(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-24
(45)【発行日】2022-02-01
(54)【発明の名称】光モジュール
(51)【国際特許分類】
H01S 5/022 20210101AFI20220125BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20220125BHJP
【FI】
H01S5/022
H05K1/02 J
(21)【出願番号】P 2016225073
(22)【出願日】2016-11-18
【審査請求日】2019-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000154325
【氏名又は名称】住友電工デバイス・イノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】河西 慎太
【審査官】大和田 有軌
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-204398(JP,A)
【文献】特開2008-263122(JP,A)
【文献】特開2007-281012(JP,A)
【文献】特開2004-088020(JP,A)
【文献】実開昭59-003567(JP,U)
【文献】実開昭61-129374(JP,U)
【文献】特開2009-302438(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0099123(US,A1)
【文献】特開2016-018862(JP,A)
【文献】特開2013-197274(JP,A)
【文献】特開2009-252918(JP,A)
【文献】特開2009-177030(JP,A)
【文献】特開2009-105157(JP,A)
【文献】特開2007-123428(JP,A)
【文献】特開2007-067380(JP,A)
【文献】特開2007-043496(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0207437(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102436042(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0185882(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00 - 5/50
H01L 31/00 - 31/20
H05K 1/00 - 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同軸型のハウジング、及び前記ハウジングの側面から光軸に沿った方向に延び出す複数のリードピンを有する光サブアセンブリと、
前記光サブアセンブリと電気信号の送受信を行う回路を主面上に搭載し、前記主面が前記光軸に平行に配置された回路基板と、
裏面に接地パターン、表面に信号配線をそれぞれ備え、前記裏面で前記光サブアセンブリ
の前記側面と前記回路基板
の前記主面を接続し、前記光サブアセンブリの前記ハウジングの前記側面の端部において屈曲するフレキシブルプリント基板(FPC)を備え、
前記FPCは、前記裏面の
前記屈曲する部分に前記接地パターンが設けられない抜きパターンを有し、前記表面の前記屈曲する部分と前記接地パターンに電気的に接続される前記
複数のリードピンのうち、前記抜きパターンに最も近い第1のリードピンとの間に、前記
第1のリードピンと電気的に接続される金属パターンを有する、
光モジュール。
【請求項2】
前記FPCは、前記表面の前記金属パターンと前記裏面の接地パターンを接続する複数の貫通孔を有する、
請求項1に記載の光モジュール。
【請求項3】
前記貫通孔には金属が充填されている、
請求項2に記載の光モジュール。
【請求項4】
前記FPCは、前記裏面の前記抜きパターンに空孔を有する、
請求項1~3のいずれか一項に記載の光モジュール。
【請求項5】
前記金属パターンは、前記屈曲する部分よりも前記光サブアセンブリ側に設けられる、
請求項1~4のいずれか一項に記載の光モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、フレキシブルプリント基板、及びこれを備えた電気機器が記載されている。このフレキシブルプリント基板は、4本の信号線及びグランド線が配置される表層と、一対のベタグランド面が配置される裏面を有する。2つのベタグランド面の間には、ベタグランド面が存在しない抜きパターンを有する。
【0003】
特許文献2には、フレキシブル配線体が記載されている。このフレキシブル配線体は、ラインパターンを有するラインパターン面と、ラインパターン面の反対側の面であって一対のシールドパターンを有するシールドパターン面を有する。シールドパターン面の一対のシールドパターンの間には、横方向に延びる折り曲げ線を有する。
【0004】
特許文献3には、フレキシブルプリント基板である信号線路が記載されている。信号線路は、外部端子、ビアホール、信号線部及びコネクタ部を含む。信号線部は、信号線及びグランド導体を有する。グランド導体は、回路基板の幅方向に延びる複数のビアホール導体を含んでおり、2つの隣り合うビアホール導体の間には開口が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-88020号公報
【文献】特開2007-281145号公報
【文献】特開2012-134551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、信号の送受信を行う同軸型の光送信器は、フレキシブルプリント基板(FPC)の折り曲げ時の断線を予防するために、光送信器のステムとFPCの間に補強板を有する。この補強板はステムに被さる形で光送信器に取り付けられる。また、FPC上の信号線のインピーダンスは、レーザーダイオード(LD)を直接変調する光送信器では20Ω~30Ωに設計している。LDの入力のインピーダンスが小さく、このインピーダンスに合致させるためである。
【0007】
近年、光通信システムでは伝送される情報量が増大するにつれ、光モジュールに要求される伝送量も増加の一途をたどっている。そこで、25Gbps以上の信号の送受信を行う光送信器が前述の補強板を有する場合、補強板を有するが故にインピーダンスが設計値から乱れて波形特性に影響が及ぶ懸念が高まる。一方、補強板を有しない場合には、FPCを曲げたときに、ステムから延びるリードピンの付け根部分に高い応力がかかり、この箇所でリードピンが断線する可能性がある。従って、補強板を外しつつ、且つ曲げたときにリードピンに高い応力がかからないことが求められる。
【0008】
本発明は、補強板を外すと共に、リードピンに高い応力がかかることを回避することができる光モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一形態に係る光モジュールは、同軸型のハウジング、及びハウジングから光軸に沿った方向に延び出す複数のリードピンを有する光サブアセンブリと、光サブアセンブリと電気信号の送受信を行う回路を主面上に搭載し、主面が光軸に平行に配置された回路基板と、光サブアセンブリと回路基板を接続し、裏面に接地パターン、表面に信号配線をそれぞれ備え、光サブアセンブリの端部において屈曲するフレキシブルプリント基板(FPC)を備え、FPCは、裏面の屈曲する部分に接地パターンが設けられない抜きパターンを有し、表面の屈曲する部分の隣接箇所に接地パターンを有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、補強板を外すと共に、リードピンに高い応力がかかることを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施形態に係る光モジュールを示す断面図である。
【
図2】
図2は、
図1の光モジュールの光サブアセンブリ、リードピン及びFPCを示す斜視図である。
【
図5】
図5(a)及び
図5(b)は、実施例のFPCと比較例のFPCの受信波形をシミュレーションした結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しながら、本発明に係る光モジュールの実施形態について詳細に説明する。図面の説明において、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0013】
図1は、実施形態に係る光モジュール1を示す断面図である。
図2は、光モジュール1の光サブアセンブリ3、フレキシブルプリント基板(Flexible Printed Circuit;FPC)10及びリードピン5を示す斜視図である。光モジュール1は、例えば、SFP28 MSA(Small Form-factor Pluggable 28 Multi-Source Agreement)に準拠しており、25Gbpsの光通信を実現する。
図1に示すように、光モジュール1は、ハウジング2と、光サブアセンブリ3と、FPC10と、回路基板4を備える。
【0014】
ハウジング2は、光サブアセンブリ3、FPC10及び回路基板4を収容する。FPC10は、光サブアセンブリ3の端部において屈曲し、光サブアセンブリ3と回路基板4を電気的に接続する。回路基板4は主面4aを有し、主面4a上には電気信号の送受信を行う回路を搭載する。回路基板4は、主面4aを光軸に平行として配置される。
【0015】
光サブアセンブリ3は、同軸型のTOSAである。光サブアセンブリ3は、回路基板4からFPC10を介して電気信号を受信し、受信した電気信号を光信号に変換して光モジュール1の外部へ送信する。光サブアセンブリ3は、半導体レーザと、半導体レーザを収容する同軸型のハウジング3aを有する。ハウジング3aは金属製のステム3bを有する。ハウジング3aは、ステム3bから延び出す複数のリードピン5を有する。リードピン5は光軸に沿った方向に延び出している。
【0016】
図3は、FPC10の表面10Aを示す図である。
図4は、FPC10の裏面10Bを示す図である。FPC10は、表面10Aが内側、裏面10Bが外側を向くようにU字状に折り曲げられた状態でステム3b及び回路基板4のそれぞれに接続する。FPC10は、一方向に延びる平板状を成しており、一端10a側が回路基板4に固定され、他端10b側がステム3bに固定される。
【0017】
FPC10の表面10Aには、その長手方向の一端10aに位置する複数の端子11a~11gと、端子11b,11d,11eのそれぞれに接続された信号配線12a及び電気配線12b,12cを有する。信号配線12aには25Gbpsといった高周波の信号を伝送し、電気配線12b,12cにはバイアス用のDC信号を伝送する。信号配線12aでは、インピーダンスのマッチングが行われる。このインピーダンスのマッチングに伴って、信号配線12aは、電気配線12b,12cと比較して細くなっている。
【0018】
FPC10の表面10Aには、その長手方向の他端10b側に、複数の接続孔14と接地パターン15を有し、複数の接続孔14のそれぞれにはリードピン5が接続する。FPC10の裏面10Bには、端子11a~11gと、端子11a,11c,11f,11gのそれぞれに接続された接地パターン17を有する。端子11a~11gのそれぞれは回路基板4上の端子に半田接合する。
【0019】
FPC10は、表面10Aの接地パターン15と端子11a~11gの間に、幅方向に窪む一対の凹部18を有する。また、FPC10は、裏面10Bの一対の凹部18を結ぶ仮想線P上に、接地パターン17が設けられない抜きパターン19を有する。一対の凹部18を結ぶ仮想線Pと抜きパターン19を含む箇所は、FPC10の他の箇所よりも折り曲げやすい部分、すなわち屈曲する部分Aに相当する。抜きパターン19は、FPC10の幅方向に延びる長円状を呈する。抜きパターン19は、FPC10を表裏に貫通する空孔19aを有する。空孔19aは、FPC10の幅方向に一対に設けられる。この空孔19aにより、屈曲する部分Aを一層曲げやすくすることができる。
【0020】
表面10Aの接地パターン15は、屈曲する部分Aの隣接箇所、具体的には、部分Aよりも光サブアセンブリ3側(リードピン5側)に設けられる。接地パターン15を部分Aよりも光サブアセンブリ3側に設けることにより、FPC10の曲げ箇所が部分Aからオフセットしたとしても、リードピン5側にオフセットされないようにすることができる。すなわち、FPC10の曲げ箇所は部分Aから端子11a~11g側にオフセットされやすくなる。また、接地パターン15は、裏面10Bの接地パターン17との間に複数の貫通孔15aを有する。貫通孔15aは、表面10Aの接地パターン15と裏面10Bの接地パターン17を接続する孔であり、各貫通孔15aには金属が充填されている。
【0021】
ところで、従来、光モジュールでは、FPCの折り曲げ時にリードピンの付け根の部分に力がかかりすぎないようにするため、光サブアセンブリのステムに補強板を被せることがあった。しかしながら、ステムに補強板を被せると、信号線のインピーダンスが設計値から乱れ、波形特性に悪影響を与える懸念がある。また、単に補強板を被せない構成とした場合には、FPCの折り曲げ時に応力がリードピンの付け根部分に集中するので、当該部分で断線が生じうる。
【0022】
そこで、本実施形態では、上記の補強板を使用せずに、FPC10の裏面10Bの一部に接地パターン17が無い抜きパターン19を設け、更に表面10Aの屈曲する部分Aの隣接箇所に接地パターン15を設けている。このように、屈曲する部分Aを設けて部分Aの隣接箇所に接地パターン15を設けることにより、FPC10の折り曲げ時に部分Aを積極的に曲げやすくすることができる。よって、リードピン5の付け根部分に集中する応力を緩和することができ、断線を抑制することができる。また、前述した補強板を不要とすることができるので、信号線のインピーダンスの乱れを抑えることができる。
【0023】
図5(a)及び
図5(b)は、補強板を被せたステムを有する光モジュールの受信波形と、補強板を有しない本実施形態の光モジュール1の受信波形を比較した結果を示す。
図5(a)に示すように、従来の光モジュールでは、Hレベル及びLレベルの安定性が低く、立上り及び立下りのジッタが顕著であった。これに対し、光モジュール1では、
図5(b)に示すように、補強板を有しないことによりジッタ及びノイズが少なくなっており、受信波形を安定させることができていることが分かる。
【0024】
以上、本発明に係る光モジュールの実施形態について説明したが、本発明は前述した各実施形態に限定されない。すなわち、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において種々の変形及び変更が可能であることは、当業者によって容易に認識される。
【符号の説明】
【0025】
1…光モジュール、2…ハウジング、3…光サブアセンブリ、3a…ハウジング、3b…ステム、4…回路基板、5…リードピン、10…FPC、10A…表面、10B…裏面、10a…一端、10b…他端、11a~11g…端子、12a…信号配線、12b,12c…電気配線、14…接続孔、15,17…接地パターン、15a…貫通孔、18…凹部、19…抜きパターン、19a…空孔、A…部分、P…仮想線。