(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-24
(45)【発行日】2022-02-01
(54)【発明の名称】歯車ポンプまたはモータ
(51)【国際特許分類】
F04C 2/18 20060101AFI20220125BHJP
F03C 2/08 20060101ALI20220125BHJP
【FI】
F04C2/18 311C
F04C2/18 B
F04C2/18 321C
F03C2/08 A
(21)【出願番号】P 2018151145
(22)【出願日】2018-08-10
【審査請求日】2020-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100101753
【氏名又は名称】大坪 隆司
(72)【発明者】
【氏名】金谷 顕一
(72)【発明者】
【氏名】河野 隆宏
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-223197(JP,A)
【文献】特開2001-336482(JP,A)
【文献】米国特許第09068568(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 2/08- 2/28
F03C 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボディに形成された孔部に対して互いに噛合した状態で収納される一対の歯車と、前記孔部に作動液を供給するための吸込通路と、前記孔部から作動液を排出するための吐出通路と、を備えた歯車ポンプまたはモータにおいて、
前記吸込通路
の前記孔部
と連通する側の第1開口部
は、前記歯車の歯幅方向の寸法が、前記歯車の歯幅方向と直交する方向の寸法より大きい形状
であり、
前記吸込通路の作動液の供給側の第2開口部から前記第1開口部に至る前記吸込通路の断面積が一定であることを特徴とする歯車ポンプまたはモータ。
【請求項2】
請求項1に記載の歯車ポンプまたはモータにおいて、
前記
第1開口部の前記歯車の歯幅方向の寸法
が、前記
第2開口部の前記歯車の歯幅方向の寸法より大き
いとともに、
前記
第1開口部の前記歯車の歯幅方向と直交する方向の寸法
が、前記
第2開口部の前記歯車の歯幅方向と直交する方向の寸法より小さ
い歯車ポンプまたはモータ。
【請求項3】
請求項2に記載の歯車ポンプまたはモータにおいて、
前記
第2開口部の形状は
円であり、
前記
第1開口部の前記歯車の歯幅方向の寸法
が、前記円の直径より大き
く、
前記
第1開口部の前記歯車の歯幅方向と直交する方向の寸法
が、前記円の直径より小さ
い歯車ポンプまたはモータ。
【請求項4】
請求項1から請求項
3のいずれかに記載の歯車ポンプまたはモータにおいて、
前記歯車は、平歯車であり、
前記
第1開口部は、前記平歯車に対向する領域において、前記平歯車の歯幅方向と直交する方向の両端縁が、前記平歯車の歯先歯筋と平行
の形状を有する歯車ポンプまたはモータ。
【請求項5】
請求項1から請求項
3のいずれかに記載の歯車ポンプまたはモータにおいて、
前記歯車は、はすば歯車であり、
前記
第1開口部は、前記はすば歯車に対向する領域において、前記はすば歯車の歯幅方向と直交する方向の寸法が、噛合状態にある一対のはすば歯車が先に離隔する側において大きく、噛合状態にある一対のはすば歯車が後で離隔する側において小さい歯車ポンプまたはモータ。
【請求項6】
請求項
5に記載の歯車ポンプまたはモータにおいて、
前記
第1開口部は、前記はすば歯車に対向する領域において、前記はすば歯車の歯幅方向と直交する方向の両端縁
が正弦曲線
の形状を有する歯車ポンプまたはモータ。
【請求項7】
ボディに形成された孔部に対して互いに噛合した状態で収納される一対のはすば歯車と、前記孔部に作動液を供給するための吸込通路と、前記孔部から作動液を排出するための吐出通路と、を備えた歯車ポンプまたはモータにおいて、
前記吸込通路
の前記孔部
と連通する側の第1開口部は、前記はすば歯車に対向する領域において、前記はすば歯車の歯幅方向と直交する方向の寸法が、噛合状態にある一対のはすば歯車が先に離隔する側において大きく、噛合状態にある一対のはすば歯車が後で離隔する側において小さい
とともに、
前記吸込通路の作動液の供給側の第2開口部から前記第1開口部に至る前記吸込通路の断面積が一定であることを特徴とする歯車ポンプまたはモータ。
【請求項8】
請求項
7に記載の歯車ポンプまたはモータにおいて、
前記
第1開口部は、前記はすば歯車に対向する領域において、前記はすば歯車の歯幅方向と直交する方向の両端縁
が正弦曲線
の形状を有する歯車ポンプまたはモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、各種の機器において動力変換のため使用される油圧歯車ポンプ等の歯車ポンプまたはモータに関する。
【背景技術】
【0002】
油圧歯車ポンプは、ボディに形成された孔部に対して互いに噛合した状態で収納される一対の平歯車と、これらの平歯車を固定する駆動軸および従動軸と、これらの平歯車が漸次離反する低圧領域に配設され孔部に作動液としての作動油を供給するための吸込通路、平歯車が漸次噛合する高圧領域に配設され孔部から作動油を排出するための吐出通路とを備えている(特許文献1参照)。
【0003】
また、平歯車にかえ、閉じ込みのない連続的な歯当たりと静音性を特徴とするはすば歯車を用いた油圧はすば歯車ポンプも提案されている(特許文献2参照)。
【0004】
図14は、従来の平歯車を利用した油圧歯車ポンプのボディ11付近の側断面図である。
【0005】
油圧歯車ポンプは、ボディ11に形成された眼鏡孔等と呼称される孔部19内に、互いに噛合する一対の平歯車23、24を収納した構成を有する。平歯車23は、図示しないモータの駆動により回転する駆動軸21に固定されている。また、平歯車24は、従動軸22に固定されている。これらの平歯車23、24は、駆動軸21の駆動により、互いに噛合した状態で、
図14に示す矢印方向に回転する。
【0006】
ボディ11に形成された孔部19における一対の平歯車23、24の歯が漸次離反する低圧領域側には、孔部19に作動油を供給するための吸込通路31が形成されている。また、ボディ11に形成された孔部19における一対の平歯車23、24の歯が漸次噛合する高圧領域側には、孔部19から作動油を排出するための吐出通路33が形成されている。
【0007】
図15は、
図14のB-B断面矢視図および吸込通路31を孔部19側と外部側から見た図である。
【0008】
この図に示すように、吸込通路31は、その断面が円形の形状を有する。なお、吐出通路33も、吸込通路31と同様、その断面が円形の形状を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2008-163759号公報
【文献】国際公開第2014/141377号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このような油圧歯車ポンプにおいてポンプの容量を大きくする場合には、ポンプが吸い込む作動油流量も増加することから、吸込通路31を大きく確保する必要がある。このとき、上述したように、吸込通路31の断面形状は円形であり、吸込通路31の開口部が孔部19における低圧領域付近に干渉することになる。
図14に示す領域Lは、孔部19の内周面と平歯車23、24の歯先とのシール作用により、作動油が高圧領域側から低圧領域側に漏れることを防止するシール領域となっている。このため、吸込通路31の断面積を大きくした場合には、吸込通路31による開口部がシール領域Lと干渉することになり、シール領域Lを十分確保できないことになる。このシール領域Lが小さくなった場合には、油圧歯車ポンプによる実吐出量と理論吐出量との比であるポンプ容量効率が悪化するという問題が生ずる。
【0011】
これに対して、ポンプの容量を大きくしたにもかかわらず吸込通路31を大きく確保しなかった場合には、開口面積が小さいことから吸込時の作動油の流速が増加し、キャビテーションを生ずるという問題が発生する。
【0012】
この発明は上記課題を解決するためになされたものであり、流入通路の断面積を大きくしたときにも、シール領域を十分に確保し、ポンプ容量効率を維持して作動液を好適に送液することが可能な歯車ポンプまたはモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に記載の発明は、ボディに形成された孔部に対して互いに噛合した状態で収納される一対の歯車と、前記孔部に作動液を供給するための吸込通路と、前記孔部から作動液を排出するための吐出通路と、を備えた歯車ポンプまたはモータにおいて、前記吸込通路における前記孔部に対する開口部を、前記歯車の歯幅方向の寸法が、前記歯車の歯幅方向と直交する方向の寸法より大きい形状とすることを特徴とする。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記吸込通路における前記孔部に対する開口部の前記歯車の歯幅方向の寸法を、前記吸込通路における作動液の供給側の開口部の前記歯車の歯幅方向の寸法より大きくするとともに、前記吸込通路における前記孔部に対する開口部の前記歯車の歯幅方向と直交する方向の寸法を、前記吸込通路における作動液の供給側の開口部の前記歯車の歯幅方向と直交する方向の寸法より小さくする。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記吸込通路における作動液の供給側の開口部の形状は円形であり、前記吸込通路における前記孔部に対する開口部の前記歯車の歯幅方向の寸法を、前記円の直径より大きくするとともに、前記吸込通路における前記孔部に対する開口部の前記歯車の歯幅方向と直交する方向の寸法を、前記円の直径より小さくする。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の発明において、前記吸込通路における作動液の供給側の開口部から前記吸込通路における前記孔部に対する開口部に至る前記吸込通路の断面積を一定とした。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の発明において、前記歯車は、平歯車であり、前記吸込通路における前記孔部に対する開口部は、前記平歯車に対向する領域において、前記平歯車の歯幅方向と直交する方向の両端縁が、前記平歯車の歯先歯筋と平行となる形状を有する。
【0018】
請求項6に記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の発明において、前記歯車は、はすば歯車であり、前記吸込通路における前記孔部に対する開口部は、前記はすば歯車に対向する領域において、前記はすば歯車の歯幅方向と直交する方向の寸法が、噛合状態にある一対のはすば歯車が先に離隔する側において大きく、噛合状態にある一対のはすば歯車が後で離隔する側において小さい。
【0019】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の発明において、前記吸込通路における前記孔部に対する開口部は、前記はすば歯車に対向する領域において、前記はすば歯車の歯幅方向と直交する方向の両端縁が、前記はすば歯車の歯先歯筋と対応する正弦曲線となる形状を有する。
【0020】
請求項8に記載の発明は、ボディに形成された孔部に対して互いに噛合した状態で収納される一対のはすば歯車と、前記孔部に作動液を供給するための吸込通路と、前記孔部から作動液を排出するための吐出通路と、を備えた歯車ポンプまたはモータにおいて、前記吸込通路における前記孔部に対する開口部は、前記はすば歯車に対向する領域において、前記はすば歯車の歯幅方向と直交する方向の寸法が、噛合状態にある一対のはすば歯車が先に離隔する側において大きく、噛合状態にある一対のはすば歯車が後で離隔する側において小さいことを特徴とする。
【0021】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の発明において、前記吸込通路における前記孔部に対する開口部は、前記はすば歯車に対向する領域において、前記はすば歯車の歯幅方向と直交する方向の両端縁が、前記はすば歯車の歯先歯筋と対応する正弦曲線となる形状を有する。
【発明の効果】
【0022】
請求項1に記載の発明によれば、孔部内面と歯車の歯先とによるシール領域を確保しながら、吸込通路の断面積を大きくすることができる。このため、作動液の流量が減少してポンプ容積効率が悪化することを防止することが可能となるとともに、吸込不良の発生を抑えてキャビテーションを防止し、装置の長寿命化を実現することが可能となる。
【0023】
請求項2に記載の発明によれば、吸込通路の断面積を一定に維持しながら、開口部の歯車の歯幅方向の寸法を大きくすることで、歯幅方向と直交する方向の寸法を小さくすることが可能となる。このため、孔部内面と歯車の歯先とによるシール領域を確保しながら吸込通路の断面積を大きくする構成を効率的に実現することが可能となる。
【0024】
請求項3に記載の発明によれば、吸込通路と作動液の供給管等との接続を、一般的な機器を使用して行うことが可能となる。
【0025】
請求項4に記載の発明によれば、吸込通路から孔部に対してスムースに作動液を供給することが可能となる。
【0026】
請求項5に記載の発明によれば、一対の歯車として平歯車を使用する場合において、孔部内面と歯車の歯先とによるシール領域を確保しながら吸込通路の断面積を大きくする構成をさらに効率的に実現することが可能となる。
【0027】
請求項6から請求項9に記載の発明によれば、一対の歯車としてはすば歯車を使用する場合において、孔部内面と歯車の歯先とによるシール領域を確保しながら吸込通路の断面積を大きくする構成をさらに効率的に実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】この発明の第1実施形態に係る歯車ポンプの縦断面図である。
【
図3】
図2のB-B断面矢視図および吸込通路32を孔部19側と外部側から見た図である。
【
図4】吸込通路32のボディ11における孔部19側の形状を示す説明図である。
【
図5】この発明の第1実施形態の第1変形例に係る
図2のB-B断面矢視図および吸込通路32を孔部19側と外部側から見た図である。
【
図6】この発明の第1実施形態の第1変形例に係る吸込通路32のボディ11における孔部19側の形状を示す説明図である。
【
図7】この発明の第1実施形態の第2変形例に係る吸込通路32のボディ11における孔部19側の形状を示す説明図である。
【
図8】この発明の第2実施形態に係る歯車ポンプの縦断面図である。
【
図10】
図9のB-B断面矢視図および吸込通路32を孔部19側と外部側から見た図である。
【
図11】吸込通路32のボディ11における孔部19側の形状を示す説明図である。
【
図12】この発明の第2実施形態の変形例に係る吸込通路32のボディ11における孔部19側の形状を示す説明図である。
【
図13】この発明の第2実施形態のさらに別の変形例に係る吸込通路32のボディ11における孔部19側の形状を示す説明図である。
【
図14】従来の歯車ポンプのボディ11付近の側断面図である。
【
図15】
図14のB-B断面矢視図および吸込通路31を孔部19側と外部側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、この発明の第1実施形態に係る歯車ポンプの縦断面図であり、
図2はそのA-A断面矢視図である。
【0030】
この歯車ポンプは、作動液として作動油を使用し、この作動油を一対の平歯車23、24の作用により送液する油圧歯車ポンプであり、フロントカバー12およびリアカバー13によりガスケット14を介して挟持されたボディ11と、このボディ11に形成された眼鏡孔等と呼称される孔部19内に収納された互いに噛合する一対の平歯車23、24とを有する。平歯車23は、図示しないモータの駆動により回転する駆動軸21に固定されている。また、平歯車24は、従動軸22に固定されている。駆動軸21および従動軸22の一端は、フロントカバー12に形成された軸受孔17にブッシュ15を介して軸支されており、駆動軸21および従動軸22の他端は、リアカバー13に形成された軸受孔18にブッシュ16を介して軸支されている。平歯車23、24は、駆動軸21の駆動により、互いに噛合した状態で、
図2に示す矢印方向に回転する。
【0031】
ボディ11に形成された孔部19における一対の平歯車23、24の歯が漸次離反する低圧領域側には、孔部19に作動油を供給するための吸込通路32が形成されている。また、ボディ11に形成された孔部19における一対の平歯車23、24の歯が漸次噛合する高圧領域側には、孔部19から作動油を排出するための吐出通路33が形成されている。なお、吐出通路33を駆動軸21および従動軸22の軸心方向であるX方向(
図2における紙面に垂直な方向)に向けて形成してもよい。
【0032】
図3は、
図2のB-B断面矢視図および吸込通路32を孔部19側(
図2における右側)と外部側(
図2における左側)から見た図である。また、
図4は、吸込通路32のボディ11における孔部19側の形状を示す説明図である。なお、
図4における矢印Tは、平歯車23、24と対向する領域を示している。
【0033】
これらの図に示すように、吸込通路32の断面形状は、ボディ11における孔部19側においては長方形であり、ボディ11における外側(作動油の供給側)では円形となっている。そして、吸込通路32の形状は、ボディ11における孔部19側の長方形と外側の円とを滑らかに接続する形状となっている。なお、吸込通路32における作動油の供給側の形状を円形とすることにより、この吸込通路32を作動油の供給管等と接続するときに、一般的な機器を使用して行うことが可能となる。
【0034】
吸込通路32におけるボディ11の孔部19側の長方形は、平歯車23、24の歯幅方向(X方向)の寸法が、平歯車23、24の歯幅方向と直交する方向(Y方向)の寸法より大きくなっている。すなわち、この長方形の長辺は平歯車23、24の歯幅方向を向き、短辺は歯幅方向と直交する方向を向いている。
【0035】
また、吸込通路32におけるボディ11の孔部19側の長方形は、平歯車23、24の歯幅方向(長辺方向)の寸法が、吸込通路32におけるボディ11の外側の直径より大きくなっており、平歯車23、24の歯幅方向と直交する方向(短辺方向)の寸法が吸込通路32におけるボディ11の外側の直径より小さくなっている。
【0036】
そして、吸込通路32における外側(作動油の供給側)の開口部から吸込通路32における孔部19に対する開口部に至る吸込通路32の断面積は、略同一となっている。
【0037】
吸込通路32の形状をこのような形状とすることにより、
図2に示す孔部19の内周面と平歯車23、24の歯先とのシール領域Lを十分に確保しながら、吸込通路32の断面積を大きくすることができる。このため、作動油の流量が減少してポンプ容積効率が悪化することを防止することが可能となるとともに、吸込不良の発生を抑えて長寿命化を実現することが可能となる。
【0038】
また、吸込通路32の断面積を一定に維持しながら、吸込通路32における孔部19に対する開口部の平歯車23、24の歯幅方向の寸法を大きくすることで、歯幅方向と直交する方向の寸法を小さくすることが可能となる。このため、孔部19内面と平歯車23、24の歯先とによるシール領域Lを確保しながら吸込通路32の断面積を大きくする構成を効率的に実現することが可能となる。
【0039】
そして、吸込通路32における作動油の供給側の開口部から吸込通路32における孔部19に対する開口部に至る吸込通路32の断面積を略同一とすることにより、吸込通路32から孔部19に対してスムースに作動油を供給することが可能となる。
【0040】
なお、上述した実施形態においては、吸込通路32をボディ11における孔部19側の長方形と外側の円とを滑らかに接続する形状としている。しかしながら、吸込通路31を、長方形と円とを階段状に接続する形状としてもよい。また、長方形と円とを接続する形状以外の形状としてもよい。
【0041】
図5は、この発明の第1実施形態の第1変形例に係る
図2のB-B断面矢視図および吸込通路32を孔部19側と外部側から見た図である。また、
図6は、この発明の第1実施形態の第1変形例に係る吸込通路32のボディ11における孔部19側の形状を示す説明図である。
【0042】
上述した第1実施形態においては、吸込通路32のボディ11における孔部19側の形状が長方形であるのに対し、この第1変形例においては、吸込通路32のボディ11における孔部19側の形状が楕円形となっている。その他の構成は上述した構成と同様である。
【0043】
このような構成を採用した場合においては、吸込通路32のボディ11における孔部19側の形状が、
図6における矢印Tで示す平歯車23、24と対向する領域において、
図4に示す長方形に近い形になることから、
図3および
図4に示す実施形態と近い作用効果を奏することになる。
【0044】
図7は、この発明の第1実施形態の第2変形例に係る吸込通路32のボディ11における孔部19側の形状を示す説明図である。
【0045】
図4に示す実施形態においては、吸込通路32のボディ11における孔部19側の形状が長方形であり、
図6に示す実施形態においては、吸込通路32のボディ11における孔部19側の形状が楕円形であるのに対し、この第2変形例においては、吸込通路32のボディ11における孔部19側の形状が長方形と円形とを組み合わせた形状となっている。その他の構成は上述した構成と同様である。
【0046】
このような構成を採用した場合においては、吸込通路32のボディ11における孔部19側の形状が、
図6における矢印Tで示す平歯車23、24と対向する領域において、
図4に示す長方形と同等の形になることから、
図3および
図4に示す実施形態と同等の作用効果を奏することになる。
【0047】
次に、この発明の他の実施形態について説明する。
図8は、この発明の第2実施形態に係る歯車ポンプの縦断面図であり、
図9はそのA-A断面矢視図である。
【0048】
この歯車ポンプは、作動液として作動油を使用し、この作動油を一対のはすば歯車25、26の作用により送液する油圧歯車ポンプであり、フロントカバー12およびリアカバー13により挟持されたボディ11と、このボディ11に形成された眼鏡孔等と呼称される孔部19内に収納された互いに噛合する一対のはすば歯車25、26と、孔部19内において一対のはすば歯車25、26を挟持するサイドプレート27、28とを有する。はすば歯車25は、図示しないモータの駆動により回転する駆動軸21に固定されている。また、はすば歯車26は、従動軸22に固定されている。駆動軸21および従動軸22の一端は、サイドプレート27に形成された軸受孔17にブッシュ15を介して軸支されており、駆動軸21および従動軸22の他端は、サイドプレート28に形成された軸受孔18にブッシュ16を介して軸支されている。はすば歯車25、26は、駆動軸21の駆動により、互いに噛合した状態で、
図9に示す矢印方向に回転する。
【0049】
ボディ11に形成された孔部19における一対のはすば歯車25、26の歯が漸次離反する低圧領域側には、孔部19に作動油を供給するための吸込通路32が形成されている。また、ボディ11に形成された孔部19における一対のはすば歯車25、26の歯が漸次噛合する高圧領域側には、孔部19から作動油を排出するための吐出通路33が形成されている。なお、吐出通路33を駆動軸21および従動軸22の軸心方向であるX方向(
図9における紙面に垂直な方向)に向けて形成してもよい。
【0050】
図10は、
図9のB-B断面矢視図および吸込通路32を孔部19側(
図9における右側)と外部側(
図9における左側)から見た図である。また、
図11は、吸込通路32のボディ11における孔部19側の形状を示す説明図である。なお、
図11における矢印Tは、はすば歯車25、26と対向する領域を示している。
【0051】
図11に示すように、吸込通路32の断面形状は、ボディ11における孔部19側においては、対向する2辺がはすば歯車25、26の歯先歯筋と対応する正弦曲線39となり、他の対向する2辺が直線状となる開口形状となっている。そして、この開口形状は、はすば歯車25、26に対向する領域Tにおいて、はすば歯車25、26の歯幅方向と直交する方向(
図8、
図9、
図10に示すY方向であり、
図11の上下方向)の寸法が、噛合状態にある一対のはすば歯車25、26が一歯筋の中で先に離隔する側において大きく、噛合状態にある一対のはすば歯車25、26が一歯筋の中で後で離隔する側において小さい形状となっている。また、吸込通路32の断面形状は、ボディ11における外側(作動油の供給側)では円形となっている。そして、吸込通路32の形状は、ボディ11における孔部19側の開口形状と外側の円とを滑らかに接続する形状となっている。なお、吸込通路32における作動油の供給側の形状を円形とすることにより、この吸込通路32を作動油の供給管等と接続するときに、一般的な機器を使用して行うことが可能となる。
【0052】
吸込通路32におけるボディ11の孔部19側の開口形状は、はすば歯車25、26の歯幅方向(X方向)の寸法が、はすば歯車25、26の歯幅方向と直交する方向(Y方向)の寸法より大きくなっている。
【0053】
また、吸込通路32におけるボディ11の孔部19側の開口形状は、はすば歯車25、26の歯幅方向の寸法が、吸込通路32におけるボディ11の外側の直径より大きくなっており、はすば歯車25、26の歯幅方向と直交する方向の寸法が吸込通路32におけるボディ11の外側の直径より小さくなっている。
【0054】
そして、吸込通路32における外側(作動油の供給側)の開口部から吸込通路32における孔部19に対する開口部に至る吸込通路32の断面積は、略同一となっている。
【0055】
吸込通路32の形状を、その2辺がはすば歯車25、26の歯先歯筋と対応する正弦曲線39となる形状とすることにより、
図9に示す孔部19の内周面とはすば歯車25、26の歯先とのシール領域Lを十分に確保しながら、吸込通路32の断面積を大きくすることができる。このため、作動油の流量が減少してポンプ容積効率が悪化することを防止することが可能となるとともに、吸込不良の発生を抑えて長寿命化を実現することが可能となる。
【0056】
また、吸込通路32の断面積を一定に維持しながら、吸込通路32における孔部19に対する開口部のはすば歯車25、26の歯幅方向の寸法を大きくすることで、歯幅方向と直交する方向の寸法を小さくすることが可能となる。このため、孔部19内面とはすば歯車25、26の歯先とによるシール領域Lを確保しながら吸込通路32の断面積を大きくする構成を効率的に実現することが可能となる。
【0057】
そして、吸込通路32における作動油の供給側の開口部から吸込通路32における孔部19に対する開口部に至る吸込通路32の断面積を略同一とすることにより、吸込通路32から孔部19に対してスムースに作動油を供給することが可能となる。
【0058】
なお、
図11に示す吸込通路32におけるボディ11の孔部19側の開口形状は、はすば歯車25、26と対向する領域におけるはすば歯車25、26の歯幅方向の両端部が直線状となっているが、開口形状の両端部をはすば歯車25、26と対向する領域から外側に至る曲線状の形状としてもよい。
【0059】
図12は、この発明の第2実施形態の変形例に係る吸込通路32のボディ11における孔部19側の形状を示す説明図である。
【0060】
上述した第2実施形態においては、吸込通路32のボディ11における孔部19側の形状が、その2辺がはすば歯車25、26の歯先歯筋と対応する正弦曲線39となる形状であるのに対し、この変形例においては、2辺が直線状となっている。その他の構成は上述した構成と同様である。
【0061】
このような構成を採用した場合においては、吸込通路32のボディ11における孔部19側の形状が、
図11に示す開口形状に近い形になることから、
図11に示す実施形態と近い作用効果を奏することになる。
【0062】
図13は、この発明の第2実施形態のさらに別の変形例に係る吸込通路32のボディ11における孔部19側の形状を示す説明図である。
【0063】
歯車ポンプの容量等によっては、はすば歯車25、26の歯先歯筋がはすば歯車25、26の歯幅方向に対して大きな角度となる場合がある。この時には、吸込通路32の断面形状は、ボディ11における孔部19側においては、対向する2辺がはすば歯車25、26の歯先歯筋と対応する、はすば歯車25、26の歯幅方向に対して大きな角度をもつ正弦曲線38となる。この場合においては、上述した各実施形態とは異なり、吸込通路32におけるボディ11の孔部19側の開口形状は、はすば歯車25、26の歯幅方向(X方向)の寸法が、はすば歯車25、26の歯幅方向と直交する方向(Y方向)の寸法より小さくなっている。
【0064】
しかしながら、このような構成を採用した場合においても、吸込通路32の断面形状が、対向する2辺がはすば歯車25、26の歯先歯筋と対応する正弦曲線38となっていることから、吸込通路32の断面形状とはすば歯車25、26の歯先歯筋とが一致することにより、シール領域を確保しながら吸込通路の断面積を大きくする構成を実現することが可能となる。
【0065】
なお、上述した第1、第2実施形態に係る歯車ポンプは、吐出通路33より高圧の作動油を導入し、これにより駆動軸21から回転トルクを取り出して外部負荷を駆動するとともに、定圧となった作動油を吸込通路32から吐出するというモータ作用を奏する歯車モータとして機能させることもできる。すなわち、上述した各実施形態における歯車ポンプは、歯車モータでもある。
【0066】
また、上述した第1、第2実施形態においては、作動液として作動油を使用しているが、その他の液体や流動体あるいは半流動体などの、作動油以外の作動液を使用してもよい。
【符号の説明】
【0067】
11 ボディ
12 フロントカバー
13 リアカバー
15 ブッシュ
16 ブッシュ
17 軸受孔
18 軸受孔
19 孔部
21 駆動軸
22 従動軸
23 平歯車
24 平歯車
25 はすば歯車
26 はすば歯車
32 吸込通路
33 吐出通路
38 正弦曲線
39 正弦曲線