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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-24
(45)【発行日】2022-02-01
(54)【発明の名称】航空機用エネルギ回収装置
(51)【国際特許分類】
   B64D 41/00 20060101AFI20220125BHJP
   F01D 15/10 20060101ALI20220125BHJP
   F02C 6/20 20060101ALI20220125BHJP
   F02C 1/02 20060101ALI20220125BHJP
   F02C 6/00 20060101ALI20220125BHJP
【FI】
B64D41/00
F01D15/10 A
F01D15/10 B
F02C6/20
F02C1/02
F02C6/00 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020552521
(86)(22)【出願日】2019-07-05
(86)【国際出願番号】 JP2019026775
(87)【国際公開番号】W WO2020079892
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2020-12-25
(31)【優先権主張番号】P 2018196361
(32)【優先日】2018-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】関 直喜
(72)【発明者】
【氏名】菅原 寛生
(72)【発明者】
【氏名】二瓶 泰徳
(72)【発明者】
【氏名】大依 仁
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-538153(JP,A)
【文献】特表2016-508466(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64D 41/00
F01D 15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機の客室と前記客室から排出される客室排気を機外に放出する開口部との間に設けられ、前記客室排気のみによって運転されるタービンと、
前記タービンによって駆動される発電機と、
前記客室排気を用いて前記航空機の電気機器を冷却する冷却ユニットとを備え、
前記タービンは、前記冷却ユニットから排出される加熱排気によって運転され、
前記冷却ユニットが複数設けられる場合、前記タービン及び前記発電機は、前記冷却ユニットに対応して複数設けられる航空機用エネルギ回収装置。
【請求項2】
前記タービン及び前記発電機は、前記航空機の圧力隔壁の後方に設けられる請求項1に記載の航空機用エネルギ回収装置。
【請求項3】
前記開口部は、前記航空機の与圧・空調システムを構成するアウトフローバルブである請求項1または2に記載の航空機用エネルギ回収装置。
【請求項4】
前記発電機の出力を前記航空機の直流電源バスに合致した直流電圧に変換する電力変換器をさらに備える請求項1~3のいずれか一項に記載の航空機用エネルギ回収装置。
【請求項5】
前記タービンは、前記客室から排出された複数の前記客室排気を合計した流体のみによって運転される請求項1に記載の航空機用エネルギ回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、航空機用エネルギ回収装置に関する。本願は、2018年10月18日に日本に出願された日本国特願2018-196361号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、航空機における電動駆動ユニットを冷却するシステムとして、客室から排気されたベンチレーションエアと熱交換を行う熱交換器を電動駆動ユニットに隣接配置すると共に、当該熱交換器からベンチレーションエアを吸引する電動ブロワユニットを設け、電動駆動ユニットの発熱量に応じて電動ブロワの回転数を変えることによって上記熱交換器を通過するベンチレーションエアの通過量を調節するものが開示されている。下記の特許文献2~4にも、航空機用空調装置に関連する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2016/035462号
【文献】日本国特表第2015-500162号
【文献】日本国特表第2014-533624号
【文献】米国特許第4419926号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記背景技術では、熱交換器を通過することによって加熱されたベンチレーションエアを機外にそのまま排気している。すなわち、上記背景技術では、航空機で発生する余剰エネルギを有効活用することなく廃棄している。しかしながら、航空機における全体的なエネルギ効率を考慮すると、航空機の余剰エネルギの有効活用が望まれる。
【0005】
本開示は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、航空機の余剰エネルギの有効活用を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本開示では、航空機用エネルギ回収装置に係る第1の態様として、航空機の客室と当該客室から排出される客室排気を機外に放出する開口部との間に設けられ、前記客室排気のみによって運転されるタービンと、前記タービンによって駆動される発電機とを備える航空機用エネルギ回収装置、を採用する。
【0007】
本開示では、航空機用エネルギ回収装置に係る第2の態様として、上記第1の態様において、前記タービン及び前記発電機は、前記航空機の圧力隔壁の後方に設けられてもよい。
【0008】
本開示では、航空機用エネルギ回収装置に係る第3の態様として、上記第1または第2の態様において、前記開口部は、前記航空機の与圧・空調システムを構成するアウトフローバルブ(Out Flow Valve)でもよい。
【0009】
本開示では、航空機用エネルギ回収装置に係る第4の態様として、上記第1~第3のいずれかの態様において、前記発電機の出力を前記航空機の直流電源バスの直流電圧に変換する電力変換器をさらに備えてもよい。
【0010】
本開示では、航空機用エネルギ回収装置に係る第5の態様として、上記第1の態様において、前記タービンは、前記客室から排出された複数の前記客室排気を合計した流体のみによって運転されてもよい。
【0011】
本開示では、航空機用エネルギ回収装置に係る第6の態様として、上記第1~第4のいずれかの態様において、前記客室の排気を用いて航空機の電気機器を冷却する冷却ユニットをさらに備え、前記タービンは、前記冷却ユニットから排出される加熱排気によって運転されてもよい。
【0012】
本開示では、航空機用エネルギ回収装置に係る第7の態様として、上記第6の態様において、前記冷却ユニットが複数設けられる場合、前記タービン及び前記発電機は、前記冷却ユニットに対応して複数設けられてもよい。
【0013】
本開示では、航空機用エネルギ回収装置に係る第8の態様として、上記第6の態様において、前記冷却ユニットは、熱交換器を備え、前記加熱排気は、前記冷却ユニットの前記熱交換器を介して、前記電気機器を冷却すると共に前記電気機器の熱により加熱・昇温された前記客室排気であってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、航空機の余剰エネルギの有効活用を実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本開示の第1実施形態に係る航空機用エネルギ回収装置の機能構成を示すブロック図である。
図2】本開示の第1実施形態に係る航空機用エネルギ回収装置の詳細構成を示すブロック図である。
図3】本開示の第2実施形態に係る航空機用エネルギ回収装置の機能構成を示すブロック図である。
図4】本開示の第3実施形態に係る航空機用エネルギ回収装置の機能構成を示すブロック図である。
図5】本開示の第4実施形態に係る航空機用エネルギ回収装置の詳細構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の第1~第4実施形態について説明する。
【0017】
(第1実施形態)
最初に、本開示の第1実施形態に係る航空機用エネルギ回収装置について説明する。この航空機用エネルギ回収装置は、図1に示すように航空機A1に備えられるものである。より詳細には、航空機用エネルギ回収装置は、航空機A1の与圧・空調システム(図示略)に付帯的に設けられるものであり、回収ユニットDとして航空機A1に設けられている。
【0018】
ここで、航空機A1の機体後部には、アウトフローバルブV(Out Flow Valve)が設けられている。このアウトフローバルブVは、上記与圧・空調システムを構成すると共に、客室から排出される空気(客室排気)を機外に放出する開口部である。より詳細には、アウトフローバルブVは、開口度を調節することにより客室排気の機外への放出量を調節する流量調節弁でもある。
【0019】
上記与圧・空調システムは、機外の空気(外気)を圧力調整(与圧調整)及び温度調整して客室(キャビン)に供給すると共に、当該客室内の空気を客室排気としてアウトフローバルブVから機外に排出する。より詳細には、この与圧・空調システムは、専用の圧縮機の出力あるいはエンジン(ガスタービン)で生成される圧縮空気の一部を温度調節、圧力調整及び流量調整して客室内に供給すると共に、アウトフローバルブVの開度を調節し、バルブを通過する空気流量を制御することにより、客室内の圧力(機内圧力)を適切に調整する。
【0020】
航空機A1には、各種の電気機器(図示略)を収容する第1、第2の電気室R1、R2が設けられている。これら第1、第2の電気室R1、R2のうち、第1の電気室R1には、上記電気機器に加え、複数の冷却ユニットC1~Cnと電源バスBとが少なくとも収容されている。一方、第2の電気室R2には、回収ユニットDが少なくとも備えられている。第1の電気室R1は、例えば客室の床下に設けられており、第2の電気室R2は、アウトフローバルブVの近傍つまり客室の後方に設けられている。
【0021】
複数の冷却ユニットC1~Cnは、第1の電気室R1に収容された複数の電気機器に各々対応して設けられており、上記客室排気を取り込むことにより当該客室排気との熱交換によって電気機器を冷却する冷却システム(AACS:Autonomous Air Cooling System)を備えている。これは、冷却ユニットC1~Cnが、客室排気を取り込むことにより当該客室排気との熱交換によって電気機器を冷却することを意味する。これら冷却ユニットC1~Cnは、電気機器の冷却過程で客室排気を加熱・昇温させた加熱排気を回収ユニットDに排出する。なお、このような冷却システム(AACS)については、上述した特許文献1に詳細が記載されている。また、上記「n」は自然数を示す値である。
【0022】
上記第1の電気室R1には、各種の電気機器の1つとして、航空機A1の各電気負荷に電源を供給する電源装置(主電源装置)が備えられている。上記電源バスBは、このような主電源装置と各種の電気負荷とを電気的に接続する電源ラインであり、例えば主電源装置から出力される直流電力を直流負荷に伝送する直流電源バスである。電気負荷とは、電子部品または電子回路であり、直流負荷とは、直流電力により動作する電子部品または電子回路である。
【0023】
回収ユニットDは、第1実施形態に係る航空機用エネルギ回収装置である。この回収ユニットDは、客室排気を用いて電気機器を冷却する冷却ユニットC1~Cnと、客室排気を機外に放出するアウトフローバルブV(排気口)との間に設けられている。この回収ユニットDは、各冷却ユニットC1~Cnから供給される加熱排気から流体エネルギを直流電力(電気エネルギ)として回収する装置である。
【0024】
このような回収ユニットD(航空機用エネルギ回収装置)は、図2に示すように回収タービンd1、発電機d2及び電力変換器d3を備えている。なお、回収ユニットDは、さらに冷却ユニットC1~Cnを備えるものとしてもよい。タービンd1は、各冷却ユニットC1~Cnを挟んだ状態で客室とアウトフローバルブV(排気口)との間に設けられ、客室排気のみによって運転される回転機械である。
【0025】
すなわち、このタービンd1は、エンジン等の動力源によって回転駆動されるものではなく、専ら複数の冷却ユニットC1~Cnから排出される客室排気の合計流体のみによって回転駆動され、客室排気の合計流体の運動エネルギを回転動力に変換して回収する。複数の冷却ユニットC1~Cnから排出される客室排気の合計流体とは、複数の冷却ユニットC1~Cnから排出される客室排気を合計した流体、若しくは、客室から排出された複数の客室排気を合計した流体を意味する。具体的に、客室とタービンd1との間において、複数の第1流路と、当該複数の第1流路とタービンd1とを連結する第2流路とが設けられており、客室から排出された複数の客室排気は、複数の第1流路をそれぞれ流通し、合流(合計)し、第2流路を流通し、タービンd1に供給される。また、このタービンd1は、動力回収した後の客室排気(回収後排気)をアウトフローバルブVに出力する。
【0026】
発電機d2は、回転軸が上記タービンd1と軸結合しており、タービンd1の回転動力によって回転することによって交流電力を発生する回転電気(回転電気機械)である。より詳細には、この発電機d2は、例えば三相交流電力を出力する三相交流発電機であり、三相交流に対応したスロット数のステータと極数のロータとを備えている。この発電機d2は、タービンd1の回転動力で回転するロータと固定配置されたステータとの電磁誘導に基づいてステータ巻線に発生する三相交流電力を電力変換器d3に出力する。
【0027】
電力変換器d3は、上記発電機d2から入力される交流電力を所定電圧(直流電圧)の直流電力に変換する電力回路である。この電力変換器d3は、インバータ回路と昇降圧回路とを少なくとも備えている。上記交流電力が例えば三相交流電力の場合、インバータ回路は、三相交流電力に対応すると共に各々に2つのスイッチング素子が直列接続された3つのスイッチングレグを備えている。各スイッチングレグのスイッチング素子が適宜ON/OFFすることにより、位相が互いに120°異なる三相(U相、V相、W相)からなる三相交流電力を当該三相交流電力の振幅に応じた直流電圧の直流電力に変換する。
【0028】
また、上記昇降圧回路は、インバータ回路から入力される直流電力を所定のスイッチング素子でスイッチングすることにより、上記直流電力とは異なる直流電圧の直流電力に変換するチョッパ回路である。すなわち、この昇降圧回路は、スイッチング素子のON/OFF動作のデューティ比を調節することにより、上述した電源バスBの電圧(電源電圧)に合致した直流電圧の直流電力を生成して電源バスBに出力する。
【0029】
次に、本第1実施形態に係る航空機用エネルギ回収装置つまり回収ユニットDの時系列的な動作について詳しく説明する。
【0030】
航空機A1の飛行中において、上述した与圧・空調システムは、常時作動して客室内の圧力及び温度を最適な数値に設定する。すなわち、与圧・空調システムの作動によって、客室には空気(外気)が常時供給され、また客室からは客室排気がアウトフローバルブVから機外に常時排出される。
【0031】
また、各冷却ユニットC1~Cnは、与圧・空調システムの作動に伴って第1の電気室R1を通過する客室排気を用いることにより、第1の電気室R1に収容された各電気機器を冷却する。すなわち、客室排気は、各冷却ユニットC1~Cnの熱交換器を介して各電気機器を冷却すると共に、各電気機器の熱によって加熱・昇温し、加熱排気として回収ユニットDに供給される。換言しますと、冷却ユニットC1~Cnは、熱交換器を備え、加熱排気は、冷却ユニットの熱交換器を介して、電気機器を冷却すると共に電気機器の熱により加熱・昇温された客室排気である。このような加熱排気は、タービンd1に供給される。
【0032】
この加熱排気は、第1の電気室R1を通過することによって熱エネルギが付与され、運動エネルギをも加味した流体エネルギが上昇した客室排気である。このような加熱排気は、第2の電気室R2を通過する間に回収ユニットDのタービンd1を駆動する。すなわち、加熱排気は、タービンd1に対して作動流体として作用し、自らの流体エネルギを回転動力としてタービンd1に回収される。
【0033】
回収ユニットDでは、タービンd1が発電機d2に軸結合しているので、タービンd1の回転動力によって発電機d2が駆動され、交流電力が発生する。すなわち、回収ユニットDでは、タービンd1が加熱排気から回収した回転動力(運動エネルギ)が発電機d2によって交流電力(電気エネルギ)に変換される。そして、この交流電力は、回収ユニットDの電力変換器d3によって電源バスBの電圧(電源電圧)に合致した直流電圧の直流電力に変換されて電源バスBに供給される。
【0034】
このような第1実施形態に係る航空機用エネルギ回収装置(回収ユニットD)によれば、加熱排気の流体エネルギが最終的に電気エネルギとして回収されて各電気負荷で消費される。そのため、航空機A1で発生する余剰エネルギを有効活用することができる。
【0035】
ここで、本第1実施形態におけるタービンd1は、エンジン等の動力源が発生する動力を用いて運転されるのではなく、専ら加熱排気のみを用いて運転される。したがって、発電機d2の出力は、専ら加熱排気によって支配される。つまり、発電機d2の出力は、航空機A1に本来的に備えられる与圧・空調システムの運転状態によって支配される。したがって、本第1実施形態によれば、エンジン等の動作状態に依存することなく、航空機A1で発生する余剰エネルギを回収することが可能である。
【0036】
また、本第1実施形態によれば、タービンd1で動力回収した後の加熱排気(回収後排気)をアウトフローバルブVに供給する。そのため、回収後排気を機体の空力特性を損なうことなく機外に放出することが可能である。
【0037】
さらに、本第1実施形態によれば、第1の電気室R1とは別体として設けられた第2の電気室R2に回収ユニットDに収容する。そのため、回収ユニットDの設置自由度を向上させることが可能である。
【0038】
(第2実施形態)
次に、本開示の第2実施形態に係る航空機用エネルギ回収装置について説明する。本第2実施形態は、回収ユニットD(航空機用エネルギ回収装置)の設置場所が上述した第1実施形態とは異なる。周知のように航空機A2の機体後部(客室後方)には、図3に示すように与圧区画を形成するための圧力隔壁Kが設けられている。
【0039】
本第2実施形態に係る航空機用エネルギ回収装置(回収ユニットD)は、航空機A2の機体において、上記圧力隔壁Kの後方に備えられている。旅客機等の機体の場合、圧力隔壁Kの後方空間には、APU(Auxiliary Power Unit:補助動力装置)が設けられている。このAPUは、航空機A2の各部に圧縮空気、油圧及び電力を供給するための小型エンジンであり、上述した与圧・空調システムに圧縮空気や電力を供給するために用いられる。
【0040】
このような圧力隔壁Kの後方空間は、スペース的な自由度が比較的高いので、回収ユニットDを容易に追加設備することが可能である。また、図3では、回収ユニットDから出力される直流電力を電源バスBに供給する形態、つまり、回収ユニットDを電源バスBに連系させる形態を示している。しかしながら、必要に応じて回収ユニットDをAPU(補助動力装置)の電源バス(直流電源バス)に連携させてもよい。
【0041】
このような第2実施形態によれば、圧力隔壁Kの後方空間に航空機用エネルギ回収装置(回収ユニットD)に設ける。そのため、既存の航空機への航空機用エネルギ回収装置(回収ユニットD)の追加設備が極めて容易である。
【0042】
(第3実施形態)
次に、本開示の第3実施形態に係る航空機用エネルギ回収装置について説明する。本第3実施形態は、複数の冷却ユニットC1~Cnに対応する複数の回収ユニットD1~Dn(航空機用エネルギ回収装置)を備える点において、上述した第1、第2実施形態とは異なる。
【0043】
すなわち、複数の回収ユニットD1~Dnのうち、第1の回収ユニットD1は第1の冷却ユニットC1から供給される加熱排気からエネルギ回収を行い、第2の回収ユニットD2は第2の冷却ユニットC2から供給される加熱排気からエネルギ回収を行い、(中略)、第nの回収ユニットDnは第nの冷却ユニットCnから供給される加熱排気からエネルギ回収を行う。これら回収ユニットD1~Dnは、個々の冷却ユニットC1~Cnに付帯する形態で第1の電気室R1に収容される。
【0044】
このような第3実施形態によれば、複数の冷却ユニットC1~Cnに対応して複数の回収ユニットD1~Dnを設ける。すなわち、冷却ユニットC1~Cnと回収ユニットD1~Dnとが一対一で対応するように、冷却ユニットC1~Cnと同数の回収ユニットD1~Dnを設ける。換言すると、冷却ユニットC1~Cnと同数のタービンd1を設け、冷却ユニットC1~Cnと同数の発電機d2を設ける。そのため、第1、第2実施形態よりも設置スペースに制約が発生する可能性があるが、各冷却ユニットC1~Cnから排出される個々の加熱排気に特化した形で各回収ユニットD1~Dnを設計することが可能である。よって、個々の回収ユニットD1~Dnを小型化することができると共に、各冷却ユニットC1~Cnの性能変更に対して容易に対応することができる
【0045】
(第4実施形態)
次に、本開示の第4実施形態に係る航空機用エネルギ回収装置について説明する。本第4実施形態は、タービンd1で動力回収した後の加熱排気(回収後排気)を流量調節機能を備えない排気口に供給する点において、上述した第1~第3実施形態とは異なる。本第4実施形態における排気口は、アウトフローバルブVとは異なり、流量調節機能を備えない開口部(単純開口)である。
【0046】
すなわち、第4実施形態に係る航空機用エネルギ回収装置は、図5に示すように各冷却ユニットC1~Cnとタービンd1との間つまり当該タービンd1の上流側に流量調節弁Fを設け、当該流量調節弁Fで流量調節された加熱排気をタービンd1に供給して動力回収を行う。そして、タービンd1で動力回収した後の回収後排気を排気口に供給する。
【0047】
このような航空機用エネルギ回収装置は、アウトフローバルブVが本来的に備えている流量調節機能を流量調節弁Fで代替えすることにより、回収後排気を排気口を介して機外に放出することを可能とするものである。なお、流量調節弁Fの設置位置は、タービンd1の上流側に限定されず、タービンd1の下流側であってもよい。
【0048】
なお、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例が考えられる。
(1)上記各実施形態は複数の冷却ユニットC1~Cnの設置を前提にしているが、本開示はこれに限定されない。すなわち、本発明は、複数の冷却ユニットC1~Cnを備えない与圧・空調システムに適用可能である。
【0049】
(2)上記実施形態では、各回収ユニットD、D1~Dnに電力変換器d3を設けたが、本開示はこれに限定されない。例えば、発電機d2が発生させた交流電力を航空機A1~A3が本来的に備えている発電機の出力(交流電力)と連携させてもよい。
【0050】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本開示によれば、航空機の余剰エネルギの有効活用を実現することが可能である。
【符号の説明】
【0052】
A1~A3 航空機
B 電源バス
C1~Cn 冷却ユニット
D、D1~Dn 回収ユニット(航空機用エネルギ回収装置)
d1 タービン
d2 発電機
d3 電力変換器
R1 第1の電気室
R2 第2の電気室
V アウトフローバルブ(開口部)
図1
図2
図3
図4
図5