(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-24
(45)【発行日】2022-02-01
(54)【発明の名称】ガスクロマトグラフ装置およびガスクロマトグラフ装置の分析支援方法
(51)【国際特許分類】
G01N 30/02 20060101AFI20220125BHJP
G01N 30/32 20060101ALI20220125BHJP
G01N 30/82 20060101ALI20220125BHJP
G01N 30/78 20060101ALI20220125BHJP
G01N 35/00 20060101ALI20220125BHJP
【FI】
G01N30/02 Z
G01N30/32 A
G01N30/82
G01N30/78
G01N35/00 E
(21)【出願番号】P 2020540882
(86)(22)【出願日】2018-09-03
(86)【国際出願番号】 JP2018032609
(87)【国際公開番号】W WO2020049614
(87)【国際公開日】2020-03-12
【審査請求日】2021-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100155608
【氏名又は名称】大日方 崇
(72)【発明者】
【氏名】木本 泰裕
(72)【発明者】
【氏名】磯井 卓哉
【審査官】高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-017606(JP,A)
【文献】国際公開第2018/069959(WO,A1)
【文献】特開2000-046817(JP,A)
【文献】特開平04-090002(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0039375(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00 -30/96
B01J 20/281-20/292
G01N 35/00 -37/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリアガスおよび試料ガスを送り出す試料導入部と、
前記試料導入部から導入された試料ガスの成分分離を行うカラムと、
前記カラムの下流に設けられ、試料ガスの流路を複数に分岐させる分岐部と、
前記分岐部とそれぞれ接続された複数の検出器と、
前記分岐部と前記検出器との間の前記流路の情報と、前記流路に接続する前記検出器の種類を特定する情報とを取得し、取得した情報に基づいて、前記流路におけるガスの流量、前記流路におけるガスの線速度、前記分岐部の圧力、のうち少なくともいずれかを算出する演算部と、を備え
、
前記分岐部は、前記流路としての抵抗管を介して、複数の前記検出器とそれぞれ接続され、前記カラムからの試料ガスをそれぞれの前記抵抗管に分配するように構成され、
前記演算部は、前記抵抗管の情報と、それぞれの前記抵抗管に接続する前記検出器の種類を特定する情報とに基づいて、複数の前記検出器に接続するそれぞれの前記抵抗管に分配されるガスの分岐比をさらに算出する、ガスクロマトグラフ装置。
【請求項2】
前記演算部は、
前記流路の情報として前記流路の長さおよび内径の情報を取得し、
前記検出器の種類を特定する情報に基づいて、前記流路に接続する前記検出器の圧力の情報を取得し、
前記ガスの流量、前記ガスの線速度、前記分岐部の圧力のいずれか1つを含む分析条件の情報を取得することにより、取得した情報に基づいて前記ガスの流量、前記ガスの線速度、前記分岐部の圧力のうち他のいずれかを算出する、請求項1に記載のガスクロマトグラフ装置。
【請求項3】
情報入力を受け付けるインターフェース画面を表示する表示部をさらに備え、
前記演算部は、前記分岐部から分岐するそれぞれの前記流路について、前記流路の情報と、前記流路に接続している前記検出器の種類を特定する情報とを互いに対応付けて入力可能な前記インターフェース画面を前記表示部に表示させる、請求項1に記載のガスクロマトグラフ装置。
【請求項4】
前記演算部は、前記流路の情報を入力するための第1入力欄と、前記第1入力欄により特定される前記流路に接続された前記検出器の種類を特定する情報を入力するための第2入力欄と、を含む前記インターフェース画面を前記表示部に表示させる、請求項3に記載のガスクロマトグラフ装置。
【請求項5】
前記分岐部からの前記流路が接続されるとともに、前記検出器が接続される複数の接続部を備え、
前記演算部は、前記第2入力欄において、前記接続部に接続されている前記検出器の種類を選択可能に表示するように構成されている、請求項4に記載のガスクロマトグラフ装置。
【請求項6】
前記分岐部は、上流側の第1の前記カラムとは別個に設けられた、前記流路としての第2のカラムを介して前記検出器と接続され、
前記演算部は、前記第2のカラムの情報と、前記第2のカラムに接続された前記検出器の種類を特定する情報に基づいて、前記第2のカラムにおける前記ガスの流量、前記第2のカラムにおける前記ガスの線速度、または、分析条件として指定された流量または線速度を実現するための前記分岐部の圧力、の少なくともいずれかを算出する、請求項1に記載のガスクロマトグラフ装置。
【請求項7】
試料導入部から導入された試料ガスの成分分離を行うカラムの下流に設けられ、試料ガスの流路を複数に分岐させる分岐部と、前記分岐部とそれぞれ接続された複数の検出器とを備えるガスクロマトグラフ装置の分析支援方法であって、
前記分岐部と前記検出器との間の前記流路の情報と、前記流路に接続する前記検出器の種類を特定する情報とを取得するステップと、
取得した情報に基づいて、前記流路におけるガスの流量、前記流路におけるガスの線速度、前記分岐部の圧力、のうち少なくともいずれかを算出するステップと、を備え
、
前記分岐部は、前記流路としての抵抗管を介して、複数の前記検出器とそれぞれ接続され、前記カラムからの試料ガスをそれぞれの前記抵抗管に分配するように構成され、
前記抵抗管の情報と、それぞれの前記抵抗管に接続する前記検出器の種類を特定する情報とに基づいて、複数の前記検出器に接続するそれぞれの前記抵抗管に分配されるガスの分岐比を算出するステップをさらに備える、ガスクロマトグラフ装置の分析支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスクロマトグラフ装置に関し、特に、複数の検出器を備えるガスクロマトグラフ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の検出器を備えるガスクロマトグラフ装置が知られている。このようなガスクロマトグラフ装置は、たとえば、特開2011-17606号公報に開示されている。
【0003】
上記特開2011-17606号公報には、試料気化室と、カラムと、分岐部と、分岐部に第1抵抗管を介して接続された第1検出器および分岐部に第2抵抗管を介して接続された第2検出器と、を備えたガスクロマトグラフ装置が開示されている。上記特開2011-17606号公報では、分析支援プログラムをインストールしたコンピュータに対して、使用者が試料気化室の圧力、分岐部の圧力、第1抵抗管および第2抵抗管の内径や長さなどの特性値、などのパラメータを入力すると、入力されたパラメータに基づいて、第1抵抗管および第2抵抗管のガス流量や分岐比が算出される。算出されるガス流量や分岐比は、ガスクロマトグラフ装置による試料ガスの分析を適切に行うための分析条件を決定するために有用な情報となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、ガスクロマトグラフ装置が備える検出器には、たとえば検出対象となる化合物などに応じて、様々な種類が存在する。これらの検出器には、大気圧で検出を行う検出器(たとえばFID:水素炎イオン化検出器)、真空状態で検出を行う検出器(たとえば、SCD:硫黄化学発光検出器、MS:質量分析計)、大気圧よりも高い背圧を付与して検出を行う検出器(たとえば、BID:誘電体バリア放電イオン化検出器)、などの圧力条件が異なるものがある。検出器の圧力は、上記の抵抗管のガス流量や分岐比に影響する。
【0006】
しかしながら、特開2011-17606号公報では、分析支援プログラムにおいて、どのような種類の検出器が装置のどこに接続されているか(第1検出器として接続されているか、第2検出器として接続されているか)について区別されていない。ガスクロマトグラフ装置に搭載または接続されている検出器側の圧力が特定できないので、ガス流量や分岐比の算出に際して検出器の圧力は予め設定された一定値として処理されているものと考えられる。このように、従来では、ガスクロマトグラフ装置に搭載される検出器側の圧力が特定できないため、搭載される検出器の種類によっては抵抗管のガス流量などの算出値の精度が制限される可能性がある。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、分岐する流路のそれぞれに接続された検出器の圧力を考慮して、流路のガス流量などの算出値の精度を向上させることが可能なガスクロマトグラフ装置およびガスクロマトグラフ装置の分析支援方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面におけるガスクロマトグラフ装置は、キャリアガスおよび試料ガスを送り出す試料導入部と、試料導入部から導入された試料ガスの成分分離を行うカラムと、カラムの下流に設けられ、試料ガスの流路を複数に分岐させる分岐部と、分岐部とそれぞれ接続された複数の検出器と、分岐部と検出器との間の流路の情報と、流路に接続する検出器の種類を特定する情報とを取得し、取得した情報に基づいて、流路におけるガスの流量、流路におけるガスの線速度、分岐部の圧力、のうち少なくともいずれかを算出する演算部と、を備え、分岐部は、流路としての抵抗管を介して、複数の検出器とそれぞれ接続され、カラムからの試料ガスをそれぞれの抵抗管に分配するように構成され、演算部は、抵抗管の情報と、それぞれの抵抗管に接続する検出器の種類を特定する情報とに基づいて、複数の検出器に接続するそれぞれの抵抗管に分配されるガスの分岐比をさらに算出する。
【0009】
ここで、「検出器の種類」とは、上記のFID、SCD、MS、BIDなどの、成分検出の原理または検出器の構造に基づく分類を示す概念であるが、本明細書において、「検出器の種類」は、当該検出器の分析時の圧力条件に基づく分類を含む広い概念である。すなわち、検出器の種類を特定する情報は、当該検出器が、大気圧で検出を行う検出器か、真空状態で検出を行う検出器か、大気圧よりも高い背圧を付与して検出を行う検出器か、といった圧力条件を特定する情報であってもよい。なお、検出器の圧力条件は、成分検出の原理や検出器の構造に基づいて決まるものであるから、成分検出の原理または構造に基づく「検出器の種類」によっても、その検出器の圧力条件を特定し得る。
【0010】
第1の局面によるガスクロマトグラフ装置では、上記の構成により、分岐部と検出器との間の流路の情報と、流路に接続する検出器の種類を特定する情報とが演算部により取得されるので、ガスクロマトグラフ装置に接続された複数の検出器の各々について、どの種類の検出器が、分岐部から分岐したどの流路と接続されているか、を把握することができる。これにより、どのような圧力条件で使用される検出器が、装置のどの流路に接続されているかを特定できるので、取得した情報に基づいて、ガスの流量、線速度、分岐部の圧力のうち少なくともいずれかを算出する際に、個々の流路と、流路に接続された検出器側の圧力条件を特定して計算を行うことができる。その結果、分岐する流路のそれぞれに接続された検出器の圧力を考慮して、流路のガス流量、ガスの線速度、分岐部の圧力などの算出値の精度を向上させることができる。また、分岐部は、流路としての抵抗管を介して、複数の検出器とそれぞれ接続され、カラムからの試料ガスをそれぞれの抵抗管に分配するように構成され、演算部は、抵抗管の情報と、それぞれの抵抗管に接続する検出器の種類を特定する情報とに基づいて、複数の検出器に接続するそれぞれの抵抗管に分配されるガスの分岐比をさらに算出する。ここで、たとえば大気圧で使用される検出器と真空状態で使用される検出器とが混在する場合と、全ての検出器が同じ圧力条件で使用される場合とでは、流路の構造が同じでもガスの分岐比が異なる。そのため、複数の検出器が分岐部を介して並列的に接続される構成において、抵抗管の情報と、それぞれの抵抗管に接続する検出器の種類を特定する情報に基づくことによって、それぞれの検出器に分配されるガスの分岐比を高精度に算出できる。
【0011】
上記第1の局面によるガスクロマトグラフ装置において、好ましくは、演算部は、流路の情報として流路の長さおよび内径の情報を取得し、検出器の種類を特定する情報に基づいて、流路に接続する検出器の圧力の情報を取得し、ガスの流量、ガスの線速度、分岐部の圧力のいずれか1つを含む分析条件の情報を取得することにより、取得した情報に基づいてガスの流量、ガスの線速度、分岐部の圧力のうち他のいずれかを算出する。このように構成すれば、分岐部から流路を介して検出器に至る経路における、流路の抵抗および検出器の圧力を特定できるので、ガスの流量、ガスの線速度、分岐部の圧力のいずれか1つを分析条件として取得することにより、取得した分析条件を実現するためのガスの流量、ガスの線速度、分岐部の圧力のうち他のいずれかを精度よく算出できる。たとえば、ガスの線速度が分析条件として取得された場合には、取得されたガスの線速度の設定値を実現するためのガスの流量や分岐部の圧力を得ることができる。
【0012】
上記第1の局面によるガスクロマトグラフ装置において、好ましくは、情報入力を受け付けるインターフェース画面を表示する表示部をさらに備え、演算部は、分岐部から分岐するそれぞれの流路について、流路の情報と、流路に接続している検出器の種類を特定する情報とを互いに対応付けて入力可能なインターフェース画面を表示部に表示させる。このように構成すれば、流路の情報と、流路に接続している検出器の種類を特定する情報とを、使用者がインターフェース画面上で入力することができる。この際、流路と検出器とを互いに対応させて情報の入力ができるので、分岐部に複数の検出器がそれぞれ流路を介して接続されている場合でも、使用者が流路に対して接続関係にない別の種類の検出器を誤って入力することを抑制できる。
【0013】
この場合、好ましくは、演算部は、流路の情報を入力するための第1入力欄と、第1入力欄により特定される流路に接続された検出器の種類を特定する情報を入力するための第2入力欄と、を含むインターフェース画面を表示部に表示させる。このように構成すれば、第2入力欄により、第1入力欄への入力情報によって特定される流路との対応関係が明確になるので、使用者による誤入力を効果的に抑制できる。
【0014】
上記第1入力欄および第2入力欄を含むインターフェース画面を表示させる構成において、好ましくは、分岐部からの流路が接続されるとともに、検出器が接続される複数の接続部を備え、演算部は、第2入力欄において、接続部に接続されている検出器の種類を選択可能に表示するように構成されている。このように構成すれば、第2入力欄において、実際に接続部に接続されている検出器の種類を選択肢の形式で表示できるので、使用者が実際の検出器の種類とは異なる種類を誤って入力することを抑制できる。また、使用者は、表示されている選択肢から入力すべき検出器の種類を選ぶだけでよいので、使用者にとっての利便性を向上させることができる。
【0016】
上記第1の局面によるガスクロマトグラフ装置において、好ましくは、分岐部は、上流側の第1のカラムとは別個に設けられた、流路としての第2のカラムを介して検出器と接続され、演算部は、第2のカラムの情報と、第2のカラムに接続された検出器の種類を特定する情報に基づいて、第2のカラムにおけるガスの流量、第2のカラムにおけるガスの線速度、または、分析条件として指定された流量または線速度を実現するための分岐部の圧力、の少なくともいずれかを算出する。このように、第1のカラムの下流側に特性の異なる第2のカラムを設けることにより、より高精度な成分分離を行うことができる。この場合、分岐部から検出器に至る第2のカラムにおけるガスの流れや圧力が、適切な分析を行うために重要となる。そこで、上記構成によれば、第2のカラムに接続された検出器の種類を特定する情報に基づいて、第2のカラムの下流側の検出器の圧力条件を把握できるので、適切な分析を行うために重要な第2のカラムにおけるガスの流れや圧力を、精度よく算出することができる。
【0017】
この発明の第2の局面におけるガスクロマトグラフ装置の分析支援方法は、試料導入部から導入された試料ガスの成分分離を行うカラムの下流に設けられ、試料ガスの流路を複数に分岐させる分岐部と、分岐部とそれぞれ接続された複数の検出器とを備えるガスクロマトグラフ装置の分析支援方法であって、分岐部と検出器との間の流路の情報と、流路に接続する検出器の種類を特定する情報とを取得するステップと、取得した情報に基づいて、流路におけるガスの流量、流路におけるガスの線速度、分岐部の圧力、のうち少なくともいずれかを算出するステップと、を備え、分岐部は、流路としての抵抗管を介して、複数の検出器とそれぞれ接続され、カラムからの試料ガスをそれぞれの抵抗管に分配するように構成され、抵抗管の情報と、それぞれの抵抗管に接続する検出器の種類を特定する情報とに基づいて、複数の検出器に接続するそれぞれの抵抗管に分配されるガスの分岐比を算出するステップをさらに備える。
【0018】
第2の局面によるガスクロマトグラフ装置の分析支援方法では、上記の構成により、上記第1の局面と同様に、どのような圧力条件で使用される検出器が、装置のどの流路に接続されているかを特定できるので、分岐する流路のそれぞれに接続された検出器の圧力を考慮して、流路のガス流量、ガスの線速度、分岐部の圧力などの算出値の精度を向上させることができる。また、分岐部は、流路としての抵抗管を介して、複数の検出器とそれぞれ接続され、カラムからの試料ガスをそれぞれの抵抗管に分配するように構成される。また、抵抗管の情報と、それぞれの抵抗管に接続する検出器の種類を特定する情報とに基づいて、複数の検出器に接続するそれぞれの抵抗管に分配されるガスの分岐比を算出するステップをさらに備える。ここで、たとえば大気圧で使用される検出器と真空状態で使用される検出器とが混在する場合と、全ての検出器が同じ圧力条件で使用される場合とでは、流路の構造が同じでもガスの分岐比が異なる。そのため、複数の検出器が分岐部を介して並列的に接続される構成において、抵抗管の情報と、それぞれの抵抗管に接続する検出器の種類を特定する情報に基づくことによって、それぞれの検出器に分配されるガスの分岐比を高精度に算出できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、上記のように、分岐する流路のそれぞれに接続された検出器の圧力を考慮して、流路のガス流量などの算出値の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第1実施形態によるガスクロマトグラフ装置の全体構成を示したブロック図である。
【
図2】第1実施形態によるガスクロマトグラフ装置の分析部の構成を示した図である。
【
図3】ガスクロマトグラフ装置における試料ガスの流通経路の構成を示した図である。
【
図4】第1実施形態におけるインターフェース画面の例を示した図である。
【
図5】第1実施形態によるガスクロマトグラフ装置の分析支援方法を示すフロー図である。
【
図6】第2実施形態によるガスクロマトグラフ装置の分析部の構成を示した図である。
【
図7】第2実施形態におけるインターフェース画面の例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
[第1実施形態]
図1~
図5を参照して、第1実施形態によるガスクロマトグラフ装置およびガスクロマトグラフ装置の分析支援方法について説明する。
【0023】
(ガスクロマトグラフ装置の構成)
図1に示すように、ガスクロマトグラフ装置100は、分析部11を筐体内に収容した本体部1と、演算部2を備える。演算部2は、本体部1とは別個に設けられたコンピュータにより構成されており、有線または無線により本体部1と通信可能に接続されている。
【0024】
本体部1は、複数の検出器34(
図2参照)を搭載可能であり、外部に設けられたMS(質量分析計)などの検出器34とも接続可能に構成されている。本体部1は、分析部11と、本体表示部12と、入力部13と、制御部14とを含む。制御部14は、プロセッサおよび記憶部を含み、プロセッサが制御用のプログラムを実行することにより、本体部1の制御を行う。制御部14は、演算部2との通信により、分析条件などのデータを取得して、分析部11の動作を制御する。また、制御部14は、検出器34からの検出信号を演算部2へ送信する。本体表示部12は、液晶表示パネルなどを含み、分析部11における分析条件などの本体部1の情報を表示可能に構成されている。入力部13は、キーパッドやタッチパネルなどにより構成され、使用者による本体部1への各種情報の入力操作を受け付ける。
【0025】
図2に示すように、分析部11は、試料導入部31と、カラム32と、分岐部33と、複数の検出器34とを備える。以下、ガスクロマトグラフ装置100におけるガスの流れに沿って、試料導入部31から検出器34へ向かう方向を下流側(方向)検出器34から試料導入部31へ向かう方向を上流側という。
【0026】
試料導入部31は、キャリアガスおよび試料ガスを送り出すように構成されている。試料導入部31は、試料気化室31aと、キャリアガス導入路31bと、図示しない加熱手段とを含む。試料気化室31aは、外部の試料注入ユニット(図示せず)から試料を受け入れるように構成されている。試料が液体などの非ガスである場合、試料は、加熱手段によって加熱された試料気化室31a内で試料ガスに気化される。試料気化室31aは、カラム32の入口に接続されている。キャリアガス導入路31bは、キャリアガス源と試料気化室31aとを接続している。キャリアガス導入路31bを介して、ヘリウムなどの不活性ガスからなるキャリアガスが試料気化室31aに導入される。試料導入部31は、供給されるキャリアガスによって、試料気化室31a内の試料ガスをカラム32の入口に送り出す。キャリアガスおよび試料ガスが移動相としてカラム32に導入される。
【0027】
カラム32は、試料導入部31から導入された試料ガスの成分分離を行うように構成されている。カラム32は、ガスクロマトグラフィーの固定相を有する管であり、一端(入口)と他端(出口)とがそれぞれ開放されている。カラム32は、入口が試料気化室31aに接続されており、入口から試料ガスが流入する。カラム32は、本体部1が備えるオーブン35内に収容されている。分析時には、カラム32は、オーブン35によって所定温度まで昇温される。試料導入部31からのキャリアガスの圧力によって、移動相がカラム32内を下流側の分岐部33へ向けて流される。カラム32内では、試料導入部31から送り出された移動相とカラム32内の固定相との相互作用により、試料ガスに含まれる成分が選択的に遅延する。これにより、試料ガスの成分分離が行われる。
【0028】
分岐部33は、カラム32の下流に設けられ、試料ガスの流路を複数に分岐させるように構成されている。分岐部33は、オーブン35の外部においてカラム32の他端(出口)と接続されている。分岐部33は、複数の流出口を有する。それぞれの流出口には、流路36を介して検出器34が接続されうる。第1実施形態では、分岐部33は、複数の検出器34と、それぞれ別の流路36を介して接続されている。分岐部33に接続可能な検出器34の数は、任意であり、2つ、3つ、4つ、5つ以上でもよい。検出器34(流路36)が接続されない流出口は、遮断できる。
【0029】
また、分岐部33は、キャリアガス導入路33aと接続されている。分岐部33では、キャリアガス導入路33aから導入されるキャリアガスの圧力によって、試料ガスが流路36を介して各検出器34へ送り出される。
【0030】
流路36は、分岐部33と検出器34とを接続している。流路36は、管状の流路部材によって構成される。流路部材は、一端(入口)が分岐部33のいずれかの流出口に接続され、他端(出口)が接続部37を介していずれかの検出器34に接続される。流路部材は、抵抗管40またはカラムであり得る。抵抗管40は、所定の流路抵抗を有するように長さや内径が設定された管部材である。抵抗管40は、カラム32とは異なり、固定相を含まない。
【0031】
図2に示す例では、分岐部33は、流路36としての抵抗管40を介して、複数の検出器34とそれぞれ接続され、カラム32からの試料ガスをそれぞれの抵抗管40に分配するように構成されている。
図2では、便宜的に2つの抵抗管40を介して2つの検出器34が分岐部33に接続されている。
【0032】
複数の検出器34は、分岐部33とそれぞれ接続されている。具体的には、本体部1には、検出器34と流路36とを接続するための接続部37が複数設けられている。つまり、接続部37は、分岐部33からの流路36が接続されるとともに、検出器34が接続される。検出器34は、それぞれ別々の接続部37に接続されている。それぞれの検出器34は、分岐部33から分岐した流路36を介して送られる試料ガスを受け入れる。そして、検出器34は、受け入れた試料ガスに含まれる成分を検出して電気信号(検出信号)を出力するように構成されている。検出信号は、制御部14(
図1参照)を介して、演算部2へ送信される。
【0033】
検出器34には、様々な種類がある。検出器34は、たとえば、FID(水素炎イオン化検出器)、SCD(硫黄化学発光検出器)、MS(質量分析計)、BID(誘電体バリア放電イオン化検出器)、FPD(炎光光度検出器)、TCD(熱電導度検出器)、FTD(熱イオン化検出器)、ECD(エレクトロンキャプチャ検出器)などがある。これらの検出器は、公知であるので、具体的な検出原理や構造についての説明は省略する。
【0034】
図1に示すように、演算部2は、上記のように、本体部1に接続されたコンピュータにより構成されている。演算部2は、ガスクロマトグラフ装置100による分析における分析条件の設計支援、設計された分析条件のガスクロマトグラフ装置100への設定、各検出器34から出力された検出信号を取得してデータ処理などを行う機能を有している。
【0035】
コンピュータは、主として、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサ21と、揮発性、不揮発性の半導体メモリ、ハードディスクドライブなどの記憶部22と、液晶モニタなどの表示部23と、マウス、キーボードなどの入力デバイス24と、本体部1との有線または無線による接続が可能なI/F(インターフェース)部25と、を備えている。後述するように、表示部23には、入力デバイス24を用いた使用者による情報入力を受け付けるインターフェース画面80(
図4参照)を表示することが可能である。コンピュータ(プロセッサ21)は、記憶部22に記録されたガスクロマトグラフ装置の分析支援プログラム50をプロセッサ21が実行することにより、ガスクロマトグラフ装置100の演算部2として動作する。演算部2は、分析支援プログラム50が組み込まれた専用のハードウェアによって構成されていてもよい。
【0036】
分析支援プログラム50は、たとえばコンピュータ読取可能な非一過性(non-transitory)の記録媒体60に記録されて提供されうる。記録媒体60に記録された分析支援プログラム50が、コンピュータが備える読取装置(図示せず)により読み出されることにより、コンピュータの記憶部22に格納される。記録媒体60は、たとえば不揮発性の半導体メモリ、光学式記録媒体または磁気式記録媒体などを含む。また、分析支援プログラム50は、たとえば分析支援プログラム50を伝送する一過性の伝搬信号によって、コンピュータと接続するネットワーク61からI/F部25を介して提供されうる。
【0037】
図3は、ガスクロマトグラフ装置100における試料ガスの流通経路の構成を模式化したものである。ここで、分岐部33には、
図3のように、N本の流路36およびN個の検出器34が接続されうる。どの流路36が、接続部37に接続されたどの検出器34と接続されるか、それぞれの接続部37にどの種類の検出器34を接続するかは、任意である。そこで、演算部2は、分岐部33と検出器34との間の流路の情報71と、流路36に接続する検出器34の種類を特定する情報72とを取得するように構成されている。演算部2は、取得した情報に基づいて、流路36におけるガスの流量、流路36におけるガスの線速度、分岐部33の圧力、のうち少なくともいずれかを算出するように構成されている。
【0038】
流路の情報71は、分岐部33に接続する個々の流路36を識別可能な情報を含む。また、流路の情報71は、流路36を構成する流路部材に関する情報を含む。流路部材に関する情報は、その流路部材(抵抗管40またはカラム)の流路抵抗を決定づける特性値(流路部材の長さ、内径など)を含む。流路の情報71は、特性値に基づいて分岐部33に接続する複数の流路36を個別に区別し得る。
【0039】
検出器34の種類を特定する情報72は、たとえば流路36に接続する検出器34の種類そのものを表す情報である。つまり、検出器34の種類を特定する情報72は、検出器34が、たとえば、FID、SCD、MS、BID、FPD、TCD、FTD、ECDなどのいずれの種類の検出器であるかを示す。各検出器34と各流路36とは、一対一で接続されており、検出器34の種類を特定する情報72は、個々の流路36と対応付けて取得される。
図3の破線部に示すように、流路の情報71と、検出器34の種類を特定する情報72によって、分岐部33に接続するN本の流路36のうちのいずれの流路36に、どの種類の検出器34が接続しているかが把握できる。
【0040】
検出器34の種類に応じて、分析時の圧力条件が異なる。具体的には、FID、FPD、TCD、FTD、ECDは、いずれも大気圧で検出を行う検出器であり、検出器圧力が大気圧となる。SCD、MSは、真空状態で検出を行う検出器であり、検出器圧力が真空となる。BIDは、大気圧よりも高い背圧を付与して検出を行う検出器であり、検出器圧力が放電ガス流量に応じて決まる所定値となる。このため、ガスクロマトグラフ装置100において、各流路36の出口圧力である検出器圧力は、それぞれの流路36がどの種類の検出器34に接続しているかによって異なる。検出器34の種類を特定する情報72によって、その検出器の分析時の圧力条件が特定できる。その結果、検出器34の種類を特定する情報72によって、検出器圧力を特定することができる。
【0041】
(インターフェース画面)
演算部2は、分岐部33から分岐するそれぞれの流路36について、流路の情報71と、流路36に接続している検出器34の種類を特定する情報72とを互いに対応付けて入力可能なインターフェース画面80(
図4参照)を表示部23に表示させる。演算部2は、インターフェース画面80に対する入力デバイス24を用いた操作入力を受け付けることにより、流路の情報71と、検出器34の種類を特定する情報72とを取得する。
【0042】
図4に示すように、演算部2は、流路36の情報を入力するための第1入力欄81と、第1入力欄81により特定される流路36に接続された検出器34の種類を特定する情報72を入力するための第2入力欄82と、を含むインターフェース画面80を表示部23に表示させる。
【0043】
図4の例では、インターフェース画面80は、「抵抗管1」および「抵抗管2」の複数(2つ)の第1入力欄81を含む。演算部2は、使用者が第1入力欄81を指定(クリック)することに応じて、クリックされた第1入力欄81に対する情報入力領域81a、81bおよび第2入力欄82を表示させる。
図4では、「抵抗管1」の第1入力欄81が指定されることにより、「抵抗管1」についての情報入力領域81a、81bと、「抵抗管1」として特定される流路36に接続された検出器34の種類を特定する情報72を入力するための第2入力欄82とが表示されている状況を例示している。
【0044】
情報入力領域81a、81bは、それぞれ、流路の情報71として、流路36(
図4では「抵抗管1」)の長さと内径との入力を受け付ける。使用者が情報入力領域81a、81bをそれぞれ指定(クリック)して数値を入力することにより、演算部2は、これらの流路36の情報(長さ、内径)を取得する。流路36毎に第1入力欄81が設けられることにより、流路の情報71は、各流路36のうちから個々の流路を特定する情報(「抵抗管1」「抵抗管2」)と、特定された流路36について第1入力欄81に入力される特性値(長さ、内径)の情報とを含む。
【0045】
第2入力欄82は、第1入力欄81の一部として設けられ、第1入力欄81が指定(クリック)されることによって入力可能となる。これにより、第2入力欄82は、それぞれの第1入力欄81に入力される流路の情報71と互いに対応付けて、流路36に接続された検出器34の種類を特定する情報72を入力可能となっている。
【0046】
ここで、演算部2は、第2入力欄82において、接続部37(
図2参照)に接続されている検出器34の種類を選択可能に表示するように構成されている。具体的には、演算部2は、制御部14(
図1参照)を介して、それぞれの接続部37に接続された検出器34と電気的に接続されており、検出器34の種類を認識可能である。演算部2は、認識した検出器34のリストを、第2入力欄82に表示させる。
【0047】
図4の例では、第2入力欄82は、ドロップダウンリスト形式の入力欄となっている。演算部2は、使用者が第2入力欄82を指定(クリック)することに応じて、入力可能な検出器34の種類を選択可能に表示する。使用者が第2入力欄82のドロップダウンリストから該当する検出器34の種類を選択して指定(クリック)することにより、演算部2は、第1入力欄81により特定される流路36に接続された検出器34の種類を特定する情報72を取得する。
図4では、「抵抗管1」に接続された検出器34の種類として「SCD」が選択された例を示している。なお、第2入力欄82に表示された「(DET#2)」は、2番の接続部37に接続された検出器であることを表している。
【0048】
図示しないが、第1入力欄81の情報入力領域81a、81bおよび第2入力欄82への情報入力が行われた後、使用者が第1入力欄81を再度指定(クリック)すると、演算部2は、情報入力領域81a、81bおよび第2入力欄82を非表示に切り替える。第1入力欄81内には、入力済みの内容(「長さ」、「内径」、「検出器」)がそれぞれ表示される。
【0049】
このような構成により、演算部2は、流路の情報71と、流路36に接続する検出器34の種類を特定する情報72とをインターフェース画面80を介して取得する。演算部2は、これらの流路の情報71および検出器34の種類を特定する情報72を用いて、ガスの流量、ガスの線速度、分岐部33の圧力を算出できる。
【0050】
(ガスの流量、ガスの線速度、分岐部の圧力の算出)
次に、ガスの流量、ガスの線速度、分岐部33の圧力の算出について説明する。ガスクロマトグラフ装置100における試料ガスの流れは、試料導入部31、分岐部33および検出器34の各々における圧力と、カラム32や流路36の流路抵抗を決定する特性値(長さや内径など)と、ガスクロマトグラフ装置100の装置構成や分析条件によって特定される各種のパラメータによって決まる。第1実施形態では、キャリアガス導入路33a(
図2参照)と接続された分岐部33の圧力が、制御部14によって制御可能となっている。そのため、分岐部33と検出器34との間の流路36における試料ガスの流れに関しては、分岐部33よりも上流側のカラム32の特性値および試料導入部31の圧力を考慮する必要はない。
【0051】
図3を参照して、分岐部33に接続されたそれぞれの流路36および検出器34を、「流路i」、「検出器j」(i,j=1~N)とする。流路iの長さをL
i[m]、流路iの内径をd
i[mm]、流路iにおける試料ガスの流量をF
i[ml/min]とし、流路iにおける試料ガスの線速度をV
i[cm/s]とし、検出器jの圧力をP
j[絶対圧;kPa]とする。分岐部33の圧力をP
x[絶対圧;kPa]とする。分岐部33の圧力P
xおよび検出器jの圧力P
jは、それぞれ、流路36の入口圧力および出口圧力と言い換えてもよい。
【0052】
流路iと検出器jとが接続関係にある場合、流路iにおける試料ガスの流量F
iは、下式(1)で表される。
【数1】
上式(1)において、μは、ガスの粘性係数[Pa・S]、Tは流路の温度[K]、C
1は、所定の定数である。T
sは標準温度、P
sは標準圧力であり、上式(1)は流量を標準温度、大気圧に換算している。流量F
iは、流路内の体積流量である。
【0053】
上式(1)において、流路iに対して、どの検出器jが接続されているかは、
図4に示したインターフェース画面80へ入力された情報により把握される。
図3の例では、「抵抗管1(i=1)」と「検出器2(j=2)」とが接続され、「抵抗管2(i=2)」と「検出器1(j=1)」とが接続されている。したがって、たとえば「抵抗管1(i=1)」における試料ガスの流量F
1は、上式(1)においてi=1、j=2とすることにより、下式(2)で表される。
【数2】
【0054】
また、流路iと検出器jとが接続関係にある場合、流路iにおける試料ガスの線速度V
iは、下式(3)で表される。
【数3】
C
2は、所定の定数である。線速度V
iは、流路内でのキャリアガスの単位時間当たりの移動距離であり、本明細書において「線速度」は、流路内の平均線速度を意味する。
【0055】
演算部2は、
図4の第1入力欄81に入力された流路部材の長さL
iおよび内径d
iを流路の情報71として取得する。また、記憶部22(
図1参照)には、検出器34の種類に応じた検出器圧力P
jの値が予め記憶されている。つまり、FIDなどの検出器圧力が大気圧となる検出器については、検出器圧力P
jとして大気圧の設定値が取得される。SCD、MSなどの検出器圧力が真空となる検出器については、検出器圧力P
jとして真空圧の設定値が取得される。BIDなど、検出器圧力が分析条件(放電ガス流量)に応じて決まる所定値となる検出器については、演算部2は、記憶部22に入力された分析条件から、検出器圧力P
jを算出する。
【0056】
また、演算部2は、ガスの流量Fi、ガスの線速度Vi、分岐部33の圧力Pxのいずれか1つを含む分析条件の情報を取得することにより、取得した情報に基づいてガスの流量Fi、ガスの線速度Vi、分岐部33の圧力Pxのうち他のいずれかを算出する。
【0057】
すなわち、ガスクロマトグラフ装置100は、キャリアガスの制御モードを分析条件の1つとして設定可能に構成されている。制御モードには、流量F
iを設定値(一定値)に制御するモード、線速度V
iを設定値(一定値)に制御するモード、分岐部圧力P
xを設定値(一定値)に制御するモード、が含まれる。制御部14(
図1参照)は、分析を行う際、ガスの流量F
i、ガスの線速度V
i、分岐部圧力P
xのうち、制御モードによって指定されたいずれか1つを設定値に維持するように分析部11を制御する。演算部2は、指定された設定値を用いて、ガスの流量F
i、ガスの線速度V
i、分岐部圧力P
xのうち他のいずれかを算出する。
【0058】
たとえば上記式(1)~(3)において、分岐部圧力Pxに設定値が指定された場合、演算部2は、指定された分岐部圧力Pxの値を代入することにより、流量Fi、線速度Viを算出する。
【0059】
ここで、演算部2は、使用者により入力された各種のパラメータを記憶部22に記憶させる。
図1に示すように、記憶部22は、環境設定データ51と、メソッドデータ52とを記憶する。環境設定データ51は、ガスクロマトグラフ装置100の装置構成(分析を行う環境)を設定するデータである。演算部2は、取得した流路の情報71(流路部材の長さL
i、内径d
iなど)と、流路36に接続する検出器34の種類を特定する情報72とを、環境設定データ51として記憶部22に記憶させる。
【0060】
メソッドデータ52は、ガスクロマトグラフ装置100による分析の分析条件を設定するデータである。ガスの流量Fi、ガスの線速度Vi、分岐部33の圧力Pxのいずれかの設定値、粘性係数μ、温度T、定数C1、C2などの各種パラメータは、図示しないメソッド編集用のインターフェース画面を介して使用者から入力され、または入力されたパラメータから算出され、それぞれメソッドデータ52として記憶部22に記憶される。上述したように、検出器が「BID」である場合の検出器圧力を決定するための放電ガス流量も分析条件であり、メソッドデータ52に含まれる。演算部2は、これらの情報に基づいてガスの流量Fi、ガスの線速度Vi、分岐部圧力Pxを算出できる。上記式(1)~(3)においてガスの流量Fi、ガスの線速度Vi、分岐部圧力Pxの算出に用いる各パラメータは、使用者により一度入力された後は、記憶部22から読み出すことが可能である。なお、メソッドデータ52には、上記の他、試料導入部31の圧力P0やオーブン35の昇温条件などの分析に必要な各種パラメータが設定される。
【0061】
また、演算部2は、抵抗管40の情報と、それぞれの抵抗管40に接続する検出器34の種類を特定する情報72に基づいて、複数の検出器34に接続するそれぞれの抵抗管40に分配されるガスの分岐比を算出する。分岐比は、それぞれの検出器34に接続する流路36におけるガスの流量F
iの比である。2つの検出器34が設けられた
図3の例では、分岐比は、F
1:F
2である。
【0062】
次に、
図5を参照して、ガスクロマトグラフ装置100の分析支援方法を説明する。第1実施形態では、演算部2により、分析支援方法が実行される。
【0063】
ステップS1において、分岐部33と検出器34との間の流路の情報71と、流路36に接続する検出器34の種類を特定する情報72とを取得する。演算部2は、表示部23に表示させたインターフェース画面80を介して、使用者からの情報の入力を受け付ける。各情報が環境設定データ51として記憶部22に記憶済みの場合は、演算部2は、記憶部22から環境設定データ51を読み出すことにより各情報を取得する。
【0064】
ステップS2において、分析条件に関わるパラメータを取得する。演算部2は、上式(1)、(2)におけるガスの流量Fi、ガスの線速度Vi、分岐部33の圧力Pxのいずれかの設定値、粘性係数μ、温度T、標準温度Tsおよび標準圧力Ps、定数C1、C2などの各種パラメータを取得する。
【0065】
ステップS3において、取得した情報に基づいて、流路36におけるガスの流量、流路36におけるガスの線速度、分岐部33の圧力、のうち少なくともいずれかを算出する。演算部2は、ステップS1およびS2で取得したパラメータを用いて、上式(1)および(3)により、それぞれの流路36における、ガスの流量Fi、ガスの線速度Vi、分岐部33の圧力Px、のうち少なくともいずれかを算出する。演算部2は、それぞれの流路36におけるガスの流量Fiを算出することにより、各流路36の分岐比を算出する。
【0066】
演算部2は、算出したガスの流量Fi、ガスの線速度Vi、分岐部圧力Pxや、分岐比の値などの各情報を、表示部23に表示する。使用者は、表示された情報を参照することにより、分析条件が適切か否かを判断することができ、必要な場合にはメソッドデータ52を修正する。分析条件が適切に設定されると、演算部2は、使用者の入力操作に応じて、設定されたメソッドデータ52をガスクロマトグラフ装置100の制御部14に送信する。ガスクロマトグラフ装置100では、制御部14がメソッドデータ52に従って各部を制御する。
【0067】
(第1実施形態の効果)
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0068】
第1実施形態では、上記のように、ガスクロマトグラフ装置100が、分岐部33と検出器34との間の流路の情報71と、流路36に接続する検出器34の種類を特定する情報72とを取得し、取得した情報に基づいて、流路36におけるガスの流量、流路36におけるガスの線速度、分岐部33の圧力、のうち少なくともいずれかを算出する演算部2を備える。この構成により、ガスクロマトグラフ装置100に接続された複数の検出器34の各々について、どの種類の検出器34が、分岐部33から分岐したどの流路36と接続されているか、を把握することができる。これにより、どのような圧力条件で使用される検出器34が、装置のどの流路36に接続されているかを特定できるので、取得した情報に基づいて、ガスの流量、線速度、分岐部33の圧力のうち少なくともいずれかを算出する際に、個々の流路36と、流路36に接続された検出器34側の圧力条件を特定して計算を行うことができる。その結果、分岐する流路36のそれぞれに接続された検出器34の圧力を考慮して、流路36のガス流量、ガスの線速度、分岐部33の圧力などの算出値の精度を向上させることができる。
【0069】
また、第1実施形態では、上記のように、演算部2は、流路の情報71に基づいて流路36の抵抗を取得し、検出器34の種類を特定する情報72に基づいて、検出器34の圧力を取得し、ガスの流量、ガスの線速度、分岐部33の圧力のいずれか1つを含む分析条件の情報を取得することにより、取得した情報に基づいてガスの流量、ガスの線速度、分岐部33の圧力のうち他のいずれかを算出する。これにより、分岐部33から流路36を介して検出器34に至る経路における、流路36の抵抗および検出器34の圧力を特定できるので、ガスの流量、ガスの線速度、分岐部33の圧力のいずれか1つを分析条件として取得することにより、取得した分析条件を実現するためのガスの流量、ガスの線速度、分岐部33の圧力のうち他のいずれかを精度よく算出できる。
【0070】
また、第1実施形態では、上記のように、情報入力を受け付けるインターフェース画面80を表示する表示部23をさらに備え、演算部2は、分岐部33から分岐するそれぞれの流路36について、流路の情報71と、流路36に接続している検出器34の種類を特定する情報72とを互いに対応付けて入力可能なインターフェース画面80を表示部23に表示させる。これにより、流路の情報71と、流路36に接続している検出器34の種類を特定する情報72とを、使用者がインターフェース画面80上で入力することができる。この際、流路36と検出器34とを互いに対応させて情報の入力ができるので、分岐部33に複数の検出器34がそれぞれ流路36を介して接続されている場合でも、使用者が流路36に対して接続関係にない別の種類の検出器34を誤って入力することを抑制できる。
【0071】
また、第1実施形態では、上記のように、演算部2は、流路の情報71を入力するための第1入力欄81と、第1入力欄81により特定される流路に接続された検出器34の種類を特定する情報72を入力するための第2入力欄82と、を含むインターフェース画面80を表示部23に表示させる。これにより、第2入力欄82により、第1入力欄81への入力情報によって特定される流路との対応関係が明確になるので、分岐部33に複数の検出器34がそれぞれ流路36を介して接続されている場合でも、使用者による誤入力を効果的に抑制できる。
【0072】
また、第1実施形態では、上記のように、分岐部33からの流路が接続されるとともに、検出器34が接続される複数の接続部37を備え、演算部2は、第2入力欄82において、接続部37に接続されている検出器34の種類を選択可能に表示するように構成されている。これにより、第2入力欄82において、実際に接続部37に接続されている検出器34の種類を選択肢の形式で表示できるので、使用者が実際の検出器34の種類とは異なる種類を誤って入力することを抑制できる。また、使用者は、表示されている選択肢から入力すべき検出器34の種類を選ぶだけでよいので、使用者にとっての利便性を向上させることができる。
【0073】
また、第1実施形態では、上記のように、分岐部33は、流路36としての抵抗管40を介して、複数の検出器34とそれぞれ接続され、カラム32からの試料ガスをそれぞれの抵抗管40に分配するように構成され、演算部2は、抵抗管40の情報と、それぞれの抵抗管40に接続する検出器34の種類を特定する情報72に基づいて、複数の検出器34に接続するそれぞれの抵抗管40に分配されるガスの分岐比をさらに算出する。ここで、たとえば大気圧で使用される検出器と真空状態で使用される検出器とが混在する場合と、全ての検出器が同じ圧力条件で使用される場合とでは、流路36の構造が同じでもガスの分岐比が異なる。そのため、複数の検出器34が分岐部33を介して並列的に接続される構成において、抵抗管40の情報と、それぞれの抵抗管40に接続する検出器34の種類を特定する情報72に基づくことによって、それぞれの検出器34に分配されるガスの分岐比を、より高精度に算出できる。
【0074】
[第2実施形態]
次に、
図6および
図7を参照して、第2実施形態によるガスクロマトグラフ装置200について説明する。第2実施形態では、ガスクロマトグラフ装置200の装置構成が、上記第1実施形態とは異なる例について説明する。
【0075】
図6に示すように、第2実施形態によるガスクロマトグラフ装置200は、複数のカラム132を備え、複数のカラム132によって試料ガスの成分分離を多段階で行うように構成されている。
図6では、ガスクロマトグラフ装置200に2つの検出器134が設けられている例を示し、それぞれの検出器を134a、134bとする。
【0076】
ガスクロマトグラフ装置200の分析部11では、上記第1実施形態と同様に、試料導入部31に第1のカラム132aの一端(入口)が接続され、第1のカラム132aの他端(出口)が分岐部33に接続されている。分岐部33は、流路136aを介して検出器134aに接続している。流路136aは抵抗管により構成されている。分岐部33は、流路136bを介して検出器134bに接続している。第2実施形態では、分岐部33と検出器134bとの間の流路136bが、カラム132bにより構成されている。すなわち、第2実施形態では、分岐部33が、上流側の第1のカラム132aとは別個に設けられた、流路136としての第2のカラム132bを介して検出器134bと接続されている。第1のカラム132aと第2のカラム132bには、分離特性が異なるカラムが用いられる。
【0077】
第2実施形態では、分岐部33は、制御部14(
図1参照)の制御により、試料ガスの分配先として、検出器134aと、検出器134bとを選択的に切り替えるように構成されている。
【0078】
具体的には、分岐部33は、キャリアガス導入路33aから導入されたキャリアガスの流通経路を分岐部33内で切り替えることによって、試料ガスの分配先を、検出器134aと、検出器134bとに切り替える。分岐部33は、最初に、キャリアガスの経路切り替えにより、検出器134aへの流出口圧力よりも、検出器134bへの流出口圧力を大きくするように制御される。圧力の大小関係により、分岐部33では、第1のカラム132aの出口からのガスが検出器134a側へ分配される。この結果、最初に試料ガス中の第1成分と第2成分とが第1のカラム132aにおいて分離され、第1成分が流路136aを介して検出器134aへ供給される。その後、分配先が切り替えられ、第2成分が第2のカラム132bに送られる。すなわち、分岐部33は、キャリアガスの経路切り替えにより、検出器134bへの流出口圧力よりも、検出器134aへの流出口圧力を大きくするように制御される。圧力の大小関係により、分岐部33内部では、第1のカラム132aの出口からのガスが検出器134b側へ分配される。
【0079】
この結果、第1のカラム132aとは分離特性の異なる第2のカラム132bにおいて、第2成分に含まれる第3成分と第4成分とが分離されてそれぞれ検出器134bへ供給される。これにより、多成分を精度よく分離して検出することが可能である。
【0080】
なお、第1のカラム132aと第2のカラム132bとは、
図6のように共通のオーブン35に収容されていてもよいし、別々のオーブンに収容されていてもよい。第1のカラム132aと第2のカラム132bとが別々のオーブンに収容される構成では、カラムの分離特性を異ならせるだけでなく、カラム(オーブン)の温度設定や昇温条件をそれぞれ独立に設定できる。
【0081】
第2実施形態では、演算部2(
図1参照)は、流路の情報71としての第2のカラム132bの情報と、第2のカラム132bに接続された検出器134の種類を特定する情報72とに基づいて、第2のカラム132bにおけるガスの流量F
i、第2のカラム132bにおけるガスの線速度V
i、または、分析条件として指定された流量または線速度を実現するための分岐部33の圧力P
x、の少なくともいずれかを算出するように構成されている。
【0082】
演算部2は、たとえば
図7に示すインターフェース画面180を介して、各情報を取得する。インターフェース画面180は、第2のカラム132bに関する第1入力欄181と、検出器134aおよび検出器134bの各々に対応する2つの第2入力欄182と、を含む。
【0083】
図7の例では、第2のカラム132bに関する第1入力欄181が「2ndカラム」の情報入力欄として表示される。検出器134aおよび検出器134bに対応する第2入力欄182が、それぞれ「1st検出器」および「2nd検出器」の情報入力欄として表示される。
【0084】
第1入力欄181は、情報入力領域181a~181dなどの各種の情報入力領域を含む。情報入力領域181a~181dは、それぞれ、第2のカラム132bである流路部材に関する情報として、カラムのタイプ、カラムの長さ、カラムの内径、カラムのタイプに応じたパラメータ、の入力を受け付ける。
図7の例では、カラムのタイプが「キャピラリ」であるため、これに応じた「液相の膜厚」のパラメータが入力される。使用者が各情報入力領域をそれぞれ指定(クリック)して数値を入力することにより、演算部2は、これらの流路の特性値(タイプ、長さ、内径、液相の膜厚)を取得する。
【0085】
第2入力欄182は、第1入力欄181とは別個に設けられている。第2実施形態では、「1st検出器」および「2nd検出器」の区別によって、「2ndカラム」と「2nd検出器」とが接続されていることが特定される。使用者が、第2のカラム132bに接続されている検出器134bの種類を特定する情報を、「2nd検出器」の第2入力欄182に入力する。演算部2は、「2nd検出器」の第2入力欄182から、流路136b(カラム132b)と接続する検出器134bの種類を特定する情報72を取得する。
【0086】
第2入力欄182の構成は、上記第1実施形態と同様である。演算部2は、第2入力欄182において、接続部37に接続されている検出器134の種類を選択可能に表示する。使用者が第2入力欄182のドロップダウンリストから該当する検出器134の種類を選択して指定(クリック)することにより、演算部2は、第1入力欄181により特定される流路部材に接続された検出器134の種類を特定する情報72を取得する。なお、
図7では、「1st検出器」および「2nd検出器」が、それぞれ「FID(DET#2)」および「SCD(DET#1)」である例を示している。
【0087】
このような構成により、演算部2は、流路の情報71と、流路136に接続する検出器134の種類を特定する情報72とを取得する。また、演算部2は、上式(1)、(2)におけるガスの流量Fi、ガスの線速度Vi、分岐部33の圧力Pxのいずれかの設定値、粘性係数μ、温度T、定数C1、C2などの各種パラメータを、表示部23に表示させたインターフェース画面(図示せず)を介して、または記憶済みのメソッドデータ52から読み出すことにより、取得する。
【0088】
演算部2は、これらの流路の情報71および検出器134bの種類を特定する情報72を用いて、上式(1)~(3)により、ガスの流量Fi、ガスの線速度Vi、分岐部圧力Pxなどを算出できる。第2実施形態では、流路136bが第2のカラム132bであるので、上式(1)中の流路の内径diについては、固定相を考慮して、d={カラムの内径-(2×膜厚)}で求められる。
【0089】
これにより、演算部2は、第2のカラム132bにおけるガスの流量Fi、第2のカラム132bにおけるガスの線速度Vi、または、分析条件として指定された流量または線速度を実現するための分岐部33の圧力Px、の少なくともいずれかを算出する。
【0090】
また、第2実施形態では、演算部2は、試料ガスの分配先を検出器134aから検出器134bに切り替えた場合の、試料ガスの回収率を算出する。回収率は、分配先を検出器134bに切り替えてからの、検出器134bで回収される試料ガスの割合である。具体的には、演算部2は、第1のカラム132aにおけるガスの流量F0と、分岐部33内で検出器134aへの流出口と検出器134bへの流出口とを繋ぐ流通経路におけるキャリアガスの流量Fcとを求め、下式(4)により回収率を算出する。
回収率=(F0+Fc)/F0 ・・・(4)
【0091】
F0およびF0+Fcは、基本的には上式(1)と同様の算出式により求められ、代入する変数の値が異なる。詳細は省略するが、式(4)の分母については、F0=F(D0、L0、T0、μ0、P0、Pc1)となる関数で表される。D0、L0、T0、μ0は、第1のカラム132aにおける内径、長さ、温度、粘性係数である。P0は、試料導入部31の圧力である。Pc1は、分岐部33内における第1のカラム132aとの接続部圧力とする。
【0092】
式(4)の分子については、F0+Fc=F(Dc、Lc、Tc、μc、Pc1、Pc2)となる関数で表される。Dc、Lc、Tc、μcは、分岐部33内の流通経路における内径、長さ、温度、粘性係数である。Pc2は、分岐部33内における第2のカラム132bとの接続部圧力とする。
【0093】
分岐部33内における各部の圧力Pc1およびPc2は、分岐部33へのキャリアガスの圧力Pc、試料導入部31の圧力P0、および、検出器134aおよび検出器134bの各検出器圧力Pjなどの値に基づいて算出される。
【0094】
上記のように分岐部33では、キャリアガスの経路切り替えによる、検出器134aへの流出口圧力と検出器134bへの流出口圧力との大小関係により、試料ガスの分配先を切り替える。このとき、試料導入部31の圧力P0、分岐部33へのキャリアガスの圧力Pcなどの設定値によっては、試料ガスの分配先を検出器134bへ切り替えた後でも、試料ガスが検出器134a側にも流入する可能性があり、この場合、上式(4)における回収率が1(100%)未満となる。そのため、使用者は、演算部2により算出された回収率が100%以上になるように、各種のパラメータ(圧力P0、圧力Pc、第1のカラム132aにおける流量F0、第2のカラム132bにおける流量Fi、線速度Viなど)を設定する。
【0095】
なお、第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0096】
(第2実施形態の効果)
第2実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0097】
第2実施形態では、上記第1実施形態と同様に、流路の情報71と、流路136に接続する検出器134の種類を特定する情報72とが演算部2により取得されるので、分岐する流路136のそれぞれに接続された検出器134の圧力を考慮して、流路136のガス流量、ガスの線速度、分岐部33の圧力などの算出値の精度を向上させることができる。
【0098】
また、第2実施形態では、分岐部33は、上流側の第1のカラム132aとは別個に設けられた、流路136としての第2のカラム132bを介して検出器134bと接続される。このように、第1のカラム132aの下流側に特性の異なる第2のカラム132bを設けることにより、より高精度な成分分離を行うことができる。この場合、分岐部33から検出器134bに至る第2のカラム132bにおけるガスの流れや圧力が、適切な分析を行うために重要となる。そこで、第2実施形態では、上記のように、演算部2は、第2のカラム132bの情報と、第2のカラム132bに接続された検出器134bの種類を特定する情報72に基づいて、第2のカラム132bにおけるガスの流量、第2のカラム132bにおけるガスの線速度、または、分析条件として指定された流量または線速度を実現するための分岐部33の圧力、の少なくともいずれかを算出する。これにより、第2のカラム132bに接続された検出器134bの種類を特定する情報72に基づいて、第2のカラム132bの下流側の検出器134bの圧力条件を把握できるので、適切な分析を行うために重要な第2のカラム132bにおけるガスの流れや圧力を、精度よく算出することができる。
【0099】
第2実施形態では、検出器134bの種類を特定する情報72を用いて検出器圧力Pjを正確に取得できるので、上式(4)の回収率の算出において、分岐部33内における各部の圧力Pc1およびPc2を正確に算出することができる。その結果、検出器圧力Pjを用いて、上式(4)の回収率を、より正確に計算することが可能である。使用者は、算出された回収率を100%とするための各種のパラメータの設定を正確に行うことができるので、分析条件の設計をより適切に行うことができる。
【0100】
なお、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0101】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0102】
たとえば、上記第1および第2実施形態では、分岐部33にキャリアガス導入路33aを接続し、分岐部33におけるキャリアガスの圧力(分岐部圧力P
x)が制御される例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、分岐部33にキャリアガス導入路33aを接続せず、分岐部33におけるキャリアガスの圧力(分岐部圧力P
x)を制御しなくてもよい。この場合、
図3に示したように、試料導入部31における圧力P
0の制御によって各流路36の流量等が調節される。演算部2は、上式(1)、(3)において、試料導入部31における圧力P
0、カラム32(第1のカラム132a)の特性値(長さ、内径、膜厚など)を用いて、各流路36における試料ガスの流量等を算出するように構成されてもよい。
【0103】
また、上記第1および第2実施形態では、FIDやSCDなどの検出器34を例示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ガスクロマトグラフ装置100は、上記した各種の検出器以外の種類の検出器を備えていてもよい。
【0104】
また、上記第1および第2実施形態では、ガスクロマトグラフ装置100が、本体部1とは別個に設けられた演算部2によって、各流路36における試料ガスの流量等を算出する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、演算部2を、本体部1に設けてもよい。たとえば、本体部1の制御部14が、演算部2としても機能するように構成されていてもよい。すなわち、本体部1に設けられたプロセッサが、制御部14として動作するためのプログラムを実行するのに加えて、演算部2として動作するための分析支援プログラム50を実行してもよい。この場合、インターフェース画面80(180)は、本体部1の外部に設けた表示部23に表示させてもよいし、本体部1に組み込まれた本体表示部12に表示させてもよい。この場合、本体部1の外部に演算部2として動作させるコンピュータを設けなくてもよい。また、本体部1が、制御部14として動作するプロセッサと、演算部2として動作するプロセッサとを別々に備えてもよい。
【0105】
また、上記第1および第2実施形態では、演算部2としてのコンピュータが備える入力デバイス24を介して、流路の情報71と、流路36に接続する検出器34の種類を特定する情報72との入力を受け付ける例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえば本体部1の入力部13に、情報入力が行われてもよい。また、情報の入力は、コンピュータと通信可能な外部の端末を介して行われてもよい。
【0106】
また、上記第1および第2実施形態では、
図4および
図7に示したインターフェース画面80(180)を表示させる例を示したが、本発明はこれに限られない。
図4および
図7に示したインターフェース画面80(180)の表示態様はあくまでも一例であり、本発明では、どのような表示態様のインターフェース画面を表示させてもよい。また、インターフェース画面は、第1入力欄81および第2入力欄82を表示させるものに限らず、流路の情報71および検出器34の種類を特定する情報72を入力可能であれば、どのような入力欄が設けられてもよい。さらに、本発明では、インターフェース画面を表示させずに情報入力を受け付けてもよい。
【符号の説明】
【0107】
2 演算部
23 表示部
31 試料導入部
32、132 カラム
33 分岐部
34、134、134a、134b 検出器
36、136、136a、136b 流路
37 接続部
40 抵抗管
71 流路の情報
72 検出器の種類を特定する情報
80、180 インターフェース画面
81、181 第1入力欄
82、182 第2入力欄
100、200 ガスクロマトグラフ装置
132a 第1のカラム
132b 第2のカラム
di 内径
Li 長さ
Fi 流量
Pj 検出器の圧力
Px 分岐部の圧力
Vi 線速度