視た拡大側面図(一部構成を省略して示す)
【
図11】第1遮断棒が第1許容位置から第1遮断位置に変更される過程において、遮断機を外方から視た拡大側面図(一部構成を省略して示す)
【
図12】第2遮断棒のロック状態が解除される直前において、遮断機を外方から視た拡大側面図(一部構成を省略して示す)
【
図13】ロック状態のロック機構が解除状態に変更される態様を示す説明図
【
図14】第2遮断棒のロック状態が解除された後において、遮断機を外方から視た拡大側面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態を
図1ないし
図14によって説明する。本実施形態では、遮断機10として、第1の通路11と第2の通路12の交差点に設置されるものを例示する。第1の通路11は、歩行者用の通路であり、第2の通路12はフォークリフト等の車両用の通路である。なお、各図において、第1の通路11の延びる方向をX軸方向で表し、第2の通路12の延びる方向をY軸方向で表し、鉛直方向をZ軸方向で表す。
【0015】
遮断機10は、
図4及び
図5に示されるように、第1遮断棒30と、第1シャフト41と、第2シャフト44と、伝達部材60と、第2遮断棒70と、を備えて構成されている。さらに、本実施形態では、遮断機10は、第2遮断棒70を第2遮断位置にロック可能なロック機構80と、第1シャフト41の回転方向を変換して第2シャフト44に伝達する変換機構40と、を備えている。遮断機10は、これらの各部が基台20に支持されるようにして一体的に設けられている。以下の説明では、遮断機10について、
図4の右側を内方として、左側を外方とし、
図5の右側を前方として、左側を後方として説明する。
【0016】
遮断機10は、
図1から
図3に示されるように、第1の通路11と第2の通路12の交差点において、第2の通路12を挟むように位置する角14A,14Bに一対設けられている。一対の遮断機10,10は、鏡面対称の構成とされており、以下の説明では角14Aに設置された遮断機10について説明するとともに、角14Bに設置された遮断機10についての説明を省略する。なお、遮断機10の設置態様はこれに限られず、適宜変更可能である。例えば、第1の通路11が一方通行の場合等においては、一の遮断機10を単独で用いてもよい。また、第2の通路12が対面通行の場合等において、互いに同様の構成とされる一対の遮断機を、相対する角14A,14Cに設けてもよい。
【0017】
遮断機10は、
図1から
図3に示されるように、基台20の内側面が第1の通路11に面するとともに、基台20の前面が第2の通路12に面するようにして設置される。そして、遮断機10は、基台20の上部に配された第1遮断棒30が、第1の通路11を横切る姿勢で第1の通路11の通行を遮断し、また、基台20の外側に配された第2遮断棒70が、第2の通路12を横切る姿勢で第2の通路12の通行を遮断する構成とされている。
【0018】
基台20は、
図4及び
図5に示されるように、略立方体形状を有し、交差点の角14A,14Bに設置された安全ポール15の上部に取り付けられている。基台20は、第1の通路11及び第2の通路12に張り出す寸法が低減された小型化タイプとされ、第1の通路11と第2の通路12の往来を妨げにくい仕様とされている。基台20は、安全ポール15の上部に取り付けられた状態で、第1の通路11を通行する通行人Pの腰位置付近に位置するものとされる。なお、
図1から
図3においては、基台20を簡略化して外形を描いている。
【0019】
さらに、基台20は、
図6及び
図7に示されるように、後述する第1遮断位置において第1遮断棒30を後方から支持する第1支持部21と、第1許容位置において第1遮断棒30のそれ以上の回動を規制する第1ストッパー部23と、第2起立位置において第2遮断棒70を後方から支持する第2支持部25と、第2遮断位置において第2遮断棒70のそれ以上の回動を規制する第2ストッパー部27と、を有している。第1ストッパー部23は、第1遮断棒30が第1許容位置に至る過程で押圧されると、内部の弾性体が弾性変形して、第1遮断棒30を第1遮断位置側に付勢する付勢力を付与可能とされる。
【0020】
第1遮断棒30は、
図6及び
図7に示されるように、第1シャフト41に対して取り付けられる長手状の第1取付板部31と、第1取付板部31の一端部から長手方向に沿って延出する第1棒状部材33と、を備える。第1遮断棒30は、第1シャフト41により基台20に対して回動可能に軸支され、第1棒状部材33が基台20から片持ち状に延出するように設けられている。以下、第1遮断棒30において、基台20から延出する側の端部を延出先端部30Aと呼ぶ。
【0021】
第1遮断棒30は、
図1及び
図2に示されるように、第1の通路11の通行を遮断する第1遮断位置と、第1遮断位置から進行方向前方に変位して第1の通路11の通行を許容する第1許容位置との間で回動可能とされる。なお、「進行方向前方」とは、第1の通路11を通行して第2の通路12を横断する通行人Pの進行方向のこととする。第1遮断棒30は、約90度の回転角を有し、第1遮断位置において長手方向をY軸方向に沿わせた姿勢で配されるとともに、第1許容位置において長手方向をX軸方向に沿わせた姿勢で配される。第1遮断棒30は、常態(外力が作用していない状態)では第1遮断位置に位置するように構成されている。本実施形態では、第1遮断棒30が第1遮断位置に復帰する動作には、主として第1シャフト41及び第2シャフト44を介して伝達される伝達部材60の重さが作用する。この第1遮断棒30の第1遮断位置への復帰動作については、後に説明する。
【0022】
第1遮断棒30は、
図6に示されるように、基台20の内側面付近にヒンジ部37を有し、基台20の内側面に沿って後方に屈曲変形可能な構成とされている。ヒンジ部37は、上下方向に沿って延びる回動軸を有し、第1遮断棒30は、ヒンジ部37の回動軸周りに、延出先端部30Aが水平方向に沿って後方に向けて回動可能とされている。言い換えれば、第1遮断棒30は、直線状に延びる直線状姿勢と、ヒンジ部37で屈曲した屈曲姿勢との間で変更可能な構成とされている。
図6においては、屈曲姿勢の第1遮断棒30を二点鎖線で示す。このヒンジ部37には、第1遮断棒30が直線状姿勢となるように付勢するコイルバネ38が設けられている。そして、第1遮断棒30は、自然状態では、直線状姿勢に保持されるとともに、外力が加えられることにより屈曲姿勢に変更されるようになっている。また、ヒンジ部37は、第1遮断棒30の延出先端部30A側を後方に向けて回動可能とする一方、前方に向けて回動不能に構成されている。このような構成により、第2の通路12を横断してきた通行人P、つまり、角14B側の遮断機10の前方から後方に向かって進行する通行人Pは、第1遮断棒30を屈曲姿勢として通過可能とされる(
図3参照)。
【0023】
第1シャフト41は、
図6及び
図7に示されるように、第1遮断棒30に対して取り付けられ、第1遮断位置と第1許容位置との間の回動軸を構成する。第1シャフト41は、Z軸方向に沿って延びる形をなし、図示しない固定部材を介して基台20に対して回転可能に固定されている。第1シャフト41は、上端部が第1遮断棒30に対して移動不能に接続される。また、第1シャフト41には、下端部に変換機構40を構成するかさ歯車である第1歯車42が設けられている。
【0024】
第2シャフト44は、
図4に示されるように、第1シャフト41の回転に連動して回転するように構成されている。第2シャフト44は、Y軸方向に沿って延びる形をなし、図示しない固定部材を介して基台20に対して回転可能に固定されている。第2シャフト44は、外端部が伝達部材60に対して移動不能に接続される。また、第2シャフト44には、内端部に変換機構40を構成するかさ歯車である第2歯車45が設けられている。
【0025】
第1シャフト41及び第2シャフト44は、
図4に示されるように、交差軸の関係に配置される。具体的には、第1シャフト41及び第2シャフト44は、軸角が90°となるように配置されている。
【0026】
変換機構40は、
図4に示されるように、第1シャフト41の回転方向を変換して第2シャフト44に伝達する構成とされている。変換機構40は、第1歯車42と第2歯車45で構成され、歯数比が1:1のマイタギヤとされる。変換機構40は、第1シャフト41が上方(第1遮断棒30側)から視て時計回りに回転すると、第2シャフト44が外方(第2遮断棒70側)から視て時計回りに回転し、第1シャフト41が上方から視て反時計回りに回転すると、第2シャフト44が外方から視て反時計回りに回転する構成とされている。そして、変換機構40は、第1シャフト41が所定の回転角で回転すると、これと同じ大きさの回転角で第2シャフト44が回転するように構成されている。
【0027】
伝達部材60は、
図6及び
図7に示されるように、第2シャフト44に対して取り付けられ、第2シャフト44からの動力を伝達するように構成されている。伝達部材60は、第2シャフト44に接続された本体部61と、本体部61から張り出して第2遮断棒70に動力を伝達するとともにロック機構80に動力を伝達するように構成された動力伝達部62と、を有する。本体部61には、常態において、下端部側に位置するようにして伝達部材側重り部63が設けられている。伝達部材60は、第1遮断棒30の第1遮断位置と第1許容位置との間の回動に連動して、第2シャフト44を軸として約90度の回転角を有して回動する。そして、伝達部材60は、第1遮断棒30の第1遮断位置において、伝達部材側重り部63が下方に位置する初期位置に配され(
図8参照)、第1遮断棒30の第1許容位置において、伝達部材側重り部63が後方に位置する回動位置に配される(
図10参照)。
【0028】
伝達部材側重り部63は、
図11に示されるように、伝達部材60において、第1遮断棒30のカウンターウェイトを構成する。伝達部材側重り部63は、第1シャフト41及び第2シャフト44を介して第1遮断棒30に作用する力の大きさが、第1遮断棒30が常態で第1遮断位置に位置するようなバランスで設けられている。
【0029】
動力伝達部62は、その形状を適宜設計可能であるが、本実施形態では、
図4及び
図6に示されるように、本体部61から上方に張り出し、その張り出し端から後方に張り出し、さらにその張り出し端から外方に張り出した形をなしている。動力伝達部62は、その張り出し端部に第2遮断棒伝達部65を有し、下面がロック機構伝達部67を構成する。第2遮断棒伝達部65は、伝達部材60が初期位置から回動位置に変更される際に、第2遮断棒70の被押圧部77を下方に向けて押圧可能に構成されている。ロック機構伝達部67は、伝達部材60が回動位置から初期位置に変更される際に、ロック機構80の歯止め部81を下方に向けて押圧可能に構成されている。第2遮断棒伝達部65及びロック機構伝達部67を介して、第2遮断棒70及びロック機構80に動力が伝達される態様については、後に説明する。
【0030】
第2遮断棒70は、
図5に示されるように、回動軸70Cを有して基台20に対して回動可能に軸支される長手状の第2取付板部71と、第2取付板部71の一端部から長手方向に沿って延出する第2棒状部材73と、第2取付板部71の他端部に設けられた第2重り部75と、を備える。第2遮断棒70は、第1シャフト41及び第2シャフト44から独立して基台20に対して回動可能に軸支され、第2棒状部材73が基台20から片持ち状に延出するように設けられている。以下、第2遮断棒70において、基台20から延出する側の端部を延出先端部70Aと呼び、その反対側の端部を延出基端部70Bと呼ぶ。
【0031】
第2重り部75は、
図14に示されるように、第2遮断棒70の延出基端部70Bにおいて、第2遮断棒70のカウンターウェイトを構成する。第2重り部75は、第2遮断棒70の回動軸70Cよりも延出基端部70B側の部分の重さにより作用する力の大きさが、第2遮断棒70の回動軸70Cよりも延出先端部70A側の部分の重さにより作用する力の大きさより大きくなるように設定されている。
【0032】
第2遮断棒70は、
図1及び
図2に示されるように、第2の通路12の通行を遮断する第2遮断位置と、第2遮断位置から起立して第2の通路12の通行を許容する第2起立位置との間で回動可能とされている。第2遮断棒70は、90度より小さい回転角を有し、第2遮断位置において、長手方向を水平方向に沿わせた姿勢で配され、第2起立位置において、長手方向を鉛直方向よりやや前方に倒れた姿勢で配される。第2遮断棒70は、自重により第2遮断位置から第2起立位置に起立するように構成されている。この第1遮断棒30の起立動作については、後に説明する。
【0033】
ロック機構80は、
図13に示されるように、第2遮断棒70を第2遮断位置にロック可能とされる。ロック機構80は、ラチェット爪82を有する歯止め部81と、ラチェットギヤ85とにより構成されている。ロック機構80は、歯止め部81が基台20に対して軸支され、ラチェットギヤ85が歯止め部81の下方において、第2遮断棒70に取り付けられている。
【0034】
歯止め部81は、
図13に示されるように、その一端部に、下方に向けて突出するようにしてラチェット爪82が設けられている。歯止め部81は、回動軸81Aを軸として、自重により一端部側が下方に回動するように構成されている。歯止め部81には、回動軸81Aより他端部側にラチェットギヤ85との係合を解除する係合解除部83が設けられている。係合解除部83は、その上面に伝達部材60のロック機構伝達部67が当接して、歯止め部81が外方から視て反時計回りに回動することで、ラチェット爪82とラチェットギヤ85との係合を解除する構成となっている。
【0035】
ラチェットギヤ85は、
図13に示されるように、第2遮断棒70が第2遮断位置から第2起立位置に向けて回動するとラチェット爪82に係合し、第2遮断棒70が第2起立位置から第2遮断位置に向けて回動するとラチェット爪82から離脱するように構成されている。具体的には、ラチェットギヤ85は、その上端部において、後方に向かって突出する複数の歯86が第2遮断棒70の回動軸70C周りに並んで配され、複数の歯86の後面がラチェット爪82と係合可能となっている。このため、ロック機構80は、第1遮断棒30が第1許容位置に変更される際に、第1遮断位置から90°より小さい回転角である複数の位置において、第2遮断棒70のロックを実現可能となっている。
【0036】
続いて、各部の作動態様について説明する。
図8に示される初期状態において、遮断機10は、第1遮断棒30が第1遮断位置に配されて第1の通路11を通行する通行人Pの通行を遮断し、第2遮断棒70が第2起立位置に配され、第2の通路12を通行する車両Vの通行を許容する状態となっている。
【0037】
図9及び
図10に示されるように、遮断機10は、第1遮断棒30が第1遮断位置から第1許容位置に変更されるのに伴って伝達部材60から伝達される動力を利用して、第2遮断棒70が第2起立位置から第2遮断位置に変更される。具体的には、第1遮断棒30は、第1の通路11を後方から前方に向けて進行する通行人Pに進行方向前方に向けて押され、延出先端部30Aが第1遮断位置から前方に向けて回動する(
図1参照)。そして、第1シャフト41が第1遮断棒30と連動して上方から視て時計回りに回転すると、変換機構40を介して第2シャフト44が外方から視て時計回りに回転する。すると、伝達部材60が第2シャフト44を回動軸として、第1遮断棒30と同期して初期位置から回動位置に向けて回動する。そして、伝達部材60の第2遮断棒伝達部65が第2遮断棒70の被押圧部77に当接し、第2遮断棒70に外方から視て時計回りに向かう動力が伝達されると、第2遮断棒70が第2遮断位置に向けて回動を開始する。なお、伝達部材60が回動を開始すると、ロック機構伝達部67が歯止め部81の係合解除部83から離間して、ラチェット爪82が下方に向けて回動するが、第2遮断棒70の上記回動動作中は、ラチェットギヤ85の歯86がラチェット爪82から離脱して、ロック機構80により第2遮断棒70の回動が妨げられることがない。そして、第1遮断棒30は、第1ストッパー部23と当接する位置かその手前において第1許容位置に至り、第1遮断棒30の回動が停止される。すると、伝達部材60が回動位置に至り、第2遮断棒70が第2遮断位置において回動を停止する。そして、通行人Pが第1遮断棒30の横を通過して、第1遮断棒30から手を放し、第2遮断棒70が第2重り部75の重さにより第2遮断位置から第2起立位置に向けて回動を開始すると、ロック機構80のラチェット爪82がラチェットギヤ85に係合して、第2遮断棒70が第2遮断位置にロックされる。
【0038】
そして、
図11に示されるように、遮断機10は、ロック機構80により第2遮断棒70が第2遮断位置にロックされた状態において、第1遮断棒30が第1許容位置から第1遮断位置に変更される。具体的には、通行人Pが第1遮断棒30から手を放すと、伝達部材60は自重により、回動位置から初期位置に向けて回動を開始する。伝達部材60における第2シャフト44を軸とする回動動作はバランスが適宜調整されており、伝達部材60は所定の時間を要して初期位置に復帰する。すると、第1遮断棒30は伝達部材60と同期して回動し、所定の時間を要して第1遮断位置に復帰する。この所定時間は、通行人Pが第2の通路12を横断するのに要する時間を勘案して適宜決定されている。そして、伝達部材60が第2シャフト44を回動軸として、回動位置から初期位置に向けて回動すると、変換機構40を介して第1シャフト41が上方から視て反時計回りに回転し、第1遮断棒30が第1遮断位置に復帰する。伝達部材60が回動を開始すると、第2遮断棒伝達部65が第2遮断棒70の被押圧部77から離間して、第2遮断棒70に伝達部材60からの動力が作用しなくなるが、第2遮断棒70はロック機構80により第2遮断位置にロックされて、所定時間が経過するまでの間、第2遮断位置に留まる。
【0039】
図12及び
図14に示されるように、遮断機10は、第1遮断棒30が第1遮断位置に変更される過程で、伝達部材60から伝達される動力を利用して、ロック機構80による第2遮断棒70のロックが解除される。本実施形態では、伝達部材60が、初期位置付近において歯止め部81に当接することで、ラチェット爪82とラチェットギヤ85との係合を解除する(
図13参照)。具体的には、伝達部材60が初期位置に近づくと、ロック機構伝達部67が歯止め部81の係合解除部83を下方に向けて押圧する。すると、回動軸81Aを挟んで係合解除部83とは反対側に位置するラチェット爪82が上方に向けて回動して、ラチェットギヤ85の歯86とかみ合わない位置に後退する。すると、ラチェット爪82とラチェットギヤ85との係合が解除され、ラチェットギヤ85がラチェット爪82に対して回動可能となる。伝達部材60が初期位置に至ると、第1遮断棒30は第1支持部21に支持されて回動を停止する。この時点で、第1の通路11の通行人Pが第2の通路12を横断するのに要する所定時間が経過する。
【0040】
そして、
図14に示されるように、遮断機10は、ロック機構80によるロックが解除された第2遮断棒70が、自重により第2遮断位置から第2起立位置に変更される。具体的には、第2遮断棒70は、重力の作用により、延出先端部70Aが上方に向けて回動を開始する。第2遮断棒70は、第2重り部75によりバランスが適宜調整されることで、速やかに第2起立位置に復帰する。そして、第2起立位置において、第2支持部25に支持され、第2遮断棒70の回動が停止する。以上により、遮断機10は、所定時間経過後に初期状態に復帰し、第2の通路12の車両Vの通行が再開される。
【0041】
続いて、本実施形態の効果について説明する。このような遮断機によれば、第1の通路11を通行する者が、第1遮断棒30を第1遮断位置から第1許容位置に変更することにより、第2遮断棒70を第2遮断位置に変更することができる。そして、第1遮断棒30が第1遮断位置から第1許容位置に変更された後には、第1遮断棒30が第1許容位置から第1遮断位置に変更されるとともに、自重により第2遮断棒70が第2遮断位置から第2起立位置に自動で変更されることとなる。このため、機械的な構成のみで2つの遮断棒30,70を同期させつつ動作させ、第1の通路11を通行する者が通行する際に、第2の通路12を通行する者の通行を遮断することができ、両者が交錯することなく、安全に通路を通行することができる。
【0042】
ところで、第1遮断棒30による遮断状態を解除して第1の通路11の通行を許容するための構成として、例えば、第1許容位置を第1遮断位置から起立した位置とする構成も考えられる。しかしながら、そのような構成では、第1遮断棒30が第1遮断位置に復帰する際に、第1遮断棒30の起立角度が小さくなる程、第1遮断棒30に作用する重力により第1遮断棒30の回転速度が大きくなる。一方、上記構成のように、第1遮断棒30の第1許容位置が第1遮断位置から進行方向前方に変位した位置とされる構成によれば、第1遮断棒30が第1遮断位置に復帰する際に、第1遮断棒30に作用する重力の影響を小さくすることができ、第1遮断棒30の回転速度を調整し易い。このため、第1遮断棒30の回転速度を適宜調整するためのダンパ等の部品を廃止ないし小型化することができ、遮断機10の小型化に寄与することができる。さらに、第1遮断棒30の第1遮断位置と第2遮断棒70の第2遮断位置とが重なる姿勢となり、各遮断棒30,70の可動スペースの省スペース化に寄与することができる。
【0043】
また、本実施形態では、第2遮断棒70を第2遮断位置にロック可能なロック機構80を更に備え、ロック機構80により第2遮断棒70が第2遮断位置にロックされた状態において、第1遮断棒30が第1許容位置から第1遮断位置に変更され、第1遮断棒30が第1遮断位置に変更される過程で、伝達部材60から伝達される動力を利用して、ロック機構80による第2遮断棒70のロックが解除され、ロック機構80によるロックが解除された第2遮断棒70が、自重により第2遮断位置から第2起立位置に変更されるように構成されている。このような遮断機10によれば、第1遮断棒30が第1遮断位置から第1許容位置に変更された後において、所定時間経過後に、第2遮断棒70が第2遮断位置から第2起立位置に自動で変更されることとなる。このため、第1の通路11を通行する者が通行する際に、所定時間が経過するまでの間、第2の通路12を通行する者の通行を遮断することができ、より一層好適に、両者が交錯することなく、安全に通路を通行することができる。
【0044】
また、本実施形態では、伝達部材60は、第2シャフト44に接続された本体部61と、本体部61から張り出して第2遮断棒70に動力を伝達するとともにロック機構80に動力を伝達するように構成された動力伝達部62と、を有する。動力伝達部62から第2遮断棒70とロック機構80の双方に動力を伝達することにより、第2遮断棒70に動力を伝達する部分とロック機構80に動力を伝達する部分を別体的に設ける構成に比して、部品点数を低減することができるとともに、遮断機10の小型化及び軽量化に寄与することができる。
【0045】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、遮断機が、互いに交差する第1の通路と第2の通路の通行を遮断する構成を例示したがこれに限られない。例えば、遮断機は、互いに平行する第1の通路と第2の通路の通行を遮断する構成であってもよい。また、第1の通路を通行する者は、歩行者に限られず車両であってもよい。また、第2の通路を通行する者は、車両に限られず歩行者や搬送物等であってもよい。
(2)上記実施形態では、第1シャフト及び第2シャフトが交差軸の関係に配置されるものを例示したが、第1シャフト及び第2シャフトは食い違い軸の関係に配置されてもよい。この場合には、第1シャフトの回転方向を変換して第2シャフトに伝達する変換機構としてハイポイドギア等を用いることができる。また、上記実施形態以外にも、第1シャフトと第2シャフトの交差角度は、第1の通路と第2の通路の交差角度に応じて適宜変更可能である。
(3)上記実施形態以外にも、各部の形状、位置、構成は適宜変更可能である。例えば、伝達部材の動力伝達部は、第2遮断棒伝達部とロック機構伝達部とが別体的に設けられていてもよい。また、各部の変位に抵抗を付与するダンパ等を備えていてもよい。また、ロック機構は、ラチェット爪とラチェットギヤとの嵌合に限られず、伝達部材の動力により解除可能な種々のタイプのロック機構を採用することができる。
【符号の説明】
【0046】
10…遮断機、11…第1の通路、12…第2の通路、30…第1遮断棒、41…第1シャフト、44…第2シャフト、60…伝達部材、61…本体部、62…動力伝達部、70…第2遮断棒、80…ロック機構