(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-24
(45)【発行日】2022-02-01
(54)【発明の名称】微細加工処理剤、及び微細加工処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/306 20060101AFI20220125BHJP
H01L 21/308 20060101ALI20220125BHJP
【FI】
H01L21/306 D
H01L21/308 E
(21)【出願番号】P 2021085435
(22)【出願日】2021-05-20
【審査請求日】2021-05-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000162847
【氏名又は名称】ステラケミファ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130580
【氏名又は名称】小山 靖
(72)【発明者】
【氏名】山崎 陽介
(72)【発明者】
【氏名】堀上 健太
(72)【発明者】
【氏名】伊達 和哉
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 類
(72)【発明者】
【氏名】二井 啓一
(72)【発明者】
【氏名】西田 哲郎
【審査官】堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/134184(WO,A1)
【文献】特表2004-533511(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
H01L 21/30
H01L 21/304-21/3063
H01L 21/308
H01L 21/46
H01L 21/465-21/467
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン含有絶縁膜を少なくとも有する被処理物を微細加工するための微細加工処理剤であって、
以下の化学式(1)で示される化合物、フッ化水素、フッ化アンモニウム及び水を含み(但し、アクリル酸、アクリル酸アンモニウム、アクリル酸エステル、アクリルアミド、スチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸アンモニウム、及びスチレンスルホン酸エステルからなる群より選択される少なくとも何れか1種
が重合してなる水溶性重合体を除く。)、
【化1】
前記化合物の含有量は、前記微細加工処理剤の全質量に対し、0.001質量%以上、0.5質量%以下であり、
前記フッ化水素の含有量は、前記微細加工処理剤の全質量に対し、0.05質量%以上、25質量%以下であり、
前記フッ化アンモニウムの含有量は、前記微細加工処理剤の全質量に対し、0.5質量%以上、40質量%以下であり、
前記フッ化水素の含有量と前記フッ化アンモニウムの含有量とは、以下の関係式(1)を満たす微細加工処理剤。
【数1】
【請求項2】
前記シリコン含有絶縁膜が熱シリコン酸化膜であり、
前記熱シリコン酸化膜に対するエッチング温度25℃でのエッチレートが0.5nm/分~700nm/分である請求項1に記載の微細加工処理剤。
【請求項3】
前記化学式(1)で表される化合物に於けるRfがノナフルオロブチル基であり、
前記化合物の含有量が、前記微細加工処理剤の全質量に対し、0.001質量%以上、0.03質量%以下であり、
前記フッ化水素の含有量が、前記微細加工処理剤の全質量に対し、0.05質量%以上、3質量%以下であり、
前記フッ化アンモニウムの含有量が、前記微細加工処理剤の全質量に対し、0.5質量%以上、10質量%以下である請求項1又は2に記載の微細加工処理剤。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載の微細加工処理剤を用いて、シリコン含有絶縁膜を少なくとも有する被処理物を微細加工する微細加工処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置、液晶表示装置、マイクロマシン(micro electro mechanical systems;MEMS)デバイス等の製造に於いて、ウェットエッチング処理等に用いる微細加工処理剤、及び微細加工処理方法に関する。より具体的には、シリコン含有絶縁膜を少なくとも有する被処理物に対しウェットエッチング処理等の微細加工に好適な微細加工処理剤、及び微細加工処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子の製造プロセスでは、シリコンウェハ表面に成膜されたシリコン酸化膜などの絶縁膜、シリコン窒化膜、シリコン合金、ポリシリコン膜、金属膜等を所望の形状にパターニングし、エッチング処理する工程がある。このエッチング処理をウェットエッチング方法により行う場合、例えばシリコン酸化膜などシリコンを含む絶縁膜をエッチング対象とするときは、フッ化水素酸とフッ化アンモニウムとを混合した溶液、いわゆるバッファードフッ酸が用いられる。
【0003】
ここで、半導体素子の製造プロセスでは、製造装置や使用する材料に由来する有機物、金属類等の無機物等の微粒子がシリコン表面に付着し残留することがある。例えば、バッチ式によるウェットエッチングの場合、その前の工程で付着した微粒子がウェットエッチングを行うエッチング槽に持ち込まれ、ウェットエッチング処理後のシリコンウェハ等の表面上に微粒子が付着し残留するという問題がある。シリコンウェハ等の表面に残留した微粒子は半導体素子の電気的特性に悪影響を与え、半導体装置の製品歩留まりを低下させることがある。
【0004】
この様な問題に対し、例えば、特許文献1~4では、バッファードフッ酸に界面活性剤を添加したエッチング液を用いることで、微粒子のシリコンウェハ等の表面への残留防止が提案されている。これらの特許文献に開示のエッチング液であると、界面活性剤の含有によりシリコンウェハ等の表面への微粒子の付着が抑制可能であるとされている。
【0005】
しかし、近年の技術の急速な進歩につれて半導体素子の微細化が進んでおり、半導体素子の線幅が細くなっている。例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)を例に挙げると、プロセスノード(素子の最小線幅)は10nm近くに到達している。そのため、シリコンウェハ等の表面に残留する微粒子についても、粒径が小さく極めて微細なものまでその残留防止が求められている。しかしながら、特許文献1~4に開示のエッチング液では、粒径が小さく微細な微粒子までその残留を十分に抑制することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭63-283028号公報
【文献】特開平7-211707号公報
【文献】特開昭60-39176号公報
【文献】特表2006-505667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、シリコン含有絶縁膜を少なくとも有する被処理物に対し、微粒子の残留を抑制しながら良好な微細加工を可能にする微細加工処理剤及び微細加工処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の微細加工処理剤は、前記の課題を解決するために、シリコン含有絶縁膜を少なくとも有する被処理物を微細加工するための微細加工処理剤であって、以下の化学式(1)で示される化合物、フッ化水素、フッ化アンモニウム及び水を含み、
【化1】
前記化合物の含有量は、前記微細加工処理剤の全質量に対し、0.001質量%以上、0.5質量%以下であり、前記フッ化水素の含有量は、前記微細加工処理剤の全質量に対し、0.05質量%以上、25質量%以下であり、前記フッ化アンモニウムの含有量は、前記微細加工処理剤の全質量に対し、0.5質量%以上、40質量%以下であり、前記フッ化水素の含有量と前記フッ化アンモニウムの含有量とは、以下の関係式(1)を満たすことを特徴とする。
【数1】
【0009】
前記構成によれば、前記化学式(1)で表される化合物を、微細加工処理剤の全質量に対し0.001質量%以上で含有させることにより、有機物や無機物からなる微粒子(不純物)が被処理物の表面に付着して残留するのを抑制又は低減しながら、シリコン含有絶縁膜を少なくとも有する被処理物に対し、ウェットエッチング等の微細加工を施すことを可能にする。また、前記化合物を、微細加工処理剤の全質量に対し0.5質量%以下で含有させることにより、当該化合物同士が凝集によりミセルが生じ増加するのを抑制することができる。その結果、当該ミセルが被処理物の表面に残留することも防止することができる。また前記構成の微細加工処理剤であると、経時的な組成変化に対する安定性、及びシリコン含有絶縁膜に対するエッチングの制御性も向上させることができる。
【0010】
前記の構成に於いては、前記シリコン含有絶縁膜が熱シリコン酸化膜であり、前記熱シリコン酸化膜に対するエッチング温度25℃でのエッチレートが0.5nm/分~700nm/分であることが好ましい。
【0011】
前記構成であると、熱シリコン酸化膜を有する被処理物に対する微細加工の製造効率を良好に維持することができる。また、微細加工による熱シリコン酸化膜の膜厚の制御性が低下することも抑制することができる。
【0012】
さらに前記の構成に於いては、前記化学式(1)で表される化合物に於けるRfがノナフルオロブチル基であり、前記化合物の含有量が、前記微細加工処理剤の全質量に対し、0.001質量%以上、0.03質量%以下であり、前記フッ化水素の含有量が、前記微細加工処理剤の全質量に対し、0.05質量%以上、3質量%以下であり、前記フッ化アンモニウムの含有量が、前記微細加工処理剤の全質量に対し、0.5質量%以上、10質量%以下であることが好ましい。
【0013】
前記構成によれば、微粒子(不純物)が被処理物に付着するのを一層低減又は抑制しながら、シリコン含有絶縁膜に対するウェットエッチング等の微細加工を良好に施すことができる。また、経時的な組成変化に対する安定性、及びシリコン含有絶縁膜に対するエッチングの制御性もさらに向上させることができる。
【0014】
本発明の微細加工処理方法は、前記の課題を解決するために、前記微細加工処理剤を用いて、シリコン含有絶縁膜を少なくとも有する被処理物を微細加工することを特徴とする。
【0015】
前記構成によれば、シリコン含有絶縁膜を少なくとも有する被処理物に対し、前述の微細加工処理剤を用いて微粒子(不純物)の付着を抑制又は低減しながら、ウェットエッチング等の微細加工を施すことが可能になる。その結果、前記構成の微細加工処理方法であると、半導体製造プロセスに於ける歩留まりの向上が図れる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、シリコン含有絶縁膜を少なくとも有する被処理物に対し、被処理物に微粒子(不純物)が付着し残留するのを抑制しながら、ウェットエッチング等の微細加工処理を施すことが可能な微細加工処理剤及び微細加工処理方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(微細加工処理剤)
本発明の実施の一形態に係る微細加工処理剤について、以下に説明する。
本実施の形態に係る微細加工処理剤は、以下の化学式(1)で示される化合物、フッ化水素、フッ化アンモニウム及び水を少なくとも含む。
【0018】
【0019】
本実施の形態の微細加工処理剤は、化学式(1)で表される化合物を含有することで、被処理物に微細な微粒子が付着して残留するのを抑制しながら微細加工を施すことを可能にする。また、化学式(1)で表される化合物を含有することで、微細加工処理剤の表面張力を低下させ、微細加工を施す面等に対する濡れ性の向上を図る。その結果、被処理物の表面に微細な凹凸が存在する場合にも、良好な濡れ性を発揮し優れた微細加工性能を発揮することができる。
【0020】
ここで、本明細書に於いて「微粒子」とは、例えば、半導体製造プロセスに於いて使用される製造装置や使用される材料等からの溶出物(より具体的には、Oリング等のゴム部材から溶出する可塑剤等)等の不純物としての有機物を含む意味である。また、半導体製造プロセスで使用される各種の処理液に含まれる有機物や、金属成分等の無機物が核となって形成された微粒子(パーティクル)等も含む意味である。
【0021】
また、本明細書に於いて「微細加工」とは、被処理物の表面を微細加工するエッチング処理、及び被処理物の表面のクリーニング処理等を含む意味である。尚、被処理物に対しエッチング処理を施す場合、本実施の形態の微細加工処理剤はエッチング液として機能する。また、被処理物に対しクリーニング処理を施す場合、本実施の形態の微細加工処理剤は洗浄液として機能する。
【0022】
さらに、本明細書に於いて、化学式(1)に於ける「ペルフルオロアルキル基」とは、完全にフッ素化された1価の飽和炭化水素基であって、直鎖状、分岐状又は環状のものを意味する。また、「炭素数が1~4のペルフルオロアルキル基」に於ける「炭素数1~4」とは、当該範囲に含まれる全ての数の炭素数を意味する。すなわち、炭素数が1、2、3及び4のペルフルオロアルキル基の全てを含む意味である。「炭素数が1~4のペルフルオロアルキル基」としては、例えば、トリフルオロメチル基;ペンタフルオロエチル基;n-ヘプタフルオロプロピル基、iso-ヘプタフルオロプロピル基;n-ノナフルオロブチル基、iso-ノナフルオロブチル基、sec-ノナフルオロブチル基及びtert-ノナフルオロブチル基等のノナフルオロブチル基等が挙げられる。これらのうち、化学式(1)で表される化合物の添加量を抑制しながら、微粒子の付着を抑制又は低減して微細加工を可能にするとの観点からは、ノナフルオロブチル基が好ましい。
【0023】
化学式(1)で示される化合物に於いて、M+が水素イオンである場合の具体的な化合物は以下の通りである。
H+・(CF3-SO2)-N--(SO2-CF3)
H+・(C2F5-SO2)-N--(SO2-C2F5)
H+・(C3F7-SO2)-N--(SO2-C3F7)
H+・(C4F9-SO2)-N--(SO2-C4F9)
これらの化合物のうち、当該化合物の添加量を抑制しながら、微粒子の付着を抑制又は低減して微細加工を可能にするとの観点からは、以下の化学式で表される化合物が特に好ましい。
H+・(C4F9-SO2)-N--(SO2-C4F9)
【0024】
化学式(1)で示される化合物に於いて、M+がアンモニウムイオンである場合の具体的な化合物は以下の通りである。
NH4
+・(CF3-SO2)-N--(SO2-CF3)
NH4
+・(C2F5-SO2)-N--(SO2-C2F5)
NH4
+・(C3F7-SO2)-N--(SO2-C3F7)
NH4
+・(C4F9-SO2)-N--(SO2-C4F9)
これらの化合物のうち、当該化合物の添加量を抑制しながら、微粒子の付着を抑制又は低減して微細加工を可能にするとの観点からは、以下の化学式で表される化合物が特に好ましい。
NH4
+・(C4F9-SO2)-N--(SO2-C4F9)
【0025】
化学式(1)で表される化合物は、液体の状態(すなわち、融解した状態)で微細加工処理剤中に存在してもよく、又は固体の当該化合物が微細加工処理剤中に溶解した状態で存在してもよい。
【0026】
化学式(1)で表される化合物の含有量は、微細加工処理剤の全質量に対し、0.001質量%以上、0.5質量%以下の範囲内であり、好ましくは0.001質量%以上、0.03質量%以下の範囲内である。化学式(1)で表される化合物の含有量を0.001質量%以上にすることにより、有機物及び金属類等の無機物の微粒子(不純物)が被処理物に付着するのを抑制又は低減することができる。その一方、化学式(1)で表される化合物の含有量を0.5質量%以下にすることにより、化学式(1)で表される化合物同士が凝集してミセルが生じ増加するのを抑制又は低減することができる。その結果、被処理物表面にミセルが付着し残留することも防止できるので、半導体製造プロセスに於ける製造コストを低減し、経済的にも有用である。
【0027】
本実施の形態に於いて、フッ化水素及びフッ化アンモニウムは、被処理物に対する微細加工を可能にするために微細加工処理剤中に含有されものであり、微細加工処理剤のpH調整や他の成分の水等に対する溶解性の向上のためだけに含有されるものではない。
【0028】
フッ化水素の含有量は、微細加工処理剤の全質量に対し0.05質量%以上、25質量%以下の範囲内であり、好ましくは0.05質量%以上、3質量%以下の範囲内である。フッ化水素の含有量を0.05質量%以上にすることにより、例えば、シリコン含有絶縁膜に対するウェットエッチング等の微細加工を可能にする。またフッ化水素の含有量を25質量%以下にすることにより、シリコン含有絶縁膜に対するエッチレートが大きくなり過ぎて、ウェットエッチング等の微細加工の制御性が低下するのを防止することができる。
【0029】
フッ化アンモニウムの含有量は、微細加工処理剤の全質量に対し0.5質量%以上、40質量%以下の範囲内であり、好ましくは0.5質量%以上、30質量%以下の範囲内である。フッ化アンモニウムの含有量を前記範囲内にすることにより、使用時の微細加工処理剤の蒸発に伴う組成変化により、シリコン含有絶縁膜に対するエッチレートが変化するのを抑制又は低減することができる。フッ化アンモニウムの含有量を0.5質量%以上にすることにより、フッ化アンモニウムの濃度制御を可能にし、シリコン含有絶縁膜に対するエッチレートのバラツキが大きくなるのを抑制することができる。また、フッ化アンモニウムの含有量を40質量%以下にすることにより、使用時に、微細加工処理剤の蒸発によりフッ化アンモニウムがフッ化水素酸とアンモニアに分解し、アンモニアガスが蒸発するのを低減又は防止することができる。これにより、フッ化アンモニウムの含有量(絶対量)が減少し、フッ化水素の含有量(絶対量)が増加するのを防止し、微細加工処理剤の組成及びシリコン含有絶縁膜に対するエッチレートの変化が大きくなるのを防止することができる。
【0030】
また、本実施の形態に係る微細加工処理剤のフッ化水素の含有量をX質量%とし、フッ化アンモニウムの含有量をY質量%とした場合、以下の関係式(1)を満たす。
【0031】
【0032】
これにより、室温に於いて微細加工処理剤中に含まれる任意成分が結晶化するのを抑制することができる。尚、本明細書に於いて「室温」とは5℃~35℃の温度範囲にあることを意味する。
【0033】
また、微細加工処理剤を製造するに際して、フッ化水素酸とフッ化アンモニウムの混合液であるバッファードフッ酸を用いる場合(詳細については後述する。)、フッ化水素酸とフッ化アンモニウムとが等モル数からなる酸性フッ化アンモニウム、及びフッ化アンモニウムの含有量が大きい程、微細加工処理剤中に任意成分の結晶が生じる温度が高くなる。析出する結晶はパーティクルの要因となり、さらには微細加工処理剤の成分濃度を変化させる要因となる。従って、フッ化水素及びフッ化アンモニウムの含有量は、前述の範囲内で、微細加工処理剤の使用温度(例えば、一般的な半導体製造プロセスでは、20℃~25℃の環境下で半導体製造が行われる。)に於いて当該微細加工処理剤中に任意成分の結晶が析出しない様に設定することが好ましい。
【0034】
本実施の形態に係る微細加工処理剤に於いて、水としては特に限定されないが、純水、超純水等が好ましい。
【0035】
水の含有量は、微細加工処理剤の全質量に対し54.500質量%以上、99.449質量%以下の範囲内が好ましく、より好ましくは86.970質量%以上、99.449質量%以下である。
【0036】
本実施の形態の微細加工処理剤は化学式(1)で示される化合物、フッ化水素、フッ化アンモニウム及び水のみからなる態様の場合の他、本願発明の効果を阻害しない範囲内で他の添加剤を添加することも可能である。他の添加剤としては、例えば、過酸化水素、キレート剤等が例示できる。
【0037】
本実施の形態に係る微細加工処理剤の製造方法は特に限定されず、種々の方法を採用することができる。例えば、フッ化水素酸とフッ化アンモニウムとからなるバッファードフッ酸を予め作製し、このバッファードフッ酸に化学式(1)で表される化合物を添加して本実施の形態の微細加工処理剤を作製することができる。また、フッ化水素酸、フッ化アンモニウム又は水の何れかに、化学式(1)で表される化合物を添加した後、その他の成分を任意の順序で、又は同時に添加しても、本実施の形態の微細加工処理剤を作製することができる。
【0038】
以上のように、本実施の形態に係る微細加工処理剤は、シリコン含有絶縁膜を少なくとも有する被処理物に対し、微細な微粒子が当該被処理物に残留するのを低減又は防止しながら、当該被処理物に対して良好な微細加工を可能にする。本実施の形態の微細加工処理剤は粒径が小さく微細な微粒子であっても、当該微粒子が被処理物表面に残留するのを防止しながら微細加工処理を施すことができる。そのため、本実施の形態の微細加工処理剤は、高集積化及び微細化の進む半導体デバイス等の製造プロセスに於いて微細加工処理に好適である。
【0039】
(微細加工処理方法)
次に、本実施の形態の微細加工処理剤を用いた微細加工処理方法について以下に説明する。
本実施の形態の微細加工処理方法は、シリコン含有絶縁膜を少なくとも有する被処理物に対して微細加工を施すのに好適である。
【0040】
本実施の形態の微細加工処理剤は、種々のウェットエッチング法に採用される。ウェットエッチング方法としては、バッチ式及び枚葉式等があるが、何れの方法にも本発明の微細加工処理剤は採用され得る。バッチ式のウェットエッチング方法の場合、大量のウェハを一度にウェットエッチング処理できるため、スループットの面から優れている。但し、半導体素子の微細化が進む半導体製造プロセスでは、エッチング槽内でのクロスコンタミネーションの問題がある。その一方、枚葉式のウェットエッチング方法の場合、バッチ式のウェットエッチング方法の様なクロスコンタミネーションの懸念は少ないが、スループットの面でバッチ式のウェットエッチング方法に劣る。
【0041】
また、微細加工処理剤を被処理物に接触させる方法として、浸漬式及びスプレー式等が挙げられる。これらの接触方法のうち浸漬式は、工程中に微細加工処理剤が蒸発することによる組成変化を低減又は抑制できるので好適である。
【0042】
微細加工処理剤をエッチング液として使用する場合のエッチング温度(すなわち、微細加工処理剤の液温)としては特に限定されないが、通常は15℃~35℃の範囲内であり、好ましくは20℃~30℃の範囲内である。エッチング温度を15℃以上にすることにより、微細加工処理剤に含まれる任意成分が結晶化するのを抑制し、エッチレートが低下して、微細加工処理剤中に結晶化粒子が増加するのを防止することができる。その一方、エッチング温度を35℃以下にすることにより、微細加工処理剤の蒸発を抑制することができ、微細加工処理剤の組成変化を防止することができる。また、微細加工処理剤の蒸発によりエッチレートの制御が困難になるのを防止することができる。
【0043】
また、微細加工処理剤をエッチング液として使用した場合、25℃(エッチング温度、すなわち微細加工処理剤の液温)における熱シリコン酸化膜に対するエッチレートは0.5nm/分~700nm/分の範囲内であることが好ましく、1.5nm/分~650nm/分の範囲内であることがより好ましい。エッチレートを0.5nm/分以上にすることにより、熱シリコン酸化膜に対するウェットエッチング等の微細加工処理に要する時間を短縮し、処理効率の低下を抑制することができる。その一方、エッチレートを700nm/分以下にすることにより、ウェットエッチング後の熱シリコン酸化膜の膜厚の制御性の低下を防止し、半導体製造プロセスでのエッチング液としての実用性を維持することができる。
【0044】
被処理物としては、例えば、シリコン、ゲルマニウム、GaAs、InP及びその他のIII~V族とII~VI族の化合物半導体等からなる基板が挙げられる。また、基板には、シリコン、ポリシリコン、金属及びその酸化物、レジスト並びにマスク等からなる層が設けられていてもよい。
【0045】
シリコン含有絶縁膜としてはシリコン(Si)を含有する絶縁膜であれば特に限定されない。具体的には、例えば、自然酸化膜、ケミカル酸化膜、熱シリコン酸化膜、ノンドープシリケートガラス膜、リンドープシリケートガラス膜、ボロンドープシリケートガラス膜、リンボロンドープシリケートガラス膜、TEOS(Tetraethyl Orthosilicate)膜、フッ素含有シリコン酸化膜、炭素含有シリコン酸化膜、窒素含有シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、シリコンカーバイド膜、シリコンオキサイドカーバイド膜、シリコンオキサイドカーバイドナイトライド膜、SOG(Spin on glass)膜、及びSOD(Spin on dielectroric)膜等が挙げられる。
【0046】
前記シリコン含有絶縁膜に於ける自然酸化膜とは、室温で大気暴露中にシリコン上に形成されるシリコン酸化膜である。また、ケミカル酸化膜とは、例えば、硫酸・過酸化水素水洗浄中にシリコン上に形成される膜である。熱シリコン酸化膜とは、水蒸気又は酸素ガスを供給し、800~1000℃の高温下で形成される膜である。ノンドープシリケートガラス膜、リンドープシリケートガラス膜、ボロンドープシリケートガラス膜、リンボロンドープシリケートガラス膜、TEOS膜、フッ素含有シリコン酸化膜、炭素含有シリコン酸化膜、及び窒素含有シリコン酸化膜に於いては、シラン等の原料ガスを供給し、CVD(化学気相成長、Chemical vapor deposition)法により堆積し成膜されるシリコン酸化膜である。SOG膜及びSOD膜については、スピンコーター等の塗布方式により形成される膜である。
【0047】
尚、前記CVD法としては特に限定されず、例えば、PECVD(Plasma enhanced Chemical vapor deposition)、ALD(原子層堆積、Atomic layer deposition)、MOCVD(有機金属気相成長)、Cat-CVD(触媒化学気相成長)、熱CVD及びエピタキシャルCVD等の成膜方法が挙げられる。
【0048】
以上の様に、本実施の形態の微細加工処理方法によれば、シリコン含有絶縁膜を少なくとも有する被処理物を、微粒子の付着を抑制しながらウェットエッチング等の微細加工を可能にするので、例えば半導体装置、液晶表示装置、及びマイクロマシンデバイス等の製造に於いて好適である。
【実施例】
【0049】
以下に、この発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但し、この実施例に記載されている材料や配合量等は、特に限定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定するものではない。
【0050】
(実施例1)
H+・(C4F9-SO2)-N--(SO2-C4F9)0.0015質量%と、フッ化水素酸(ステラケミファ(株)製、半導体用高純度グレード、濃度50質量%)6.0質量%と、フッ化アンモニウム(ステラケミファ(株)製、半導体用高純度グレード、濃度40質量%)25.0質量%と、水68.9985質量%とを混合し、撹拌した。この混合液を液温が25℃になる様に調温し、数時間静置した。これにより、H+・(C4F9-SO2)-N--(SO2-C4F9)0.0015質量%、フッ化水素3.0質量%、フッ化アンモニウム10.0質量%を含むエッチング液(微細加工処理剤)を調製した。
【0051】
(実施例2)
H+・(C4F9-SO2)-N--(SO2-C4F9)0.006質量%と、フッ化水素酸(ステラケミファ(株)製、半導体用高純度グレード、濃度50質量%)0.2質量%と、フッ化アンモニウム(ステラケミファ(株)製、半導体用高純度グレード、濃度40質量%)12.5質量%と、水87.294質量%とを混合し、撹拌した。この混合液を液温が25℃になる様に調温し、数時間静置した。これにより、H+・(C4F9-SO2)-N--(SO2-C4F9)0.006質量%、フッ化水素0.1質量%、フッ化アンモニウム5.0質量%を含むエッチング液(微細加工処理剤)を調製した。
【0052】
(実施例3)
H+・(C4F9-SO2)-N--(SO2-C4F9)0.018質量%と、フッ化水素酸(ステラケミファ(株)製、半導体用高純度グレード、濃度50質量%)0.2質量%と、フッ化アンモニウム(ステラケミファ(株)製、半導体用高純度グレード、濃度40質量%)12.5質量%と、水87.282質量%とを混合し、撹拌した。この混合液を液温が25℃になる様に調温し、数時間静置した。これにより、H+・(C4F9-SO2)-N--(SO2-C4F9)0.018質量%、フッ化水素0.1質量%、フッ化アンモニウム5.0質量%を含むエッチング液(微細加工処理剤)を調製した。
【0053】
(実施例4)
NH4+・(C4F9-SO2)-N--(SO2-C4F9)0.006質量%と、フッ化水素酸(ステラケミファ(株)製、半導体用高純度グレード、濃度50質量%)1.0質量%と、フッ化アンモニウム(ステラケミファ(株)製、半導体用高純度グレード、濃度40質量%)5.0質量%と、水93.994質量%とを混合し、撹拌した。この混合液を液温が25℃になる様に調温し、数時間静置した。これにより、NH4+・(C4F9-SO2)-N--(SO2-C4F9)0.006質量%、フッ化水素0.5質量%、フッ化アンモニウム2.0質量%を含むエッチング液(微細加工処理剤)を調製した。
【0054】
(実施例5)
H+・(C4F9-SO2)-N--(SO2-C4F9)0.02質量%と、フッ化水素酸(ステラケミファ(株)製、半導体用高純度グレード、濃度50質量%)1.0質量%と、フッ化アンモニウム(ステラケミファ(株)製、半導体用高純度グレード、濃度40質量%)3.75質量%と、水95.23質量%とを混合し、撹拌した。この混合液を液温が25℃になる様に調温し、数時間静置した。これにより、H+・(C4F9-SO2)-N--(SO2-C4F9)0.02質量%、フッ化水素0.5質量%、フッ化アンモニウム1.5質量%を含むエッチング液(微細加工処理剤)を調製した。
【0055】
(実施例6)
H+・(C4F9-SO2)-N--(SO2-C4F9)0.01質量%と、フッ化水素酸(ステラケミファ(株)製、半導体用高純度グレード、濃度50質量%)50質量%と、フッ化アンモニウム(ステラケミファ(株)製、半導体用高純度グレード、濃度40質量%)5.0質量%と、水44.99質量%とを混合し、撹拌した。この混合液を液温が25℃になる様に調温し、数時間静置した。これにより、H+・(C4F9-SO2)-N--(SO2-C4F9)0.01質量%、フッ化水素25.0質量%、フッ化アンモニウム2.0質量%を含むエッチング液(微細加工処理剤)を調製した。
【0056】
(実施例7)
H+・(C2F5-SO2)-N--(SO2-C2F5)0.03質量%と、フッ化水素酸(ステラケミファ(株)製、濃度55質量%)45.45質量%と、フッ化アンモニウム(ステラケミファ(株)製、半導体用高純度グレード、濃度40質量%)50.00質量%と、水4.52質量%とを混合し、を混合し、撹拌した。この混合液を液温が25℃になる様に調温し、数時間静置した。これにより、H+・(C2F5-SO2)-N--(SO2-C2F5)0.03質量%、フッ化水素25.0質量%、フッ化アンモニウム20.0質量%を含むエッチング液(微細加工処理剤)を調製した。
【0057】
(実施例8)
H+・(C2F5-SO2)-N--(SO2-C2F5)0.1質量%と、フッ化水素酸(ステラケミファ(株)製、半導体用高純度グレード、濃度50質量%)40.0質量%と、フッ化アンモニウム(ステラケミファ(株)製、半導体用高純度グレード、濃度40質量%)25.0質量%と、水34.9質量%とを混合し、撹拌した。この混合液を液温が25℃になる様に調温し、数時間静置した。これにより、H+・(C2F5-SO2)-N--(SO2-C2F5)0.1質量%、フッ化水素20.0質量%、フッ化アンモニウム10.0質量%を含むエッチング液(微細加工処理剤)を調製した。
【0058】
(実施例9)
H+・(CF3-SO2)-N--(SO2-CF3)0.2質量%と、フッ化アンモニウム(ステラケミファ(株)製、濃度100質量%)38.7質量%と、酸性フッ化アンモニウム(ステラケミファ(株)製、濃度100質量%)1.4質量%と、水60.1質量%とを混合し、撹拌した。この混合液を液温が25℃になる様に調温し、数時間静置した。これにより、H+・(CF3-SO2)-N--(SO2-CF3)0.2質量%、フッ化水素0.5質量%、フッ化アンモニウム39.6質量%を含むエッチング液(微細加工処理剤)を調製した。
【0059】
(実施例10)
H+・(C2F5-SO2)-N--(SO2-C2F5)0.3質量%と、フッ化水素酸(ステラケミファ(株)製、半導体用高純度グレード、濃度50質量%)28.0質量%と、フッ化アンモニウム(ステラケミファ(株)製、半導体用高純度グレード、濃度40質量%)50.0質量%と、水21.7質量%とを混合し、撹拌した。この混合液を液温が25℃になる様に調温し、数時間静置した。これにより、H+・(C2F5-SO2)-N--(SO2-C2F5)0.3質量%、フッ化水素14.0質量%、フッ化アンモニウム20.0質量%を含むエッチング液(微細加工処理剤)を調製した。
【0060】
(実施例11)
H+・(CF3-SO2)-N--(SO2-CF3)0.4質量%と、フッ化水素酸(ステラケミファ(株)製、濃度55質量%)15.1質量%と、フッ化アンモニウム(ステラケミファ(株)製、半導体用高純度グレード、濃度40質量%)83.3質量%と、水1.3質量%とを混合し、を混合し、撹拌した。この混合液を液温が25℃になる様に調温し、数時間静置した。これにより、H+・(CF3-SO2)-N--(SO2-CF3)0.4質量%、フッ化水素8.3質量%、フッ化アンモニウム33.3質量%を含むエッチング液(微細加工処理剤)を調製した。
【0061】
(比較例1)
フッ化水素酸(ステラケミファ(株)製、半導体用高純度グレード、濃度50質量%)0.2質量%と、フッ化アンモニウム(ステラケミファ(株)製、半導体用高純度グレード、濃度40質量%)12.5質量%と、超純水87.3質量%とを混合した。この混合液を液温が25℃になる様に調温し、数時間静置した。これにより、フッ化水素0.1質量%、及びフッ化アンモニウム5.0質量%を含むエッチング液(微細加工処理剤)を調製した。
【0062】
(比較例2)
C8H17-(O-CH2)3NH20.006質量%と、フッ化水素酸(ステラケミファ(株)製、半導体用高純度グレード、濃度50質量%)0.2質量%と、フッ化アンモニウム(ステラケミファ(株)製、半導体用高純度グレード、濃度40質量%)12.5質量%と、水87.294質量%とを混合し、撹拌した。この混合液を液温が25℃になる様に調温し、数時間静置した。これにより、C8H17-(O-CH2)3NH20.006質量%、フッ化水素0.1質量%、フッ化アンモニウム5.0質量%を含むエッチング液(微細加工処理剤)を調製した。
【0063】
(比較例3)
H+・(C2F5-SO2)-N--(SO2-C2F5)0.15質量%と、フッ化水素酸(ステラケミファ(株)製、半導体用高純度グレード、濃度50質量%)7.58質量%と、酸性フッ化アンモニウム(ステラケミファ(株)製、濃度100質量%)46.21質量%と、水46.06質量%とを混合し、撹拌した。この混合液を液温が25℃になる様に調温し、数時間静置した。これにより、H+・(C2F5-SO2)-N--(SO2-C2F5)0.15質量%、フッ化水素20.0質量%、フッ化アンモニウム30.0質量%を含むエッチング液(微細加工処理剤)を調製した。
【0064】
(比較例4)
H+・(CF3-SO2)-N--(SO2-CF3)0.3質量%と、フッ化アンモニウム(ステラケミファ(株)製、濃度100質量%)19.5質量%と、酸性フッ化アンモニウム(ステラケミファ(株)製、濃度100質量%)28.5質量%と、水51.7質量%とを混合し、撹拌した。この混合液を液温が25℃になる様に調温し、数時間静置した。これにより、H+・(CF3-SO2)-N--(SO2-CF3)0.3質量%、フッ化水素10.0質量%、フッ化アンモニウム38.0質量%を含むエッチング液(微細加工処理剤)を調製した。
【0065】
(比較例5)
H+・(C2F5-SO2)-N--(SO2-C2F5)0.4質量%と、フッ化水素酸(ステラケミファ(株)製、半導体用高純度グレード、濃度50質量%)60.0質量%と、フッ化アンモニウム(ステラケミファ(株)製、半導体用高純度グレード、濃度40質量%)37.5質量%と、水2.1質量%とを混合し、撹拌した。この混合液を液温が25℃になる様に調温し、数時間静置した。これにより、H+・(C2F5-SO2)-N--(SO2-C2F5)0.4質量%、フッ化水素30.0質量%、フッ化アンモニウム15.0質量%を含むエッチング液(微細加工処理剤)を調製した。
【0066】
(比較例6)
H+・(C2F5-SO2)-N--(SO2-C2F5)0.7質量%と、フッ化水素酸(ステラケミファ(株)製、半導体用高純度グレード、濃度50質量%)10.0質量%と、フッ化アンモニウム(ステラケミファ(株)製、半導体用高純度グレード、濃度40質量%)50.0質量%と、水39.3質量%とを混合し、撹拌した。この混合液を液温が25℃になる様に調温し、数時間静置した。これにより、H+・(C2F5-SO2)-N--(SO2-C2F5)0.7質量%、フッ化水素5.0質量%、フッ化アンモニウム20.0質量%を含むエッチング液(微細加工処理剤)を調製した。
【0067】
(比較例7)
H+・(CF3-SO2)-N--(SO2-CF3)0.0005質量%と、フッ化アンモニウム(ステラケミファ(株)製、濃度100質量%)38.6740質量%と、酸性フッ化アンモニウム(ステラケミファ(株)製、濃度100質量%)1.4255質量%と、水59.9000質量%を混合し、撹拌した。この混合液を液温が25℃になる様に調温し、数時間静置した。これにより、H+・(CF3-SO2)-N--(SO2-CF3)0.0005質量%、フッ化水素0.5質量%、フッ化アンモニウム39.6質量%を含むエッチング液(微細加工処理剤)を調製した。
【0068】
(結晶の有無の評価)
微粒子除去後の実施例1~11及び比較例1~7のエッチング液に対して、それぞれの液温を変化させ、エッチング液中に結晶が析出する温度を測定した。結果を表1に示す。
【0069】
(熱シリコン酸化膜に対するエッチレートの測定)
光学式膜厚測定装置(ナノメトリクスジャパン(株)製、NanospecM6100)を用いてウェットエッチング処理前後の熱シリコン酸化膜の膜厚を測定し、エッチングによる膜厚の変化を測定した。3つの異なるエッチング時間に於いて前記測定を繰り返し実施し、エッチング温度(エッチング液の液温)25℃に於けるエッチレートを、実施例1~11及び比較例1~7において、結晶が析出する温度が30℃以下であったエッチング液毎にそれぞれ算出した。結果を表1に示す。
【0070】
(エッチング液中の微粒子の除去)
実施例1~11及び比較例1~7のうち、結晶が析出する温度が30℃以下であり、熱シリコン酸化膜に対するエッチレートが0.5nm/分~700nm/分の範囲であり、かつミセルの発生による白濁が生じていないエッチング液に対し、液中に存在する微粒子の除去を行った。具体的には、各々のエッチング液に対し、フィルター(インテグリス社製、エッチガードHP、孔径0.1μm)を用いて循環ろ過を行い、エッチング液中に含まれる微粒子の除去を行った。エッチング液の循環ろ過は、粒径0.06μm以上の粒子数が10個/mL以下になるまで行った。尚、エッチング液中の粒子数は、レーザー光散乱方式(RION社製、液中パーティクルカウンター、KS-19F)を用いて測定した値である。
【0071】
(擬似的に汚染されたエッチング液の準備)
次に、シリコンウェハ表面等への微粒子の付着を評価するために、一般に使用されているポリスチレンラテックス(Thermo SCIENTIFIC社製、粒径0.100μm、濃度3×108個/mL)を準備した。このポリスチレンラテックスを、循環ろ過を行った実施例1~11及び比較例1~2及び7の各エッチング液にそれぞれ添加し、ポリスチレンラテックスにより汚染濃度3,000個/mLで擬似的に汚染された状態のエッチング液をそれぞれ作製した。
【0072】
(ウェットエッチング処理)
続いて、被処理物として、表面に熱シリコン酸化膜(膜厚:0.002μm)が形成されたシリコンウェハ(SUMCO社製、直径:8インチ、面方位(100)、抵抗率10Ω・cm、粒径0.079μm以上の付着粒子数が10個以下)を準備し、このシリコンウェハに対し、ポリスチレンラテックスが添加された実施例1~11及び比較例1~2及び7の各エッチング液を用いてバッチ式のウェットエッチング処理を行った。ウェットエッチング処理は、各エッチング液でそれぞれ満たされたエッチング槽に、シリコンウェハを浸漬して熱シリコン酸化膜をエッチングし、そのままシリコンウェハ表面がエッチング液に1分間晒されるように行った。また、エッチング液の液温は25℃とした。さらに、エッチング槽からシリコンウェハを取り出し、超純水でオーバーフローさせているリンス槽に浸漬させ、当該リンス槽で10分間の洗浄を行った。その後、シリコンウェハをリンス槽から取り出し乾燥させた。
【0073】
(ウェットエッチング処理後のシリコンウェハ表面に付着した微粒子の粒子数の測定)
ウェットエッチング処理後のシリコンウェハに対し、ウェハ表面検査装置((株)トプコン製、WM-2500)を用いて、シリコンウェハ表面上に付着している微粒子の粒子数を測定した。測定対象の微粒子は粒径0.079μm以上のものとした。結果を表1に示す。
【0074】
【0075】
表1から明らかなように、実施例1~11に係るエッチング液では、粒径が0.079μm以上の微粒子の残留を低減しながら、熱シリコン酸化膜を良好にウェットエッチングすることができた。その一方、比較例1、2及び7に係るエッチング液では、シリコンウェハ表面に粒径が0.079μm以上の微粒子が多量に付着し残留していることが確認された。また、比較例3及び4に係るエッチング液では、結晶が析出したため、微粒子の粒子数の測定はできなかった。比較例5に係るエッチング液では、熱シリコン酸化膜に対する25℃でのエッチレートの値が大きすぎたため、微粒子の粒子数の測定は行わなかった。さらに、比較例6に係るエッチング液では、当該エッチング液が白濁したため、微粒子の粒子数の測定ができなかった。
【要約】 (修正有)
【課題】シリコン含有絶縁膜を有する被処理物に対し、微粒子の残留を抑制しながら良好な微細加工を可能にする処理剤及び処理方法を提供する。
【解決手段】シリコン含有絶縁膜を有する被処理物を微細加工するための処理剤であって、以下の化学式(1)で示される化合物、フッ化水素、フッ化アンモニウム及び水を含み、
式(1)で示される化合物の含有量は、処理剤の全質量に対し、0.001質量%以上、0.5質量%以下であり、フッ化水素の含有量は、処理剤の全質量に対し、0.05質量%以上、25質量%以下であり、フッ化アンモニウムの含有量は、処理剤の全質量に対し、0.5質量%以上、40質量%以下であり、フッ化水素の含有量とフッ化アンモニウムの含有量とは、以下の関係式(1)を満たす。
【選択図】なし