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特許7014467低周波正弦波誘導電流を生成する携帯装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-24
(45)【発行日】2022-02-01
(54)【発明の名称】低周波正弦波誘導電流を生成する携帯装置
(51)【国際特許分類】
   A61N 2/12 20060101AFI20220125BHJP
【FI】
A61N2/12
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020544165
(86)(22)【出願日】2018-11-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-01-28
(86)【国際出願番号】 FR2018052728
(87)【国際公開番号】W WO2019092349
(87)【国際公開日】2019-05-16
【審査請求日】2020-06-26
(31)【優先権主張番号】1760443
(32)【優先日】2017-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】520158610
【氏名又は名称】ジー.シー.テクノロジー
【氏名又は名称原語表記】G.C.TECHNOLOGY
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】クレパン、ジェラール
(72)【発明者】
【氏名】メネルー、パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ルダン、パスカル
【審査官】北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第203724638(CN,U)
【文献】国際公開第2008/014902(WO,A1)
【文献】中国実用新案第203196141(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2012/0010454(US,A1)
【文献】米国特許第04537181(US,A)
【文献】特開2016-029998(JP,A)
【文献】特開昭63-181777(JP,A)
【文献】特表平09-502623(JP,A)
【文献】特開2011-004786(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 2/00 - 2/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体の体部に適用され、人体の体部に低周波正弦波電流を誘導するように意図された磁場を発生させるための携帯装置であって、
同じ円(C)に内接し、同じ回転軸(X-X)を中心とする4つの角度付き磁石セクタ(6-1~6-4)であって、互いに角度的に離間して配置された遠位端を有する前記4つの角度付き磁石セクタ(6-1~6-4)と、2つの隣接する角度付き磁石セクタの極性が反対であり、
所定の周波数で正弦波誘導電流を生成するように、前記回転軸を中心に所定の速度で前記角度付き磁石セクタを回転させる手段とを備え、
各角度付き磁石セクタは、前記回転軸の側の近位端における85°~90°の間の内部開口角(α)と、前記回転軸とは反対側の自由端の側の前記遠位端における20°~50°の間の外部開口角(β)と、前記角度付き磁石セクタの前記自由端から前記回転軸に亘る距離(D/2)の1/3~2/3の間の距離(d)だけ延びる半径を規定する2つの側端(8-1~8-4)とを有する同じ幾何学的形状を含むことを特徴とする、携帯装置。
【請求項2】
各角度付き磁石セクタ(6-1~6-4)の外部開口角(β)が45°である、請求項1に記載の携帯装置。
【請求項3】
各角度付き磁石セクタ(6-1~6-4)の前記自由端から前記回転軸に亘る距離(D/2)は60mmであり、前記角度付き磁石セクタの前記側端によって規定される結合半径は、35mmの距離(d)に亘って延びる、請求項1および2のいずれか一項に記載の携帯装置。
【請求項4】
前記角度付き磁石セクタ(6-1~6-4)が一定の厚さ(e)を有する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の携帯装置。
【請求項5】
前記角度付き磁石セクタ(6-1~6-4)は、2mm~15mmの間の厚さ(e)を有する、請求項4に記載の携帯装置。
【請求項6】
前記角度付き磁石セクタ(6-1~6-4)は、前記回転軸と前記角度付き磁石セクタの前記自由端との間に可変である厚さ(e1、e2)を有する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の携帯装置。
【請求項7】
前記角度付き磁石セクタの厚さが、前記回転軸から最大厚さ(e1)と最小厚さ(e2)との間で減少している、請求項6に記載の携帯装置。
【請求項8】
各角度付き磁石セクタは、前記回転軸(X-X)に垂直な後面と、前記後面に対して傾斜した前記後面とは反対側の前面とを有する、請求項7に記載の携帯装置。
【請求項9】
前記角度付き磁石セクタ(6-1~6-4)の背面に配置された磁気回路層(14)をさらに備える、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の携帯装置。
【請求項10】
前記磁気回路層(14)が軟鋼で製造されている、請求項9に記載の携帯装置。
【請求項11】
前記角度付き磁石セクタ(6-1~6-4)の周囲に配置された磁気シールド層(16)をさらに含む、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の携帯装置。
【請求項12】
前記磁気シールド層は、ニッケル鉄合金で製造されている、請求項11に記載の携帯装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気療法の一般的な分野に関し、特に、鎮痛作用および抗炎症作用を発揮することを目的として人体の体部に適用されるように意図される低周波正弦波誘導電流を生成する携帯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
既知の方法で、誘導電流を生成するために、特に、関節痛および関節周囲痛を緩和するために、磁気療法は可変磁場を使用し、この可変磁場は、磁気源、コイル、または磁石によって発生される。磁石の場合には、誘導電流を生成するために、磁石を作動させる。
【0003】
磁気療法は、一般に、治療対象の体部の基準位置に移動された装置(通常は携帯型)を使用して実施され、この装置は、磁石、例えば回転磁石と、これらの磁石が変化の速度に比例する電界を誘導する可変磁場(ファラデーの法則)を発生させることを可能にするモータとを包含する。
【0004】
従って、特許文献1から、治療目的で正弦波磁場を発生させる携帯装置が既知であり、この装置は、4つの角度付き磁石セクタを備え、4つの角度付き磁石セクタは、平坦で、同じ幾何学的形状を有し、1つの同じ回転軸を中心とし、かつ互いに角度的に離間して配置されており、2つの隣接する角度付き磁石セクタの極性は反対である。このような配置により、角度付き磁石セクタは、所定の周波数で正弦波磁場を発生するために、モータによって回転駆動される。
【0005】
さらに、得られる治療効果は、これらの電流のアンペア数が特定の閾値を超えるという条件で、角度付き磁石セクタの回転によって誘導される電流に関連していることが既知である。誘導電流は、磁石の線形変位の速度に比例することも既知である。しかしながら、所与の回転速度に対して、線形変位の速度は、角度付き磁石セクタの回転軸の基準位置におけるよりも、角度付き磁石セクタの端部においてより大きくなる。さらに、特許文献1に記載された装置により正弦波磁場を得るためには、角度付きセクタの形状の磁石を使用する必要があり、これにより、装置の中心における磁場がさらに低減される。
【0006】
また、特許文献1に記載されている装置は、装置の中心の基準位置で誘導される電流のアンペア数が、治療効果を得るために必要な閾値を超えないという欠点を有する。しかしながら、装置の中心は、典型的には、装置のユーザによって最も頻繁に使用される領域である。これは、当然のことながら、ユーザが治療対象の痛みまたは病状に装置を集中させる傾向があるためである。
【0007】
本明細書に記載されている装置の別の欠点は、磁石間の空間が、装置の表面近くの領域に二重ピークを有する信号を生成し、従って、高調波歪率が高いことである。
さらに、このような装置の治療効果は、非常に低い周波数、好ましくは、10Hz未満で得られ、磁石の回転速度を増加させることによってV×Bを増加させることは望ましくない。具体的には、この場V×Bの増加は、得られる治療効果を低下させる結果となり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2008/014902号
【発明の概要】
【0009】
従って、本発明は、装置によって覆われた表面全体に亘って、そのアンペア数が所定の閾値を超える低周波正弦波誘導電流を生成することを可能にする装置を提案することによって、このような欠点を克服することを主な目的とする。
【0010】
この目的は、人体の体部に適用され、人体の体部に低周波正弦波電流を誘導するように意図された磁場を発生させるための携帯装置によって達成され、装置は、1つの同じ回転軸を中心とし、互いに角度的に離間して配置された同じ幾何学的形状の4つの角度付き磁石セクタと、2つの隣接する角度付き磁石セクタの極性は反対であり、所定の周波数で正弦波誘導電流を生成するように、回転軸を中心に角度付き磁石セクタを所定の速度で回転させるための手段とを備え、本発明によれば、各角度付き磁石セクタは、回転軸の基準位置における85°~90°の間の内部開口角と、回転軸の反対側の自由端の基準位置における20°~50°の間の外部開口角と、角度付き磁石セクタの自由端から回転軸に亘る距離の1/3と2/3の間の距離に亘って延びる半径を規定する2つの側端とを備える。
【0011】
発明者らは、回転軸の基準位置における85°~90°の間の内部開口角と、回転軸の反対側の自由端の基準位置における20°~50°の間の(好ましくは45°に等しい)外部開口角と、角度付き磁石セクタの自由端から回転軸に亘る距離の1/3~2/3の間の距離に亘って延びる半径を規定する2つの側端とを有する角度付き磁石セクタの特定の形状が、強度が均一であり、かつ回転軸と角度付き磁石セクタの自由端との間の所定の閾値を超える正弦波磁場を得ることができることを見出した。
【0012】
特に、角度付き磁石セクタのこの配置は、特許文献1に記載された装置と比較して、装置の中心の基準位置において正弦波磁場の強度の70%程度の増加を得ることができることが見出された。また、装置の表面全体に亘る磁場の不均一性が、特許文献1の装置と比較して35%を超えて低減されることが観察された。最後に、角度付き磁石セクタの特定の形状により、高調波歪率を減少させることができる(特許文献1に記載されている磁石セクタの形状と比較して最大25%)。
【0013】
一実施形態では、各角度付き磁石セクタの自由端から回転軸に亘る距離は、60mmであり、角度付き磁石セクタの側端によって規定される結合半径は、35mmである。
角度付き磁石セクタは、実質的に一定の厚さを有することができる。この場合、角度付き磁石セクタは、好ましくは、2mm~15mmの間の厚さを有する。
【0014】
代替的に、角度付き磁石セクタは、回転軸と角度付き磁石セクタの自由端との間で可変の厚さを有することができる。この場合、角度付き磁石セクタの厚さは、好ましくは、最大厚さと最小厚さとの間で回転軸から減少している。さらに、各角度付き磁石セクタは、回転軸に実質的に垂直な後面と、後面に対して傾斜した後面とは反対側の前面とを有する。
【0015】
また、好ましくは、装置は、角度付き磁石セクタの背面に配置された磁気回路層をさらに備える。この磁気回路層は軟鋼で製造することができる。
角度付き磁石セクタの背面にこの磁気回路層が存在することにより、角度付き磁石セクタの電荷を減少させて、角度付き磁石セクタが発生する磁場を増加させることができる。さらに、小半径での磁石の相対的な割合を増加させることによって(これらの小半径での磁場源を増加させるために)、かつ最大半径に亘る表面を減少させることによって、治療体部に面する磁石の表面が改良され、これにより、回転軸と角度付き磁石セクタの自由端との間の誘導磁場がより均一となる。
【0016】
また、好ましくは、装置は、角度付き磁石セクタの周囲に配置された磁気シールド層をさらに備える。ニッケル鉄合金で製造することができるこの磁気シールド層は、装置の背面におけるかつ側面上の誘導磁場の放射を大幅に制限することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明の他の特徴および利点は、いかなる限定的な特徴を伴わない例示的な実施形態を図示する添付の図面を参照して、以下に記載される説明から明らかになるであろう。
図1】本発明の一実施形態による装置の概略図である。
図2図1のII-IIに沿った断面図である。
図3図1の装置によって得られた誘導場V×Bの分布を示す図である。
図4】異なる半径に亘って図1の装置によって得られた誘導曲線を示す図である。
図5】外部開口角の角度に応じた高調波歪率の変化を示す図である。
図6】本発明による装置と従来技術による装置との間の回転軸までの距離に関する場の分布の比較の曲線を表す図である。
図7】本発明の変形実施形態による装置を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1および図2は、人体の体部に適用されるように意図された低周波正弦波誘導電流を生成するための本発明による携帯装置2を概略的に表す。
この装置2は、同じ幾何学的形状を有し、かつ1つの同じ回転軸X-Xを中心とする4つの角度付き磁石セクタ6-1~6-4が内部に組み込まれたケーシング4を備える。これらの4つの角度付き磁石セクタ6-1~6-4は、直径Dおよび中心Oの円Cに内接している。
【0019】
より正確には、角度付き磁石セクタ6-1~6-4は、回転軸X-Xを中心に互いに角度的に離間し、かつ2つの隣接する角度付き磁石セクタの極性(北または南)が反対になるように配置される。換言すれば、正反対に対向する2つの角度付き磁石セクタは同じ極性を有する。
【0020】
従って、図1および2に示す例では、角度付き磁石セクタ6-1および6-3は極性Nを有し、角度付き磁石セクタ6-2および6-4は極性Sを有する。
角度付き磁石セクタは、通常、希土類磁石(ネオジム鉄ホウ素など)で製造され、その特徴は、0.83T~1.47Tの範囲の残留磁化と、135kJ/m~415kJ/mの範囲のエネルギー密度(BH)maxとである。
【0021】
装置2は、4つの角度付き磁石セクタ6-1~6-4を回転軸X-Xを中心に回転させるための手段をさらに備える。
例示的な実施形態では、これらの手段は、電気モータおよびベルトドライブの形態で実現される。当然ながら、この回転を提供するために他の手段を想定することもできる。
【0022】
本発明によれば、4つの角度付き磁石セクタ6-1~6-4は、4つの角度付き磁石セクタ6-1~6-4が内接する円Cの対称半径R-1~R-4に対してそれぞれ対称的な形状を有する。
【0023】
各角度付き磁石セクタ6-1~6-4は、2つの側端8-1~8-4を備え、2つの側端8-1~8-4は、角度付き磁石セクタの対称半径に対して対称であり、かつ2つの隣接する角度付き磁石セクタの対応する側端と対向しているか、または直接接触している。
【0024】
さらに、各角度付き磁石セクタの2つの側端8-1~8-4は、円Cの半径D/2の3分の2に(即ち、角度付き磁石セクタの自由端から回転軸X-Xに亘る距離の2/3に)対応する距離に亘って延びる結合半径(円Cの中心Oと、中心Oから最も遠い側端のポイント10-1~10-4との間で区切られる結合半径)を規定する。便宜上、図1では角度付き磁石セクタ6-1のポイント10-1のみを示している。
【0025】
従って、角度付き磁石セクタが直径Dが120mmの円Cに内接する例示的な実施形態では、角度付き磁石セクタの側端によって形成される結合半径が延びる距離は35mmである。
【0026】
さらに、各角度付き磁石セクタの側端8-1~8-4は、側端間に約90°の角度αを形成する(回転軸X-Xの基準位置における各角度付き磁石セクタの内部開口角αは、85°~90°の間であるとも言える)。
【0027】
さらに本発明によれば、各角度付き磁石セクタは、回転軸X-Xの反対側の1つの自由端の基準位置において、20°~50°の間であり、好ましくは45°に等しい外部開口角βをさらに含む。
【0028】
換言すると、各角度付き磁石セクタ6-1~6-4の自由端は、角度付き磁石セクタが内接する円C上の2つのポイント12a、12bの間に範囲が定められる。これらのポイントは対称的であり、一方のポイントOと12aによって形成される半径と、他方のポイントOと12bによって形成される半径とは、半径間に20°~50°の間、好ましくは45°に等しい角度βを形成する。
【0029】
便宜上、図1では、角度付き磁石セクタ6-1に関連するポイント12a、12bおよび開口角の角度βのみが示されている。当然ながら、同じ特徴が他の角度付き磁石セクタ6-2~6-4にも適用される。
【0030】
従って、本発明による装置の角度付き磁石セクタの説明された全体的な構成は、中心Oの円Cに内接する星形を有する。
本発明による装置の角度付き磁石セクタ6-1~6-4は、回転軸X-Xを中心に、好ましくは毎分300回転の速度で回転するように設定され、これにより、好ましくは10Hz以下の周波数で正弦波誘導電流が生成される。
【0031】
図3は、角度付き磁石セクタが毎分300回転の速度で回転するように設定されたときに、本発明による装置によって得られる誘導場V×B(Vは速度場であり、Bは磁気誘導場である)の空間分布を示す。この分布は、角度付き磁石セクタに対して平面上に左右対称に示されている。
【0032】
この分布は、誘導場V×Bが、装置によって覆われた表面全体に亘って所定の閾値を超える強度を有していることを示している。
この図3はまた、本発明による角度付き磁石セクタの特定の配置および形状が、特許文献1に開示されているような形状を有する角度付き磁石セクタと比較して、軸近傍または小半径に亘って誘導磁場の強度を大幅に(70%程度に)増加させることを示すことができる。
【0033】
図4は、角度付き磁石セクタが内接する円の異なる半径に亘る、本発明による装置によって得られる誘導の垂直成分の異なる曲線を示す。
従って、曲線H-1は、図1に示す半径Iaの基準位置で発生する誘導の垂直成分(即ち、回転軸X-Xに沿った)を示し、曲線H-2は、半径Ibの基準位置で発生する誘導の垂直成分を示し、曲線H-3は、半径Icの基準位置で発生する誘導の垂直成分を示し、曲線H-4は、円Cの半径D/2の基準位置で発生する誘導の垂直成分を示す。これらの曲線では、誘導の垂直成分がマイクロテスラで測定され、半径の角度が度数で測定される。
【0034】
これらの曲線は、発生した誘導の分布が装置の表面全体に亘って比較的均一であることを示している。特に、装置の表面全体に亘る磁場の不均一性は、特許文献1の装置と比較して35%を超えて低減されている。
【0035】
図5は、角度付き磁石セクタの外部開口角の角度βの値に応じた高調波歪率(THD)の変化を示している。この図は、約45°に等しい外部開口角の角度βの場合、高調波歪率がより低いことを示している。
【0036】
図6は、本発明による装置(曲線G-1)と特許文献1に記載されているタイプの従来技術による装置(曲線G-2)とに関する回転軸X-Xまでの距離に応じた場の分布V×B(mV/m)の曲線G-1、G-2を表している。より正確には、これらの曲線は、角度付き磁石セクタが、総重量393gに対して4.2mmの一定の厚さを有する本発明による装置を用いて作成されたものであり、一方、従来技術による装置の磁石セクタは、総重量432gに対して10mmの一定の厚さを有する。
【0037】
この図から、場の分布のより良好な均一性が、本発明による装置によって得られることが分かる。特に、本発明による装置は、従来技術による装置に対して、場の最大値と最小値との間で38%の利得を得ることができる。さらに、本発明による装置は、角度付き磁石セクタの回転軸から5mmの距離で、先行技術による装置と比較して場の25%の利得を得ることができる。最後に、これらの利得は、磁石の厚さの58%の減少と、磁石の総質量の9%の減少によって得られる。
【0038】
さらに、図1および図2の実施形態では、角度付き磁石セクタ6-1~6-4は各々、実質的に一定である1つの同じ厚さを有する(角度付き磁石セクタは平坦である)。好ましくは、直径120mmの円Cに内接する角度付き磁石セクタに関して、この厚さは2mm~10mmの間にある。
【0039】
図7に示す変形実施形態では、角度付き磁石セクタは各々、回転軸X-Xと角度付き磁石セクタの自由端との間で可変である厚さを有する。
より正確には、この厚さは、最大厚さe1と最小厚さe2で回転軸から減少しており、最大厚さe1は最小厚さe2の2倍~5倍の間である。
【0040】
従って、角度付き磁石セクタの厚さは、最大厚さe1と最小厚さe2との間で回転軸から減少している。換言すると、各角度付き磁石セクタは、回転軸X-Xに実質的に垂直な後面(即ち、治療体部とは反対側にある)と、後面とは反対側にあり、かつ後面に対して傾斜している正面(治療体部に向けられる)とを有する。
【0041】
平坦な形状と比較して、角度付き磁石セクタの面取りされた形状は、一方では、装置の中心の基準位置での誘導磁場の強度をさらに増加させることができ、他方では、高調波歪率をさらに減少させることができる。
【0042】
次に、前述の2つの実施形態に適用される、本発明による装置の異なる有利な特徴について説明する。
図2に示されるように、装置は、有利には、角度付き磁石セクタ6-1~6-4の背面(即ち、治療対象の治療体部に向けられた側とは反対側の角度付き磁石セクタの面)に配置された磁気回路層14を備える。
【0043】
例えば、磁気回路層は、角度付き磁石セクタの表面全体を覆う一定の厚さの軟鋼の層である。
この磁気回路層の存在により、角度付き磁石セクタの電荷を減少させて、角度付き磁石セクタが発生する磁場を増加させることができることが注目される。さらに、小半径での磁石の相対的な割合を増加させることによって(これらの小半径での磁場源を増加させるために)、かつ最大半径に亘る表面を減少させることによって、治療体部に面する磁石の表面が改良され、これにより、回転軸と角度付き磁石セクタの自由端との間の誘導磁場がより均一となる。
【0044】
図1に示される別の有利な配置によれば、装置はさらに、角度付き磁石セクタの周囲に(即ち、角度付き磁石セクタが内接する円Cの円周に沿って)配置される磁気シールド層16を備える。例えば、0.1mm~2mmの間の厚さの磁気シールド層は、ミューメタル(即ち、ニッケルと鉄の合金)で製造されている。
【0045】
このシールド層の存在により、装置の背面におけるかつ側面上の誘導磁場の放射を大幅に制限することが可能であることが分かった。角度付き磁石セクタの寸法は、選択される用途に応じて異なるものとすることができることに留意すべきである。例えば、取得した正弦波磁場のより大きな侵入深度を得るには、角度付き磁石セクタが内接する円は、240~300mmの間の直径Dを有することができる。別の例では、より局所的な正弦波磁場を得るために、角度付き磁石セクタが内接する円は、約20mmの直径Dを有することができる。
【0046】
明細書中の「V×B」の表記は、国際出願時の明細書における
【0047】
【数1】
を表す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7