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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-24
(45)【発行日】2022-02-01
(54)【発明の名称】水栓装置
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/084 20060101AFI20220125BHJP
   B05B 1/18 20060101ALI20220125BHJP
   B05B 1/02 20060101ALI20220125BHJP
【FI】
E03C1/084
B05B1/18
B05B1/02 101
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020031418
(22)【出願日】2020-02-27
(65)【公開番号】P2021134554
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2021-06-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大原 雄大朗
(72)【発明者】
【氏名】溝口 浩
【審査官】広瀬 杏奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-056273(JP,A)
【文献】特開2016-068968(JP,A)
【文献】特開2012-072628(JP,A)
【文献】特開2019-044516(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03208390(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/08-1/10
B05B 1/18
B05B 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐水口が形成された吐水部と、
前記吐水部を有するスパウト部と、
前記吐水口に水を運ぶ流路部と、
前記流路部の出口側に装着される泡沫キャップと、を備え、
前記泡沫キャップは、
内部に空間が設けられた内部空間部と、
前記泡沫キャップの上流側端部に設けられ、前記内部空間部内に水を流入させるための水流入口と、
前記水の流れによって前記内部空間部内に空気を取り込むための空気流入口と、
前記泡沫キャップの下流側端部に設けられ、前記内部空間部内で形成された気泡流を外部へ吐出するための気泡流吐出口と、を有し、
前記空気流入口は、前記泡沫キャップの側面に設けられており、
前記流路部の側面には、前記空気流入口へ連通し、前記スパウト部に設けられた隙間からの空気を前記空気流入口へ通すための連通口が設けられ、
前記流路部は、前記スパウト部とは別体の部材である吐水継手で構成され、
前記流路部は、前記スパウト部に覆われ、
前記泡沫キャップは、前記吐水継手に装着するための螺合部をさらに有し、
前記空気流入口は、前記泡沫キャップの側面において、周方向に複数設けられたことを特徴とする水栓装置。
【請求項2】
前記泡沫キャップは、複数の前記空気流入口を仕切るための複数の柱部と、をさらに有し、
前記螺合部は、第1円柱基部と、前記第1円柱基部の円周面に設けられたねじ部と、を有し、
前記柱部は、前記ねじ部の谷径よりも径方向中心側に位置するように形成されたことを特徴とする請求項1に記載の水栓装置。
【請求項3】
前記柱部の一端側は、前記螺合部に接続されており、
前記柱部の他端側は、前記空気流入口を挟んで前記螺合部の向かい側に設けられた第2円柱部に接続されており、
前記第2円柱部は、前記ねじ部の谷径よりも径方向中心側に位置するように形成されたことを特徴とする請求項2に記載の水栓装置。
【請求項4】
前記柱部は、前記第2円柱部よりも径方向中心側に位置するように形成されたことを特徴とする請求項3に記載の水栓装置。
【請求項5】
前記空気流入口は、前記螺合部よりも前記気泡流吐出口から離れた位置に設けられたことを特徴とする請求項2乃至4の何れか1つに記載の水栓装置。
【請求項6】
吐水口が形成された吐水部と、
前記吐水部を有するスパウト部と、
前記吐水口に水を運ぶ流路部と、
前記流路部の出口側に装着される泡沫キャップと、を備え、
前記泡沫キャップは、
内部に空間が設けられた内部空間部と、
前記泡沫キャップの上流側端部に設けられ、前記内部空間部内に水を流入させるための水流入口と、
前記水の流れによって前記内部空間部内に空気を取り込むための空気流入口と、
前記泡沫キャップの下流側端部に設けられ、前記内部空間部内で形成された気泡流を外部へ吐出するための気泡流吐出口と、を有し、
前記空気流入口は、前記泡沫キャップの側面に設けられており、
前記流路部の側面には、前記空気流入口へ連通し、前記スパウト部に設けられた隙間からの空気を前記空気流入口へ通すための連通口が設けられ、
前記空気流入口と前記連通口とは、少なくとも一部がずれた位置に配置されていることを特徴とする水栓装置。
【請求項7】
前記流路部は、前記スパウト部とは別体の部材である吐水継手で構成され、
前記流路部は、前記スパウト部に覆われていることを特徴とする請求項6に記載の水栓装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、泡沫キャップが装着される水栓装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、泡沫キャップが装着される水栓装置は知られている。一般的に、泡沫キャップは、泡沫キャップの内部空間部内に水を流入させるための水流入口と、水の流れによって内部空間部内に空気を取り込むための空気流入口と、内部空間部内で形成された気泡流を外部へ吐出するための気泡流吐出口と、を備えている(例えば特許文献1)。
【0003】
この際、特許文献1のような従来の水栓装置であると、空気流入口は、水栓装置の吐水口側(気泡流吐出口が設けられた面)に形成された通気口から外部の空気を取り込んでいる。このような水栓装置であると、しっかりと空気を確保するために通気口の領域を確保すると、その分、気泡流吐出口の領域を圧迫してしまい、設計者の望む吐水量で水を吐出させることが困難となってしまう。一方で、しっかりと水を吐出させるために気泡流吐出口の領域を確保すると、その分、通気口の領域を圧迫してしまい、設計者の望む泡沫水に必要な空気を泡沫キャップの内部空間部内に取り入れることが困難となってしまう。通気口の領域と気泡流吐出口の領域をしっかりと確保するためには、通気口と気泡流吐出口とが設けられた泡沫キャップおよび水栓装置を大型化すればよいが、泡沫キャップおよび水栓装置が大型になってしまうと、その分デザインの自由度が制限されてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】WO01/068995号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、泡沫キャップおよび水栓装置を必要以上に大型にする必要なく、空気流入口へしっかりと空気を通気することができる水栓装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、吐水口が形成された吐水部と、前記吐水部を有するスパウト部と、前記吐水口に水を運ぶ流路部と、前記流路部の出口側に装着される泡沫キャップと、を備え、前記泡沫キャップは、内部に空間が設けられた内部空間部と、前記泡沫キャップの上流側端部に設けられ、前記内部空間部内に水を流入させるための水流入口と、前記水の流れによって前記内部空間部内に空気を取り込むための空気流入口と、前記泡沫キャップの下流側端部に設けられ、前記内部空間部内で形成された気泡流を外部へ吐出するための気泡流吐出口と、を有し、前記空気流入口は、前記泡沫キャップの側面に設けられており、前記流路部の側面には、前記空気流入口へ連通し、前記スパウト部に設けられた隙間からの空気を前記空気流入口へ通すための連通口が設けられていることを特徴とする水栓装置である。
【0007】
この水栓装置によれば、泡沫キャップの側面に空気流入口を設け、流路部の側面には、空気流入口へ連通し、スパウト部に設けられた隙間からの空気を空気流入口へ通すための連通口が設けられていることにより、しっかりと空気を確保するために空気流入口の領域を確保しても、気泡流吐出口の領域を圧迫してしまうことを抑制できる。したがって、泡沫キャップおよび水栓装置を必要以上に大型にする必要なく、空気流入口の領域と気泡流吐出口の領域をしっかりと確保することができる。換言すれば、吐水幅を確保しながら、一定の空気混入量を確保することが出来るのである。
【0008】
第2の発明は、第1の発明において、前記流路部は、前記スパウト部とは別体の部材である吐水接手で構成され、前記流路部は、前記スパウト部に覆われていることを特徴とする水栓装置である。
【0009】
この水栓装置によれば、スパウト部に設けられた隙間からの空気を空気流入口へ通すための連通口が設けられていることにより、しっかりと空気を確保するために空気流入口の領域を確保しても、気泡流吐出口の領域を圧迫してしまうことを抑制できる。したがって、泡沫キャップおよび水栓装置を必要以上に大型にする必要なく、空気流入口の領域と気泡流吐出口の領域をしっかりと確保することができる。換言すれば、吐水幅を確保しながら、一定の空気混入量を確保することが出来るのである。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、前記空気流入口と前記連通口とは、少なくとも一部がずれた位置に配置されていることを特徴とする水栓装置である。
【0011】
この水栓装置によれば、泡沫キャップの内部空間を流れた水が空気流入口から流出してしまった際に、吐水継手の内壁によって、水栓装置の外部から漏水してしまうことを抑制することができる。
【0012】
第3の発明は、第1または第2の発明において、前記泡沫キャップは、前記吐水継手に装着するための螺合部をさらに有し、前記空気流入口は、前記泡沫キャップの側面において、周方向に複数設けられたことを特徴とする水栓装置である。
【0013】
この水栓装置によれば、螺合によって吐水継手に簡単に取り付けることができる。一般的に螺合は周方向の位置決めを行うことが難しい。しかしながら空気流入口を泡沫キャップの側面において周方向に複数設けたことにより、周方向の複数の方向から空気を取り入れることができるため、螺合により取り付ける場合であっても、確実に空気の吸引を行うことができる。
【0014】
第4の発明は、第3の発明において、前記泡沫キャップは、複数の前記空気流入口を仕切るための複数の柱部をさらに有し、前記螺合部は、第1円柱基部と、前記第1円柱基部の円周面に設けられたねじ部と、を有し、前記柱部は、前記ねじ部の谷径よりも径方向中心側に位置するように形成されたことを特徴とする水栓装置である。
【0015】
この泡沫キャップによれば、柱部を、螺合部のねじ部の谷径よりも径方向中心側に位置するように形成したことにより、螺合部が吐水継手に螺合装着された際でも、柱部よりも径方向外側の空間を介して、複数の空気流入口が連通されることになる。その結果、さらに、周方向の複数の方向から空気を取り入れやすくなる。したがって、複数の空気流入口を泡沫キャップの側面に設けた場合であっても、確実に空気を吸引することができる。
【0016】
第5の発明は、第4の発明において、前記柱部の一端側は、前記螺合部に接続されており、前記柱部の他端側は、前記空気流入口を挟んで前記螺合部の向かい側に設けられた第2円柱部に接続されており、前記第2円柱部は、前記ねじ部の谷径よりも径方向中心側に位置するように形成されたことを特徴とする水栓装置である。
【0017】
この水栓装置によれば、第2円柱部は、ねじ部の谷径よりも径方向中心側に位置するように形成されたため、螺合部が吐水継手に螺合装着された際でも、第2円柱部よりも径方向外側の空間を利用して、空気を取り入れやすくなる。したがって、複数の空気流入口を泡沫キャップの側面に設けた場合であっても、確実に空気を吸引することができる。
【0018】
第6の発明は、第5の発明において、前記柱部は、前記第2円柱部よりも径方向中心側に位置するように形成されたことを特徴とする水栓装置である。
【0019】
この水栓装置によれば、第2円柱部よりも径方向外側の空間を介して取り込まれた空気が、該空間より広い、柱部よりも径方向外側の空間に流入される。そして、柱部よりも径方向外側の空間を介して、複数の空気流入口から泡沫キャップの内部空間へ効率的に空気を流入させることができる。したがって、複数の空気流入口を泡沫キャップの側面に設けた場合であっても、確実に空気を吸引することが抑制できる。
【0020】
第7の発明は、第3~6の発明において、前記空気流入口は、前記螺合部よりも前記気泡流吐出口から離れた位置に設けられたことを特徴とする水栓装置である。
【0021】
この水栓装置によれば、空気流入口から流入された空気を、螺合部が設けられた内部空間の空間領域を利用して、水と攪拌することができる。したがって、泡沫キャップを軸方向に大型化することなく、泡沫のムラが発生してしまうことが抑制できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の態様によれば、泡沫キャップおよび水栓装置を必要以上に大型にする必要なく、空気流入口の領域と気泡流吐出口の領域をしっかりと確保する泡沫キャップおよび水栓装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施の形態に係る水栓装置を示す模式的縦断面図である。
図2図1の水栓装置の吐水部周辺を示す模式的透明部分断面図である。
図3図2の水栓装置における吐水継手および泡沫キャップを示す模式的縦断面図である。
図4図3の泡沫キャップを示す模式的斜視図である。
図5図3の吐水継手および泡沫キャップを示す模式的部分縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0025】
図1は、本発明の実施の形態に係る水栓装置を示す模式的縦断面図である。また、図2は、図1の水栓装置の吐水部周辺を示す模式的透明部分断面図である。
図1及び図2に示すように、本発明の実施の形態に係る水栓装置100は、吐水口2が形成された吐水部4と、吐水部4を有するスパウト部6と、吐水口2に装着される吐水継手8と、吐水継手8の内部に装着される泡沫キャップ10と、を備えている。水栓装置100は、使用者の操作によって、給水源から得た水を、図示していないホース部材から吐水継手8内および泡沫キャップ10内へ通過させ、吐水口2から吐水させるものである。この「使用者の操作」とは、例えば、使用者による操作ハンドル(図示なし)の操作や、吐水部4に設置された人体検知センサによる使用者の手の検出である。
【0026】
図3は、図2の水栓装置における吐水継手および泡沫キャップを示す模式的縦断面図である。
図3に示すように、泡沫キャップ10は、内部に空間が設けられた内部空間部12と、内部空間部12内に水を流入させるための水流入口16と、水の流れによって内部空間部12内に空気を取り込むための空気流入口18と、内部空間部10内で形成された気泡流を外部へ吐出するための気泡流吐出口22と、を有する。水流入口16は、泡沫キャップ10の上流側端部14に設けられている。気泡流吐出口22は、泡沫キャップ10の下流側端部20に設けられている。空気流入口18は、泡沫キャップ10の上流側端部14と下流側端部20との間に形成された泡沫キャップ10の側壁、すなわち泡沫キャップ10の側面に設けられている。
【0027】
使用者の操作によって、吐水継手8の上流側から泡沫キャップ10に向かって流れ込んだ水は、泡沫キャップ10の水流入口16から、内部空間部12内に流入される。この際、内部空間部12内に流入された水の流れによって、空気流入口18から、内部空間部12内へ空気が取り込まれる。内部空間部12内に取り込まれた空気は、内部空間部12内において水と攪拌され、内部空間部10内で気泡流が形成される。内部空間部10内で形成された気泡流は、気泡流吐出口22(水栓装置100の吐水口)を通って、泡沫キャップ10から排出される。
【0028】
吐水継手8の側面には、空気流入口18へ連通し、スパウト部6に設けられた隙間(図示なし)から得られた空気を空気流入口18へ連通するための連通口26が設けられている。なお、本発明における「連通」とは、「互いに繋がって空気が通る」ということであり、内部空間部12内に流入された水の流れによって、空気流入口18から空気が十分取り込まれるような隙間がスパウト部6に形成されていれば、「連通」されているものである。
【0029】
このように、泡沫キャップ10の側面に空気流入口18を設け、吐水継手8の側面には、空気流入口18へ連通し、スパウト部6と吐水継手8の間に設けられた空気流路40からの空気を空気流入口18へ通すための連通口26が設けられていることにより、しっかりと空気を確保するために空気流入口18の領域を大きく確保しても、水栓装置100の吐水口2である気泡流吐出口22の領域を圧迫してしまうことを抑制できる。したがって、泡沫キャップ10および水栓装置100を必要以上に大型にする必要なく、空気流入口18の領域と気泡流吐出口22の両方の領域をしっかりと確保することができる。換言すれば、吐水幅を確保しながら、一定の空気混入量を確保することが出来るのである。
【0030】
泡沫キャップ10は、吐水継手8に装着するための螺合部24を備えている。すなわち、泡沫キャップ10は、吐水継手8に対して螺合接続されている。螺合部24は、空気流入口18よりも下流側に位置している。つまり、空気流入口18は、螺合部24よりも上流側に位置している。言い換えると、空気流入口18は、螺合部24よりも気泡流吐出口22から離れた位置に設けられている。この構成により、螺合によって水栓装置の吐水口に簡単に取り付けることができる。なお、螺合部24は、吐水継手8の連通口26よりも、軸方向における下流側に配置されている。
【0031】
空気流入口18は、螺合部24よりも上流側に位置していることにより、空気流入口18から流入された空気を、螺合部24が設けられた泡沫キャップ10の内部空間部12の空間領域を利用して、水と攪拌することができる。したがって、泡沫キャップ10を軸方向に大型化することなく、泡沫(空気混入)のムラが発生してしまうことが抑制できる。
【0032】
図4は、図3の泡沫キャップを示す模式的斜視図である。また、図5は、図3の吐水継手および泡沫キャップを示す模式的部分縦断面図である。
図4および図5に示すように、空気流入口18と連通口26とは、軸方向において、少なくとも一部がずれた位置に配置されている。本実施形態において、例えば、空気流入口18において、連通口26と連通している範囲は、軸方向において50%以下であることが好ましい。
【0033】
このように、空気流入口18と連通口26とは、軸方向において、少なくとも一部がずれた位置に配置されているため、泡沫キャップ10の内部空間部12を流れた水が空気流入口18から吐水継手8側へ流出してしまった際に、吐水継手8の内壁によって阻まれることによって、水栓装置100の外部から漏水してしまうことを抑制することができる。
【0034】
また、連通口26から吸入された空気は、少なくともその一部が泡沫キャップ10の外壁と衝突し、周方向に拡散されることになる。これにより、一部の空気流入口18からのみ空気が流入することによって発生することが懸念される、泡沫(空気混入)のムラを抑制することができるようになる。
【0035】
この際、空気流入口18は、空気流入口18の上流側のみ連通口26と連通し、空気流入口18の下流側は連通口26と連通していない方が好ましい。この構成により、吐水継手8の内壁によって、水栓装置100の外部から漏水してしまうことをさらに抑制することができる。また、吸入する空気の周方向への拡散も促進され、さらに泡沫(空気混入)のムラを抑制することができるようになる。
【0036】
空気流入口18は、泡沫キャップ10の側面において、周方向に複数設けられている。複数の空気流入口18は、泡沫キャップ10の側面において周方向に並んで設けられている。
【0037】
上述したように、泡沫キャップ10は、吐水継手8に対して螺合接続されている。一般的に、螺合接続においては、吐水継手8と、吐水継手8に螺合接続された泡沫キャップ10との、周方向の位置決めを行うことが難しい。しかしながら、このように、空気流入口18を泡沫キャップ10の側面において周方向に複数並んで設けたことにより、周方向の複数の方向から空気を取り入れることができるため、螺合接続により取り付けられた状態であっても、周方向の複数の方向から、確実に空気の吸引を行うことができ、泡沫ムラを抑制することができる。
【0038】
泡沫キャップ10は、複数の空気流入口18を仕切るための複数の柱部28と、をさらに備えている。複数の柱部28は、泡沫キャップ10の側面において、周方向に略等間隔で配置されている。ここでいう「略等間隔」とは、複数の柱部28における互いの間隔(空気流入口18の周方向の長さ)のずれが、1mm以内である。
【0039】
螺合部24は、第1円柱基部30と、第1円柱基部30の円周面(外周面)に設けられたねじ部32と、を有する。第1円柱基部30は、泡沫キャップ10の螺合部24部分の側壁であり、螺合部24の全周面に亘って形成されている。一方で、ねじ部32は、螺合部24の全周面に亘って形成されていない。すなわち、螺合部24は、第1円柱基部30の円周面(外周面)に設けられた非ねじ部34を有する。
【0040】
柱部28は、ねじ部32の谷径36よりも径方向中心側に位置するように形成されている。また、非ねじ部34は、ねじ部32の谷径36よりも径方向中心側に位置するように形成されている。さらに、柱部28は、非ねじ部34とほぼ同じ径方向位置に形成されている。ここでいう「柱部28は、非ねじ部34とほぼ同じ径方向位置に形成されている」とは、柱部28と非ねじ部34との径方向におけるずれが、0.2mm以内である。
【0041】
柱部28をねじ部32の谷径36よりも径方向中心側に位置するように形成したことにより、螺合部24が吐水継手8に螺合装着された際でも、柱部28よりも径方向外側の空間を介して、複数の空気流入口18が互いに連通されることになる。その結果、さらに、周方向の複数の方向から空気を取り入れやすくなる。したがって、複数の空気流入口18を泡沫キャップ10の側面に設けた場合であっても、確実に空気を吸引することができる。
【0042】
泡沫キャップ10は、空気流入口18を挟んで螺合部24の向かい側に設けられた第2円柱部38を有する。この際、泡沫キャップ10において、複数の柱部28の一端側は螺合部24に接続されており、柱部28の他端側は第2円柱部38に接続されている。第2円柱部38は、ねじ部32の谷径36よりも径方向中心側に位置するように形成されている。
【0043】
第2円柱部38は、ねじ部32の谷径36よりも径方向中心側に位置するように形成したことにより、螺合部24が吐水継手8に螺合装着された際でも、第2円柱部38よりも径方向外側の空間を利用して、空気を取り入れやすくなる。したがって、複数の空気流入口18を泡沫キャップ10の側面に設けた場合であっても、確実に空気を吸引することができる。
【0044】
第2円柱部38の少なくとも一部は、軸方向において、連通口26と重なる位置に設けられている。なお、本実施形態においては、第2円柱部38は、軸方向において、連通口26と完全に重なる位置に設けられている。
【0045】
さらに、柱部28は、第2円柱部38よりも径方向中心側に位置するように形成されている。また、非ねじ部34は、第2円柱部38よりも径方向中心側に位置するように形成されている。
【0046】
第2円柱部38よりも径方向外側の空間を介して取り込まれた空気が、該空間より広い、柱部28よりも径方向外側の空間に流入される。そして、柱部28よりも径方向外側の空間を介して、複数の空気流入口18から泡沫キャップ10の内部空間部12へ効率的に空気を流入させることができる。したがって、複数の空気流入口18を泡沫キャップ10の側面に設けた場合であっても、確実に空気を吸引することが抑制できる。
【0047】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。
【0048】
前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、水栓装置100や吐水継手8、泡沫キャップ10の設置構造などが備える各要素の形状、寸法、材質、配置などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。例えば、前述の実施の形態においては、図示していないホース部材と、吐水継手と、で流路部を形成したが、これらは互いに一体の流路部とすることができる。また、流路部をスパウト部で覆う構造としたが、スパウト部の内部に形成した空洞に直接通水することで流路部として利用することもできる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0049】
2 吐水口、 4 吐水部、 6 スパウト部、 8 吐水継手(流路部材)、 10 泡沫キャップ、 12 内部空間部、 14 上流側端部、 16 水流入口、 18 空気流入口、 20 下流側端部、 22 気泡流吐出口、 24 螺合部、 26 連通口、 28 柱部、 30 第1円柱基部、 32 ねじ部、 34 非ねじ部、 36 谷径、 38 第2円柱部、 100 水栓装置
図1
図2
図3
図4
図5