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特許7014293質量スペクトルデータの取得および解析方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-24
(45)【発行日】2022-02-01
(54)【発明の名称】質量スペクトルデータの取得および解析方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/62 20210101AFI20220125BHJP
   H01J 49/00 20060101ALI20220125BHJP
【FI】
G01N27/62 D
G01N27/62 X
G01N27/62 C
H01J49/00 310
H01J49/00 360
H01J49/00 450
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2020513369
(86)(22)【出願日】2018-11-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-12
(86)【国際出願番号】 JP2018042171
(87)【国際公開番号】W WO2019102919
(87)【国際公開日】2019-05-31
【審査請求日】2020-03-04
(31)【優先権主張番号】201711181753.7
(32)【優先日】2017-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホアン ユンチン
(72)【発明者】
【氏名】スン ウェンジャン
(72)【発明者】
【氏名】チャン シャオチィアン
【審査官】赤木 貴則
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0301205(US,A1)
【文献】特表2013-537312(JP,A)
【文献】特表2008-536263(JP,A)
【文献】特表2012-506709(JP,A)
【文献】国際公開第2010/129187(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/035412(WO,A2)
【文献】国際公開第2016/125061(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/103448(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/62
H01J 49/00-H01J 49/48
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量スペクトルデータの取得および解析方法であって、
a.イオンを生成する少なくとも1つのイオン源を提供し、生成されたイオンは分析される物質のイオンを含むステップと、
b.分析される前記物質のイオンの全質量電荷比範囲をいくつかの質量電荷比窓に分割し、異なる質量電荷比窓に対応するイオンを衝突セルに供給して、対応するイオンの少なくとも一部を断片化し、前記衝突セルを通過する前記イオンの質量スペクトルを対応するプロダクトイオンスペクトルとしてそれぞれ記録するステップと、
c.前記ステップbを数回繰り返すステップと、
d.以下のステップd1からd3
d1.複数のプロダクトイオンスペクトルに対応する1つの質量電荷比窓を取得するステップと、
d2.取得した質量電荷比窓の前記質量電荷比範囲内で、前記複数のプロダクトイオンスペクトルから複数のイオンピークを取得するステップと、
d3.得られた複数のイオンピークに対応するイオンが、前記複数のプロダクトイオンスペクトルに対応する複数のプリカーサイオンであるか否かを判定するステップと
によって取得した前記複数のプロダクトイオンスペクトルを検索し、前記複数のプロダクトイオンスペクトルに対応する複数のプリカーサイオンを決定するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記質量電荷比窓の幅が17amu未満であり、且つ、前記イオンピークに対応する前記イオンが有する電荷の数が1である場合、得られた複数のイオンピークに対応する複数のイオンはプリカーサイオンと見なされることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ステップd3は、
前記複数のイオンピークに電荷デコンボリューションを実行して、前記複数のイオンピークに対応するイオンの質量を取得するステップと、
前記複数のイオンピークに対応する複数のイオン間の質量差を計算し、該質量差に基づいて、質量が所定の第2のしきい値より大きいイオンから所定の第1のしきい値より小さい質量のイオンがニュートラルロスにより生成されたか否かを判定するステップと、
前記ニュートラルロスにより生成されたイオンを除去し、残りのイオンを前記プロダクトイオンスペクトルに対応するプリカーサイオンとして使用するステップと
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
取得した質量電荷比窓の幅が17amuより大きく26amuより小さく、且つ、取得した質量電荷比窓中の前記イオンピークに対応する前記イオンが有する電荷の数が1である場合、決定される前記ニュートラルロスに対応する分子フラグメントはHOおよびNHであることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
分析される前記物質のイオンの全質量電荷比範囲をいくつかの質量電荷比窓に分割する前記ステップにおいて、該いくつかの質量電荷比窓の幅は、前記全質量電荷比の範囲内で可変または一定であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
得られたプリカーサイオンの前記質量電荷比に従って、プリセットデータベース内の対応する物質を検索するステップを更に含む、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
得られたプリカーサイオンの前記質量電荷比および前記プリカーサイオンの同位体存在比に従って、前記プリカーサイオンの分子式を計算するステップと、
計算された分子式に従って、プリセットデータベース内の対応する物質を検索するステップと
を更に含む、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記プリセットデータベースは、事前に実行されるクロマトグラフィ質量分析により生成されることを特徴とする、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記プリセットデータベース内の前記対応する物質のプロダクトイオンスペクトルは、理論計算により得られることを特徴とする、請求項6または7に記載の方法。
【請求項10】
前記プリセットデータベース内の前記対応する物質の参照プロダクトイオンスペクトルおよび質量分析装置によって記録された前記プロダクトイオンスペクトルに従って、イオンピークの質量電荷比、同位体存在率、クロマトグラフィ保持時間、およびピーク間の相対強度を含む変数を用いることにより、前記対応する物質が検出されたか否かを更に判定するためのスコアを計算するステップを更に含む、請求項6または7に記載の方法。
【請求項11】
前記対応する物質が検出されたと判定された場合、前記参照プロダクトイオンスペクトル内のプロダクトイオンに従ってクロマトグラムを生成するステップと、
記クロマトグラムの前記対応する物質のプロダクトイオンのクロマトグラフィピークを取得するステップと、
前記プロダクトイオンの前記クロマトグラフィピークのプロファイルを比較し、定量分析のために、保持時間およびピーク幅が所定の第3のしきい値よりも小さく、ピークの対称性が所定の第4のしきい値よりも高く、クロマトグラフィピークの強度が前記対応する物質のプロダクトイオンスペクトルの質量スペクトルピークの強度と完全に一致するようなクロマトグラフピークを選択するステップと、但し該プロファイルには、保持時間、ピーク幅、ピーク対称性、およびピーク強度が含まれる、
を更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記プリセットデータベース内の前記対応する物質の前記プロダクトイオンスペクトル内のプロダクトイオンに従ってクロマトグラムを生成するステップと、
記クロマトグラムの前記対応する物質のプロダクトイオンクロマトグラフィピークを取得するステップと、
前記プロダクトイオンクロマトグラフィピークのプロファイルを比較するステップと、但し該プロファイルには、保持時間、ピーク幅、ピーク対称性、およびピーク強度が含まれる、
を更に含む、請求項6または7に記載の方法。
【請求項13】
前記プリセットデータベース内の前記対応する物質の前記プロダクトイオンの前記クロマトグラフィピークおよび前記参照プロダクトイオンスペクトルの前記プロファイルに従って、イオンピークの質量電荷比、同位体存在率、クロマトグラフィ保持時間、およびピーク間の相対強度を含む変数を用いることにより、前記対応する物質が検出されたか否かを判定するためのスコアを計算するステップを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記対応する物質が検出されたと判定される場合、定量分析のために、保持時間およびピーク幅の差が所定の第3のしきい値よりも小さく、ピークの対称性が所定の第4のしきい値よりも高く、クロマトグラフィピークの強度が前記対応する物質のプロダクトイオンスペクトルの質量スペクトルピークの強度と完全に一致するようなクロマトグラフィピークを選択するステップとを更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記プロダクトイオンスペクトルを記録する1つのプロセスにおいて、前記衝突セルの衝突エネルギーが設定範囲内で変化することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記変化は、低から高への変化または高から低への変化であることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記いくつかの質量電荷比窓が連続的に分布し、分析される前記物質の前記イオンの前記全質量電荷比範囲をカバーすることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
2つの隣接する質量電荷比窓間に1amuの重なりがあることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
質量スペクトルデータの取得および解析方法であって、
a.イオンを生成する少なくとも1つのイオン源を提供し、生成されたイオンは分析される物質のイオンを含むステップと、
b.衝突セルを低断片化エネルギーモードで操作し、分析される前記物質の前記イオンを全質量電荷比範囲内で前記衝突セルに供給して、前記イオンを部分的に断片化するか、または断片化しないようにし、前記衝突セルを通過する前記イオンの質量スペクトルをプリカーサイオンスペクトルとして記録するステップと、
c.前記衝突セルを高断片化エネルギーモードで操作して、分析される前記物質の前記イオンの前記全質量電荷比範囲をいくつかの質量電荷比窓に分割し、異なる質量電荷比窓に対応するイオンを前記衝突セルに供給して、前記対応するイオンの少なくとも一部を断片化し、前記衝突セルを通過する前記イオンの質量スペクトルを、対応するプロダクトイオンスペクトルとしてそれぞれ記録するステップと、
d.前記ステップbおよびcを数回繰り返すステップと、
f.以下のステップf1からf3
f1.前記プロダクトイオンスペクトルに対応する質量電荷比窓を取得するステップと、
f2.取得した質量電荷比窓の前記質量電荷比範囲内で、前記プロダクトイオンスペクトルからイオンピークを取得するステップと、
f3.得られたイオンピークに対応するイオンが、前記プロダクトイオンスペクトルに対応するプリカーサイオンであるか否かを判定するステップと
によって前記プロダクトイオンスペクトルを検索し、前記プロダクトイオンスペクトルに対応するプリカーサイオンを決定するステップと、
を含む、方法。
【請求項20】
得られたプリカーサイオンの前記質量電荷比に従って、プリセットデータベース内の対応する物質を検索するステップを更に含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
得られたプリカーサイオンの前記質量電荷比および前記プリカーサイオンの同位体存在比に従って、前記プリカーサイオンの分子式を計算するステップと、
計算された分子式に従って、プリセットデータベース内の対応する物質を検索するステップと
を更に含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
質量スペクトルデータの取得および解析方法であって、
a.イオンを生成する少なくとも1つのイオン源を提供し、生成されたイオンは分析される物質のイオンを含むステップと、
b.分析される前記物質のイオンの全質量電荷比範囲をいくつかの質量電荷比窓に分割し、異なる質量電荷比窓に対応するイオンを衝突セルに供給して、対応するイオンの少なくとも一部を断片化し、前記衝突セルを通過する前記イオンの質量スペクトルを対応するプロダクトイオンスペクトルとしてそれぞれ記録するステップと、
c.前記衝突セルに平行なイオンチャネルにより、分析される前記物質の前記イオンが前記衝突セルをバイパスして前記衝突セルの後ろの質量分析器に到達し、前記イオンの質量スペクトルをプリカーサイオンスペクトルとして記録し、前記イオンは前記平行なイオンチャネルにおいて断片化または部分的に断片化されていないステップと、
d.前記ステップbおよびcを数回繰り返すステップと、
f.以下のステップ
f1.前記プロダクトイオンスペクトルに対応する質量電荷比窓を取得するステップと、
f2.取得した質量電荷比窓の前記質量電荷比範囲内で、前記プロダクトイオンスペクトルからイオンピークを取得するステップと、
f3.得られたイオンピークに対応するイオンが、前記プロダクトイオンスペクトルに対応するプリカーサイオンであるか否かを判定するステップと
によって前記プロダクトイオンスペクトルを検索し、前記プロダクトイオンスペクトルに対応するプリカーサイオンを決定するステップと、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、質量スペクトルデータ取得の分野に関し、特に、品質精度が高く、プロダクトイオンのイオン流クロマトグラムを用いて定量分析を行うことができる質量スペクトルデータ取得および解析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
質量分析装置は、高感度および優れた選択性という特徴により、複雑なサンプルの分析に広く適用されている。特に、エレクトロスプレーイオン化に代表されるソフトイオン化技術が発明されたため、質量分析装置は有機物の分析により広く適用されている。
【0003】
質量分析装置で定性的および定量的に分析できる一般的な有機物には、タンパク質、ポリペプチド、代謝産物、医薬品、麻薬、農薬などが含まれる。複雑なサンプルは膨大な数の物質を含むため、解析能力の高い高分解能質量分析装置およびタンデム質量分析装置の適用が増えている。
【0004】
高分解能質量分析およびタンデム質量分析の両方の利点により、高分解能タンデム質量分析技術は、すべての質量分析装置の中で最高の解析能力を備えている。例えば、LC-MS分析中、プロダクトイオンのイオン流クロマトグラムは、より高いS/N比および優れた不純物干渉抵抗を有し、プロダクトイオンスペクトルは、分析物の構造分析のための効果的な参照情報を提供できる。現在、一般的な高分解能タンデム質量分析には、タンデム四重極飛行時間(QTOF)型質量分析、タンデムイオントラップ飛行時間(IT-TOF)型質量分析、タンデム四重極オービトラップ型質量分析、タンデムイオントラップオービトラップ型質量分析などが含まれる。
【0005】
オミクス分析は、生命体の動作原理の理解を大いに高め、したがって、新しい医療スキームおよび新しい薬の開発を促進する可能性がある。現在、オミクス分析には主にゲノム分析、プロテオーム分析、メタボローム分析が含まれており、ゲノム分析は主に遺伝子配列決定法に依存しており、プロテオーム分析とメタボローム分析の両方は、高い解析能力を備えた質量分析に依存している。
【0006】
質量分析装置の分解能およびタンデム質量分析では急速な進歩が達成されたが、オミクス分析で膨大な数の物質に直面した場合、質量分析装置は依然としてすべての困難を克服することができない。複雑なサンプルの場合、質量分析装置のデータ取得方法を改善することが非常に重要である。プロテオーム分析におけるポリペプチドのカバレッジおよびデータ依存性を高めるために、Ducretらは1998年にデータ依存型取得方式を提案した(Protein Sci.1998,7(3)、706~719)。この方式には次のステップが含まれる。1)タンデム四重極飛行時間型質量分析装置の前段質量分析器はイオン種選択を行わず、飛行時間型質量分析装置は、衝突セルが低断片化エネルギーモードで動作し、関連する質量電荷比区画内のプリカーサイオンを走査する。2)プリカーサイオン走査ステップで測定されたプリカーサイオン情報に従って、最も存在量の多いいくつかのプリカーサイオンの質量電荷比チャネルが、候補イオン質量電荷比チャネルとして識別され、1つの質量電荷比チャネルのプリカーサイオンは、衝突セルの前にある四重極質量分析器によって毎回選択され、衝突セルに供給され、衝突セルが高断片化エネルギーモードで動作して、プリカーサイオンが断片化され、生成されたプロダクトイオンの質量スペクトルが飛行時間型質量分析器によって記録され、前記いくつかの候補イオン質量電荷比チャネルの完全な監視のために、何回もの断片化およびプロダクトイオン走査が行われる。(3)1つのプリカーサイオン走査イベントおよび複数のプロダクトイオン走査ステップが1つのサイクルを形成し、1つのサイクルが終了した後に次のサイクルが実行される。
【0007】
このデータ依存の取得方法は、タンデム質量分析中の分析物の低カバレッジの問題をある程度解決する。ただし、1つのプロダクトイオン走査で1つのプリカーサイオン質量電荷比チャネルのプロダクトイオン情報のみしか監視できないため、タンデム質量分析中のプリカーサイオンの利用率とスループットは低くなる。クロマトグラフィカラムから多数の分析物が出る場合、存在量の少ない多くのプリカーサイオンはまだ監視されない。一方、各サイクルのプロダクトイオン走査ステップに対応するプリカーサイオンの質量電荷比チャネルは絶えず変化するため、分析物のプロダクトイオンがクロマトグラフィ溶出時間内に複数回均一に検出されることを保証できず、また定量分析は、プロダクトイオンのイオン流クロマトグラムではなく、分析物のプリカーサイオンのイオン流クロマトグラムを使用することによってのみ行うことができるため、オミクス分析における定量分析の選択性および精度に影響を与える。
【0008】
Wilsonらによって提案されたデータ独立取得方法(Analytical Chemistry 2004,76(24)、7346~7353)は、プロダクトイオンのイオン流クロマトグラムを定量分析に使用できないという困難をよく解決する。データ独立取得方法は、初期段階でイオントラップに実施されるが、この方法は、後の段階でタンデム四重極飛行時間型質量分析装置をプラットフォームとして使用するオミクス分析で主に使用される(Nat Meth 2015、(12)、1105~1106)。データ独立取得方法では、プリカーサイオンの全質量電荷比範囲は、それぞれが10~30 amuの幅を有するいくつかの質量電荷比窓に均等に分割され、プリカーサイオン断片化およびプロダクトイオン走査は各質量電荷比窓に対して連続的に行われる。1回の走査サイクルは、数回のプロダクトイオン走査を含む。1サイクルが終了すると、プロセスはクロマトグラフィ分離が完了するまで次のサイクルに進む。その後、AB Sciex CorporationはSWATH(US8809770)と呼ばれるデータ独立取得方法を提案し、このデータ独立取得方法は商業用途で使用されている。SWATH法では、質量スペクトルデータ取得部分はWilsonらによって提案された方法に類似しているが、データ解析部分は異なる。データ独立取得によって得られる質量スペクトルは複数の物質の混合スペクトルであるため、混合スペクトルを直接使用して複雑なサンプルを定性分析することは非常に困難である。SWATH法では、定性分析の代わりに、分析物のスペクトルライブラリ内のスペクトルに応じて、特定の分析物が検出されたか否かが最初に判定され、その後、標的定量分析が実行される。SWATH法では、プリカーサイオンに関する正確な質量情報がないため、標的分析物の定性分析の精度が悪影響を受ける。さらに、標的データ解析方法として、SWATH法はプロダクトイオン質量スペクトルを含む対象物の分析にのみ使用できる。その結果、適用範囲が明らかに制限される。Waters Corporation(US6717130)によって提案されたMSE法に代表されるデータ独立取得法は、非標的法である。この方法では、1回の走査サイクルにプロダクトイオン走査および1つのプリカーサイオン走査が含まれる。データ取得の最後に、クロマトグラフィピークプロファイルと保持時間の類似性によりデコンボリューションが実行され、プリカーサイオン走査で得られたプリカーサイオンは、プロダクトイオン走査で得られたプロダクトイオンに関連付けられ、個々の物質のプロダクトイオン質量スペクトルが取得される。後続の定性および定量分析は、デコンボリューションによって得られたプロダクトイオン質量スペクトルに依存する。そのような方法は、デコンボリューションの有効性に大きく依存する。しかしながら、デコンボリューションの有効性は、質量分析装置の安定性、サンプルの内容、サンプルの複雑さに非常に敏感である。その結果、分析の再現性および有効性が大きく影響を受ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国特許第8809770号
【文献】米国特許第6717130号
【非特許文献】
【0010】
【文献】Ducretら、Protein Sci.1998,7(3)、706~719
【文献】Wilsonら、Analytical Chemistry 2004,76(24)、7346~7353
【文献】Nat Meth 2015、(12)、1105~1106
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来技術の欠陥を考慮して、本発明の目的は、従来技術の問題を解決するために、新規の質量スペクトルデータ取得および解析方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的および他の関連する目的を達成するために、本発明は、質量分析装置のためのデータ取得および解析方法を提供し、a.イオンを生成する少なくとも1つのイオン源を提供し、生成されたイオンは分析される物質のイオンを含むステップと、b.分析される前記物質のイオンの全質量電荷比範囲をいくつかの質量電荷比窓に分割し、それぞれ異なる質量電荷比窓に対応するイオンを衝突セルに供給して、対応するイオンの少なくとも一部を断片化し、前記衝突セルを通過する前記イオンの質量スペクトルを対応するプロダクトイオンスペクトルとして記録するステップと、c.前記ステップbを数回繰り返すステップと、d.以下のステップd1からd3によって取得した複数のプロダクトイオンスペクトルを検索し、前記複数のプロダクトイオンスペクトルに対応する複数のプリカーサイオンを決定するステップと、d1.前記検索で取得した前記複数のプロダクトイオンスペクトルに対応する1つの質量電荷比窓を取得するステップと、d2.取得した質量電荷比窓の前記質量電荷比範囲内で、前記検索によって取得した前記複数のプロダクトイオンスペクトルから複数のイオンピークを取得するステップと、d3.得られた複数のイオンピークに対応するイオンが、前記検索により得られた前記複数のプロダクトイオンスペクトルに対応する複数のプリカーサイオンであるか否かを判定するステップとを含む。
【0013】
本発明の一実施形態では、前記質量電荷比窓の幅が17amu未満であり、且つ、前記イオンピークに対応する前記イオンが有する電荷の数が1である場合、得られた複数のイオンピークに対応する複数のイオンは全てプリカーサイオンと見なされる。
【0014】
本発明の一実施形態では、前記ステップd3は、前記複数のイオンピークに電荷デコンボリューションを実行して、前記複数のイオンピークに対応するイオンの質量を取得するステップと、前記複数のイオンピークに対応する複数のイオン間の質量差を計算し、該質量差に基づいて、質量が第2のしきい値より大きいイオンから第1のしきい値より小さい質量のイオンがニュートラルロスにより生成されたか否かを判定するステップと、前記ニュートラルロスにより生成されたイオンを除去し、残りのイオンを前記プロダクトイオンスペクトルに対応するプリカーサイオンとして使用するステップとを含む。
【0015】
本発明の一実施形態では、取得した質量電荷比窓の幅が17amuより大きく26amuより小さく、且つ、取得した質量電荷比窓中の前記イオンピークに対応する前記イオンが有する電荷の数が1である場合、決定される前記ニュートラルロスに対応する分子フラグメントはHOおよびNHである。
【0016】
本発明の一実施形態では、分析される前記物質のイオンの全質量電荷比範囲をいくつかの質量電荷比窓に分割する前記ステップにおいて、該いくつかの質量電荷比窓の幅は、前記全質量電荷比の範囲内で可変または一定である。
【0017】
本発明の一実施形態では、前記方法は、得られたプリカーサイオンの前記質量電荷比に従って、プリセットデータベース内の対応する物質を検索する以下のステップを更に含む。
【0018】
本発明の一実施形態では、前記方法は、得られたプリカーサイオンの前記質量電荷比および前記プリカーサイオンの同位体存在比に従って、前記プリカーサイオンの分子式を計算するステップと、計算された分子式に従って、プリセットデータベース内の対応する物質を検索するステップとを更に含む。
【0019】
本発明の一実施形態では、前記プリセットデータベースは、事前に実行されるクロマトグラフィ質量分析により生成される。
【0020】
本発明の一実施形態では、前記プリセットデータベース内の前記対応する物質のプロダクトイオンスペクトルは、理論計算により得られる。
【0021】
本発明の一実施形態では、前記方法は、前記プリセットデータベース内の前記対応する物質の参照プロダクトイオンスペクトルおよび質量分析装置によって記録された前記プロダクトイオンスペクトルに従って、対応する物質が検出されたか否かを更に判定するためのスコアを計算するステップを更に含む。
【0022】
本発明の一実施形態では、前記方法は、前記対応する物質が検出されたと判定された場合、前記参照プロダクトイオンスペクトル内のプロダクトイオンに従って時間依存イオン流クロマトグラムを生成するステップと、前記イオン流クロマトグラムの前記対応する物質のプロダクトイオンのクロマトグラフィピークを取得するステップと、前記プロダクトイオンの前記クロマトグラフィピークのプロファイルを比較し、定量分析のために、保持時間およびピーク幅の差が第3のしきい値よりも小さく、ピークの対称性が第4のしきい値よりも高く、クロマトグラフィピークの強度が前記対応する物質のプロダクトイオンスペクトルの質量スペクトルピークの強度と一致するようなクロマトグラフィピークを選択するステップとを更に含む。
【0023】
本発明の一実施形態では、前記方法は、前記プリセットデータベース内の前記対応する物質の前記プロダクトイオンスペクトル内のプロダクトイオンに従って時間依存イオン流クロマトグラムを生成するステップと、前記イオン流クロマトグラムの前記対応する物質のプロダクトイオンのクロマトグラフィピークを取得するステップと、前記プロダクトイオンクロマトグラフィピークのプロファイルを比較するステップと、但し該プロファイルには、保持時間、ピーク幅、ピーク対称性、ピーク強度が含まれるが、これらに限定されない、を更に含む。
【0024】
本発明の一実施形態では、前記方法は、前記プリセットデータベース内の前記対応する物質の前記プロダクトイオンの前記クロマトグラフィピークおよび前記参照プロダクトイオンスペクトルの前記プロファイルに従って、前記対応する物質が検出されたか否かを判定するためのスコアを計算するステップを更に含む。
【0025】
本発明の一実施形態では、前記方法は、前記対応する物質が検出されたと判定された場合、定量分析のために、保持時間およびピーク幅の差が第3のしきい値よりも小さく、ピークの対称性が第4のしきい値よりも高く、クロマトグラフィピークの強度が前記対応する物質のプロダクトイオンスペクトルの質量スペクトルピークの強度と一致するようなクロマトグラフィピークを選択するステップとを更に含む。
【0026】
本発明の一実施形態では、前記プロダクトイオンスペクトルを記録する1つのプロセスにおいて、前記衝突セルの衝突エネルギーが設定範囲内で変化する。
【0027】
本発明の一実施形態では、前記変化は、低から高への変化または高から低への変化である。
【0028】
本発明の一実施形態では、前記いくつかの質量電荷比窓が連続的に分布し、分析される前記物質の前記イオンの前記全質量電荷比範囲をカバーする。
【0029】
本発明の一実施形態では、2つの隣接する質量電荷比窓間に1amuの重なりがある。
【0030】
この目的および他の関連する目的を達成するために、本発明は、質量スペクトルデータの取得および解析方法であって、a.イオンを生成する少なくとも1つのイオン源を提供し、生成されたイオンは分析される物質のイオンを含むステップと、b.衝突セルを低断片化エネルギーモードで操作し、分析される前記物質の前記イオンを全質量電荷比範囲内で前記衝突セルに供給して、前記イオンを部分的に断片化するか、または断片化しないようにし、プリカーサイオンスペクトルとして前記衝突セルを通過する前記イオンの質量スペクトルをそれぞれ記録するステップと、c.前記衝突セルを高断片化エネルギーモードで操作して、分析される前記物質の前記イオンの前記全質量電荷比範囲をいくつかの質量電荷比窓に分割し、異なる質量電荷比窓に対応するイオンを前記衝突セルに供給して、前記対応するイオンの少なくとも一部を断片化し、前記衝突セルを通過する前記イオンの質量スペクトルを、対応するプロダクトイオンスペクトルとしてそれぞれ記録するステップと、d.前記ステップbおよびcを数回繰り返すステップと、f.以下のステップf1からf3によって前記取得したプロダクトイオンスペクトルを検索し、前記プロダクトイオンスペクトルに対応するプリカーサイオンを決定するステップと、f1.前記検索で取得した前記プロダクトイオンスペクトルに対応する質量電荷比窓を取得するステップと、f2.取得した質量電荷比窓の前記質量電荷比範囲内で、前記検索によって取得した前記プロダクトイオンスペクトルからイオンピークを取得するステップと、f3.得られたイオンピークに対応するイオンが、前記検索により得られた前記プロダクトイオンスペクトルに対応するプリカーサイオンであるか否かを判定するステップとを含む方法を提供する。
【0031】
本発明の一実施形態では、前記方法は、得られたプリカーサイオンの前記質量電荷比に従って、プリセットデータベースの対応する物質を検索する以下のステップを更に含む。
【0032】
本発明の一実施形態では、前記方法は、得られたプリカーサイオンの前記質量電荷比および前記プリカーサイオンの同位体存在比に従って、前記プリカーサイオンの分子式を計算するステップと、計算された分子式に従って、プリセットデータベース内の対応する物質を検索するステップとを更に含む。
【0033】
この目的および他の関連する目的を達成するために、本発明は、質量スペクトルデータの取得および解析方法であって、a.イオンを生成する少なくとも1つのイオン源を提供し、生成されたイオンは分析される物質のイオンを含むステップと、b.分析される前記物質のイオンの全質量電荷比範囲をいくつかの質量電荷比窓に分割し、異なる質量電荷比窓に対応するイオンを衝突セルにそれぞれ供給して、前記対応するイオンの少なくとも一部を断片化し、前記衝突セルを通過する前記イオンの質量スペクトルを対応するプロダクトイオンスペクトルとしてそれぞれ記録するステップと、c.前記衝突セルに平行なイオンチャネルにより、分析される前記物質の前記イオンが前記衝突セルをバイパスして前記衝突セルの後ろの質量分析器に到達し、前記イオンの質量スペクトルをプリカーサイオンスペクトルとして記録し、前記イオンは前記平行なイオンチャネルにおいて断片化または部分的に断片化されていないステップと、d.前記ステップbおよびcを数回繰り返すステップと、f.以下のステップによって前記取得したプロダクトイオンスペクトルを検索し、前記プロダクトイオンスペクトルに対応するプリカーサイオンを決定するステップと、f1.前記検索で取得した前記プロダクトイオンスペクトルに対応する質量電荷比窓を取得するステップと、f2.取得した質量電荷比窓の前記質量電荷比範囲内で、前記検索によって取得したプロダクトイオンスペクトルからイオンピークを取得するステップと、f3.得られたイオンピークに対応するイオンが、前記検索により得られた前記プロダクトイオンスペクトルに対応するプリカーサイオンであるか否かを判定するステップとを含む、方法を提供する。
【0034】
上述のように、本発明の質量分析装置のデータ独立取得および解析方法は、以下の有益な効果を有し、データ独立取得方法として、この方法は、質量分析装置のイオン利用効率を効果的に改善し、また従来のデータ独立取得および解析方法と比較して、この方法はより高い定量/定性分析性能を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明による質量スペクトルデータ取得および解析方法を実施することができる好ましい質量分析装置の概略構造図を示す。
図2】本発明による第1の好ましい質量スペクトルデータ取得方法の概略図を示す。
図3】本発明による第2の好ましい質量スペクトルデータ取得方法の概略図を示す。
図4】本発明による第3の好ましい質量スペクトルデータ取得方法の概略図を示す。
図5】本発明による第4の好ましい質量スペクトルデータ取得方法の概略図を示す。
図6図1図5に示す質量スペクトルデータ取得方法に一致する好ましいデータ解析方法のフローチャートを示す。
図7】7A及び7Bは、一実施形態による、本発明の質量スペクトルデータ取得方法によって得られた混合プロダクトイオン質量スペクトルと、データベースから検索された標準プロダクトイオン質量スペクトルとを示す。
図8図7の7Bに示すイオンピークに対応するイオン流クロマトグラムを示す。
図9図1図5に示す質量スペクトルデータ取得方法に一致する別の好ましいデータ解析方法のフローチャートを示す。
図10】10A及び10Bは、別の実施形態による、本発明の質量スペクトルデータ取得方法によって得られた混合プロダクトイオン質量スペクトルと、データベースから検索された標準プロダクトイオン質量スペクトルとを示す。
図11図10の10Bに示すイオンピークに対応するイオン流クロマトグラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施を特定の実施形態により説明するが、本明細書に開示された内容から当業者であれば本発明の他の利点および効果を容易に理解することができるであろう。本発明は、追加の異なる特定の実施によって実施または適用することもできる。本明細書の詳細は、異なる観点および用途に基づいてもよく、本発明の精神から逸脱することなく、詳細に対して様々な修正または変更を行うことができる。以下の実施形態および実施形態の特徴は、矛盾しない限り組み合わせることができることに留意されたい。
【0037】
以下の実施形態における図面は、単に本発明の基本概念を例示的に説明するためのものであることに留意されたい。したがって、本発明に関与する構成要素のみが図面に示されており、実際の実施中の構成要素の数、形状、およびサイズに応じて描かれているわけではない。一方、構成要素の形状、数、およびスケールは、実際の実施中に任意に変更される場合があり、構成要素のレイアウト形式はより複雑になる場合がある。
【0038】
本発明の目的は、タンデム質量分析中のイオン利用効率および定量分析性能を大幅に改善するために、新規の質量スペクトルデータ取得および解析方法を提供することである。詳細な説明は、図1図11を参照して以下に与えられる。
【0039】
図1は、本発明による質量スペクトルデータ取得および解析方法を実施することができる好ましい質量分析装置100を示す。質量分析装置100は、イオン源110、イオン集束装置120、イオン輸送装置130、第1段階質量分析器140、衝突セル150、直交加速反射飛行時間型質量分析器160、および検出器170を含む。
【0040】
好ましい実施形態では、質量分析装置100はクロマトグラフと並行して使用され、クロマトグラフは液体クロマトグラフ分析装置、ガスクロマトグラフ分析装置、キャピラリ電気泳動装置などであってよい。以下、本発明の質量スペクトルデータの取得および解析方法について、LC-MSを例に挙げて詳細に説明する。
【0041】
液体クロマトグラフ分析装置からの流出液は、イオン化のためにイオン源110に供給される。好ましい解決策として、イオン源110はエレクトロスプレーイオン源である。分析物はイオン化され、イオン集束装置120により集束され、イオン輸送装置130に供給される。続いて、イオンは第1段階質量分析器140に供給される。
【0042】
好ましい解決策として、第1段階質量分析器140は、四重極電場に基づく質量分析器であり、四重極ロッド、3次元イオントラップ、線形イオントラップなどであってもよい。第1段階質量分析器140は、TTI(全透過イオン)モードで動作し得る。すなわち、全質量電荷比区画内のイオンは、無差別に衝突セル150に供給され、その後、次段階質量分析器160に輸送される。第1段階質量分析器140はまた、イオン選択モードで動作し得る。すなわち、イオンは、衝突セル150によって次段階質量分析器160に区別して輸送される。
【0043】
メタボノミクス分析など、分析物が主に低質量イオンである分析タスクの場合、全質量電荷比区画は、一般に100~600の質量電荷比に対応する。分析物が主にポリペプチドである分析タスク、たとえばプロテオーム分析の場合、全質量電荷比区画は一般に、m/z 400~m/z 1400の質量電荷比に対応する。
【0044】
第1段階質量分析器140を出た後、イオンは衝突セル150に入る。衝突セル150は、低断片化モード、高断片化モード、または衝突エネルギー走査モードで動作し得る。衝突セル150が低断片化モードで動作する場合、衝突セル150に入るイオンは断片化されないか、断片化が少なくなり、衝突セル150が高断片化モードで動作する場合、より多くのイオンが断片化され、衝突セルが衝突エネルギー走査モードで動作する場合、プリカーサイオンの一部が断片化されてプロダクトイオンが得られるが、プリカーサイオンの少なくとも一部は断片化されないため保持される。衝突セル150を出た後、イオンは直交イオン加速領域に入る。加速されたイオンは、飛行時間型質量分析器160で質量電荷比に従って分離され、続いて検出器170に連続的に入る。検出器170は、イオンの質量スペクトルを記録してもよい。このとき、低断片化モードで記録されたイオンの質量スペクトルが低断片化スペクトルとして使用され、高断片化モードで記録されたイオンの質量スペクトルが高断片化スペクトルとして使用され、衝突エネルギー走査モードで記録されたイオンは、混合スペクトルとして使用される。
【0045】
本発明の質量スペクトルデータ取得および解析方法を実施することができる好ましい質量分析装置として、衝突セルの前にイオン切り換え装置を追加して提供し、衝突セルに平行なイオンチャネルを追加で提供することができ、その結果イオンは、並列イオンチャネルによって断片化されにくい可能性がある。イオン切り換え装置は、プリカーサイオンを誘導して、第1段階質量分析器から衝突セルまたは衝突セルに平行なイオンチャネルに送り込むことができる。低断片化スペクトルを記録する場合、プリカーサイオンは衝突セルに平行なイオンチャネルに導かれるが、高い断片化スペクトルを記録する場合、プリカーサイオンは衝突セルに導かれる。このとき、衝突セルは高断片化モードで動作するため、より多くのプリカーサイオンが断片化される。本発明における質量スペクトルデータ取得および取得方法は、上記の2つの質量分析装置でそれぞれ実施されてもよい。
【0046】
図2は、本発明による第1の好ましい質量スペクトルデータ取得方法の概略図200を示し、縦軸は質量電荷比210を表し、横軸は走査回数240を表す。第1段階質量分析器は分析物のイオンの全質量電荷比区画を、各々25amu以下の幅を有するいくつかの質量電荷比窓220に均等に分割し、プリカーサイオン断片化およびプロダクトイオン走査が各窓の全プリカーサイオンに対して連続的に実行される。数回のプロダクトイオン走査が走査サイクル230を形成する。クロマトグラフ溶出時間中に、分析物のプリカーサイオンのプロダクトイオンを複数回均等に取得できる。各取得はクロマトグラフィポイントに対応し、異なるクロマトグラフィポイントでのプロダクトイオンの強度値がイオン流クロマトグラムを形成する。イオン流クロマトグラムは定性/定量分析の支援に使用できる。代謝物分析、環境汚染物質分析および残留農薬分析などの小分子分析タスクの場合、全質量電荷比区画は通常、m/z 100~m/z 600の範囲であり、一方、プロテオミクスにおけるポリペプチドの分析では、全質量電荷比区画は通常、m/z 400からm/z 1200の範囲である。好ましい解決策として、プリカーサイオンの少なくとも一部を断片化せずに保持しながら、プリカーサイオンの一部を断片化してプロダクトイオンを得るために、この方法の実施中、衝突セルは、プロダクトイオン質量スペクトル取得中に衝突エネルギー走査モードになる。一般に、走査は0~50eVの衝突エネルギーで実行され、走査モードは高から低への走査または低から高への走査であってもよい。
【0047】
図3は、本発明による第2の好ましい質量スペクトルデータ取得方法の概略図300を示し、質量電荷比窓のサイズは、全質量電荷比間隔内で可変である。クロマトグラフィ質量分析中に、小さな質量範囲内のイオンの数は、大きな質量範囲内のイオンの数よりも多くなる。サイクル内のプロダクトイオン走査の回数を減らすために、質量電荷比窓320として、小さい質量電荷比範囲内で小さい質量電荷比窓が使用され、大きい質量電荷比範囲内で大きい質量電荷比窓が使用される。好ましい解決策として、プリカーサイオンの少なくとも一部を断片化せずに保持しながら、プリカーサイオンの一部を断片化してプロダクトイオンを得るために、この方法の実施中、衝突セルは、プロダクトイオン質量スペクトル取得中に衝突エネルギー走査モードになる。一般に、走査は0~50eVの衝突エネルギーで実行され、走査モードは高から低への走査または低から高への走査であってもよい。
【0048】
図4は、本発明による第3の好ましい質量スペクトルデータ取得方法の概略図400を示す。この質量スペクトルデータ取得方法は、1つの走査サイクルで1つのプリカーサイオン走査450が追加的に提供されるという違いを除いて、図2に示されるデータ取得方法200と同様である。プリカーサイオン走査450により、追加のプリカーサイオンの質量電荷比情報を取得できる。追加のプリカーサイオンの質量電荷比情報は、プロダクトイオン質量スペクトルのプリカーサイオンの質量電荷比情報と比較して、プリカーサイオンの質量電荷比を更に決定してもよい。プリカーサイオン走査450の間、プリカーサイオンは断片化されないか、断片化が少なくなる。
【0049】
図5は、本発明による第4の好ましい質量スペクトルデータ取得方法の概略図500を示す。この質量スペクトルデータ取得方法は、1つの走査サイクルで1つのプリカーサイオン走査550が追加的に提供されるという違いを除いて、図3に示されるデータ取得方法300と同様である。プリカーサイオン走査550により、追加のプリカーサイオンの質量電荷比情報を取得できる。追加のプリカーサイオンの質量電荷比情報は、プロダクトイオン質量スペクトルのプリカーサイオンの質量電荷比情報と比較して、プリカーサイオンの質量電荷比を更に決定してもよい。プリカーサイオン走査550の間、プリカーサイオンは断片化されないか、断片化が少なくなる。
【0050】
図6は、図1図5に示す質量スペクトルデータ取得方法に一致する好ましいデータ解析方法のフローチャートを示す。この方法には、以下の手順が含まれる。
601:プロダクトイオン質量スペクトル上に領域が与えられ、この領域の質量電荷比は、このスペクトルの取得中の質量分析装置の第1段階質量分析器の質量電荷比窓に対応する。
602:与えられた領域内に質量スペクトルピークが発見される。
603:発見された質量スペクトルピークが、プロダクトイオン質量スペクトルに対応するプリカーサイオンであるか否かが判定される。
604:判定されたプリカーサイオンの正確な分子量が計算される。
605:正確な分子量に従って、対応する物質がデータベースから取得される。
606:対応する物質が検出されたか否かを判定するためのスコアが、データベースから取得された対応する物質のプロダクトイオンスペクトルおよび得られたプロダクトイオンスペクトルに従って計算される。
607:対応する物質のプロダクトイオンスペクトルがデータベースに含まれていない場合、この物質のプロダクトイオンスペクトルが理論計算により生成されてもよい。対応する物質が検出されたと判定された場合、対応する物質のプロダクトイオンスペクトル内のプロダクトイオンに従って、時間依存イオン流クロマトグラムが生成され、次に、イオン流クロマトグラムのプロダクトイオンに対応するクロマトグラフィピークが発見され、そして、プロダクトイオンクロマトグラフィピークのプロファイルが比較され、保持時間およびピーク幅に明らかな違いがなく、良好なピーク対称性を有し、クロマトグラフィピークの強度が、対応する物質のプロダクトイオンスペクトルにおける質量スペクトルピークの強度と一致するクロマトグラフィピークが、定量分析のために選択される。
【0051】
ステップ605と同時に、方法は、正確な分子量および同位体ピークの分布に従って対応する分子式を計算するステップ608と、得られた分子式に従って、データベース内の対応する物質を検索するステップ609とをさらに含む。
【0052】
ステップ603は、本発明によって開示されたデータ独立取得および解析方法を従来技術と区別するための重要なステップである。このステップは、得られたプロダクトイオン質量スペクトルから、このスペクトルに対応するプリカーサイオンに関する情報を取得することを目的としている。得られた質量電荷比窓内の複数のイオンピークに対応するイオンが有する電荷の数が1であり、且つ、プロダクトイオン質量スペクトルに対応する質量電荷比窓の幅が17amu未満である場合、取得された質量電荷比窓内の複数のイオンピークに対応するイオンは、プリカーサイオンと見なされる。より一般的には、対応する質量電荷比窓内の得られたプロダクトイオンスペクトルの複数のイオンピークに対して、電荷デコンボリューションが実行され、該複数のイオンピークに対応するイオンの正確な質量が取得され、次に、該複数のイオンピークに対応する複数のイオン間の質量差が計算され、該質量差に基づいて、質量の大きなイオンから質量の小さなイオンがニュートラルロスにより生成されたか否かが判定され、そして、ニュートラルロスにより生成されたイオンは除去され、残りのイオンは、得られたプロダクトイオン質量スペクトルに対応するプリカーサイオンとして使用される。得られた質量電荷比窓内のイオンピークに対応するイオンが有する電荷の数が1であり、且つ、プロダクトイオン質量スペクトルに対応する質量電荷比窓の幅が17amuより大きいが26amu未満である場合、決定されるニュートラルロスに対応する分子フラグメントは、HOおよびNHのみである。
【0053】
ステップ606のスコアは、データベースから検索された物質が検出されたか否かを判定するために使用され、スコアの計算に使用される変数には、イオンピークの質量電荷比、同位体存在率、クロマトグラフィ保持時間、およびピーク間の相対強度が含まれるが、これらに限定されない。
【0054】
図7の7A及び7Bは、一実施形態による、本発明の質量スペクトルデータ取得方法によって得られた混合プロダクトイオン質量スペクトルと、データベースから検索された標準プロダクトイオン質量スペクトルとを示す。図7の7Aに示される混合プロダクトイオン質量スペクトルに対応するプリカーサイオン質量電荷比区画710は、m/z 500からm/z 516の範囲であり、このスペクトルにおけるこの区画内の2つの潜在的な準分子イオンピークはm/z 501.124およびm/z 508.323であり、それらの同位体ピーク間の距離は1Daである。準分子イオンピークに対応するイオンが有する電荷の数は1であることが示されている。質量電荷比区画の幅は、荷電分子から失われた最小中性フラグメントNHの17Daの質量よりも小さい16Daであるので、準分子イオンピークは、混合プロダクトイオン質量スペクトルに対応するプリカーサイオンとしてみなされる。m/z 501.124の質量電荷比での質量スペクトルピークの正確な分子質量は、データベースから物質を取得するため、または分子式を計算した後データベースから物質を取得するために使用される。取得された物質が観察され、この物質の標準プロダクトイオン質量スペクトルが取得される(図7の7B)。図7の7Aと7Bの比較から、標準プロダクトイオン質量スペクトルの2つのプロダクトイオン(m/z 101.12およびm/z 356.123)が混合スペクトルにも現れていることが分かり、2つのプロダクトイオンの存在率は、混合スペクトルと標準プロダクトイオン質量スペクトルの両方で類似している。標準プロダクトイオン質量スペクトルでは、より高いスコアが得られ、これは、得られた混合プロダクトイオン質量スペクトルにおいて標準スペクトルに対応する物質が検出されたことを示す。図7の7Aに示す混合スペクトルの2つの他のプロダクトイオン(m/z 222.256およびm/z 311.236)は、プリカーサイオンm/z 508.323を断片化することによって生成できることに留意されたい。
【0055】
図8は、図7の7Bに示したプロダクトイオン質量スペクトルのイオンピークのイオン流クロマトグラムを示す。プリカーサイオン501.124のイオン流クロマトグラム810、プロダクトイオンm/z 101.126のイオン流クロマトグラム820、およびプロダクトイオンm/z 356.123のイオン流クロマトグラムが上から下に連続して示されている。図8に示すイオン流クロマトグラム間の相対強度は、図7の7Bに示すイオンピーク間の相対強度に類似しており、ピークの形状は対称であり、明らかな干渉ピークはない。この場合、任意のイオン流クロマトグラムの強度またはピーク面積を、定量分析の基準値として選択できる。イオン流クロマトグラムに干渉ピークがある場合、最小干渉、最高S/N比および対称ピークを有するプロダクトイオンイオン流クロマトグラムの強度またはピーク面積が、定量分析の参照として優先的に選択される。
【0056】
図9は、図1図5に示す質量スペクトルデータ取得方法に一致する別の好ましいデータ解析方法のフローチャートを示す。この方法は、データベースからの取得後のスコア計算および判定の違いを除いて、図6に示すデータ処理方法に似ている。図9に示す方法では、スコアの計算および判定は2つのステップで実行される。まず、ステップ906で、データベースから取得した対応する物質のプロダクトイオンスペクトル内のプロダクトイオンに従って時間依存イオン流クロマトグラムが生成され、イオン流クロマトグラム内の対応する物質のプロダクトイオンのクロマトグラフィピークが発見され、プロダクトイオンのクロマトグラフィピークのプロファイルが、保持時間、ピーク幅、ピーク対称性、およびピーク強度に関して比較され、ステップ907において、プロダクトイオンのクロマトグラフィピークのプロファイルおよび対応する物質のプロダクトイオンスペクトルに従ってスコアが計算され、取得された対応する物質が検出されたか否かを判定する。ステップ908で、対応する物質が検出されたと判定された場合、保持時間およびピーク幅に明らかな違いがなく、良好なピーク対称性を有し、クロマトグラフィピークの強度が、取得された対応する物質のプロダクトイオンスペクトルにおける質量スペクトルピークの強度と一致するクロマトグラフィピークが、定量分析のために選択される。
【0057】
図10の10A及び10Bは、別の例による、本発明の質量スペクトルデータ取得方法によって得られた混合プロダクトイオン質量スペクトルと、データベースから検索された標準プロダクトイオン質量スペクトルとを示す。図10の10Aに示される混合プロダクトイオン質量スペクトルに対応するプリカーサイオン質量電荷比区画1010は、m/z 500からm/z 525の範囲であり、このスペクトルにおけるこの区画内の5つの潜在的な準分子イオンピークはm/z 501.124、m/z 505.114、m/z 508.323、m/z 518.151、m/z 523.125であり、それらの同位体ピーク間の距離は1Daである。準分子イオンピークに対応するイオンが有する電荷の数は1であることが示されている。質量電荷比区画の幅は17Daより大きく26Daより小さいため、荷電分子から失われる可能性のある中性フラグメントはNHおよびHOであり、それらの正確な質量はそれぞれ17.026Daおよび18.010Daである。イオンピークm/z 501.124とm/z 518.151の質量電荷比の差は17.027Daであり、NHの正確な質量とは0.001Da異なるため、イオンピークm/z 501.124は、中性フラグメントNHを失った後、イオンピークm/z 518.151から生成されると考えられる。同様に、イオンピークm/z 505.114は、中性フラグメントHOを失った後、イオンピークm/z 523.125から生成されると推測できる。これまで、5つの潜在的な準分子イオンピークのうち、m/z 508.323、m/z 518.151、m/z 523.128の3つの質量スペクトルピークのみが準分子イオンピークとして判定され、つまり、3つの質量スペクトルピークはプロダクトイオン質量スペクトルに対応するプリカーサイオンである。m/z 508.323の質量電荷比での質量スペクトルピークの正確な分子質量は、データベースから物質を取得するため、または分子式を計算した後データベースから物質を取得するために使用される。取得された物質が観察され、この物質の標準プロダクトイオン質量スペクトルが取得される(図10の10B)。
【0058】
図11は、図10の10Bに示したスペクトルのプロダクトイオンピークによる時間依存イオン流クロマトグラムを示している。プロダクトイオンm/z 356.123のイオン流クロマトグラム1110、プリカーサイオンm/z 508.323のイオン流クロマトグラム1120、プロダクトイオンm/z 101.126のイオン流クロマトグラム1130、およびプロダクトイオンm/z 222.256のイオン流クロマトグラム1140が上から下に連続して表示される。図11に示すプロダクトイオンイオン流クロマトグラム間の相対強度は、図10の10Aに示す対応するイオンピーク間の相対強度に類似しており、ピークの形状は対称であり、明らかな干渉ピークはない。取得された物質に対してより高いスコアが得られ、これは、得られた混合プロダクトイオン質量スペクトルにおいて標準スペクトルに対応する物質が検出されたことを示す。図11に示すプロダクトイオンイオン流クロマトグラムのピーク形状が対称であり、明らかな干渉ピークおよび高いピーク強度がない場合、任意のプロダクトイオンイオン流クロマトグラムの強度値またはピーク面積を定量分析の基準値として使用できる。しかし、イオン流クロマトグラムに干渉ピークがある場合、最小干渉、最高S/N比および対称ピークを有するプロダクトイオンイオン流クロマトグラムの強度またはピーク面積が、定量分析の参照として優先的に選択される。図10の10Aの他のプロダクトイオン(例えば、m/z 311.236およびm/z 425.234)の区画は決定されていないため、定量分析では対応するイオン流クロマトグラムは生成されないことに留意されたい。
【0059】
結論として、本発明は、液体クロマトグラフ分析装置と組み合わせたタンデム質量分析におけるデータ取得および解析に適用され、第一段階質量分析器は、分析物のイオンの全質量電荷比区画をいくつかの質量電荷比窓に分割する。プリカーサイオンの断片化およびプロダクトイオン走査は、各窓のすべてのプリカーサイオンに対して連続して実行される。1回の走査サイクルには、数回のプロダクトイオン走査が含まれる。循環は、1つの液体クロマトグラフ分離が終了するまで継続的に実行される。得られた質量スペクトルデータについて、以下のデータ解析プロセスが実行され、プロダクトイオン質量スペクトル上に領域が配置され、この領域の質量電荷比は、このスペクトルの取得中の質量分析装置の第1段階質量分析器の質量電荷比窓に対応し、配置された領域内で質量スペクトルピークが検索され、検索された質量スペクトルピークがプロダクトイオン質量スペクトルに対応するプリカーサイオンであるか否かが判定され、判定されたプリカーサイオンの正確な分子量が計算され、対応する物質は、正確な分子量に従ってデータベースから検索され、対応する物質が検出されたか否かを判定するためのスコアは、データベースから取得された対応する物質のプロダクトイオンスペクトルおよび取得されたプロダクトイオンスペクトルに従って計算され、対応する物質のプロダクトイオンスペクトルがデータベースに含まれていない場合、この物質のプロダクトイオンスペクトルは理論計算によって生成されてもよい。対応する物質が検出されたと判定された場合、対応する物質のプロダクトイオンスペクトル内のプロダクトイオンに従って、時間依存イオン流クロマトグラムが生成され、次に、イオン流クロマトグラムのプロダクトイオンに対応するクロマトグラフィピークが検索され、そして、プロダクトイオンのクロマトグラフィピークのプロファイルが比較され、保持時間およびピーク幅に明らかな違いがなく、良好なピーク対称性を有し、クロマトグラフィピークの強度が、対応する物質のプロダクトイオンスペクトルにおける質量スペクトルピークの強度と一致するクロマトグラフィピークが、定量分析のために選択される。本発明は、タンデム質量分析中のイオン利用効率を改善し、従来の方法と比較して定性/定量分析性能を大幅に改善し、従来技術の様々な欠陥を効果的に克服し、したがって、使用において高い産業的価値を有する。
【0060】
前述の実施形態は、単に本発明の原理および効果を例示的に説明するためのものであり、本発明を限定することを意図するものではない。当業者は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、実施形態に修正または変更を加えることができる。本発明の精神および範囲から逸脱することなく、当業者によって修正または変更を加えられた実施形態は、本発明の請求の範囲に包含されるものとする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11