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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-24
(45)【発行日】2022-02-01
(54)【発明の名称】紫外線硬化型ホットメルト粘着剤
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/00 20060101AFI20220125BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20220125BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20220125BHJP
【FI】
C09J133/00
C09J11/06
C09J11/04
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018117167
(22)【出願日】2018-06-20
(65)【公開番号】P2019218480
(43)【公開日】2019-12-26
【審査請求日】2021-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】305044143
【氏名又は名称】積水フーラー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103975
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】桑原 章滋
(72)【発明者】
【氏名】川端 和裕
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-214601(JP,A)
【文献】国際公開第2017/138609(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/093206(WO,A1)
【文献】特開2006-299017(JP,A)
【文献】特表2017-511836(JP,A)
【文献】特開2009-242740(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線反応性基を有する(メタ)アクリル系ポリマー(A)、吸着剤(B)、分子内に窒素原子を含まないヒンダードフェノール系酸化防止剤(C)、及びリン系酸化防止剤(D)を含有することを特徴とする紫外線硬化型ホットメルト粘着剤。
【請求項2】
(メタ)アクリル系ポリマー(A)が有する紫外線反応性基が、ベンゾフェノン骨格を有する官能基であることを特徴とする請求項1に記載の紫外線硬化型ホットメルト粘着剤。
【請求項3】
吸着剤(B)が、物理吸着剤を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の紫外線硬化型ホットメルト粘着剤。
【請求項4】
吸着剤(B)が、ハイシリカゼオライトを含むことを特徴とする請求項1~3いずれか1項に記載の紫外線硬化型ホットメルト粘着剤。
【請求項5】
吸着剤(B)に対するヒンダードフェノール系酸化防止剤(C)の質量比[ヒンダードフェノール系酸化防止剤(C)/吸着剤(B)]が、0.01~5であることを特徴とする請求項1~4いずれか1項に記載の紫外線硬化型ホットメルト粘着剤。
【請求項6】
吸着剤(B)に対するリン系酸化防止剤(D)の質量比[リン系酸化防止剤(D)/吸着剤(B)]が、0.01~5であることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の紫外線硬化型ホットメルト粘着剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線硬化型ホットメルト粘着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル系粘着剤は、粘着テープや商品ラベルなどに用いられている。更に、アクリル系粘着剤は透明性、耐熱性及び耐候性に優れていることから、パソコン、スマートフォン、テレビ及びデジタルカメラなどの電子機器の光学ディスプレイなどにも用いられている。
【0003】
使用環境の改善の観点から粘着剤の無溶剤化が推奨されており、アクリル系粘着剤においてもホットメルト化が進んでいる。ホットメルト粘着剤は、支持体への塗工工程において溶剤を除去するための乾燥工程の必要がないことから、乾燥工程用の設備を必要とせず、省エネルギー化にも大きく貢献する。
【0004】
特に近年では、紫外線反応性基を有する(メタ)アクリル系ポリマーを含む紫外線硬化型ホットメルト粘着剤が開発されている。紫外線硬化型ホットメルト粘着剤を加熱溶融させた状態で支持体に塗工した後、紫外線硬化型ホットメルト粘着剤に紫外線を照射して、(メタ)アクリル系ポリマー間に架橋構造を付与することにより粘着性を発現させる。このような紫外線硬化型ホットメルト粘着剤によれば、従来の熱可塑性アクリル系粘着剤では成し得なかった良好な粘着性が得られる。
【0005】
例えば、特許文献1に、ガラス転移温度が-5℃以下で重量平均分子量が50,000~350,000であるビニル系共重合体(A)を含有する紫外線硬化型ホットメルト粘着剤であって、前記ビニル系共重合体(A)が、特定のモノマー成分を構成成分として重合させて得られたものである紫外線硬化型ホットメルト粘着剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2006-299017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方、紫外線硬化型ホットメルト粘着剤は、紫外線照射時に分解生成物が発生することが報告されている。この分解生成物によって紫外線照射後の紫外線硬化型ホットメルト粘着剤に臭気が発生することが問題となっている。臭気の発生原因となる分解生成物は、(メタ)アクリル系ポリマーの側鎖や、(メタ)アクリル系ポリマーの重合反応に寄与せずに残存しているモノマーなどが分解することによって発生すると考えられる。
【0008】
そこで、特許文献1では、臭気に対する改善策として、ビニル系共重合体(A)において臭気原因となり得るモノマー成分の含有量を少なくすることが開示されている。しかしながら、モノマー成分の含有量を調整するのみでは紫外線照射後の紫外線硬化型ホットメルト粘着剤の臭気を十分に低減することはできておらず、更なる改善が望まれている。
【0009】
一方、分解生成物による臭気を低減するために、紫外線硬化型ホットメルト粘着剤に吸着剤を添加することが考えられる。吸着剤が分解生成物を吸着して、紫外線硬化型ホットメルト粘着剤の臭気を低減することができる。
【0010】
しかしながら、本発明者等の検討によると、単に吸着剤を紫外線硬化型ホットメルト粘着剤へ添加した場合、加熱溶融時に紫外線硬化型ホットメルト粘着剤の熱安定性が著しく低下することが分かった。紫外線硬化型ホットメルト粘着剤は、加熱溶融させた状態で支持体に塗工されることから、塗工前に長時間に亘って加熱溶融された状態となる。熱安定性が低い紫外線硬化型ホットメルト粘着剤では加熱溶融時にゲル化や着色を引き起こす。
【0011】
そこで、本発明は、吸着剤によって紫外線照射後の臭気の発生が低減されていると共に、加熱溶融時の熱安定性にも優れている紫外線硬化型ホットメルト粘着剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の紫外線硬化型ホットメルト粘着剤は、紫外線反応性基を有する(メタ)アクリル系ポリマー(A)、吸着剤(B)、分子内に窒素原子を含まないヒンダードフェノール系酸化防止剤(C)、及びリン系酸化防止剤(D)を含有することを特徴とする。
【0013】
[(メタ)アクリル系ポリマー(A)]
本発明の紫外線硬化型ホットメルト粘着剤は、紫外線反応性基を有する(メタ)アクリル系ポリマー(A)を含む。紫外線反応性基を有する(メタ)アクリル系ポリマー(A)において主鎖となる(メタ)アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル系モノマーの重合体又は共重合体である。なお、(メタ)アクリルは、アクリル又はメタクリルを意味する。
【0014】
(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、紫外線反応性基及びカルボキシ基を分子内に有しない(メタ)アクリル系モノマー単位と、紫外線反応性基を分子内に有するモノマー単位とを含むことが好ましい。何れのモノマー単位も、分子内に、紫外線領域の光線を吸収する芳香族環を有していないことが好ましい。
【0015】
紫外線反応性基とは、紫外線の照射によって励起されてラジカルを発生させ、ラジカルが水素引抜反応を生じることによって、(メタ)アクリル系ポリマー(A)の分子間に架橋構造を形成させる官能基をいう。
【0016】
紫外線反応性基としては、例えば、ベンゾフェノン骨格を有する官能基、ベンゾイン骨格を有する官能基、及びチオキサントン骨格を有する官能基などが挙げられる。
【0017】
紫外線反応性基及びカルボキシ基を分子内に有しない(メタ)アクリル系モノマーとしては、特に限定されず、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)メタクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレートが挙げられ、アルキル基の炭素数が1~8のアルキル(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。アルキル基の炭素数が1~8のアルキル(メタ)アクリレートは、2-エチルへキシル(メタ)アクリレート及びブチル(メタ)アクリレートが好ましく、2-エチルへキシルアクリレート及びブチルアクリレートがより好ましい。紫外線反応性基及びカルボキシ基を分子内に有しない(メタ)アクリル系モノマーは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。なお、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0018】
(メタ)アクリル系ポリマー(A)において、紫外線反応性基及びカルボキシ基を分子内に有しない(メタ)アクリル系モノマー単位の含有量は、89.65~99.75質量%が好ましく、91.5~97質量%がより好ましく、92.5~95質量%が特に好ましい。紫外線硬化型ホットメルト粘着剤の優れた塗工性及び粘着性を達成するために、紫外線反応性基及びカルボキシ基を分子内に有しない(メタ)アクリル系モノマー単位の含有量を上記範囲内とすることが望ましい。しかしながら、紫外線反応性基及びカルボキシ基を分子内に有しない(メタ)アクリル系モノマーは、紫外線硬化型ホットメルト粘着剤への紫外線照射時に酸化分解して、臭気の発生原因となる分解生成物を特に生じ易い。したがって、(メタ)アクリル系ポリマー(A)が、紫外線反応性基及びカルボキシ基を分子内に有しない(メタ)アクリル系モノマー単位を上述した高い含有量で含む場合に、本発明による効果を特に発揮することができる。このような場合であっても、吸着剤(B)が分解生成物を吸着して、紫外線照射後の紫外線硬化型ホットメルト粘着剤の臭気発生を高く低減することができる。
【0019】
特に、紫外線反応性基及びカルボキシ基を分子内に有しない(メタ)アクリル系モノマーのうち、ブチル(メタ)アクリレートは、紫外線硬化型ホットメルト粘着剤への紫外線照射時に酸化分解して、n-ブタナール、n-ブタノール、及びギ酸n-ブチルなどの分解生成物を生じ易い。これらの分解生成物は臭気を特に発生し易い。したがって、紫外線反応性基及びカルボキシ基を分子内に有しない(メタ)アクリル系モノマーが、ブチル(メタ)アクリレートを含む場合に、本発明による効果を特に発揮することができる。
【0020】
紫外線反応性基及びカルボキシ基を分子内に有しない(メタ)アクリル系モノマー単位中における、ブチル(メタ)アクリレート単位の含有量は、70質量%以上が好ましく、70~99.65質量%が好ましく、70~85質量%がより好ましい。このようにブチル(メタ)アクリレート単位の含有量が高い場合であっても、本発明によれば吸着剤(B)によって、紫外線照射後の紫外線硬化型ホットメルト粘着剤の臭気発生を高く低減することができる。
【0021】
紫外線反応性基を分子内に有するモノマーとしては、紫外線反応性基及びカルボキシ基を分子内に有しない(メタ)アクリル系モノマーと重合可能であれば、特に限定されない。なお、紫外線反応性基は、上記と同様であるので説明を省略する。
【0022】
紫外線反応性基を分子内に有するモノマーとしては、紫外線反応性基及びカルボキシ基を分子内に有しない(メタ)アクリル系モノマー、及び、カルボキシ基及びラジカル重合性不飽和二重結合を有するモノマーと共重合可能であることが好ましい。
【0023】
紫外線反応性基を分子内に有するモノマーが有している紫外線反応性基としては、特に限定されないが、ベンゾフェノン骨格を有する官能基、ベンゾイン骨格を有する官能基、及びチオキサントン骨格を有する官能基などが挙げられる。なかでも、ベンゾフェノン骨格を有する官能基が好ましい。ベンゾフェノン骨格を有する官能基は、紫外線の照射によって水素引抜反応を単独で生じることができ、これにより(メタ)アクリル系ポリマー(A)の分子間に架橋構造を効率的に形成させることが可能となる。紫外線反応性基は、分子内に単独で含まれていても二種以上が含まれていてもよい。
【0024】
紫外線反応性基を分子内に有するモノマーとしては、紫外線反応性基を分子内に有する(メタ)アクリル系モノマーが好ましく、紫外線反応性基を分子内に有する(メタ)アクリレートがより好ましく、ベンゾフェノン骨格を有する官能基を分子内に有する(メタ)アクリレートが特に好ましい。なお、紫外線反応性基を分子内に有するモノマーは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0025】
紫外線反応性基を分子内に有するモノマーとしては、特に限定されず、例えば、4-アクリロイルオキシベンゾフェノン、4-アクリロイルオキシエトキシベンゾフェノン、4-アクリロイルオキシ-4’-メトキシベンゾフェノン、4-アクリロイルオキシエトキシ-4’-メトキシベンゾフェノン、4-アクリロイルオキシ-4’-ブロモベンゾフェノン、4-アクリロイルオキシエトキシ-4’-ブロモベンゾフェノン、4-メタクリロイルオキシベンゾフェノン、4-メタクリロイルオキシエトキシベンゾフェノン、4-メタクリロイルオキシ-4’-メトキシベンゾフェノン、4-メタクリロイルオキシエトキシ-4’-メトキシベンゾフェノン、4-メタクリロイルオキシ-4’-ブロモベンゾフェノン、4-メタクリロイルオキシエトキシ-4’-ブロモベンゾフェノンなどが挙げられ、4-アクリロイルオキシベンゾフェノンが好ましい。なお、紫外線反応性基を分子内に有するモノマーは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0026】
(メタ)アクリル系ポリマー(A)において、紫外線反応性基を分子内に有するモノマー単位の含有量は、0.15~0.5質量%が好ましく、0.17~0.4質量%がより好ましく、0.2~0.35質量%が特に好ましい。紫外線反応性基を分子内に有するモノマー単位の含有量が0.15~0.5質量%であると、紫外線硬化型ホットメルト粘着剤が優れた粘着性を発現する。
【0027】
(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、カルボキシ基及びラジカル重合性不飽和二重結合を有するモノマー単位をさらに含有していることが好ましい。すなわち、(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、紫外線反応性基及びカルボキシ基を分子内に有しない(メタ)アクリル系モノマー単位と、紫外線反応性基を分子内に有するモノマー単位と、カルボキシ基及びラジカル重合性不飽和二重結合を有するモノマー単位とを含むことが好ましい。
【0028】
カルボキシ基及びラジカル重合性不飽和二重結合を有するモノマーとしては、紫外線反応性基及びカルボキシ基を分子内に有しない(メタ)アクリレート、及び、紫外線反応性基を分子内に有するモノマーと共重合可能であれば、特に限定されない。また、カルボキシ基及びラジカル重合性不飽和二重結合を有するモノマーは、紫外線反応性基を分子内に有していないことが好ましい。
【0029】
カルボキシ基及びラジカル重合性不飽和二重結合を有するモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、β-カルボキシエチルアクリレートなどのモノカルボン酸、フマル酸、マレイン酸などのジカルボン酸などが挙げられる。なかでも、アクリル酸、メタクリル酸が好ましく、アクリル酸がより好ましい。なお、カルボキシ基及びラジカル重合性不飽和二重結合を有するモノマーは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0030】
(メタ)アクリル系ポリマー(A)において、カルボキシ基及びラジカル重合性不飽和二重結合を有するモノマー単位の含有量は、0.1~10質量%が好ましく、3~9質量%がより好ましい。カルボキシ基及びラジカル重合性不飽和二重結合を有するモノマー単位の含有量が0.1~10質量%であると、加熱溶融時の熱安定性、塗工性及び粘着性に優れた紫外線硬化型ホットメルト粘着剤を提供できる。
【0031】
(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、上述した、モノマー単位以外の他のモノマー単位を含んでいてもよい。他のモノマーとしては、スチレン及びその誘導体、(メタ)アクリルアミド系モノマー、ビニルエステル系モノマー、及びビニルアミド系モノマーなどが挙げられる。
【0032】
(メタ)アクリル系ポリマー(A)の重量平均分子量(Mw)は、10,000~500,000が好ましく、80,000~300,000がより好ましく、100,000~250,000が特に好ましい。紫外線硬化型ホットメルト粘着剤は吸着剤(B)の添加によって加熱溶融時の塗工性が低下する場合がある。しかしながら、重量平均分子量が上記範囲内である(メタ)アクリル系ポリマー(A)を用いることにより、吸着剤(B)による紫外線硬化型ホットメルト粘着剤の加熱溶融時の塗工性の低下を低減することができる。
【0033】
(メタ)アクリル系ポリマー(A)の重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法によって測定されたポリスチレン換算した値である。具体的には、(メタ)アクリル系ポリマー(A)6~7mgを採取し、採取した(メタ)アクリル系ポリマー(A)を試験管に供給した上で、試験管にTHF(テトラヒドロフラン)を加えて(メタ)アクリル系ポリマー(A)を500倍に希釈し、フィルタリングを行って、測定試料を作製する。
【0034】
この測定試料を用いてGPC法によって(メタ)アクリル系ポリマー(A)の重量平均分子量を測定することができる。
【0035】
(メタ)アクリル系ポリマー(A)の重量平均分子量Mwは、例えば、下記測定装置及び測定条件にて測定することができる。
測定装置 Waters社製 ACQUITY APCシステム
測定条件 カラム:Waters社製 HSPgel(TM)HR MB-M
移動相:テトラヒドロフラン使用 0.5mL/分
検出器:RI検出器
標準物質:ポリスチレン
SEC温度:40℃
【0036】
(メタ)アクリル系ポリマー(A)の製造(重合)方法としては、特に限定されず、例えば、溶液重合、バルク重合、懸濁重合、乳化重合などが挙げられる。また、溶液重合等において溶媒を用いて重合するときは、その溶媒を所定の方法で脱処理する必要がある。
【0037】
[吸着剤(B)]
本発明の紫外線硬化型ホットメルト粘着剤は、吸着剤(B)を含む。吸着剤(B)は、その表面に接する気体や液体などの物質の中から特定の成分を選択的に吸着することができるものである。吸着剤(B)によって、紫外線硬化型ホットメルト粘着剤に紫外線を照射することにより発生した分解生成物を吸着することができ、これにより紫外線硬化型ホットメルト粘着剤の臭気発生を高く低減することができる。
【0038】
吸着剤(B)としては、化学吸着剤及び物理吸着剤が挙げられる。物理吸着剤としては、活性炭、活性アルミナ、シリカゲル、メソポーラスシリカ、珪藻土、ハイシリカゼオライト、及び高分子吸着剤などが挙げられる。
【0039】
吸着剤(B)としては、物理吸着剤が好ましく、活性炭及びハイシリカゼオライトが好ましく、ハイシリカゼオライトが特に好ましい。これらの吸着剤(B)は、(メタ)アクリル系ポリマー(A)との親和性に優れ、紫外線照射後の紫外線硬化型ホットメルト粘着剤の臭気発生を高く低減することができる。
【0040】
ハイシリカゼオライトにおいて、アルミナ(Al23)に対するシリカ(SiO2)のモル比(SiO2/Al23)は、5以上が好ましい。モル比(SiO2/Al23)が5以上であるハイシリカゼオライトは、紫外線照射後の紫外線硬化型ホットメルト粘着剤の臭気発生を高く低減することができる。
【0041】
なお、ハイシリカゼオライトにおけるアルミナ(Al23)に対するシリカ(SiO2)のモル比(SiO2/Al23)は、例えば、誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-AES)による元素の定量分析から算出することができる。なお、誘導結合プラズマ発光分光分析は、例えば、PerkinElmer社製 装置名「OPTIMA5300DV」を用いて行うことができる。
【0042】
ハイシリカゼオライトは、下記式(I)で示される組成を有することが好ましい。
2/nO・Al23・xSiO2・yH2O (I)
(式(I)中、Mは金属イオンを示し、nは金属イオンMの原子価であり、xは5以上の数であり、yは0以上の数である。)
【0043】
式(I)における金属イオンMとしては、アルカリ金属イオン及びアルカリ土類金属イオンが挙げられる。具体的には、カルシウムイオン、バリウムイオン、カリウムイオン、及びナトリウムイオンが挙げられる。なかでも、紫外線照射後の紫外線硬化型ホットメルト粘着剤の臭気発生を高く低減できることから、ナトリウムイオンが特に好ましい。
【0044】
式(I)におけるxは、アルミナ(Al23)に対するシリカ(SiO2)のモル比(SiO2/Al23)であり、5以上の数である。式(I)においてxを5以上とすることによって、紫外線照射後の紫外線硬化型ホットメルト粘着剤の臭気発生を高く低減できる。
【0045】
なお、ハイシリカゼオライトの組成は、例えば、誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-AES)による元素の定量分析から算出することができる。
【0046】
物理吸着剤のBET比表面積は、100~4000m2/gが好ましく、100~2000m2/gがより好ましく、100~1000m2/gが特に好ましい。BET比表面積が上記範囲内である物理吸着剤を用いることにより、紫外線硬化型ホットメルト粘着剤の臭気を高く低減することができる。
【0047】
なお、物理吸着剤のBET比表面積は、窒素ガスの吸着量に基づいたBET法により算出することができる。
【0048】
紫外線硬化型ホットメルト粘着剤における吸着剤(B)の含有量は、(メタ)アクリル系ポリマー(A)100質量部に対して、0.1~15質量部が好ましく、0.2~10質量部がより好ましく、2~8質量部が特に好ましい。吸着剤(B)の含有量を0.1質量部以上とすることにより、紫外線照射後に臭気の発生が高く低減された紫外線硬化型ホットメルト粘着剤を提供することができる。吸着剤(B)の含有量を15質量部以下とすることにより、吸着剤(B)の添加による加熱溶融時の紫外線硬化型ホットメルト粘着剤の熱安定性の低下を低減することができる。
【0049】
[ヒンダードフェノール系酸化防止剤(C)]
本発明の紫外線硬化型ホットメルト粘着剤は、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(C)を含む。本発明の紫外線硬化型ホットメルト粘着剤では、上述した吸着剤(B)を用いることによって、紫外線照射後に(メタ)アクリル系ポリマー(A)や残存モノマーの分解生成物に由来する臭気が高く低減されている。しかしながら、本発明者等の検討によると、吸着剤(B)のみを添加すると、紫外線硬化型ホットメルト粘着剤の加熱溶融時の熱安定性を低下させることがあることが分かった。このような熱安定性の低下は、吸着剤(B)が吸着した空気中の酸素が一因であると考えられる。吸着剤(B)は空気中の酸素を吸着して紫外線硬化型ホットメルト粘着剤中に取り込み易くなる。この酸素によって、(メタ)アクリル系ポリマー(A)の分解が促進されて、加熱溶融時の紫外線硬化型ホットメルト粘着剤の熱安定性が低下し易くなると考えられる。そこで、本発明の紫外線硬化型ホットメルト粘着剤では、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(C)及びリン系酸化防止剤(D)を組み合わせて用いている。これにより、吸着剤(B)が吸着した酸素による(メタ)アクリル系ポリマー(A)の分解を低減することができ、加熱溶融時の紫外線硬化型ホットメルト粘着剤の優れた熱安定性を確保することが可能となる。
【0050】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤(C)は、分子内に窒素原子を含まない。これにより、(メタ)アクリル系ポリマー(A)の分解を高く低減して、吸着剤(B)の添加による加熱溶融時の紫外線硬化型ホットメルト粘着剤の熱安定性の低下を低減することができる。
【0051】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤(C)としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート、及び1,6-ヘキサンジオール-ビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]などが挙げられる。なかでも、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]が好ましい。ヒンダードフェノール系酸化防止剤(C)は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0052】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤(C)は、市販品を用いることもできる。例えば、BASF社製 商品名「Irganox 1010」、「Irganox 1076」、及び「Irganox 259」などが挙げられる。
【0053】
紫外線硬化型ホットメルト粘着剤において、吸着剤(B)に対するヒンダードフェノール系酸化防止剤(C)の質量比[ヒンダードフェノール系酸化防止剤(C)/吸着剤(B)]は、0.01~5が好ましく、0.1~4がより好ましく、0.125~0.5が特に好ましい。質量比を上記範囲内とすることによって、加熱溶融時に優れた熱安定性を有すると共に、紫外線照射後に臭気の発生が高く低減された紫外線硬化型ホットメルト粘着剤を提供することができる。
【0054】
紫外線硬化型ホットメルト粘着剤におけるヒンダードフェノール系酸化防止剤(C)の含有量は、(メタ)アクリル系ポリマー(A)100質量部に対して、0.1~5質量部が好ましく、0.1~3質量部がより好ましく、0.8~1.2質量部が特に好ましい。ヒンダードフェノール系酸化防止剤(C)の含有量を上記範囲内とすることにより、吸着剤(B)の添加による加熱溶融時の紫外線硬化型ホットメルト粘着剤の熱安定性の低下を低減することができる。
【0055】
[リン系酸化防止剤(D)]
本発明の紫外線硬化型ホットメルト粘着剤は、リン系酸化防止剤(D)を含む。上述した通り、リン系酸化防止剤(D)をヒンダードフェノール系酸化防止剤(C)と組み合わせて用いることにより、吸着剤(B)の添加による加熱溶融時の紫外線硬化型ホットメルト粘着剤の熱安定性の低下を低減することができる。
【0056】
リン系酸化防止剤(D)としては、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリイソデシルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、及び3,9-ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカンなどが挙げられる。なお、リン系酸化防止剤(D)は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0057】
リン系酸化防止剤(D)は、市販品を用いることもできる。例えば、BASF社製 商品名「IRGAFOS 168」、(株)ADEKA社製 商品名「アデカスタブ TPP」、「アデカスタブ 3010」、「アデカスタブ 1178」、「アデカスタブ TPP」「アデカスタブ 2112」、及び「アデカスタブ PEP-36」などが挙げられる。
【0058】
紫外線硬化型ホットメルト粘着剤において、吸着剤(B)に対するリン系酸化防止剤(D)の質量比[リン系酸化防止剤(D)/吸着剤(B)]は、0.01~5が好ましく、0.1~4がより好ましく、0.125~0.5が特に好ましい。質量比を上記範囲内とすることによって、加熱溶融時に優れた熱安定性を有すると共に、紫外線照射後に臭気の発生が高く低減された紫外線硬化型ホットメルト粘着剤を提供することができる。
【0059】
紫外線硬化型ホットメルト粘着剤におけるリン系酸化防止剤(D)の含有量は、(メタ)アクリル系ポリマー(A)100質量部に対して、0.1~5質量部が好ましく、0.1~3質量部がより好ましく、0.8~1.2質量部が特に好ましい。リン系酸化防止剤(D)の含有量を上記範囲内とすることにより、吸着剤(B)の添加による加熱溶融時の紫外線硬化型ホットメルト粘着剤の熱安定性の低下を低減することができる。
【0060】
本発明の紫外線硬化型ホットメルト粘着剤は、その物性を損なわない範囲内において、粘着付与剤、可塑剤、反応性希釈剤、重合開始剤、難燃剤、及び帯電防止剤などの他の添加剤をさらに含んでいてもよい。
【0061】
紫外線硬化型ホットメルト粘着剤の製造方法としては、特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル系ポリマー(A)、吸着剤(B)、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(C)、及びリン系酸化防止剤(D)、並びに必要に応じて他の添加剤を汎用の混練装置に供給して加熱しながら攪拌、混練することによって紫外線硬化型ホットメルト粘着剤を製造する方法が挙げられる。
【0062】
紫外線硬化型ホットメルト粘着剤は、加熱、溶融された上で被着体に塗工される。したがって、紫外線硬化型ホットメルト粘着剤は、通常、塗工機に供給され、加熱、溶融される。
【0063】
紫外線硬化型ホットメルト粘着剤は、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(C)及びリン系酸化防止剤(D)を含んでいる。これにより、塗工のための加熱、溶融工程において、吸着剤(B)に起因した(メタ)アクリル系ポリマー(A)の酸化劣化が高く低減されている。したがって、紫外線硬化型ホットメルト粘着剤のゲル化や着色が略防止されており、ポットライフが長く、取扱性に優れている。
【0064】
そして、加熱されて溶融状態となった紫外線硬化型ホットメルト粘着剤は、被着体に塗工された後、紫外線を照射されて、(メタ)アクリル系ポリマー(A)間に架橋構造が形成される。これにより、(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、所望の粘着性を発現する。紫外線硬化型ホットメルト粘着剤は、吸着剤(B)を含んでいるため、紫外線照射後に(メタ)アクリル系ポリマー(A)や残存モノマーの分解生成物による臭気の発生が高く低減されている。
【0065】
また、紫外線硬化型ホットメルト粘着剤は、ラベルなどの粘着シートの用途に好適に用いられる。粘着シートは、支持体上に粘着剤層が積層一体化されている。粘着剤層は、紫外線硬化型ホットメルト粘着剤を支持体上に塗工した後、紫外線硬化型ホットメルト粘着剤に紫外線を照射することによって硬化されて形成される。
【発明の効果】
【0066】
本発明の紫外線硬化型ホットメルト粘着剤は、吸着剤(B)によって、紫外線照射後に(メタ)アクリル系ポリマー(A)や残存モノマーの分解生成物による臭気の発生が高く低減されている。さらに、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(C)及びリン系酸化防止剤(D)を用いることによって、吸着剤(B)の添加による加熱溶融時の紫外線硬化型ホットメルト粘着剤の熱安定性の低下を高く低減することができる。これにより、塗工工程における加熱溶融時に紫外線硬化型ホットメルト粘着剤が優れた熱安定性を発揮することもできる。
【発明を実施するための形態】
【0067】
以下に、本発明を実施例を用いてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されない。
【実施例
【0068】
(合成例1:(メタ)アクリル系ポリマー(A)の合成)
攪拌機、冷却管、温度計及び窒素ガス導入口を備えた2Lのセパラブルフラスコに、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、アクリル酸、4-アクリロイルオキシベンゾフェノン、ラウリルメルカプタン及び酢酸エチルをそれぞれ表1に示した配合量で含む反応液を供給して回転速度100rpmで攪拌した。
【0069】
セパラブルフラスコ内を窒素ガスで置換した後、ウォーターバスを用いて反応液を還流した。次に、セパラブルフラスコ内に、重合開始剤としてt-ヘキシルパーオキシピバレート(日油(株)社製 商品名「パーヘキシルPV」)を一部添加してラジカル重合反応を開始した。反応開始後から5時間まで、複数回に分けてt-ヘキシルパーオキシピバレートを添加し、さらに1時間重合させた。添加したt-ヘキシルパーオキシピバレートの合計の配合量を表1に示す。その後、重合させた反応物を130℃で常圧乾燥及び減圧乾燥を行い、(メタ)アクリル系ポリマー(A)を得た。(メタ)アクリル系ポリマー(A)の重量平均分子量は、187,000だった。
【0070】
なお、合成例1において、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、アクリル酸、及び4-アクリロイルオキシベンゾフェノンを含むモノマーは全て上記重合反応に用いられた。そのため、残存モノマーについては後述する紫外線硬化型ホットメルト粘着剤の臭気(吸着率)の評価を行わなかった。
【0071】
【表1】
【0072】
次に、後述する実施例及び比較例で使用した各成分の詳細を以下に記載する。
(吸着剤(B))
・吸着剤(B1)[ハイシリカゼオライト、アルミナ(Al23)に対するシリカ(SiO2)のモル比(SiO2/Al23)5以上、上記式(I)で示される組成を有し、上記式(I)においてMがナトリウムイオンであり、nが1であり且つxが5以上であるアルミノケイ酸ナトリウム、BET比表面積350~900m2/gの範囲内、ユニオン昭和(株)社製 商品名「Hisiv-3000」]
・吸着剤(B2)[活性炭粉末、BET比表面積800~2000m2/gの範囲内、クラレケミカル(株)社製 商品名「クラレコールPK-W5A」]
【0073】
(ヒンダードフェノール系酸化防止剤(C))
・ヒンダードフェノール系酸化防止剤(C1)[ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、分子内に窒素原子を含まない、BASF社製 商品名「Irganox 1010」]
・ヒンダードフェノール系酸化防止剤(C2)[2,4-ビス(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ3',5'-ジ-t-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、分子内に窒素原子を含む、BASF社製 商品名「Irganox 565」]
【0074】
(リン系酸化防止剤(D))
・リン系酸化防止剤(D1)[トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、BASF社製 商品名「IRGAFOS 168」]
(硫黄系酸化防止剤)
・硫黄系酸化防止剤[(株)ADEKA社製 商品名「アデカスタブAO-412S」]
【0075】
(実施例1~9、比較例A及び比較例1~4)
合成例1で得た(メタ)アクリル系ポリマー(A)、吸着剤(B1)、吸着剤(B2)、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(C1)、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(C2)、リン系酸化防止剤(D1)、及び硫黄系酸化防止剤を、それぞれ表2に示した配合量で、加熱装置を備えた攪拌混練機中に投入した後、130℃で1時間に亘って加熱しながら混練することにより、紫外線硬化型ホットメルト粘着剤を得た。
【0076】
[評価]
実施例及び比較例で得られた紫外線硬化型ホットメルト粘着剤について、下記手順に従って、臭気及び熱安定性を評価した。結果を表2に示す。
【0077】
[臭気]
紫外線硬化型ホットメルト粘着剤を130℃に加熱して溶融させた後、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に厚みが20μmとなるように塗工した。その後、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗工した紫外線硬化型ホットメルト粘着剤に、紫外線(UV-C)を照射強度50mW/cm2、積算光量100mJ/cm2にて照射して、紫外線硬化型ホットメルト粘着剤を硬化させて粘着剤層とした。これにより、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に粘着剤層が積層一体化された粘着シートを製造した。
【0078】
(臭気:官能評価)
上記で作製した粘着シートの臭いを嗅いで、比較例Aの粘着シートに対する、実施例1~9及び比較例1~4の粘着シートの臭いの度合いを、下記評価基準に従って評価した。
劣:比較例Aの粘着シートと同程度の臭気を感じた。
良:比較例Aの粘着シートよりも臭気がある程度改善されたと感じた。
優:比較例Aの粘着シートよりも臭気が明らかに改善されたと感じた。
【0079】
(臭気:吸着率)
上記で作製した粘着シートから粘着剤層0.4gを剥離し、密閉可能なバイアル瓶へ粘着剤層を投入し直ちに密閉した。次に、バイアル瓶を40℃環境下で30分に亘って保管し、粘着剤層から放散されたガス成分を抽出した。抽出したガス成分をガスクロマトグラフィー質量分析法(GC-MS)を用いてガス成分の定性、定量を行った。測定装置及び測定条件を以下に記載する。
<測定装置>
GC:サーモサイエンティフィック社製 TRACE1310
MS:サーモサイエンティフィック社製 ISQ-LT
カラム:サーモサイエンティフィック社製 TG-5MS
<測定条件>
アジテーター温度:40℃
インキュベーション時間:30分
シリンジ温度:40℃
インレット温度:250℃
オーブン温度:40℃で2分間加熱後、40℃から300℃へ26分かけて
10℃/分で昇温させ、その後、300℃で3分間加熱。
ガス注入量:1.0mL
【0080】
得られたガスクロマトグラフィーのチャートより、ガス成分の同定を行った。これにより、ブチルアクリレートに由来するガス成分として、n-ブタナール、n-ブタノール及びギ酸n-ブチルが検出された。これらのガス成分によって臭気が発生すると考えられる。
【0081】
検出された各ガス成分のピーク面積をチャートから求めた。n-ブタナールについて、比較例Aの粘着シートの粘着剤層から検出されたピーク面積をXとし、実施例1~9及び比較例1~4の粘着シートの粘着剤層から検出されたピーク面積をYとして、下記式により、吸着率を算出した。なお、誤差等により吸着率の値が0以下となったときは、吸着率は0%とした。n-ブタナールに代えてn-ブタノール及びギ酸n-ブチルを用いた以外は上記と同様にして、n-ブタノール及びギ酸n-ブチルについても吸着率をそれぞれ算出した。
吸着率(%)=[100×(X-Y)]/X
【0082】
上記の式で算出された吸着率が高いほど、吸着剤(B)によって各ガス成分が多く吸着され、ガス成分に由来する臭気が軽減されたことを示す。
【0083】
[熱安定性]
紫外線硬化型ホットメルト粘着剤20gを70mLガラス瓶に投入し、オーブン中で130℃で168時間に亘って加熱した。加熱後の紫外線硬化型ホットメルト粘着剤について、下記要領に従って、ゲル発生及び着色を評価した。
【0084】
(熱安定性:ゲル発生)
加熱後の紫外線硬化型ホットメルト粘着剤をスパーテルで混ぜ、ゲル発生の有無を目視により確認し、下記評価基準に従って評価した。
劣:ゲルが発生した。
優:ゲルが発生しなかった。
【0085】
(熱安定性:着色)
加熱後の紫外線硬化型ホットメルト粘着剤を目視で観察し、下記評価基準に従って評価した。
劣:明らかな変色が認められ、問題となる。
良:若干の変色が認められたが、問題とはならない。
優:変色が全く認められなかった。
【0086】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明によれば、熱安定性に優れていると共に、紫外線照射後の臭気の発生が高く低減された紫外線硬化型ホットメルト粘着剤を提供することができる。