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特許7014480光造形装置および3次元造形物の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-24
(45)【発行日】2022-02-01
(54)【発明の名称】光造形装置および3次元造形物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/393 20170101AFI20220125BHJP
   B29C 64/165 20170101ALI20220125BHJP
   B29C 64/282 20170101ALI20220125BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20220125BHJP
【FI】
B29C64/393
B29C64/165
B29C64/282
B33Y50/02
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021164071
(22)【出願日】2021-10-05
【審査請求日】2021-10-07
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000145286
【氏名又は名称】株式会社写真化学
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】法貴 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】桑原 章
(72)【発明者】
【氏名】塚原 栄一
【審査官】神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-089438(JP,A)
【文献】特開2003-340923(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109228348(CN,A)
【文献】特開2020-023064(JP,A)
【文献】特開2004-249508(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元造形物を得るための光造形装置であって、
3次元形状データに基づいてあらかじめ作成された露光パターンに従って光硬化性材料を露光する露光手段と、
前記光造形装置の動作を制御する制御手段と、
を備え、
前記露光手段が、
2次元状に配置された複数の画素を備え、前記複数の画素のそれぞれにおける露光用光のON-OFF状態を個別に切り替え可能なプロジェクタ、
を備え、
前記プロジェクタは、
前記複数の画素のうち隣り合う2つの画素の中心位置同士が第1の方向に所定の描画ピッチだけずれるように前記第1の方向に直交する第2の方向に対し傾斜した姿勢にて、前記第2の方向に移動自在とされてなり、かつ、
前記第2の方向において前記描画ピッチに相当する距離を移動するごとに前記露光用光のON-OFF状態が切り替え可能とされてなり、
前記制御手段は、
前記プロジェクタに、前記第2の方向における往復移動を前記第1の方向へのステップ移動を挟みつつ交互に繰り返しながら前記露光パターンに基づきそれぞれの前記画素における前記露光用光の前記ON-OFF状態を個別に切り替えることにより、前記光硬化性材料の所定の描画エリアに対する露光を、それぞれが前記第2の方向に延在し第1の方向において所定の描画幅を有する複数のストリップ領域ごとに順次に行わせ、
前記光硬化性材料の複数の層を積層させつつ、前記露光手段によって前記複数の層のそれぞれを露光させることにより、前記3次元造形物を得る場合に、前記複数のストリップ領域のうちの隣り合う2つのストリップ領域の繋ぎ部分を形成し、かつ、前記繋ぎ部分の面内位置を、前記複数の層のうちの少なくとも2つの層において互いに異ならせる、
ことを特徴とする、光造形装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光造形装置であって、
前記制御手段は、前記光硬化性材料の前記複数の層を積層させつつ、前記露光手段によって前記複数の層のそれぞれを露光させることにより、前記3次元造形物を得る場合に、前記繋ぎ部分の面内位置を、前記複数の層のそれぞれにおいて他の層と異ならせる、
ことを特徴とする、光造形装置。
【請求項3】
請求項に記載の光造形装置であって、
前記描画幅がLであり、前記複数の層の積層数がNである場合に、
前記プロジェクタが前記複数の層のそれぞれを露光するときの前記繋ぎ部分の面内位置を、前記複数の層のうちの最初に露光した層における前記繋ぎ部分の面内位置からL/Nの整数倍だけ前記第1の方向にシフトさせる、
ことを特徴とする、光造形装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項のいずれかに記載の光造形装置であって、
造形テーブルと、
前記造形テーブルの上に、前記光硬化性材料としてスラリーを吐出可能な吐出手段と、
前記造形テーブルの上に吐出された前記スラリーを掃引し、所定の厚みのスラリー膜を形成する掃引手段と、
をさらに備え、
前記制御手段は、前記吐出手段からの前記スラリーの吐出と前記掃引手段による吐出された前記スラリーの掃引とを繰り返すことによって、前記複数の層として複数のスラリー膜を積層する、
ことを特徴とする、光造形装置。
【請求項5】
3次元造形物を得るための光造形装置であって、
造形テーブルと、
3次元形状データに基づいてあらかじめ作成された露光パターンに従って光硬化性材料を露光する露光手段と、
前記造形テーブルの上に、前記光硬化性材料としてスラリーを吐出可能な吐出手段と、
前記造形テーブルの上に吐出された前記スラリーを掃引し、所定の厚みのスラリー膜を形成する掃引手段と、
前記光造形装置の動作を制御する制御手段と、
を備え、
前記露光手段が、
2次元状に配置された複数の画素を備え、前記複数の画素のそれぞれにおける露光用光のON-OFF状態を個別に切り替え可能なプロジェクタ、
を備え、
前記プロジェクタは、
前記複数の画素のうち隣り合う2つの画素の中心位置同士が第1の方向に所定の描画ピッチだけずれるように前記第1の方向に直交する第2の方向に対し傾斜した姿勢にて、前記第2の方向に移動自在とされてなり、かつ、
前記第2の方向において前記描画ピッチに相当する距離を移動するごとに前記露光用光のON-OFF状態が切り替え可能とされてなり、
前記制御手段は、
前記プロジェクタに、前記第2の方向における往復移動を前記第1の方向へのステップ移動を挟みつつ交互に繰り返しながら前記露光パターンに基づきそれぞれの前記画素における前記露光用光の前記ON-OFF状態を個別に切り替えることにより、前記光硬化性材料の所定の描画エリアに対する露光を、それぞれが前記第2の方向に延在し第1の方向において所定の描画幅を有する複数のストリップ領域ごとに順次に行わせ、
前記光硬化性材料の複数の層を積層させつつ、前記露光手段によって前記複数の層のそれぞれを露光させることにより、前記3次元造形物を得る場合には、前記吐出手段からの前記スラリーの吐出と前記掃引手段による吐出された前記スラリーの掃引とを繰り返すことによって、前記複数の層として複数のスラリー膜を積層させるとともに、前記複数のストリップ領域のうちの隣り合う2つのストリップ領域の繋ぎ部分を形成させるようにし、
前記複数のスラリー膜のそれぞれを形成する際に、当該スラリー膜が、前記3次元造形物の造形のために本来的に前記スラリーの塗布が必要な第1の領域に加え、前記第1の領域よりも前記掃引手段の掃引開始位置寄りの所定範囲に設定された第2の領域と、前記第1の領域と前記第2の領域との間の第3の領域とを含むように、少なくとも前記吐出手段と前記掃引手段とを制御し、
かつ、
前記スラリー膜の水平面内における重心位置が、前記造形テーブルの水平面内における重心位置と、略一致あるいは近接するようにし、
前記露光手段に、前記第1の領域を前記露光パターンに応じて露光する際に、前記第2の領域も併せて露光させ、
前記複数のスラリー膜の第m層(mは2以上の整数)を形成する際は、前記吐出手段に、第(m-1)層の前記スラリー膜の前記第2の領域の上に前記スラリーを吐出させる、
ことを特徴とする、光造形装置。
【請求項6】
3次元造形物の製造方法であって、
2次元状に配置された複数の画素を備え、前記複数の画素のそれぞれにおける露光用光のON-OFF状態を個別に切り替え可能なプロジェクタにより3次元形状データに基づいてあらかじめ作成された露光パターンに従って光硬化性材料を露光する露光工程、
を備え、
前記露光工程においては、前記複数の画素のうち隣り合う2つの画素の中心位置同士が第1の方向に所定の描画ピッチだけずれるように前記第1の方向に直交する第2の方向に対し傾斜した姿勢の前記プロジェクタに、前記第2の方向における往復移動を前記第1の方向へのステップ移動を挟みつつ交互に繰り返させるようにしながら、前記プロジェクタが前記描画ピッチに相当する距離を移動するごとにそれぞれの前記画素における前記露光用光の前記ON-OFF状態を前記露光パターンに基づき個別に切り替えさせることにより、前記光硬化性材料の所定の描画エリアに対する露光を、それぞれが前記第2の方向に延在し第1の方向において所定の描画幅を有する複数のストリップ領域ごとに順次に行い、
前記光硬化性材料の複数の層を積層しつつ、前記露光工程によって前記複数の層のそれぞれを露光することにより、前記3次元造形物を得る場合に、前記複数のストリップ領域のうちの隣り合う2つのストリップ領域の繋ぎ部分を形成し、かつ、前記繋ぎ部分の面内位置を、前記複数の層のうちの少なくとも2つの層において互いに異ならせる、
ことを特徴とする、3次元造形物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光造形装置および3次元造形物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
3次元造形法は、複雑な3次元形状を直接造形加工できる点に大きな優位性を有する加工方法であり、従来の切削加工法による3次元立体加工物を得る方法に比べて自由度が非常に高く、その優位性は近年大きな注目を浴びている。
【0003】
3次元造形法の一つである3次元光造形法の先行事例としては、自由液面法と呼ばれる方法が広く知られており、レーザビームとガルバノミラーの走査露光系で実現されている。また、光硬化性材料の入った容器の底面側からガラス越しに、DMDによる一括露光により1層分造形し、次に必要厚み分、造形物を吊り上げて造形物の下に材料を充填する、という態様にて露光と吊り上げとを繰り返すことにより造形を行う、規制液面法と呼ばれる裏面露光方式なども公知である(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、近時、3次元光造形法としては、光硬化性樹脂を平面に塗布し、その上からレーザ走査により露光する方法が普及してきている。例えば、光硬化性モノマー樹脂(液体)にセラミックス粉体などを混錬したスラリーと呼ばれるペースト状の材料を造形テーブル上に薄く塗布し、その上からレーザ走査により必要な領域を露光して樹脂を硬化させることを繰り返して、3次元造形物を得る方法が、すでに公知である(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
また、DMDプロジェクタをミラー配列方向(行列方向)の例えば列方向に移動させながらパターンを流し露光する方式により、高速に露光(描画)を行う方法も知られている。ただし、この方式では行方向の投影画素サイズが描画最小単位となり、必ずしも高精細な描画には向いていない。この点を鑑み、この露光方式を改良した方式として、DMDミラーを移動方向に対し傾斜させて描画最小単位を微細にして露光する方式も、すでに公知である(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-124631号公報
【文献】特許第6438919号公報
【文献】特許第3938714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
3次元光造形法の優位性が広く認識されるにつれて、造形物の大型化、大面積化のニーズが高まっている。造形物のサイズが大きくなるほど、造形処理に要する時間が増大することになるため、生産性向上の観点からは当然に、造形処理の効率化のための方策が求められる。
【0008】
加えて、大型のまたは大面積の造形物を造形する場合においては、造形中の露光精度を安定させる必要がある。
【0009】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、造形物が大型化した場合であっても露光精度が好適に確保される光造形装置を提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、3次元造形物を得るための光造形装置であって、3次元形状データに基づいてあらかじめ作成された露光パターンに従って光硬化性材料を露光する露光手段と、前記光造形装置の動作を制御する制御手段と、を備え、前記露光手段が、2次元状に配置された複数の画素を備え、前記複数の画素のそれぞれにおける露光用光のON-OFF状態を個別に切り替え可能なプロジェクタ、を備え、前記プロジェクタは、前記複数の画素のうち隣り合う2つの画素の中心位置同士が第1の方向に所定の描画ピッチだけずれるように前記第1の方向に直交する第2の方向に対し傾斜した姿勢にて、前記第2の方向に移動自在とされてなり、かつ、前記第2の方向において前記描画ピッチに相当する距離を移動するごとに前記露光用光のON-OFF状態が切り替え可能とされてなり、前記制御手段は、前記プロジェクタに、前記第2の方向における往復移動を前記第1の方向へのステップ移動を挟みつつ交互に繰り返しながら前記露光パターンに基づきそれぞれの前記画素における前記露光用光の前記ON-OFF状態を個別に切り替えることにより、前記光硬化性材料の所定の描画エリアに対する露光を、それぞれが前記第2の方向に延在し第1の方向において所定の描画幅を有する複数のストリップ領域ごとに順次に行わせ、前記光硬化性材料の複数の層を積層させつつ、前記露光手段によって前記複数の層のそれぞれを露光させることにより、前記3次元造形物を得る場合に、前記複数のストリップ領域のうちの隣り合う2つのストリップ領域の繋ぎ部分を形成し、かつ、前記繋ぎ部分の面内位置を、前記複数の層のうちの少なくとも2つの層において互いに異ならせる、ことを特徴とする。
【0012】
請求項の発明は、請求項1に記載の光造形装置であって、前記制御手段は、前記光硬化性材料の前記複数の層を積層させつつ、前記露光手段によって前記複数の層のそれぞれを露光させることにより、前記3次元造形物を得る場合に、前記繋ぎ部分の面内位置を、前記複数の層のそれぞれにおいて他の層と異ならせる、ことを特徴とする。
【0013】
請求項の発明は、請求項に記載の光造形装置であって、前記描画幅がLであり、前記複数の層の積層数がNである場合に、前記プロジェクタが前記複数の層のそれぞれを露光するときの前記繋ぎ部分の面内位置を、前記複数の層のうちの最初に露光した層における前記繋ぎ部分の面内位置からL/Nの整数倍だけ前記第1の方向にシフトさせる、ことを特徴とする。
【0014】
請求項の発明は、請求項1ないし請求項のいずれかに記載の光造形装置であって、造形テーブルと、前記造形テーブルの上に、前記光硬化性材料としてスラリーを吐出可能な吐出手段と、前記造形テーブルの上に吐出された前記スラリーを掃引し、所定の厚みのスラリー膜を形成する掃引手段と、をさらに備え、前記制御手段は、前記吐出手段からの前記スラリーの吐出と前記掃引手段による吐出された前記スラリーの掃引とを繰り返すことによって、前記複数の層として複数のスラリー膜を積層する、ことを特徴とする。
【0015】
請求項の発明は、3次元造形物を得るための光造形装置であって、造形テーブルと、3次元形状データに基づいてあらかじめ作成された露光パターンに従って光硬化性材料を露光する露光手段と、前記造形テーブルの上に、前記光硬化性材料としてスラリーを吐出可能な吐出手段と、前記造形テーブルの上に吐出された前記スラリーを掃引し、所定の厚みのスラリー膜を形成する掃引手段と、前記光造形装置の動作を制御する制御手段と、を備え、前記露光手段が、2次元状に配置された複数の画素を備え、前記複数の画素のそれぞれにおける露光用光のON-OFF状態を個別に切り替え可能なプロジェクタ、を備え、前記プロジェクタは、前記複数の画素のうち隣り合う2つの画素の中心位置同士が第1の方向に所定の描画ピッチだけずれるように前記第1の方向に直交する第2の方向に対し傾斜した姿勢にて、前記第2の方向に移動自在とされてなり、かつ、前記第2の方向において前記描画ピッチに相当する距離を移動するごとに前記露光用光のON-OFF状態が切り替え可能とされてなり、前記制御手段は、前記プロジェクタに、前記第2の方向における往復移動を前記第1の方向へのステップ移動を挟みつつ交互に繰り返しながら前記露光パターンに基づきそれぞれの前記画素における前記露光用光の前記ON-OFF状態を個別に切り替えることにより、前記光硬化性材料の所定の描画エリアに対する露光を、それぞれが前記第2の方向に延在し第1の方向において所定の描画幅を有する複数のストリップ領域ごとに順次に行わせ、前記光硬化性材料の複数の層を積層させつつ、前記露光手段によって前記複数の層のそれぞれを露光させることにより、前記3次元造形物を得る場合には、前記吐出手段からの前記スラリーの吐出と前記掃引手段による吐出された前記スラリーの掃引とを繰り返すことによって、前記複数の層として複数のスラリー膜を積層させるとともに、前記複数のストリップ領域のうちの隣り合う2つのストリップ領域の繋ぎ部分を形成させ、前記複数のスラリー膜のそれぞれを形成する際に、当該スラリー膜が、前記3次元造形物の造形のために本来的に前記スラリーの塗布が必要な第1の領域に加え、前記第1の領域よりも前記掃引手段の掃引開始位置寄りの所定範囲に設定された第2の領域と、前記第1の領域と前記第2の領域との間の第3の領域とを含むように、少なくとも前記吐出手段と前記掃引手段とを制御し、かつ、前記スラリー膜の水平面内における重心位置が、前記造形テーブルの水平面内における重心位置と、略一致あるいは近接するようにし、前記露光手段に、前記第1の領域を前記露光パターンに応じて露光する際に、前記第2の領域も併せて露光させ、前記複数のスラリー膜の第m層(mは2以上の整数)を形成する際は、前記吐出手段に、第(m-1)層の前記スラリー膜の前記第2の領域の上に前記スラリーを吐出させる、ことを特徴とする。
【0016】
請求項の発明は、3次元造形物の製造方法であって、2次元状に配置された複数の画素を備え、前記複数の画素のそれぞれにおける露光用光のON-OFF状態を個別に切り替え可能なプロジェクタにより、3次元形状データに基づいてあらかじめ作成された露光パターンに従って光硬化性材料を露光する露光工程、を備え、前記露光工程においては、前記複数の画素のうち隣り合う2つの中心位置同士が第1の方向に所定の描画ピッチだけずれるように前記第1の方向に直交する第2の方向に対し傾斜した姿勢の前記プロジェクタに、前記第2の方向における往復移動を前記第1の方向へのステップ移動を挟みつつ交互に繰り返させるようにしながら、前記プロジェクタが前記描画ピッチに相当する距離を移動するごとにそれぞれの前記画素における前記露光用光の前記ON-OFF状態を前記露光パターンに基づき個別に切り替えさせることにより、前記光硬化性材料の所定の描画エリアに対する露光を、それぞれが前記第2の方向に延在し第1の方向において所定の描画幅を有する複数のストリップ領域ごとに順次に行い、前記光硬化性材料の複数の層を積層しつつ、前記露光工程によって前記複数の層のそれぞれを露光することにより、前記3次元造形物を得る場合に、前記複数のストリップ領域のうちの隣り合う2つのストリップ領域の繋ぎ部分を形成し、かつ、前記繋ぎ部分の面内位置を、前記複数の層のうちの少なくとも2つの層において互いに異ならせる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1ないし請求項の発明によれば、繋ぎ部分の存在が造形精度に与える影響を好適に抑制することができ、寸法精度に優れた造形物を得ることができる。
【0018】
また、請求項の発明によれば、造形物の重量が大きい場合であっても、造形テーブルに偏荷重が加わることが好適に抑制され、係る偏荷重に起因した造形精度(露光精度)の低下が、好適に抑制される。加えて、造形物の平面サイズが小さい場合には、造形テーブルに偏荷重が加わることを好適に抑制しつつ、必要最小限の吐出量にて吐出されたスラリーにて必要なサイズのスラリー膜を形成することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】光造形装置1の概略的な構成を示す斜視図である。
図2】光造形装置1の要部についての機能ブロック図である。
図3】光造形装置1における主たる構成要素の配置関係を示す側面図である。
図4】光造形装置1の一連の動作を示すフローチャートである。
図5】光造形装置1の一連の動作を示すフローチャートである。
図6】光造形装置1の一連の動作を示すフローチャートである。
図7】光造形装置1における造形途中の様子を模式的に示す側面図である。
図8】光造形装置1における造形途中の様子を模式的に示す側面図である。
図9】光造形装置1における造形途中の様子を模式的に示す側面図である。
図10】光造形装置1における造形途中の様子を模式的に示す側面図である。
図11】光造形装置1における造形途中の様子を模式的に示す側面図である。
図12】光造形装置1における造形途中の様子を模式的に示す側面図である。
図13】光造形装置1における造形途中の様子を模式的に示す側面図である。
図14】光造形装置1における造形途中の様子を模式的に示す側面図である。
図15】光造形装置1における造形途中の様子を模式的に示す側面図である。
図16】光造形装置1における造形途中の様子を模式的に示す側面図である。
図17】光造形装置1における造形途中の様子を模式的に示す側面図である。
図18】光造形装置1における造形途中の様子を模式的に示す側面図である。
図19】光造形装置1における造形途中の様子を模式的に示す側面図である。
図20】光造形装置1における造形途中の様子を模式的に示す側面図である。
図21】光造形装置1における造形途中の様子を模式的に示す側面図である。
図22】光造形装置1においてプロジェクタ21により行われる傾斜露光の概略図である。
図23】プロジェクタ21の画素配置と傾きについて説明するための図である。
図24】プロジェクタ21の画素配置と傾きについて説明するための図である。
図25】プロジェクタ21が移動しつつ描画エリアDAを所定の描画パターンに従って描画幅Lにて露光する際の、露光パターンの変化について例示する図である。
図26】繋ぎ部分の影響を解消する露光態様について説明するための図である。
図27】繋ぎ部分の影響を解消する露光態様について説明するための図である。
図28】光造形装置1においてスラリー被吐出領域を同時形成する場合の造形途中の様子を模式的に示す側面図である。
図29】光造形装置1においてスラリー被吐出領域を同時形成する場合の造形途中の様子を模式的に示す側面図である。
図30】光造形装置1においてスラリー被吐出領域を同時形成する場合の造形途中の様子を模式的に示す側面図である。
図31】光造形装置1においてスラリー被吐出領域を同時形成する場合の造形途中の様子を模式的に示す側面図である。
図32】造形物の平面サイズが造形テーブル11の平面サイズに比して小さい場合の、造形途中の様子を示す側面図である。
図33】自由液面法により3次元造形物を形成する装置の概観図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
自由液面法で用いられているレーザ走査方式は、露光スポット径を微細に絞り込めること、および、ポインティングの位置制御を描画面において1ミクロンレベルで制御が可能であることから、高精細描画には優位な露光方式である。しかしながら、レーザ走査型の露光方式の場合、基本的にはレーザ光による、いわゆる一筆書きのように、輪郭や塗りつぶし領域を順次に行う、レーザ光の1点での走査露光となる。そのため、描画面積当たりの露光時間は描画面積に対しほぼ比例する。例えば、20cm角エリアの描画を30μmビーム径のレーザ光で描画する場合、1面(1層)当たりの露光に数十分を要する、という事例がある。
【0021】
一方、規制液面法で用いられているDMDプロジェクタ投影による一括露光の場合、エネルギーレベルにもよるが、原理的には面積当たりの露光時間は非常に短い。係るDMD一括露光方式の場合、光学系で縮小投影すれば1μmレベルの微細画素による露光も可能ではあるが、一度の露光での描画エリアが非常に狭くなるため、Step&Repeatによる露光が必要となり、造形生産性が一気に落ちる。そのため通常では50μm画素サイズなどで投影露光し、生産性とのバランスを取るのが一般的である。従って、この画素サイズが描画の最小単位とならざるを得ない。当然ながら大面積を露光する場合も同様にStep&Repeatで順次に露光することとなるので、微細描画を行おうとすればこの方式においても露光時間が増大することとなる。
【0022】
また、特許文献3に開示されているような露光方式は従前、プリント基板の露光など、単一の面のみを露光する装置に用いられている。プリント基板への露光では通常、500mm角などの大面積をミクロンレベルで高精細に描画する必要があるため、この露光方式では往復描画を行うのが一般的である。すなわち、DMDプロジェクタによる所定幅での往路と復路の露光(単位露光)を、一の移動が完了するたびに所定ピッチにてDMDプロジェクタを露光方向に垂直な方向にシフトさせつつ繰り返すことにより、対象領域全体が露光される。
【0023】
係る場合、厳密にみれば、隣り合う単位露光領域の繋ぎ部分の露光状態は、他の部分とは異なっている。ただし、プリント基板のような単一面への露光の場合、この点は実質的な問題とはなりがたい。しかしながら、上記露光方式を3次元造形に適用するとなれば、1面の露光のみでなく数十層、あるいは百層以上のスラリー膜が順次に積層される都度、露光を行うことが普通である。
【0024】
また、特許文献2には、高さ方向に大きい造形物を得るための方策として、造形テーブルの側方に昇降自在な塗布台(補助テーブル)を設け、該塗布台に光硬化性材料を吐出し、その後、ブレードによる掃引にて造形テーブル上に材料を引き延ばす手法が、開示されている。係る場合、塗布台の位置は原理的に造形テーブルの側方に限られるため、造形物は通常、塗布台に近接する造形テーブルの端部に造形されることとなる。
【0025】
<装置の概要>
図1は、本実施の形態に係る光造形装置1の概略的な構成を示す斜視図である。図2は、光造形装置1の要部についての機能ブロック図である。図3は、光造形装置1における主たる構成要素の配置関係を示す側面図である。
【0026】
本実施の形態に係る光造形装置1は、概略、光硬化性モノマー樹脂(液体)にセラミックス粉体(例えばアルミナ)などを混錬したスラリーと呼ばれるペースト状の材料を造形テーブル上に薄く塗布し、得られたスラリー膜(層)に対しその上からレーザ、LED等の光を照射して必要な領域を露光して樹脂を硬化させることを、順次に積層されるスラリー膜に対し繰り返して、3次元造形物(積層体)を得る装置である。なお、以降においては、光造形装置1において行われる、露光用のパターンデータに基づく露光のことを、描画とも称する。
【0027】
光造形装置1は、造形テーブル11と、補助テーブル12と、露光ユニット20と、リコートユニット30と、スラリー吐出ポンプ40と、コントローラC(図2)とを、主として備える。なお、図1においては、補助テーブル12から造形テーブル11へと向かう向きをy軸正方向とし、鉛直方向上向きをz軸正方向とする右手系のxyz座標を付している(以降においても同様の座標系を用いる)。
【0028】
造形テーブル11は、その上面において造形が行われる平面視矩形状のテーブルである。造形テーブル11は、矢印AR1にて示すようにz軸方向に昇降自在とされてなる。係る昇降動作は、z軸昇降機構11M(図2)により実現される。具体的には、図3に示すように、初期位置11a(高さh1)と、吐出・露光位置11b(高さh2)と、リコート位置11c(高さh3)との間で主に移動させられる。
【0029】
概略的にいえば、造形テーブル11は、スラリーの塗布とこれに続く露光の際には初期位置11aから上昇させられ、造形物の形成が進行する都度(各層の形成が完了する都度)、必要量下降させられる。
【0030】
造形テーブル11は、大型の造形物を造形可能とするべく、少なくとも600mm×600mm以上の造形エリアを有するのが好ましく、650mm×650mm以上の造形エリアを有するのがより好ましい。
【0031】
また、造形テーブル11は、その上面に複数の吸着溝(溝部)11gを備える。複数の吸着溝11gは、造形に際して造形テーブル11の上面に敷設されるフィルム(例えば保護フィルム)を固定する際に使用される。複数の吸着溝11gは、造形エリア全般に渡って設けられる。より具体的には、複数の吸着溝11gはエア吸着吹出機構11AR(図2)と連通しており、コントローラC(本開示の制御手段の一例)の制御により、フィルムが敷設された状態でエア吸着吹出機構11ARが複数の吸着溝11gに対し負圧を与えることで、フィルムが真空吸着される。
【0032】
なお、造形物が完成した後の搬送時には、コントローラCの制御により、係る真空吸着は解除され、代わって、エア吸着吹出機構11ARから吸着溝11gへとエアが供給される。これにより、造形物はフィルムともども造形テーブル11からわずかに浮き上がるので、後述するフィルムグリッパ52によりフィルムを把持してその上の造形物ごと搬送することが、容易となる。
【0033】
補助テーブル12は、フィルムの準備や完成した造形物の搬送に用いられる平面視矩形状のテーブルである。補助テーブル12は、造形テーブル11と略同一の平面サイズを有する。補助テーブル12は、固定部(サポート)12Fに載置支持され、かつ、図3に示すように、造形テーブル11の初期位置11aと同じ高さh1に備わっている。補助テーブル12は、固定部12Fともども、矢印AR2にて示すようにy軸方向に進退自在とされてなる。具体的には、通常位置12aと、初期位置11aにある造形テーブル11とy軸方向正側において面一に隣接する隣接位置12bとの間で進退移動するようになっている。係る進退動作は、固定部12Fに備わるy軸移動機構12M(図2)により実現される。y軸移動機構12Mは、アクチュエータを備えている。
【0034】
また、補助テーブル12も、その上面に複数の吸着溝(溝部)12gを備える。複数の吸着溝12gは、造形に際して造形テーブル11の上面に敷設されるフィルムを、係る敷設に先立っていったん固定する際に使用される。より具体的には、複数の吸着溝12gは固定部12Fを通じてエア吸着吹出機構11AR(図2)と連通しており、フィルムが敷設された状態でエア吸着吹出機構11ARが複数の吸着溝12gに対し負圧を与えることで、フィルムが真空吸着される。補助テーブル12にいったん敷設されたフィルムは、後述する吸着パッドユニット51によって造形テーブル11へと搬送される。
【0035】
さらに、補助テーブル12は、通常位置12aにおいて固定部12Fから着脱自在とされてなる。すなわち、y軸移動機構12Mやエア吸着吹出機構11ARから分離して運搬することが可能な可搬性を有してなる。本実施の形態に係る光造形装置1においては、係る補助テーブル12の可搬性を利用して、完成後、補助テーブル12に移載された造形物を、補助テーブル12ごと搬送できるようになっている。
【0036】
エア吸着吹出機構11ARは、例えば、図3に示すように、真空ポンプ(本開示の吸着手段の一例)PP1と圧縮空気ポンプ(本開示のエア供給手段の一例)PP2と切替弁VLV1およびVLV2とを備える。切替弁VLV1およびVLV2はそれぞれ、造形テーブル11および補助テーブル12において真空ポンプPP1による吸着と圧縮空気ポンプPP2によるエアの吹出しとを切り替える切替装置として動作する。コントローラCは、真空ポンプPP1、圧縮空気ポンプPP2、および切替弁VLV1、VLV2を制御し、フィルムの真空吸着/エア浮上を切り替える。
【0037】
複数の吸着溝11gは互いに独立な複数のゾーンznに分散して設けられ、切替弁VLV1およびVLV2も、それぞれのゾーンznごとに真空ポンプPP1による吸着と圧縮空気ポンプPP2によるエアの吹出しとを切り替えるようになっている。搬送時には造形物のサイズおよび位置に応じて適宜のゾーンznの吸着溝11gが選択的に使用される。なお、図1においては、矩形状の吸着溝11gおよび12gが2次元的に配置されているが、これはあくまで例示であって、ストライプ状など他の配置態様にて複数の吸着溝11gおよび12gが備わる態様であってもよい。
【0038】
露光ユニット(露光手段の一例)20は、光を照射する一つないし複数のプロジェクタ21を備えた光源である。プロジェクタ21は、レーザ、LEDなどの発光素子を備える。露光ユニット20は、矢印AR3にて示すようにy軸方向に進退自在とされてなる。係る進退動作は、図1においては図示を省略する、左右1対に設けられたリニアモータ20M(図2)により、実現される。
【0039】
プロジェクタ21は、造形テーブル11上に形成されたスラリー塗布膜に対しパターン露光(投影)を行う要素である。プロジェクタ21による露光は、例えばDMD投影方式にて行われる。すなわち、プロジェクタ21をステップ状にあるいは連続的にy軸方向に移動させつつ投影(露光)パターン(データ)を流し込み、パターンの投影を行うようにする。そして一の方向への移動が完了したプロジェクタ21は、x軸方向に所定距離だけ移動させられ、再びy軸方向を反対向きへと移動しつつ露光を行う。すなわち、本実施の形態においては、所定幅の領域毎に、ストリップ状に露光が実行される。各層において、全ての造形対象エリアについて露光が完了するまで、これらの動作が繰り返される。
【0040】
より詳細には、プロジェクタ21はy軸方向に対しわずかに傾斜させて配置されており、係る傾斜姿勢のまま移動させられる。それゆえ、本実施の形態に係る光造形装置1において行う方式を特に、傾斜露光方式とも称する。傾斜露光方式についての詳細は後述する。
【0041】
プロジェクタ21は、造形テーブル11の吐出・露光位置11bから所定のプロジェクタ作動距離(Proj_WD)だけz軸上方に離隔した高さに下端が位置するように、配置されてなる。
【0042】
なお、図1に示す光造形装置1には、4つのプロジェクタ21(21a~21d)がx軸方向に等間隔に備わっており、これらが同期して露光を行うようになっている。
【0043】
プロジェクタ21のy軸方向の移動は、露光ユニット20全体が移動することによって実現される。一方、矢印AR4にて示すx軸方向の移動は、x軸移動機構21M(図2)により実現される。x軸移動機構21Mはアクチュエータを備えている。
【0044】
リコートユニット30は、リコータ(本開示の掃引手段の一例)31と、スラリー吐出ポンプ(本開示の吐出手段の一例)40と、スクリュー42とが一体となったユニットである。リコートユニット30は、矢印AR6にて示すようにy軸方向に進退自在とされてなる。係る進退動作は、図1においては図示を省略する、左右1対に設けられたリニアモータ30M(図2)により、実現される。好ましくは、リニアモータ30Mのガイドレールは、露光ユニット20を移動させるためのリニアモータ20Mと共用される。
【0045】
リコータ31は、造形テーブル11上に吐出されたスラリーを掃引塗布するブレード状の部材である。リコータ31は、その長手方向をx軸方向に延在させる態様にてリコートユニット30に付設されており、x軸方向のサイズは、造形テーブル11のx軸方向のサイズと略同一となっている。リコータ31は、造形テーブル11と所定の距離を保ちつつリコートユニット30の移動によりy軸方向に移動し、造形テーブル11上に吐出されたスラリーをy軸方向に拡げてスラリー膜を形成する。
【0046】
使用後のリコータ31は、清掃ユニット(クリーナー)32により清掃される。清掃ユニット32は、リコータ31の一方端側の下方位置に、矢印AR7にて示すように、使用高さ32a、造形時待機高さ32b、待機高さ32cの間を昇降するように配置されている。加えて、清掃ユニット32は、使用高さ32aにおいて、矢印AR8にて示すようにx軸方向に移動自在とされてなる。清掃ユニット32は、ヘラ、ブラシ等を備えたものであってもよいし、他の構成を有するものであってもよい。
【0047】
リコータ31の使用後、使用高さ32aに配置された清掃ユニット32がリコータ31と接触しつつx軸方向に移動することで、リコータ31に付着(残存)しているスラリーが除去される。これにより、リコータ31は清掃される。
【0048】
その後、スラリーの塗布が繰り返される場合、清掃ユニット32は造形時待機高さ32bにて待機する。塗布が全て終了した後は、次回の使用時まで、待機高さ32cにて待機する。
【0049】
矢印AR7にて示す清掃ユニット32のz軸方向の移動は、z軸昇降機構31M1(図2)により実現される。矢印AR8にて示す清掃ユニット32のx軸方向の移動は、x軸移動機構31M2(図2)により実現される。x軸移動機構31M2はアクチュエータを備えている。
【0050】
スラリー吐出ポンプ40は、内部に造形用のスラリーを貯留し、造形に際して該スラリーを造形テーブル11上に吐出する機能を有するポンプである。スラリー吐出ポンプ40はリコートユニット30の移動によりy軸方句を移動するほか、x軸移動機構40M(図2)により矢印AR9にて示すようにx軸方向に移動可能とされてなる。x軸移動機構40Mはアクチュエータを備えている。
【0051】
スラリー吐出ポンプ40には、スラリーの吐出動作を担うスクリュー42が付設されてなる。スクリュー42は、スクリュー駆動モータ42Mにて回転させられる。スラリー吐出ポンプ40の内部でスクリュー42が回転することにより、スラリー吐出ポンプ40の下端部からスラリーが吐出される。スクリュー42の回転数に応じてスラリー吐出ポンプ40からのスラリーの吐出量が変化する。なお、スラリー吐出ポンプ40の下端と、造形テーブル11の吐出・露光位置11bとの距離である吐出高さh4は、スラリーの材質等を勘案して適宜に設定される。
【0052】
さらに、光造形装置1は、フィルムの移動を担う構成要素として、本開示の吸着搬送手段の一例である吸着パッドユニット(吸着キャリア)51と、本開示の把持搬送手段の一例であるフィルムグリッパ52とを備える。
【0053】
吸着パッドユニット51は、補助テーブル12上にセットされたフィルムを吸着し、造形テーブル11上へ移設するためのフィルム吸着機構である。吸着パッドユニット51は、コントローラCの制御により、常時は露光ユニット20の待機位置の下方に設定された待機位置51a(図3)にて待機し、使用時には、図示しないピン嵌合にて露光ユニット20の下部に合体させられる。そして、露光ユニット20の移動に伴いy軸負方向に移動し、隣接位置12bに移動してきた補助テーブル12のy軸正方向端部の上方位置である吸着位置51bにて、補助テーブル12上のフィルムのy軸正方向端部を吸着させる。係る吸着状態を保ちつつ、露光ユニット20がy軸正方向に移動することにより、吸着パッドユニット51は終端位置51cまで移動し、これによりフィルムは造形テーブル11へと搬送される。
【0054】
フィルムの吸着および解除は、矢印AR5にて示すように吸着パッドユニット51が上下動することにより行われる。係る上下動は、エアシリンダ51ASにより実現される。なお、駆動のエアは、露光ユニット20に儲けられた図示しないジョイント口から供給される。
【0055】
フィルムグリッパ52は、完成した造形物を造形テーブル11から補助テーブル12へと搬送する際に使用される、一対のフィルム把持機構である。フィルムグリッパ52は、コントローラCの制御により、常時は、補助テーブル12のx軸方向両側端部であってリコートユニット30の待機位置の下方に設定された待機位置52a(図3)にて待機し、使用時には、図示しないピン嵌合にてリコートユニット30の下部に合体させられる。そして、リコートユニット30の移動に伴いy軸正方向に移動し、造形テーブル11のy軸方向負側の両側端部に設定された把持位置52bにおいて、造形物ともどもエア浮上された状態のフィルムの両端を把持する。係る把持状態を保ちつつ、リコートユニット30がy軸負方向に移動することにより、フィルムおよびその上面に載置されてなる造形物が、補助テーブル12へと搬送される。その際には、圧縮空気ポンプPP2からのエアの供給を受ける吸着溝11gおよび12gが属するゾーンznが、造形物の移動に応じて順次に切り替えられる。すなわち、移動する造形物をエア浮上させるのに必要な吸着溝11gおよび12gのみが、順次にかつ選択的に使用される。
【0056】
造形物の搬送の際、フィルムの直下に位置しない吸着溝11gおよび12gまたは造形物の直下に位置しない吸着溝11gおよび12gからのエア供給は停止してもよい。これにより、上方にフィルムまたは造形物が存在しない負荷の少ない吸着溝11gおよび12gから多量のエアが吹き出されることを防ぎ、造形物を浮上させるために必要な造形物の直下に位置する吸着溝11gおよび12gから十分なエアの吹き出しを行うことができる。コントローラCは、フィルムの搬送距離に応じてエアを供給するゾーンを決定してもよいし、センサによりフィルムおよび/または造形物の位置を検出し、検出結果に応じてエアを供給するゾーンを決定してもよい。
【0057】
その他、光造形装置1は、ファンフィルタユニット(FFU)15などをさらに備える。FFU15は、光造形装置1内の清浄度を維持ための機構である。
【0058】
以上のような構成を有する光造形装置1の各部の動作は全て、コントローラC(図2)により制御される。コントローラCは、汎用のもしくは専用のコンピュータによって実現可能である。
【0059】
好ましくは、コントローラCは、造形対象の3次元形状データ(CADデータ)をプロジェクタ21による1層ごとのストリップ状の露光に使用可能な投影(露光)パターンデータに変換する造形データ処理部C1を備える。係る造形データ処理部C1にて生成されるスライスデータが順次に、プロジェクタ21によるパターン露光に使用される。
【0060】
なお、造形データ処理部C1がコントローラCとは別体のコンピュータとして備わる態様であってもよい。
【0061】
<光造形装置の動作>
図4ないし図6は、光造形装置1において造形物が造形される際の、光造形装置1の一連の動作を示すフローチャートである。図7ないし図21は、光造形装置1における造形途中の様子を模式的に示す側面図である。
【0062】
まず、各部・ユニットが初期位置(待機位置)へと移動させられる(ステップS1)。具体的には、造形テーブル11、補助テーブル12、露光ユニット20、リコートユニット30が初期位置に配置される。
【0063】
続いて、図7に示すように、補助テーブル12の上に、作業者がフィルムF(保護シート、あるいは単にシートとも称する)を手作業で載置(積載)する(ステップS2)。フィルムFは、補助テーブル12の全面を覆うように載置される。載置されたフィルムFは、エア吸着吹出機構11ARが複数の吸着溝12gに対し負圧を与えることで、フィルムFは補助テーブル12に真空吸着される。また、フィルムFが載置された補助テーブル12は、図8に示すように、通常位置12aから隣接位置12bへと移動させられる。
【0064】
フィルムFがセットされると、吸着パッドユニット51がピン嵌合にて露光ユニット20に合体される(ステップS3)。その際、ジョイント接続により露光ユニット20側からエアシリンダ51ASに対しエアが供給される。
【0065】
続いて、露光ユニット20がy軸負方向へと移動することにより吸着パッドユニット51が吸着位置51bへと移動する(ステップS4)。吸着パッドユニット51はエアシリンダASにて駆動されて下降し、図9に示すように、フィルムFを吸着する(ステップS5)。係る吸着に伴い、補助テーブル12に対するフィルムFの真空吸着は解除される。
【0066】
吸着パッドユニット51がフィルムFを吸着した状態のまま、露光ユニット20がy軸正方向へと移動する(ステップS6)。これにより、図10に示すように、フィルムFが造形テーブル11上に搬送される。吸着パッドユニット51が終端位置51cまで移動し、フィルムFが造形テーブル11の全体を覆った時点で露光ユニット20は停止する。
【0067】
係る停止と同時に、エア吸着吹出機構11ARが複数の吸着溝11gに対し負圧を与えることで、フィルムFは造形テーブル11に真空吸着される(ステップS7)。一方、吸着パッドユニット51による吸着は解除される(ステップS8)。
【0068】
続いて、露光ユニット20は待機位置へと移動させられ、ピン嵌合が解除されることにより吸着パッドユニット51が露光ユニット20から分離される(ステップS9)。併せて、図11に示すように、隣接位置12bにあった補助テーブル12は通常位置12aへと移動させられる(ステップS10)。なお、作業者がフィルムFを直接に造形テーブル11上に載置してもよい。
【0069】
次に、造形データ処理部C1において造形対象の3次元形状データ(CADデータ)からストリップデータが生成され(ステップS11)、さらには該ストリップデータに基づいて投影(露光)パターンデータが生成される(ステップS12)。ここで、ストリップデータとは、プロジェクタ21がy軸方向への一度の移動で露光を行う領域に対応した、3次元形状データの部分データである。
【0070】
生成された投影(露光)パターンデータはプロジェクタ21へと転送される(ステップS13)。転送が行われている間(ステップS14でNO)に、スラリーの塗布処理が平行して行われる。
【0071】
具体的には、補助テーブル12の通常位置12aへの移動(ステップS10)に続いて、フィルムFが吸着固定された造形テーブル11が高さh2の吐出・露光位置11bへと上昇させられる(ステップS15)。
【0072】
続いて、リコートユニット30がy軸正方向へと移動することで、スラリー吐出ポンプ40が所定のスラリー吐出位置へと移動させられる。スラリー吐出位置は、造形対象物のサイズや面積などに応じて適宜に設定されてよいが、通常は、図12に示すように、造形テーブル11のy軸方向奥側に設定される。係るスラリー吐出位置にて、下端の吐出口44が開状態とされたスラリー吐出ポンプ40がx軸方向に移動しつつ、スクリュー42を必要な回転数にて回転させられることで、所定量のスラリーが造形テーブル11上にライン状に吐出される(ステップS16)。
【0073】
なお、吐出開始点と吐出終了点の組は一組だけではなく、y軸方向に適宜の間隔Δpを開けて複数組設定されてもよい。そのようなスラリーの吐出態様を、マルチライン吐出と称する。必要な量のスラリーが全て吐出されるまで、吐出動作は行われる(ステップS17)。なお、マルチライン吐出が行われる場合、リコータ31の先端が吐出されたスラリーに触れないように、スラリー吐出ポンプ40の下端とリコータ31の下端との距離が好適に設定されている。
【0074】
スラリーの吐出が完了すると(ステップS17でYES)、吐出口44はシャッター等により閉状態とされ、次いで、リコートユニット30はリコート開始位置へと移動する(ステップS18)。リコートユニット30の移動に続き、造形テーブル11が、吐出・露光位置11bからリコート位置11cへと上昇させられる(ステップS19)。その際、リコート位置11cとリコータ31の下端との距離は、形成しようとするスラリー膜SLFの厚みに応じた塗布高さh5とされる。なお、リコート開始位置は、通常、リコータ31がスラリーの吐出範囲よりもさらにy軸方向正側に位置するように設定される。
【0075】
造形テーブル11がリコート位置11cに到達すると、リコートユニット30はy軸負方向へと移動する。これにより、図13に示すように、造形テーブル11上に吐出されていたスラリーがリコータ31にて掃引されて、所定厚みのスラリー膜SLFが形成される(ステップS20)。
【0076】
リコータ31がy軸方向において所定距離移動することにより、造形テーブル11の所定範囲にスラリー膜SLFが形成されると、リコートユニット30はy軸負方向にさらに移動して、待機位置(リコータ清掃位置)に戻る(ステップS21、ステップS22でNO)。
【0077】
リコートユニット30が待機位置(リコータ清掃位置)に到達すると(ステップS22でYES)、それまで待機高さ32cにて待機していた清掃ユニット32が、図14に示すように清掃位置(使用高さ32a)まで上昇する(ステップS23)。清掃ユニット32はx軸方向を往復移動し、これによってリコータ31に付着(残存)しているスラリーは掻き落とされる(ステップS24)。すなわち、リコータ31が清掃される。
【0078】
清掃完了後、清掃ユニット32はx軸方向初期位置へと待避し(ステップS25)、さらには造形時待機高さ32bに待避する(ステップS26)。
【0079】
一方、リコータ31によるスラリー膜SLFの形成が完了し、リコートユニット30が清掃位置へと移動した後(ステップS22でYES)には、リコータ31の清掃と平行して、プロジェクタ21によるパターン露光が進行する。
【0080】
具体的にはまず、スラリー膜SLFが形成されてなる造形テーブル11がリコート位置11cから吐出・露光位置11bまで移動させられる(ステップS28)。続いて、露光ユニット20が露光開始位置に配置される(ステップS29)。より詳細には、露光ユニット20はy軸負方向を移動させられ、プロジェクタ21のx軸方向における位置が調整される。
【0081】
プロジェクタ21が所定の露光開始位置に配置されると、あらかじめ転送済みの露光パターンデータに基づき、露光ユニット20のy軸方向における連続往復移動と、プロジェクタ21のx軸方向におけるステップ移動との組み合わせによって、図15に示すように、スラリー膜SLFが、プロジェクタ21から照射される露光用光ELにて、ストリップ単位に露光される(ステップS30)。
【0082】
より詳細には、露光ユニット20のy軸方向への一度の移動により1つのストリップについて露光が完了した地点で、露光(描画)対象たるストリップがまだ残っている場合(ステップS31でNO)、次のストリップを対象としたストリップデータの作成(ステップS11)、露光パターンデータの生成(ステップS12)、および露光パターンデータの転送(ステップS13、ステップS14)が行われる。その上で、プロジェクタ21がx軸方向にステップ移動し、露光ユニット20がy軸方向を直近の描画時とは反対向きに移動することによって、新たに生成された露光パターンデータに基づく露光が行われる。
【0083】
全ストリップについて描画が完了すると(ステップS31でYES)、露光ユニット20は待機位置へと待避する(ステップS32)。その際には、プロジェクタ21も初期位置に移動する。なお、通常は、全ストリップについて描画が完了するまでの時点で、リコータ31の清掃(ステップS24)は完了しており、清掃ユニット32は造形時待機高さ32bへと移動している(ステップS27でYES)。
【0084】
以降、さらに別の層(スラリー膜SLF)について描画の必要がある場合(ステップS33でNO)、ステップS11以降の処理が繰り返される。つまりは、スラリー膜SLFの形成とパターン露光とが繰り返される。なお、係る場合においてスラリー膜SLFが形成されるのは、直近に露光が行われたスラリー膜SLFである。図16は、全ての層の露光が完了することで、未露光部分に埋もれた形で造形物(スラリー膜SLFの積層体LB)が完成した状態を示している。
【0085】
造形物が完成すると(ステップS33でYES)、未露光部分を除去して造形物を取り出すために、図17に示すように、造形テーブル11が初期位置11aまで下降させられる(ステップS34)。また、併せて、それまで造形時待機高さ32bに位置していた清掃ユニット32が待機高さ32cまで下降する(ステップS35)。
【0086】
さらに、待機位置52aに位置しているフィルムグリッパ52がピン嵌合にてリコートユニット30に合体される(ステップS36)。続いて、リコートユニット30がy軸正方向へと移動し、フィルムグリッパ52を造形テーブル11のy軸方向負側の両側端部の把持位置52bに配置させる(ステップS37)。フィルムグリッパ52は、係る位置にて、造形テーブル11において造形物の下に敷かれているフィルムFの端部を把持する(ステップS38)。
【0087】
一方、係る把持と並行して、通常位置12aにて待機していた補助テーブル12が隣接位置12bにまで移動させられる(ステップS39)。これにより、造形物およびフィルムFが載置されてなる造形テーブル11と補助テーブル12とが面一となる。この状態で、エア吸着吹出機構11ARが負圧を与えることによるフィルムFの造形テーブル11に対する真空吸着は解除され、代わって、エア吸着吹出機構11ARは、造形物を浮上させるために必要なゾーンの吸着溝11gさらには吸着溝12gに対し順次にかつ選択的にエアを供給する(ステップS40)。
【0088】
図18は、係るエア供給が行われている様子を示している。エア吸着吹出機構11ARはまず、コントローラCの制御により、造形物の位置に対応するゾーンの吸着溝11gに対しエアを供給する。エア供給が開始されると、それまで造形テーブル11に接していたフィルムFの裏面がエアにより上向きの力を受け、フィルムFの全部または一部が造形物ともどもわずかに浮き上がる。これにより、フィルムFの全部または一部および造形物は、造形テーブル11と非接触の状態となるので、水平方向に力を加えての搬送が容易となる。なお、図18の例では、まだ造形物が到達していない補助テーブル12の吸着溝12gからのエアの吹き出しは停止されている。
【0089】
係る非接触状態が実現されたタイミングで、リコートユニット30が移動することによってフィルムグリッパ52がy軸負方向を待機位置52aに向けて移動する。フィルムグリッパ52はエアによって浮き上がっているフィルムFを把持しているので、フィルムグリッパ52の移動に伴い、フィルムFおよびその上の造形物が、造形テーブル11の上から補助テーブル12の上へと移動する(ステップS41)。
【0090】
図19および図20は、係る移動の様子を示している。図19に示すように、フィルムF上に載置された造形物を搬送する際、コントローラCは、エア吸着吹出機構11ARに、造形物の位置に対応するゾーンの吸着溝11gおよび12gからエアを供給させ、当該ゾーンから外れた吸着溝11gおよび12gからのエアの供給を停止させる。これにより、図20に示すように、造形物をフィルムFの一部または全部とともに造形テーブル11および補助テーブル12から浮上させた状態で搬送が行われる。
【0091】
フィルムFおよび造形物の補助テーブル12への移動が完了すると、フィルムグリッパ52によるフィルムFの把持が解除される(ステップS42)。続いて、フィルムグリッパ52が合体してなるリコートユニット30はy軸方向を移動させられて待機位置へと戻され(ステップS43)、フィルムグリッパ52のリコートユニット30に対する合体が解除される(ステップS44)。
【0092】
さらに、造形物がフィルムFともども載置された補助テーブル12は、隣接位置12bから通常位置12aへと戻される。補助テーブル12は、係る通常位置12aにおいて固定部12Fから着脱自在となっており、作業者は、図21に示すように、補助テーブル12を固定部から取り外し、造形物を前記補助テーブル12ごとあらかじめ用意した搬送台CVに移載し、光造形装置1の外部へと搬送する(ステップS45)。これにより、造形物に直接に触れることなく搬送が行えるので、破損等のおそれが低減され、安定的な搬送が可能となる。
【0093】
以上が、本実施の形態に係る光造形装置1において実現される、造形物の作成とその後の取り出しとの手順である。本実施の形態に係る光造形装置1は特に、大型の造形物を作成する場合であっても、その取り出しが容易かつ確実に行えるようになっている点で特徴的である。
【0094】
具体的には、造形を行うための造形テーブル11の表面に設けた、真空吸着用の複数の吸着溝に対し、エアを供給可能としてなる。また、造形テーブル11とは別に、造形物の取り出し口として補助テーブル12を設け、係る補助テーブル12においても、造形テーブル11と同様にエアを供給可能としてなる。これにより、大型化、大面積化した造形物であっても、エアにて浮上させ、造形テーブル11および補助テーブル12と非接触とすることができるので、その下に敷いたフィルムを把持しての造形物の水平搬送(移載)が容易となる。
【0095】
加えて、補助テーブル12は、固定部12Fから着脱自在に設けられてなる。換言すれば、補助テーブル12は、それ自体に可搬性を有する。それゆえ、造形テーブル11から移載された造形物を、補助テーブル12ごと外部へと搬送することができる。これにより、造形物に接触することなく搬送が行えるので、破損等のおそれが低減された安定的な搬送が可能となる。
【0096】
<傾斜露光の詳細>
図22は、本実施の形態に係る光造形装置1においてプロジェクタ21により行われる傾斜露光の概略図である。
【0097】
まず、図22は、コントローラCの制御により、プロジェクタ21がある位置において描画パターンPTに対応する露光を行うときの様子を示している。
【0098】
上述のように、本実施の形態に係る光造形装置1においては、y軸方向に対しわずかに傾斜させて配置されたプロジェクタ21を、ステップ状にあるいは連続的にy軸方向に移動させつつ投影(露光)パターン(データ)を流し込み、パターンの投影を行う。実際には、露光ユニット20には4つのプロジェクタ21(21a~21d)がx軸方向に等間隔に備わっており、それら4つのプロジェクタ21a~21dが同時に露光を行うようになっている。図22にはその一部であるプロジェクタ21aおよび21bの動きを示している。すなわち、4つのプロジェクタ21は、描画エリアDAのy軸方向正側の端部とy軸方向負側との間におけるステップ状のあるいは連続的なy軸負方向への移動My1とy軸正方向への移動My2とを、x軸正方向へのステップ移動Mxを挟みつつ交互に行い、移動My1と移動My2の際に、投影(露光)パターンに従った投影(描画)を行う。
【0099】
図23および図24は、プロジェクタ21の画素配置と傾きについて説明するための図である。プロジェクタ21は、複数の画素PXLが二次元的に(例えば、矩形状に)配置された構成を有しており、それぞれの画素PXLにおける露光用光のON-OFF状態を、コントローラCによる露光パターンデータに応じた制御のもと、個別に切り替え可能となっている。なお、図23においては、ON状態にある画素PXL1と、OFF状態にある画素PXL2とを区別して示している。
【0100】
係るプロジェクタ21は、移動方向であるy軸方向に対し傾けて配置される。具体的には、必要な描画ピッチをRe(μm)とすると、y軸方向(図面視上下方向)における(実際にはわずかに傾斜している)画素PXLの配列において、隣り合う画素PXLの中心位置PXLc同士が、x軸方向に描画ピッチReだけずれるように、露光ユニット20にプロジェクタ21を傾けて配置する。このような傾きを与えることにより、x軸方向においても描画ピッチReを得ることができる。
【0101】
また、プロジェクタ21の移動My1、My2が行われるy軸方向(走査方向)においては、プロジェクタ21を距離Reずつ送り移動するごとに、露光パターンを切り替えて露光する。すなわち距離Re移動するごとに、描画切替(点灯制御)を行うことで、y軸方向において描画ピッチReが得られる。
【0102】
より詳細には、図24に示すように、画素PXLのサイズ(画素ピッチ)をP(μm)、当該サイズのx軸方向への投影サイズをPx(μm)、y軸方向への投影サイズをh(μm)とすると、Px:h=n:1(nは整数)であることが好ましい。例えば、プロジェクタ21における画素配列が1920画素×1080列である場合、露光条件の設定の自由度の高さなどを考慮すると、n=24であることが好ましい。
【0103】
なお、描画ピッチReは、画素サイズPよりも小さいものとする。またある位置におけるプロジェクタ21の各画素PXLの露光のON-OFFは、その中心位置PXLcが描画パターンPT内に入っているか否かで決定する。例えば、図23においては、プロジェクタ21が描画パターンPTに対応する露光を行う場合に、ON状態にされる画素PXL1とOFF状態にされる画素PXL2とを示している。
【0104】
また、本実施の形態においては、図23に示すように、画素PXLが矩形状に配置されたプロジェクタ21において、x軸方向負側端部でかつy軸方向正側端部の位置P1と、x軸方向正側端部でかつy軸方向正側端部の位置P2とのx軸方向距離を、描画幅Lと称する。係る描画幅Lは、プロジェクタ21がy軸方向において一の移動を行う際の露光領域である、y軸方向に延在するストリップ領域のx軸方向における幅である。なお、厳密には、プロジェクタ21は傾いているために、プロジェクタ21がy軸方向を移動する際には、上記位置P2と、プロジェクタ21のx軸方向正側端部でかつy軸方向負側端部の位置P3とがx軸方向においてなす幅ΔLの矩形領域にも露光は行われるが、当該領域は、次のy軸方向における露光の際のストリップ領域との重なり領域(「繋ぎ部分」とも称する)であり、通常はせいぜいx軸方向において2画素から3画素分程度である。
【0105】
図25は、プロジェクタ21が移動しつつ描画エリアDAを所定の描画パターンに従って描画幅Lにて露光する際の、露光パターンの変化について例示する図である。プロジェクタ21は、y軸方向へと少しずつ移動しながらストリップ露光を行う。それゆえ、図25に示すように、任意の時刻t=t(n)、t(n+1)、t(n+2)、t(n+3)における露光パターンは相異なるものとなる。しかしながら、局所的にみれば、プロジェクタ21の移動に伴い、該プロジェクタ21のy軸方向に沿って配列してなる相異なる画素PXLが、描画エリアDAの同一位置を次々と露光しているので、結果として、描画エリアDAの任意の位置において、略同一の露光光量(積算光量)での露光が行われるようになっている。本実施の形態に係る光造形装置1においては、係る態様にて露光が行われることにより、露光ユニット20を高速で移動させつつ、描画エリアDAを高精細に露光することができるようになっている。
【0106】
<ストリップ領域の繋ぎ部分のシフト>
図23および図25に示したように、描画幅Lにて描画エリアDAを対象とする露光を行う際には、隣り合うストリップ領域に幅ΔLの繋ぎ部分が形成される。スラリー膜の形成(積層)と露光とを繰り返すことで三次元造形物を得る、本実施の形態に係る光造形装置1においては、それぞれの層において係る繋ぎ部分が形成される。
【0107】
図26および図27は、係る繋ぎ部分の影響を解消する露光態様について説明するための図である。具体的には、図26はN層のスラリー膜にて造形物を作成する際の隣接する上下2層における露光態様を示している。なお、図26においては図示の簡単のため、描画パターンPTは1つのみ示しているが、各層において描画パターンPTは異なっていてもよい。
【0108】
本実施の形態においては、概略、各層に対する露光を行う際の繋ぎ部分の面内位置を、意図的に、別の層における繋ぎ部分の面内位置(水平位置)からシフトさせるようにする。一例としては、図26に示すように、下側のスラリー膜につき、描画エリアDA(DA1)を、矢印AR31aおよびAR31bにて示すようにプロジェクタ21を往復移動させることによって描画幅Lにて露光した場合、その上に形成するスラリー膜については、その繋ぎ部分JT(JTb)が直下の層における繋ぎ部分JT(JTa)からL/Nだけx軸正方向へとシフトするように描画エリアDA(DA2)設定し、係る描画エリアDA2を、矢印AR32aおよびAR32bにて示すようにプロジェクタ21を往復移動させることによって同じく描画幅Lにて露光する態様が挙げられる。なお、本開示において、「面内位置」とは、スラリー膜SLFに垂直な方向から見た場合のスラリー膜SLFの表面における位置をいう。
【0109】
係るシフトを全ての層において行った場合、図27(a)に示す断面図のように、スラリー膜の積層体LBとしての造形物においては、各層での隣り合うストリップ領域同士の繋ぎ部分JT(JT1、JT2、JT3・・・)が、1層ごとに水平方向へとずれていくことになる。係る場合、下から数えた場合に第k層(1≦k≦N)となるスラリー膜SLFにおける繋ぎ目部分の、第1層のスラリー膜における繋ぎ目部分からのシフト量は、(k-1)・(L/N)と表される。
【0110】
なお、図26においては一見、積層が進むにつれて描画エリアDAが描画パターンPTを覆わなくなるようにもみられるが、これはあくまで図示の都合によるものである。実際には、描画エリアのサイズは各層における描画パターンPTに応じて定まるものであり、各層における露光は、繋ぎ部分JTの位置シフトを行いつつ、描画パターンPTを覆うように設定された描画エリアDAを対象とするストリップ露光として行われる。
【0111】
なお、繋ぎ部分JT(JT1、JT2、JT3・・・)をシフトさせる態様は、図27(a)に示すような一方向へのシフトに限定されるものではなく、例えば、図27(b)に示す断面図のように、水平方向において略均等に位置するように行われてもよい。係る場合の、第k層となるスラリー膜SLFにおける繋ぎ目部分のシフト量は、シフトの向きも考慮すると(-1)k-1・(k-1)・(L/N)と表される。
【0112】
より一般化すると、N層のスラリー膜のそれぞれにおける繋ぎ部分JTの、第1層における繋ぎ部分JTの位置を基準とした第1の方向へのシフト量は、L/Nの整数倍であり、かつ、互いに相異なっている。
【0113】
繋ぎ部分の露光状態は、厳密にみれば他の部分とは異なっている。本実施の形態においては、例えば図27(a)または図27(b)のように、スラリー膜の積層体LBたる造形物において、各層における繋ぎ部分JTの面内位置を異ならせ(分散させ)、平均化されるようにする。あるいは、積層体LBにおいて、少なくとも2つの層の繋ぎ部分JTの面内位置を互いに異ならせてもよい。これにより、繋ぎ部分の存在が造形精度に与える影響が、好適に抑制され、寸法精度に優れた造形物を得ることが可能となる。例えば、数十、数百層のスラリー膜について積層と露光を繰り返す場合も、造形精度に対する繋ぎ部分の影響(より具体的には重ね露光によるエネルギーの変化に起因した体積変化)が累積して造形精度への影響が出ることを抑制することができる。
【0114】
以上、説明したように、本実施の形態によれば、スラリー膜の形成(積層)と露光との繰り返しにより三次元造形物を得る場合において、各層の露光にプロジェクタによる傾斜方式を採用し、該プロジェクタの描画幅に応じた複数のストリップ領域について順次に露光を行うようにする。そのうえで、少なくとも1つの層での隣り合うストリップ領域の繋ぎ部分の面内位置を、別の少なくとも1つ層における繋ぎ部分の面内位置からシフトさせるようにする。これにより、繋ぎ部分の存在が造形精度に与える影響を好適に抑制することができ、寸法精度に優れた造形物を得ることができる。
【0115】
なお、図27(c)に示す断面図のように、各層の繋ぎ部分JT(JT1、JT2、JT3・・・)の位置を水平方向において同じとしてもよい。
【0116】
<スラリー被吐出領域の同時形成>
次に、本実施の形態に係る光造形装置1における造形物の作製の一態様としての、スラリー被吐出領域を同時形成する造形態様について説明する。図28ないし図32は、光造形装置1においてスラリー被吐出領域を同時形成する場合の造形途中の様子を模式的に示す側面図である。
【0117】
ここで、スラリー被吐出領域とは、スラリー膜の積層体LBとして造形物を造形する場合に、それぞれの層の形成に際してスラリーSLが吐出される領域である。そして、係るスラリー被吐出領域の同時形成とは、第1層(最下層)以外の層の形成に先立って、その直下の層の形成と同時に、次に形成する層のためのスラリー被吐出領域を、スラリーの露光硬化にて形成する手法のことをいう。なお、第1層の形成の際には、フィルムFが吸着固定された造形テーブル11の上面における、スラリーの吐出対象領域が、スラリー被吐出領域となる。
【0118】
まず、図28に、第1層(最下層)の形成後の様子を示す。第1層の形成は、上述の手順に従って、造形テーブル11に吸着固定されたフィルムFの上にスラリー吐出ポンプ40からスラリーSLを吐出し、該スラリーSLをリコータ31にて掃引することによりスラリー膜SLF1を形成し、係るスラリー膜SLF1を所定の露光パターンにて露光することにより、行われる。
【0119】
ただし、係る第1層の形成に際しては、造形物の造形のために本来的にスラリーの塗布が必要な造形物形成領域RE1だけでなく、係る造形物形成領域RE1よりもy軸方向正側(リコータ31の掃引開始位置寄り)の所定範囲に設定されたスラリー被吐出領域RE2と、これら造形物形成領域RE1とスラリー被吐出領域RE2との間の境界領域RE3とにおいて連続する態様にて、スラリー膜SLF1を形成する。加えて、スラリー膜SLF1の水平面内における重心位置が、造形テーブル11の水平面内に重心位置と略一致あるいは近接するように、スラリー膜SLF1の形成範囲を設定する。
【0120】
造形物の造形のために本来的にスラリーの塗布が必要な造形物形成領域RE1とは、露光により光硬化させた部分が造形物となる領域である。一方、スラリー被吐出領域RE2では、第m層(mは2以上の整数)で光硬化させた部分が第(m+1)層のスラリー吐出用テーブルの役割を果たす。
【0121】
そして、これに続く露光に際しては、造形物形成領域RE1を描画パターンPTに応じて露光するとともに、スラリー被吐出領域RE2についても併せて露光を行うようにする。
【0122】
次に、図29に、第2層を形成する際のスラリーSLの吐出の様子を示す。また、図30には、第2層の形成後の様子を示す。
【0123】
第2層の形成は、先に形成したスラリー膜SLF1(第1層)の上にスラリー膜SLF2を形成することによりなされる。その際には、第1層のスラリー被吐出領域RE2の上にスラリーSLが吐出される。スラリー被吐出領域RE2は、露光により硬化し安定しているので、スラリー吐出ポンプ40からのスラリーSLの吐出と、これに続くリコータ31による掃引とは、好適に行われる。また、係る第2層の形成に際しても、第1層と同様に、造形物形成領域RE1とスラリー被吐出領域RE2と境界領域RE3とが連続する態様にて、スラリー膜SLF2を形成する。スラリー膜SLF1の上にスラリー膜SLF2を形成しているので、スラリー膜全体としての水平面内における重心位置は依然として、造形テーブル11の水平面内に重心位置と略一致あるいは近接している。
【0124】
そして、続く露光に際しても、第1層の形成時と同様に、造形物形成領域RE1を描画パターンPTに応じて露光するとともに、スラリー被吐出領域RE2についても露光を行うようにする。
【0125】
以降の各層の形成についても同様に、直前に形成したスラリー膜SLFのスラリー被吐出領域RE2の上にスラリーSLを吐出し、該スラリーSLをリコータ31にて掃引することにより造形物形成領域RE1とスラリー被吐出領域RE2と境界領域RE3とが連続してなるスラリー膜SLFを形成し、かつ、描画パターンPTに応じた造形物形成領域RE1の露光と、スラリー被吐出領域RE2の露光とを行うようにする。
【0126】
係る場合、スラリー膜全体としての水平面内における重心位置は常に、造形テーブル11の水平面内における重心位置と略一致あるいは近接した状態にある。それゆえ、積層数が大きくそれゆえ造形物の重量が大きい場合であっても、造形テーブル11に偏荷重が加わることが好適に抑制される。結果として、係る偏荷重に起因した造形精度(特に露光精度)の低下が、好適に抑制される。
【0127】
また、各層の形成のためのスラリーの吐出は、直前にスラリー膜の一部として形成され露光により硬化されたスラリー被吐出領域RE2の上に行うので、安定した掃引が可能となる。
【0128】
図31は、上述のようなスラリー膜SLFの形成と露光を繰り返すことによって、スラリー膜の積層体LBとしての造形物が形成されたときの様子を示している。図31に示すように、積層体LBは、本来の造形物としての積層部分LB1と、各層に設けたスラリー被吐出領域RE2の積層部分LB2と、同じく各層に設けた未硬化の境界領域RE3の積層部分LB3とから構成される。
【0129】
係る積層体LBは、上述した手順にて最終的に補助テーブル12ともども装置外へ搬送されるが、積層部分LB1と積層部分LB2との間に存在するのは未硬化の積層部分LB3であるので、搬送後、積層部分LB1を積層部分LB2から分離し、さらに積層部分LB3を除することは、容易に行い得る。
【0130】
図32は、造形物の平面サイズが造形テーブル11の平面サイズに比して小さい場合の、造形途中の様子(スラリーSLの吐出の様子)を示す図である。係る場合も、直前に形成したスラリー膜SLFのスラリー被吐出領域RE2の上にスラリーSLを吐出し、該スラリーSLをリコータ31にて掃引することにより造形物形成領域RE1とスラリー被吐出領域RE2と境界領域RE3とが連続してなるスラリー膜SLFを形成し、かつ、描画パターンPTに応じた造形物形成領域RE1の露光と、スラリー被吐出領域RE2の露光とを行うことについて、上述の場合と全く同じように行える。
【0131】
しかも、第1層の形成時のスラリー膜全体としての水平面内における重心位置を、造形テーブル11の水平面内における重心位置と略一致あるいは近接した状態としておくことで、その後に形成する積層体の水平面内における重心位置を、造形テーブル11の水平面内における重心位置と略一致あるいは近接した状態に維持することができ、造形テーブル11に偏荷重が加わることが抑制できる点も、上述の場合と同様である。
【0132】
また、その際には、スラリー被吐出領域RE2が、造形物の平面サイズに応じた位置(具体的には、造形物形成領域RE1の近傍でかつ造形物の平面サイズが大きい場合よりも中央寄りの位置)およびサイズにて形成されるので、必要最小限の吐出量にて吐出されたスラリーSLにて必要なサイズの造形物形成領域RE1を含むスラリー膜SLFを、形成することが出来る。
【0133】
これらの作用効果は、特許文献1に開示されているような、造形テーブルの側部に設けた昇降自在な塗布台(補助テーブル)に対してスラリーを吐出し、該スラリーの掃引によってスラリー膜を積層するという態様では、決して得ることができない。仮に、そのような塗布台を用いて図32に示すような小サイズの造形を行う場合、造形位置を造形テーブルの中央部とすると、塗布台から該中央部までスラリーを掃引することになり、係る掃引のために造形に必要な量よりも多くのスラリーを用いる必要があり、コスト面で不利である。これを避けるべく、塗布台の近傍を造形位置とすると、造形テーブルの端部にて造形を行うことになり、偏加重の問題が生じてしまう。上述のようにスラリー被吐出領域RE2を形成しつつ造形を行うことは、いずれの不都合についても、解消することができる。
【0134】
以上、説明したように、本実施の形態によれば、スラリーをリコータにて掃引することによりスラリー膜を形成するに際して、該スラリー膜が、造形物の造形のために本来的にスラリーの塗布が必要な造形物形成領域に加え、該造形物形成領域よりもリコータの掃引開始位置寄りの所定範囲に設定されたスラリー被吐出領域と、これら造形物形成領域とスラリー被吐出領域との間の境界領域とを含むようにし、かつ、スラリー膜の水平面内における重心位置が、造形テーブルの水平面内における重心位置と、略一致あるいは近接するようにする。さらには、描画パターンに応じた造形物形成領域の露光の際には、スラリー被吐出領域についても露光を行うようにする。これにより、造形物の重量が大きい場合であっても、造形テーブルに偏荷重が加わることが好適に抑制され、係る偏荷重に起因した造形精度(露光精度)の低下が、好適に抑制される。一方、造形物の平面サイズが小さい場合には、スラリー被吐出領域が、造形物の平面サイズに応じた位置およびサイズにて形成できるので、造形テーブルに偏荷重が加わることを好適に抑制しつつ、必要最小限の吐出量にて吐出されたスラリーにて必要なサイズの造形物形成領域を含むスラリー膜を形成することが出来る。
【0135】
<他の実施の形態>
上述した実施の形態では、光硬化性材料として、光硬化性樹脂にセラミック粉体を混錬したスラリーを用いた。これに代えて、セラミック粉体を含まない光硬化性樹脂のみのスラリーを用いてもよいし、セラミック粉体に代えて金属粉体などの他の材料を含むスラリーを用いてもよい。
【0136】
上述した実施の形態では、造形テーブル11および補助テーブル12の複数のエア供給口として複数の吸着溝11g、12gを用いた。これに代えて、複数の吸着溝11g、12gとは別に造形テーブル11および/または補助テーブル12に設けられた溝部または複数の孔を複数のエア供給口として用いてもよい。この場合、複数のエア供給口にエア吸着吹出機構11ARの圧縮空気ポンプが接続される。また、造形テーブル11および/または補助テーブル12において、真空吸着(およびエア供給)のための複数の吸着溝11g、12gに代えて複数の吸着孔を用いてもよい。また、補助テーブル12に別途複数のエア供給口があれば、複数の吸着溝11gは無くてもよい。
【0137】
上述した実施の形態では、フィルムを造形テーブル11に吸着固定した。これに代えて、フィルムの両端をグリッパで把持して下方に引っ張ることにより造形テーブル11に固定してもよい。
【0138】
上述した実施の形態では、搬送手段として、吸着パッドユニット51およびフィルムグリッパ52を含む搬送装置(キャリア)を用いた。これに代えて、他の構成の保持装置(ホルダー)を備えた搬送装置を用いてもよい。また、搬送装置がフィルム搬送用のアクチュエータを備えていてもよい。また、上述した実施の形態において、補助テーブル12に載置されたフィルムをグリッパで把持した状態で造形テーブル11に搬送してもよい。また、造形テーブル11に載置されたフィルムを吸着パッドで吸着した状態で補助テーブル12に搬送してもよい。
【0139】
上述した実施の形態では、露光手段として、プロジェクタ21を備えた光源である露光ユニット20を用いた。これに代えて、ガルバノミラーを用いたレーザスキャニング、液晶シャッター等の他の光源を用いてもよい。
【0140】
上述した実施の形態では、3次元造形物を得るための光造形装置として、スラリーを塗布して露光することにより3次元造形物を形成する装置を用いた。これに代えて、上述した実施の形態の露光ユニット20と同様の露光ユニットを用いて自由液面法により3次元造形物を形成する装置を用いてもよい。図33は、自由液面法により3次元造形物を形成する装置の概観図である。図33に示す装置は、光硬化性材料である液状の光硬化性樹脂を保持するタンク101と、3次元造形物LBを載せる造形ステージ102と、上述した実施の形態と同様のプロジェクタ103とを備える。さらに、3次元造形物を得るための光造形装置として、規制液面法または他の方法により3次元造形物を形成する装置を用いてもよい。
【符号の説明】
【0141】
1 光造形装置
11 造形テーブル
11g、12g 吸着溝
12 補助テーブル
12F (補助テーブルの)固定部
20 露光ユニット
21 プロジェクタ
30 リコートユニット
31 リコータ
32 清掃ユニット
40 スラリー吐出ポンプ
42 スクリュー
42M スクリュー駆動モータ
51 吸着パッドユニット
52 フィルムグリッパ
DA(DA1、DA2) 描画エリア
F フィルム
JT(JT1、JT2、JT3) 繋ぎ部分
L 描画幅
LB 積層体
P 画素サイズ
PT 描画パターン
RE1 造形物形成領域
RE2 スラリー被吐出領域
RE3 境界領域
Re 描画ピッチ
SLF スラリー膜
【要約】
【課題】造形物が大型化した場合であっても露光精度が好適に確保される光造形装置を提供する。
【解決手段】露光手段に備わるプロジェクタは、隣り合う2つの画素の中心位置同士が第1の方向に所定の描画ピッチだけずれるように第1の方向に直交する第2の方向に対し傾斜した姿勢にて、第2の方向に移動自在とされてなり、かつ、第2の方向において描画ピッチに相当する距離を移動するごとに露光用光のON-OFF状態が切り替え可能とされてなり、光硬化性材料の所定の描画エリアに対する露光を、それぞれが第2の方向に延在し第1の方向において所定の描画幅を有する複数のストリップ領域ごとに順次に行い、光硬化性材料の複数の層を積層させつつ、露光手段によって複数の層のそれぞれを露光させることにより、3次元造形物を得る場合に、複数のストリップ領域のうちの隣り合う2つのストリップ領域の繋ぎ部分を形成する、ようにした。
【選択図】図26
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33