(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-24
(45)【発行日】2022-02-01
(54)【発明の名称】オートクレーブ成形装置
(51)【国際特許分類】
B29C 43/12 20060101AFI20220125BHJP
B29C 35/04 20060101ALI20220125BHJP
B01J 3/04 20060101ALI20220125BHJP
【FI】
B29C43/12
B29C35/04
B01J3/04 D
(21)【出願番号】P 2021541908
(86)(22)【出願日】2019-08-29
(86)【国際出願番号】 JP2019033969
(87)【国際公開番号】W WO2021038805
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2021-10-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000139632
【氏名又は名称】株式会社芦田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100082429
【氏名又は名称】森 義明
(74)【代理人】
【識別番号】100162754
【氏名又は名称】市川 真樹
(72)【発明者】
【氏名】井ノ口 優芽
(72)【発明者】
【氏名】結石 友宏
(72)【発明者】
【氏名】三井 優輔
(72)【発明者】
【氏名】富澤 猛
(72)【発明者】
【氏名】山本 義明
(72)【発明者】
【氏名】芦田 健
【審査官】北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-290036(JP,A)
【文献】特開昭61-230916(JP,A)
【文献】特開平04-144717(JP,A)
【文献】特開昭58-062018(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 43/00-43/58
B29C 35/04
B01J 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形対象のワークピース(12)を成形治具(14)と共に真空バッグ(16)で覆った密閉体(18)が載置されるステージ(20)と、その密閉体(18)が載置されたステージ(20)を出し入れ自在に格納する缶体(22)と、その缶体(22)外に設置され、上記の密閉体(18)内を減圧する減圧手段(24)と、上記の缶体(22)外に設置され、上記ワークピース(12)および成形治具(14)の温度を検知する温度センサー(26)からの信号に基づいて上記の缶体(22)内の温度を制御する制御部(28)とを備え、上記の缶体(22)に格納した密閉体(18)内のワークピース(12)を上記の真空バッグ(16)の外側から加熱加圧して所定の形状に成形するオートクレーブ成形装置において、
上記の密閉体(18)内と上記の減圧手段(24)とが流体用配管系(30)で連通接続され、上記の温度センサー(26)と上記の制御部(28)とが信号線(32)で接続されると共に、
上記の流体用配管系(30)は、上記の密閉体(18)内とステージ側減圧コネクタ(34)とを繋ぐステージ側流体用配管系(30a)および缶体側減圧コネクタ(36)と上記の減圧手段(24)とを繋ぐ缶体側流体用配管系(30b)で構成され、
上記の信号線(32)は、上記の温度センサー(26)とステージ側温度コネクタ(38)とを繋ぐステージ側信号線(32a)および缶体側温度コネクタ(40)と上記の制御部(28)とを繋ぐ缶体側信号線(32b)で構成されており、
上記のステージ側減圧コネクタ(34)とステージ側温度コネクタ(38)との少なくとも一方が、上記ステージ(20)に設けられたステージ側コネクタ支持板(42)に一体的に取り付けられ、上記の缶体側減圧コネクタ(36)と缶体側温度コネクタ(40)との少なくとも一方が、上記の缶体(22)に設けられた缶体側コネクタ支持板(44)に一体的に取り付けられており、
上記ステージ(20)を上記の缶体(22)内での成形が可能な所定位置に格納した際に、上記ステージ側コネクタ支持板(42)と上記の缶体側コネクタ支持板(44)とが正対して係合することによって、上記ステージ側減圧コネクタ(34)と上記の缶体側減圧コネクタ(36)とが自動的に連通する、及び/または、上記ステージ側温度コネクタ(38)と上記の缶体側温度コネクタ(40)とが自動的に接続される、
ことを特徴とするオートクレーブ成形装置。
【請求項2】
請求項1のオートクレーブ成形装置において、
前記ステージ側コネクタ支持板(42)と前記の缶体側コネクタ支持板(44)との係合に磁力を用いる、ことを特徴とするオートクレーブ成形装置。
【請求項3】
請求項2のオートクレーブ成形装置において、
前記の磁力の発生源が永電磁石(46)である、ことを特徴とするオートクレーブ成形装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかのオートクレーブ成形装置において、
前記ステージ側コネクタ支持板(42)と前記の缶体側コネクタ支持板(44)とが接近した際に両者が正対するように位置決めするガイド手段(48)が設けられる、ことを特徴とするオートクレーブ成形装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかのオートクレーブ成形装置において、
前記ステージ側コネクタ支持板(42)および前記の缶体側コネクタ支持板(44)の少なくとも一方が3次元方向にて変位可能に取り付けられている、ことを特徴とするオートクレーブ成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機、自動車および一般産業において用いられる複合材料成形品の成形に用いられるオートクレーブ成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維、アラミド繊維、ガラス繊維等の強化材にマトリックスと呼ばれるエポキシ樹脂やフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂を含浸させたシート状の複合材料(プリプレグ)を加熱、加圧成形して所望の形状の成形品を得る技術が知られている。このような複合材料の成形品を得るための成形装置として、例えば下記の特許文献1(日本国・特開2009-51074号公報)で示すオートクレーブ成形装置が挙げられる。このオートクレーブ成形装置は、複合材料を成形治具と共に耐熱・耐圧性の真空バッグで覆い、開閉扉から缶体内に設置する。缶体内の空気をヒータで加熱して、複合材料を所定温度まで昇温させる。また、昇温によって昇圧され、さらに加圧が必要な場合は外部から圧縮気体を供給することで、真空バッグ内との圧力差により複合材料を成形治具に押し当てて、複合材料を成形治具の形状に成形する。複合材料が硬化して成形が終了すると、複合材料を冷却して缶体内から取り出し、成形の1サイクルが完了する。
【0003】
ここで、上述のようなオートクレーブ成形装置では、1サイクルの成形が完了し、次の成形サイクルへと移行する際、先ず始めに成形完了後の成形品を取り出すべく、開閉扉を開けて缶体内部の温度を、作業者がその缶体内に入れる位まで低減させる。缶体内の温度が低減した後、作業者が缶体内に入って(例えば真空配管に代表される)流体用配管系や(温度検出器からのセンサ配線である)信号線などの接続を解除して完成品を取り出し、その後、次のサイクルの複合材料を缶体内へと搬入して流体用配管系や信号線などを新たに接続し直す。そして、缶体内への新たな複合材料のセットが完了すると、開閉扉を閉めて、改めて加熱や加圧を開始する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の従来技術には次の問題がある。
すなわち、上述したように、作業者がオートクレーブ成形装置の缶体内に入って流体用配管系および信号線の接続やその解徐を行なうため、連続的にオートクレーブ成形を行う場合には成形物の入れ替えの際に十分に内部を冷却する必要がある。このため、余分なエネルギーが必要であると共に成形時間のロスが生じると言う問題があった。
また、流体用配管系および信号線の接続やその解徐作業のため、缶体内には作業員が通行可能なウォークウェイなどが必要であり、そうすると、必然的に缶体径が大きくなってコストアップすると共に、広い設置スペースも必要となってくる。
さらに、作業者による缶体内での流体用配管系および信号線の接続やその解徐作業は作業性が悪く煩雑を極めるものであって、作業時間もかかる。
【0006】
それゆえに、本発明の目的は、前述の問題に鑑みてなされたものであり、流体用配管系および信号線の接続やその解徐を簡単に一括して行うことができ、その結果、缶体の大きさや成形加工時の工程リードタイムを極小化することが可能なオートクレーブ成形装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は、例えば、
図1から
図8に示すように、オートクレーブ成形装置を次のように構成した。
すなわち、成形対象のワークピース12を成形治具14と共に真空バッグ16で覆った密閉体18が載置されるステージ20と、その密閉体18が載置されたステージ20を出し入れ自在に格納する缶体22と、その缶体22外に設置され、上記の密閉体18内を減圧する減圧手段24と、上記の缶体22外に設置され、上記ワークピース12および成形治具14の温度を検知する温度センサー26からの信号に基づいて上記の缶体22内の温度を制御する制御部28とを備え、上記の缶体22に格納した密閉体18内のワークピース12を上記の真空バッグ16の外側から加熱加圧して所定の形状に成形する。
上記の密閉体18内と上記の減圧手段24とは流体用配管系30で連通接続され、上記の温度センサー26と上記の制御部28とは信号線32で接続される。このうち、上記の流体用配管系30は、上記の密閉体18内とステージ側減圧コネクタ34とを繋ぐステージ側流体用配管系30aおよび缶体側減圧コネクタ36と上記の減圧手段24とを繋ぐ缶体側流体用配管系30bで構成される。また、上記の信号線32は、上記の温度センサー26とステージ側温度コネクタ38とを繋ぐステージ側信号線32aおよび缶体側温度コネクタ40と上記の制御部28とを繋ぐ缶体側信号線32bで構成される。
上記ステージ側減圧コネクタ34とステージ側温度コネクタ38との少なくとも一方が、上記ステージ20に設けられたステージ側コネクタ支持板42に一体的に取り付けられ、上記の缶体側減圧コネクタ36と缶体側温度コネクタ40との少なくとも一方が、上記の缶体22に設けられた缶体側コネクタ支持板44に一体的に取り付けられる。そして、上記ステージ20を上記の缶体22内での成形が可能な所定位置に格納した際に、上記ステージ側コネクタ支持板42と上記の缶体側コネクタ支持板44とが正対して係合することによって、上記ステージ側減圧コネクタ34と上記の缶体側減圧コネクタ36とが自動的に連通する、及び/または、上記ステージ側温度コネクタ38と上記の缶体側温度コネクタ40とが自動的に接続される。
【0008】
本発明のオートクレーブ成形装置では、密閉体18が載置されたステージ20を缶体22内の所定位置にセットするだけで、ステージ側コネクタ支持板42と缶体側コネクタ支持板44とが正対して係合し、ステージ側減圧コネクタ34と缶体側減圧コネクタ36とが自動的に連通し、ステージ側温度コネクタ38と缶体側温度コネクタ40とが自動的に接続されるので、作業者が缶体22の中に入ってこれらの着脱作業をする必要がない。このため、缶体22内に人が進入して作業するためのスペースやウォークウェイなどが不要となり、缶体径を小さくすることができる。また、ステージ側減圧コネクタ34と缶体側減圧コネクタ36との着脱、および、ステージ側温度コネクタ38と缶体側温度コネクタ40との着脱を短時間で実行することができる。
【0009】
本発明においては、上記ステージ側コネクタ支持板42と上記の缶体側コネクタ支持板44との係合に磁力を用いるのが好ましく、とりわけ、その磁力の発生源が永電磁石46であることが好ましい。
この場合、複雑な機構を必要とせず、各種コネクタ同士を強固に連結することができるようになる。特に、永電磁石46を用いた場合には、各種コネクタ同士の着脱時にのみ永電磁石46に通電することで、着(脱から着へ)および脱(着から脱へ)の操作を行うことが可能である。従って、着状態で缶体22内に入れて使用するときは、通電による電力供給は不要であり省エネ化を図ることができる。また、この永電磁石46は、電磁石と異なり、電源異常等による瞬時停電でもコネクタ同志の連結が維持できる。
【0010】
また、本発明においては、上記ステージ側コネクタ支持板42と上記の缶体側コネクタ支持板44とが接近した際に両者が正対するように位置決めするガイド手段48を設けるのが好ましい。
この場合、ステージ側コネクタ支持板42と缶体側コネクタ支持板44とを正確に正対させて各種コネクタ同士を確実に連結させることができるようになる。なお、磁力の発生源として電磁石或いは永電磁石46を用いた場合においては、各コネクタ同志の正対位置を確認してから通電することによって、より正確な連結が可能となる。
【0011】
また、本発明においては、上記ステージ側コネクタ支持板42および上記の缶体側コネクタ支持板44の少なくとも一方を3次元方向にて変位可能に取り付けるのが好ましい。
【0012】
さらに、本発明は、後述する実施形態に記載された特有の構成を付加することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、流体用配管系および信号線の接続やその解徐を簡単に一括して行うことができ、その結果、缶体の大きさを極小化することによって、成型に必要なエネルギーの低減、一次側電力供給設備などの付帯設備を含めた装置コストの削減、更に成形加工時の工程リードタイムの短縮が可能なオートクレーブ成形装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態のオートクレーブ成形装置を示す概略図である。
【
図3】
図1における要部の視認方向を変更した部分拡大図である。
【
図4】本発明における一実施形態の缶体側コネクタ支持板の構成例を示す正面図である。
【
図5】本発明の一実施形態のステージ側コネクタ支持板を示す正面図である。
【
図6】本発明の一実施形態の缶体側コネクタ支持板を示す正面図である。
【
図7】本発明の一実施形態のステージ側コネクタ支持板と缶体側コネクタ支持板とが正対した状態を示す平面図である。
【
図8】本発明の一実施形態の永電磁石を示す説明図である。
【
図9】本発明の他の実施形態のオートクレーブ成形装置を示す要部拡大図である。
【
図10】
図9における要部の視認方向を変更した部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を
図1から
図4によって説明する。
図1は、本発明のオートクレーブ成形装置10の一例を示す概略図である。この図が示すように、本実施形態のオートクレーブ成形装置10は、大略、成形対象のワークピース12を成形治具14と共に真空バッグ16で覆った密閉体18が載置されるステージ20と、その密閉体18が載置されたステージ20を出し入れ自在に格納する缶体22と、その缶体22外に設置され、上記の密閉体18内を減圧する減圧手段24と、上記の缶体22外に設置され、上記ワークピース12および成形治具14の温度を検知する温度センサー26からの信号に基づいて上記の缶体22内の温度を制御する制御部28とを備える。
【0016】
ここで、成形対象のワークピース12は、炭素繊維、アラミド繊維、ガラス繊維などの繊維基材に、マトリックスとして熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂を含浸させた複合材料(プリプレグ)で構成されており、このワークピース12が所定形状の成形治具14と共に、ナイロン、シリコーンゴムなど、耐熱、耐水性を備えた材料で構成された真空バッグ16で覆われて密閉体18が形成される。
また、この密閉体18の下面には、その内部と連通するワーク側減圧コネクタ18aと、ワークピース12および成形治具14のそれぞれに取り付けられた温度センサー26から導出された配線が接続されるワーク側温度コネクタ18bが設けられる。
【0017】
ステージ20は、これに載置された密閉体18を缶体22内へ搬送するためのものであり、本実施形態では、このステージ20が、耐熱性および機械的強度に優れた鉄鋼などの金属材料からなる矩形板状のテーブル20aと、このテーブル20aの下面にて組み上げられた金属製の下部フレーム20bと、この下部フレーム20bの四隅下部に取り付けられた車輪20cとを有する台車で構成されている。
このステージ20には、密閉体18を載置した際に、密閉体18下面のワーク側減圧コネクタ18aおよびワーク側温度コネクタ18bに対応するテーブル20a上の位置に、テーブル側減圧コネクタ21aおよびテーブル側温度コネクタ21bがそれぞれ設けられている。このうちテーブル側減圧コネクタ21aには、その先端にステージ側減圧コネクタ34が取り付けられた(流体用配管系30の一部である)ステージ側流体用配管系30aの基端が接続されており、テーブル側温度コネクタ21bには、その先端にステージ側温度コネクタ38が取り付けられた(信号線32の一部である)ステージ側信号線32aの基端が接続される。したがって、ステージ20の所定位置に密閉体18を載置することによって、ワーク側減圧コネクタ18aとテーブル側減圧コネクタ21aおよびワーク側温度コネクタ18bとテーブル側温度コネクタ21bがそれぞれ自動的に連結され、密閉体18にステージ側流体用配管系30aおよびステージ側信号線32aを接続させることができる。
【0018】
また、このステージ20の下部フレーム20bには、缶体22内でのステージ20の進行方向と交差する側面の幅方向中央に空間が設けられ、その空間には、ステージ側減圧コネクタ34およびステージ側温度コネクタ38が集積されて一体的に取り付けられるステージ側コネクタ支持板42が配設される。
【0019】
このステージ側コネクタ支持板42の缶体22内の奥側に面する表面であって、ステージ側減圧コネクタ34およびステージ側温度コネクタ38の先端部が配置される側の表面には、後述する缶体側コネクタ支持板44のガイド孔48bと協働してガイド手段48を構成するガイドピン48aが、左右両端部のそれぞれに上下一対設けられる。
【0020】
缶体22は、密閉体18が載置されたステージ20を出し入れ自在に格納する、鉄鋼などの金属で形成された略倒伏円柱状の圧力容器である。この缶体22の長手方向一方端部または両端部には、内部への開口を開閉する開閉扉22aが取り付けられる。また、この缶体22内には、長手方向に沿ってステージ20である台車が走行するための左右一対のレール22bが敷設されている。さらに、缶体22内の開口部近傍におけるレール22bの間には、左右一対の支柱22cが立設されており、この支柱22cの上部には、矩形の支持フレーム22dが配設されている。そして、この支持フレーム22dの内部四隅には、必要に応じて、コイルばね50が取り付けられており、このコイルばね50を介して支持フレーム22dに缶体側コネクタ支持板44が取り付けられる。このため、缶体側コネクタ支持板44は、前後・上下・左右と言った3次元方向にて変位可能な状態で支持フレーム22dに配設されている。
【0021】
缶体側コネクタ支持板44は、缶体側減圧コネクタ36および缶体側温度コネクタ40が集積されて一体的に取り付けられる板材である。具体的には、この缶体側コネクタ支持板44は、ステージ側コネクタ支持板42と略同等の大きさで形成されており、缶体側減圧コネクタ36および缶体側温度コネクタ40の先端側が、この缶体側コネクタ支持板44の缶体22開口側の表面に配設される。また、この缶体側コネクタ支持板44は、ステージ20を缶体22内の所定の格納位置にセットした際に、ステージ側コネクタ支持板42と正対して係合し、ステージ側減圧コネクタ34と缶体側減圧コネクタ36とが自動的に連通し、ステージ側温度コネクタ38と缶体側温度コネクタ40とが自動的に接続されるように構成されている。
【0022】
ここで、この缶体側コネクタ支持板44とステージ側コネクタ支持板42とを正対させて係合する際に、その誘導と係合とを磁力でアシストするのが好ましい。この磁力の発生源としては、例えば永久磁石や電磁石を使うこともできるが、
図5~
図8に示すように、永電磁石46を用いるのが特に好適である。
【0023】
永電磁石46とは、例えば、永久磁石(保磁力が大きいものと小さいもの2種類の組み合わせ)の周りに電磁石(ソレノイドコイル)が巻かれて形成されており、電磁石に通電するときの通電電流の方向により外部へ出力される磁力をONまたはOFFにできる電磁吸着形、電磁釈放形の磁石である。電磁石の通電電流の方向により保磁力が小さな永久磁石の磁化の方向を反転できる現象を利用するものである。2種類の永久磁石の磁化の方向が同じ場合には、永久磁石の磁場が外部に出力され、磁力がONの状態となる。また、2種類の永久磁石の磁化の方向が逆方向の場合には、永久磁石の磁場が内部で閉じて外部に出力されないため、磁力がOFFの状態となる。本実施形態のものでは、
図8に示すように、保磁力の大きなネオジム磁石52の周囲に、保磁力が小さく電磁石でN極とS極が反転可能なアルニコ磁石54をリング状に配設し、このアルニコ磁石54の外周にスイッチングソレノイドコイル56を巻回する。そして、これらを軟磁性材料58で囲んで円筒状のケーシング60に納め、磁力の出力面にピックアップコイル62を配設して構成される。また、一端がスイッチングソレノイドコイル56に接続される配線64の他端は、後述する缶体22外の制御部28に接続される。
【0024】
なお、
図5から
図7で示す実施形態では、缶体側コネクタ支持板44の中心部に永電磁石46が取り付けられ、ステージ側コネクタ支持板42の中心部に、永電磁石46より出力される磁力がONの際に、その磁力によって永電磁石46と強固に吸着する円盤状の磁性体47が組み込まれる。
【0025】
缶体側コネクタ支持板44に一体的に取り付けられた缶体側減圧コネクタ36の基端には、流体用配管系30の一部である缶体側流体用配管系30bの先端が接続される。この缶体側流体用配管系30bは缶体22の外へと延出され、その基端部には密閉体18内を減圧する減圧手段24が接続される。
また、缶体側コネクタ支持板44に一体的に取り付けられた缶体側温度コネクタ40の基端には、信号線32の一部である缶体側信号線32bの先端が接続される。この缶体側信号線32bも缶体22の外へと延出され、その基端部には温度センサー26からの信号に基づいて図示しない加熱手段を作動させて缶体22内の温度を制御する制御部28が接続される(
図1および
図3参照)。なお、この制御部28は、缶体22内の温度管理だけではなく、例えば、永電磁石46の配線64が接続され、缶体22内からステージ20を取り出すときに永電磁石46が出力する磁力をOFFにする制御なども行なっている。
【0026】
なお、本実施形態のオートクレーブ成形装置10は、上述した各構成の他にも、図示しない加熱手段やオートクレーブ成形に必要な様々な補機を有していることは言うまでもない。また、上記の加熱手段は、その熱源が面状ヒーターなどの電気ヒーターに限定されるものではなく、例えば、飽和水蒸気などの電気ヒーター以外の熱源をも含むものである。
【0027】
以上のように構成されたオートクレーブ成形装置10を用いて、ワークピース12を所定の形状に成形する際には、先ず始めに、成形対象のワークピース12を成形治具14と共に真空バッグ16で覆って密閉体18を形成し、この密閉体18を予備真空引きした後、ステージ20(台車)上の所定位置に載置する。すると、密閉体18のワーク側減圧コネクタ18aおよびワーク側温度コネクタ18bと、ステージ20のテーブル側減圧コネクタ21aおよびテーブル側温度コネクタ21bとがそれぞれ自動的に連結され、密閉体18にステージ側流体用配管系30aおよびステージ側信号線32aが接続される。
【0028】
続いて、缶体22の開閉扉22aを開け、缶体22内のレール22b上に、密閉体18を載置したステージ20を載せ、所定の格納位置までそのステージ20を走行させる。すると、ステージ20が所定の格納位置に到達した際に、(ステージ20の)ステージ側コネクタ支持板42と(缶体22の)缶体側コネクタ支持板44とが正対して係合すると同時に、ステージ側減圧コネクタ34と缶体側減圧コネクタ36とが自動的に連通し、ステージ側温度コネクタ38と缶体側温度コネクタ40とが自動的に接続される。
ここで、
図5~
図7で示すように、缶体側コネクタ支持板44の中心部に永電磁石46を取り付けると共に、ステージ側コネクタ支持板42の中心部に磁性体47を組み込んでおけば、缶体側コネクタ支持板44とステージ側コネクタ支持板42との距離がある程度近づいた時点から磁力のアシストを受けることができるようになり、両者が係合した際にはその係合を強固に保持することができる。
また、ステージ側コネクタ支持板42のガイドピン48aと缶体側コネクタ支持板44のガイド孔48bとで構成されたガイド手段48によって、ステージ側コネクタ支持板42と缶体側コネクタ支持板44とを正しい位置で正対させて係合させることができる。また、ステージ側コネクタ支持板42と缶体側コネクタ支持板44との相対的な位置に多少の誤差が有る場合でも、缶体側コネクタ支持板44がコイルばね50によって3次元方向にて変位可能な状態で缶体22に取り付けられているので、ステージ側コネクタ支持板42と缶体側コネクタ支持板44とを正しい位置でストレスなく正対させることができるようになる。
【0029】
続いて、缶体22の開閉扉22aを閉めて減圧手段24を作動させ、密閉体18の内部を成形時の真空に維持する。そして、制御部28によって缶体22内部の加工温度,加工圧力および加工時間と言った成形条件がワークピース12を構成する原材料に応じた所定のものに設定・制御され、ワークピース12の成形加工が行なわれる。
【0030】
成形加工が完了すると、缶体22内を成形品の取出しが可能な温度まで冷却させた後、開閉扉22aを開け、ステージ20を缶体22外へと運び出してオートクレーブ成形の1サイクルが完了する。
【0031】
ここで、
図5~
図7で示すように、ステージ側コネクタ支持板42と缶体側コネクタ支持板44との係合に永電磁石46の磁力を用いている場合、両者が強固に係合・固着しているので、そのままでは缶体22内からステージ20を運び出すのが困難である。特に、
図1~
図4で示すように、缶体側コネクタ支持板44がコイルばね50によって3次元方向にて変位可能な状態で缶体22に取り付けられている場合には、より一層ステージ20の運び出しが困難になる。
そこで、かかる場合には、制御部28を作動させて永電磁石46のスイッチングソレノイドコイル56に保磁力の小さな永久磁石の磁化を反転させる方向の電流を流す。そうすると、永久磁石の磁場が内部で閉じて外部に出力されない状態となり、外部へ出力される磁力がOFFとなる。その結果、缶体側コネクタ支持板44とステージ側コネクタ支持板42とを容易に離間させることができるようになり、缶体22内からステージ20を容易に運び出すことができる。
【0032】
なお、本実施形態のオートクレーブ成形装置10では、ガイド手段48としてガイドピン48aとガイド孔48bとで構成されたものを示したが、このガイド手段48は、ステージ側コネクタ支持板42と缶体側コネクタ支持板44とが接近した際に両者が正対するように位置決めできる態様のものであれば、如何なるものであってもよく、例えば、図示しないが、電波やレーザーや画像処理による位置決め手段と、ステージ側コネクタ支持板42または缶体側コネクタ支持板44の少なくとも一方を移動させるアクチュエータとの組合せによるものなどであってもよい。
【0033】
また、本実施形態のオートクレーブ成形装置10では、缶体側コネクタ支持板44がコイルばね50によって3次元方向にて変位可能に取り付けられる場合を示しているが、3次元方向に変位可能に取り付けられるものがステージ側コネクタ支持板42であってもよいし、その両方であってもよい。また、缶体側コネクタ支持板44を3次元方向にて変位可能に取り付けるための介装部材としてコイルばね50を示しているが、この介装部材は、コイルばね50に限定されるものではなく、例えば、図示しないがボールジョイントや各種ヒンジなどを利用するものであってもよい。
【0034】
上述の実施形態では、ステージ20が台車で構成される場合を示したが、例えば、
図9および
図10で示すように、矩形板状のステージ20上に密閉体18を一体的に形成し、これをフォークリフト66やクレーン(図示せず)などの搬送手段を用いて缶体22内に搬送するようにしても良い。その際、ステージ側コネクタ支持板42はステージ20下面の所定位置に一体的に設けられることとなり、それに伴って、缶体22内では、レール22bに代えて倒伏梯子状の載置枠22eが配設されると共に、缶体側コネクタ支持板44は、ステージ側コネクタ支持板42との当接面が上向きとなるように配設される。
【0035】
また、上述の実施形態では、缶体側コネクタ支持板44の中心部に永電磁石46を取り付け、その永電磁石46に配線64を介して制御部28より給電する場合を示したが、上記の永電磁石46をステージ側コネクタ支持板42の中心部に取り付け(永電磁石46と磁性体47の取付け位置を逆転)、これに対して着脱式の電源を用いて給電するようにしてもよい。この永電磁石46は運転中は電源を必要としないことから、上記のような着脱式の電源を用いることができる。そして、このような着脱式の電源を用いることによって、ヒートサイクルによる電源の絶縁破壊の可能性を低減させることができる。
【0036】
また、
図7に示す実施形態では、片側(の缶体側コネクタ支持板44)のみ永電磁石46が配設されているが、この永電磁石46に正対する磁性体47に代えて永電磁石を用い、2つの永電磁石でより強固に係合・固着させてもよい。
その他に、本発明は、当業者が想定できる範囲で種々の変更を行なえることは勿論である。
【符号の説明】
【0037】
10:オートクレーブ成形装置,12:ワークピース,14:成形治具,16:真空バッグ,18:密閉体,20:ステージ,22:缶体,24:減圧手段,26:温度センサー,28:制御部,30:流体用配管系,30a:ステージ側流体用配管系,30b:缶体側流体用配管系,32:信号線,32a:ステージ側信号線,32b:缶体側信号線,34:ステージ側減圧コネクタ,36:缶体側減圧コネクタ,38:ステージ側温度コネクタ,40:缶体側温度コネクタ,42:ステージ側コネクタ支持板,44:缶体側コネクタ支持板,46:永電磁石,48:ガイド手段.