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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-24
(45)【発行日】2022-02-01
(54)【発明の名称】茎葉処理装置
(51)【国際特許分類】
   A01D 23/02 20060101AFI20220125BHJP
【FI】
A01D23/02 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018243980
(22)【出願日】2018-12-27
(65)【公開番号】P2020028284
(43)【公開日】2020-02-27
【審査請求日】2020-12-07
(31)【優先権主張番号】P 2018077396
(32)【優先日】2018-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018108936
(32)【優先日】2018-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018153354
(32)【優先日】2018-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000100469
【氏名又は名称】みのる産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135013
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 隆美
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 明
(72)【発明者】
【氏名】岡本 庄平
(72)【発明者】
【氏名】本荘 陽一
(72)【発明者】
【氏名】木下 正
【審査官】宮本 昭彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-205077(JP,A)
【文献】特開平09-149701(JP,A)
【文献】米国特許第05147030(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 13/00 - 33/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
畝に沿って走行しながら、畝に条植された根菜の茎葉部を切断して畝の脇へ排出する茎葉処理装置であって、
上下方向に延びる軸を中心に回転する回転刃と、
前記回転刃を収容し、左右方向のいずれか一方へ連通する流路を有するチャンバーと、
を備え、
前記回転刃の回転により生じる空気流で、茎葉部が起立するとともに切断され、切断された茎葉部の細片が、前記流路を通って畝の脇へ排出され、
前記チャンバーの内側面に取り付けられた揺動可能な垂下部材
をさらに備える、茎葉処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の茎葉処理装置であって、
前記垂下部材は、弾性変形可能な平板状の部材であり、
前記垂下部材の上端部は、前記チャンバーの内側面に固定され、
前記垂下部材の下端部は、前記チャンバーの内側面に固定されることなく、垂れ下がる、茎葉処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の茎葉処理装置であって、
前記垂下部材の上端部は、スペーサを介して、前記チャンバーの内側面に固定されている、茎葉処理装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の茎葉処理装置であって、
前記垂下部材の材料はゴムである、茎葉処理装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の茎葉処理装置であって、
前記チャンバーは、
前記回転刃を収容するメインチャンバーと、
前記メインチャンバーの前方に位置し、前記メインチャンバーと連通する案内チャンバーと、
前記メインチャンバーおよび前記案内チャンバーの側方に位置し、前記案内チャンバーから搬送される茎葉部の細片を、畝の脇へ排出する拡散チャンバーと、
を有し、
前記垂下部材は、前記メインチャンバー、前記案内チャンバー、および前記拡散チャンバーのそれぞれの内側面に設けられる、茎葉処理装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の茎葉処理装置であって、
前記垂下部材は、前記チャンバーの内側面の隅部において、連続的に広がっている、茎葉処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、畝に沿って走行しながら、畝に条植された根菜の茎葉部を切断して畝の脇へ排出する茎葉処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、畝に沿って走行しながら、畝に条植された根菜の茎葉部を切断して、切断後の茎葉部を畝の脇へ排出する、茎葉処理装置が知られている。この種の茎葉処理装置は、例えば特許文献1に開示されている。この特許文献1に記載の玉葱茎葉部切断装置(茎葉処理装置)は、軸周りに回転する垂直の回転軸と、回転軸の下端に固定されて回転し、回転により発生する吸引力で起立させた茎葉部を切断する切断刃(回転刃)と、回転軸と切断刃が配置されて、切断刃で切断されて吸引力により飛ばされた茎葉部を捕集するフード(チャンバー)と、フードに連通して茎葉部を吹き出すダクトと、を備えている。この茎葉処理装置では、切断された茎葉部が、フードを経由して、ダクトに供給され、当該ダクトから畝の脇に排出されると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-205077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、回転刃により切断された茎葉部の細片の一部は、チャンバーの内側面に付着する。仮に、チャンバーの内側面にこれらの細片が堆積して塊となり、未切断の茎葉部の上に落下すると、その茎葉部を空気流で起立させることが困難となる。また、チャンバー内において、茎葉とともに小石または砂利が飛散し、チャンバーの内側面に衝突すると、大きな衝撃音が発生するとともに、チャンバーが損傷する要因となる。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、チャンバーの内側面から茎葉部の細片が大きな塊となって落下することを抑制できるとともに、チャンバーの内側面を小石または砂利から保護できる茎葉処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の第1発明は、畝に沿って走行しながら、畝に条植された根菜の茎葉部を切断して畝の脇へ排出する茎葉処理装置であって、上下方向に延びる軸を中心に回転する回転刃と、前記回転刃を収容し、左右方向のいずれか一方へ連通する流路を有するチャンバーと、を備え、前記回転刃の回転により生じる空気流で、茎葉部が起立するとともに切断され、切断された茎葉部の細片が、前記流路を通って畝の脇へ排出され、前記チャンバーの内側面に取り付けられた揺動可能な垂下部材をさらに備える。
【0007】
本願の第2発明は、第1発明の茎葉処理装置であって、前記垂下部材は、弾性変形可能な平板状の部材であり、前記垂下部材の上端部は、前記チャンバーの内側面に固定され、前記垂下部材の下端部は、前記チャンバーの内側面に固定されることなく、垂れ下がる。
【0008】
本願の第3発明は、第2発明の茎葉処理装置であって、前記垂下部材の上端部は、スペーサを介して、前記チャンバーの内側面に固定されている。
【0009】
本願の第4発明は、第2発明または第3発明の茎葉処理装置であって、前記垂下部材の材料はゴムである。
【0010】
本願の第5発明は、第1発明から第4発明までのいずれか1発明の茎葉処理装置であって、前記チャンバーは、前記回転刃を収容するメインチャンバーと、前記メインチャンバーの前方に位置し、前記メインチャンバーと連通する案内チャンバーと、前記メインチャンバーおよび前記案内チャンバーの側方に位置し、前記案内チャンバーから搬送される茎葉部の細片を、畝の脇へ排出する拡散チャンバーと、を有し、前記垂下部材は、前記メインチャンバー、前記案内チャンバー、および前記拡散チャンバーのそれぞれの内側面に設けられる。
【0011】
本願の第6発明は、第1発明から第5発明までのいずれか1発明の茎葉処理装置であって、前記垂下部材は、前記チャンバーの内側面の隅部において、連続的に広がっている。
【発明の効果】
【0012】
本願の第1発明~第6発明によれば、垂下部材の表面に付着した茎葉部の細片は、垂下部材の揺動により、垂下部材の表面に堆積することなく落下する。したがって、茎葉部の細片が、大きな塊となって、未切断の根菜の茎葉部の上に落下することを抑制できる。その結果、茎葉部の切断を、円滑に行うことができる。
【0013】
また、チャンバー内において小石または砂利が飛散したとしても、その小石または砂利は、メインチャンバーの内側面ではなく、垂下部材に衝突する。これにより、小石または砂利の衝突音を低減できるとともに、チャンバーの内側面が損傷することを抑制できる。
【0014】
特に、本願の第2発明によれば、茎葉処理装置の走行時の振動によって、垂下部材を揺動させることができる。
【0015】
特に、本願の第3発明によれば、チャンバーの内側面と垂下部材との間に、隙間が生じる。これにより、垂下部材がより揺動しやすくなる。
【0016】
特に、本願の第6発明によれば、茎葉部の細片が特に滞留しやすい隅部において、茎葉部の細片が堆積することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】茎葉処理装置および牽引車両の側面図である。
図2】茎葉処理装置の側面図である。
図3】茎葉処理装置の上面図である。
図4】茎葉処理装置の後面図である。
図5】チャンバーの内部空間の模式的な平面図である。
図6】一対の回転ブラシを、後方側から見た図である。
図7】一対の掻揚げ部の他の例を示した図である。
図8】押さえロール部を後方側から見た図である。
図9】メインチャンバーの内側面における垂下部材の取付構造を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<1.茎葉処理装置の構成>
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明においては、茎葉処理装置1が牽引車両2に牽引されて前進する方向を「前方」、その反対方向を「後方」、茎葉処理装置1の前進方向に向かって装置の左側の方向を「左方」、前進方向に向かって装置の右側の方向を「右方」、前後方向および左右方向のいずれにも垂直な方向であって地面に近づく方向を「下方」、その反対方向を「上方」と定義して、各部の形状や位置関係を説明する。
【0019】
図1は、茎葉処理装置1および牽引車両2の側面図である。図2は、茎葉処理装置1の側面図である。図3は、茎葉処理装置1の上面図である。図4は、茎葉処理装置1の後面図である。
【0020】
この茎葉処理装置1は、圃場において畝に沿って走行しながら、畝の上面に条植された根菜の茎葉部を切断し、切断後の茎葉部を畝の脇へ排出する装置である。茎葉処理装置1により処理される根菜は、例えば玉葱である。すなわち、本願における「根菜」は、地中の鱗茎を食用とする玉葱を含むものとする。ただし、茎葉処理装置1の処理対象となる根菜は、球根部や根部を食用とする玉葱以外の根菜であってもよい。根菜は、畝の上面において、例えば、左右方向に4列に条植される。
【0021】
根菜を栽培するときには、畝の上面にマルチフィルムが敷かれる。根菜の茎葉部は、マルチフィルムに設けられた穴から上方へ向けて延びる。根菜の球根部(鱗茎部)は、畝の土壌中において成長する。収穫時期になると、根菜の茎葉部は、マルチフィルムの上面に沿って倒れた状態となる。したがって、根菜の収穫を行うときには、まず、(1)マルチフィルムの上面に倒れた茎葉部を切断して除去し、次に、(2)畝の上面からマルチフィルムを剥がし、その後に、(3)畝から球根部を掘り起こす、という3つの作業が必要となる。茎葉処理装置1は、この(1)~(3)の作業のうち、(1)の作業を容易に行うための装置である。
【0022】
茎葉処理装置1は、トラクタ等の牽引車両2の後部に接続される。したがって、牽引車両2を前方へ走行させると、茎葉処理装置1も、牽引車両2に引かれて前方へ移動する。牽引車両2および茎葉処理装置1は、1つの畝を跨いだ状態で走行する。そして、茎葉処理装置1は、牽引車両2から供給される動力により、後述する第1回転刃40および第2回転刃50を回転させる。これにより、畝の上面に条植された根菜の茎葉部を切断する。
【0023】
図1図4に示すように、本実施形態の茎葉処理装置1は、フレーム10、一対の尾輪20、動力伝達部30、第1回転刃40、第2回転刃50、およびチャンバー60を備える。
【0024】
フレーム10は、茎葉処理装置1の各部を支持する骨格である。フレーム10は、複数の柱状の部材を組み合わせることにより、構成される。フレーム10の材料には、鉄などの剛性の高い金属が用いられる。
【0025】
一対の尾輪20は、フレーム10の後部の左右両端に配置される。図1図4では、尾輪20がリフトアップされた状態を実線で示しているが、茎葉処理装置1の使用時には、一対の尾輪20が、図1図4中の二点鎖線の位置まで下降する。そして、一対の尾輪20が、畝の両脇の溝部に接地する。牽引車両2が前進すると、一対の尾輪20が回転して、茎葉処理装置1も前進する。なお、この茎葉処理装置1では、畝の高さに応じて、フレーム10に対する尾輪20の上下方向の高さを調整することが可能である。
【0026】
動力伝達部30は、チャンバー60の上部に位置する。動力伝達部30は、牽引車両2から供給される動力を、第1回転刃40および第2回転刃50へ伝達するための動力伝達機構を有する。動力伝達機構は、例えば、入力軸、プーリ、ベルト、ギヤ、および2本の出力軸を有する。動力伝達部30の入力軸は、牽引車両2の後部から後上方に向かって延びるPTO軸201に接続される。牽引車両2の駆動源(例えばエンジン)から供給される動力は、PTO軸201を介して、動力伝達部30の入力軸へ入力される。そして、入力された動力が、ベルトやギヤを介して、2本の出力軸へ出力される。
【0027】
第1回転刃40は、後述するメインチャンバー61の内部の、左右方向の中央よりも右方に配置される。第1回転刃40は、上下方向に延びる第1回転軸41の下端部に固定される。第1回転軸41の上端部は、動力伝達部30の右側の出力軸に接続される。したがって、第1回転刃40は、動力伝達部30から出力される動力により、第1回転軸41と一体となって回転する。第1回転刃40は、複数枚(例えば2枚)の刃板42を有する。複数枚の刃板42は、第1回転軸41の周囲において、周方向に等間隔に設けられる。各刃板42の回転方向の先頭側の端縁は、根菜の茎葉部を切断可能な刃先となっている。また、各刃板42は、その上面および下面が、回転方向に対して傾斜している。具体的には、各刃板42は、刃先が下端となるような傾斜姿勢で配置される。このため、第1回転刃40が回転すると、2枚の刃板42によって、上方へ向かう空気流が発生する。
【0028】
第2回転刃50は、後述するメインチャンバー61の内部の、左右方向の中央よりも左側に配置される。第2回転刃50は、上下方向に延びる第2回転軸51の下端部に固定される。第2回転軸51の上端部は、動力伝達部30の右側の出力軸に接続される。したがって、第2回転刃50は、動力伝達部30から出力される動力により、第2回転軸51と一体となって回転する。第2回転刃50は、複数枚(例えば2枚)の刃板52を有する。複数枚の刃板52は、第2回転軸51の周囲において、周方向に等間隔に設けられる。各刃板52の回転方向の先頭側の端縁は、根菜の茎葉部を切断可能な刃先となっている。また、各刃板52は、その上面および下面が、回転方向に対して傾斜している。具体的には、各刃板52は、刃先が下端となるような傾斜姿勢で配置される。このため、第2回転刃50が回転すると、2枚の刃板52によって、上方へ向かう空気流が発生する。
【0029】
チャンバー60は、第1回転刃40および第2回転刃50により切断された茎葉部を、畝の脇へ搬送するための流路を構成する筐体である。チャンバー60は、鉄などの金属により形成され、その表面は塗料により被覆されている。チャンバー60は、上述したフレーム10に固定される。
【0030】
図5は、チャンバー60の内部空間の模式的な平面図である。図2図5に示すように、本実施形態のチャンバー60は、メインチャンバー61、案内チャンバー62、および拡散チャンバー63を有する。
【0031】
メインチャンバー61は、第1回転刃40および第2回転刃50を収容する箱状の部分である。メインチャンバー61は、一対の尾輪20よりも前方、案内チャンバー62よりも後方、かつ、左右方向において一対の尾輪20の間に位置する。茎葉処理装置1の使用時には、このメインチャンバー61が、畝の上方に配置される。メインチャンバー61は、上部を覆う天面部611、左端部を覆う左側面部612、および後部を覆う後面部613を有する。左側面部612は、左右方向に対して垂直な板状である。後面部613は、上面視において、第1回転刃40の回転軌跡に沿う円弧と、第2回転刃50の回転軌跡に沿う円弧とを、含む形状を有し、かつ、上下方向に延びる。メインチャンバー61の下部は、下方へ向けて開放されている。
【0032】
案内チャンバー62は、メインチャンバー61の前方に位置する。チャンバー60の内部において、メインチャンバー61の内部空間と、案内チャンバー62の内部空間とは、前後方向に連通する。図3に示すように、案内チャンバー62は、背面部621、正面部622、および傾斜面部623を有する。背面部621は、前後方向に対して垂直な板状であり、その下端部が、メインチャンバー61の天面部611の前端に接続される。正面部622は、前後方向に対して垂直な板状であり、背面部621から間隔をあけて前方に位置する。背面部621および正面部622の上端部は、右方へ向かうにつれて次第に高くなるように、傾斜している。傾斜面部623は、これらの背面部621の上端部と正面部622の上端部とを繋ぐ板状の部分である。
【0033】
本実施形態では、正面部622の上端部が、背面部621の上端部よりも、やや低くなっている。すなわち、傾斜面部623は、右方へ向かうにつれて次第に高くなるように傾斜するとともに、前方へ向かうにつれて次第に低くなるように傾斜している。
【0034】
拡散チャンバー63は、メインチャンバー61および案内チャンバー62の右方、かつ、右側の尾輪20の前方に位置する。茎葉処理装置1の使用時には、この拡散チャンバー63が、畝の脇の溝の上方に配置される。案内チャンバー62の内部空間と、拡散チャンバー63の内部空間とは、左右方向に連通する。拡散チャンバー63は、上部を覆う板状の上面部631と、右端部を覆う板状の右側面部632とを有する。上面部631は、後方へ向かうにつれて次第に低くなるように傾斜した板状である。右側面部632は、左右方向に対して垂直な板状である。拡散チャンバー63の下部は、下方へ向けて開放されている。
【0035】
このような茎葉処理装置1を用いて、根菜の茎葉部を切断・除去するときには、牽引車両2により、茎葉処理装置1を畝を跨いだ状態で走行させながら、第1回転刃40、第2回転刃50、および後述する一対の回転ブラシ72を回転させる。そうすると、畝の側方へ向けて倒れた根菜の茎葉部は、一対の回転ブラシ72により、畝の上面へ向けて掻揚げられる。また、メインチャンバー61の内部には、第1回転刃40および第2回転刃50の回転により、上方へ向かう空気流が発生する。この空気流により、メインチャンバー61の下方に位置する根菜の茎葉部が、マルチフィルムの上面に倒れた状態から起立する。そして、起立した茎葉部が、第1回転刃40および第2回転刃50により切断される。
【0036】
すなわち、第1回転刃40および第2回転刃50は、回転により空気流を発生させる役割と、起立した茎葉部を切断する役割と、の2つの役割を果たす。
【0037】
図5のように、第1回転刃40および第2回転刃50の回転により、チャンバー60内には、メインチャンバー61から案内チャンバー62を通って拡散チャンバー63へ向かう空気流が形成される。第1回転刃40および第2回転刃50により切断された茎葉部の細片は、この空気流により、メインチャンバー61から、案内チャンバー62を通って、拡散チャンバー63へ搬送される。そして、拡散チャンバー63内で前後方向に拡散されながら、下方へ落下する。これにより、畝の脇に茎葉部の細片が排出される。
【0038】
以上のように、この茎葉処理装置1を使用すれば、マルチフィルムの上面に倒れた茎葉部を、起立させて効率よく切断することができる。しかも、切断された茎葉部の細片を、その後の収穫作業の妨げとならない畝の脇へ排出することができる。したがって、根菜の収穫作業を効率よく行うことができる。
【0039】
<2.チャンバーの細部の特徴について>
<2-1.案内面について>
図5に示すように、本実施形態の案内チャンバー62は、案内板624を有する。案内板624は、案内チャンバー62の内部の、前部左方の隅部に配置される。すなわち、案内板624は、案内チャンバー62の正面部622の後面の左端部に配置される。本実施形態では、案内チャンバー62を構成する筐体の一部が、案内板624となっている。しかしながら、案内チャンバー62の内側に、別体の案内板624を、ねじ止め等で固定してもよい。案内板624は、例えば金属により形成すればよい。
【0040】
図5のように、本実施形態の案内板624は、平面状である。メインチャンバー61の内側から見ると、案内チャンバー62の前部左方の隅部は、案内板624によって覆われる。ただし、案内板624は、上面視において円弧状の湾曲した板であってもよい。具体的には、案内板624の形状は、上面視において、案内チャンバー62の前部左方の隅部に内接する円の一部であってもよい。
【0041】
第1回転刃40および第2回転刃50は、それぞれ、上面視において時計回りに回転する。このため、メインチャンバー61の内部には、上方へ向かい、かつ、上面視において時計回りに旋回する空気流が発生する。これにより、メインチャンバー61の第1回転刃40および第2回転刃50よりも上方の空間の圧力が、相対的に高圧となる。そして、図5中の矢印のように、メインチャンバー61内の空気が、案内チャンバー62を通って、拡散チャンバー63へ流れる。
【0042】
このとき、メインチャンバー61から案内チャンバー62へ流れ込む空気流の一部は、案内板624に当たって、案内チャンバー62内の右側へ案内される。この案内板624により案内される空気流の向きは、メインチャンバー61内における空気流の旋回の向きに沿う向きである。このため、当該空気流に含まれる茎葉部の細片も、案内板624によって、案内チャンバー62内の右側の空間へ、スムーズに搬送される。これにより、茎葉部の細片が、案内チャンバー62の前部左方の隅部に滞留してしまうことを抑制できる。その結果、メインチャンバー61から案内チャンバー62を通って拡散チャンバー63へ向かう茎葉部の搬送効率を、高めることができる。
【0043】
<2-2.案内チャンバーの傾斜面部について>
案内チャンバー62は、上部を覆う傾斜面部623を有する。傾斜面部623は、上述の通り、右方へ向かうにつれて次第に高くなるように傾斜するとともに、前方へ向かうにつれて次第に低くなるように傾斜している。したがって、案内チャンバー62の正面部622と傾斜面部623とがなす角度は、鈍角となる。このようにすれば、案内チャンバー62の内部の前部上方の隅部に、茎葉部の細片が滞留することを抑制できる。その結果、メインチャンバー61から案内チャンバー62を通って拡散チャンバー63へ向かう茎葉部の搬送効率を、より高めることができる。
【0044】
<2-3.メインチャンバーの後面部について>
本実施形態の茎葉処理装置1では、図5のように、第1回転刃40の回転軌跡と、第2回転刃50の回転軌跡とが、上面視において重複しない。このため、第1回転刃40の回転により生じる旋回流と、第2回転刃50の回転により生じる旋回流とが、互いに衝突することを抑制できる。その結果、メインチャンバー61の内部において、複雑な乱流が生じることを抑制できる。このように、メインチャンバー61内における乱流の発生を抑制すれば、メインチャンバー61から案内チャンバー62へ向かう空気流を、より安定させることができる。したがって、メインチャンバー61から案内チャンバー62へ、茎葉部の細片をより効率よく搬送することができる。
【0045】
また、メインチャンバー61の後面部613は、上面視において、第1回転刃40の回転軌跡に沿う円弧と、第2回転刃50の回転軌跡に沿う円弧とを、含む形状を有する。このようにすれば、メインチャンバー61の後部右方の隅部、後部左方の隅部、および後部中央部に、空気が滞留することを抑制できる。したがって、メインチャンバー61内のそれらの箇所に、茎葉部の細片が滞留することを抑制できる。その結果、メインチャンバー61から案内チャンバー62へ、茎葉部の細片をより効率よく搬送することができる。
【0046】
<2-4.拡散チャンバーについて>
拡散チャンバー63には、空気が通過可能な1つまたは複数の開口が設けられていてもよい。開口は、例えば、拡散チャンバー63の後面に設けるとよい。ただし、拡散チャンバー63の前面、上面、あるいは右側面に、開口が設けられていてもよい。拡散チャンバー63に開口を設ければ、案内チャンバー62から拡散チャンバー63へ流れ込む空気の一部が、開口から外部へ排出される。これにより、メインチャンバー61から案内チャンバー62を通って拡散チャンバー63へ、空気が流れやすくなる。その結果、第1回転刃40および第2回転刃50により切断された茎葉部の細片を、速やかに畝の脇へ排出することができる。
【0047】
ただし、茎葉部の細片や、茎葉部とともに搬送される砂利・小石が、上記の開口から外部へ飛散しないように、開口には、茎葉部の細片および砂利・小石の通過を抑制するための遮断部材を設けることが好ましい。遮断部材は、例えば、開口の上端部から釣り下げた複数の棒状の金属部材とすることができる。茎葉部の細片や砂利・小石は、開口から外部へ飛散することなく、棒状の金属部材に当たって、拡散チャンバー63の下方へ落下する。なお、複数の棒状の金属部材に代えて、金網やパンチングメタルプレートなどを、遮断部材として用いてもよい。
【0048】
また、本実施形態の茎葉処理装置1では、拡散チャンバー63の上面部631が、後方へ向かうにつれて次第に低くなるように傾斜している。このようにすれば、拡散チャンバー63へ搬送された茎葉部の細片が、上面部631に衝突するか、あるいは、上面部631に沿って後方へ搬送されることによって、下方へ移動する。その結果、拡散チャンバー63の下方へ、より効率よく茎葉部の細片を落下させることができる。また、拡散チャンバー63の内部において、茎葉部の細片が前後方向に拡散されるため、畝の脇に沿って茎葉部の細片を満遍なく排出することができる。
【0049】
<3.掻揚げ部について>
根菜の茎葉部は、収穫時期になると、マルチフィルムの上面に沿って倒れる。このとき、畝の左右の両端付近に植え付けられた根菜の茎葉部は、畝の側部の傾斜面に沿って、左右方向の外側へ倒れる場合がある。このように、畝の外側へ向けて倒れた茎葉部には、第1回転刃40および第2回転刃50の回転により生じる吸引力が届きにくい。それゆえ、第1回転刃40および第2回転刃50による吸引力だけでは、茎葉部が起立せず、茎葉部を切断できないことがある。その場合、茎葉処理装置1による処理後に、切断されずに残った茎葉部を、作業者が1つ1つ手作業で切断する必要がある。
【0050】
このような問題を解決するため、この茎葉処理装置1は、一対の掻揚げ部70を備える。一対の掻揚げ部70は、案内チャンバー62よりも前方において、フレーム10の左右両端に設けられている。
【0051】
図2に示すように、掻揚げ部70は、アーム部71と、アーム部71の先端に設けられた回転ブラシ72とを有する。アーム部71の上端部は、フレーム10に対して、前後方向に延びる揺動軸71Aを中心として揺動自在に取り付けられている。回転ブラシ72は、アーム部71の下端に取り付けられている。茎葉処理装置1の使用時には、畝の形状や装置の走行状態に応じて、揺動軸71Aを中心としてアーム部71の角度が変化する。これにより、アーム部71が左右方向に揺動して、畝の側部の傾斜面に回転ブラシ72が追従する。その結果、畝の側部の傾斜面に、回転ブラシ72を適切に接触した状態を保つことができる。ただし、アーム部71は、揺動不能であってもよい。
【0052】
図6は、一対の回転ブラシ72を、後方側から見た図である。回転ブラシ72は、回転部材721と、複数のブラシ部722とを有する。回転部材721は、アーム部71の下端において前後方向に延びる回転軸72Aを中心として回転する。複数のブラシ部722は、回転部材721の外端に取り付けられている。各ブラシ部722は、回転軸72Aに対して略放射状に延びる多数の線材を有する。なお、図4の例では、1つの回転ブラシ72に3つのブラシ部722が設けられているが、ブラシ部722の数は、1~2つであってもよく、4つ以上であってもよい。
【0053】
回転ブラシ72は、プーリやベルト等からなる動力伝達機構を介して、牽引車両2のPTO軸201に接続される。したがって、牽引車両2の駆動源(例えばエンジン)から供給される動力は、PTO軸201および動力伝達機構を介して、回転ブラシ72へ伝達される。これにより、一対の回転ブラシ72が、それぞれ、回転軸72Aを中心として回転する。具体的には、図6のように、右側の回転ブラシ72は、後方側から見て時計回りに回転し、左側の回転ブラシ72は、後方側から見て反時計回りに回転する。
【0054】
茎葉処理装置1の使用時には、この掻揚げ部70のブラシ部722の先端が、畝の脇から畝の上面に向かって、畝の側部の傾斜面に接触しながら上昇移動するように、回転する。これにより、畝の外側へ向けて倒れた茎葉部が、ブラシ部722の先端に保持されて、畝の上面へ掻揚げられる。また、畝の上面に移動した茎葉部は、第1回転刃40および第2回転刃50の回転による吸引力を受けて、上方へ起立する。そして、起立した茎葉部が、第1回転刃40および第2回転刃50により切断される。その結果、畝の外側へ向けて倒れた茎葉部も、良好に切断・除去することができる。
【0055】
また、本実施形態の掻揚げ部70は、回転ブラシ72の高さを調節する高さ調節機構73を有する。高さ調節機構73は、例えば、アーム部71に予め複数の取り付け孔を設けておいて、その複数の取り付け孔のうちの1つに、回転ブラシ72を取り付ける構造とされる。ただし、高さ調節機構73は、アーム部71の異なる高さ位置に、回転ブラシ72をフックで取り付ける構造であってもよい。あるいは、ハンドルを回すことにより、アーム部71に対して回転ブラシ72を高さ方向に移動させる、ネジ送り式または吊り下げ式の構造であってもよい。また、高さ調節機構73に、流体圧力によるシリンダを利用してもよい。畝の高さや形状が異なる場合にも、回転ブラシ72の高さを調節することにより、畝の側部の傾斜面に、回転ブラシ72を適切に接触させることができる。
【0056】
回転ブラシ72のブラシ部722は、回転部材721の全周に植設されていてもよい。ただし、回転部材721の全周にブラシ部722を設けると、掻揚げた茎葉部が、ブラシ部722から離れず、ブラシ部722とともに外側へ付き回りする場合がある。これに対し、図4のように、回転部材721の周囲に、ブラシ部722を周方向に間隔をあけて設ければ、掻揚げた茎葉部を、ブラシ部722から離して、畝の上面に載せやすくなる。
【0057】
また、本実施形態のブラシ部722は、回転ブラシ72に対するブラシ部722の傾きを調節する傾き調節機構74を有する。この傾き調節機構74により、例えば、ブラシ部722を、厳密に半径方向外側向きではなく、やや回転方向の後方側へ傾いた姿勢とすることができる。このようにすれば、掻揚げた茎葉部を、ブラシ部722からより引き離しやすくなる。また、畝の側部の傾斜面に、ブラシ部722の先端が突き刺さりにくくなる。これにより、茎葉部を掻揚げる動作を、より円滑に行うことができる。
【0058】
なお、上述の通り、本実施形態の掻揚げ部70は、PTO軸201から供給される動力を利用して、回転ブラシ72を回転させている。しかしながら、回転ブラシ72をPTO軸201から切り離し、掻揚げ部70に、回転ブラシ72を回転させるための固有のモータを設けてもよい。
【0059】
また、本実施形態の茎葉処理装置1は、回転ブラシ72の上部を覆うガード75を有する。ガード75には、例えば、ゴム板が用いられる。このガード75により、回転ブラシ72による茎葉や砂利・小石の飛散を防止することができる。
【0060】
図7は、一対の掻揚げ部70の他の例を示した図である。図7の掻揚げ部70は、駆動輪761、従動輪762、および無端帯763を有する。
【0061】
駆動輪761は、前後方向に延びる回転軸761Aを中心として、回転可能に支持される。従動輪762は、駆動輪761よりも畝の外側かつ下方の位置において、前後方向に延びる回転軸762Aを中心として、回転可能に支持される。無端帯763は、駆動輪761および従動輪762の外側に巻き掛けられる、環状のベルトである。無端帯763の外周面には、外側ヘ向かって突出する複数の突起部764が設けられている。複数の突起部764は、無端帯763の移動方向に沿って、一定の間隔で設けられている。
【0062】
駆動輪761は、PTO軸201または固有のモータから供給される動力により回転する。駆動輪761が回転すると、従動輪762が従動回転し、駆動輪761および従動輪762に巻き掛けられた無端帯763が回動する。具体的には、図7のように、右側の無端帯763は、後方側から見て時計回りに回動し、左側の無端帯763は、後方側から見て反時計回りに回動する。このとき、複数の突起部764は、畝の脇から畝の上面に向かって、畝の側部の傾斜面に接触しながら上昇移動する。
【0063】
このような構造でも、畝の外側へ向けて倒れた茎葉部を、複数の突起部764によって、畝の上面へ掻揚げることができる。そして、掻揚げられた茎葉を、第1回転刃40および第2回転刃50の空気流により起立させて、切断することができる。したがって、畝の外側へ向けて倒れた茎葉部を、良好に切断・除去することができる。
【0064】
また、茎葉処理装置1は、上記の図6または図7の構造に加えてまたは代えて、畝の側方へ向けて倒れた茎葉部に、エア(空気流)を吹き付けるエア噴射部を備えていてもよい。その場合、エア噴射部は、畝の脇から畝の上面に向かって、畝の側部の傾斜面に沿って、エアを吹き付けるものとすることが好ましい。これにより、畝の側方へ向けて倒れた茎葉部を、畝の上面へ案内しやすくなる。エア噴射部には、例えば、公知のエアノズルを用いることができる。エアノズルは、空気供給配管を介して、茎葉処理装置1または牽引車両2に搭載されたコンプレッサーに接続すればよい。
【0065】
<4.押さえロール部について>
第1回転刃40および第2回転刃50により空気流が発生すると、根菜の茎葉だけではなく、畝を被覆するマルチフィルムにも吸引力が作用する。もし、この吸引力によってマルチフィルムが浮き上がり、第1回転刃40および第2回転刃50によりマルチフィルムが切断されると、後の工程において、マルチフィルムを回収する作業が困難となる。このような問題を解決するため、この茎葉処理装置1は、押さえロール部80を備える。押さえロール部80は、メインチャンバー61の下方に位置する。
【0066】
図8は、押さえロール部80を後方側から見た図である。図8に示すように、押さえロール部80は、円柱状のシャフト81と、シャフト81に外挿された円筒状のロール部材82とを有する。シャフト81は、フレーム10に対して固定されている。シャフト81は、右側の尾輪20の近傍から左側の尾輪20の近傍まで、左右方向に延びる。ロール部材82は、シャフト81の周囲において、左右方向に延びる。ロール部材82は、シャフト81に対して、回転自在となっている。
【0067】
茎葉処理装置1の使用時には、畝を覆うマルチフィルムの上面に、ロール部材82が接触しながら転動する。これにより、マルチフィルムの浮き上がりが抑制される。すなわち、第1回転刃40および第2回転刃50の吸引力で、根菜の茎葉部およびマルチフィルムのうち、根菜の茎葉部のみを、選択的に浮き上がらせて、起立させることができる。したがって、マルチフィルムを切断することなく、根菜の茎葉部のみを切断することができる。
【0068】
特に、本実施形態では、畝の上面に位置するマルチフィルムの、左右方向の全幅に、ロール部材82が接触する。これにより、左右方向の全体において、マルチフィルムの浮き上がりを、良好に防止できる。
【0069】
押さえロール部80は、第1回転刃40の第1回転軸41および第2回転刃50の第2回転軸51よりも、やや後方側に配置されていることが好ましい。そうすれば、根菜の茎葉部が吸引・切断された後に、ロール部材82が通過する。したがって、押さえロール部80により茎葉部の吸引・切断を阻害することなく、マルチフィルムの浮き上がりを抑制できる。
【0070】
また、本実施形態では、ロール部材82の内径が、シャフト81の外径よりも大きい。このため、シャフト81とロール部材82との間には、隙間(いわゆる「あそび」)が存在する。このようにすれば、根菜の食用部分(例えば、鱗茎部、鱗葉部、球根部、根部など)にロール部材82が接触したとしても、その食用部分を過度に押さえ付けない。このため、ロール部材82による食用部分の損傷を抑制できる。また、畝の上面の形状に応じて、ロール部材82の高さ位置を変化させることができる。したがって、ロール部材82でマルチフィルムの上面を押さえつつ、茎葉処理装置1をスムーズに前方へ進行させることができる。
【0071】
なお、フレーム10に対してシャフト81を、上下方向に揺動可能としてもよい。そうすれば、ロール部材82の高さ位置を、より大きく変化させることができる。したがって、ロール部材82でマルチフィルムの上面を押さえつつ、茎葉処理装置1を、よりスムーズに前方へ進行させることができる。
【0072】
本実施形態の茎葉処理装置1は、1つの押さえロール部80を備えているが、茎葉処理装置1が備える押さえロール部80の数は、2つ以上であってもよい。例えば、左右方向に間隔をあけて3つの押さえロール部80が設けられていてもよい。各押さえロール部80のロール部材82は、上記の様な円筒状であってもよく、あるいは、円柱状やタイヤ状であってもよい。ロール部材82の材料は、金属や樹脂などの剛体であってもよく、スポンジなどの弾性体であってもよい。
【0073】
<5.垂下部材について>
第1回転刃40および第2回転刃50により切断された茎葉部の細片の一部は、メインチャンバー61の内側面に付着する。仮に、メインチャンバー61の内側面にこれらの細片が堆積して塊となり、茎葉部の上に落下すると、その茎葉部を空気流で起立させることが困難となる。このような問題を解決するため、この茎葉処理装置1は、垂下部材90を備える。垂下部材90は、メインチャンバー61の内側面に取り付けられる。
【0074】
図9は、メインチャンバー61の内側面における垂下部材90の取付構造を示した図である。垂下部材90は、メインチャンバー61の内側面への茎葉部の付着を抑制するとともに、メインチャンバー61の内側面を保護するための部材である。垂下部材90は、弾性変形可能な材料からなる。具体的には、垂下部材90の材料として、ゴムまたはウレタンを用いることができるが、他の材料であってもよい。
【0075】
垂下部材90は、メインチャンバー61の前後左右の内側面に取り付けられる。垂下部材90の外形は略平板状である。図9に示すように、垂下部材90の上下方向の寸法は、メインチャンバー61の各内側面の上下方向の高さと、略同一である。したがって、メインチャンバー61の各内側面の上下方向の略全体が、垂下部材90に覆われる。ただし、垂下部材90は、その上端縁のみが、スペーサ91を介して、メインチャンバー61の内側面に固定される。例えば、垂下部材90の上端部と、スペーサ91とが、メインチャンバー61の内側面に、ねじ止めされる。垂下部材90の上端部以外の部分は、メインチャンバー61の内側面に固定されることなく、垂れ下がっている。
【0076】
茎葉処理装置1の動作時には、切断された茎葉部の細片の一部が、垂下部材90の表面に接触する。しかしながら、茎葉処理装置1の動作に伴う振動によって、垂下部材90が揺動する。これにより、茎葉部の細片は、垂下部材90の表面に堆積することなく、落下する。それゆえ、茎葉部の細片が、大きな塊となって根菜の茎葉へ落下することはない。したがって、茎葉部の切断を、円滑に行うことができる。
【0077】
また、メインチャンバー61内において茎葉部とともに小石または砂利が飛散したとしても、その小石または砂利は、メインチャンバー61の内側面に直接衝突せず、弾性体である垂下部材90に衝突する。これにより、小石または砂利の衝突音を低減できる。また、メインチャンバー61の内側面が、小石または砂利の衝突によって損傷することを抑制できる。また、もし、小石または砂利がメインチャンバー61の内側面に直接衝突して跳ね返ると、人に当たる可能性があって危険であるが、垂下部材90を設けることによって、そのような小石または砂利の跳ね返りも防止できる。
【0078】
特に、本実施形態の垂下部材90の上端部は、スペーサ91を介して、メインチャンバー61に固定される。このようにすれば、メインチャンバー61の内側面と、垂下部材90との間に、隙間が生じる。これにより、垂下部材90の上端部以外の部分が、より揺動しやすくなる。したがって、垂下部材90の表面に付着した茎葉部の細片が、落下しやすくなる。よって、垂下部材90の表面に茎葉部の細片が堆積して、大きな塊となるおそれをより低減できる。
【0079】
ただし、一部または全部の垂下部材90が、スペーサ91を介することなく、メインチャンバー61の内側面に固定されていてもよい。
【0080】
垂下部材90は、メインチャンバー61の前後左右の内側面の各々において、左右方向または前後方向に連続していることが好ましい。そのようにすれば、切断された茎葉部の細片が、垂下部材90の隙間を通って、メインチャンバー61の内側面に付着するおそれをより低減できる。また、小石または砂利が、メインチャンバー61の内側面に衝突するおそれも、より低減できる。
【0081】
なお、垂下部材90は、メインチャンバー61だけではなく、案内チャンバー62および拡散チャンバー63の内側面にも、設けられていることが好ましい。そのようにすれば、案内チャンバー62および拡散チャンバー63の内側面に、茎葉部の細片が堆積することを抑制できる。また、案内チャンバー62および拡散チャンバー63の内側面を、小石や砂利から保護することができる。その際、案内チャンバー62の正面部622の内側面に配置される垂下部材90は、正面部622の形状に合わせて、右側へ向かうにつれて上端が高くなる形状とすることが好ましい。
【0082】
また、垂下部材90は、各チャンバー61,62,63の内側面の隅部においても、途切れることなく連続的に広がっていることが好ましい。例えば、案内チャンバー62の前部左方の隅部に設けられた案内板624の表面に沿って、垂下部材90が連続的に設けられていることが好ましい。そのようにすれば、特に茎葉部の細片が滞留しやすい隅部において、茎葉部の堆積を抑制できる。
【0083】
<6.カバーについて>
また、図2および図4に示すように、本実施形態の茎葉処理装置1は、チャンバー60の裾から下方へ向けて垂れ下がるカバー100を備えている。カバー100は、平面視において、フレーム10の輪郭に沿って、全周に設けられている。カバー100には、例えば、ゴム板等の弾性部材を用いることができる。上述した垂下部材90と、カバー100とを、同一の材料で形成してもよい。カバー100の上端は、フレーム10またはチャンバー60に固定される。カバー100の下端は、固定されない自由端となる。
【0084】
このようなカバー100を設ければ、チャンバー60の内部において、空気流を、より良好に形成できる。特に、外部からメインチャンバー61の内部へ、横向きに空気が流れ込みにくくなる。このため、第1回転刃40および第2回転刃50を回転させたときに、メインチャンバー61の内部において、上方へ向かう空気流を、より良好に形成できる。その結果、茎葉部を良好に立ち上げて切断することができる。
【0085】
<7.土崩し部材について>
また、図4に示すように、本実施形態の茎葉処理装置1は、一対の土崩し部材110を備えていてもよい。一対の土崩し部材110は、チャンバー60の左右両側に配置される。土崩し部材110は、柱状の直線部111と、直線部111の下端に設けられた作用部112と、を有する。
【0086】
直線部111の上端は、フレーム10に取り付けられる。また、直線部111は、フレーム10に対して、左右方向に延びる軸を中心として揺動可能となっている。作用部112は、直線部111の下端から、左右方向の内側(機体の内側)へ向けて延びる。作用部112は、略水平に配置された板状の外形を有する。
【0087】
茎葉処理装置1の使用時には、土崩し部材110の作用部112が、畝を覆うマルチフィルムに接触しつつ移動する。また、土崩し部材110は、牽引車両2のPTO軸201から供給される動力によって、前後に揺動する。これにより、マルチフィルムの左右の傾斜面に堆積した土が、ほぐされる。すなわち、茎葉処理装置1で根菜の茎葉部を切断・除去する際に、マルチフィルムに堆積した土をほぐす処理も、同時に行う。このようにすれば、後の工程で、マルチフィルムを剥がす作業を容易に行うことができる。その結果、根菜の収穫作業を、より効率よく行うことができる。
【0088】
なお、土崩し部材110を揺動させるための動力は、牽引車両2のPTO軸201に限らず、牽引車両2の車輪から取得してもよい。また、土崩し部材110を揺動させるための固有のモータを設けてもよい。
【0089】
<8.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではない。
【0090】
上記の実施形態では、第1回転刃40と第2回転刃50とが、同等の構造であった。すなわち、第1回転刃40と第2回転刃50とで、刃板の表面積、刃板の数、刃板の傾斜角度、回転数は、全て同一であった。しかしながら、第1回転刃40および第2回転刃50の構造または動作に、差をつけてもよい。例えば、第2回転刃50の回転により発生する空気流が、第1回転刃40の回転により発生する空気流よりも、強くなるようにしてもよい。具体的には、第2回転刃50の刃板52の表面積を、第1回転刃40の刃板42の表面積よりも、大きくしてもよい。また、第2回転刃50の刃板52の数を、第1回転刃40の刃板42の数よりも多くしてもよい。また、第1回転刃40の刃板42の水平面に対する傾斜角度と、第2回転刃50の刃板52の水平面に対する傾斜角度とを、相違させてもよい。あるいは、第2回転刃50の回転数を、第1回転刃40の回転数よりも、大きくしてもよい。回転数の差は、例えば、動力伝達機構に含まれるギヤの歯数に差を設けることによって、実現すればよい。
【0091】
このようにすれば、第2回転刃50の上部空間が、第1回転刃40の上部空間よりも、相対的に高圧となる。このため、メインチャンバー61から案内チャンバー62を経由して、第1回転刃40に近い拡散チャンバー63へ、空気流を円滑に流すことができる。すなわち、拡散チャンバー63から相対的に遠い位置にある第2回転刃50で切断された茎葉部の細片は、第2回転刃50の強い空気流により、案内チャンバー62へ流れる。また、拡散チャンバー63に相対的に近い位置にある第1回転刃40で切断された茎葉部の細片は、第1回転刃40の弱い空気流により、案内チャンバー62へ流れる。これにより、案内チャンバー62から拡散チャンバー63へ、茎葉部の細片を、滞りなく搬送することができる。
【0092】
上記の実施形態の茎葉処理装置1は、トラクタ等の牽引車両2の後方に接続されるものであった。しかしながら、茎葉処理装置1は、牽引車両2の前方に接続されるものであってもよい。
【0093】
上記の実施形態の茎葉処理装置1は、後端部に1対の尾輪20を備えていた。これに加えて、茎葉処理装置1の前端部に、1対の補助輪を設けてもよい。
【0094】
上記の実施形態の茎葉処理装置1では、第1回転刃40および第2回転刃50が、牽引車両2からの動力を受けて回転していた。しかしながら、茎葉処理装置1が、第1回転刃40および第2回転刃50を回転させるための固有の駆動源を有していてもよい。
【0095】
上記の実施形態では、メインチャンバー61の内部に、2つの回転刃40,50が収容されていた。しかしながら、メインチャンバー61の内部に収容される回転刃の数は、1つであってもよく、3つ以上であってもよい。
【0096】
上記の実施形態では、拡散チャンバー63が、メインチャンバー61および案内チャンバー62の右側に配置されていた。しかしながら、拡散チャンバー63は、メインチャンバー61および案内チャンバー62の左側に配置されていてもよい。すなわち、拡散チャンバー63は、メインチャンバー61および案内チャンバー62の右側および左側のいずれか一方に配置されていればよい。切断された茎葉部の細片は、チャンバー60内の流路を通って、畝の右側および左側のいずれか一方に排出されればよい。
【0097】
また、茎葉処理装置1の詳細な構成や各部の形状等については、本願で示した具体例と、相違していてもよい。また、上記の実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。あるいは、上記の実施形態や変形例に登場した要素の一部を、省略してもよい。
【符号の説明】
【0098】
1 茎葉処理装置
2 牽引車両
10 フレーム
20 尾輪
30 動力伝達部
40 第1回転刃
41 第1回転軸
42 刃板
50 第2回転刃
51 第2回転軸
52 刃板
60 チャンバー
61 メインチャンバー
62 案内チャンバー
63 拡散チャンバー
70 掻揚げ部
71 アーム部
72 回転ブラシ
73 高さ調節機構
74 傾き調節機構
75 ガード
80 押さえロール部
81 シャフト
82 ロール部材
90 垂下部材
91 スペーサ
100 カバー
110 土崩し部材
111 直線部
112 作用部
201 PTO軸
624 案内板

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9