(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-24
(45)【発行日】2022-02-01
(54)【発明の名称】酢酸の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 51/12 20060101AFI20220125BHJP
C07C 53/08 20060101ALI20220125BHJP
B01J 31/20 20060101ALI20220125BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20220125BHJP
【FI】
C07C51/12
C07C53/08
B01J31/20 Z
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2018524476
(86)(22)【出願日】2016-11-11
(86)【国際出願番号】 US2016061555
(87)【国際公開番号】W WO2017083668
(87)【国際公開日】2017-05-18
【審査請求日】2019-09-04
(32)【優先日】2015-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512225379
【氏名又は名称】セラニーズ・インターナショナル・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100129458
【氏名又は名称】梶田 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100196597
【氏名又は名称】横田 晃一
(72)【発明者】
【氏名】シェーヴァー,ロナルド・ディー
(72)【発明者】
【氏名】リュウ,ヨウ-ファ
(72)【発明者】
【氏名】スケーツ,マーク・オー
【審査官】西澤 龍彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-182691(JP,A)
【文献】特開2012-046490(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0209786(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C07B
B01J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酢酸の製造方法であって:
メタノール、ジメチルエーテル、及び酢酸メチルからなる群から選択される少なくとも1つの構成成分を、ロジウム触媒、水、ヨウ化メチル、及びリチウム含有化合物を含む反応媒体中でカルボニル化する工程;
前記反応媒体を、液体再循環流、及び酢酸を含む蒸気生成物流に分離する工程;
第1のカラム内で前記蒸気生成物流を蒸留して、塔頂物、及び酢酸を含む粗生成物流を形成する工程;
第2のカラム内で前記粗生成物流を蒸留して、酢酸及び100wppb以下の濃度のリチウム含有化合物を含む蒸気側流、並びに100wppbより高
く10wppm以下の濃度にリチウム含有化合物が富化された塔底流を形成する工程;
前記蒸気側流を凝縮させて凝縮された側流を形成する工程;及び
前記凝縮された側流を、酸カチオン交換部位を有する金属交換されたイオン交換樹脂に供給して、精製された酢酸を製造する工程;
を含む前記方法。
【請求項2】
前記リチウム含有化合物が、ヨウ化リチウム、水酸化リチウム、酢酸リチウム、酢酸リチウム二水和物、炭酸リチウム、リチウムアルキルカーボネート、メチルリチウム、塩化リチウム、シュウ酸リチウム、又はこれらの混合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記凝縮された側流が25℃より高い温度を有する、請求項1又は2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
前記凝縮された側流が1~100wppbの濃度の前記リチウム含有化合物を含む、請求項1~
3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記凝縮された側流が99.5重量%以上の濃度の酢酸を含む、請求項1~
4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記凝縮された側流が0.2重量%以下の濃度の水を含む、請求項1~
5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記精製された酢酸が2000wppb以下の置換された金属の濃度を有し、前記置換された金属が銀及び水銀からなる群から選択される、請求項1~
6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記精製された酢酸が100wppb以下の濃度のヨウ化物を含む、請求項1~
7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記蒸気側流を前記第2のカラムの底部から5実際段以内の位置において排出する、請求項1~
8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記第1又は第2のカラムが0.01~0.7MPaの内部圧力を有する、請求項1~
9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記第1のカラム内の温度が約50~150℃である、請求項1~
10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記金属交換されたイオン交換樹脂が、10~80モル%の金属に交換された活性部位の割合を有する、請求項1~
11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記凝縮された側流が、1.5wppm以下の濃度の鉄、0.5wppm以下の濃度の塩化物、及び0.01wppm以下の濃度のギ酸を含む、請求項1~
12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記凝縮された側流を前記金属交換されたイオン交換樹脂に直接供給する、請求項1~
13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記塔底流が酢酸よりも高い沸点を有するカルボニル基含有不純物を更に含む、請求項1~
14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記酢酸よりも高い沸点を有するカルボニル基含有不純物が10重量%以上の濃度で存在する、請求項
15に記載の方法。
【請求項17】
前記塔底流が50重量%以下の濃度の酢酸を更に含む、請求項
15に記載の方法。
【請求項18】
前記塔底流が0.1重量%以下の濃度の水を更に含む、請求項
15に記載の方法。
【請求項19】
前記第2のカラム内の条件を調節して、前記蒸気側流中の、100wppb以下の前記リチウム含有化合物の濃度を維持する工程を更に含む、請求項1~18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記蒸気側流中又は前記凝縮された側流中のリチウム含有化合物の濃度を測定する工程を更に含む、請求項1~19のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本特許出願は、2015年11月13日出願の米国出願62/255,049及び2016年11月10日出願の米国出願15/348,338(これらの開示事項はその全部を参照として本明細書中に包含する)の優先権を主張する。
【0002】
[0002]本発明は、酢酸の製造方法、特に酢酸及び100wppb以下の濃度のリチウム含有化合物を含む蒸気側流を得るための改良された方法に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]現在用いられている酢酸の合成方法の中で商業的に最も有用なものの1つは、米国特許3,769,329(その全部を参照として本明細書中に包含する)において教示されている一酸化炭素によるメタノールの接触カルボニル化である。カルボニル化触媒は、液体反応媒体中に溶解しているか又は他の形態で分散しているか、或いは不活性の固体上に担持されているロジウムを、ヨウ化メチルによって例示されるハロゲン含有触媒促進剤と共に含む。ロジウムは任意の多くの形態で反応系中に導入することができる。更に、ハロゲン化物促進剤の性質は一般に重要ではないので、数多くの好適な促進剤(その殆どは有機ヨウ化物である)を用いることができる。最も通常的且つ有用には、反応は、一酸化炭素ガスを、触媒をその中に溶解させた液体反応媒体を通して連続的にバブリングすることによって行う。
【0004】
[0004]酢酸を合成するための広範囲に用いられて成功している商業的プロセスは、一酸化炭素によるメタノールの接触カルボニル化を含む。触媒は、ロジウム及び/又はイリジウム、並びにハロゲン促進剤、通常はヨウ化メチルを含む。反応は、その中に触媒を溶解させた液体反応媒体を通して一酸化炭素を連続的にバブリングすることによって行う。反応媒体は、酢酸、酢酸メチル、水、ヨウ化メチル、及び触媒を含む。メタノールをカルボニル化するための商業的プロセスとしては、米国特許3,769,329(その全部を参照として本明細書中に包含する)に記載されているものが挙げられる。他の従来のメタノールカルボニル化プロセスとしては、Jones, J.H. (2002), "The Cativa Process for the Manufacture of Acetic Acid", Platinum Metals Review, 44 (3): 94-105(その全部を参照として本明細書中に包含する)において議論されているCativa(登録商標)プロセスが挙げられる。
【0005】
[0005]ロジウム触媒の存在下でアルコールをカルボニル化してアルコールよりも1つ多い炭素原子を有するカルボン酸を製造するためのAO(登録商標)プロセスが、米国特許5,001,259;5,026,908;及び5,144,068;並びにEP-0161874(これらの全部を参照として本明細書中に包含する)において開示されている。ここで開示されているように、酢酸は、酢酸メチル(MeAc)、ハロゲン化メチル、特にヨウ化メチル(MeI)、及び触媒的に有効な濃度で存在するロジウムを含む反応媒体中においてメタノールから製造される。これらの特許においては、少なくとも限定濃度、例えば0.1重量%の水、及び特定の濃度の、ヨウ化水素として存在するヨウ化物イオン以外のヨウ化物イオンを、触媒的に有効な量のロジウムと共に反応媒体中に保持することによって、非常に低い水濃度、即ち(約14~15重量%の水を保持する従来の手順とは異なり)4重量%以下においても、触媒安定性及びカルボニル化反応器の生産性を高いレベルに維持することができることが開示されている。このヨウ化物イオンは単純な塩であり、ヨウ化リチウムが好ましい。塩は、例えば酢酸リチウム、炭酸リチウム、水酸化リチウム、又は反応媒体と適合性のアニオンの他のリチウム塩を加えることによって、in situで形成することができる。これらの特許においては、酢酸メチル及びヨウ化物塩の濃度が、特に低い反応器水濃度においてメタノールをカルボニル化して酢酸を生成させる速度に影響を与える重要なパラメーターであることが教示されている。比較的高い濃度の酢酸メチル及びヨウ化物塩を用いることによって、液体反応媒体が0.1重量%程度の低い限定濃度の水を含む場合であっても、高度の触媒安定性及び反応器生産性が達成される。更に、用いる反応媒体によって、ロジウム触媒の安定性、即ち特にプロセスの生成物回収工程中における触媒の沈殿に対する抵抗性が向上する。これらの工程においては、酢酸生成物を回収する目的の蒸留によって、触媒から一酸化炭素(これは、反応容器内で維持される雰囲気中においてロジウムに対する安定化効果を有するリガンドである)が除去される傾向がある。
【0006】
[0006]米国特許5,144,068(その全部を参照として本明細書中に包含する)においては、ロジウム(Rh)触媒を含み、水、酢酸、ヨウ化メチル、及び酢酸メチルを含む液体反応媒体中において、メタノールを一酸化炭素と反応させることによって酢酸を製造し、反応の経過中において、0.1重量%~14重量%の水を、(a)2重量%~20重量%の範囲の有効量の、反応温度において有効濃度で反応媒体中に可溶であるヨウ化物塩からなる群から選択される触媒安定剤、(b)5重量%~20重量%のヨウ化メチル、及び(c)0.5重量%~30重量%の酢酸メチルと一緒に反応媒体中に維持することによって反応中の触媒安定性を維持する方法が開示されている。好適なヨウ化物塩は、第4級ヨウ化物塩、又は周期律表の第IA族及び第IIA族の金属からなる群の元素のヨウ化物塩であってよい。
【0007】
[0007]メタノールのカルボニル化中に形成されるアセトアルデヒドのようなカルボニル不純物は、ヨウ化物触媒促進剤と反応して、多炭素アルキルヨウ化物、例えばヨウ化エチル、ヨウ化プロピル、ヨウ化ブチル、ヨウ化ペンチル、ヨウ化ヘキシルなどを形成する可能性がある。多炭素アルキルヨウ化物は、酢酸生成物中の少量のこれらの不純物であっても、酢酸から通常的に製造される生成物である酢酸ビニルの製造において用いる触媒を被毒する傾向があるので、反応生成物から除去することが望ましい。
【0008】
[0008]かかる不純物を除去するための従来の方法としては、粗酸生成物流を、酸化剤、オゾン、水、メタノール、活性炭、アミンなどで処理することが挙げられる。かかる処理は、酢酸の蒸留と組合わせることができ、或いは組合わせなくてもよい。最も通常的な精製処理は、一連の蒸留を行って最終生成物として好適な精製された酢酸を生成させることを伴う。カルボニル化合物と反応してオキシムを形成するヒドロキシルアミンのようなアミン化合物で有機流を処理し、次に蒸留してオキシム反応生成物から精製された有機生成物を分離することによって、有機流からカルボニル不純物を除去することも公知である。しかしながら、精製された酢酸の更なる処理によってプロセスのコストが増大し、処理された酢酸生成物の蒸留によって更なる不純物が形成される可能性がある。
【0009】
[0009]比較的高い純度の酢酸を得ることは可能であるが、上記に記載の低水カルボニル化プロセス及び精製処理によって形成される酢酸生成物は、小さい割合の残留不純物の存在のために過マンガン酸塩時間に関して多少不十分なままであることが多い。十分な過マンガン酸塩時間は、酸生成物が多くの用途のために好適であるために満足することが必要な可能性がある重要な商業的試験であるので、過マンガン酸塩時間を減少させる不純物の存在は好ましくない。更に、不純物の幾つかは酢酸生成物又はヨウ化メチルのようなハロゲン含有触媒促進剤のものと近接する沸点を有しているので、蒸留によって微量のこれらの不純物を酢酸から除去することは経済的又は商業的に実現可能ではなかった。而して、精製された酢酸を汚染することなく、又は不要なコストを加えることなく、カルボニル化プロセスにおける他の箇所で不純物を除去する経済的に実行可能な方法を突き止めることが重要になってきている。
【0010】
[0010]巨大網状又はマクロ多孔質の強酸カチオン交換樹脂組成物は、ヨウ化物汚染を減少させるために従来用いられている。好適な交換樹脂組成物、例えばその個々のビーズは、金属、例えば銀、水銀、又はパラジウムで官能化されている部位、及び酸形態で保持されている部位の両方を含む。金属官能基を少ししか有しないか又は全く有しない交換樹脂組成物はヨウ化物を効率的に除去せず、したがってそのためには従来は用いられていない。通常は、金属官能化交換樹脂を固定床内に与えて、粗酢酸生成物を含む流れを固定樹脂床に通す。金属官能化樹脂床内において、粗酢酸生成物中に含まれるヨウ化物汚染物質が粗酸生成物流から除去される。
【0011】
[0011]米国特許6,657,078においては、金属官能化交換樹脂を用いてヨウ化物を除去する低水プロセスが記載されている。この参照文献においてはまた、重質留分カラムの使用を回避して省エネルギーを達成している。
【0012】
[0012]交換樹脂組成物の金属官能化は、しばしば相当な処理及び費用を伴い、しばしば金属官能化していない樹脂よりも数桁多いコストがかかる。官能化に関連するプロセス工程は、しばしば、交換樹脂上に堆積される金属の実際の量に関して非常に少ししか変化しない。例えば、一定量の交換樹脂の活性部位の50%を官能化するために必要な処理は、同じ量の交換樹脂の活性部位の10%を官能化するために必要な処理と全く同様である。しかしながら、交換樹脂の全量を処理することが必要であるので、50%官能化交換樹脂及び10%官能化樹脂の両方とも、同量の非官能化樹脂よりも相当に多い処理が必要である。
【0013】
[0013]酢酸及び/又は無水酢酸からヨウ化物不純物を除去するために、他のイオン交換樹脂が用いられている。米国特許5,220,058においては、酢酸及び/又は無水酢酸からヨウ化物不純物を除去するために、金属交換されたチオール官能基を有するイオン交換樹脂を用いることが開示されている。通常は、イオン交換樹脂のチオール官能基は、銀、パラジウム、又は水銀で交換されている。
【0014】
[0014]ヨウ化物汚染物質に加えて、酢酸製造システムにおいて用いる容器の壁から金属がしばしば腐食し、粗酢酸生成物組成物中に溶解する。而して、従来の粗酸生成物流は、しばしば腐食金属汚染物質及びヨウ化物汚染物質を含む。これらの腐食金属は、カルボニル化反応を妨げるか、或いは水性ガスシフト反応のような競合反応を促進させることが知られている。通常は、これらの腐食金属は、標準的な巨大網状又はマクロ多孔質のカチオン交換樹脂を含む樹脂床に流れを通すことによってプロセス流から除去することができる。
【0015】
[0015]しかしながら、銀、水銀、又はパラジウム交換された樹脂を用いる場合においては、可溶性の腐食金属カチオンが交換樹脂の金属官能化された部位を有害に置換する可能性がある。したがって、これらの交換部位はヨウ化物汚染物質を捕捉/除去することができない。ヨウ化物除去に関する官能化樹脂の寿命は、腐食金属の存在によって短くなる。しばしば、交換樹脂組成物の部位の所定の部分を官能化して、部位の残りを酸形態で残留させる。その結果、酸部位が多くの腐食金属を捕捉し、一方で、官能化された部位の多くはヨウ化物除去のために利用可能な状態で保持される。この技術によって交換樹脂の寿命を向上させることができるが、部位の所定の部分を部分的に官能化することには相当な処理及び費用が必要である。
【0016】
[0016]更に、米国特許5,344,976に記載されているように、銀交換された強酸カチオン交換樹脂の使用に関連する問題は、銀が実際には腐食金属によって置換される可能性があることであることが見出された。この特許によれば、酸及び/又は無水物中の金属イオン汚染物質は、上流のプロセスにおける腐食又は試薬の使用に起因する可能性がある。この特許においては、流れを、交換された強酸カチオン交換樹脂と接触させてC1~C10アルキルヨウ化物化合物、ヨウ化水素、又はヨウ化物塩を除去する前に、カルボン酸流から鉄、カリウム、カルシウム、マグネシウム、及びナトリウムのような金属イオン汚染物質の少なくとも一部を除去するために、酸形態のカチオン交換体を用いることが記載されている。
【0017】
[0017]更に、他のスキームにおいては、生成物から除去することが必要な可能性がある他の汚染物質が導入される。例えば、米国公開2013/0264186、米国特許3,772,156、及び米国特許7,678,940に記載されているように、KOHのようなアルカリ成分をカルボニル化精製プロセスの乾燥カラムに加えることは、カラム内におけるHIの蓄積を抑止するのに有用であることが当該技術において長い間周知であった。
【0018】
[0018]米国公開2015/0368176においては、二次フラッシングシステム又は吸着システムから得られるカルボン酸含有流をイオン交換樹脂で処理することが開示されており、これによって、それからヨウ化物(例えばアルキルヨウ化物)のようなハロゲン化物が高い程度まで除去されている高純度のカルボン酸生成物を製造することが可能になる。
【0019】
[0019]米国特許7,678,940においては、「n+1」個の炭素原子を有するカルボン酸、ハロゲン化水素、低い沸点(bp)の成分、より高いbpの成分、及び他のものを含むカルボン酸流を第1の蒸留カラムに供給し;第1のカラム内において、より低いbpの成分の一部を含むより低いbpのフラクションと、より高いbpの成分の一部を含むより高いbpのフラクションを分離し;少なくともカルボン酸を含む側流を、サイドカットによって第1のカラムから排出し;側流を第2の蒸留カラムに供給し;第2のカラム内において、より低いbpの成分の一部を含むより低いbpのフラクションと、より高いbpの成分の一部を含むより高いbpのフラクションを分離し;そしてカルボン酸を含む側流をサイドカットによって第2のカラムから排出して精製されたカルボン酸を回収する;ことを含み;「n」個の炭素原子を有するカルボン酸に対応するアルコール、及びアルコールとカルボン酸のエステルからなる群から選択される少なくとも第1の成分(A)、及び必要な場合には水を第1のカラムに供給することを更に含む、「n+1」個の炭素原子を有する精製されたカルボン酸を製造する方法が開示されている。
【0020】
[0020]他のプロセスは、腐食金属汚染物質をプロセスの異なる段階で例えば反応物質組成物から除去する。米国特許4,894,477においては、リチウム形態の強酸性イオン交換樹脂を用いて腐食金属汚染物質を除去する方法が記載されている。米国特許5,731,252においては、触媒溶液をリチウム形態のイオン交換樹脂床と接触させることが記載されているが、一方でこれは、触媒媒体中の腐食金属塩を解離させて、イオン交換を行うことができ、腐食金属を反応器触媒溶液から取り出すことができるようにするのに十分な量の水を同時に添加することが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【文献】米国特許3,769,329
【文献】米国特許5,001,259
【文献】米国特許5,026,908
【文献】米国特許5,144,068
【文献】EP-0161874
【文献】米国特許6,657,078
【文献】米国特許5,220,058
【文献】米国特許5,344,976
【文献】米国公開2013/0264186、
【文献】米国特許3,772,156
【文献】米国特許7,678,940
【文献】米国公開2015/0368176
【文献】米国特許4,894,477
【文献】米国特許5,731,252
【非特許文献】
【0022】
【文献】Jones, J.H. (2002), "The Cativa Process for the Manufacture of Acetic Acid", Platinum Metals Review, 44 (3): 94-105
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
[0021]上記に記載のプロセスは成功しているが、酢酸を製造するための改良されたプロセスのためのプロセス、特にこれらのプロセスから汚染物質を除去するための低水・低エネルギープロセス及び方法に対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0024】
[0022]本発明は酢酸の製造方法に関する。一態様においては、本発明は、メタノール、ジメチルエーテル、及び酢酸メチルからなる群から選択される少なくとも1つの構成成分を、ロジウム触媒、水、ヨウ化メチル、及びヨウ化リチウム、水酸化リチウム、酢酸リチウム、酢酸リチウム二水和物、炭酸リチウム、リチウムアルキルカーボネート、メチルリチウム、塩化リチウム、シュウ酸リチウム、又はこれらの混合物を含むリチウム含有化合物を含む反応媒体中でカルボニル化することを含む、酢酸の製造方法に関する。一態様においては、反応媒体にはまた、酢酸メチル、及び/又はヨウ化リチウムのようなヨウ化物塩を含ませることもできる。この方法は、反応媒体を、液体再循環流、及び酢酸を含む蒸気生成物流に分離し;第1のカラム内で蒸気生成物流を蒸留して、水及びヨウ化メチルを含む塔頂物、並びに酢酸を含む粗生成物流を形成し;第2のカラム内で粗生成物流を蒸留して、酢酸、及び100wppb以下、例えば50wppb以下の濃度のリチウム含有化合物を含む蒸気側流、並びにリチウム含有化合物が富化された塔底流を形成し;そして蒸気側流を、酸カチオン交換部位を有する金属交換されたイオン交換樹脂に供給して、精製された酢酸を生成させる;ことを更に含む。蒸気側流又はその凝縮された部分は、金属交換されたイオン交換樹脂に直接供給することができる。一態様においては、塔底流は、100wppbより高く、そしてより好ましくは10wppm以下の濃度のリチウム含有化合物を含む。塔底流は、ロジウム、及び/又は酢酸よりも高い沸点を有するカルボニル基含有不純物を更に含む。塔底流は、100wppb以上の濃度のロジウムを含む可能性がある。塔底流は、10重量%以上の濃度の酢酸よりも高い沸点を有するカルボニル基含有不純物を含む可能性がある。塔底流は、90重量%以下の濃度の酢酸、及び0.1重量%以下の濃度の水を更に含む。他の不純物としては、1.5wppm以下の濃度の鉄、0.5wppm以下の濃度の塩化物、及び/又は0.01wppm以下の濃度のギ酸を挙げることができる。幾つかの態様においては、この方法はまた、塔底流から酢酸を回収することも含む。他の態様においては、蒸気側流は、1~100wppbの濃度のリチウム含有化合物、及び99.5重量%以上の濃度の酢酸を含む。蒸気側流はまた、0.2重量%以下、例えば0.15重量%以下の濃度の水も含む可能性がある。一態様においては、精製された酢酸は、2000wppb以下の置換された金属の濃度を有し、ここで置換された金属は、銀及び水銀からなる群から選択される。精製された酢酸は、100wppb以下の濃度のヨウ化物を含む可能性がある。蒸気側流は、第2のカラムの底部から5実際段以内の位置において排出することができる。第1又は第2のカラムは0.01~0.7MPaの内部圧力を有し、第1のカラム内の温度は約50~150℃である。一態様においては、金属交換されたイオン交換樹脂は、10~80モル%の金属に交換された活性部位の割合を有する。この方法には更に、蒸気側流中のリチウム含有化合物の濃度を測定することを含めることができる。
【0025】
[0023]他の態様においては、本発明は、メタノール、ジメチルエーテル、及び酢酸メチルからなる群から選択される少なくとも1つの構成成分を、ロジウム触媒、水、ヨウ化メチル、及びリチウム含有化合物を含む反応媒体中でカルボニル化し;反応媒体を、液体再循環流、及び酢酸を含む蒸気生成物流に分離し;第1のカラム内で蒸気生成物流を蒸留して、塔頂物、及び酢酸を含む粗生成物流を形成し;第2のカラム内で粗生成物流を蒸留して、酢酸及び100wppb以下の濃度のリチウム含有化合物を含む蒸気側流、並びにリチウム含有化合物が富化された塔底流を形成し;蒸気側流を凝縮させて凝縮された側流を形成し、凝縮された側流を、酸カチオン交換部位を有する金属交換されたイオン交換樹脂に供給して、精製された酢酸を生成させる;ことを含む酢酸の製造方法に関する。凝縮された側流は25℃より高い温度を有し、25~125℃の範囲内である。凝縮された側流を金属交換されたイオン交換樹脂に通す速度は、約3~40床体積/時である。蒸気側流は、第2のカラムの底部から5実際段以内の位置において排出することができる。その凝縮された部分は、金属交換されたイオン交換樹脂に直接供給することができる。一態様においては、塔底流は、100wppbより高く、そしてより好ましくは10wppm以下の濃度のリチウム含有化合物を含む。塔底流は、ロジウム、及び酢酸よりも高い沸点を有するカルボニル基含有不純物を更に含む。塔底流は、100wppb以上の濃度のロジウムを含む可能性がある。塔底流は、10重量%以上の濃度の酢酸よりも高い沸点を有するカルボニル基含有不純物を含む可能性がある。塔底流は更に、90重量%以下の濃度の酢酸、及び0.1重量%以下の濃度の水を更に含む。他の不純物としては、1.5wppm以下の濃度の鉄、0.5wppm以下の濃度の塩化物、及び/又は0.01wppm以下の濃度のギ酸を挙げることができる。幾つかの態様においては、この方法はまた、塔底流から酢酸を回収することも含む。他の態様においては、凝縮された側流は、1~100wppbの濃度のリチウム含有化合物、及び99.5重量%以上の濃度の酢酸を含む。凝縮された側流はまた、0.2重量%以下、例えば0.15重量%以下の濃度の水も含む可能性がある。一態様においては、精製された酢酸は、2000wppb以下の置換された金属の濃度を有し、ここで置換された金属は、銀及び水銀からなる群から選択される。精製された酢酸は、100wppb以下の濃度のヨウ化物を含む可能性がある。第1又は第2のカラムは0.01~0.7MPaの内部圧力を有し、第1のカラム内の温度は約50~150℃である。一態様においては、金属交換されたイオン交換樹脂は、10~80モル%の金属に交換された活性部位の割合を有する。この方法には更に、凝縮された側流中のリチウム含有化合物の濃度を測定することを含めることができる。
【0026】
[0024]本発明は、添付の非限定的な図面を考慮してより良好に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】[0025]
図1は、第2のカラムにおいて蒸気側流を有する酢酸の製造方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
[0026]始めに、任意のかかる実際の態様の開発においては、開発者の具体的な目標を達成するために、1つの実施と他の実施とで変化するシステム関係及びビジネス関係の制限との適合性のような数多くの実施に固有の決定を行わなければならないことを留意すべきである。更に、当業者に明らかなように、ここで開示する方法にはまた、挙げられているか又は具体的に言及されているもの以外の構成要素を含めることもできる。
【0029】
[0027]概説及びこの詳細な説明において、それぞれの数値は、一旦は(既に明らかにそのように修飾されていない限りにおいて)用語「約」によって修飾されているように読み、次に文脈において他に示されていない限りにおいて、そのように修飾されていないように再び読むべきである。また、概説及びこの詳細な説明において、有用、好適などとしてリスト又は記載されている濃度範囲は、端点を含むその範囲内のありとあらゆる濃度が示されているとみなすべきであると意図されることを理解すべきである。例えば、「1~10」の範囲は、約1と約10の間の連続体に沿ったありとあらゆる可能な数を示すものとして読むべきである。而して、この範囲内の具体的なデータ点が明確に特定されているか又は僅かな具体的なデータ点のみに関する場合、或いはこの範囲内のデータ点が明確に特定されていないか又は僅かな具体的なデータ点のみに関していない場合であっても、本発明者らはこの範囲内のありとあらゆるデータ点が特定されていたとみなすべきであると認識且つ理解し、且つ本発明者らはこの範囲内の全範囲及び全ての点の知識を有していたことを理解すべきである。
【0030】
[0028]特許請求の範囲を含む明細書全体にわたって、以下の用語は他に示さない限りにおいて示されている意味を有する。
[0029]明細書及び特許請求の範囲において用いる「付近」は「における」を包含する。「及び/又は」という用語は、包含的な「及び」の場合、及び排他的な「又は」の場合の両方を指し、本明細書において簡潔さのために用いられる。例えば、酢酸及び/又は酢酸メチルを含む混合物は、酢酸単独、酢酸メチル単独、又は酢酸と酢酸メチルの両方を含んでいてよい。
【0031】
[0030]全てのパーセントは、他に示していない限りにおいて、存在する特定の流れ又は組成物の全重量を基準とする重量パーセント(重量%)として表される。他に示していない限りにおいて、室温は25℃であり、大気圧は101.325kPaである。
【0032】
[0031]本発明における目的のためには、酢酸は「AcOH」と略称することがあり;アセトアルデヒドは「AcH」と略称することがあり;酢酸メチルは「MeAc」と略称することがあり;メタノールは「MeOH」と略称することがあり;ヨウ化メチルは「MeI」と略称することがあり;ヨウ化水素は「HI」と略称することがあり;一酸化炭素は「CO]と略称することがあり;及びジメチルエーテルは「DME」と略称することがある。
【0033】
[0032]HIは、分子状ヨウ化水素、或いは極性媒体、通常は少なくとも若干の水を含む媒体中で少なくとも部分的にイオン化されている場合には解離ヨウ化水素酸のいずれかを指す。他に特定されていない限りにおいて、この2つは互換的に言及される。他に特定されていない限りにおいて、HI濃度は、酸-塩基滴定によって電位差滴定終点を用いて求められる。特に、HI濃度は、標準酢酸リチウム溶液を用いて電位差滴定終点まで滴定することによって求められる。本発明における目的のためには、HIの濃度は、腐食金属又は他の非H+カチオンの測定に関係すると推定されるヨウ化物の濃度を、試料中に存在する全イオン性ヨウ化物から減じることによっては求めないことを理解すべきである。
【0034】
[0033]HI濃度はヨウ化物イオン濃度を指すものではないことを理解すべきである。HI濃度は、具体的には電位差滴定によって求められるHI濃度を指す。
[0034]この減算法は、全ての非H+カチオン(例えば、Fe、Ni、Cr、Moのカチオン)が専らヨウ化物アニオンのみと会合すると仮定していることのために、比較的低いHI濃度(即ち約5重量%未満)を求めるためには信頼性に欠ける不正確な方法である。実際には、このプロセスにおいては、金属カチオンの相当部分がアセテートアニオンと会合する可能性がある。更に、これらの金属カチオンの多くは多原子価状態を有し、これによってこれらの金属と会合する可能性があるヨウ化物アニオンの量に関する推定に更により多い非信頼性が加えられる。最終的には、この方法は、特にHI濃度を直接表す単純な滴定を行う能力を考慮すると、実際のHI濃度の信頼性に欠ける測定値を生じさせる。
【0035】
[0035]本発明における目的のためには、蒸留カラムの「塔頂物」又は「留出物」は、蒸留カラムの頂部又はその付近(例えば頂部の隣接位置)において排出される少なくとも1つのより低沸点の凝縮性フラクション、及び/又はその流れ又は組成物の凝縮形態を指す。明らかに、これも本発明における目的のためには、全てのフラクションは最終的には凝縮させることができ、凝縮性のフラクションは、当業者に容易に理解されるようにプロセス中に存在する条件下において凝縮させることができる。非凝縮性フラクションの例としては、窒素、水素などを挙げることができる。更に、塔頂流は蒸留カラムの最も上部の出口の直下において回収することができ、例えばここで最も低い沸点のフラクションは、当業者に容易に理解されるように非凝縮性の流れであるか或いは僅少な流れを表す。
【0036】
[0036]蒸留カラムの「塔底物」又は「残渣」とは、蒸留カラムの底部又はその付近において排出される(本発明においてはカラムの底部液溜まりから流出するとも言う)1以上の最も高い沸点のフラクションを指す。残渣は蒸留カラムの最も底部の出口の直上から回収することができ、例えばここでカラムによって生成される最も底部のフラクションは、当業者に容易に理解されるように、塩、使用できないタール、固体廃棄物、又は僅少な流れである。
【0037】
[0037]本発明における目的のためには、蒸留カラムは蒸留区域及び底部液溜まり区域を含む。蒸留区域は、底部液溜まり区域の上方、即ち底部液溜まり区域とカラムの頂部との間の全てを含む。本発明における目的のためには、底部液溜まり区域とは、より高沸点の成分の液体貯留槽がその中に存在し、塔底流又は残渣流がカラムから排出される際にそれから流出する蒸留カラムの下部部分(例えば蒸留カラムの底部)を指す。底部液溜まり区域には、リボイラー、制御装置などを含ませることができる。
【0038】
[0038]蒸留カラムの内部部品に関する「通路」、「流路」、「流動導管」などの用語は、それを通して配置されており、及び/又は、液体及び/又は蒸気が内部部品の一方の側から内部部品の他方の側へ移動するための流路を与える、孔、管、溝、スリット、ドレンなどを指すように互換的に用いられる。蒸留カラムの液体分配器のような構造体を通して配置される流路の例としては、構造体を通して液体を一方の側から他の側へ流動させることを可能にするドレン孔、ドレン管、ドレンスリットなどが挙げられる。
【0039】
[0039]平均滞留時間は、蒸留区域内の所定の相に関する全液体保持体積の総計を、蒸留区域を通過するその相の平均流量で割った値として定義される。所定の相に関する保持体積には、回収器、分配器などをはじめとするカラムの種々の内部部品内に含まれる液体の体積、並びにトレー上、降下管内、及び/又は規則若しくは不規則充填床セクション内に含まれる液体を含めることができる。
【0040】
蒸気側流
[0040]本発明は、酢酸の製造方法、特に酢酸、及び100wppb(10億分の1重量部)以下の濃度のリチウム含有化合物を含む蒸気側流をカルボニル化プロセスから得るための改良された方法に関する。一態様においては、蒸気側流は主精製系列の第2のカラムから得られる。主精製系列は、酢酸を得るための反応器/フラッシュ容器からの蒸気生成物流から、水、酢酸メチル、ヨウ化メチル、及びヨウ化水素のようなバルク成分を除去することを目的とする。この主精製系列は、反応器からの蒸気流の大部分を受容して、酢酸を精製された酢酸として得る。例えば、主精製系列のカラムには、軽質留分カラム(第1のカラム)及び乾燥カラム(第2のカラム)が含まれる。この主精製系列からは、アセトアルデヒド、アルカン、及びプロピオン酸のような微量成分を除去することがその主要機能であるカラムは排除される可能性がある。14重量%以下、より好ましくは4.1重量%以下の水濃度で運転され、主精製系列内において2つ以下の蒸留カラムを用いるロジウム触媒システムを包含する、メタノールのカルボニル化によって酢酸を製造するための低水・低エネルギープロセスが開発された。
【0041】
[0041]カルボニル化反応プロセスは、触媒促進剤としてリチウムカチオンのようなカチオンを用いることができ、これらのリチウム含有化合物は第2のカラム内のより低い部分に集まることが本出願の発明者らによって見出された。第2のカラムの底部から酢酸を取り出すと、排出流中にリチウム含有化合物が望ましくなく蓄積される。商業的に有用な酢酸を達成するために、排出流を金属交換された強酸イオン交換樹脂と接触させて残留ヨウ化物を除去する。金属交換された強酸イオン交換樹脂中の銀又は水銀が残留しているリチウム含有化合物によって置換されて、より低い樹脂能力及び効率、並びに酢酸が銀又は水銀で汚染される可能性がもたらされる可能性があることが見出された。一態様においては、第2のカラムから蒸気側流を排出することによって、リチウム含有化合物の濃度を減少させる。
【0042】
[0042]一態様においては、メタノール、ジメチルエーテル、及び酢酸メチルからなる群から選択される少なくとも1つの構成要素を、ロジウム触媒、水、ヨウ化メチル、及びリチウム含有化合物を含む反応媒体中でカルボニル化し;反応媒体を、液体再循環流、及び酢酸を含む蒸気生成物流に分離し;第1のカラム内で蒸気生成物流を蒸留して、水及びヨウ化メチルを含む塔頂物、並びに酢酸を含む粗生成物流を形成し;第2のカラム内で粗生成物流を蒸留して、酢酸及び100wppb以下の濃度のリチウム含有化合物を含む蒸気側流、並びにリチウム含有化合物が富化された塔底流を形成し;そして、蒸気側流、好ましくは蒸気側流の凝縮された部分を、酸カチオン交換部位を有する金属交換されたイオン交換樹脂に供給して、精製された酢酸を生成させる;ことを含む酢酸の製造方法が提供される。
【0043】
[0043]蒸気側流は、底部の5実際段以内、例えば4実際段以内、3実際段以内、2実際段以内、1実際段以内、好ましくは第2のカラムの底部の上方で排出する。実際段はカラム内のプレートに対応させることができる。このような位置において蒸気側流を排出することによって、リチウム含有化合物の濃度を、金属交換された強酸イオン交換樹脂中の金属の置換をもたらさない許容しうるレベルに維持することができる。第2のカラムのより低い部分において濃縮されたリチウム含有化合物は、蒸気側流と比べてリチウム含有化合物が富化された底部から排出される塔底流中で取り出される。
【0044】
[0044]蒸気側流中におけるリチウム含有化合物の低い濃度を維持することによって、リチウム含有化合物を別途除去することが有利に排除される。一態様においては、蒸気側流を凝縮させて酸カチオン交換部位を有する金属交換されたイオン交換樹脂に直接供給して、リチウム含有化合物を除去する別途の処理工程を行うことなく精製された酢酸を生成させることができる。
【0045】
[0045]蒸気側流は酢酸が富化されている。一態様においては、蒸気側流は、99.5重量%以上、例えば99.7重量%以上、又は99.9重量%以上の濃度の酢酸を含む。主成分の酢酸に加えて、蒸気側流は、100wppb以下、例えば90wppb以下、80wppb以下、70wppb以下、60wppb以下、50wppb以下、40wppb以下、20wppb以下、又は0wppb以下のリチウム含有化合物も含む可能性がある。幾つかの態様においては、蒸気側流はリチウム含有化合物を含まないようにすることができる。而して、範囲に関しては、蒸気側流は、0~100wppb、例えば1~100wppb、1~90wppb、1~80wppb、1~70wppb、1~60wppb、1~50wppb、1~40wppb、1~30wppb、1~20wppb、又は1~10wppbのリチウム含有化合物の濃度を有する。粗酸生成物中に存在する非常に少量、例えば10wppbのリチウムであっても、金属交換されたイオン交換樹脂を用いるヨウ化物の除去に関する問題、及び/又は金属交換されたイオン交換樹脂からの金属の置換を引き起こす可能性がある。リチウム含有化合物の濃度を減少させることによって、金属交換された樹脂の寿命を大きく延ばすことができる。
【0046】
[0046]リチウム含有化合物としては、ヨウ化リチウム、水酸化リチウム、酢酸リチウム、酢酸リチウム二水和物、炭酸リチウム、リチウムアルキルカーボネート、メチルリチウム、塩化リチウム、又はシュウ酸リチウムのような化合物を挙げることができる。他のリチウムカチオンも第2のカラムのより低い部分に存在する可能性があり、蒸気側流中に存在する可能性もある。1つの好ましい態様においては、リチウム含有化合物は酢酸リチウム及び/又は酢酸リチウム二水和物であり、蒸気側流は、100wppb以下、例えば90wppb以下、80wppb以下、70wppb以下、60wppb以下、50wppb以下、40wppb以下、20wppb以下、又は0wppb以下の濃度の酢酸リチウム及び/又は酢酸リチウム二水和物を含む。而して一態様においては、蒸気側流は、99.5重量%以上の濃度の酢酸、及び100wppb以下の濃度の酢酸リチウム及び/又は酢酸リチウム二水和物を含むようにすることができる。
【0047】
[0047]第2のカラムの底部から得られる塔底流は、蒸気側流と比べてリチウム含有化合物が富化されている。一態様においては、塔底流は、90重量%以下、例えば85重量%以下、80重量%以下、又は50重量%以下の濃度の酢酸を含む。リチウム含有化合物は塔底流中に富化され、一態様においては、塔底流は、100wppm(100万分の1重量部)以下、例えば90wppm以下、80wppm以下、70wppm以下、60wppm以下、50wppm以下、又は40wppm以下の濃度のリチウム含有化合物を含み、及び/又は塔底流は、0.5wppmより高く、例えば1wppmより高く、5wppmより高く、10wppmより高く、又は20wppbより高い濃度のリチウム含有化合物を含む。一態様においては、塔底流中のリチウム含有化合物の濃度は、側流中のリチウム含有化合物の濃度よりも高い。例えば一態様においては、蒸気側流が50wppbを含む場合には、塔底流は0.5wppmより高い濃度のリチウム含有化合物を含む可能性がある。一態様においては、メタノール、ジメチルエーテル、及び酢酸メチルからなる群から選択される少なくとも1つの構成要素を、ロジウム触媒、水、ヨウ化メチル、及びリチウム含有化合物を含む反応媒体中でカルボニル化し;反応媒体を、液体再循環流、及び酢酸を含む蒸気生成物流に分離し;第1のカラム内で蒸気生成物流を蒸留して、水及びヨウ化メチルを含む塔頂物、並びに酢酸を含む粗生成物流を形成し;第2のカラム内で粗生成物流を蒸留して、酢酸を含む蒸気側流、及び90重量%以下の濃度の酢酸を含む塔底流(ここで、塔底流中のリチウム含有化合物の濃度は蒸気側流中のリチウム含有化合物の濃度よりも高い)を形成し;蒸気側流、好ましくは蒸気側流の凝縮された部分を、酸カチオン交換部位を有する金属交換されたイオン交換樹脂に供給して、精製された酢酸を生成させる;ことを含む酢酸の製造方法が提供される。
【0048】
[0048]蒸気側流は生成物のための酢酸を含んでいるので、蒸気側流の相対流量は塔底流の相対流量よりも高いことを理解すべきである。相対流量は、カラムへの供給流と比べた流れの流量のパーセントによって求めることができる。一態様においては、蒸気側流の相対流量は、塔底流の相対流量よりも少なくとも5倍高く、例えば少なくとも7倍高く、少なくとも10倍高く、少なくとも12倍高く、少なくとも15倍高く、又は少なくとも20倍高い。1つの代表的な態様においては、カラム100への供給流の流量である蒸気側流の相対流量は90%~99%であり、一方で塔底流の相対流量は10%未満である。而して、この代表的な態様においては、蒸気側流の相対流量は塔底流よりも少なくとも9倍高い。
【0049】
[0049]ここに開示する方法によれば、水は第2のカラムにおいて除去され、而して蒸気側流及び塔底流のいずれの中の水濃度も低い。一態様においては、蒸気側流は、0.2重量%以下、例えば0.15重量%以下、0.1重量%以下、又は0.05重量%以下の濃度の水を含む。蒸気側流の位置は、蒸気側流中の水がこれらの低い濃度で維持されるように選択することができる。蒸気側流中の水の低い濃度を維持することはまた、酢酸メチル及びヨウ化メチルの濃度の減少に寄与して、商業的に有用な酢酸を得ることもできる。第2のカラム内のより高い位置において蒸気側流を排出すると増加した水濃度がもたらされる可能性があり、これは氷酢酸を製造するためには不利である。一般に、蒸気側流中の低い水濃度を維持することによって、塔底流の水濃度も低くすることができる。一態様においては、塔底流は、0.1重量%以下、例えば0.05重量%以下、0.01重量%以下、又は0.005重量%以下の濃度の水を含む。
【0050】
[0050]一態様においては、蒸気側流は、第2のカラムから取り出した後に凝縮させて、金属交換されたイオン交換樹脂に直接供給して精製された酢酸を生成させる。蒸気側流及びその凝縮された部分は、酢酸、リチウム含有化合物、及び水、並びにここに開示する他の不純物に関して同じ組成及びパーセントを有することを理解すべきである。
【0051】
リチウム源
[0051]腐食金属又は上流のプロセスからの金属の結果物であり、即ち反応器の後に加えられて生成物流中に存在する可能性がある他の金属とは異なり、リチウムカチオンは反応媒体中のリチウム化合物から誘導されるか及び/又はそれによって生成する可能性がある。従前は、リチウム含有化合物は揮発性がより低く、フラッシュ容器からの液体再循環流中に残留すると理解されていた。ここで、反応媒体中のリチウム化合物から誘導されるか及び/又はそれによって生成するリチウム含有化合物は、主精製系列内での精製の後に生成物流に同伴されるか、又はそれと共に濃縮されるのに十分に揮発性である可能性があることが見出された。リチウム含有化合物は除去するのが困難である可能性がある。ヨウ化物を除去するための金属交換保護床内において、リチウム含有化合物は保護床内の金属を不利に置き換えて、これによって、精製された酢酸において、劣ったヨウ化物除去、及び金属交換されたイオン交換樹脂からの増加した金属、例えば銀、水銀、パラジウム、及びロジウムの置換がもたらされる可能性がある。而して、精製された酢酸は、金属交換保護床を用いているにもかかわらず許容できないレベルのヨウ化物も有する可能性がある。本発明は、リチウム含有化合物を除去する方法を提供する。
【0052】
[0052]リチウム含有化合物の源は、種々の促進剤、共触媒、添加剤、in situ反応等に由来するか、又はこれによって生成する可能性がある。例えば、酢酸リチウム又は他の適合性のリチウム塩を反応混合物に加えた後にin situで形成される可能性があるヨウ化リチウムのような促進剤の使用を伴う低水・低エネルギープロセス。したがって、プロセス流は、反応媒体中のリチウム含有化合物から誘導されるか及び/又はこれによって生成する若干量のリチウムイオンを含む可能性がある。従前は、リチウムイオンは主精製系列における分離及び純度に影響を与えないと理解されていた。而して一態様においては、メタノール、ジメチルエーテル、及び酢酸メチルからなる群から選択される少なくとも1つの構成成分を、ロジウム触媒、水、ヨウ化メチル、及びリチウム含有化合物を含む反応媒体中でカルボニル化し;反応媒体を、液体再循環流、及び酢酸を含む蒸気生成物流に分離し;第1のカラム内で蒸気生成物流を蒸留して、水及びヨウ化メチルを含む塔頂物、並びに酢酸を含む粗生成物流を形成し;第2のカラム内で粗生成物流を蒸留して、酢酸、及び反応媒体中のリチウム含有化合物から誘導されるか、及び/又はこれによって生成するリチウム含有化合物を含む蒸気側流、並びにリチウム含有化合物が富化された塔底流を形成し;そして、蒸気側流、好ましくは蒸気側流の凝縮された部分を、酸カチオン交換部位を有する金属交換されたイオン交換樹脂に供給して、精製された酢酸を生成させる;ことを含む酢酸の製造方法が提供される。
【0053】
[0053]生成物流中のリチウム含有化合物は、CN-101053841及びCN-1349855(これらの全ての内容及び開示事項を参照として本明細書中に包含する)に記載されているもののような有機リチウム塩リガンドのような有機アルカリ塩リガンドを用いることに起因する可能性がある。CN-101053841においては、酢酸リチウム又はシュウ酸リチウムを含むリガンドが記載されている。CN-1349855においては、金属リチウム有機リガンドが配位しているシス-ジカルボニルロジウム構造を有する二元金属触媒が記載されている。金属リチウム有機リガンドは、リチウムピリジン-2-ホルメート、リチウムピリジン-3-ホルメート、リチウムピリジン-4-ホルメート、リチウムピリジン-3-アセテート、リチウムピリジン-4-アセテート、又はリチウムピリジン-3-プロピオネートのようなピリジン誘導体であってよい。実際に、これらのリガンドの全部のリチウム塩成分は、カルボニル化反応器内の反応温度及び圧力においてヨウ化メチルに曝露された後に、反応媒体内でヨウ化リチウムをin situで生成させると考えられる。リチウム成分の少なくとも多少の小さい割合は精製システム中に同伴される可能性がある。而して、本発明は、第2のカラムの塔底流中におけるこれらのタイプの有機リガンドの使用からin situで形成されるリチウムを除去することもできる。
【0054】
[0054]CN-1640543(その全ての内容及び開示事項を参照として本明細書中に包含する)に記載されているもののようなアミン官能基を有する二元金属Rhキレート触媒を用いることなどによる非リチウム塩の使用の結果として、他のカチオンが第2のカラム内に存在する可能性がある。CN-16040543によれば、カチオン種はN及びOドナー電子を含み、アミノ安息香酸から形成される。アミンは、反応温度及び圧力において反応媒体内でin situでヨウ化メチルによって4級化されて第4級窒素カチオンを形成する可能性がある。第4級窒素カチオンは、リチウムカチオンと同様に粗酸生成物と共に送られる可能性があり、蒸気側流中において濃度を減少させることができる。
【0055】
蒸気側流中の他の不純物
[0055]リチウム含有化合物に加えて、蒸気側流はまた、減少した濃度の種々の他の不純物も含む。これらの不純物としては、ヨウ化物、プロピオン酸のような酢酸よりも高い沸点を有するカルボニル基含有不純物、ロジウム、鉄のような腐食金属、塩化物、及びギ酸を挙げることができる。一態様においては、本プロセスは、蒸気側流を排出してこれらの不純物の低い濃度を維持する。蒸気側流中における20wppb~1.5wppmの全ヨウ化物濃度を、ここで更に記載するように金属交換イオン交換樹脂と共に用いることができる。而して一態様においては、蒸気側流は、酢酸、100wppb以下の濃度のリチウム含有化合物、及び20wppb~1.5wppmの全ヨウ化物濃度を含む可能性がある。
【0056】
[0056]本方法は主精製系列内において2つの蒸留カラムを用いることができ、好ましくは主精製は、より高級のアルキルヨウ化物化合物、例えばC10~C14アルキルヨウ化物、及び/又はプロピオン酸のような酢酸よりも高い沸点を有するカルボニル基含有不純物のような重質留分物質を除去するためのカラムを含まない。重質留分カラムを用いないので、これらの化合物は第2のカラムから除去しなければならない。好ましくは、これらの化合物は第2のカラムの底部において取り出される塔底流中に濃縮する。一態様においては、蒸気側流は、0.1重量%以下、例えば0.09重量%以下、0.07重量%以下、又は0.05重量%以下の濃度の酢酸よりも高い沸点を有するカルボニル基含有不純物を含む。而して一態様においては、蒸気側流は、酢酸、100wppb以下の濃度のリチウム含有化合物、及び0.1重量%以下の濃度の酢酸よりも高い沸点を有するカルボニル基含有不純物を含む可能性がある。
【0057】
[0057]重質留分及び他の仕上げ処理装置の不存在下においては、ヨウ化デシル及びヨウ化ドデシルが特に優勢であり、これらは生成物から除去することは困難である。蒸気側流はC10以上の脂肪族連鎖長を有する有機ヨウ化物を含む可能性があり、これは除去する必要がある。時には、存在するヨウ化物の10%より多く、例えば15%より多く、30%より多く、又は更には50%より多くが、10炭素原子以上の有機連鎖長を有する。一態様においては、蒸気側流は、1.5wppm以下、例えば1wppm以下、0.75wppm以下、又は0.5wppm以下のC10~C14アルキルヨウ化物濃度を有する。而して一態様においては、蒸気側流は、酢酸、100wppb以下の濃度のリチウム含有化合物、及び1.5wppm以下の濃度のC10~C14アルキルヨウ化物を含む可能性がある。ヨウ化物促進カルボニル化プロセスの粗酸生成物中において見られる通常のより短い連鎖長のヨウ化物不純物、例えばヨウ化メチル、HI、及びヨウ化ヘキシルに加えて、これらのより高級なアルキルヨウ化物が存在する可能性がある。
【0058】
[0058]反応媒体からのロジウムもまた、同伴又は揮発して第2のカラム中に供給される可能性がある。一態様においては、蒸気側流は、ロジウムとして100wppb以下、例えば75wppb以下、50wppb以下、25以下、20wppb以下、又は15wppb以下のロジウム濃度を有する可能性がある。而して一態様においては、蒸気側流は、酢酸、100wppb以下の濃度のリチウム含有化合物、及び100wppb以下のロジウム濃度、並びに100wppb以下のロジウム濃度を有する可能性がある。
【0059】
[0059]鉄、クロム、ニッケル、及びモリブデンのような腐食金属も、第2のカラムのより低い部分に集まる可能性がある。一態様においては、蒸気側流は、2wppm以下、例えば1.5wppm以下、1wppm以下、又は0.5wppm以下の全腐食金属濃度を有する可能性がある。幾つかのプロセスにおいては、鉄が存在する主要な腐食金属である可能性があり、蒸気側流は、1.5wppm以下、例えば1wppm以下、又は0.5wppm以下の鉄濃度を有する可能性がある。而して一態様においては、蒸気側流は、酢酸、100wppb以下の濃度のリチウム含有化合物、及び2wppm以下の全腐食金属濃度を有する可能性がある。
【0060】
[0060]幾つかの態様においては、蒸気側流は、0.5wppm以下、例えば0.4wppm以下、0.3wppm以下、又は0.2wppm以下の量の塩化物を含む可能性がある。更なる態様においては、蒸気側流は、0.01wppm以下、例えば0.009wppm以下、0.008wppm以下、0.007wppm以下、0.006wppm以下、0.005wppm以下の量のギ酸を含む可能性がある。而して一態様においては、蒸気側流は、酢酸、100wppb以下の濃度のリチウム含有化合物、0.5wppm以下の量の塩化物、及び0.01wppm以下の量のギ酸を含む可能性がある。
【0061】
[0061]蒸気側流はこれらの不純物の1以上を含む可能性があることを理解すべきである。代表的な態様においては、蒸気側流は、99.5重量%以上の濃度の酢酸、100wppb以下の濃度のリチウム含有化合物、0.2重量%以下の濃度の水、20wppb~1.5wppmの全ヨウ化物濃度、0.1重量%以下の濃度の酢酸よりも高い沸点を有するカルボニル基含有不純物、ロジウムとして100wppb以下のロジウム濃度、2wppm以下の全腐食金属(鉄)濃度、0.5wppm以下の量の塩化物、及び0.01wppm以下の量のギ酸を有する。
【0062】
塔底流中の他の不純物
[0062]蒸気側流中に存在する可能性があるこれらの不純物はまた、塔底流中に存在する可能性もある。不純物の幾つかは、蒸気側流と比べて増加したレベルで存在する可能性がある。例えば、塔底流は、50wppm以下、例えば25wppm以下、又は10wppm以下の全ヨウ化物濃度を有する可能性がある。塔底流はまた、10重量%以上、例えば15重量%以上、又は20重量%以上の酢酸よりも高い沸点を有するカルボニル基含有不純物の濃度を有する可能性がある。範囲に関しては、酢酸よりも高い沸点を有するカルボニル基含有不純物の濃度は、10~50重量%、例えば10~30重量%、10~25重量%、10~20重量%、又は10~15重量%であってよい。
【0063】
[0063]一態様においては、塔底流は、ロジウムとして100wppb以下、例えば75wppb以下、50wppb以下、25以下、20wppb以下、又は15wppb以下のロジウム濃度を有する可能性がある。塔底流は、2wppm以下、例えば1.5wppm以下、1wppm以下、又は0.5wppm以下の全腐食金属濃度を有する可能性がある。塔底流は、0.5wppm以下、例えば0.4wppm以下、0.3wppm以下、又は0.2wppm以下の量の塩化物を含む可能性がある。更なる態様においては、塔底流は、0.01wppm以下、例えば0.009wppm以下、0.008wppm以下、0.007wppm以下、0.006wppm以下、0.005wppm以下の量のギ酸を含む可能性がある。
【0064】
酢酸製造プロセス
[0064]代表的な酢酸製造プロセスを下記に記載する。明確にするために、実際の実施の全ての特徴は本明細書には記載していない。勿論、任意のかかる実際の態様の開発においては、開発者の具体的な目標を達成するために、1つの実施と他の実施とで変化するシステム関係及びビジネス関係の制限との適合性のような数多くの実施に固有の決定を行わなければならないと認識される。更に、かかる開発努力は複雑で時間がかかる可能性があるが、それでも本開示の利益を享受する当業者には日常的な業務であろうことが認められる。
【0065】
[0065]本明細書に記載する精製プロセスは、メタノール及び/又は酢酸メチル、ギ酸メチル、又はジメチルエーテル、或いはこれらの混合物を用いて、ロジウムのような第VIII族金属触媒、及びハロゲン含有触媒促進剤の存在下で酢酸を製造するカルボニル化プロセスにおいて有用である可能性がある。特に有用なプロセスは、米国特許5,001,259において例示されている酢酸へのメタノールの低水ロジウム触媒カルボニル化である。他の金属触媒、例えばイリジウムベースの触媒も意図される。
【0066】
[0066]一般に、触媒系の金属成分、例えばロジウム成分は、ロジウムと、配位化合物の少なくとも1つのリガンドを与えるハロゲン成分との配位化合物の形態で存在すると考えられる。ロジウムとハロゲンの配位に加えて、一酸化炭素がロジウムと配位するとも考えられる。触媒系のロジウム成分は、ロジウム金属、酸化物、酢酸塩、ヨウ化物、炭酸塩、水酸化物、塩化物等のようなロジウム塩、或いは反応雰囲気中でロジウムの配位化合物を形成する他の化合物の形態のロジウムを反応区域中に導入することによって与えることができる。
【0067】
[0067]金属触媒には第VIII族金属を含ませることができる。好適な第VIII族触媒としては、ロジウム及び/又はイリジウム触媒が挙げられる。ロジウム触媒を用いる場合には、ロジウム触媒は、当該技術において周知なように、ロジウムが触媒溶液中において[Rh(CO)2I2]-アニオンを含む平衡混合物として存在するような任意の好適な形態で加えることができる。場合によって本明細書に記載されるプロセスの反応混合物中に保持されるヨウ化物塩は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の可溶性塩、第4級アンモニウム、ホスホニウム塩、或いはこれらの混合物の形態であってよい。幾つかの態様においては、触媒共促進剤は、ヨウ化リチウム、酢酸リチウム、又はこれらの混合物である。塩共促進剤は、ヨウ化物塩を生成させる非ヨウ化物塩として加えることができる。ヨウ化物触媒安定剤は、反応システム中に直接導入することができる。或いは、反応システムの運転条件下においては、広範囲の非ヨウ化物塩前駆体が反応媒体中のヨウ化メチル又はヨウ化水素酸と反応して対応する共促進剤ヨウ化物塩安定剤を生成させるので、ヨウ化物塩をin-situで生成させることができる。ロジウム触媒反応及びヨウ化物塩の生成に関する更なる詳細に関しては、米国特許5,001,259;5,026,908;5,144,068;及び7,005,541(これらの全部を参照として本明細書中に包含する)を参照。イリジウム触媒を用いるメタノールのカルボニル化は周知であり、米国特許5,942,460、5,932,764、5,883,295、5,877,348、5,877,347、及び5,696,284(これらの全部を参照として本明細書中に包含する)において概説されている。
【0068】
[0068]触媒系のハロゲン含有触媒促進剤は、有機ハロゲン化物を含むハロゲン化合物から構成される。而して、アルキル、アリール、及び置換アルキル又はアリールハロゲン化物を用いることができる。好ましくは、ハロゲン含有触媒促進剤はアルキルハロゲン化物の形態で存在する。更により好ましくは、ハロゲン含有触媒促進剤は、アルキル基がカルボニル化される供給アルコールのアルキル基に対応するアルキルハロゲン化物の形態で存在する。而して、酢酸へのメタノールのカルボニル化において、ハロゲン化物促進剤としては、ハロゲン化メチル、より好ましくはヨウ化メチルを挙げることができる。
【0069】
[0069]反応媒体の成分は、酢酸の十分な生産を確保するために規定限界内に維持する。反応媒体は、所定濃度の金属触媒、例えばロジウムとして200~3000wppm、例えば500~2000wppm、又は600~1500wppmの量のロジウム触媒を含む。反応媒体中の水の濃度は、低水条件下、例えば14重量%以下、0.1重量%~14重量%、0.2重量%~10重量%、又は最も好ましくは0.25重量%~5重量%の量の水に維持する。反応媒体中のヨウ化メチルの濃度は、1~25重量%、例えば5~20重量%、4~13.9重量%になるように維持する。反応媒体中のヨウ化物塩、例えばヨウ化リチウムの濃度は、1~25重量%、例えば2~20重量%、3~20重量%になるように維持する。反応媒体中の酢酸メチルの濃度は、0.5~30重量%、例えば0.3~20重量%、0.6~4.1重量%になるように維持する。以下の量は反応媒体の全重量を基準とするものである。反応媒体中の酢酸の濃度は、一般に30重量%以上、例えば40重量%以上、50重量%以上、又は60重量%以上である。
【0070】
[0070]一態様においては、酢酸を製造する方法は、リチウム含有化合物を反応器中に導入して、反応媒体中において0.3~0.7重量%の量の酢酸リチウムの濃度を維持することを更に含み、代表的な態様においては、反応媒体中において、カルボニル化反応器内に存在する反応媒体の全重量を基準として、ロジウム触媒の濃度は反応媒体中において200~3000wppmの量に維持し、水の濃度は反応媒体中において0.1~4.1重量%の量に維持し、酢酸メチルの濃度は反応媒体中において0.6~4.1重量%に維持する。
【0071】
[0071]反応器中に導入するリチウム含有化合物は、酢酸リチウム、カルボン酸リチウム、炭酸リチウム、水酸化リチウム、他の有機リチウム塩、及びこれらの混合物からなる群から選択される。一態様においては、リチウム化合物は反応媒体中に可溶である。1つの好ましい態様においては、リチウム化合物の源物質として酢酸リチウム二水和物を用いる。蒸気側流中のリチウム含有化合物は、反応器中に導入されるものと同じリチウム化合物であってよい。
【0072】
[0072]酢酸リチウムは、次の平衡反応(I):
【0073】
【0074】
にしたがってヨウ化水素と反応して、ヨウ化リチウム及び酢酸を形成する。
[0073]酢酸リチウムは、反応媒体中に存在する酢酸メチルのような他のアセテートに対して改良されたヨウ化水素濃度の制御を与えると考えられる。理論には縛られないが、酢酸リチウムは酢酸の共役塩基であり、したがって酸-塩基反応によってヨウ化水素に対して反応性である。この特性は、酢酸メチルとヨウ化水素の対応する平衡によって生成するものを上回って反応生成物を有利に生成する反応(I)の平衡をもたらすと考えられる。この改良された平衡は、反応媒体中の4.1重量%未満の水の濃度によって推進される。更に、酢酸メチルと比べて比較的低い酢酸リチウムの揮発性によって、酢酸リチウムを、揮発損失及び蒸気粗生成物中への少量の同伴を除いて反応媒体中に保持することが可能になる。これに対して、酢酸メチルの比較的高い揮発性により、材料が精製系列中に留出して、酢酸メチルを制御するのがより困難になる。酢酸リチウムは、ヨウ化水素の安定して低い濃度において、プロセス中に保持及び制御するのが遙かにより容易である。したがって、反応媒体中のヨウ化水素濃度を制御するのに必要な酢酸メチルの量と比べて比較的少量の酢酸リチウムを用いることができる。更に、酢酸リチウムはロジウム[I]錯体へのヨウ化メチルの酸化的付加を促進するのに酢酸メチルよりも少なくとも3倍有効であることが見出された。しかしながら、反応媒体中のリチウム化合物から誘導されるか及び/又はこれによって生成するリチウムカチオンは、主精製系列における精製の後に粗酢酸生成物と共に濃縮されるのに十分に同伴されるか又は揮発性である可能性があることが見出された。
【0075】
[0074]一態様においては、反応媒体中の酢酸リチウムの濃度は、0.3重量%以上、又は0.35重量%以上、又は0.4重量%以上、又は0.45重量%以上、或いは0.5重量%以上に維持し、及び/又は反応媒体中の酢酸リチウムの濃度は、0.7重量%以下、又は0.65重量%以下、又は0.6重量%以下、或いは0.55重量%以下に維持する。
【0076】
[0075]反応媒体中の過剰の酢酸リチウムは、反応媒体中の他の化合物に悪影響を与えて生産性を減少させる可能性があることが見出された。これとは逆に、約0.3重量%より低い反応媒体中の酢酸リチウム濃度は、1.3重量%より低い反応媒体中の所望のヨウ化水素濃度を維持することができないことが見出された。
【0077】
[0076]一態様においては、リチウム化合物は反応媒体中に連続的又は断続的に導入することができる。リチウム化合物は反応器の始動中に導入することができる。一態様においては、リチウム化合物は同伴損失を補償するために断続的に導入する。
【0078】
[0077]而して一態様においては、メタノール、ジメチルエーテル、及び酢酸メチルからなる群から選択される少なくとも1つの構成成分を、ロジウム触媒、水、ヨウ化メチル、及び酢酸リチウムを含む反応媒体中でカルボニル化し、ここで反応媒体中の酢酸リチウムの濃度は0.7重量以下に維持し;反応媒体を、液体再循環流、及び酢酸を含む蒸気生成物流に分離し;第1のカラム内で蒸気生成物流を蒸留して、水及びヨウ化メチルを含む塔頂物、並びに酢酸を含む粗生成物流を形成し;第2のカラム内で粗生成物流を蒸留して、酢酸及び100wppb以下の濃度の酢酸リチウムを含む蒸気側流、並びにリチウム含有化合物が富化された塔底流を形成し;そして蒸気側流を、酸カチオン交換部位を有する金属交換されたイオン交換樹脂に供給して、精製された酢酸を生成させる;ことを含む酢酸の製造方法が提供される。
【0079】
[0078]幾つかの態様においては、反応媒体中に、所望のカルボン酸とアルコール、望ましくはカルボニル化において用いるアルコールとのエステル、並びにヨウ化水素として存在するヨウ化物イオンの他に更なるヨウ化物イオンを保持することによって、低い水濃度においても所望の反応速度が得られる。所望のエステルは酢酸メチルである。更なるヨウ化物イオンは望ましくはヨウ化物塩であり、ヨウ化リチウム(LiI)が好ましい。米国特許5,001,259に記載されているように、低い水濃度下において、酢酸メチル及びヨウ化リチウムは速度促進剤として機能することが分かっている。
【0080】
[0079]酢酸生成物へのメタノールのカルボニル化反応は、メタノール供給流を、カルボニル化生成物を形成するのに好適な温度及び圧力の条件において、ロジウム触媒、ヨウ化メチル促進剤、酢酸メチル、及び更なる可溶性ヨウ化物塩を含む酢酸溶媒反応媒体を通してバブリングさせている気体状一酸化炭素と接触させることによって行うことができる。一般に、重要なのはヨウ化物と会合するカチオンではなく、触媒系中のヨウ化物イオンの濃度であり、ヨウ化物の所定のモル濃度においては、カチオンの性質はヨウ化物濃度の効果ほどは重要ではないと認識される。塩がヨウ化物の所望のレベルを与えるのに十分に反応媒体中に可溶であるならば、任意の金属ヨウ化物塩、又は任意の有機カチオンの任意のヨウ化物塩、或いはアミン若しくはホスフィン化合物をベースとするもののような他のカチオン(場合によっては第3級又は第4級カチオン)を反応媒体中に維持することができる。ヨウ化物が金属塩である場合には、好ましくはこれは、"Handbook of Chemistry and Physics", CRC Press刊, Cleveland, Ohio, 2002-03(83版)に示されているような周期律表第IA族及び第IIA族の金属からなる群の元素のヨウ化物塩である。特に、アルカリ金属ヨウ化物が有用であり、ヨウ化リチウムが特に好適である。低水カルボニル化プロセスにおいては、ヨウ化水素として存在するヨウ化物イオンに加えて更なるヨウ化物イオンを、概して、全ヨウ化物イオン濃度が1~25重量%であり、酢酸メチルが概して0.5~30重量%の量で存在し、ヨウ化メチルが概して1~25重量%の量で存在するような量で触媒溶液中に存在させる。ロジウム触媒は、概してロジウムとして200~3000wppmの量で存在させる。
【0081】
[0080]反応媒体はまた、副生成物の形成を回避するために制御しなければならない不純物も含む可能性がある。反応媒体中の1つの不純物はヨウ化エチルである可能性があり、これは酢酸から分離するのが困難である。本出願人は、ヨウ化エチルの形成は、反応媒体中のアセトアルデヒド、酢酸エチル、酢酸メチル、及びヨウ化メチルの濃度などの数多くの変数によって影響を受ける可能性があることを更に見出した。更に、メタノール源物質中のエタノール含量、一酸化炭素源物質中の水素分圧及び水素含量は、反応媒体中のヨウ化エチル濃度、及びその結果として最終酢酸生成物中のプロピオン酸濃度に影響を与えることが見出された。
【0082】
[0081]幾つかの態様においては、酢酸生成物中のプロピオン酸濃度は、更に、酢酸生成物からプロピオン酸を除去することなく、反応媒体中のヨウ化エチル濃度を750wppm以下に維持することによって250wppmより低く維持することができる。
【0083】
[0082]幾つかの態様においては、反応媒体中のヨウ化エチル濃度と、酢酸生成物中のプロピオン酸は、3:1~1:2の重量比で存在していてよい。幾つかの態様においては、反応媒体中のアセトアルデヒド:ヨウ化エチル濃度は、2:1~20:1の重量比に維持する。
【0084】
[0083]幾つかの態様においては、反応媒体中のヨウ化エチル濃度は、水素分圧、反応媒体中の酢酸メチル濃度、ヨウ化メチル濃度、及び/又はアセトアルデヒド濃度の少なくとも1つを制御することによって維持することができる。
【0085】
[0084]幾つかの態様においては、反応媒体中のヨウ化エチルの濃度は、750wppm以下、又は例えば650wppm以下、又は550wppm以下、又は450wppm以下、或いは350wppm以下になるように維持/制御する。幾つかの態様においては、反応媒体中のヨウ化エチルの濃度は、1wppm、又は例えば5wppm、又は10wppm、又は20wppm、或いは25wppm以上で、650wppm、又は例えば550wppm、又は450wppm、或いは350wppm以下に維持/制御する。
【0086】
[0085]幾つかの態様においては、反応媒体中のヨウ化エチルと酢酸生成物中のプロピオン酸との重量比は、3:1~1:2、又は例えば5:2~1:2、又は2:1~1:2、或いは3:2~1:2の範囲であってよい。
【0087】
[0086]幾つかの態様においては、反応媒体中のアセトアルデヒドとヨウ化エチルとの重量比は、20:1~2:1、又は例えば15:1~2:1、9:1~2:1、或いは6:1~の範囲であってよい。
【0088】
[0087]カルボニル化のための通常の反応温度は、150~250℃、例えば160~240℃、170~230℃であってよく、180~225℃の温度範囲が好ましい範囲である。反応器内の一酸化炭素分圧は広範囲に変化させることができるが、通常は2~30気圧、例えば3~10気圧である。反応器内の水素分圧は、通常は0.05~2気圧、例えば1~1.9気圧である。幾つかの態様においては、本方法は、0.3~2気圧、例えば0.3~1.5気圧、又は0.4~1.5気圧の水素分圧を用いて運転することができる。副生成物の分圧及び含まれている液体の蒸気圧のために、全反応器圧力は15~40気圧の範囲である可能性がある。酢酸の生産速度は、5~50モル/L・時、例えば10~40モル/L・時、好ましくは15~35モル/L・時にすることができる。
【0089】
[0088]代表的な反応及び酢酸回収システム100を
図1に示す。示されるように、メタノール含有供給流101及び一酸化炭素含有供給流102を液相カルボニル化反応器104に送って、そこでカルボニル化反応を行って酢酸を形成する。
【0090】
[0089]カルボニル化反応器104は、好ましくは撹拌容器、或いは撹拌装置を有するか又は有しないバブルカラムタイプの容器のいずれかであり、これらの中で反応液又はスラリー内容物を好ましくは自動的に所定のレベルに維持し、通常運転中においてはこれを好ましくは実質的に一定に維持する。反応媒体中における好適な濃度を維持するために必要な場合には、カルボニル化反応器104中に、新しいメタノール、一酸化炭素、及び十分な水を連続的に導入する。
【0091】
[0090]通常のカルボニル化プロセスにおいては、一酸化炭素をカルボニル化反応器中の、望ましくは撹拌装置(内容物を撹拌するために用いることができる)の下方に連続的に導入する。気体供給流は、好ましくは、この撹拌手段によって反応液全体に十分に分散される。望ましくは気体パージ流106を反応器104から排出して、気体状副生成物の蓄積を阻止し、所定の全反応器圧力において設定一酸化炭素分圧を維持する。一態様においては、気体パージ流106は、1重量%以下、例えば0.9重量%以下、0.8重量%以下、0.7重量%以下、0.5重量%以下、0.3重量%以下の少量のヨウ化水素を含む。これらの量を超えるヨウ化水素は、スクラバーに対する負荷を増加させてヨウ化水素がパージされるのを妨げる可能性がある。反応器の温度は制御することができ、一酸化炭素供給流は、所望の全反応器圧力を維持するのに十分な速度で導入する。液体反応媒体の一部を含む流れ113が反応器104から排出される。
【0092】
[0091]酢酸製造システムは、好ましくは、酢酸を回収し、触媒溶液、ヨウ化メチル、酢酸メチル、及び他のシステム成分をプロセス内で再循環するのに用いる主精製系列108を含む。主精製系列108は、軽質留分カラム124及び乾燥カラム130、並びに関連するポンプ、塔頂受容器、凝縮器等を含む。而して、フラッシュ容器112からの流れ110のような再循環触媒溶液、並びに場合によっては流れ114、116、118、120、122、及び174のような1以上の再循環流も反応器104中に導入する。勿論、1以上の再循環流を反応器中に導入する前に混合することができる。分離システムはまた、好ましくは、カルボニル化反応器内及びシステム全体にわたる水及び酢酸の含量を制御し、PRCの除去を促進する。
【0093】
フラッシュ容器
[0092]反応媒体を、カルボニル化反応器104から、その中の一定のレベルを維持するのに十分な速度で引き抜き、流れ113によってフラッシュ容器112に供給する。フラッシュ容器112内において、反応媒体をフラッシュ分離工程で分離して、酢酸を含む蒸気生成物流122、及び触媒含有溶液を含む揮発性のより低い流れ110、例えば液体再循環流(主として、ロジウム及びヨウ化物塩を、より少量の酢酸メチル、ヨウ化メチル、及び水と共に含む酢酸)(これは、好ましくは上記で議論したように反応器に再循環する)を得る。蒸気生成物流122はまた、ヨウ化メチル、酢酸メチル、水、及び過マンガン酸塩還元性化合物(PRC)も含む。反応器から排出されてフラッシュ容器に導入される溶解ガスは、一酸化炭素の一部を含み、またメタン、水素、及び二酸化炭素のような気体副生成物も含む可能性がある。かかる溶解ガスは、塔頂流の一部としてフラッシュ容器から排出される。
【0094】
[0093]一態様においては、蒸気生成物流122は、酢酸、ヨウ化メチル、酢酸メチル、水、アセトアルデヒド、ヨウ化水素、及びリチウム含有化合物を含む。一態様においては、蒸気生成物流122は、蒸気生成物流の全重量を基準として45~75重量%の量の酢酸、20~50重量%の量のヨウ化メチル、9重量%以下の量の酢酸メチル、及び15重量%以下の量の水を含む。他の態様においては、蒸気生成物流122は、蒸気生成物流の全重量を基準として45~75重量%の量の酢酸、24乃至36重量%未満の量のヨウ化メチル、9重量%以下の量の酢酸メチル、及び15重量%以下の量の水を含む。より好ましくは、蒸気生成物流122は、55~75重量%の量の酢酸、24~35重量%の量のヨウ化メチル、0.5~8重量%の量の酢酸メチル、及び0.5~14重量%の量の水を含む。更に好ましい態様においては、蒸気生成物流112は、60~70重量%の量の酢酸、25~35重量%の量のヨウ化メチル、0.5~6.5重量%の量の酢酸メチル、及び1~8重量%の量の水を含む。蒸気生成物流中のアセトアルデヒド濃度は、蒸気生成物流の全重量を基準として0.005~1重量%、例えば0.01~0.8重量%、又は0.01~0.7重量%の量であってよい。幾つかの態様においては、アセトアルデヒドは0.01重量%以下の量で存在していてよい。蒸気生成物流122は、蒸気生成物流の全重量を基準として1重量%以下、例えば0.5重量%以下、又は0.1重量%以下の量のヨウ化水素を含む可能性がある。一態様においては、蒸気生成物流122は、蒸気生成物流の全重量を基準として0.1重量%以下、例えば0.5重量%以下、0.01以下、又は0.0001重量%以下の量のリチウム含有化合物を含む。幾つかの態様においては、蒸気生成物流122は、少量、例えば蒸気生成物流の全重量を基準として0.05重量%以下、例えば0.01重量%以下、又は0.0001重量%以下のプロピオン酸を含む。
【0095】
[0094]揮発性のより低い流れ110は、酢酸、金属触媒、腐食金属、並びに他の種々の化合物を含む。一態様においては、液体再循環流は、60~90重量%の量の酢酸;0.01~0.5重量%の量の金属触媒;10~2500wppmの合計量の腐食金属(例えば、ニッケル、鉄、及びクロム);5~20重量%の量のヨウ化リチウム;0.5~5重量%の量のヨウ化メチル;0.1~5重量%の量の酢酸メチル;0.1~8重量%の量の水;1重量%以下の量のアセトアルデヒド(例えば0.0001~1重量%のアセトアルデヒド);及び0.5重量%以下の量のヨウ化水素(例えば0.0001~0.5重量%のヨウ化水素);を含む。リチウム含有化合物の大部分は、通常はヨウ化リチウムの形態で揮発性のより低い流れ110中に排出されるが、他のリチウム含有化合物が蒸気生成物流中に繰り越される。
【0096】
酢酸の回収
[0095]酢酸の蒸留及び回収は、本発明の目的のためには特に限定されない。1つの代表的な態様においては、フラッシュ容器内で反応媒体を分離して、液体再循環流及び蒸気生成物流を形成し、第1のカラム、例えば軽質留分カラム内で蒸気生成物流を蒸留して、好ましくは第1のカラムからの側流として粗生成物流、及び低沸点の塔頂蒸気流を得て、低沸点の塔頂蒸気流を凝縮し、凝縮された流れを二相分離して重質液相及び軽質液相を形成し、場合によっては重質液相及び/又は軽質液相の一部を処理して少なくとも1種類のPRCを除去し、第2のカラム、例えば乾燥カラム内において粗生成物流を蒸留して、酢酸及び100wppb以下の濃度のリチウム含有化合物を含む蒸気側流、並びにリチウム含有化合物が富化された塔底流を形成し、蒸気側流を、酸カチオン交換部位を有する金属交換されたイオン交換樹脂に供給して精製された酢酸を生成させることを含む酢酸の製造方法が提供される。
【0097】
第1のカラム
[0096]フラッシュ容器112からの塔頂流は、蒸気生成物流122として軽質留分カラム124に送り、ここで蒸留によって、低沸点の塔頂蒸気流126、酢酸を含む粗生成物流128、及び高沸点の残渣流116を得る。
図1に示すように、粗生成物流128は、軽質留分カラム124への蒸気生成物流122の供給位置の上方で側流として取り出す。一態様においては、蒸気生成物流122は、酢酸、酢酸メチル、水、ヨウ化メチル、及びアセトアルデヒドを、ヨウ化水素、リチウム含有化合物、及びクロトンアルデヒドのような他の不純物、並びにプロピオン酸のような副生成物と共に含む可能性がある。粗生成物流128によって取り出される酢酸は、好ましくは、水から酢酸を選択的に分離するために、乾燥カラム130などにおいて更なる精製にかける。
【0098】
[0097]軽質留分カラム124はまた、好ましくは主として酢酸及び水を含む残渣又は塔底流116も形成する。一態様においては、塔底流116はリチウム含有化合物を含む。更に、軽質留分塔底流116は若干の残留触媒も含む可能性があり、軽質留分塔底流116の全部又は一部を反応器104に再循環することが有益である可能性がある。場合によっては、軽質留分塔底流116は、フラッシュ容器112からの揮発性のより低い流れ110と混合して、
図1に示すように一緒に反応器104に戻すことができる。塔底流116中の酢酸の濃度は比較的高い可能性があるが、高沸点残渣流116の質量流量は粗生成物流128と比べて非常に小さい。一態様においては、塔底流116の質量流量は、粗生成物流128の0.75%以下、例えば0.55%以下、又は0.45%以下である。
【0099】
[0098]一態様においては、低沸点の塔頂蒸気流126は、5重量%以上、例えば10重量%以上、又は25重量%以上の量の水を含む。水の量は80重量%以下であってよい。範囲に関しては、塔頂物中の水濃度は、5重量%~80重量%、例えば10重量%~70重量%、又は25重量%~60重量%であってよい。水濃度を5重量%未満に低下させることは、酢酸が反応システムへ大きく再循環されて戻されることをもたらし、これは精製システム全体にわたる大きな再循環を構成するので有利ではない。水に加えて、低沸点の塔頂蒸気流126は、酢酸メチル、ヨウ化メチル、及びカルボニル不純物も含む可能性があり、これらは好ましくは塔頂物中に濃縮して、粗生成物流128中の酢酸から除去される。これらのカルボニル不純物も、ここではPRCと呼ぶことができる。
【0100】
[0099]示されているように、低沸点の塔頂蒸気流126は、好ましくは凝縮して、塔頂デカンター134によって示される塔頂相分離ユニットに送る。条件は、望ましくは、凝縮された低沸点の塔頂蒸気流126がデカンター134内に入ったら、これを分離して軽質液相138及び重質液相118を形成することができるように維持する。相分離は、相の間に第3の相又はエマルジョンを形成することなく2つの別々の相を維持しなければならない。オフガス成分は、ライン136を通してデカンター134から排出することができる。一態様においては、塔頂デカンター134内における凝縮された低沸点の塔頂蒸気流126の平均滞留時間は、1分間以上、例えば3分間以上、5分間以上、10分間以上であり、及び/又は平均滞留時間は、60分間以下、例えば45分間以下、又は30分間以下、或いは25分間以下である。
【0101】
[0100]軽質相流138の具体的な組成は広く変化する可能性があるが、幾つかの好ましい組成を下表1に与える。
【0102】
【0103】
[0101]一態様においては、塔頂デカンター134は、低い界面レベルを維持してヨウ化メチルの過剰の保持を防ぐように配置及び構成する。重質液相118の具体的な組成は広く変化する可能性があるが、幾つかの代表的な組成を下表2に与える。
【0104】
【0105】
[0102]重質液相118の密度は、1.3~2、例えば1.5~1.8、1.5~1.75、又は1.55~1.7であってよい。米国特許6,677,480において記載されているように、重質液相118において測定される密度は、反応媒体中の酢酸メチル濃度と相関する。密度が減少するにつれて、反応媒体中の酢酸メチル濃度は増加する。本発明の一態様においては、重質液相118は反応器に再循環し、軽質液相138は同じポンプを通して再循環されるように制御する。軽質液相138の一部を再循環することが望ましい可能性があり、これによりポンプを攪乱させず、1.3以上、例えば1.4以上、1.5以上、又は1.7以上の軽質液相138及び重質液相118の混合密度を維持する。ここに記載するように、重質液相118の一部を処理してアセトアルデヒドのような不純物を除去することができる。
【0106】
[0103]
図1に示すように、軽質相は流れ138によってデカンター134から排出される。軽質相流138の第1の部分、例えばアリコート部分は、還流流140として軽質留分カラム124の頂部に再循環する。他の態様においては、重質液相118の一部も軽質留分カラム124に還流することができる(図示せず)。
【0107】
PRC除去システム
[0104]ここに記載するように、軽質留分カラム124は主精製系列の一部である。幾つかの態様においては、軽質液相及び/又は重質液相の一部を分離してアセトアルデヒド又はPRC除去システム132に送って、アセトアルデヒドを除去しながらヨウ化メチル及び酢酸メチルを回収することができる。本発明の目的のためには、アセトアルデヒド又はPRC除去システム132は主精製系列の一部ではない。
【0108】
[0105]表1及び2において示されるように、軽質液相133及び/又は重質液相118はそれぞれPRCを含み、本方法には、酢酸生成物の品質を低下させるアセトアルデヒドのようなカルボニル不純物を除去することを含めることができ、これらは、米国特許6,143,930;6,339,171;7,223,883;7,223,886;7,855,306;7,884,237;8,889,904;及び米国公開2006/0011462;(これらはその全部を参照として本明細書中に包含する)に記載されているような好適な不純物除去カラム及び吸収器内で除去することができる。アセトアルデヒドのようなカルボニル不純物は、ヨウ化物触媒促進剤と反応してアルキルヨウ化物、例えばヨウ化エチル、ヨウ化プロピル、ヨウ化ブチル、ヨウ化ペンチル、ヨウ化ヘキシル等を形成する可能性がある。また、多くの不純物はアセトアルデヒドに由来するので、液体軽質相からカルボニル不純物を除去することが望ましい。
【0109】
[0106]それぞれライン142及び143を通してアセトアルデヒド又はPRC除去システム132に供給される軽質液相138及び/又は重質液相118の部分は、軽質液相138及び/又は重質液相118のいずれかの質量流量の1%~99%、例えば1~50%、2~45%、5~40%、5~30%、又は5~20%で変化させることができる。また幾つかの態様においては、軽質液相138及び重質液相118の両方の一部をアセトアルデヒド又はPRC除去システム132に供給することができる。アセトアルデヒド又はPRC除去システム132に供給されない軽質液相138の部分は、本明細書に記載するように第1のカラムに還流するか又は反応器に再循環することができる。アセトアルデヒド又はPRC除去システム132に供給されない重質液相118の部分は、反応器に再循環することができる。重質液相118の一部を軽質留分カラムに還流することができるが、ヨウ化メチルが富化されている重質液相118を反応器に戻すことがより望ましい。
【0110】
[0107]一態様においては、軽質液相138及び/又は重質液相118の一部を蒸留カラムに供給して、その塔頂物を富化させてアセトアルデヒド及びヨウ化メチルを有するようにする。構成に応じて、2つの別々の蒸留カラムを存在させることができ、第2のカラムの塔頂物をアセトアルデヒド及びヨウ化メチルで富化させることができる。in-situで形成される可能性があるジメチルエーテルも、塔頂物中に存在する可能性がある。塔頂物は1以上の抽出段階にかけて、ヨウ化メチルが富化されたラフィネート及び抽出剤を除去することができる。ラフィネートの一部は、蒸留カラム、第1のカラム、塔頂デカンター、及び/又は反応器に戻すことができる。例えば、重質液相118をPRC除去システム132内で処理する場合には、ラフィネートの一部を蒸留カラム又は反応器のいずれかに戻すことが望ましい可能性がある。また、例えば軽質液相138をPRC除去システム132内で処理する場合には、ラフィネートの一部を、第1のカラム、塔頂デカンター、又は反応器のいずれかに戻すことが望ましい可能性がある。幾つかの態様においては、抽出剤は更に蒸留して水を除去することができ、これは1以上の抽出段階に戻す。軽質液相138よりも多くの酢酸メチル及びヨウ化メチルを含むカラム塔底物も、反応器104に再循環、及び/又は軽質留分カラム124に還流することができる。
【0111】
乾燥カラム
[0108]主精製系列に戻り、塔頂相に加えて、軽質留分カラム124は、好ましくは主として酢酸及び水を含む粗生成物流128も形成する。粗生成物流128は、軽質留分カラム124からの液体側流として排出する。効率的な生成物の分離を維持するためには、通常運転中において粗生成物流128の組成が大きく変化又は変動しないことが重要である。大きくは変化又は変動しないとは、1種類以上のC1~C14アルキルヨウ化物の濃度、及び酢酸メチルの濃度が、粗生成物流中の水濃度の±0.9%、例えば±0.7%、±0.5%、±0.4%、±0.3%、±0.2%、又は±0.1%であることを意味する。粗生成物流中の水濃度は、1~3重量%、例えば好ましくは1.1~2.5重量%であってよい。例えば、水濃度が2.5重量%である場合には、C1~C14アルキルヨウ化物の濃度は1.6~3.4重量%であり、酢酸メチルの濃度は1.6~3.4重量%である。
【0112】
[0109]場合によっては、分離を向上させるために、粗生成物流128の一部を、軽質留分カラムの、1つの随意的な態様においては粗生成物流128を軽質留分カラムから取り出した位置よりも低い位置に再循環することができる。
【0113】
[0110]粗生成物流128は酢酸に加えて水を含むので、軽質留分カラム124からの粗生成物流128は好ましくは乾燥カラム130に送って、そこで酢酸及び水を互いから分離する。示されるように、乾燥カラム130は粗生成物流128を分離して、主として水を含む塔頂流144、酢酸及び100wppb以下の濃度のリチウム含有化合物を含む蒸気側流170、及びリチウム含有化合物が富化された塔底流174を形成する。塔頂流144は、好ましくは相分離ユニット、例えばデカンター148内で冷却及び凝縮させて、軽質相150及び重質相122を形成する。示されるように、軽質相の一部は流れ152によって示されるように還流し、軽質相の残りは流れ120によって示されるように反応器104に戻す。通常は水及びヨウ化メチルを含むエマルジョンである重質相は、好ましくは、流れ122によって示されるように、場合によっては流れ120と混合した後にその全部を反応器104に戻す。
【0114】
[0111]乾燥カラム塔頂物の軽質相に関する代表的な組成を下表3に与える。
【0115】
【0116】
[0112]随意的な態様においては、議論したように、乾燥カラム130に導入する前に、KOHのような少量のアルカリ成分を側流128に加えることができる。他の態様においては、アルカリ成分は、乾燥カラム130に導入する流れ128と同じ高さレベルか、又は乾燥カラム130に導入する流れ128の高さレベルよりも高い高さにおいて乾燥カラム130に加えることもできる。かかる添加によってカラム内のHIを中和することができる。
【0117】
[0113]
図1に示すように、乾燥カラム130からの粗酸生成物は、カラム130の底部172よりも僅かに高い位置において蒸気側流170から回収することができる。一態様においては、蒸気側流170は、カラム130の底部172から5段以内、例えばカラム130の底部から4段以内、カラム130の底部から3段以内、又はカラム130の底部から2段以内において排出する。幾つかの態様においては、蒸気側流170は、カラム130の底部172から2~5段の間の位置、例えばカラム130の底部から3~5段の間の位置、又はカラム130の底部から3~4段の間の位置において排出する。蒸気側流170は、リチウムカチオンが乾燥カラム塔底流146中におけるリチウムカチオン濃度の排出と同等であるように液相で排出することができる。蒸気側流170は、蒸気側流170中のリチウム含有化合物を減少させるのに液体流よりも有利である可能性がある。蒸気側流170を用いると、酢酸よりも高い沸点を有するカルボニル基含有不純物、即ちプロピオン酸のような他の不純物を塔底流174中に有利に濃縮することができる。蒸気側流170及び塔底流174の組成は上記に与えている。塔底流174は、廃棄するか又はプロセス100からパージすることができる。他の態様においては、塔底流174は処理して酢酸を回収する。
【0118】
[0114]本発明の目的のために、蒸気側流170は、乾燥カラム内の圧力において、酢酸の沸点よりも高い温度で排出することができる。例えば、乾燥カラムを大気圧で運転する場合には、蒸気側流170は、118℃以上、例えば120℃以上、又は125℃以上の温度で排出することができる。蒸気側流170からヨウ化物を取り出すためには、蒸気側流を、酸カチオン交換部位を有する金属交換されたイオン交換樹脂184のために好適な温度に凝縮させる必要がある。一態様においては、蒸気側流170を凝縮器180に通して凝縮された側流182を生成させ、これを金属交換されたイオン交換樹脂184に供給して、精製された酢酸186を生成させる。一態様においては、凝縮された側流182は、25℃以上、例えば35℃又は50℃の温度である。範囲に関しては、凝縮された側流182は、25~120℃、例えば25~115℃、25~100℃、25~90℃、又は35~65℃の範囲内の温度であってよい。而して一態様においては、メタノール、ジメチルエーテル、及び酢酸メチルからなる群から選択される少なくとも1つの構成成分を、ロジウム触媒、水、ヨウ化メチル、及びリチウム含有化合物を含む反応媒体中でカルボニル化し;反応媒体を、液体再循環流、及び酢酸を含む蒸気生成物流に分離し;第1のカラム内で蒸気生成物流を蒸留して、水及びヨウ化メチルを含む塔頂物、並びに酢酸を含む粗生成物流を形成し;第2のカラム内で粗生成物流を蒸留して、酢酸及び100wppb以下の濃度のリチウム含有化合物を含む蒸気側流、並びにリチウム含有化合物が富化された塔底流を形成し;蒸気側流を凝縮させて、25~120℃の温度を有する凝縮された側流を形成し;そして、凝縮された側流を、酸カチオン交換部位を有する金属交換されたイオン交換樹脂に供給して、精製された酢酸を生成させる;ことを含む酢酸の製造方法が提供される。
【0119】
[0115]一態様においては、蒸気側流170をオンライン又はオフラインのいずれかで測定して、リチウム含有化合物の濃度を求めることができる。蒸気側流170はまた、凝縮させてから測定することもできる。リチウム含有化合物の濃度が100wppbを超える場合には、蒸気側流170を、再処理のために乾燥カラム130に戻すか、又は更なる処理のために規格外タンクに送ることができる。他の態様においては、測定した蒸気側流170が100wppbを超える濃度のリチウム含有化合物を含む場合には、反応条件を調節して反応器内の酢酸リチウムを減少させることができる。或いは、乾燥カラム内の条件を調節して、100wppb以下のリチウム含有化合物の濃度を維持することができる。而して一態様においては、メタノール、ジメチルエーテル、及び酢酸メチルからなる群から選択される少なくとも1つの構成成分を、ロジウム触媒、水、ヨウ化メチル、及びリチウム含有化合物を含む反応媒体中でカルボニル化し;反応媒体を、液体再循環流、及び酢酸を含む蒸気生成物流に分離し;第1のカラム内で蒸気生成物流を蒸留して、水及びヨウ化メチルを含む塔頂物、並びに酢酸を含む粗生成物流を形成し;第2のカラム内で粗生成物流を蒸留して蒸気側流を形成し;蒸気側流中のリチウム含有化合物の濃度を測定し;そして蒸気側流を、酸カチオン交換部位を有する金属交換されたイオン交換樹脂に供給して、精製された酢酸を生成させる;ことを含み、リチウム含有化合物の測定される濃度は100wppb以下である酢酸の製造方法が提供される。
【0120】
ヨウ化物除去床/イオン交換樹脂の使用
[0116]本方法によれば、ハロゲン化物(例えばヨウ化物)で汚染されており、100wppb以下のリチウム含有化合物の減少した濃度を有する蒸気側流又はその凝縮された部分を、一定範囲の運転条件下で、銀、水銀、パラジウム、及びロジウムからなる群から選択される少なくとも1種類の金属を含む酸カチオン交換部位を有する金属交換されたイオン交換樹脂と接触させることができる。好ましくは、イオン交換樹脂組成物は固定床内で与える。汚染されているカルボン酸流を精製するために固定ヨウ化物除去床を用いることは、当該技術において文書で十分に記載されている(例えば米国特許4,615,806;5,653,853;5,731,252;及び6,225,498(これらの全部を参照として本明細書中に包含する)を参照)。一般に、汚染されている液体カルボン酸流を、一連の静止固定床を通して流すことによって上述のイオン交換樹脂組成物と接触させる。ハロゲン化物汚染物質、例えばヨウ化物汚染物質は、金属交換されたイオン交換樹脂の金属と反応させて金属ヨウ化物を形成することによって除去される。一態様においては、金属交換されたイオン交換樹脂は、10~80モル%、例えば15~75モル%、15~65モル%、20~55モル%、又は20~50モル%の金属に交換された活性部位の割合を有する。幾つかの態様においては、ヨウ化物と会合することができる炭化水素基、例えばメチル基によってカルボン酸がエステル化される可能性がある。例えば、ヨウ化メチルで汚染されている酢酸の場合には、ヨウ化物除去の副生成物として酢酸メチルが生成する。このエステル化生成物の形成は、通常は処理されたカルボン酸流に対して有害な影響を与えない。
【0121】
[0117]ロジウム-ヨウ化物触媒系を用いて製造される無水酢酸において、同様のヨウ化物汚染の問題が存在する可能性がある。而して、本発明方法は、或いは粗無水酢酸生成物流の精製において用いることができる。
【0122】
[0118]本発明方法において金属イオン汚染物質を除去するために好適な酸形態のカチオン交換体には、強酸カチオン交換樹脂、例えば強酸巨大網状又はマクロ多孔質樹脂、例えばAmberlyst(登録商標)15樹脂(DOW)、Purolite C145、又はPurolite CT145を含めることができる。樹脂はまた、酸形態の強酸カチオン交換メソ多孔質樹脂であってもよい。また、キレート樹脂及びゼオライトを用いることもできる。
【0123】
[0119]ヨウ化物を除去するための銀又は水銀交換された樹脂を製造するために本発明の幾つかの態様に関連して用いる好適な安定なイオン交換樹脂は、通常は、巨大網状(マクロ多孔質)タイプの「強酸」、即ちスルホン酸カチオン交換樹脂として分類される「RSO3H」のタイプのものである。特に好適なイオン交換基材としては、昇温温度において用いるのに好適なAmberlyst(登録商標)15、Amberlyst(登録商標)35、及びAmberlyst(登録商標)36樹脂(DOW)が挙げられる。材料が対象の条件において有機媒体中で安定である、即ち化学的に分解しないか、或いは許容できない量で銀又は水銀を有機媒体中に放出しないならば、ゼオライトのような他の安定なイオン交換基材を用いることができる。ゼオライトカチオン交換基材は、例えば米国特許5,962,735(その開示事項を参照として本明細書中に包含する)において開示されている。
【0124】
[0120]約50℃より高い温度においては、銀又は水銀交換されたカチオン基材は、500wppb以下のオーダーの少量の銀又は水銀を放出する傾向がある可能性があり、而して、銀又は水銀交換された基材は、対象の条件下において化学的に安定である。より好ましくは、銀の損失は、有機媒体中に100wppb以下、更により好ましくは有機媒体中に20wppb以下である。銀の損失は始動によって僅かに高くなる可能性がある。いずれの場合においても、所望の場合には、銀又は水銀交換材料の上流の酸形態のカチオン材料の床に加えて、酸形態のカチオン材料の床を銀又は水銀交換材料の下流に配置して、放出される銀又は水銀を捕捉することができる。
【0125】
[0121]交換樹脂との接触工程中の圧力は、樹脂の物理的強度のみによって制限される。一態様においては、接触は、0.1MPa~1MPa、例えば0.1MPa~0.8MPa、又は0.1MPa~0.5MPaの範囲の圧力において行う。しかしながら、便宜上の理由で圧力及び温度の両方を、好ましくは汚染されているカルボン酸流が液体として処理されるように定めることができる。而して、例えば経済学的考察に基づいて一般に好ましい大気圧において運転する場合には、温度は、17℃(酢酸の凝固点)乃至118℃(酢酸の沸点)の範囲にすることができる。他のカルボン酸化合物を含む生成物流に関して同様の範囲を定めることは当業者の理解しうる範囲内である。接触工程の温度は、好ましくは樹脂の分解を最小にするのに十分に低く維持する。一態様においては、接触は、25℃~120℃、例えば25℃~100℃、又は50℃~100℃の範囲の温度において行う。幾つかのカチオン巨大網状樹脂は、通常は、150℃の温度において(酸触媒芳香族脱スルホン化のメカニズムによって)大きく分解し始める。5個以下の炭素原子、例えば4個以下の炭素原子、又は3個以下の炭素原子を有するカルボン酸は、これらの温度において液体状態を維持する。而して、接触中の温度は、用いる樹脂の分解温度より低く維持しなければならない。幾つかの態様においては、運転温度は、液相運転並びにリチウム及び/又はハロゲン化物除去のための所望の反応速度論と合致する樹脂の温度限界より低く維持する。
【0126】
[0122]上記で議論した有利性に加えて、より低い温度における運転によって、より高い温度における運転と比べて腐食がより少なくなる。より低い温度における運転によって、腐食金属汚染物質(これは上記で議論したように全体的な樹脂の寿命を減少させる可能性がある)の形成がより少なくなる。また、より低い運転温度によって腐食がより少なくなるので、有利なことに高価な耐腐食性金属で容器を形成する必要がなく、より低いグレードの金属、例えば標準的なステンレススチールを用いることができる。
【0127】
[0123]一態様においては、樹脂床を通る蒸気側流、例えば蒸気側流の凝縮された部分の流量は、0.1床体積/時(BV/時)~50BV/時、例えば3BV/時~40BV/時、1BV/時~20BV/時、又は6BV/時~10BV/時の範囲である。有機媒体の床体積は、樹脂床によって占められる体積に等しい媒体の体積である。1BV/時の流量は、樹脂床によって占められる体積に等しい量の有機液体が1時間の間で樹脂床を通過することを意味する。
【0128】
[0124]樹脂床処理の結果として、精製された酢酸組成物が得られる。精製された酢酸組成物は、一態様においては、100wppb以下、例えば90wppb以下、50wppb以下、25wppb以下、又は15wppb以下の量のヨウ化物を含む。一態様においては、精製された酢酸組成物は、100wppb以下、例えば50wppb以下、20wppb以下、又は10wppb以下の量のリチウムを含む。範囲に関しては、精製された酢酸組成物は、0~100wppb、例えば0~50wppb、1~50wppb、2~40wppbのヨウ化物;及び/又は0~100wppb、例えば1~50wppb、2~40wppbのリチウム;を含むようにすることができる。他の態様においては、樹脂床によって、粗酢酸生成物からヨウ化物の少なくとも25重量%、例えば少なくとも50重量%、又は少なくとも75重量%を除去する。一態様においては、樹脂床によって、粗酢酸生成物からリチウムの少なくとも25重量%、例えば少なくとも50重量%、又は少なくとも75重量%を除去する。
【0129】
[0125]本発明の幾つかの態様の1つの有利性は、反応媒体中のリチウム化合物から誘導されるか及び/又はこれによって生成する可能性があるリチウム含有化合物を除去するためにカチオン交換体又は同様の分離プロセスを用いない場合の最終生成物としての精製された酢酸中における金属交換されたイオン交換樹脂から置換された金属、例えば銀、水銀、パラジウム、及びロジウムの望ましくない蓄積が減少することである。一態様においては、精製された酢酸は、2000wppb以下、例えば1500wppb以下、1000wppb以下、500wppb以下、400wppb以下、300wppb以下、150wppb以下、100wppb以下、又は50wppb以下の量の、金属交換されたイオン交換樹脂から置換された金属、例えば銀、水銀、パラジウム、及びロジウムを含む。範囲に関しては、精製された酢酸は、0~2000wppb、例えば0.1~1500wppb、0.5~1000wppb、1~500wppb、1~400wppb、1~300wppb、1~150wppb、又は1~100wppbの量の、金属交換されたイオン交換樹脂から置換された金属、例えば銀、水銀、パラジウム、及びロジウムを含む。
【0130】
蒸留
[0126]本明細書に開示する蒸留カラムは、通常の蒸留カラム、例えば棚段塔、充填塔などであってよい。棚段塔としては、多孔板カラム、バブルキャップカラム、キッテルトレーカラム、ユニフラックストレー、又はリップルトレーカラムを挙げることができる。棚段塔に関しては、理論段数は特に限定されず、分離する成分の種類によって、80段以下、例えば2~80段、5~60段、5~50段、又はより好ましくは7~35段を含めることができる。蒸留カラムには、異なる蒸留装置の組合せを含めることができる。例えば、バブルキャップカラムと多孔板カラムの組合せ、並びに多孔板カラムと充填カラムの組合せを用いることができる。
【0131】
[0127]蒸留システムにおける蒸留温度及び圧力は、好適には、対象のカルボン酸の種類、及び蒸留カラムの種類、或いは供給流の組成にしたがってより低沸点の不純物及びより高沸点の不純物から選択される除去目標のような条件に応じて選択することができる。例えば、酢酸の精製を蒸留カラムによって行う場合には、蒸留カラムの内部圧力(通常はカラム頂部の圧力)は、ゲージ圧で0.01~1MPa、例えば0.01~0.7MPa、0.02~0.7MPa、より好ましくは0.05~0.5MPaであってよい。更に、蒸留カラムに関する蒸留温度、即ちカラム頂部の温度におけるカラムの内部温度は、カラムの内部圧力を調節することによって制御することができ、例えば20~200℃、例えば50~180℃、50~150℃、より好ましくは100~160℃であってよい。
【0132】
[0128]それぞれ蒸留システムに連絡しているカラム、バルブ、凝縮器、受容器、ポンプ、リボイラー、及び内部部品、並びに種々のラインなどの蒸留システムに関係するそれぞれの部材又はユニットの材料は、ガラス、金属、セラミック、又はこれらの組み合わせのような好適な材料で構成することができ、具体的なものに特に限定されない。本発明によれば、上記の蒸留システム及び種々のラインの材料は、鉄合金、例えばステンレススチール、ニッケル又はニッケル合金、ジルコニウム又はそのジルコニウム合金、チタン又はそのチタン合金、或いはアルミニウム合金のような遷移金属又は遷移金属ベースの合金である。好適な鉄ベースの合金としては、主成分として鉄を含むもの、例えばステンレススチール(これは、クロム、ニッケル、モリブデンなども含む)が挙げられる。好適なニッケルベースの合金としては、主成分としてニッケル、及びクロム、鉄、コバルト、モリブデン、タングステン、マンガンなどの1以上を含む合金、例えばHASTELLOY(登録商標)及びINCONEL(登録商標)が挙げられる。耐腐食性の金属は、蒸留システム及び種々のラインのための材料として特に好適である可能性がある。
【0133】
[0129]図面及び上記に示した明細書から明らかなように、種々の態様が意図される。
E1.メタノール、ジメチルエーテル、及び酢酸メチルからなる群から選択される少なくとも1つの構成成分を、ロジウム触媒、水、ヨウ化メチル、並びにヨウ化リチウム、水酸化リチウム、酢酸リチウム、酢酸リチウム二水和物、炭酸リチウム、リチウムアルキルカーボネート、メチルリチウム、塩化リチウム、シュウ酸リチウム、又はこれらの混合物を含むリチウム含有化合物を含む反応媒体中でカルボニル化し;
反応媒体を、液体再循環流、及び酢酸を含む蒸気生成物流に分離し;
第1のカラム内で蒸気生成物流を蒸留して、水及びヨウ化メチルを含む塔頂物、並びに酢酸を含む粗生成物流を形成し;
第2のカラム内で粗生成物流を蒸留して、酢酸及び100wppb以下の濃度のリチウム含有化合物を含む蒸気側流、並びにリチウム含有化合物が富化された塔底流を形成し;そして
蒸気側流の凝縮された部分を、酸カチオン交換部位を有する金属交換されたイオン交換樹脂に供給して、精製された酢酸を生成させる;
ことを含む酢酸の製造方法。
【0134】
E2.塔底流が100wppbより高い濃度のリチウム含有化合物を含む、態様E1の方法。
E3.塔底流が10wppm以下の濃度のリチウム含有化合物を含む、態様E1又はE2のいずれかの方法。
【0135】
E4.塔底流が、ロジウム、及び酢酸よりも高い沸点を有するカルボニル基含有不純物を更に含む、態様E1~E3のいずれかの方法。
E5.塔底流が100wppb以上の濃度のロジウムを含む、態様E1~E4のいずれかの方法。
【0136】
E6.塔底流が、10重量%以上の濃度の酢酸よりも高い沸点を有するカルボニル基含有不純物を含む、態様E1~E5のいずれかの方法。
E7.塔底流が、90重量%以下、例えば50重量%以下の濃度の酢酸を更に含む、態様E1~E6のいずれかの方法。
【0137】
E8.塔底流が0.1重量%以下の濃度の水を更に含む、態様E1~E7のいずれかの方法。
E9.塔底流から酢酸を回収することを更に含む、態様E1~E8のいずれかの方法。
【0138】
E10.蒸気側流及び/又は凝縮された側流が50wppb以下の濃度のリチウム含有化合物を含む、態様E1~E9のいずれかの方法。
E11.蒸気側流及び/又は凝縮された側流が1~100wppbの濃度のリチウム含有化合物を含む、態様E1~E10のいずれかの方法。
【0139】
E12.蒸気側流及び/又は凝縮された側流が99.5重量%以上の濃度の酢酸を含む、態様E1~E11のいずれかの方法。
E13.蒸気側流及び/又は凝縮された側流が0.2重量%以下の濃度の水を含む、態様E1~E12のいずれかの方法。
【0140】
E14.蒸気側流及び/又は凝縮された側流が0.15重量%以下の濃度の水を含む、態様E1~E13のいずれかの方法。
E15.精製された酢酸が2000wppb以下の置換された金属の濃度を有し、置換された金属が銀及び水銀からなる群から選択される、態様E1~E14のいずれかの方法。
【0141】
E16.精製された酢酸が100wppb以下の濃度のヨウ化物を含む、態様E1~E15のいずれかの方法。
E17.蒸気側流を第2のカラムの底部から5実際段以内の位置において排出する、態様E1~E16のいずれかの方法。
【0142】
E18.第1又は第2のカラムが0.01~0.7MPaの内部圧力を有する、態様E1~E17のいずれかの方法。
E19.第1のカラム内の温度が約50~150℃である、態様E1~E18のいずれかの方法。
【0143】
E20.金属交換されたイオン交換樹脂が、10~80モル%の金属に交換された活性部位の割合を有する、態様E1~E19のいずれかの方法。
E21.蒸気側流が1.5wppm以下の濃度の鉄を含む、態様E1~E20のいずれかの方法。
【0144】
E22.蒸気側流が0.5wppm以下の濃度の塩化物を含む、態様E1~E21のいずれかの方法。
E23.蒸気側流が0.01wppm以下の濃度のギ酸を含む、態様E1~E22のいずれかの方法。
【0145】
E24.蒸気側流中のリチウム含有化合物の濃度を測定することを更に含む、態様E1~E23のいずれかの方法。
E25.蒸気側流を金属交換されたイオン交換樹脂に直接供給する、態様E1~E24のいずれかの方法。
【0146】
E26.蒸気側流を凝縮させ、凝縮された側流を金属交換イオン交換樹脂と接触させることを更に含む、態様E1~E25の方法。
E27.凝縮された側流が25℃より高い温度を有する、態様E1~E26のいずれかの方法。
【0147】
E28.金属交換されたイオン交換樹脂を通過する凝縮された側流の速度が約3~40床体積/時である、態様E26の方法。
E29.メタノール、ジメチルエーテル、及び酢酸メチルからなる群から選択される少なくとも1つの構成成分を、ロジウム触媒、水、ヨウ化メチル、及びリチウム含有化合物を含む反応媒体中でカルボニル化し;
反応媒体を、液体再循環流、及び酢酸を含む蒸気生成物流に分離し;
第1のカラム内で蒸気生成物流を蒸留して、塔頂物、及び酢酸を含む粗生成物流を形成し;
第2のカラム内で粗生成物流を蒸留して、酢酸及び100wppb以下の濃度のリチウム含有化合物を含む蒸気側流、並びにリチウム含有化合物が富化された塔底流を形成し;
蒸気側流を凝縮させて凝縮された側流を形成し;そして
凝縮された側流を、酸カチオン交換部位を有する金属交換されたイオン交換樹脂に供給して、精製された酢酸を生成させる;
ことを含む酢酸の製造方法。
【0148】
E30.凝縮された側流が25℃より高い温度を有する、態様E29の方法。
E31.金属交換されたイオン交換樹脂を通過する凝縮された側流の速度が約3~40床体積/時である、態様E29又はE30の方法。
【0149】
E32.塔底流が100wppbより高い濃度のリチウム含有化合物を含む、態様E29~E31の方法。
E33.塔底流が10wppm以下の濃度のリチウム含有化合物を含む、態様E29~E32の方法。
【0150】
E34.塔底流が、ロジウム、及び酢酸よりも高い沸点を有するカルボニル基含有不純物を更に含む、態様E29~E33の方法。
E35.塔底流が100wppb以上の濃度のロジウムを含む、態様E29~E34の方法。
【0151】
E36.塔底流が、10重量%以上の濃度の酢酸よりも高い沸点を有するカルボニル基含有不純物を含む、態様E29~E35の方法。
E37.塔底流が50重量%以下の濃度の酢酸を更に含む、態様E29~E36の方法。
【0152】
E38.塔底流が0.1重量%以下の濃度の水を更に含む、態様E29~E37の方法。
E39.塔底流から酢酸を回収することを更に含む、態様E29~E38の方法。
【0153】
E40.凝縮された側流が50wppb以下の濃度のリチウム含有化合物を含む、態様E29~E39の方法。
E41.凝縮された側流が1~100wppbの濃度のリチウム含有化合物を含む、態様E29~E40の方法。
【0154】
E42.凝縮された側流が99.5重量%以上の濃度の酢酸を含む、態様E29~E31の方法。
E43.凝縮された側流が0.2重量%以下の濃度の水を含む、態様E29~E42の方法。
【0155】
E44.凝縮された側流が0.15重量%以下の濃度の水を含む、態様E29~E43の方法。
E45.精製された酢酸が2000wppb以下の置換された金属の濃度を有し、置換された金属が銀及び水銀からなる群から選択される、態様E29~E44の方法。
【0156】
E46.精製された酢酸が100wppb以下の濃度のヨウ化物を含む、態様E29~E45の方法。
E47.蒸気側流を第2のカラムの底部から5実際段以内の位置において排出する、態様E29~E46の方法。
【0157】
E48.第1又は第2のカラムが0.01~0.7MPaの内部圧力を有する、態様E29~E47の方法。
E49.第1のカラム内の温度が約50~150℃である、態様E29~E48の方法。
【0158】
E50.金属交換されたイオン交換樹脂が、10~80モル%の金属に交換された活性部位の割合を有する、態様E29~E49の方法。
E51.凝縮された側流が1.5wppm以下の濃度の鉄を含む、態様E29~E50の方法。
【0159】
E52.凝縮された側流が0.5wppm以下の濃度の塩化物を含む、態様E29~E51の方法。
E53.凝縮された側流が0.01wppm以下の濃度のギ酸を含む、態様E29~E52の方法。
【0160】
E54.凝縮された側流中のリチウム含有化合物の濃度を測定することを更に含む、態様E29~E53の方法。
E55.蒸気側流を金属交換されたイオン交換樹脂に直接供給する、態様E29~E54の方法。
【0161】
[0130]本発明を詳細に記載したが、発明の精神及び範囲内の修正は当業者に容易に明らかになるであろう。上記の議論、当該技術における関連する知識、並びに背景及び詳細な説明に関連して上記で議論した参照文献(これらの開示事項は全て参照として本明細書中に包含する)を考慮すると。更に、下記及び/又は添付の特許請求の範囲において示されている本発明の複数の形態並びに種々の態様及び種々の特徴の複数の部分を、完全か又は部分的に結合又は交換することができることを理解すべきである。当業者に認められるように、種々の態様の上記の記載においては他の態様を示すこれらの態様を他の態様と適当に組み合わせることができる。更に、当業者であれば、上記の記載は例示のみの目的であり、本発明を限定することは意図しないことを認識するであろう。
本発明の具体的態様は以下のとおりである。
[1]
酢酸の製造方法であって:
メタノール、ジメチルエーテル、及び酢酸メチルからなる群から選択される少なくとも1つの構成成分を、ロジウム触媒、水、ヨウ化メチル、及びリチウム含有化合物を含む反応媒体中でカルボニル化する工程;
前記反応媒体を、液体再循環流、及び酢酸を含む蒸気生成物流に分離する工程;
第1のカラム内で前記蒸気生成物流を蒸留して、塔頂物、及び酢酸を含む粗生成物流を形成する工程;
第2のカラム内で前記粗生成物流を蒸留して、酢酸及び100wppb以下の濃度のリチウム含有化合物を含む蒸気側流、並びにリチウム含有化合物が富化された塔底流を形成する工程;
前記蒸気側流を凝縮させて凝縮された側流を形成する工程;及び
前記凝縮された側流を、酸カチオン交換部位を有する金属交換されたイオン交換樹脂に供給して、精製された酢酸を製造する工程;
を含む前記方法。
[2]
前記リチウム含有化合物が、ヨウ化リチウム、水酸化リチウム、酢酸リチウム、酢酸リチウム二水和物、炭酸リチウム、リチウムアルキルカーボネート、メチルリチウム、塩化リチウム、シュウ酸リチウム、又はこれらの混合物を含む、[1]に記載の方法。
[3]
前記凝縮された側流が25℃より高い温度を有する、[1]又は[2]のいずれかに記載の方法。
[4]
前記塔底流が、100wppbより高く、そして好ましくは10wppm以下の濃度のリチウム含有化合物を含む、[1]~[3]のいずれかに記載の方法。
[5]
前記凝縮された側流が1~100wppbの濃度の前記リチウム含有化合物を含む、[1]~[4]のいずれかに記載の方法。
[6]
前記凝縮された側流が99.5重量%以上の濃度の酢酸を含む、[1]~[5]のいずれかに記載の方法。
[7]
前記凝縮された側流が0.2重量%以下の濃度の水を含む、[1]~[6]のいずれかに記載の方法。
[8]
前記精製された酢酸が2000wppb以下の置換された金属の濃度を有し、前記置換された金属が銀及び水銀からなる群から選択される、[1]~[7]のいずれかに記載の方法。
[9]
前記精製された酢酸が100wppb以下の濃度のヨウ化物を含む、[1]~[8]のいずれかに記載の方法。
[10]
前記蒸気側流を前記第2のカラムの底部から5実際段以内の位置において排出する、[1]~[9]のいずれかに記載の方法。
[11]
前記第1又は第2のカラムが0.01~0.7MPaの内部圧力を有する、[1]~[10]のいずれかに記載の方法。
[12]
前記第1のカラム内の温度が約50~150℃である、[1]~[11]のいずれかに記載の方法。
[13]
前記金属交換されたイオン交換樹脂が、10~80モル%の金属に交換された活性部位の割合を有する、[1]~[12]のいずれかに記載の方法。
[14]
前記凝縮された側流が、1.5wppm以下の濃度の鉄、0.5wppm以下の濃度の塩化物、及び0.01wppm以下の濃度のギ酸を含む、[1]~[13]のいずれかに記載の方法。
[15]
前記凝縮された側流を前記金属交換されたイオン交換樹脂に直接供給する、[1]~[14]のいずれかに記載の方法。
[16]
前記塔底流が酢酸よりも高い沸点を有するカルボニル基含有不純物を更に含む、[1]~[15]のいずれかに記載の方法。
[17]
前記酢酸よりも高い沸点を有するカルボニル基含有不純物が10重量%以上の濃度で存在する、[16]に記載の方法。
[18]
前記塔底流が50重量%以下の濃度の酢酸を更に含む、[16]に記載の方法。
[19]
前記塔底流が0.1重量%以下の濃度の水を更に含む、[16]に記載の方法。