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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-24
(45)【発行日】2022-02-01
(54)【発明の名称】医療器具
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/70 20060101AFI20220125BHJP
【FI】
A61B17/70
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018034358
(22)【出願日】2018-02-28
(65)【公開番号】P2019146874
(43)【公開日】2019-09-05
【審査請求日】2021-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】518069243
【氏名又は名称】株式会社日果理
(74)【代理人】
【識別番号】100089934
【弁理士】
【氏名又は名称】新関 淳一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100092945
【弁理士】
【氏名又は名称】新関 千秋
(72)【発明者】
【氏名】河野 仁
【審査官】槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-507374(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0190174(US,A1)
【文献】特表2012-501808(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
背骨S側に固定された縦の所定長さを有する背骨用支持部材5に固定され、または、背骨S側に直接固定される背骨側固定部材2と、一部の肋骨Rの上下何れか一方側に当接する固定側把持部7および肋骨の上下何れか他方側に当接する移動側把持部8とを備え、前記背骨側固定部材2に対して長さ方向に移動自在の肋骨側固定部材1とにより構成し、前記背骨用支持部材5は、背骨Sの左右何れか一方側または両側に設け、前記肋骨側固定部材1と背骨側固定部材2により構成した固定具Kを、背骨用支持部材5に一つまたは複数上下に並設して構成した医療器具。
【請求項2】
請求項1において、前記固定側把持部7の当接部は、平面視において、前記肋骨側固定部材1の長さ方向に対して先端に至るに従い傾斜させ、該当接部の肋骨側固定部材1に対する傾斜角度を肋骨側固定部材1の長さ方向の一方側から他方側に向けて相違するもの複数種類用意し、選択的に肋骨側固定部材1に取付ける構成とした医療器具。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、前記肋骨側固定部材1は、横方向に延在する長尺な部材で、肋骨固定部12と、該肋骨固定部12に連続する肋骨固定基部部13とを備え、前記肋骨固定部12には上下何れか一方側に突出するように設けた固定側把持部7と、移動側把持部8の当接部が上下何れか他方側に突出するように、移動側把持部8の軸棒部が嵌合する溝部20と、溝部20に嵌合させた移動側把持部8の軸棒部を固定する把持部固定用螺子11が螺合される肋骨側雌螺子孔10とを備えて構成した医療器具。
【請求項4】
請求項1~請求項3の何れかの請求項において、前記背骨用支持部材5は背骨の左右両側に設け、各背骨用支持部材5には前記固定具Kを上下に複数並設し、左右の固定具Kは同じ高さ位置または上下にずらして設けた医療器具。
【請求項5】
請求項1~請求項4の何れかの請求項において、前記固定側把持部7と移動側把持部8は先端を肋骨の断面形状に合わせた円弧形状に形成し、前記固定側把持部7は肋骨側固定部材1に固定状態に設け、前記移動側把持部8は肋骨側固定部材1に対して上下自在に構成した医療器具。
【請求項6】
請求項3において、前記固定側把持部7と移動側把持部8は基部の直線状の軸棒部と、先端の円弧状の当接部を有して形成し、当接部の一部は軸棒部と同径あるいは軸棒部の径よりも幅広形状に形成した医療器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、背骨固定のための医療器具に係るものである。
【背景技術】
【0002】
多くの種類の背骨の異常は、限定されるものではないが、外傷、腫瘍、椎間板変性、及び疾患から生じている場合が多く、また、種々の背骨疾患、例えば、脊柱側弯症、変性椎間板疾患、椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、または他の奇形の治療には背骨の一部を固定化する手法が採られ、このような処置には、2つ以上の椎骨を適切に位置合せし、背骨ロッドに取り付けられた2つ以上の椎骨を連結具によって恒久的に固定させている(特許文献1参照)。
また、背骨の両側に設けた一対の背骨ロッドを、溝部と螺子を有する一対の固定部材により連結支持構成も知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-503234号公報
【文献】特開2017-221698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記公知例では、何れも、背骨側にのみで何らかの部材により背骨ロッドを固定している構成のため、背骨ロッドが患者身体の前方屈曲姿勢を良好に支持できていないという課題がある。
本願は、医療器具の構成を工夫し、背骨と肋骨との二カ所を支点として支持するようにして、背骨の弯曲を良好に支持する医療器具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、背骨S側に固定された縦の所定長さを有する背骨用支持部材5に固定され、または、背骨S側に直接固定される背骨側固定部材2と、一部の肋骨Rの上下何れか一方側に当接する固定側把持部7および肋骨の上下何れか他方側に当接する移動側把持部8とを備え、前記背骨側固定部材2に対して長さ方向に移動自在の肋骨側固定部材1とにより構成し、前記背骨用支持部材5は、背骨Sの左右何れか一方側または両側に設け、前記肋骨側固定部材1と背骨側固定部材2により構成した固定具Kを、背骨用支持部材5に一つまたは複数上下に並設して構成した医療器具としたものである。
請求項2の発明は、前記固定側把持部7の当接部は、平面視において、前記肋骨側固定部材1の長さ方向に対して先端に至るに従い傾斜させ、該当接部の肋骨側固定部材1に対する傾斜角度を肋骨側固定部材1の長さ方向の一方側から他方側に向けて相違するもの複数種類用意し、選択的に肋骨側固定部材1に取付ける構成とした医療器具としたものである。
請求項3の発明は、前記肋骨側固定部材1は、横方向に延在する長尺な部材で、肋骨固定部12と、該肋骨固定部12に連続する肋骨固定基部部13とを備え、前記肋骨固定部12には上下何れか一方側に突出するように設けた固定側把持部7と、移動側把持部8の当接部が上下何れか他方側に突出するように、移動側把持部8の軸棒部が嵌合する溝部20と、溝部20に嵌合させた移動側把持部8の軸棒部を固定する把持部固定用螺子11が螺合される肋骨側雌螺子孔10とを備えて構成した医療器具としたものである。
請求項4の発明は、前記背骨用支持部材5は背骨の左右両側に設け、各背骨用支持部材5には前記固定具Kを上下に複数並設し、左右の固定具Kは同じ高さ位置または上下にずらして設けた医療器具としたものである。
請求項5の発明は、前記固定側把持部7と移動側把持部8は先端を肋骨の断面形状に合わせた円弧形状に形成し、前記固定側把持部7は肋骨側固定部材1に固定状態に設け、前記移動側把持部8は肋骨側固定部材1に対して上下自在に構成した医療器具としたものである。
請求項6の発明は、前記固定側把持部7と移動側把持部8は基部の直線状の軸棒部と、先端の円弧状の当接部を有して形成し、当接部の一部は軸棒部と同径あるいは軸棒部の径よりも幅広形状に形成した医療器具としたものである。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明では、背骨S側に固定される背骨側固定部材2と、肋骨R側に固定される肋骨側固定部材1とにより構成されているので、肋骨Rと背骨Sとの二カ所にて、背骨Sを支持することができ、背骨Sに掛かる荷重負担を分散させることができ、背骨Sの変形や弯曲矯正を効果的に行うことができ、さらに、背骨Sから横方向に離れた肋骨Rを支持できるので、一層、左右方向の広い部分に背骨Sに掛かる荷重負担を分散させることができ、特に、前屈姿勢の矯正の効果を向上させることができる。
また、肋骨側固定部材1は固定側把持部7と固定側把持部7に対して移動自在の移動側把持部8を設けているので、肋骨Rの固定支持を良好に行うことかでき、ひいては、背骨Sの変形や弯曲の矯正を効果的に行うことができる。
また、背骨用支持部材5は、背骨Sの左右何れか一方側または両側に設け、前記肋骨側固定部材1と背骨側固定部材2により構成した固定具Kを、背骨用支持部材5に一つまたは複数上下に並設して構成しているので、種々の背骨Sの椎体および肋骨Rの状態に適合させて本発明の医療器具を装着でき、汎用性を向上させることができる。
請求項の発明では、固定側把持部7の当接部は、平面視において、肋骨側固定部材1の長さ方向に対して先端に至るに従い傾斜させ、当接部の肋骨側固定部材1に対する傾斜角度を肋骨側固定部材1の長さ方向の一方側から他方側に向けて相違するもの複数種類用意し、選択的に肋骨側固定部材1に取付ける構成としているので、どの部分の肋骨Rであっても固定支持できて、肋骨Rの支持強度を向上させられ、これにより、背骨Sの支持全般を強固にできる。
請求項の発明では、肋骨側固定部材1は、横方向に延在する長尺な部材で、肋骨固定部12と、該肋骨固定部12に連続する肋骨固定基部部13とを備え、肋骨固定部12には上下何れか一方側に突出するように設けた固定側把持部7と、移動側把持部8の当接部が上下何れか他方側に突出するように、その軸棒部が嵌合する溝部20と、溝部20に嵌合させた移動側把持部8の軸棒部を固定する把持部固定用螺子11が螺合される肋骨側雌螺子孔10とを備えて構成しているので、簡単な構成で背骨Sと肋骨Rとを連結支持できる。
請求項の発明では、背骨用支持部材5は背骨Sの左右両側に設け、各背骨用支持部材5には前記固定具Kを上下に複数並設し、左右の固定具Kは同じ高さ位置または上下にずらして設けているので、種々の背骨および肋骨の状態であっても、選択して本発明の医療器具を取り付けることができ、汎用性を向上させることができる。
請求項の発明では、固定側把持部7と移動側把持部8は先端を肋骨Rの断面形状に合わせた円弧形状に形成し、固定側把持部7は背骨側固定部材2に固定状態に設け、移動側把持部8は背骨側固定部材2に対して上下自在に構成しているので、肋骨Rの形状に合わせて肋骨Rを固定支持することができ、肋骨Rの支持強度を向上させられ、これにより、背骨Sの支持全般を強固にできる。
請求項の発明では、固定側把持部7と移動側把持部8は基部の直線状の軸棒部と、先端の円弧状の当接部を有して形成し、当接部の一部は軸棒部の径と同径あるいは幅広形状に形成しているので、どの部分の肋骨Rであっても固定支持できて、肋骨Rの支持強度を向上させられ、これにより、背骨Sの支持全般を強固にできる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】骨格に医療器具を取付けた模式図。
図2】同断面の模式図。
図3】固定具の分解斜視図。
図4】把持部の他の実施形態の斜視図。
図5】固定具の他の実施形態の分解斜視図。
図6】固定具の他の実施形態の分解斜視図。
図7】同平面図および背面図。
図8】把持部の把持状態の模式図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の医療器具Tを実施しうる一実施形態を図面を用いて説明する。理解を容易にするため、背骨S(図1)の長さ方向を上下方向とし、肋骨Rを横方向とし、これらを基準に前後左右等の方向を用いて適宜説明するが、これにより、本発明の構成は限定されない。また、理解を容易にするため、背骨S・肋骨Rと骨体を称しているが、これらの名称により本発明の構成は限定されない。
【0009】
本発明の医療器具Tは一または複数の固定具Kにより構成され、固定具Kは肋骨側に固定される肋骨側固定部材1と背骨側に固定される背骨側固定部材2とを備えて構成する。
背骨側固定部材2は背骨側に固定されればよく、その固定手段は任意であり、例えば、背骨側固定部材2を直接的にスクリューネジ3等により背骨側に固定してもよいが、背骨側にスクリューネジ3等により背骨と平行状態に固定された、縦のロッド状の背骨用支持部材5に固定する構成でもよい。
【0010】
ここで、本実施形態にあっては、背骨用支持部材5は、背骨Sの椎体に対して直接取り付けられたものであっても良いし、椎体にねじ込まれる骨螺子等の所定の介在部材を介して取り付けられたものであっても良いものとし、また、背骨用支持部材5は背骨Sの左右両側の何れか一側に設けたものでもよく、また、背骨Sの左右両側に一対設けてもよい。
本実施形態の一対の背骨用支持部材5では、その断面形状が略等しい円柱状とされているが、これに限られるものではない。
【0011】
本発明の医療器具Tの固定具Kは、背骨側に固定された背骨用支持部材5がある場合、前記肋骨側固定部材1および背骨側固定部材2に加えて背骨用支持部材5を含めて構成されるが、背骨側に固定された背骨用支持部材5がない場合、肋骨側固定部材1および背骨側固定部材2により構成されることになる。
図1では、背骨Sの右側に背骨用支持部材5を設け、背骨Sの左側に背骨用支持部材5を設けていない固定具Kの例を示しているが、固定具Kの数や設置位置は任意であり、これらにより限定されない。
例えば、図1の背骨Sの下部では、後述する背骨固定部40を有する固定具K’を背骨(脊椎・腰椎)S側に固定し、一対の背骨用支持部材5と背骨S側とを連結支持している。
【0012】
肋骨側固定部材1は、背骨Sと肋骨Rにより構成される胸郭のうちの一部の肋骨Rの上下何れか一方側に当接する固定側把持部7と、肋骨の上下何れか他方側に当接する移動側把持部8とを備え、前記背骨側固定部材2に対して長さ方向に移動自在に構成する(図3)。
固定側把持部7と移動側把持部8は先端を肋骨の断面形状に合わせた円弧形状に形成し、前記固定側把持部7は肋骨側固定部材1に固定状態に設け、前記移動側把持部8は肋骨側固定部材1に対して上下自在に構成する(図3)。
【0013】
具体的には、肋骨側固定部材1は、移動側把持部8を固定する把持部固定用螺子11を螺合させる肋骨側雌螺子孔10を備えて構成する。
肋骨側固定部材1は、左右方向に長い長尺状の部材により形成され、肋骨を固定可能な肋骨固定部12と、この肋骨固定部12に連続して背骨方向に延在された肋骨固定基部部13とを備えている。
【0014】
肋骨固定部12は、前記固定側把持部7と移動側把持部8とを備えて構成し、前記移動側把持部8は上下方向の部材で形成され、上下の何れか一方側に形成された前記肋骨固定部12側に対して移動自在に取付けるに直線状の移動側軸棒部(軸棒部)14と、上下の何れか他方側に形成されて肋骨の上下の何れか一方面に当接する移動側当接部15とを備えている。
【0015】
移動側当接部15は肋骨の断面形状に合わせて、肋骨の上下面の何れかに当接するように円弧形状に形成している。移動側当接部15は先端部分を移動側軸棒部14より広い幅広形状に形成されることもある(図4)。
前記固定側把持部7は上下方向の部材で形成され、肋骨側固定部材1の所定位置に固定される直線状の固定側軸棒部16と、肋骨の上下の何れか一方面に当接する先端の固定側当接部17とを備えている。
【0016】
固定側当接部17は上下中間部を固定側軸棒部16より広い幅広形状に形成されることもある。
また、固定側把持部7の固定側当接部17の向きを、平面視において、左方・中間・右方の何れかに傾斜させてもよい。
【0017】
肋骨側固定部材1には移動側把持部8の移動側軸棒部14が挿入係合される溝部20と、この溝部20に係合された移動側把持部8の移動側軸棒部14を固定するために把持部固定用螺子11が螺合される把持部固定用雌螺子孔10とを備え、これにより、移動側把持部8を肋骨側固定部材1に対して上下自在かつ上下位置を保持しうる構成となっている。
【0018】
溝部20は、肋骨側固定部材1の長手方向に対して略垂直な方向、即ち、肋骨側固定部材1に取り付けられる移動側把持部8の長手方向と略同じ方向に延在するように形成されており、当該溝部20の外方側の肋骨固定部12に、当該溝部20に係合された移動側把持部8の移動側軸棒部14を支持するための軸棒部材受部21が形成されている。
【0019】
軸棒部材受部21は、移動側把持部8の移動側軸棒部14の外周面の略半分以上の部分に沿うように形成された内周面を有して形成され、移動側軸棒部14の軸心方向に対する放射方向に抜けない構成としている。
【0020】
把持部固定用螺子孔10は、溝部20の中心に向かって傾斜して肋骨固定部12を貫通して形成されている。具体的には、把持部固定用螺子孔10は、当該把持部固定用螺子孔10にねじ込まれた把持部固定用螺子11によって、この把持部固定用螺子11の先端部が溝部20に係合された移動側把持部8の移動側軸棒部14の外周面に当接し、この移動側軸棒部14を軸棒部材受部21側に押圧していくことで、この軸棒部材受部21内に移動側把持部8の移動側軸棒部14を固定可能となるように形成されている。
【0021】
即ち、把持部固定用螺子孔10に把持部固定用螺子11がねじ込まれることによって、移動側把持部8の移動側軸棒部14は、把持部固定用螺子11と軸棒部材受部21の内周面とによって抜け止めされた状態で、軸棒部材受部21内に固定されるようになっている。
背骨側固定部材2は、前記スクリューネジ3が螺合する背骨側雌螺子孔25を備えて構成する(図3)。
【0022】
この場合、スクリューネジ3は、螺子軸部26の上部にナット部27を有して構成する固定用スクリューネジ3Aと、螺子軸部26の上部に背骨用支持部材5が嵌合する嵌合溝28を有する「U」の字形状のロッド受部29を屈曲あるいは回転自在に設けて構成した受け用スクリューネジ3Bとを例示しているが、他の介在部材を介して背骨S側に固定できればよい。
【0023】
すなわち、図1の左側の固定具Kの背骨側固定部材2は、背骨側雌螺子孔25に螺合させた固定用スクリューネジ3Aにより背骨S側に直接に固定する構成としており、また、図1の右側の固定具Kの背骨側固定部材2は、背骨側雌螺子孔25に螺合させる受け用スクリューネジ3Bのロッド受部29の嵌合溝28に背骨用支持部材5を嵌合させて支持して、背骨用支持部材5を背骨S側に固定する固定部材と背骨S側に直接に固定する固定部材とを兼用する構成としているが、背骨用支持部材5のみを支持する構成でもよく、また、背骨用支持部材5を他の介在部材を介して背骨S側に固定する構成としてもよい。
【0024】
背骨側固定部材2は、前記肋骨側固定部材1に対して互いに相対的に左右方向(横方向)に移動自在に構成される。この移動構成は任意であるが、肋骨側固定部材1と背骨側固定部材2の何れか一方側には挿入孔35を設け、肋骨側固定部材1と背骨側固定部材2の何れか他方側には挿入孔35に挿入される挿入部36を設け、固定螺子37により肋骨側固定部材1と背骨側固定部材2とが固定される。
【0025】
また、図5は固定具Kの他の実施形態を示しており、背骨側固定部材2を背骨用支持部材5に支持させる構成としている。
具体的には、背骨側固定部材2は、背骨用支持部材5を固定可能な背骨固定部40と、この背骨固定部40に連続して形成された背骨固定基部部41とを備えている。
なお、図5の固定具Kのうち、背骨固定部40を受け用スクリューネジ3Bにより背骨S側に固定する構成を採用してもよい。
【0026】
背骨固定部40は、背骨側固定部材2の長手方向に対して略垂直な方向(縦方向)に向かって開口し、背骨用支持部材5に係合可能に形成された溝部42と、この溝部42に係合された背骨用支持部材5を固定するために背骨側固定用螺子43が螺合される背骨側雌螺子孔25とを備えている。
【0027】
溝部42は、背骨側固定部材2の長手方向に対して略垂直な方向、即ち、背骨側固定部材2に取り付けられる背骨用支持部材5の長手方向と略同じ方向に延在するように形成されており、当該溝部42の外方側の背骨固定部40に、当該溝部42に係合された背骨用支持部材5を支持するための背骨用部材受部45が形成されている。
【0028】
背骨側雌螺子孔25は、溝部42の中心に向かって傾斜して背骨固定部40を貫通して形成されている。具体的には、背骨側雌螺子孔25は、当該背骨側雌螺子孔25にねじ込まれた背骨側固定用螺子43によって、この背骨側固定用螺子43の先端部が溝部42に係合された左側の背骨用支持部材5の外周面に当接し当該背骨用支持部材5を背骨用部材受部45側に押圧していくことで、この背骨用部材受部45内に背骨用支持部材5を固定可能となるように形成されている。
【0029】
図6は、他の実施形態を示し、肋骨固定部12と背骨固定部40の各部の形状は第二実施形態と略同じであるが、肋骨固定基部部13と背骨固定基部部41の形状が所謂板部材により形成されている点において相違している。
すなわち、肋骨固定基部部13と背骨固定基部部41とを前後に重ね、肋骨固定基部部13と背骨固定基部部41とを固定する締結固定部材50を設ける。
【0030】
締結固定部材50の構成は任意であるが、肋骨固定基部部13と背骨固定基部部41の何れか一方に雄螺子部51を設け、何れか他方に雄螺子部51が移動しうる挿通孔52を設け、挿通孔52に挿通した雄螺子部51を締結用ナット53で固定する。
この場合、肋骨側固定部材1と背骨側固定部材2は雄螺子部51の軸心を中心として回動自在となり、回動させることにより肋骨側固定部材1と背骨側固定部材2との位置調節を可能にしている。
【0031】
本発明の肋骨側固定部材1は脊柱の胸郭及び腰椎の部分における脊柱の解剖学的構造に適応するのに必要なように種々の異なる寸法のものが提供され得るのである。
本発明は図面及び記述によって詳細に図示されかつ記載されたが、これは単なる図解であり本件発明の特性を制限するものではなく、単に好ましい実施例を示しかつ図示したものにすぎず、本発明の精神に属する全ての変更および改良はこの発明によって保護されるものである。
【0032】
(本実施形態の作用)
医療器具Tの固定具Kの取付方法等を説明する。
先ず、肋骨側固定部材1の挿入孔35に背骨側固定部材2の挿入部36が挿通され、この挿入部36を固定螺子37により緩く固定された状態に準備する。
また、肋骨側固定部材1の溝部20に移動側把持部8の移動側軸棒部14を挿入係合させ、移動側軸棒部14を把持部固定用螺子11により緩く固定された状態に準備しておく。
【0033】
患者は、手術台上にうつ伏せで横たわった状態となっており、患者はその背中側から切開されて、背骨用支持部材5を設ける場合は、背骨Sの背中側に沿って背骨用支持部材5が取り付けられた状態となっているものとする。
手術台上の患者の背骨Sと肋骨Rの結合部分付近が切開されているものとする。
【0034】
肋骨側固定部材1の固定側把持部7の固定側当接部17を肋骨の上下何れか一方面に当接させ、次に、肋骨側固定部材1の溝部20に挿入係合させた移動側把持部8の移動側軸棒部14を上下させて、移動側把持部8の移動側当接部15を肋骨の上下何れか他方面に当接させ、肋骨Rを移動側把持部8と固定側把持部7とにより上下に挟み込む状態とする。
【0035】
次に、肋骨側固定部材1の肋骨側雌螺子孔10に螺合さた把持部固定用螺子11をねじ込むと、把持部固定用螺子11の先端部により移動側把持部8の移動側軸棒部14を軸棒部材受部21側に押圧していき、この溝部20内に移動側把持部8の移動側軸棒部14を固定する。
これにより、肋骨側固定部材1の肋骨固定部12は肋骨R側に固定されることになる。
【0036】
次に、肋骨側固定部材1に対して背骨側固定部材2を移動させ、背骨側固定部材2の端部を背骨S側に固定し、一カ所の固定具Kの取付は完了する。
この一カ所の固定具Kにより医療器具Tを構成している場合は、これにて、医療器具Tの取付は完了し、また、上下左右にそれぞれ固定具Kを取付ける場合は、上記取付作業を反復して、医療器具Tとする。
【0037】
なお、背骨側固定部材2の端部の背骨固定部40は背骨側に固定されればよく、その固定手段は任意であり、例えば、背骨側固定部材1を直接的にスクリューネジ3等により背骨S側に固定してもよいが、縦のロッド状の背骨用支持部材5に固定する構成では、背骨用支持部材5に背骨側固定部材2の背骨固定部40の溝部42を嵌合させ、背骨側固定用螺子43により背骨用支持部材5を背骨用部材受部45に押し付け固定させる。
【0038】
また、背骨の左右両側に背骨用支持部材5を設けた場合は、上記作業を反復して背骨の両側に固定具Kを固定する。
また、ひとつの固定具Kを、肋骨Rおよび背骨S(背骨用支持部材5)に取付けるか、あるいは、上下に複数並設する場合もあり、適宜の箇所に適宜固定具Kを固定する上記作業を反復して行って、医療器具Tとする。
【0039】
また、背骨用支持部材5を背骨の左右両側に設けた場合では、各背骨用支持部材5には固定具Kを上下に複数並設し、左右の固定具Kは同じ高さ位置または上下にずらして医療器具Tとしてもよい。
また、背骨Sの下部の腰椎部分に患部がある場合であっても、肋骨R側に固定具Kを取付けることにより、肋骨Rに取付けた固定具Kが補助的に背骨Sを支持する効果が期待でき、背骨固定の施術範囲をおよび施術効果を高めることができる。
【0040】
なお、肋骨側固定部材1及び背骨側固定部材2による固定は、逆の順序で行われても良いし、略同じタイミングで行われても良い。
このようにして、医療器具Tにて背骨の一方側例えば右側の肋骨との連結支持結合を完了し、同様の手順にて背骨の他方側例えば左側の肋骨との連結支持結合を完了する。
【0041】
これにより、医療器具Tは背骨S側に固定されてる背骨側固定部材2と、肋骨R側に固定されている肋骨側固定部材1とを連結でき、背骨Sを縦方向および横方向の二方向により矯正支持でき、背骨の弯曲を良好に矯正可能となる。
すなわち、本発明の医療器具Tは、背骨S側に固定されてる背骨側固定部材2および背骨用支持部材5の所定部分を、肋骨R側に固定されている肋骨側固定部材1により支持でき、背骨Sの支持および背骨Sの弯曲矯正を良好にする。
また、医療器具Tの固定具Kの構成は任意であり、各図の構成を適宜取捨選択して組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1…肋骨側固定部材、2…背骨側固定部材、5…背骨用支持部材、7…固定側把持部、8…移動側把持部、10…把持部固定用螺子孔、11…把持部固定用螺子、12…肋骨固定部、13…肋骨固定基部部、14…移動側軸棒部、15…移動側当接部、16…固定側軸棒部、17…固定側当接部、20…溝部、21…軸棒部材受部、25…背骨側雌螺子孔、26…螺子軸部、27…ナット部、28…嵌合溝、29…ロッド受部、35…挿入孔、36…挿入部、37…固定螺子、40…背骨固定部、41…背骨固定基部部、42…溝部、43…背骨側固定用螺子、45…背骨用部材受部、50…締結固定部材、51…雄螺子部、52…挿通孔、53…締結用ナット、K…固定具、T…医療器具。
図1
図2
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図5
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図7
図8