(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-24
(45)【発行日】2022-02-01
(54)【発明の名称】モーションセンサを搭載したセンサ装置及び位置推定方法
(51)【国際特許分類】
G01V 8/10 20060101AFI20220125BHJP
G01J 1/02 20060101ALI20220125BHJP
G01V 8/20 20060101ALI20220125BHJP
G08B 25/04 20060101ALN20220125BHJP
G08B 21/02 20060101ALN20220125BHJP
【FI】
G01V8/10 Z
G01J1/02 W
G01V8/20 P
G01V8/20 Q
G08B25/04 K
G08B21/02
(21)【出願番号】P 2019060649
(22)【出願日】2019-03-27
【審査請求日】2020-08-12
(73)【特許権者】
【識別番号】506301140
【氏名又は名称】公立大学法人会津大学
(74)【代理人】
【識別番号】100094525
【氏名又は名称】土井 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100094514
【氏名又は名称】林 恒徳
(72)【発明者】
【氏名】趙 強福
(72)【発明者】
【氏名】奥山 祐市
【審査官】佐野 浩樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-190967(JP,A)
【文献】特開2014-169968(JP,A)
【文献】特開2019-045279(JP,A)
【文献】特開2011-215027(JP,A)
【文献】特開2015-206666(JP,A)
【文献】特開2007-178301(JP,A)
【文献】特表2014-525064(JP,A)
【文献】特開2006-135610(JP,A)
【文献】特開2015-069485(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0285673(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 1/00 - 1/60 、11/00 、
G01V 1/00 -99/00 、
G08B19/00 -31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部屋の天井に取り付けられ且つ天井から下向きの垂直線を軸に先細となるように傾斜する側面を有する立体構造体と、
前記立体構造体の前記側面に取り付けられ且つ検知方向が互いにずれるように配置される複数のモーションセンサとを備え、
前記立体構造体は、n角錐台(nは3以上)または円錐台形状を有し、前記複数のモーションセンサは、前記垂直線の周囲に等間隔にわたって取り付けられたセンサ装置が天井に取り付けられた部屋にいる人の位置推定方法であって、
情報処理装置が、前記センサ装置から各モーションセンサの出力値を受信し、
前記情報処理装置が、
一定期間内に受信する各モーションセンサからのそれぞれ複数の2値出力値に基づいて、各モーションセンサの
検知確率の組み合わせである
実測反応パターンを算出し、
当該実測反応パターンと前記部屋を区分した複数の領域
に対応付けられた複数の基準反応パターンとの類似度を算出し、当該算出した類似度に基づいて、当該複数の領域のうち、前記
実測反応パターンに対応する一つの領域を特定することを特徴とする位置推定方法。
【請求項2】
前記複数のモーションセンサは、焦電型赤外線センサであることを特徴とする請求項
1に記載の
位置推定方法。
【請求項3】
前記立体構造体の内部に、前記複数のモーションセンサを制御する制御基板が配置されることを特徴とする請求項
1または2に記載の
位置推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人の動きなどを検知するモーションセンサを搭載したセンサ装置に関し、特に、遠隔に暮らす高齢者のような見守り対象者の安否確認のための見守りサービスに用いられるセンサ装置及びそれを用いた位置推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢化社会が急速に進み、一人暮らしの高齢者世帯が増加している中、遠隔地に暮らす家族が、当該高齢者の安否を確認する見守りサービスが提供されている。
【0003】
この見守りサービスの一形態として、見守り対象者である高齢者の行動に関する情報を取得する装置を高齢者の住居に設置し、その取得した情報を通信ネットワークを通じて、見守る側である遠隔の家族の端末装置に送信することで、高齢者の安否を確認可能することが知られている。
【0004】
例えば、高齢者の住居にカメラを設置し、撮像された画像データを通信ネットワークを通じて家族の端末に送信し、遠隔の家族に高齢者の行動を通知するサービスがある。
【0005】
また、高齢者の住居に、赤外線により動きを検知するモーションセンサを住居内の各所に配置し、そのセンサ情報を通信ネットワークを通じて遠隔の家族に高齢者の行動を通知するサービスがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2006-135610号公報
【文献】特開2015-069485号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】URLアドレスhttps://www.abaniact.com/anpi/のウェブサイト
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
安否確認のための情報として、カメラ撮影による画像データを用いる場合、画像データから見守り対象者である高齢者が部屋のどこにいるのかすなわち人の位置を特定してその人の行動や様子を直接視認できる利点があるものの、画像データの送信やそのデータ処理に大きな負荷がかかる。また、見守り対象者の行動がすべて見えてしまい、常に監視可能となり、見守る側が家族といえ、カメラによる見守りサービスはプライバシー保護の観点から、見守り対象となる高齢者は違和感を抱く可能性もある。
【0009】
高齢者の動きを検知するモーションセンサのセンサ情報を用いる場合、モーションセンサとして、常温で赤外線を検知する熱型赤外線センサであって、焦電効果を利用して赤外線の量の変化を検出して人の動きを検出する焦電型赤外線センサが用いられる。焦電型赤外線センサであるモーションセンサを利用する場合、例えば高齢者がモーションセンサの前を横切ったり通過した場合に、その高齢者の動作のみが情報として通知され、また、モーションセンサの設置付近での動きのみが検知されるため、高齢者が部屋のどこにいるのかリアルタイムで検知することができず、高齢者の位置や動きを逐一確認することはできない。このため、カメラ撮影による見守りサービスと比較して、プライバシーの保護性は高いが、今度は、見守る側の家族にとって、高齢者の行動や様子を十分に確認しにくい状況となる。
【0010】
本願発明者は、見守りサービスにおける上記の状況に鑑み、見守り対象者のプライバシーをある程度を配慮した上、焦電型赤外線センサを利用して、見守り対象者のより具体的な行動を検知できるシステムの研究開発を進め、本願発明に至った。
【0011】
本発明の目的は、見守り対象者のプライバシーを配慮した上で、人の位置を検知することができるセンサ装置及びそれを用いた位置推定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するための本発明の位置推定方法は、部屋の天井などに取り付けられ且つセンサ装置の底面の中心からの垂直線(天井から下向きの垂直線)を軸に先細となるように傾斜する側面を有する立体構造体と、この立体構造体の側面に取り付けられ且つ検知方向が互いにずれるように配置される複数のモーションセンサとを備え、この立体構造体は、n角錐台(nは3以上)または円錐台形状を有し、複数のモーションセンサは、垂直線の周囲に等間隔にわたって取り付けられたセンサ装置が天井に取り付けられた部屋にいる人の位置推定方法であって、情報処理装置が、このセンサ装置から各モーションセンサの出力値を受信し、この情報処理装置が、一定期間内に受信する各モーションセンサからのそれぞれ複数の2値出力値に基づいて、各モーションセンサの検知確率の組み合わせである実測反応パターンを算出し、この実測反応パターンと部屋を区分した複数の領域に対応付けられた複数の基準反応パターンとの類似度を算出し、当該算出した類似度に基づいて、複数の領域のうち、実測反応パターンに対応する一つの領域を特定することを特徴とする。
【0013】
好ましくは、この複数のモーションセンサは、焦電型赤外線センサである。立体構造体の内部には、複数のモーションセンサを制御する制御手段(制御回路を有する制御基板、マイコンなど)が配置される。
【発明の効果】
【0014】
本発明のセンサ装置及びそれを用いた位置推定方法によれば、カメラの撮像画像ほどに人の位置及び動きを直接検知しないが、部屋にいる人のおおよその位置と動きを連続的にリアルタイムで検知することができ、人の位置を推定することができる。本発明のセンサ装置により、見守り対象者の生活を直接撮影することなく、見守り対象者の位置や動作を検知することができ、見守り対象者のプライバシーに配慮した見守りサービスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施の形態におけるセンサ装置の第一の構成例を示す図である。
【
図2】立体構造体10の側面に取り付けられたモーションセンサ20の検知範囲を示す図である。
【
図3】6つのモーションセンサ20を配置した第一の構成例のセンサ装置における各モーションセンサ20の検知範囲を示す図である。
【
図4】
図3(b)に対応する図であって、各領域の重心座標が示された図である。
【
図5】本発明のセンサ装置を用いた位置推定方法を示すフローチャートである。
【
図6】人の存在する位置を示すモニタ画面の例である。
【
図7】本発明の実施の形態におけるセンサ装置の第二の構成例を示す図である。
【
図8】5つのモーションセンサ20を配置した第二の構成のセンサ装置における各モーションセンサ20の検知範囲を示す図である。
【
図9】本発明の実施の形態におけるセンサ装置の第三の構成例を示す図である。
【
図10】4つのモーションセンサ20を配置した第三の構成のセンサ装置における各モーションセンサ20の検知範囲を示す図である。
【
図11】本発明の実施の形態におけるセンサ装置の第四の構成例を示す図である。
【
図12】3つのモーションセンサ20を配置した第四の構成のセンサ装置における各モーションセンサ20の検知範囲を示す図である。
【
図13】本発明の実施の形態におけるセンサ装置の第五の構成例を示す図である。
【
図14】2つのモーションセンサ20を配置した第五の構成のセンサ装置における各モーションセンサ20の検知範囲を示す図である。
【
図15】2つのモーションセンサ20を配置した第五の構成のセンサ装置を、1つの部屋に2つ配置した場合の各モーションセンサ20の検知範囲を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。しかしながら、かかる実施の形態例が、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0017】
図1は、本発明の実施の形態におけるセンサ装置の第一の構成例を示す図であり、
図1(a)は側面図であり、
図1(b)は正面図を示す。センサ装置1は、例えば、部屋の上方である部屋の天井に取り付けられる上方取付型センサ装置であって、上方から下向きの垂直線を軸に先細となるように傾斜する側面を有する立体構造体10を有し、この立体構造体10の側面に複数のモーションセンサ20が取り付けられ、側面の互いに異なる向きにより、各モーションセンサ20の検知方向は互いにずれる。モーションセンサ20の例としては焦電型赤外線センサがある。焦電型赤外線センサは、焦電効果を利用して物体や人の温度変化を検知するセンサであり、さまざまな種類・特性のセンサ素子から選択することができる。また、センサ装置が取り付けられる部屋は、見守り対象者が日常的に過ごす部屋であって、例えば居間や寝室などである。
【0018】
センサ装置1の立体構造体10は、円盤状の底面(天井に取り付けられた状態において天井に面する面)10aと、底面の中心から下向きの垂直線を軸に先細となるように傾斜する側面10bとを有し、その側面10bの配置形状により、立体構造体10は、円盤状の底面を有するn角錐台(nは3以上)または円錐台形状となる。底面10aの縁部はフランジ状に形成され、例えばねじやボルトなどにより天井に固定される(天井取付の際は、底面10aを上側とし、底面10aが天井に面する面となる)。底面10aに対向する面(天井取付の際は、底面10aの下側で床面と面する面)10cも形成される。底面10aの形状は、円盤状に限らず、側面10bにより形成される錐台の底面形状に合わせた形状や、4角形や6角形など他の形状でもよい。
【0019】
図1に示すセンサ装置1の立体構造体10は、6角錐台形状であり、6つの側面10bそれぞれにモーションセンサ20が取り付けられる。モーションセンサ20は、天井から下向きの垂直線を軸にその周囲に等間隔に配置され、6角錐台形状の場合、6つの側面10bそれぞれに等間隔、すなわち天井面に対して60度間隔の角度で配置され、側面の向きに沿って取り付けられるモーションセンサ20の検知方向も互いに異なるものとなる。また、側面10bの底面に対する傾斜する角度は、好ましくはおよそ30度であり、各モーションセンサ20は、側面10bの傾斜角度に沿って、下向きの垂直線に対して30度傾斜して配置される。勧めとして、底面10aの直径(多角形の場合、頂点間最大距離)は、居住環境と調和するために、10~15cm程度にする。
【0020】
立体構造体10は、例えばプラスチック樹脂成形などの加工成形や、アルミニウムなどの金属を加工することにより製作することができ、その内部は、モーションセンサ20の制御手段(図示せず)を格納する空間がある。底面10aと側面10bとは取り外し可能に組み立てられてもよく、また、底面10と対向する面10c(床側に面する面)も取り外し可能に組み立てられてもよく、立体構造体10の内部の加工が可能である。各側面10bに取り付けられたモーションセンサ20からの配線は、側面10bに設けられた端子(コネクタ)(図示せず)から、立体構造体10の内部に配置された制御基板に接続される。制御基板は、信号処理機能及び通信機能を有するモジュール基板であり、複数のモーションセンサ20からの信号を受信し、信号処理を実行し、有線または無線(例えばWiFi、Bluetooth(登録商標)など)により、また、所定の中継装置などを介して、処理された信号データを所定の情報処理装置(図示せず)に送信する。通信は、例えば情報処理装置は、パーソナルコンピュータ、スマートフォンのような携帯電話機、タブレット装置などのコンピュータ装置であり、センサ装置1からの検知信号に基づいて、所定空間(部屋)内にいる動体(人)の位置を演算により求め、その位置をモニタに表示する。また、電源は、天井裏配線からの給電、情報処理装置との有線接続によるUSB(Universal Serial Bus)給電が可能である。
【0021】
図2は、立体構造体10の側面に取り付けられたモーションセンサ20の検知範囲を示す図である。モーションセンサ20の検知範囲は以下の演算により求められる。
図2において、立体構造体10の側面10bは、底面10a(天井に面する面)に対して下向きに30度傾斜して形成され、よって、モーションセンサ20も天井面に対して下向きに30度傾斜して配置される。一例として、モーションセンサ20の検知角度特性は、仰角angle
上下方向に±41度、方位角angle
左右方向に±47度とする。また、天井に取り付けられた立体構造体10に取り付けられたモーションセンサ20は、床面から高さ3mの位置にあるものとする。
【0022】
図2(a)は鉛直方向の検知範囲を示す図であり、
図2(b)は水平方向の検知範囲を示す図である。モーションセンサ20の床面上の検知範囲は近似的に楕円形状となり、モーションセンサ20の傾斜角度を仰角方向の検知角度より小さくすることにより、その楕円領域内に、高さ3mにある各モーションセンサ20の設置位置(高さ位置)Cを床面に投影した位置を含むように設定される。
【0023】
図2において、モーションセンサ20の傾斜角度angle
センサ=30度、仰角angle
上下=±41度、方位角angle
左右=±47度、モーションセンサ20の床面からの高さh=3mとし、検知範囲の楕円の短径aについて、2a=A+B(センサ装置1の中心を基準として、Aはモーションセンサ20の後方感知距離、Bはモーションセンサ20の前方感知距離である)とすると、
長さA=h×tan(angle
上下-angle
センサ)、
長さB=h×tan(angle
上下+angle
センサ)
と表すことができ、
楕円の短径a=(A+B)/2=4.65mと求められる。
【0024】
また、モーションセンサ20の設置位置Cから床面上の楕円の中心点Pまでの距離Dは、
D=√((a-A)2+h2)=5.42m
となり、
楕円の長径b=D×tan(angle左右)=5.42m
と求めることができる。
【0025】
図3は、6つのモーションセンサ20を配置した第一の構成例のセンサ装置における各モーションセンサ20の検知範囲を示す図である。
図3(a)は、6つのモーションセンサそれぞれの楕円形状の検知範囲を示し(座標値の単位:メートル)、
図3(b)は、4m×4mの部屋の天井に、センサ装置1を取り付けた場合の検知範囲を示し、
図3(a)の中心付近の四角領域の拡大図である。
図3から明らかなように、6つのモーションセンサ20を配置することにより、部屋を19の領域に分割し、人の位置をその領域ごとに検知することができる。6つのモーションセンサ20による人の位置の検知手法について、以下に説明する。
【0026】
図4は、4m×4mの部屋の天井に、センサ装置1を取り付けた場合の検知範囲を示す
図3(b)に対応する図であって、各領域の重心座標が示されている。また、6つのモーションセンサ20に例えば1-6までの丸囲み数字を付して識別させ、各モーションセンサ20の検知範囲に対応する曲線(円弧)の両端に、対応する番号を付している。
【0027】
例えば、重心座標a付近に人がいる場合、重心座標aを検知範囲に含むモーションセンサ20は、1、2及び6番のモーションセンサ20であるので、これらのモーションセンサ20が検知信号「1」を出力することになり、これら以外(3、4、5番)のモーションセンサ20は、検知信号「0」を出力する。1番のモーションセンサ20から順に、検知信号の出力値を並べた組み合わせパターンである反応パターンにより、部屋を複数の領域に区分けされ、この例の場合、反応パターン(1、1、0、0、0、1)により一つの領域が特定される。
【0028】
このように、各モーションセンサ20の検知信号の出力値の組み合わせである反応パターンにより、人が存在する領域を特定することができる。
【0029】
センサ装置1からの検知信号を受信する情報処理装置(コンピュータ装置)は、検知信号の出力値に基づいて、人が存在する領域を特定する演算処理、さらには、さまざまな推定演算アルゴリズムを用いて人が存在する位置を推定する演算処理を実行し、求められた人の存在する領域を情報処理装置のモニタ画面に表示することができる。
【0030】
図5は、本発明のセンサ装置を用いた位置推定方法を示すフローチャートである。本方法の処理は、センサ装置1の各モーションセンサ20から検知信号を受信する情報処理装置(コンピュータ装置)により実行される。
【0031】
情報処理装置(コンピュータ装置)は、センサ装置1の各モーションセンサ20から検知信号を受信し、取得する(S100)。
【0032】
情報処理装置は、一定期間(例えば1秒)に受信する複数の検知信号の出力値から、検知信号の出力値が「1」となる割合である反応強度を算出する(S102)。モーションセンサ20の実際の反応は、人(動体)の動きを検知したとき検知信号「1」を出力する確率は高いが、必ず「1」を出力するとは限らないため、一定期間内の複数の検知信号を用いて反応強度を算出することが好ましい。複数の検知信号の出力値が全て「1」である場合は、反応強度は「1」となり、半分の出力値が「1」である場合は「0.5」となる。
【0033】
情報処理装置は、各モーションセンサの反応強度を算出することにより、各モーションセンサの反応強度の組み合わせである実測における反応パターンを求めることができる。
【0034】
上述の例において、反応パターン(1、1、0、0、0、1)は、モーションセンサ20が人(動体)の動きを検知したとき100%の確率で検知信号「1」を出力する理想状態の反応パターンであり、基準の反応パターンである。この基準の反応パターンに対して、理想的な出力値「1」、「0」である場合に、それぞれ複数回の出力値のうち8割、2割が「1」となる場合、実測の反応パターンは、(0.8、0.8、0.2、0.2、0.2、0.8)となる。
【0035】
情報処理装置は、実測の反応パターンと、各領域における基準の反応パターンとの類似度を演算する(S103)。類似度は機械学習を用いて求めることができる。上述の第一の構成例のセンサ装置1では、部屋を19の領域に区分されるので、実測の反応パターンと、19領域それぞれの基準の反応パターンとの類似度が算出される。類似度は[0,1]の中の値となり、i番目の領域に対する類似度siは、s1、s2、・・・、s19と表され、人の推定位置(px、py)は、以下の式により算出することができる。
【0036】
【0037】
ただし、(ri,x、ri,y)は、i番目の領域の重心座標であり、センサ装置のパラメータ(センサの数、仰角、方位角など)と取り付ける環境パラメータ(天井の高さ、部屋奥行と幅の寸法など)に基づいて事前に算出される。 情報処理装置は、上式により人の推定位置を算出し(S104)、その推定位置をモニタ画面に表示する。
【0038】
図6は、人の存在する位置を示すモニタ画面の例であり、画面中央下側の丸領域Aが、演算処理により求められた見守り対象の人が存在する位置を示す。
【0039】
本願発明のセンサ装置を見守りサービスのセンサ装置として利用する場合、住居の部屋の上方(例えば天井)にセンサ装置を設置することで、その設置された部屋内にいる人のおおよその位置と動きを検知することができる。人の部屋内の移動を連続的に検知できるので、人の活動状況もおおよそ知ることができる。カメラでの撮影画像のように、人の具体的な動作がすべて見えてしまうものではなく、プライバシ-に配慮されたものとなる。また、部屋内に置かれたセンサ装置の前を通過したときのみ、その動作を検知するような構成と比較しても、局所的な動きを断片的に検知するのではなく、部屋全体における人の位置及び動きを連続的にリアルタイムで検知することができ、見守り対象者のプライバシーを保護しつつ、見守り対象の位置と動きに関する十分な情報を見守る側に提供することができる。
【0040】
図7は、本発明の実施の形態におけるセンサ装置の第二の構成例を示す図であり、
図7(a)は側面図であり、
図7(b)は正面図を示す。第二の構成例のセンサ装置は、第一の構成例と比較して、立体構造体10に5つのモーションセンサ20が取り付けられており、立体構造体10は、五角錐台形状であり、その5つの側面それぞれにモーションセンサ20が取り付けられる。
【0041】
図8は、5つのモーションセンサ20を配置した第二の構成のセンサ装置における各モーションセンサ20の検知範囲を示す図である。
図8(a)は、5つのモーションセンサそれぞれの検知範囲を示し(座標値の単位:メートル)、
図8(b)は、4m×4mの部屋の天井に、センサ装置1を取り付けた場合の検知範囲を示し、
図8(a)の中心付近の四角領域の拡大図である。
図8から明らかなように、5つのモーションセンサ20を配置することにより、部屋を16の領域に分割し、第一の構成例と同様に、部屋にいる人の位置及び動きをその領域ごとに検知することができる。
【0042】
図9は、本発明の実施の形態におけるセンサ装置の第三の構成例を示す図であり、
図9(a)は側面図であり、
図9(b)は正面図を示す。第三の構成例は、第一の構成例と比較して、立体構造体10に4つのモーションセンサ20が取り付けられており、立体構造体10は、四角錐台形状であり、その4つの側面それぞれにモーションセンサ20が取り付けられる。
【0043】
図10は、4つのモーションセンサ20を配置した第三の構成のセンサ装置における各モーションセンサ20の検知範囲を示す図である。
図10(a)は、4つのモーションセンサそれぞれの検知範囲を示し(座標値の単位:メートル)、
図10(b)は、4m×4mの部屋の天井に、センサ装置1を取り付けた場合の検知範囲を示し、
図10(a)の中心付近の四角領域の拡大図である。
図10から明らかなように、4つのモーションセンサ20を配置することにより、部屋を9の領域に分割し、第一の構成例と同様に、人の位置及び動きをその領域ごとに検知することができる。
【0044】
図11は、本発明の実施の形態におけるセンサ装置の第四の構成例を示す図であり、
図11(a)は側面図であり、
図11(b)は正面図を示す。第四の構成例は、第一の構成例と比較して、立体構造体10に3つのモーションセンサ20が取り付けられており、立体構造体10は、三角錐台形状であり、その3つの側面それぞれにモーションセンサ20が取り付けられる。
【0045】
図12は、3つのモーションセンサ20を配置した第四の構成のセンサ装置における各モーションセンサ20の検知範囲を示す図である。
図12(a)は、3つのモーションセンサそれぞれの検知範囲を示し(座標値の単位:メートル)、
図12(b)は、4m×4mの部屋の天井に、センサ装置1を取り付けた場合の検知範囲を示し、
図12(a)の中心付近の四角領域の拡大図である。
図12から明らかなように、3つのモーションセンサ20を配置することにより、部屋を7の領域に分割し、第一の構成例と同様に、人の位置及び動きをその領域ごとに検知することができる。
【0046】
図13は、本発明の実施の形態におけるセンサ装置の第五の構成例を示す図であり、
図13(a)は側面図であり、
図13(b)は正面図を示す。第五の構成例は、第一の構成例と比較して、立体構造体10に2つのモーションセンサ20が取り付けられており、立体構造体10は、四角錐台形状であり、その対向する2つの側面それぞれにモーションセンサ20が取り付けられる。
【0047】
図14は、2つのモーションセンサ20を配置した第五の構成のセンサ装置における各モーションセンサ20の検知範囲を示す図である。
図14(a)は、2つのモーションセンサそれぞれの検知範囲を示し(座標値の単位:メートル)、
図14(b)は、4m×4mの部屋の天井に、センサ装置1を取り付けた場合の検知範囲を示し、
図14(a)の中心付近の四角領域の拡大図である。
図14から明らかなように、2つのモーションセンサ20を配置することにより、部屋を3の領域に分割し、第一の構成例と同様に、人の位置及び動きをその領域ごとに検知することができる。
【0048】
また、1つの部屋に1つのセンサ装置に限らず、例えば2つのセンサ装置を取り付けるようにしてよい。
【0049】
図15は、2つのモーションセンサ20を配置した
図14の第五の構成のセンサ装置を、部屋の中心からずれた互いに対称の位置に2つ配置した場合の2つのセンサ装置それぞれの各モーションセンサ20の検知範囲を示す図である。
図15(a)は、2つのセンサ装置それぞれの2つのモーションセンサそれぞれの検知範囲を示し、
図15(b)は、4m×4mの部屋の天井に、2つのセンサ装置を取り付けた場合の検知範囲を示し、
図15(a)の中心付近の四角領域の拡大図である。2つのセンサ装置を配置することにより、一つの部屋をより細かい領域に分割することができ、1つのセンサ装置に搭載されるモーションセンサの数が比較的少ない場合であっても、人の位置及び動きの検知解像度を向上させることができる。
【0050】
上述した第一乃至第四の構成のセンサ装置を一つの部屋に2つ配置した場合も、モーションセンサの数に応じて、上記同様に検知範囲をより細かい領域に分割し、検知解像度を向上させることができる。
【0051】
本発明は、前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の分野における通常の知識を有する者であれば想到し得る各種変形、修正を含む要旨を逸脱しない範囲の設計変更があっても、本発明に含まれることは勿論である。例えば、焦電センサではなく、煙センサ、サーモパイルセンサ、或いは異種類センサの組み合わせなどは本発明から容易に想到できると考えられる。また、見守り対象者は、高齢者に限らず、年齢を問わないことは言うまでもない。さらに、見守りサービスは防犯を目的とするもの含む。
【符号の説明】
【0052】
1:センサ装置、10:立体構造体、10a:底面、10b:側面、10c:底面に対向する面、20:モーションセンサ(焦電型赤外線センサ)