(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-24
(45)【発行日】2022-02-01
(54)【発明の名称】車体構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/08 20060101AFI20220125BHJP
B62D 21/15 20060101ALI20220125BHJP
B60R 19/24 20060101ALI20220125BHJP
【FI】
B62D25/08 M
B62D21/15 B
B60R19/24 R
B60R19/24 Q
(21)【出願番号】P 2018180470
(22)【出願日】2018-09-26
【審査請求日】2021-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】山田 健
(72)【発明者】
【氏名】松下 幸治
(72)【発明者】
【氏名】松岡 秀典
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-087766(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00-25/08
B62D 25/14-29/04
B60R 19/04,19/24,19/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体のエンド部に設けられ、車幅方向に離間した左右一対のクラッシュカンと、
上記クラッシュカンの先端部間を車幅方向に延びて連結するバンパレインフォースメントとを備えた車体構造であって、
上記クラッシュカンはセットプレートを介して車体側サイドフレームに固定され、
上記クラッシュカンまたは上記セットプレートの車幅方向内側から、当該クラッシュカンとの間に車幅方向に空間を形成して斜め方向に延び、上記バンパレインフォースメントに連結されるブレースを設け、
上記ブレースは上記バンパレインフォースメントの下面に接合固定され
、
上記ブレースは、上記バンパレインフォースメントの車体に近接する側の面に接合固定される上下方向面部を備えたことを特徴とする
車体構造。
【請求項2】
車体のエンド部に設けられ、車幅方向に離間した左右一対のクラッシュカンと、
上記クラッシュカンの先端部間を車幅方向に延びて連結するバンパレインフォースメントとを備えた車体構造であって、
上記クラッシュカンはセットプレートを介して車体側サイドフレームに固定され、
上記クラッシュカンまたは上記セットプレートの車幅方向内側から、当該クラッシュカンとの間に車幅方向に空間を形成して斜め方向に延び、上記バンパレインフォースメントに連結されるブレースを設け、
上記ブレースは上記バンパレインフォースメントの下面に接合固定され、
上記ブレースは、その基端部が上記クラッシュカンの上下方向の断面中心よりも下方において上記セットプレートに連結された
ことを特徴とする
車体構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車体のエンド部に設けられ、車幅方向に離間した左右一対のクラッシュカンと、上記クラッシュカンの先端部間を車幅方向に延びて連結するバンパレインフォースメントとを備えた車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両前部のフロントバンパ、または、車両後部のリヤバンパは、バンパレインフォースメントおよびクラッシュカンのみにより衝撃荷重を吸収できる程度の軽衝突であれば、車体の変形をなくすよう構成されており、当該軽衝突時には、上記バンパレインフォースメントとクラッシュカンのみの交換で対応することができるように構成されている。
【0003】
一方、SUV(スポーツユーティリティビークル)のように車高が比較的高い車両の場合、衝突時においてはバンパの下部に荷重が集中することになる。この場合、バンパレインフォースメントとクラッシュカンとが、車体側サイドフレーム(フロントサイドフレームまたはリヤサイドフレーム参照)への接続部を中心として下方へ回動変位する挙動が発生する可能性がある。
このような挙動を抑制するためには、バンパレインフォースメントと車体側サイドフレーム、あるいは、車体のエンド部との結合を強固にすることで、対応が可能となる。
【0004】
しかしながら、斯る強固な結合構造を採用した場合、軽衝突時にも車体側に影響が及ぶので、バンパレインフォースメントとクラッシュカンのみの交換では対応できず、リペアビリティ(repairability、修理性、修復性の意)の観点で改善の余地があった。
【0005】
ところで、特許文献1にはリヤバンパビームと、リヤサイドフレーム後端のセットプレートとの間に、斜め後方に延びるガセットを設けた車体後部構造が開示されている。
上記ガセットは、車両後突時にリヤバンパビームからの荷重をリヤサイドフレームに伝達するもので、該特許文献1に開示された従来構造を、SUVのような車高が高い車両に採用した場合、上記ガセットはクラッシュカンの全高と同等寸法の上下高さを有しているため、バンパ下部に荷重が集中した時、リヤバンパビームとクラッシュカンとが上記ガセットを伴って下方へ回動変位する挙動が発生することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、この発明は、車高が比較的高い車両において、バンパレインフォースメントとクラッシュカンの下方に衝突荷重が入力した際、これらの下方への回動挙動を防止しつつ、軽衝突時のリペアビリティを確保することができる車体構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明による車体構造は、車体のエンド部に設けられ、車幅方向に離間した左右一対のクラッシュカンと、上記クラッシュカンの先端部間を車幅方向に延びて連結するバンパレインフォースメントとを備えた車体構造であって、上記クラッシュカンはセットプレートを介して車体側サイドフレームに固定され、上記クラッシュカンまたは上記セットプレートの車幅方向内側から、当該クラッシュカンとの間に車幅方向に空間を形成して斜め方向に延び、上記バンパレインフォースメントに連結されるブレースを設け、上記ブレースは上記バンパレインフォースメントの下面に接合固定され、上記ブレースは、上記バンパレインフォースメントの車体に近接する側の面に接合固定される上下方向面部を備えたものである。
上記構成によれば、バンパレインフォースメントとクラッシュカンとの下方に衝突荷重が入力した際に、これらの下方への回動挙動を上記ブレースにて防止することができる。
【0009】
また、ブレースとクラッシュカンとの間には車幅方向の空間が形成されていると共に、ブレースは単一のものであるから、軽衝突時に車体側まで影響が及ぶことがなく、軽衝突時のリペアビリティを確保することができる。
【0010】
要するに、バンパレインフォースメントとクラッシュカンの下方に衝突荷重が入力した際のこれらの下方への回動挙動の防止と、軽衝突時のリペアビリティ確保との両立を図ることができる。
【0011】
しかも、上記ブレースは、上記バンパレインフォースメントの車体に近接する側の面に接合固定される上下方向面部を備えたものであり、このように、ブレースによるバンパレインフォースメントの支持は、上記下面に加えて、上下方向面部でも支持できるので、広い支持面を確保することができる。
【0012】
また、上記バンパレインフォースメントは、一般に車両平面視でその車幅方向中央が車両外方(フロントバンパレインフォースメントの場合は車両前方、リヤバンパレインフォースメントの場合は車両後方)へ突出する湾曲形状に形成されており、当該バンパレインフォースメントの車幅方向中央部に衝突荷重が入力すると、該バンパレインフォースメントは、その車幅方向端部が車両外方へ撓む弓形状に変形しようとするが、上記上下方向面部にて、このような弓形状の変形を抑制することができる。
【0013】
この発明による車体構造は、また、車体のエンド部に設けられ、車幅方向に離間した左右一対のクラッシュカンと、上記クラッシュカンの先端部間を車幅方向に延びて連結するバンパレインフォースメントとを備えた車体構造であって、上記クラッシュカンはセットプレートを介して車体側サイドフレームに固定され、上記クラッシュカンまたは上記セットプレートの車幅方向内側から、当該クラッシュカンとの間に車幅方向に空間を形成して斜め方向に延び、上記バンパレインフォースメントに連結されるブレースを設け、上記ブレースは上記バンパレインフォースメントの下面に接合固定され、上記ブレースは、その基端部が上記クラッシュカンの上下方向の断面中心よりも下方において上記セットプレートに連結されたものである。
上記構成によれば、バンパレインフォースメントとクラッシュカンとの下方に衝突荷重が入力した際に、これらの下方への回動挙動を上記ブレースにて防止することができる。
【0014】
また、ブレースとクラッシュカンとの間には車幅方向の空間が形成されていると共に、ブレースは単一のものであるから、軽衝突時に車体側まで影響が及ぶことがなく、軽衝突時のリペアビリティを確保することができる。
【0015】
要するに、バンパレインフォースメントとクラッシュカンの下方に衝突荷重が入力した際のこれらの下方への回動挙動の防止と、軽衝突時のリペアビリティ確保との両立を図ることができる。
【0016】
しかも、上述の下方へ回動しようとするバンパレインフォースメントを、基端部がクラッシュカンの上下方向の断面中心よりも下方においてセットプレートに連結された上記ブレースにて突っ張ることで、バンパレインフォースメントおよびクラッシュカンの下方への回動挙動を、より一層防止することができる。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、車高が比較的高い車両において、バンパレインフォースメントとクラッシュカンの下方に衝突荷重が入力した際、これら下方への回動挙動を防止しつつ、軽衝突時のリペアビリティを確保することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図3】クラッシュカン、バンパレインフォースメントおよびブレースを示す斜視図
【
図5】クラッシュカン、バンパレインフォースメントおよびブレースを、車幅方向外側前上から見た状態で示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0019】
車高が比較的高い車両において、バンパレインフォースメントとクラッシュカンの下方に衝突荷重が入力した際、これらの下方への回動挙動を防止しつつ、軽衝突時のリペアビリティを確保するという目的を、車体のエンド部に設けられ、車幅方向に離間した左右一対のクラッシュカンと、上記クラッシュカンの先端部間を車幅方向に延びて連結するバンパレインフォースメントとを備えた車体構造であって、上記クラッシュカンはセットプレートを介して車体側サイドフレームに固定され、上記クラッシュカンまたは上記セットプレートの車幅方向内側から、当該クラッシュカンとの間に車幅方向に空間を形成して斜め方向に延び、上記バンパレインフォースメントに連結されるブレースを設け、上記ブレースは上記バンパレインフォースメントの下面に接合固定され、上記ブレースは、上記バンパレインフォースメントの車体に近接する側の面に接合固定される上下方向面部を備えるという構成にて実現した。
【実施例】
【0020】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は車体構造を示し、
図1は当該車体構造を示す平面図、
図2は
図1の要部底面図、
図3はクラッシュカン、バンパレインフォースメントおよびブレースを示す斜視図、
図4は
図3の要部拡大斜視図、
図5はクラッシュカン、バンパレインフォースメントおよびブレースを、車幅方向外側前上から見た状態で示す斜視図、
図6はブレースの斜視図である。
【0021】
本発明の車体構造は、前部車体構造および後部車体構造の何れにも適用できるが、以下の実施例においては、後部車体構造に適用した場合について説明する。
図1において、車室の床面を形成するフロアパネル1を設け、該フロアパネル1の車幅方向中央部にはトンネル部2を形成すると共に、上記フロアパネル1の車幅方向左右両サイドには、サイドシルを連結している。
【0022】
このサイドシルは、サイドシルインナ3とサイドシルアウタ(図示せず)とを接合固定して、車両の前後方向に延びるサイドシル閉断面を形成した車体強度部材である。
上述のフロアパネル1の後端には、該後端から上方に立上がった後に後方に延びるキックアップ部を設け、このキックアップ部には、左右一対のサイドシル間および後述するリヤサイドフレームの前端部相互間を車幅方向に延びて連結するクロスメンバ4(いわゆるNo.3クロスメンバ)を設けている。
【0023】
上記フロアパネル1の後端には、キックアップ部を介して後方に延びるリヤシートパン5を一体または一体的に連設している。このリヤシートパン5の上部にはリヤシートが搭載され、リヤシートパン5の下部には燃料タンクが配設される。
【0024】
上記リヤシートパン5のさらに後方には、荷室の底面を形成するリヤフロアパン6が設けられ、該リヤフロアパン6の車幅方向中央部には下方に窪む凹部6aが一体形成されている。この凹部6aは、スペアタイヤパンまたは物品格納凹部を兼ねるものである。
【0025】
図1に示すように、リヤシートパン5およびリヤフロアパン6の車幅方向両サイドには、車体側サイドフレームとしてのリヤサイドフレーム7が設けられている。
このリヤサイドフレーム7はリヤサイドフレームアッパとリヤサイドフレームロア8とを接合固定して、車両の前後方向に延びるリヤサイド閉断面を有する車体強度部材である。
【0026】
また、上述のリヤサイドフレーム7はその前後方向中間に位置して他部に対して車幅方向に幅広に形成された中間部7Aと、この中間部7Aから前方に向けて下側に傾斜するよう形成された前部7Fと、中間部7Aから後方に向けて略水平に延びるよう形成された後部7Rと、を有する。
【0027】
図1に示すように、リヤシートパン5とリヤフロアパン6との前後方向の境界部には、左右一対のリヤサイドフレーム7,7間を車幅方向に連結する後部クロスメンバ9(いわゆる
No.4クロスメンバ)を設けている。
【0028】
ここで、上述のリヤシートパン5およびリヤフロアパン6は、リヤフロアパネル10を形成するもので、上述の後部クロスメンバ9とリヤフロアパネル10との間には、車幅方向に延びる閉断面が形成されている。
【0029】
上記リヤサイドフレーム7の車幅方向に幅広の中間部7Aには、リヤサスペンションのダンパ支持するダンパ支持部材12が設けられている。このダンパ支持部材12は天板部を有する略楕円形状の筒部材にて形成されており、当該ダンパ支持部材12は下方に開放した中空部を有すると共に、リヤサイドフレームロア8よりも上方へ突出する隆起形状に形成されている。
【0030】
図2に底面図で示すように、上述のダンパ支持部材12の直後部において、左右一対のリヤサイドフレーム7、詳しくは、左右一対のリヤサイドフレームロア8,8を車幅方向に連結する後端部クロスメンバ13(いわゆる
No.4.5クロスメンバ)を設け、この後端部クロスメンバ13と凹部6a下面を含むリヤフロアパン6下面との間には、車幅方向に延びる閉断面を形成している。
【0031】
図1に示すように、上述の後端部クロスメンバ13と対応するリヤサイドフレームロア8には、リヤサスペンションのサブフレーム14をリヤサイドフレーム7に固定する固定部材15が設けられている。
上記サブフレーム14はリヤサイドフレーム7の下方に設けられるもので、該サブフレーム14は、車幅方向に延びるフロントクロスメンバ14Fと、車幅方向に延びるリヤクロスメンバ14Rと、前後の各クロスメンバ14F,14Rの車幅方向端部を連結すべく車両前後方向に延びる左右一対のサイドメンバ14S,14Sとを一体的に組合せて構成したものである。
【0032】
ここで、
図1、
図2に示すように、上述のリヤサイドフレームロア8は、底壁8aと、該底壁8aの車幅方向内端から上方に立上がる縦壁8bと、上記底壁8aの車幅方向外端から上方に立上がる縦壁8cと、これらの各縦壁8b,8cの上端から車幅方向に延びるフランジ部8d,8eと、を一体形成したものである。
なお、
図1、
図2において、16はリヤサイドフレーム7よりも車幅方向の外側に位置するフロアサイドパネルである。
【0033】
図1、
図2に示すように、この実施例の車体構造(後部車体構造)は、車体のエンド部としてのリヤエンド部に設けられ、車幅方向に離間した左右一対のクラッシュカン20,20と、これら左右一対のクラッシュカン20,20の先端部間である後端部相互間を車幅方向に延びて連結するバンパレインフォースメント21とを備えている。
【0034】
図1、
図2に示すように、リヤサイドフレーム7における後部7Rの後端にセットプレート22を取付ける一方、クラッシュカン20の基端部としての前端部にも別のセットプレート23を取付けて、これら両セットプレート22,23を複数のボルト、ナット等の締結部材を用いて締結固定することで、リヤサイドフレーム7の後端にセットプレート22,23を介してクラッシュカン20を固定したものである。換言すれば、上記クラッシュカン20はセットプレート23,22を介して車体側サイドフレームであるリヤサイドフレーム7に固定されたものである。
【0035】
図3、
図4、
図5に示すように、上記クラッシュカン20は中空十文字閉断面24を有する形状のものが採用されているが、この形状のクラッシュカン20に代えて、一般的な箱形状のクラッシュカンを採用してもよい。
【0036】
図4に示すように、上記バンパレインフォースメント21は、バンパレイン本体25と、このバンパレイン本体25の後方開口を閉塞するクロージングプレート26とを接合固定して、車幅方向に延びる閉断面27を形成したものである。
【0037】
図4にバンパレイン本体25の断面形成を示すように、バンパレイン本体25は、前壁25aと、この前壁25aの上端から後方に延びる上壁25bと、上壁25bの後端から上方に延びる上部後壁25cと、上部後壁25cの上端から車両前方に向けて折返された折返し部25dと、上記前壁25aの下端から後方に延びる下壁25eと、下壁25eの後端から下方に延びる下部後壁25fと、下部後壁25fの下端から車両前方に向けて折返された折返し部25gと、を一体形成して、断面略ハット形状に形成したものである。
上記クロージングプレート26は、バンパレイン本体25の上部後壁25cおよび下部後壁25fに、スポット溶接手段にて接合固定されたものである。
【0038】
図1~
図5に示すように、上記クラッシュカン20または上記セットプレート23の車幅方向内側、この実施例では、セットプレート23の車幅方向内側から、上記クラッシュカン20との間に車幅方向に空間29を形成して斜め方向に延び、上記バンパレインフォースメント21、詳しくは、バンパレイン本体25に連結されるブレース30を設け、該ブレース30をバンパレインフォースメントを構成するバンパレイン本体25の下面に接合固定したものである。
【0039】
これにより、バンパレインフォースメント21とクラッシュカン20との下方に衝突荷重が入力した際に、これらの下方への回動挙動を上記ブレース30にて防止し、また、ブレース30とクラッシュカン20との間には車幅方向の空間29(この実施例では、平面視で直角三角形状の空間29)が形成され、かつ、ブレース30は単一のものであるから、軽衝突時に車体側まで影響が及ぶことを抑制し、軽衝突時のリペアビリティ(修理性、修復性)を確保すべく構成したものである。
【0040】
図1~
図5に示すように、上記ブレース30の基部(前端部)はセットプレート23におけるクラッシュカン20よりも車幅方向内側の面に固定されており、該ブレース30が斜め方向に延びて、当該ブレース30の先端部(後端部)は基部に対してさらに車幅方向内側に位置するよう配設され、該先端部(後端部)がバンパレイン本体25の下面に固定されたものである。
【0041】
図4、
図5、
図6に示すように、上記ブレース30はバンパレインフォースメント21のバンパレイン本体25における車体に近接する側の面、つまり前壁25aに接合固定される上下方向面部31を備えている。
【0042】
上述の上下方向面部31は、
図6に示すように、ブレース30先端側に位置して相対的に上下方向の高さが低い第1面部31aと、ブレース30基端側に位置して相対的に上下方向の高さが高い第2面部31bとを有しており、上記第1面部31aの上端部が、バンパレイン本体25の下壁25eに線溶接される第1接合部31cに設定され、第2面部31bの先端部(つまり後端部)が、バンパレイン本体25の前壁25aに線溶接される第2接合部31dに設定されており、これら両接合部31c,31dがバンパレイン本体25の下面(下壁25e)と前面(前壁25a)とに固定されている。
【0043】
これにより、ブレース30によるバンパレインフォースメント21の支持は、第1接合部31cによる下面の支持に加えて、上下方向面部31の第2接合部31dによる前面の支持も可能となるので、広い支持面を確保することができ、また、バンパレインフォースメント21は、一般に車両平面視でその車幅方向中央が車両外方(リヤバンパレインフォースメントの場合は車両後方)へ突出するような湾曲形状に形成されており、バンパレインフォースメント21の車幅方向中央部に衝突荷重が入力した場合、当該バンパレインフォースメント21は、
図2に仮想線αで示すように、その車幅方向端部が車両外方(車両後方)へ撓む弓形状に変形しようとするが、上記上下方向面部31にて、このような弓形状の変形を抑制すべく構成したものである。
【0044】
図4、
図5、
図6に示すように、上記ブレース30は上下方向面部31の下端から車幅方向外方に延びる略水平面部32を一体形成しており、断面L字状に構成されている。
さらに、
図4に示すように、上記ブレース30は、その基端部としての前端部が、上記クラッシュカン20の上下方向の断面中心20CEよりも下方において上記セットプレート23に連結されている。
【0045】
バンパレインフォースメント21の下方に後突荷重が集中した時、下方へ回動しようとするバンパレインフォースメント21を、基端部がクラッシュカン20の上下方向の断面中心20CEよりも下方において上記セットプレート23に連結された上述のブレース30にて突っ張ることで、バンパレインフォースメント21およびクラッシュカン20の下方への回動挙動を防止すべく構成したものである。
【0046】
加えて、
図3で示したように、左右一対のクラッシュカン20,20と、バンパレインフォースメント21と、セットプレート23と、ブレース30とは、一体的にアセンブリされた組付け部品を構成しており、車体への取付け時には、左右一対のセットプレート23,23をリヤサイドフレーム7側のセットプレート22,22に対して取付けると、これら組付け部品を車体に取付けることができ、軽衝突時に当該組付け部品が変形または破損した際には、該組付け部品を交換することで、リペアビリティ(修理性、修復性)を確保するよう構成している。
なお、図中、矢印Fは車両前方を示し、矢印Rは車両後方を示し、矢印INは車幅方向の内方を示し、矢印OUTは車幅方向の外方を示し、矢印UPは車両上方を示す。
【0047】
このように、上記実施例の車体構造は、車体のエンド部に設けられ、車幅方向に離間した左右一対のクラッシュカン20,20と、上記クラッシュカン20,20の先端部間を車幅方向に延びて連結するバンパレインフォースメント21とを備えた車体構造であって、上記クラッシュカン20はセットプレート23,22を介して車体側サイドフレーム(リヤサイドフレーム7参照)に固定され、上記クラッシュカン20または上記セットプレート23の車幅方向内側から、当該クラッシュカン20との間に車幅方向に空間29を形成して斜め方向に延び、上記バンパレインフォースメント21に連結されるブレース30を設け、上記ブレース30は上記バンパレインフォースメント21の下面に接合固定されたものである(
図1、
図2参照)。
この構成によれば、バンパレインフォースメント21とクラッシュカン20との下方に衝突荷重が入力した際に、これらの下方への回動挙動を上記ブレース30にて防止することができる。
【0048】
また、ブレース30とクラッシュカン20との間には車幅方向の空間29が形成されていると共に、ブレース30は単一のものであるから、軽衝突時に車体側まで影響が及ぶことがなく、軽衝突時のリペアビリティ(修理性、修復性)を確保することができる。
要するに、バンパレインフォースメント21とクラッシュカン20の下方に衝突荷重が入力した際のこれらの下方への回動挙動の防止と、軽衝突時のリペアビリティ確保との両立を図ることができる。
【0049】
また、この発明の一実施形態においては、上記ブレース30は、上記バンパレインフォースメント21の車体に近接する側の面(この実施例では、前面)に接合固定される上下方向面部31を備えたものである(
図4参照)。
この構成によれば、ブレース30によるバンパレインフォースメント21の支持は、上記下面に加えて、上下方向面部31でも支持できるので、広い支持面を確保することができる。
【0050】
また、上記バンパレインフォースメント21は、一般に車両平面視でその車幅方向中央が車両外方(フロントバンパレインフォースメントの場合は車両前方、リヤバンパレインフォースメントの場合は車両後方)へ突出する湾曲形状に形成されており、当該バンパレインフォースメント21の車幅方向中央部に衝突荷重が入力すると、該バンパレインフォースメント21は、その車幅方向端部が車両外方へ撓む弓形状に変形(
図2の仮想線α参照)しようとするが、上記上下方向面部31にて、このような弓形状の変形を抑制することができる。
さらに、この発明の一実施形態
においては、上記ブレース30は、その基端部が上記クラッシュカン20の上下方向の断面中心20CEよりも下方において上記セットプレート23に連結されたものである(
図4参照)。
【0051】
この構成によれば、上述の下方へ回動しようとするバンパレインフォースメント21を、基端部がクラッシュカン20の上下方向の断面中心20CEよりも下方においてセットプレート23に連結された上記ブレース30にて突っ張ることで、バンパレインフォースメント21およびクラッシュカン20の下方への回動挙動を、より一層防止することができる。
【0052】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明の車体側サイドフレームは、実施例のリヤサイドフレーム7に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものでない。
例えば、上記実施例においては、車体構造として後部車体構造を例示したが、
本発明の車体構造は前部車体構造にも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上説明したように、本発明は、車体のエンド部に設けられ、車幅方向に離間した左右一対のクラッシュカンと、上記クラッシュカンの先端部間を車幅方向に延びて連結するバンパレインフォースメントとを備えた車体構造について有用である。
【符号の説明】
【0054】
7…リヤサイドフレーム(車体側サイドフレーム)
20…クラッシュカン
20CE…断面中心
22,23…セットプレート
29…空間
30…ブレース
31…上下方向面部