(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-24
(45)【発行日】2022-02-01
(54)【発明の名称】液体粘度算定システム並びに液体製品製造装置
(51)【国際特許分類】
G01N 11/08 20060101AFI20220125BHJP
【FI】
G01N11/08
(21)【出願番号】P 2020135649
(22)【出願日】2020-08-11
【審査請求日】2021-08-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390029090
【氏名又は名称】靜甲株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117190
【氏名又は名称】前野 房枝
(72)【発明者】
【氏名】小椋 勝仁
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-074887(JP,A)
【文献】実開平02-026711(JP,U)
【文献】特開平05-034256(JP,A)
【文献】特開2005-144358(JP,A)
【文献】特開平09-304133(JP,A)
【文献】実開平02-024364(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2017/0274667(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を貯留するタンクに上下流端を接続させて前記液体が循環可能に配接された循環配管と、
サーボモータの駆動によって前記循環配管内に送液可能な送液手段としての直動の1軸ピストンポンプと、
前記循環配管内に一定長に亘って形成された測定流域において上下流方向に離間させて配設され、前記測定流域を流れる前記液体の圧力を測定する2つの圧力測定手段と、
前記2つの圧力測定手段から得た圧力損失と前記循環配管を送液される液体の流量とに基づいて前記液体の粘度を算定する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記サーボモータの駆動を制御し、前記液体の粘度の算定中において、前記液体の流量を複数段階に調整することを特徴とする液体粘度算定システム。
【請求項2】
タンク内において、液体の粘度が調整される少なくとも1つの製造手段を用いた製造工程を実行して液体製品を製造する液体製品製造装置であって、
前記タンクに上下流端を接続させて前記液体が循環可能に配接された循環配管と、
サーボモータの駆動によって前記循環配管内に送液可能な送液手段としての直動の1軸ピストンポンプと、
前記循環配管内に一定長に亘って形成された測定流域において上下流方向に離間させて配設され、前記測定流域を流れる前記液体の圧力を測定する2つの圧力測定手段と、
前記2つの圧力測定手段から得た圧力損失と前記循環配管を送液される液体の流量とに基づいて前記液体の粘度を算定する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記サーボモータの駆動を制御し、前記製造工程中においては常に送液するとともに、前記液体の粘度の算定中においては、前記液体の流量を複数段階に調整することを特徴とする液体製品製造装置。
【請求項3】
前記測定流域における前記液体の流量を測定する流量測定手段を備えることを特徴とする
請求項2に記載の
液体製品製造装置。
【請求項4】
前記粘度が調整される少なくとも1つの製造手段は、前記粘度の算定結果に基づき、駆動が自動制御されることを特徴とする
請求項2または請求項3に記載の液体製品製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造加工中の液体の粘度を自動で算定することができる液体粘度測定システムとそれを用いた液体製品製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食品、医薬品、化粧品などの液体製品の製造工程において、その製品の粘度特性は製品の品質を定める重大なファクターとなる(特許文献1参照)。それ故、従来、製造者は、タンクなどから液体サンプルを抽出分離し、粘度測定器に入れ、オフラインで測定しながら、所望の粘度で製品を仕上げるようにしている(特許文献2)。
【0003】
ここで、様々な粘度性質(粘性)の液体の例としては、例えば、ニュートン流体(例:水)、非ニュートン流体としては疑塑性流体(例:シャンプー液、リンス液)、ビンガム流体(例:マヨネーズ、ケチャップ)、ダイラタント流体(例:片栗粉と水の混合物)を例示することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-139194号公報
【文献】特開平6-219920号公報(段落0032)
【文献】特開2020-16604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
抽出分離した液体サンプルの粘度の測定は、比較的小型で特別の設備も必要とせず、安価であることから、回転粘度計を用いて行なうことが多い。しかしながら、この回転粘度計を用いる方法は、静的な少量の液体サンプルに対して決まった変化(一定の振動、せん断など)を与えて測定するするものであるため、製造下でのリアルタイムの液体の性質を正しく把握することにならない。
【0006】
また、その粘度の計測作業はバッチ作業となり、作業者の人手を要し、効率が悪く、管理も困難であった。
【0007】
そして、ドレッシングやソースのような、固形物(具材)が含まれる液体も、測定子との接触などを原因として、安定した測定ができない事象も散見されている。
【0008】
本願の出願人は、上記の特許文献3に示す充填装置に関する明細書中において、充填装置の駆動中に粘度測定手段を用いて液体の粘度を自動測定し、その測定結果に基いて充填条件を調整変更可能とする発明を開示している。この粘度測定手段はタンクから充填ノズルへ向かう液体の配管途中に設けられており、あらかじめ流量が調整されて供給される液体の粘度を測定するものであるので、この粘度測定手段を単に取り出したところで、貯留状態の液体に対して実行される製造工程等においてその液体の粘度を測定することはできない。
【0009】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、リアルタイムに、効率よく、自動で、安定して液体の粘性を算定することができる液体粘度算定システムと、そのシステムを用いて品質の安定した液体製品を製造することができる液体製品製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述した目的を達成するため、本願発明の粘度算定システムは、液体を貯留するタンクに上下流端を接続させて前記液体が循環可能に配接された循環配管と、サーボモータの駆動によって前記循環配管内に送液可能な送液手段としての直動の1軸ピストンポンプと、前記循環配管内に一定長に亘って形成された測定流域において上下流方向に離間させて配設され、前記測定流域を流れる前記液体の圧力を測定する2つの圧力測定手段と、前記2つの圧力測定手段から得た圧力損失と前記循環配管を送液される液体の流量とに基づいて前記液体の粘度を算定する制御部と、を備え、前記制御部は、前記サーボモータの駆動を制御し、前記液体の粘度の算定中において、前記液体の流量を複数段階に調整することを特徴とする。
【0011】
この液体粘度算定システムによれば、液体サンプルを分離抽出する手間も無く、外部の粘度計を用いずに、インラインで、リアルタイムの液体の粘度を算定できる。なお、算定結果の粘度は、例えば、外部の表示手段に表示することで、ユーザーは粘度を知ることが出来る。
【0015】
本願発明の液体製品製造装置は、タンク内において、液体の粘度が調整される少なくとも1つの製造手段を用いた製造工程を実行して液体製品を製造する液体製品製造装置であって、前記タンクに上下流端を接続させて前記液体が循環可能に配接された循環配管と、サーボモータの駆動によって前記循環配管内に送液可能な送液手段としての直動の1軸ピストンポンプと、前記循環配管内に一定長に亘って形成された測定流域において上下流方向に離間させて配設され、前記測定流域を流れる前記液体の圧力を測定する2つの圧力測定手段と、前記2つの圧力測定手段から得た圧力損失と前記循環配管を送液される液体の流量とに基づいて前記液体の粘度を算定する制御部と、を備え、前記制御部は、前記サーボモータの駆動を制御し、前記製造工程中においては常に送液するとともに、前記液体の粘度の算定中においては、前記液体の流量を複数段階に調整することを特徴とする。
【0016】
この液体製品製造装置によれば、外部の粘度計を用いずに、インラインで、動作環境におけるリアルタイムな液体の粘度を算定し、この粘度に基づいて、ユーザーは手動あるいは自動で液体の製造加工の工程を実行し、粘度の調整を行ない、簡便に所望の粘度の液体製品を得ることが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
このように、本発明の液体粘度算定システムによれば、リアルタイムに、効率よく、自動で、固形物(具材)が含まれる液体であっても安定して液体の粘性を算定することができ、そのシステムを用いた液体製品製造装置によれば簡便に品質の安定した液体製品を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の液体粘度算定システムの一実施形態を示す説明図
【
図2】1軸ピストンポンプのピストン運動と送液量の関係を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0021】
まず、本発明に係る液体粘度算定システム1の一実施形態について、その液体粘度算定システム1を搭載した液体製品製造装置10と併せて説明する。
【0022】
図1に示す、本実施形態の液体粘度算定システム1を搭載する液体製品製造装置10は、製造加工されることにより製品となる液体を貯留するタンク2を備えている。液体製品製造装置10は、このタンク2には、貯留された液体に対して、さらに液体、粉体あるいは固体の材料を投入したり、それらを攪拌したり、加熱または冷却を施すなど、液体製品の製造加工の少なくとも一工程を実行可能な製造手段11が配設されている。また、タンク2の底部には、取出配管12の上流端が接続されており、取出配管12の中間部に配設された流路開閉手段3としての第1バルブ3aの開閉によってタンク2内の液体を取出配管12の下流端からタンク2の外に排出可能とされている。
【0023】
ここで、タンク2は、液体粘度算定システム1をも構成する。本実施形態の液体粘度算定システム1は、タンク2内の液体をタンク2の外で引き回した後、再びタンク2内へ戻すように循環させる循環配管4を備えている。
【0024】
本実施形態において、循環配管4はその上流端を取出配管12の上流端を共有して構成され、タンク2の底部に接続させており、その下流端は、タンク2内の液面を覆う天井部に連結され、循環する液体を上方からタンク2内へ吐出して戻すように構成されており、本実施形態においては、循環配管4の途中に配設された流路開閉手段3としての第2バルブ3bおよび第3バルブ3cの開閉によってタンク2内の液体を通液させるように構成されている。なお、流路開閉手段3としての第1バルブ3a、第2バルブ3b、第3バルブ3cは電磁制御可能な電磁バルブとし、後述の制御部8により開閉制御されるものとする。
【0025】
また、液体粘度算定システム1は、液体を循環配管4内の流路に送液させる送液手段5を備えている。送液手段5としては、具体的には圧送タンクやポンプなどを例示できるが、ポンプを使用することで、循環配管4内に制御した流量を作りだすことが出来る。ポンプは脈動が少ないことが重要であり、モーノポンプ、サインポンプなどが望ましい。
【0026】
本実施形態においては、循環配管4に連通するシリンダと、当該シリンダ内を駆動源の駆動により往復摺動可能とされたピストン(いずれも不図示)を備える1軸ピストンポンプ(ボールネジなどを用いて駆動源としてのモータの回転運動を直線運動に変更してピストン動作させる構造)5aを循環配管4に配設して送液手段5として用い、循環配管4内において一定長に亘る層流域が形成されるべく、連続的な駆動となるように制御する。本実施形態のように、1軸ピストンポンプ5aを用いた場合、サーボモータなどの制御性のよい駆動源を使用することで、ピストンの移動速度を一定に保ち、これにより供給する流量を脈動無く一定に保つことが可能となる。
【0027】
なお、1軸ピストンポンプ5aの場合、吸引、吐出の2工程を繰り返すことになる。このため液体の取出配管12への供給が間欠になってしまう。この場合は1軸ピストンポンプを複数台連動して動作タイミングを変えて運用すること(各ポンプの吐出、吸引タイミングを変える)で、ある程度連続的に測定を行なうことが可能となる。また、必要に応じて送液手段5から供給する流量を変えることにより、取出配管12内の流速を変化させ、せん断速度を変化させ、せん断速度に依存した粘度変化を測定することも可能となる。
【0028】
なお、1軸ピストンポンプ5aが吸引、吐出の2工程を繰り返すことに伴い、本実施形態においては、第2バルブ3bを1軸ピストンポンプ5aの上流側に配置し、第3バルブ3cを1軸ピストンポンプ5aの下流側に配置して、後述のようにバルブの開閉を制御する必要がある。
【0029】
循環配管4の一部領域は該循環配管4内を流れる液体の圧力と流量を測定するための測定流路4aとされている。この測定流路4aには、測定流路4a内の液体の圧力を測定する圧力測定手段6として、上下流方向に一定寸法Lを離間させて、第1圧力センサー6aと第2圧力センサー6bが配設されている。
図1には、第1圧力センサー6aと第2圧力センサー6bは直管の循環配管4が水平配置されている測定流路4a内に設けられている。このように、水平配置された測定流路4aにおいて圧力損失を求めることにより、液体の粘度をより簡便に算出することが可能となる。
【0030】
なお、水平面に対し傾斜、直立した配管部分(水平以外の配管部分)を測定流路4aとして同様に粘度を検出することも可能であるが、その場合には、第1圧力センサー6aと第2圧力センサー6b間の循環配管4内に存在する液体の重量が測定圧力に影響を及ぼすため、この重量による圧力加算値を補正することにより粘度を算出すればよい。
【0031】
測定流路4aは直管状であることが、循環配管4との直接的な損失のみが圧力損失として現れるため望ましい。曲げ配管を用いる場合には、曲げによる損失を考慮する必要がある。また、配管自体は滑らかな円管であることが望ましいが、異型や凸凹などがある配管であっても、この損失を加味すれば使用は可能である。
【0032】
さらに、循環配管4には、循環配管4内を流れる前記液体の流量を測定する流量測定手段7としての流量センサー7aを備えている。流量センサー7aは第1圧カセンサー6aの上流または第2圧カセンサー6bの下流側に設けることが、測定流路4a内に圧損に影響を与えないため望ましいが、測定流路4aの圧損に影響を与えない超音波式などの流量センサー7aであれば第1圧力センサー6aと第2圧力センサー6b間に設けても構わない。
【0033】
なお、本実施形態のように、送液手段5として1軸ピストンポンプ5aを用いる場合、ピストンの押し出し量から流量を正確に計算することが可能となるため、流量センサー7aを省略することが可能となるメリットがある。ただし、圧縮性があるなど特殊な液体の場合は流量センサー7aを用いることが望ましい。また、流量センサー7aを省略する場合には、液体の流量はポンプ5aなどの送液手段5の流量の設定値に基づくこととなる。
【0034】
また、1軸ピストンポンプ5aを用いた場合でも、ピストン移動の加減速時や、加速直後などは流量に脈動が発生する。そこで、本実施形態の場合には、流量が最も安定しているピストン移動速度の減速の直前における測定値を用いることで安定した測定を行なう。なお、
図2には、1軸ピストンポンプ5aにおいてピストンの移動速度が一定になる時間域を示す。
【0035】
そして、液体粘度算定システム1は、液体が送液される循環配管4内における第1圧力センサー6aと第2圧力センサー6bから得た圧力損失と、循環配管4を送液される液体の流量、さらに循環配管4の配管径を考慮して前記液体の粘度を算定する制御部8を備えている。
【0036】
前述のように、ポンプ5aとして1軸ピストンポンプ5aを用いる場合には、収納されたピストンの移動速度が一定となる時間域、具体的には、ピストン移動速度の減速の直前時間における、第1圧力センサー6aと第2圧力センサー6bから得た圧力(圧力損失)や循環配管4に設けた流量センサー7aから得た前記液体の流量、さらには配管径に基づいて前記液体の粘度を算定する。
【0037】
ここで、算定対象の液体の粘度によっては、循環配管4の配管径を変更して圧損が明確に発生するようにする必要がある。従って、循環配管4は算定対象液によって容易に交換でき、配管径を変更できる構造となっていることが望ましい。
【0038】
また、制御部8は、予め設定される駆動条件、液体の適正粘度域などを記憶する記憶部(不図示)を備えるとともに、1軸ピストンポンプ5aのモータなどの駆動部の他、第1バルブ3a、第2バルブ3b、第3バルブ3c、第1圧力センサー6a、第2圧力センサー6bの駆動動作を制御可能とされている。さらに、本実施形態においては、液体製品の製造加工の少なくとも一工程を実行可能な製造手段11の駆動部の駆動動作も制御可能とされている。
【0039】
そして、本実施形態の液体粘度算定システム1は、液体製品製造装置10の駆動条件等を設定し、駆動条件や駆動状況を確認するための入出力手段(不図示)を有している。
【0040】
以下、前述の構成の液体粘度算定システム1を搭載する液体製品製造装置10において、液体粘度算定システム1により液体の粘度を算定しつつ、液体製品を製造する方法を説明する。
【0041】
タンク2には液体製品の製造途中の液体が貯留された状態において、まずは第1バルブ3aを閉じて排液の経路を塞ぐ。そしてこの状態において、第2バルブ3bを開いて液体の循環経路を確保する。次に、1軸ピストンポンプ5aを駆動させるとともに、そのピストンの往復運動に合わせて第2バルブ3bと第3バルブ3cとを交互に開閉して循環配管4内に液体を送液させる。具体的には、1軸ピストンポンプ5aに上流側から液体を吸引する際には第2バルブ3bを開いて第3バルブ3cを閉じ、1軸ピストンポンプ5aから下流側へ液体を吐出する際には第2バルブ3bを閉じて第3バルブ3cを開く。
【0042】
そして、液体粘度算定システム1においては、この循環配管4の測定流域4aで液体の粘度を測定する。本実施形態においては、制御部8は、1軸ピストンポンプ5aのピストンの移動速度が一定になっているときに脈動を抑えて測定流域4aに送液されている液体について、第1圧力センサー6aと第2圧力センサー6bとでそれぞれ圧力の測定を行うように制御する。また、この所定時間内に流量センサー7aで液体の流量の測定を行うように制御する。
【0043】
そして、制御部8は、1軸ピストンポンプ5aに収納されたピストンの移動速度が一定となる時間域における、第1圧力センサー6aと第2圧力センサー6bから得た圧力損失と循環配管4に設けた流量センサー7aから得た液体の流量、そして、循環配管4の内径に基づいて、以下のように液体の粘度を算定する。
【0044】
第1圧力センサー6aと第2圧力センサー6b間の距離をL、循環配管4の内径φをdとした場合、循環配管4内の流速Vは、流量センサ―7aが測定する液体の流量と、循環配管4の内径dにより計算ができる。なお、P1、P2はそれぞれ第1圧力センサー6a、第2圧力センサー6bで検出した圧力である。
液体の粘度をμとすると、ハーゲン・ポアズイユの法則より、
P1-P2 = 32μLV / d2 (式1)
が成り立ち、
粘度μ = (P1-P2)d2 / 32LV (式2)
を算定することができる。なお、液種や計測環境などを考慮し、場合によって、正確な粘度を算定するための補正を行なう。
【0045】
このようにして得られた液体の粘度はユーザーが目視確認できるように入出力手段に出力(表示)させたり、あるいは、入出力手段から無線等の通信手段(不図示)を用いて粘度の情報を外部へ出力するようにする。
【0046】
測定した液体の粘度は、製造工程における作業遂行の指標となる。たとえば、液体の粘度が規定の値となっていない場合、必要な製造手段11、例えば、指定量の材料をタンク2内へ投入可能な装置やタンク2内の液体を加熱したり冷却したりするための装置、または、タンク2内に投入された材料を撹拌する装置などを用い、材料の追加投入、加熱、冷却、攪拌などの必要な製造加工の工程を遂行することができる。
【0047】
本実施形態の液体製品製造装置10においては、制御部8は、粘度計測システム1を製造ラインの管理制御装置として取り込むべく、液体製品の製造加工の少なくとも一工程を実行可能な前述の各種装置のような製造手段11の駆動をも制御可能に構成しているので、制御部8から粘度算定結果の出力を行なうことで、製造手段11の駆動制御も可能となり、液体の製造ラインの管理が容易になる。
【0048】
なお、本実施形態の液体製品製造装置10においては、粘度の算定に供した液体は、循環配管4の下流側を流れてタンク2へ戻る。1軸ピストンポンプ5aは液体の粘度を測定しようとしたときだけでなく、製造工程が稼働中は連続的に動作させ続ける。循環配管4内の液体はタンク2の液体と常に入れ替わり、循環配管4(測定流路4a)内の液体とタンク2内の液体は同様のものになる。これにより、タンク2内の液体の粘度をリアルタイムに測定し続けることが可能となる。
【0049】
そして、所望の粘度に調整された液体をタンク2から回収する際は、液体粘度算定システム1の駆動を停止するとともに、第2バルブ3bを閉じて液体の循環経路を塞ぎ、第1バルブ3aを開いて液体を取出配管12から回収する。
【0050】
このように、液体粘度算定システム11の駆動中(インライン)において液体の粘度を測定することが可能であれば、液体サンプルの採取も不要であり、製造加工下での液体の粘度を液体サンプルから粘度を測定する従来の方法よりも確実、かつ、簡便に把握することができる。
【0051】
固形物が混ざっているドレッシングなど、製造加工の工程によって粘度が変化する可能性がある液体であっても、常時その粘度を監視することで、製造加工の工程のタイミングを計ったり、各種条件を変更することも可能となる。
【0052】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施できる。
【0053】
例えば、前述の実施形態においては、ポンプを連続的に動作させたが、ポンプを断続的に動作させる場合には、液の粘度を測定したい状態になったとき、タンク2内の液体と測定流路4a内の液体が十分に入れ替わるまで動作させればよい。その場合であっても、製造中のタンク2から、自動で液を取り出し、測定することが可能となるため、バッチ作業がなくなる。
【0054】
また、ポンプ構造に由来し、流量に若干の脈動が生じる場合があるが、そのような場合は、制御部8は、所定時間域における圧力損失および/または前記液体の流量の移動平均値に基づいて前記液体の粘度を算定することとする。制御部8において、液体の粘度と流量については、ある一定範囲時間の測定値の移動平均を用いて算出を行なうことで、脈動の影響を排除し正しい測定を行なうことが可能となる。このように移動平均として処理をすることで、リアルタイムの測定値を表示することが可能となる。
【0055】
また、前記実施形態においてはポンプ5を第1圧カセンサー6aの上流に設け、液体を測定流路4aへ押し入れる構成としたが、その配設位置は、安定した液体の流れを確保できるのであれば、第2圧カセンサーの下流であってもよい。
【0056】
さらに、上述の実施形態においては、送液手段として1軸ピストンポンプ5aを用る場合を説明したが、送液手段として採用するポンプ次第では、第3バルブ3cの配設や、送液中に第2バルブ3bをポンプの駆動に合わせて開閉させる制御は省略することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 液体粘度算定システム
2 タンク
3 流路開閉手段
3a 第1バルブ
3b 第2バルブ
3c 第3バルブ
4 循環配管
4a 測定流路
5 送液手段
5a ポンプ(1軸ピストンポンプ)
6 圧力測定手段
6a 第1圧力センサー
6b 第2圧力センサー
7 流量測定手段
7a 流量センサー
8 制御部
10 液体製品製造装置
11 製造手段
12 取出配管
【要約】 (修正有)
【課題】リアルタイムに、効率よく、自動で、安定して液体の粘性を算定することができる液体粘度算定システム1を提供すること。
【解決手段】液体を貯留するタンク2に上下流端を接続させて前記液体が循環可能に配接された循環配管4と、前記液体を循環配管4内の流路に送液させる送液手段5と、循環配管4内に一定長に亘って形成された測定流域4aにおいて上下流方向に離間させて配設され、測定流域4aを流れる前記液体の圧力を測定する2つの圧力測定手段6と、2つの圧力測定手段6から得た圧力損失と循環配管4を送液される前記液体の流量とに基づいて前記液体の粘度を算定する制御部8とを備える。
【選択図】
図1