(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-24
(45)【発行日】2022-02-01
(54)【発明の名称】エレベータのドア装置用の動作設定装置、及び該動作設定装置を用いたドア装置の開閉動作の設定方法。
(51)【国際特許分類】
B66B 13/14 20060101AFI20220125BHJP
【FI】
B66B13/14 G
(21)【出願番号】P 2020058331
(22)【出願日】2020-03-27
【審査請求日】2020-03-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】特許業務法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】柏倉 寛
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-117960(JP,A)
【文献】特開2007-254035(JP,A)
【文献】特開2001-231281(JP,A)
【文献】特開2002-302369(JP,A)
【文献】特開2003-341963(JP,A)
【文献】国際公開第2004/028951(WO,A1)
【文献】特開平10-017250(JP,A)
【文献】特開平08-259154(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 13/00 - 13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータのドア装置を制御する制御装置に対して一時的に接続されるエレベータのドア装置用の動作設定装置であって、
かごドアの開き方の種類が選択肢として複数設定されているドア種類選択部と、
前記かごドアに設定する開閉速度の指標が選択肢として複数設定されている速度指標選択部と、
前記ドア装置の開閉動作の設定内容を示す動作設定情報を導出し、該動作設定情報を前記ドア装置の開閉動作を制御する制御装置に出力する設定処理を実行する処理部と、を備え、
前記処理部は、前記設定処理において、前記ドア種類選択部で選択されている前記開き方の種類と前記速度指標選択部で選択されている前記開閉速度の指標とに基づいて、前記動作設定情報である速度パターン情報であって、前記ドア装置の開閉動作中における各時点での前記かごドアの速度を示す速度パターン情報を導出する速度パターン導出部を備える、
エレベータのドア装置用の動作設定装置。
【請求項2】
前記処理部は、前記設定処理において、かごの入口幅を示す入口幅情報を取得し、該入口幅情報に基づいて、前記速度パターン導出部で導出した前記速度パターン情報を調整した調整パターン情報を作成する速度パターン調整部を有する、
請求項1に記載のエレベータのドア装置用の動作設定装置。
【請求項3】
前記処理部は、前記設定処理において、前記かごドアの動力源となるモーターが出力可能なトルクに制限をかけるトルク制限情報を導出するトルク制限部を有し、
該トルク制限部は、前記モーターのトルク値を示すトルク値情報を取得し、前記トルク値情報が示すトルク値よりも高いトルク値を前記トルク制限情報とするように構成される、
請求項1又は請求項2に記載のエレベータのドア装置用の動作設定装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載のエレベータのドア装置用の動作設定装置を前記制御装置に一時的に接続した状態で行うドア装置の開閉動作の設定方法であって、
作業者が前記開閉動作の設定対象となる前記ドア装置の前記かごドアが該当する前記開き方の種類を前記ドア種類選択部で選択し、且つ前記開閉動作の設定対象となる前記ドア装置の前記かごドアの動作速度の目安とする前記開閉速度の指標を前記速度指標選択部で選択した後に、前記処理部に前記設定処理を実行させる設定処理実行工程を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータのドア装置の開閉動作を設定するためのエレベータのドア装置用の動作設定装置、及び動作設定装置を用いたドア装置の開閉動作の設定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレベータのドア装置の開閉動作は種々の方法で設定されており、例えば、特許文献1に開示されているような、前記開閉動作を設定する機能を有するエレベータも知られている。
【0003】
かかるエレベータは、かごの上に配置されたドア開閉制御装置であって、ドアの開閉動作を制御するドア開閉制御装置と、かご内に設けられた開閉釦、行き先釦、表示装置を有するかご内操作盤と、を備えている。
【0004】
ドア開閉制御装置は、ドアの開閉動作時の各時点におけるかごドアの移動速度を示す情報である速度パターンが設定されており、この速度パターンに基づいてかごドアの動きを制御するように構成されている。
【0005】
かご内操作盤は、開閉釦や行き先釦を使ってドア開閉制御装置に速度パターンを設定できる状態(保守モード)に切り替える保守モード切替スイッチを有している。かご内操作盤は、保守モード切替スイッチにより保守モードに切り替えられると、開閉釦を押し操作することによって複数の速度パターンの中から所望する速度パターンを選択でき、行き先釦を押し操作することによって選択した速度パターンを調整できるようになっており、作業者は、開閉釦で選択した速度パターンを行き先釦で調整したうえでドア開閉制御装置に送信する作業を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、ドア装置に開閉動作を設定する際、複数の速度パターンの中からドア装置に設定する速度パターンを選んだり、速度パターンを調整したりする作業は、開閉動作に求められる要求やドア装置の仕様等の条件に基づいて行われている。
【0008】
しかしながら、作業者は、速度パターンが前記条件に合っているか否かの判断を自身の感覚を頼りにして行っているため、ドア装置に開閉動作を設定する際の前記条件が同じであったとしても、ドア装置の開閉動作の設定にはばらつきが生じることがあり、設定作業に時間もかかっていた。
【0009】
そこで、本発明は、かかる実情に鑑み、エレベータのドア装置の開閉動作の設定内容に一様性を持たせることができるエレベータのドア装置用の動作設定装置、及び動作設定装置を用いたドア装置の開閉動作の設定方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のエレベータのドア装置用の動作設定装置は、
エレベータのドア装置を制御する制御装置に対して一時的に接続されるエレベータのドア装置用の動作設定装置であって、
かごドアの開き方の種類が選択肢として複数設定されているドア種類選択部と、
前記かごドアに設定する開閉速度の指標が選択肢として複数設定されている速度指標選択部と、
前記ドア装置の開閉動作の設定内容を示す動作設定情報を導出し、該動作設定情報を前記ドア装置の開閉動作を制御する制御装置に出力する設定処理を実行する処理部と、を備え、
前記処理部は、前記設定処理において、前記ドア種類選択部で選択されている前記開き方の種類と前記速度指標選択部で選択されている前記開閉速度の指標とに基づいて、前記動作設定情報である速度パターン情報であって、前記ドア装置の開閉動作中における各時点での前記かごドアの速度を示す速度パターン情報を導出する速度パターン導出部を備える。
【0011】
上記構成のエレベータのドア装置用の動作設定装置によれば、かごドアの開き方の種類をドア種類選択部で選択し、かごドアの開閉速度の指標をドア種類選択部で選択すれば、選択されている開閉動作の種類と開閉速度の指標に基づいて既定の速度パターン情報が導出されるため、開閉動作の設定内容を定める条件となるかごドアの開き方の種類と開閉速度の指標が同じである場合は、開閉動作の設定内容を同じ内容に揃えることができるようになっている。
【0012】
上記構成のエレベータのドア装置用の動作設定装置において、
前記処理部は、前記設定処理において、かごの入口幅を示す入口幅情報を取得し、該入口幅情報に基づいて、前記速度パターン導出部で導出した前記速度パターン情報を調整した調整パターン情報を作成する速度パターン調整部を有するようにしてもよい。
【0013】
上記構成のエレベータのドア装置用の動作設定装置によれば、かごの入口幅が開閉動作の設定内容を定める条件となる場合であっても、速度パターン調整部がかごの入口幅を示す入口幅情報を取得したうえで、該入口幅情報に基づいて速度パターンが調整される。そのため、上記構成のエレベータのドア装置用の動作設定装置では、入口幅情報に基づく速度パターンの調整の仕方を揃えることができるようになっている。
【0014】
本発明のエレベータのドア装置用の動作設定装置において、
前記処理部は、前記設定処理において、前記かごドアの動力源となるモーターが出力可能なトルクに制限をかけるトルク制限情報を導出するトルク制限部を有し、
該トルク制限部は、前記モーターのトルク値を示すトルク値情報を取得し、前記トルク値情報が示すトルク値よりも高いトルク値を前記トルク制限情報とするように構成されていてもよい。
【0015】
上記構成のエレベータのドア装置用の動作設定装置によれば、トルク制限部が、モーターのトルク値に基づいてトルク制限情報を導出するように構成されているため、モーターに出力させるトルクの上限の定め方も揃えることができるようになっている。
【0016】
本発明の動作設定装置を用いたドア装置の開閉動作の設定方法は、
上記何れかのエレベータのドア装置用の動作設定装置を前記制御装置に一時的に接続した状態で行うドア装置の開閉動作の設定方法であって、
作業者が前記開閉動作の設定対象となる前記ドア装置の前記かごドアが該当する前記開き方の種類を前記ドア種類選択部で選択し、且つ前記開閉動作の設定対象となる前記ドア装置の前記かごドアの動作速度の目安とする前記開閉速度の指標を前記速度指標選択部で選択した後に、前記処理部に前記設定処理を実行させる設定処理実行工程を備える方法である。
【0017】
上記構成の動作設定装置を用いたドア装置の開閉動作の設定方法によれば、開閉動作の設定内容を定めるための条件として、かごドアの開き方の種類とかごドアに設定する開閉速度の指標とを選択すれば、動作設定装置に設定内容速度パターン情報を導出させることができるため、開閉動作の設定内容を定める条件となるかごドアの開き方の種類と開閉速度の指標が同じである場合は、開閉動作の設定内容を同じ内容に揃えることができる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明のエレベータのドア装置用の動作設定装置、及び動作設定装置を用いたドア装置の開閉動作の設定方法によれば、エレベータのドア装置の開閉動作の設定内容に一様性を持たせることができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るエレベータのドア装置用の動作設定装置の外観図である。
【
図2】
図2は、同実施形態に係るエレベータのドア装置用の動作設定装置と、ドア装置の概要を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、同実施形態に係るエレベータのドア装置用の動作設定装置の構成の概要を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、同実施形態に係るエレベータのドア装置用の動作設定装置の速度パターン選択部の構成のブロック図である。
【
図5】
図5は、同実施形態に係るエレベータのドア装置用の動作設定装置の速度パターン調整部の構成のブロック図である。
【
図6】
図6は、同実施形態に係るエレベータのドア装置用の動作設定装置のトルク制限部の構成のブロック図である。
【
図7】
図7は、同実施形態に係るエレベータのドア装置用の動作設定装置の開閉形式情報、開閉速度情報、速度パターン情報のデータ構造の説明図である。
【
図8】
図8は、同実施形態に係るエレベータのドア装置用の動作設定装置の速度パターン情報、開閉形式情報、開閉速度情報のデータ構造の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態にかかるエレベータのドア装置用の動作設定装置(以下、動作設定装置と称する)について、添付図面を参照しつつ説明する。なお、
図1に示すように、本実施形態の動作設定装置1は、可搬型の装置であるが、例えば、前記可搬型の装置と同様の処理を実行するように構成されたプログラムが導入されているノートパソコンや、タブレット等の可搬型の情報端末であってもよい。
【0021】
図2に示すように、ドア装置Dは、かごドアD1と、かごドアD1を駆動させる駆動系D2と、駆動系D2を制御する制御装置D3と、を備えている。
【0022】
駆動系D2は、かごドアD1を駆動(スライド)させる動力源となるモーターを有している。制御装置D3は、ドア装置Dの開閉動作の設定内容を示す動作設定情報を有している。また、制御装置D3は、動作設定情報に基づいて、モーターの動作を制御することによって、ドア装置Dの開閉動作を制御できるように構成されている。
【0023】
本実施形態の動作設定装置は、制御装置D3に対して一時的に接続したうえで、制御装置D3に対して動作設定情報を出力する(書き込む)ことによってドア装置Dの開閉動作を設定するように構成されている。
【0024】
なお、ドア装置Dの開閉動作とは、かごドアD1を開く開動作や、閉じる閉動作、開動作や閉動作中にかごドアD1の動きを停止させる停止動作等のことである。
【0025】
本実施形態の動作設定装置1は、
図1に示すように、かごドアD1の開き方の種類が選択肢として複数設定されているドア種類選択部2と、かごドアD1に設定する開閉速度の指標が選択肢として複数設定されている速度指標選択部3と、モーターの出力可能なトルクに制限をかける設定の要否を選択するトルク制限選択部4と、
図3に示すように、動作設定情報の導出と出力とを行う設定処理を実行する処理部5と、情報を記憶する記憶部6と、処理部5と制御装置D3とを相互通信可能に接続する通信部7と、を備えている。
【0026】
ドア種類選択部2で選択肢としているかごドアD1の開き方の種類とは、かごドアD1の枚数と、かごドアD1が開動作時にスライドする方向との組み合わせごとに定められた種類である。
【0027】
また、かごドアD1の開き方の種類には、例えば、複数枚のかごドアD1が開動作時に互いに相反する方向にスライドするセンターオープンや、複数枚のかごドアD1が開動作時に同じ方向にスライドするサイドオープンが含まれる。また、かごドアD1の枚数が1枚である場合、かごドアD1の開き方の種類はサイドオープン、となる。さらに、サイドオープンは、開動作時にかごの出入口の幅方向(左右方向)の一方側にかごドアD1がスライドする場合と、前記幅方向の他方側にかごドアD1がスライドする場合とで別の種類に分けられる。
【0028】
なお、
図7では、表中の数字の表記がかごドアD1の枚数を示し、アルファベットの表記がかごドアD1のスライド方向を示している。また、「CO」はセンターオープン、「SR」はサイドオープンのうち右側に移動するもの、「SL」はサイドオープンのうち左側に移動するものをそれぞれ示している。なお、
図7には、5つの開き方の種類を図示しているが、開き方の種類の数は、特に限定されるものではない。
【0029】
本実施形態のドア種類選択部2は、複数の開き方の種類(選択肢)のうちの何れか一つ(開閉動作の設定対象としているドア装置DのかごドアD1が該当している開き方の種類)を選択し、且つ他の開き方の種類を非選択の状態にできるように構成された一つのスイッチにより構成されており、より具体的には、処理部に対して選択している開き方の種類を示す信号を出力できるようになっている。なお、本実施形態のドア種類選択部2は、
図1に図示されているように、筐体Cに取り付けられたロータリースイッチで構成されているが、例えば、レバースイッチで構成されていてもよい。
【0030】
速度指標選択部3で選択肢とされている開閉速度の指標とは、かごドアD1の動作速度を定める目安となる情報である。本実施形態では、開閉速度の指標として、高速、中速、低速の3つの指標が設定されている。速度指標選択部3は、この3つの指標のうちの何れか1つを選択するように構成されている。
【0031】
本実施形態の速度指標選択部3は、
図1に示すように、複数の開閉速度の指標(選択肢)ごとに個別に設けられた複数の釦スイッチにより構成されている。速度指標選択部3の複数の釦スイッチには、高速を選択するための押し釦、中速を選択するための押し釦、低速を選択するための押し釦の3つの押し釦が含まれているが、速度指標選択部3で選択可能とする指標の数は、3つに限定されるものではない。
【0032】
また、速度指標選択部3の複数の釦スイッチのそれぞれは、筐体Cに取り付けられており、押操作されることによって、自身に設定されている選択肢に対する選択状態、より具体的には、処理部に対して自身の選択肢が選ばれていることを示す信号を出力する選択状態と、前記信号を出力しない非選択状態とを切替可能である。
【0033】
トルク制限選択部4は、設定処理において、モーターの出力可能なトルクに制限を設定する機能(処理)を有効にした状態と無効にした状態とを切替可能(選択可能)に構成されている。トルク制限選択部4も、種類選択部と同様に筐体Cに取り付けられたロータリースイッチで構成されているが、モーターの出力に制限を設定する機能を有効にするか無効にするかを選択できるようになっていれば、レバースイッチや、釦スイッチ等であってもよい。
【0034】
図3に示すように、処理部5は、ドア種類選択部2、速度指標選択部3、トルク制限選択部4のそれぞれの選択結果(操作状態)に応じた情報処理を実行するコンピュータによって構成されていればよい。なお、本実施形態の処理部5は、筐体C内に収容されている。
【0035】
処理部5は、設定処理において、ドア種類選択部2で選択されている開き方の種類と速度指標選択部3で選択されている開閉速度の指標とに基づいて、動作設定情報である速度パターン情報を導出する速度パターン導出部50と、設定処理において、かごドアD1の入口幅を示す入口幅情報を取得し、該入口幅情報に基づいて、速度パターン導出部50で導出した速度パターン情報を調整した調整パターン情報を作成する速度パターン調整部51と、設定処理において、モーターの出力可能なトルクの上限値とするトルク制限情報を導出するトルク制限部52と、を有する。
【0036】
速度パターン導出部50は、
図4に示すように、ドア種類選択部2で選択している開き方の種類を示す選択形式情報、及び速度指標選択部3で選択されている開閉速度の指標を示す選択指標情報を取得する選択情報取得部500と、選択情報取得部500で取得した選択形式情報と選択指標情報とに基づいて速度パターン情報を導出する速度パターン選択部501と、速度パターン選択部501で導出した速度パターン情報を出力する速度パターン出力部502と、を有する。
【0037】
ここで、速度パターン情報は、選択形式情報と選択指標情報の組み合わせごとに用意されている。速度パターン情報と、選択形式情報と選択指標情報の組み合わせとは、例えば、
図7に示すようなテーブル形式のデータ構造によって関連付けられた状態で、記憶部に記憶されていればよい。
【0038】
速度パターン情報には、
図8に示すように、かごドアD1をスライドさせる際における、各時点のかごドアD1の速度(スライドさせる速度)を示す情報が設定されている。すなわち、速度パターン情報では、かごドアD1をスライドさせる動作中の各時点を示す時間情報と、かごドアD1をスライドさせる速度を示す速度情報とが関連付けられている。
【0039】
そして、制御装置D3は、速度パターン情報に示されている速度でかごドアD1をスライドさせるよう、モーター等の他の構成を制御するように構成されている。
【0040】
速度パターン選択部501は、選択形式情報と選択指標情報の組み合わせに関連付けられている速度パターン情報を選択するように構成されている。そして、速度パターン出力部502は、速度パターン選択部501が選択した速度パターン情報を記憶部6に出力する(すなわち、記憶部6に書き込む)ように構成されている。
【0041】
上記実施形態において特に言及しなかったが、速度パターン出力部502で導出した速度パターン情報を速度パターン調整部51で調整しない場合、速度パターン出力部502は、速度パターン情報を通信部7に対して直接出力してもよい。
【0042】
速度パターン調整部51は、
図5に示すように、かごの入口幅(具体的には、かごドアを完全に開いた状態でかごドアの出入口に形成されるスペースの幅)を示す入口幅情報を取得する入口幅情報取得部510と、入口幅情報取得部510が取得した入口幅情報に基づいて速度パターン情報(より具体的には、速度パターン出力部502が導出した速度パターン情報)に設定されている情報を変更することによって、調整パターン情報を作成する調整パターン作成部511と、調整パターン作成部511で作成した調整パターン情報を出力する調整パターン出力部512と、を有する。
【0043】
入口幅情報取得部510は、ドア装置Dを開閉動作させるとともに、ドア装置Dの動きに関する情報(例えば、エンコーダパルス等)を取得し、このドア装置Dの動きに関する情報に基づいて入口幅情報を導出するように構成されている。なお、ドア装置Dの動きに関する情報とは、例えば、かごドアD1の動作速度や、開閉動作の開始から終了までに要した時間等である。
【0044】
調整パターン作成部511は、入口幅情報と、速度パターン情報を作成する際に基準としたかごの入口幅を示す基準入口幅情報とを比較し、入口幅情報と基準入口幅情報とが異なる場合に速度パターン情報を変更するように構成されており、速度パターン情報を作成した際に基準としたかごの入口幅と、開閉動作を設定するドア装置Dが設置されているかごの入口幅との差異により、かごドアD1のスライド動作に問題が生じることを防止できるようになっている。なお、基準入口幅情報は、各速度パターン情報に関連付けられていればよい。
【0045】
また、調整パターン作成部511は、例えば、入口幅情報が示す入口幅が、基準入口幅情報が示す入口幅よりも大きければ、かごドアD1の動作速度を速めるように速度パターン情報を変更し、入口幅情報が示す入口幅が、基準入口幅情報が示す入口幅よりも小さければ、かごドアD1の動作速度を遅くするように速度パターン情報を変更するように構成されていればよい。なお、調整パターン作成部511は、かごドアD1の動作速度を変更すべく、速度パターン情報の速度情報や、時間情報を変更するように構成されていればよい。
【0046】
調整パターン出力部512は、調整パターン作成部511が作成した調整パターン情報を通信部7に出力するように構成されているが、必要に応じて調整パターン情報を記憶部6に出力する(すなわち、記憶部6に書き込む)ように構成されていてもよい。
【0047】
トルク制限部52は、
図6に示すように、ドア装置Dのモーターのトルク値を示すトルク値情報を取得するトルク値取得部520と、トルク値取得部520で取得したトルク値情報に基づいてモーターのトルク値を制限する(上限とする)トルク制限値情報を導出する制限値導出部521と、制限値導出部521で導出したトルク制限値情報を出力する制限値出力部522と、を有する。
【0048】
トルク値取得部520は、例えば、モーターを駆動させ、且つモーターの動きに関する情報(例えば、モーターに対して出力したトルク指令値等)を取得してトルク値情報を導出するように構成されていてもよいし、予め記憶部6等に記憶されておいたトルク値情報を読み出すようにしてもよい。
【0049】
制限値導出部521は、トルク値情報が示すトルク値を増加させたトルク値を制限値情報とするように構成されている。なお、制限値導出部521は、トルク値情報が示すトルク値に所定の値を加算するように構成されていてもよいし、トルク値情報が示すトルク値に対して所定の割合の値を加算するように構成されていてもよい。
【0050】
なお、本実施形態の制限値導出部521は、速度指標選択部3で選択している開閉速度の指標が速い速度を示しているほど、トルク値情報が示すトルク値への加算値が高くなるように構成されている。
【0051】
制限値出力部522は、制限値導出部521が導出した制限値情報を通信部7に出力するように構成されている。なお、制限値出力部522も、調整パターン出力部512と同様に、制限値情報を必要に応じて記憶部6に出力する(すなわち、記憶部6に書き込む)ように構成されていてもよい。
【0052】
本実施形態の動作設定装置1では、処理部5と記憶部とが筐体C内に収容されているが、処理部5が記憶部6に対する情報の書き込みと、記憶部6に記憶されている情報の読み出しとを実行できるように構成されていれば、記憶部6は、例えば、筐体C外のものであってもよい。
【0053】
通信部7は、制御装置D3との相互通信が可能であれば、有線通信するように構成されていてもよいし、無線線通信するように構成されていてもよい。また、通信部7は、制御装置D3と直接通信するように構成されていてもよいし、間接的に通信するように構成されていてもよい。本実施形態の通信部7は、
図1に示すように、有線接続するように構成されており、かごドアD1の操作盤Bを介して制御装置D3と通信するように構成されている。
【0054】
本実施形態に係る動作設定装置1の構成は、以上の通りである。続いて、動作設定装置1によるドア装置Dの開閉動作の設定方法を説明する。
【0055】
本実施形態のドア装置Dの開閉動作の設定方法では、作業者が開閉動作の設定に適した乗り場にかごを移動させる移動工程と、動作設定装置1を操作して設定処理を実行する設定処理実行工程と、を備えている。
【0056】
移動工程では、開閉動作を設定する対象のかごを最も重い乗場ドアが設置されている乗り場に移動させる。
【0057】
設定処理実行工程では、かごドアD1の開閉速度を設定し、モーターの出力可能なトルクの制限を設定する。
【0058】
設定処理実行工程において、かごドアD1の開閉速度を設定する際、設定対象としているドア装置DのかごドアD1開き方の種類をドア種類選択部2で選択し、該かごドアD1に設定する動作速度の目安とする開閉速度の指標を速度指標選択部3で選択した状態で、動作設定装置1に設定処理を実行させる。本実施形態の動作設定装置1では、何れかの速度指標選択部3を押し操作することで設定処理が開始され、かごドアD1の開閉速度を設定する処理が実行される。
【0059】
設定処理が開始されると、速度パターン導出部50が、ドア種類選択部2で選択されている開き方の種類と速度指標選択部3で選択されている開閉速度の指標とに基づいて、速度パターン情報を導出する。
【0060】
より具体的に説明すると、選択情報取得部500が、ドア種類選択部2で選択している開き方の種類を示す選択形式情報、及び速度指標選択部3で選択されている開閉速度の指標を示す選択指標情報を取得し、速度パターン選択部501が、選択情報取得部500で取得した選択形式情報と選択指標情報とに基づいて速度パターン情報を導出する。
【0061】
そして、速度パターン選択部501が導出した速度パターン情報は、記憶部6に出力される。
【0062】
続いて、速度パターン調整部51が、速度パターン導出部50で導出した速度パターン情報を調整し、調整パターン情報を作成する。
【0063】
より具体的に説明すると、入口幅情報取得部510が、ドア装置Dの入口幅を示す入口幅情報を取得し、調整パターン作成部511が、入口幅情報と速度パターン情報を作成する際に基準とした基準入口幅情報とを比較し、入口幅情報と基準入口幅情報とが異なると判断した場合、入口幅情報取得部510で取得した入口幅情報に基づいて速度パターン情報に設定されている速度情報や、時間情報を変更することによって調整パターン情報を作成する。
【0064】
そして、調整パターン作成部511で作成した調整パターン情報は、調整パターン出力部512によって通信部7に出力される。
【0065】
なお、調整パターン作成部511が、入口幅情報と速度パターン情報を作成する際に基準とした基準入口幅情報とを比較し、入口幅情報と基準入口幅情報とが同じであると判断した場合は、調整パターン出力部512が速度パターン情報をそのまま通信部7に出力する。
【0066】
そして、通信部が調整パターン情報、若しくは速度パターン情報を制御装置D3に出力することによって、かごドアD1の開動作、閉動作の挙動が設定される。
【0067】
次に、設定処理実行工程において、モーターに出力可能なトルクの制限を設定する場合は、トルク制限選択部4でモーターの出力可能なトルクに制限をかける設定が必要である旨を選択した状態で、設定処理として、トルク制限情報によってモーターの出力可能なトルクに制限をかける処理を実行する。なお、モーターの出力可能なトルクに制限をかける処理を実行するには、かごドアD1の開閉速度を設定する処理を実行した際に押し操作した速度指標選択部3を再び押し操作すればよい。
【0068】
モーターの出力可能なトルクに制限をかける処理では、トルク値取得部520がドア装置Dのモーターのトルク値を示すトルク値情報を取得し、制限値導出部521が、トルク値取得部520で取得したトルク値情報に基づいてモーターのトルク値を制限する(上限とする)トルク制限値情報を導出する。
【0069】
トルク値取得部520で導出したトルク制限値情報は、制限値出力部522により制御装置D3に出力され、これにより、かごドアD1の開動作、閉動作を途中で停止させる挙動が設定される。
【0070】
以上のように、本実施形態に係る動作設定装置1によれば、かごドアD1の開き方の種類をドア種類選択部2で選択し、かごドアD1の開閉速度の指標をドア種類選択部2で選択すれば、選択されている開閉動作の種類と開閉速度の指標に基づいて既定の速度パターン情報が導出されるため、開閉動作の設定内容を定める条件となるかごドアD1の開き方の種類と開閉速度の指標が同じである場合は、開閉動作の設定内容を同じ内容に揃えることができる。
【0071】
従って、動作設定装置1、及び該動作設定装置1を用いたドア装置Dの開閉動作の設定方法は、エレベータのドア装置の開閉動作の設定内容に一様性を持たせることができるという優れた効果を奏し得る。
【0072】
また、かごドアD1の入口幅に応じて速度パターン情報を調整する必要がある場合であっても、動作設定装置では、処理部5によって入口幅情報に基づいて速度パターン導出部50で導出した前記速度パターン情報が調整されるため、速度パターン情報を設計する際に基準とした入口幅と、開閉動作を設定するドア装置Dの入り口幅との差異により、ドア装置Dの挙動(開閉時のかごドアD1のスライド)に問題が生じることを防止するとともに、速度パターン情報の調整の仕方を揃えることもできる。
【0073】
さらに、トルク制限選択部4でモーターの出力可能なトルクに制限をかける必要がある場合においても、トルク制限部52が、モーターのトルク値情報に基づいてトルク制限情報を導出するように構成されているため、モーターへのトルクの制限のかけ方を揃えることができる。
【0074】
そして、ドア装置Dの開閉動作の設定方法においては、設定処理実行工程を行う前に開閉動作を設定する対象のかごを最も重い乗場ドアが設置されている乗り場に移動させるため、設定処理実行工程は、最も重い乗場ドアが設置されている乗り場にかごを移動させた状態で行われる。このようにすることで、開閉動作の設定を行った乗場とは異なる乗場でドア装置Dに開閉動作をさせた場合に、開閉動作が所望する速度よりも遅くなることを防止することができる。
【0075】
なお、本発明に係るエレベータのドア装置用の動作設定装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0076】
上記実施形態において、ドア種類選択部2は、一つのスイッチで構成されていたが、この構成に限定されない。例えば、ドア種類選択部2は、複数の選択肢ごとに個別に設けられた複数の釦スイッチにより構成されていてもよい。この場合、複数の釦スイッチのそれぞれは、自身に設定されている選択肢に対する選択状態、より具体的には、処理部に対して自身の選択肢が選ばれていることを示す信号を出力する選択状態と、前記信号を出力しない非選択状態とに切替可能となるように構成されていればよい。
【0077】
上記実施形態において、速度指標選択部3は、前記複数の選択肢ごとに個別に設けられた複数の釦スイッチにより構成されていたが、この構成に限定されない。例えば、速度指標選択部3は、前記複数の選択肢のうちの何れか一つを選択し、且つ他の選択肢を非選択の状態にできるように構成された一つのスイッチにより構成されていてもよい。この場合において、速度指標選択部3を構成する一つのスイッチは、例えば、筐体Cに取り付けられたロータリースイッチや、レバースイッチで構成されていてもよい。なお、速度指標選択部3を構成する一つのスイッチで構成する場合は、設定処理を実行するための操作部を設ける必要がある。
【0078】
上記実施形態において、入口幅情報取得部510は、ドア装置Dの開閉動作時の動きに関する情報に基づいて入口幅情報を導出するように構成されていたが、この構成に限定されない。入口幅情報取得部510は、例えば、ドア装置Dの仕様として記憶部に記憶された入口幅情報を読み出すように構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0079】
1…動作設定装置、2…ドア種類選択部、3…速度指標選択部、4…トルク制限選択部、5…処理部、6…記憶部、7…通信部、50…速度パターン導出部、51…速度パターン調整部、52…トルク制限部、500…選択情報取得部、501…速度パターン選択部、502…速度パターン出力部、510…入口幅情報取得部、511…調整パターン作成部、512…調整パターン出力部、520…トルク値取得部、521…制限値導出部、522…制限値出力部、B…操作盤、C…筐体、D…ドア装置、D1…ドア、D2…駆動系、D3…制御装置