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特許7014209加工用治具、レーザ加工用装置、およびレーザ加工製品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-24
(45)【発行日】2022-02-01
(54)【発明の名称】加工用治具、レーザ加工用装置、およびレーザ加工製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/70 20140101AFI20220125BHJP
   B23K 26/142 20140101ALI20220125BHJP
【FI】
B23K26/70
B23K26/142
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019132503
(22)【出願日】2019-07-18
(65)【公開番号】P2021016873
(43)【公開日】2021-02-15
【審査請求日】2020-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100157277
【弁理士】
【氏名又は名称】板倉 幸恵
(74)【代理人】
【識別番号】100182718
【弁理士】
【氏名又は名称】木崎 誠司
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 和男
(72)【発明者】
【氏名】角田 貫一
【審査官】正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-043954(JP,A)
【文献】特開2017-080754(JP,A)
【文献】特開2010-253521(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/70
B23K 26/142
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工用治具であって、
被加工材料の一の面に対向して配置される第1保持具と、
前記被加工材料の前記一の面とは逆側の面に対向して配置される第2保持具と、
気体を噴射するノズルと、
前記被加工材料を所定の方向に搬送する搬送部と、
を備え、
前記第1保持具と前記第2保持具との両方は、前記被加工材料から離間して配置されており、
前記ノズルから噴射された気体は、前記第1保持具と前記被加工材料との間、および、前記第2保持具と前記被加工材料との間に形成された隙間において、前記被加工材料の表面に沿った気流を生じさせ、
前記搬送部は、前記気流の方向と同一方向に、前記被加工材料を搬送する搬送ローラである、加工用治具。
【請求項2】
加工用治具であって、
被加工材料の一の面に対向して配置される第1保持具と、
前記被加工材料の前記一の面とは逆側の面に対向して配置される第2保持具と、
気体を噴射するノズルと、
前記被加工材料を所定の方向に搬送する搬送部と、
を備え、
前記第1保持具と前記第2保持具との少なくとも一方は、前記被加工材料から離間して配置されており、
前記ノズルから噴射された気体は、前記第1保持具と前記第2保持具との少なくとも一方と、前記被加工材料と、の間に形成された隙間において、前記被加工材料の表面に沿った気流を生じさせ、
前記隙間の距離は、0.1mm以上1.0mm未満であり、
前記搬送部は、前記気流の方向と同一方向に、前記被加工材料を搬送する搬送ローラである、加工用治具。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の加工用治具であって、
前記ノズルは、不活性ガスを噴射する、加工用治具。
【請求項4】
請求項1から請求項までのいずれか一項に記載の加工用治具であって、
前記第1保持具は、サファイアまたは石英で形成されたレーザ光透過部を有している、加工用治具。
【請求項5】
レーザ加工装置であって、
請求項1から請求項までのいずれか一項に記載の加工用治具と、
前記第1保持具の側から前記加工用治具の前記一の面にレーザ光を照射する照射部と、
を備え、
前記第1保持具は、前記被加工材料の前記一の面から離間して配置されており、
前記ノズルから噴射された気体は、前記第1保持具と前記一の面との前記隙間に、前記一の面に沿った気流を生じさせる、レーザ加工装置。
【請求項6】
レーザ加工製品の製造方法であって、
第1保持具と、第2保持具との間に被加工材料を配置する工程と、
前記第1保持具の側から、搬送部により所定の方向に搬送されている前記被加工材料の一の面にレーザ光を照射する工程と、
前記レーザ光の照射と共に、前記第1保持具と前記被加工材料との間、および、前記第2保持具と前記被加工材料との間に形成された隙間において、前記被加工材料の前記一の面に沿った気流を生じさせる工程と、
を備え、
前記搬送部は、前記気流の方向と同一方向に、前記被加工材料を搬送する搬送ローラである、製造方法。
【請求項7】
レーザ加工製品の製造方法であって、
第1保持具と、第2保持具との間に被加工材料を配置する工程と、
前記第1保持具の側から、搬送部により所定の方向に搬送されている前記被加工材料の一の面にレーザ光を照射する工程と、
前記レーザ光の照射と共に、前記第1保持具と前記被加工材料との間に形成された隙間において、前記被加工材料の前記一の面に沿った気流を生じさせる工程と、
を備え、
前記隙間の距離は、0.1mm以上1.0mm未満であり、
前記搬送部は、前記気流の方向と同一方向に、前記被加工材料を搬送する搬送ローラである、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工用治具、レーザ加工用装置、およびレーザ加工製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ光を例えば金属板等の被加工材料に照射することによって、被加工材料を切断するレーザ加工が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載されたレーザ加工装置では、レーザ光が照射される位置と同じ位置から、ノズルが被加工材料へとアシストガスを噴射する。レーザ光と同方向から噴射されたアシストガスは、レーザ光により被加工材料の一部が溶融した金属(以降「溶融金属」とも呼ぶ)を吹き飛ばす。これにより、被加工材料に溶融金属が付着することを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-234373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたノズルから噴射されるアシストガスは、アシストガスの流量や被加工材料の厚さによっては、被加工材料の切断部を変形させてしまうおそれがある。また、レーザ光を照射するレーザ発振器と、ノズルとが一体で形成されているため、レーザ光を反射する走査用鏡を用いたレーザ加工装置では、被加工材料にアシストガスを供給できないという課題があった。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、レーザ加工により切断部で発生する溶融した材料が被加工材料に付着することを抑制した上で、アシストガスによる切断部の変形を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。加工用治具であって、被加工材料の一の面に対向して配置される第1保持具と、前記被加工材料の前記一の面とは逆側の面に対向して配置される第2保持具と、気体を噴射するノズルと、前記被加工材料を所定の方向に搬送する搬送部と、を備え、前記第1保持具と前記第2保持具との両方は、前記被加工材料から離間して配置されており、前記ノズルから噴射された気体は、前記第1保持具と前記被加工材料との間、および、前記第2保持具と前記被加工材料との間に形成された隙間において、前記被加工材料の表面に沿った気流を生じさせ、前記搬送部は、前記気流の方向と同一方向に、前記被加工材料を搬送する搬送ローラである。加工用治具であって、被加工材料の一の面に対向して配置される第1保持具と、前記被加工材料の前記一の面とは逆側の面に対向して配置される第2保持具と、気体を噴射するノズルと、前記被加工材料を所定の方向に搬送する搬送部と、を備え、前記第1保持具と前記第2保持具との少なくとも一方は、前記被加工材料から離間して配置されており、前記ノズルから噴射された気体は、前記第1保持具と前記第2保持具との少なくとも一方と、前記被加工材料と、の間に形成された隙間において、前記被加工材料の表面に沿った気流を生じさせ、前記隙間の距離は、0.1mm以上1.0mm未満であり、前記搬送部は、前記気流の方向と同一方向に、前記被加工材料を搬送する搬送ローラである。
【0007】
(1)本発明の一形態によれば、加工用治具が提供される。この加工用治具は、被加工材料の一の面に対向して配置される第1保持具と、前記被加工材料の前記一の面とは逆側の面に対向して配置される第2保持具と、気体を噴射するノズルと、を備え、前記第1保持具と前記第2保持具との少なくとも一方は、前記被加工材料から離間して配置されており、前記ノズルから噴射された気体は、前記第1保持具と前記第2保持具との少なくとも一方と、前記被加工材料と、の間に形成された隙間において、前記被加工材料の表面に沿った気流を生じさせる。
【0008】
この構成によれば、レーザ加工により切断される被加工材料において、ノズルにより発生した気流は、切断部で発生する被加工材料の溶融物を冷却し、溶融物が被加工材料に付着することを抑制する。また、溶融物が被加工材料に付着したとしても、気流が被加工材料に付着した溶融物を吹き飛ばすことにより除去できる。さらに、気流は、切断部で発生した金属蒸気であるヒュームの発生および停滞を抑制する。ここで、気流は、被加工材料における一の面と逆側の面との少なくとも一方の面に沿った向きに流れるため、被加工材料の厚さ方向に平行な成分を有していない。これにより、気流によって切断部が被加工材料の厚さ方向に変形することを抑制できる。形成された隙間を流れる気流は、ベルヌーイの定理またはコアンダ効果によって、第1保持具と被加工材料との距離を調整できる。これにより、レーザ光が照射される位置(またはレーザ光を照射する装置)と、被加工材料との距離を調整できる。
【0009】
(2)上記態様の加工用治具において、さらに、前記被加工材料を所定の方向に搬送する搬送部を備えてもよい。
この構成によれば、被加工材料が搬送部によって搬送されることにより、加工が終了した被加工材料を交換するための工数を削減することができると共に、被加工材料の加工を自動化できる。
【0010】
(3)上記態様の加工用治具において、前記搬送部は、前記気流の方向と同一方向に、前記被加工材料を搬送してもよい。
この構成によれば、搬送方向に搬送される被加工材料によって気流が乱されないため、被加工材料はベルヌーイの定理およびコアンダ効果の影響をより受けることができる。これにより、第1保持具と被加工材料との距離をより適切に調整できる。
【0011】
(4)上記態様の加工用治具において、前記ノズルは、不活性ガスを噴射してもよい。
この構成によれば、被加工材料の溶融物の酸化を抑制できるため、溶融物および被加工材料の温度上昇を抑制できる。
【0012】
(5)上記態様の加工用治具において、前記第1保持具は、サファイアまたは石英で形成されたレーザ光透過部を有していてもよい。
この構成によれば、第1保持具にレーザ光が通過するスリットなどを形成しなくてもよく、第1保持具の形状の自由度が向上する。
【0013】
(6)本発明の他の一形態によれば、レーザ加工装置が提供される。このレーザ加工装置は、上記形態の加工用治具と、前記第1保持具の側から前記加工用治具の前記一の面にレーザ光を照射する照射部と、を備え、前記第1保持具は、前記被加工材料の前記一の面から離間して配置されており、前記ノズルから噴射された気体は、前記第1保持具と前記一の面との前記隙間に、前記一の面に沿った気流を生じさせる。
この構成によれば、ノズルにより発生した気流は、被加工材料の溶融物を冷却し、溶融物が被加工材料に付着することを抑制し、切断部で発生した金属蒸気であるヒュームの発生および停滞を抑制する。さらに、気流は、被加工材料における一の面に沿った向きに流れるため、被加工材料の厚さ方向に平行な成分を有していないため、気流によって切断部が被加工材料の厚さ方向に変形することを抑制できる。形成された隙間を流れる気流は、ベルヌーイの定理またはコアンダ効果によって、レーザ光が照射される位置(またはレーザ光を照射する装置)と、被加工材料との距離を調整できる。
【0014】
(7)本発明の他の一形態によれば、レーザ加工製品の製造方法が提供される。この製造方法は、第1保持具と、第2保持具との間に被加工材料を配置する工程と、前記第1保持具の側から、前記被加工材料の一の面にレーザ光を照射する工程と、前記レーザ光の照射と共に、前記第1保持具と前記被加工材料との間に形成された隙間において、前記被加工材料の前記一の面に沿った気流を生じさせる工程と、を備える。
この構成によれば、第1保持具と第2保持具との間に配置された被加工材料の第1の面に、レーザ加工により発生した溶融物は、気流によって被加工材料に付着せずに除去される。さらに、気流は、切断部で発生した金属蒸気であるヒュームの発生および停滞を抑制する。ここで、気流は、第1保持具と被加工材料との間に形成された隙間を一の面に沿って流れるため、被加工材料の厚さ方向に平行な成分を有していない。これにより、気流によって切断部が被加工材料の厚さ方向に変形することを抑制できる。隙間を流れる気流は、ベルヌーイの定理またはコアンダ効果によって、レーザ光が照射される位置(またはレーザ光を照射する装置)と、被加工材料との距離を調整できる。
【0015】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、加工用治具、レーザ加工装置、およびこれらを備える装置およびシステム、および被加工材料固定方法、レーザ加工方法、およびレーザ加工製品の製造方法、これらシステムや方法を実行するためのコンピュータプログラム、このコンピュータプログラムを配布するためのサーバ装置、コンピュータプログラムを記憶した一時的でない記憶媒体等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1実施形態としての加工用治具を備えるレーザ加工装置の概略平面図である。
図2図1におけるA1-A1断面の概略図である。
図3】第1ノズルのガス噴射口近傍の斜視図である。
図4】レーザ照射部から照射されるレーザ光の説明図である。
図5】式(1)を満たす場合にレーザ光により切断されたレーザ加工製品の概略平面図である。
図6】レーザ加工製品の製造方法のフローチャートである。
図7】比較例のレーザ加工装置の説明図である。
図8】第2実施形態の加工用治具を備えるレーザ加工装置の概略平面図である。
図9図8におけるA2-A2断面の概略図である。
図10】第3実施形態の加工用治具を備えるレーザ加工装置の概略平面図である。
図11図10におけるA3-A3断面の概略図である。
図12】変形例の第1ノズルのガス噴射口近傍の斜視図である。
図13】変形例における第1保持具の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態としての加工用治具10を備えるレーザ加工装置100の概略平面図である。図2は、図1におけるA1-A1断面の概略図である。レーザ加工装置100は、被加工材料としてのシート材MSをレーザ光により所定の大きさに切断する装置である。第1実施形態のシート材MSは、板厚のある金属であるが、他の実施形態では、シート状のセラミックスおよび樹脂であってもよい。なお、図1および図2に示される直交座標系であるXYZ軸のそれぞれと、図4以降の図に示される直交座標系は対応している。
【0018】
図1に示されるように、レーザ加工装置100は、シート材MSを支持する加工用治具10と、加工用治具10に支持されたシート材MSの加工面(一の面)Mfにレーザ光を照射するレーザ照射部20と、加工用治具10の各部およびレーザ照射部20の動作を制御する制御部30とを備えている。
【0019】
図1および図2に示されるように、加工用治具10は、ロール状に巻かれたシート材MSを支持して所定の方向に搬送する上流ローラ(搬送部)11および下流ローラ(搬送部)12と、シート材MSの加工面Mfに対向して配置される第1保持具13と、シート材MSにおける加工面Mfとは逆側の面である下面Muに対向して配置される第2保持具14と、アシストガスとして不活性ガスである窒素(N2)を噴射する第1ノズル(ノズル)15および第2ノズル(ノズル)16とを備えている。なお、以降では、上流ローラ11と下流ローラ12とを合わせて「ローラ11,12」とも呼ぶ。
【0020】
図2に示されるように、上流ローラ11および下流ローラ12のそれぞれは、一対のローラで構成されている。一対のローラ11,12のそれぞれは、シート材MSを挟み込んだ状態で、同一の回転速度で回転する。これにより、ローラ11,12は、搬送方向DR1に沿って、回転速度に応じた搬送速度でシート材MSを搬送する。
【0021】
第1保持具13および第2保持具14は、ローラ11,12により搬送されるシート材MSから離間して配置されている。換言すると、第1保持具13におけるシート材MSへの対向面FF1と、シート材MSの加工面Mfとは、第1隙間GP1を形成している。対向面FF1と、加工面Mfとの距離、すなわち、第1隙間GP1の厚さは、距離d1である。同じように、第2保持具14におけるシート材MSへの対向面FF2と、シート材MSの下面Muとは、第2隙間GP2を形成している。対向面FF2と、下面Muとの距離、すなわち、第2隙間GP2の厚さは、距離d2である。なお、第1実施形態では、距離d1と、距離d2とは同じ長さであるが、他の実施形態では異なる長さであってもよい。
【0022】
図1に示されるように、第1保持具13には、搬送方向DR1に対して一定の角度α1を成している第1スリットSL1が形成されている。図2に示されるように、第1スリットSL1は、第1保持具13を厚さ方向に貫通している。なお、ここでいう厚さ方向とは、シート材MSを介して対向している第1保持具13の対向面FF1および第2保持具14の対向面FF2に直交する方向であり、Z軸に平行な方向である。第1保持具13と同じように、第2保持具14には、搬送方向DR1に対して角度α1を成している第2スリットSL2が形成されている。図2に示されるように、第2スリットSL2は、第2保持具14を厚さ方向に貫通している。
【0023】
図3は、第1ノズル15のガス噴射口近傍の斜視図である。図3に示されるように、第1ノズル15では、上流側から供給された窒素を下流側に形成された複数の噴射口PSから噴射する。図2に示されるように、第1ノズル15から噴射された窒素は、第1隙間GP1において、加工面Mfに沿った気流を生じさせる。同じように、第2ノズル16から噴射された窒素は、第2隙間GP2において、下面Muに沿った気流を生じさせる。換言すると、第1実施形態では、ローラ11,12は、第1ノズル15および第2ノズル16が生じさせる気流の方向と、シート材MSの搬送方向DR1とは同じである。
【0024】
図2に示されるように、レーザ照射部20は、シート材MSに対して、第1保持具13の側からシート材MSの加工面Mfにレーザ光LSを照射する。換言すると、レーザ照射部20は、第1保持具13の上側(Z軸正方向側)からシート材MSの加工面Mfにレーザ光LSを照射する。
【0025】
図4は、レーザ照射部20から照射されるレーザ光LSの説明図である。図4には、レーザ照射部20からシート材MSへと照射されるレーザ光LSの変化が簡略化されて示されている。第1実施形態では、レーザ照射部20の位置は、加工用治具10に対して予め所定の位置に設定されている。レーザ照射部20は、レーザ光LSの照射角度α2を走査することにより、第1保持具13に形成された第1スリットSL1および第2保持具14に形成された第2スリットSL2に沿ってレーザ光LSを照射する。そのため、レーザ光LSは、ローラ11,12により搬送されているシート材MSに直接照射される。レーザ光LSにより切断されるシート材MSでは、シート材MSが溶融した金属のスパッタ物が発生する。
【0026】
制御部30は、図示されていないCPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)とを備えている。CPUは、ROMに格納されているコンピュータプログラムをRAMに展開して実行することにより、レーザ照射部20の動作と、ローラ11,12によるシート材MSの搬送速度と、第1ノズル15および第2ノズル16から噴射される窒素の流量とを制御する。
【0027】
制御部30は、レーザ光LSがシート材MS中を移動する移動速度VLと、図2に示されるローラ11,12によるシート材MSの搬送速度VSとを、下記式(1)が満されるようにレーザ光LSの照射角度α2を制御する。
【数1】
図5は、式(1)を満たす場合にレーザ光LSにより切断されたレーザ加工製品SA1の概略平面図である。図5に示されるように、シート材MSから切断されたレーザ加工製品SA1は、対向する一組の辺がシート材MSの幅である長さWと、切断方向に直交する長さL1とを有する矩形状のシートとして製造される。
【0028】
制御部30は、シート材MSの材質、シート材MSの厚さ、およびローラ11,12によるシート材MSの搬送速度などに応じて、第1ノズル15および第2ノズル16から噴射させる窒素の流量を決定する。ここで、第1ノズル15および第2ノズル16の流量をそれぞれQ1,Q2(m3/s)と定義すると、第1隙間GP1および第2隙間GP2を流れる窒素の各流速V1,V2(m/s)は、下記式(2),(3)のように表される。
V1=Q1/(W・d1)・・・(2)
V2=Q2/(W・d2)・・・(3)
各流速V1,V2は、0.1(m/s)よりも大きく、100(m/s)よりも小さい方が好ましい。また、上記式(2),(3)を満たす又は満たさないに限られず、ローラ11,12によるシート材MSの搬送速度VSは、0.1m/s以上5m/s以下が好ましい。また、第1保持具13とシート材MSとの間に形成された第1隙間GP1の距離d1、および、第2保持具14とシート材MSとの間に形成された第2隙間GP2の距離d2は、0.1mm以上1.0mm以下が好ましい。また、流量Q1,Q2は、10-33/s以上10-13/s以下が好ましい。特に、距離d1,d2が0.1mm以上0.5mm以下の場合には、流量Q1,Q2は、10-33/s以上10-23/s以下が好ましい。
【0029】
図6は、レーザ加工製品SA1の製造方法のフローチャートである。図6に示されるように、製造方法のフローチャート(以下、単に「製造フロー」とも呼ぶ)では、初めに、加工用治具10の第1保持具13と、第2保持具14との間に被加工材料としてのシート材MSが配置される(ステップS1)。次に、レーザ照射部20は、シート材MSに対して第1保持具13の側(Z軸正方向側)から、シート材MSの加工面Mfにレーザ光LSを照射する(ステップS2)。第1ノズル15は、レーザ光LSの照射と共に、第1隙間GP1において、加工面Mfに沿った気流を生じさせ、かつ、第2ノズル16は、第2隙間GP2において、シート材MSの下面Muに沿った気流を生じさせ(ステップS3)、製造フローが終了する。
【0030】
図7は、比較例のレーザ加工装置100zの説明図である。図7には、比較例のレーザ照射部20zから照射されたレーザ光LSにより切断されるシート材MSを拡大した概略断面図が示されている。図7に示されるように、比較例のレーザ加工装置100zは、レーザ照射部20zと、レーザ照射部20zに取り付けられた第3ノズル15zとを備えている。なお、比較例のレーザ加工装置100zは、第1実施形態のレーザ加工装置100と比較して、図7に示される第1実施形態と異なるレーザ照射部20zおよび第3ノズル15zを備える。一方で、比較例のレーザ加工装置100zは、図7に図示されていない構成として第1実施形態の各構成を同じ構成を備えている。
【0031】
図7に示されるように、比較例では、第3ノズル15zは、レーザ照射部20zに照射されるレーザ光LSと同軸に位置するようにレーザ照射部20zに取り付けられている。そのため、第3ノズル15zは、レーザ光LSと略同一の噴射方向DR2に沿って、シート材MSへと高圧アシストガスとしての窒素を噴射する。レーザ光LSによりシート材MSが切断されると、切断部AR1で生じた溶融金属であるスパッタ物SPは、第3ノズル15zから噴射される窒素により切断部AR1から吹き飛ばされる。一方で、噴射方向DR2に沿って噴射される窒素は、シート材MSの厚さ方向(Z軸方向)に平行な成分を有するため、切断部AR1を下面Mu側へとたわませる。
【0032】
以上説明したように、第1実施形態の加工用治具10では、第1保持具13および第2保持具14は、ローラ11,12により搬送されるシート材MSから離間して配置されている。第1ノズル15から噴射された窒素は、第1保持具13の対向面FF1とシート材MSの加工面Mfとの間に形成された第1隙間GP1において、シート材MSの加工面Mfに沿った気流を生じさせる。そのため、第1ノズル15により発生した気流は、レーザ加工により切断部AR1で発生するスパッタ物SPを冷却し、スパッタ物SPがシート材MSに付着することを抑制する。また、スパッタ物SPがシート材MSに付着したとしても、窒素の気流がシート材MSに付着したスパッタ物SPを吹き飛ばして除去する。さらに、窒素の気流は、切断部AR1で発生した金属蒸気であるヒュームの発生および停滞を抑制する。ここで、気流は、加工面Mfに沿った向きに流れるため、比較例のようなシート材MSの厚さ方向に平行な成分を有していない。これにより、気流がシート材MSの切断部AR1をシート材MSの厚さ方向に変形することを抑制できる。第1隙間GP1を流れる気流は、ベルヌーイの定理またはコアンダ効果によって、第1保持具13とシート材MSとの距離d1を調整できる。これにより、レーザ照射部20により照射されるレーザ光LSと、シート材MSとの距離が調整される。
【0033】
また、第1実施形態の加工用治具10は、シート材MSを支持して所定の方向に搬送するローラ11,12を備えている。そのため、被加工材料がローラ11,12を介して搬送されることにより、加工が終了した被加工材料を交換するための工数を削減することができると共に、被加工材料の加工を自動化できる。
【0034】
また、第1実施形態のローラ11,12は、第1ノズル15により生じる気流と同一方向にシート材MSを搬送する。そのため、搬送方向DR1に搬送されるシート材MSによって気流が乱されないため、ベルヌーイの定理およびコアンダ効果の影響をより受けることができる。
【0035】
また、第1実施形態の第1ノズル15は、不活性ガスとしての窒素を噴射しているため、スパッタ物SPの酸化を抑制できるため、スパッタ物SPおよびシート材MSの温度上昇を抑制できる。
【0036】
また、第1実施形態の加工用治具10では、第1隙間GP1内に生じる気流に加えて、第2ノズル16から噴射された窒素は、第2保持具14の対向面FF2とシート材MSの下面Muとの間に形成された第2隙間GP2において、シート材MSの下面Muに沿った気流を生じさせる。そのため、シート材MSは、加工面Mfに加えて下面Muからも気流によるベルヌーイの定理およびコアンダ効果の影響を受ける。これにより、レーザ照射部20により照射されるレーザ光LSと、シート材MSとの距離がより適切に調整される。
【0037】
<第2実施形態>
図8は、第2実施形態の加工用治具10aを備えるレーザ加工装置100aの概略平面図である。図9は、図8におけるA2-A2断面の概略図である。第2実施形態の加工用治具10aでは、第1実施形態の加工用治具10と比較して、第1ノズル15および第2ノズル16の代わりに第4ノズル15aを備える点、および、第1実施形態とは上流ローラ11aの位置が相違する点が異なり、その他の構成については同じである。そのため、第2実施形態では、第1実施形態の構成と異なる第4ノズル15aおよび上流ローラ11aについて説明し、その他の構成の説明を省略する。なお、第2実施形態では、被加工材料として銅製のシート材MSaが用いられている。
【0038】
図9に示されるように、第2実施形態の上流ローラ11aは、下流ローラ12と同一平面上(同一のXY平面上)に配置される。そのため、上流ローラ11aおよび下流ローラ12により搬送されるシート材MSaは、第1実施形態の上流ローラ11により曲げられている状態と異なり、平面の状態を維持したまま、搬送方向DR1に沿って搬送される。
【0039】
図8および図9の矢印で示されるように、第4ノズル15aから噴射された窒素は、第1隙間GP1において、加工面Mfに沿い、かつ、搬送方向DR1に直交する方向の気流を生じさせる。換言すると、第2実施形態における気流方向は、XY平面に沿って、かつ、Y軸に平行である。また、第2実施形態の加工用治具10aは、第1実施形態が備える第2ノズル16を備えていないため、第2隙間GP2には窒素で構成される気流が発生しない。
【0040】
以上説明したように、第2実施形態の第4ノズル15aから噴射された窒素は、第1隙間GP1において、加工面Mfaに沿った気流を生じさせる。そのため、第1実施形態の加工用治具10と同じように、第4ノズル15aにより発生した気流は、スパッタ物SPを冷却し、スパッタ物SPがシート材MSaに付着することを抑制する。さらに、気流は、加工面Mfaに沿った向きに流れるため、シート材MSaの切断部AR1をシート材MSaの厚さ方向に変形することを抑制できる。また、気流は、ベルヌーイの定理またはコアンダ効果によって、レーザ照射部20により照射されるレーザ光LSと、シート材MSaとの距離d1を調整できる。
【0041】
<第3実施形態>
図10は、第3実施形態の加工用治具10bを備えるレーザ加工装置100bの概略平面図である。図11は、図10におけるA3-A3断面の概略図である。第3実施形態の加工用治具10bでは、第2実施形態の加工用治具10aと比較して、第1保持具13bの形状と、第4ノズル15aの代わりに窒素を噴射する第5ノズル15bの形状とが異なり、その他の構成については同じである。そのため、第3実施形態では、第2実施形態の構成と異なる第1保持具13bおよび第5ノズル15bについて説明し、その他の構成の説明を省略する。
【0042】
図11に示されるように、第3実施形態では、第1保持具13bと、第5ノズル15bとが一体として形成されている。具体的には、第1保持具13bの中に、噴射される窒素が通過する第5ノズル15bの一部が形成されている。第1保持具13bの対向面FF1bと、シート材MSaの加工面Mfaとの距離は、第1実施形態の距離d1よりも大きい距離d1bである。すなわち、第1隙間GP1bは、第1実施形態の第1隙間GP1よりも大きく形成されている。
【0043】
第5ノズル15bは、レーザ照射部20の位置よりも上流ローラ11a側の第1保持具13b内に形成されている。第5ノズル15bには窒素が流入しているため、第5ノズル15bから噴射された窒素は、第1隙間GP1bにおいて、図11の矢印のように、加工面Mfaに沿った気流を生じさせる。
【0044】
以上説明したように、第3実施形態の第5ノズル15bから噴射された窒素は、第1隙間GP1bにおいて、加工面Mfaに沿った気流を生じさせる。そのため、第1実施形態の加工用治具10と同じように、第5ノズル15bにより発生した気流は、スパッタ物SPを冷却し、スパッタ物SPがシート材MSaに付着することを抑制する。さらに、気流は、加工面Mfaに沿った向きに流れるため、シート材MSaの切断部AR1をシート材MSaの厚さ方向に変形することを抑制できる。また、気流は、ベルヌーイの定理またはコアンダ効果によって、レーザ照射部20により照射されるレーザ光LSと、シート材MSaとの距離d1を調整できる。
【0045】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0046】
[変形例1]
上記実施形態におけるレーザ加工装置100,100a,100bおよび加工用治具10,10a,10bについては、一例であり、レーザ加工装置および加工用治具の構成や形状については種々変形可能である。加工用治具10は、シート材MSを搬送するローラ11,12を備えていなくてもよく、シート材MSを搬送するためにローラ以外の搬送装置が採用されてもよい。ローラ11,12によるシート材MSの搬送方向DR1は、変更可能に構成されてもよい。レーザ加工装置100は、必ずしも制御部を備えていなくてもよく、例えば、レーザ加工装置100以外の装置から受け付けた制御信号によってレーザ照射部20が制御されてもよい。第1ノズル15等は、不活性ガスとしての窒素を噴射したが、噴射されるガスについては種々変形可能である。例えば、ノズルは、不活性ガスとしてのアルゴンを噴射してもよいし、不活性ガス以外のガスを噴射してもよい。ノズルの形状および配置については、周知の技術を適用できる。
【0047】
図12は、変形例の第1ノズル17のガス噴射口近傍の斜視図である。図12に示されるように、変形例の第1ノズル17は、第1実施形態のノズル15における噴射口PSの代わりに、1つの噴射口PScを備えている。噴射口PScは、第1実施形態の噴射口PSの全てがつながった楕円状のスリットである。このように、第1ノズル17および第1ノズル17に形成された噴射口PScについては、種々変形可能である。その他の変形例のノズルとして、気体を噴射する単体としての装置ではなく、第3実施形態(図11)のように、第1保持具13bに形成された気体が供給されるようなノズル的な構造であってもよい。本明細書における「気体を噴射するノズル」とは、シート材MS,MSaの表面に沿った気流の元となる気体を噴射する機構および構造をいう。
【0048】
上記実施形態における第1保持具13,13bと、シート材MS,MSaと、第2保持具14との位置関係については、種々変形可能である。上記実施形態では、第1保持具13,13bと第2保持具14との両方がシート材MS,MSaから離間して配置されたが、第1保持具13,13bと第2保持具14との少なくとも一方がシート材MS,MSaから離間して配置されていればよい。第1保持具13,13bおよび第2保持具14は、シート材MS,MSaにおける加工面Mfおよび下面Muに対して必ずしも平行に配置される必要はない。例えば、搬送方向DR1に沿って下流側ほど距離d1または距離d2が小さくなるように傾斜していてもよいし、その逆であってもよい。第1ノズル15および第2ノズル16から噴射されるガスの気流が加工面Mfおよび下面Muの表面に沿って生じる範囲で、第1保持具13,13bおよび第2保持具14の形状は変更される。
【0049】
ノズルから噴射された気体は、離間して配置された第1保持具と第2保持具との少なくとも一方と、被加工材料としてのシート材との間に形成された隙間(例えば、第1隙間GP1)において、シート材の表面に沿った気流を発生させればよい。例えば、第1実施形態の加工用治具10において、第1隙間GP1に気流が発生せず、第2隙間GP2のみに気流が発生してもよい。また、製造フロー(図6)におけるステップS3の処理では、第2ノズル16は、第2隙間GP2において、シート材MSの下面Muに沿った気流を生じさせてなくてもよい。第1隙間GP1の厚さを表す距離d1および第2隙間GP2の厚さを表す距離d2については、種々変形可能である。
【0050】
また、第1隙間GP1,GP1bおよび第2隙間GP2に生じさせる気流の方向についても種々変形可能である。シート材MS,MSaに表面に沿った気流の方向は、ローラ11,12の搬送方向DR1と同じ方向または直交する方向である必要はなく、例えば、搬送方向DR1に30度(°)の角度を成していてもよい。本態様における被加工材料の表面に沿った気流とは、被加工材料の表面に略平行に流れるガスの流れをいう。本明細書における略平行とは、基準面に対して20°以下の角度を成す平面に平行なことをいう。表面に沿った気流として、基準面に対して5°以下の角度を成す平面に平行であることがより好ましい。例えば、加工面Mfに付着したスパッタ物SPの近辺において、部分的に被加工材料の表面に沿わない気流が発生していても、当該気流は、被加工材料の表面に沿った気流としてみなすことができる。また、被加工材料の表面が曲面である場合には、気流は当該曲面に沿って流れる。被加工材料の表面に沿った気流は、レーザ光が照射される付近であればよい。そのため、第1実施形態のレーザ加工装置100のように、ローラ11,12に搬送される加工面Mfおよび下面Muの全面に、窒素の気流が生じていなくてもよい。
【0051】
[変形例2]
図13は、変形例における第1保持具13cの説明図である。図13には、レーザ照射部20からレーザ光LSが照射されるシート材MSと、レーザ照射部20とシート材MSとの間に配置される変形例の第1保持具13cとが概略斜視図によって示されている。なお、変形例では、第1実施形態の構成と同じ構成について図13での図示を省略している。変形例では、第1保持具13cが、レーザ光LSを透過する石英で形成されている。また、第1保持具13cには、レーザ光LSが通過する第1スリットSL1が形成されていない。すなわち、第1保持具13cは、レーザ光LSを透過可能なレーザ光透過部として機能する。
【0052】
変形例の第1保持具13cは、レーザ光LSを透過可能である。そのため、第1保持具13cにレーザ光LSが通過する第1スリットSL1を形成しなくてもよく、第1保持具13cの形状の自由度が向上する。第1保持具13cに付着したスパッタ物SPは、レーザ光LSの自浄効果(レーザクリーニング)により、レーザ加工は、スパッタ物SPによる影響を受けなくて済む。例えば、図13に示されるように、第1保持具13cの全面を石英で形成することにより、レーザ照射部20は、シート材MSの任意の位置にレーザ光LSを射出できる。これにより、シート材MSを任意の形状に切断できる。例えば、レーザ照射部20は、図5に示されるシート材MSの幅の長さWを半分の長さW/2に分断してもよい。
【0053】
上記実施形態および変形例のレーザ照射部20は、加工用治具10,10a,10bに対して、レーザ光LSの照射角度α2を変更可能な状態で位置を固定されていたが、レーザ照射部20については種々変形可能である。例えば、加工用治具10,10a,10bに対してレーザ照射部20の位置が変化してもよい。シート材MS,MSaにレーザ光LSを照射するレーザ照射部20は、2つ以上あってもよい。また、レーザ照射部20は、レーザ光LSを反射する走査用鏡を備えており、走査用鏡の向きを変化させることにより、シート材MS,MSaに対するレーザ光LSの照射位置を変化させてもよい。
【0054】
図13に示される変形例では、第1保持具13cの全てが石英で形成されたが、第1保持具においてレーザ透過部によって形成される部分については、種々変形可能である。例えば、第1実施形態における第1保持具13の第1スリットSL1を石英で充填してもよい。このようにすることで、レーザ加工装置では、シート材MSにレーザ光LSを照射した上で、スパッタ物SPが第1保持具13を超えてレーザ照射部20に付着することを防止できる。また、レーザ透過部は、石英以外の材料で構成されてもよく、例えば、サファイアで構成されていてもよい。
【0055】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【符号の説明】
【0056】
10,10a,10b…加工用治具
11,11a…上流ローラ(搬送部)
12…下流ローラ(搬送部)
13,13b,13c…第1保持具
14…第2保持具
15,17…第1ノズル
15a…第4ノズル
15b…第5ノズル
15z…第3ノズル
16…第2ノズル
20,20z…レーザ照射部
30…制御部
100,100a,100b,100z…レーザ加工装置
AR1…切断部
DR1…搬送方向
DR2…噴射方向
FF1,FF1b…対向面
FF2…対向面
GP1,GP1b…第1隙間
GP2…第2隙間
LS…レーザ光
MS,MSa…シート材(被加工材料)
Mf,Mfa…加工面(一の面)
Mu…下面(逆側の面)
PS,PSc…噴射口
SA1…レーザ加工製品
SL1…第1スリット
SL2…第2スリット
SP…スパッタ物
V1,V2…流速
L…移動速度
S…搬送速度
d1,d1b,d2…距離
Q1,Q2…流量
α1…角度
α2…照射角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13