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特許7014498浮遊式風力タービン組立体、ならびにそのような浮遊式風力タービン組立体を係留するための方法
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  • 特許-浮遊式風力タービン組立体、ならびにそのような浮遊式風力タービン組立体を係留するための方法 図1
  • 特許-浮遊式風力タービン組立体、ならびにそのような浮遊式風力タービン組立体を係留するための方法 図2
  • 特許-浮遊式風力タービン組立体、ならびにそのような浮遊式風力タービン組立体を係留するための方法 図3A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-24
(45)【発行日】2022-02-01
(54)【発明の名称】浮遊式風力タービン組立体、ならびにそのような浮遊式風力タービン組立体を係留するための方法
(51)【国際特許分類】
   B63B 35/00 20200101AFI20220125BHJP
   B63B 21/50 20060101ALI20220125BHJP
   F03D 13/25 20160101ALI20220125BHJP
   E02D 27/32 20060101ALI20220125BHJP
   B63B 35/44 20060101ALI20220125BHJP
【FI】
B63B35/00 T
B63B21/50 A
F03D13/25
E02D27/32 A
B63B35/44
B63B21/50
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2017566328
(86)(22)【出願日】2016-06-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-09-13
(86)【国際出願番号】 EP2016064804
(87)【国際公開番号】W WO2016207427
(87)【国際公開日】2016-12-29
【審査請求日】2019-06-21
(31)【優先権主張番号】15174077.6
(32)【優先日】2015-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】511131778
【氏名又は名称】シングル ブイ ムーリングス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】メリス, セシル
(72)【発明者】
【氏名】ボードウィン, クリスチャン レイモンド
(72)【発明者】
【氏名】カイユ, フランソワ
【審査官】結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0155038(US,A1)
【文献】米国特許第4906139(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0103244(US,A1)
【文献】国際公開第2013/084632(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0290245(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0304911(US,A1)
【文献】特表2011-503422(JP,A)
【文献】特表2011-521820(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1488292(KR,B1)
【文献】中国特許出願公開第102392796(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0240864(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 35/00,35/44,21/50,
F03D 13/25,
E02D 27/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浮遊式プラットフォーム(2)と、前記浮遊式プラットフォームの上部に配置された風力タービン(3)とを備える浮遊式風力タービン組立体(1)であって、
前記浮遊式プラットフォーム(2)が、複数の浮力タンク(13)を備え、該複数の浮力タンク(13)が、中央タンクの形態の中央構造(14)と、前記中央タンクから略等距離で同一平面上にある3つの径方向浮力タンク(15)とを備え、前記中央構造(14)が、前記浮遊式プラットフォームの中央位置にあり、
前記風力タービンが、前記浮遊式プラットフォームに連結された下端部(5)を有する、マスト軸線(X)を有するマスト(4)と、前記マストの上部に配置された前記風力タービンのナセル(6)とを有し、前記浮遊式プラットフォームが、緊張された複数の係留索(8)によって海底(7)に連結され、該複数の係留索の各々が、該係留索の長手方向に延びる係留索軸線(A)を有し、
前記浮遊式プラットフォームが、上側レベル(11)および下側レベル(12)を有し、該下側レベル(12)で前記径方向浮力タンク(15)を連結する、略水平のトラス構造(10)を更に備え、
前記マスト(4)が、前記中央構造(14)の上方の前記上側レベル(11)で前記浮遊式プラットフォームに連結された前記下端部を有する、浮遊式風力タービン組立体において、
前記複数の係留索(8)の各々が、漸増式緊張システムを備え、該漸増式緊張システムが、前記径方向浮力タンク(15)が海面から突き出て静水力学的な安定性をもたらす位置から、該径方向浮力タンクおよび前記トラス構造(10)が水没して該径方向浮力タンク(15)が面下になる位置まで、該径方向浮力タンクを水没させるように前記係留索を緊張することにより、水没させる間に、前記浮力タンク(13)によってもたらされる前記静水力学的な安定性が前記係留索に徐々に伝達されることで、作動構成において、緊張された該係留索(8)が係留安定性をもたらすように、該係留索に作用を及ぼすようになっていることを特徴とする、浮遊式風力タービン組立体。
【請求項2】
前記浮遊式風力タービン組立体が、前記浮力タンク(13)が海面から突き出る曳航構成にあるときに、該浮力タンクが、静水力学的な安定性をもたらすようになっている、請求項1に記載の浮遊式風力タービン組立体。
【請求項3】
複数の前記係留索軸線が、前記マスト軸線上にあるとともに前記ナセルまたは該ナセルの上方の高さにある交差位置(9)において互いに交差する、請求項1に記載の浮遊式風力タービン組立体。
【請求項4】
前記複数の係留索が、少なくとも3つの係留索を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の浮遊式風力タービン組立体。
【請求項5】
前記少なくとも3つの係留索の各々が、連結手段(18)により前記浮遊式プラットフォームを海底につなげる下端(16)および上端(17)を有し、前記連結手段が、前記径方向浮力タンクに対応する、前記トラス構造の前記下側レベルの位置において、前記少なくとも3つの係留索の各々の前記上端を受けるために設けられている、請求項4に記載の浮遊式風力タービン組立体。
【請求項6】
前記漸増式緊張システムが、前記トラス構造の前記上側レベルのみが水面の上方に延在する状態で、前記浮遊式プラットフォームを水面よりも低く保つように、前記複数の係留索を緊張するようになっている、請求項1~5のいずれか一項に記載の浮遊式風力タービン組立体。
【請求項7】
前記漸増式緊張システムの各々が、前記トラス構造の前記上側レベルに設けられた取り外し可能な緊張手段を備える、請求項6に記載の浮遊式風力タービン組立体。
【請求項8】
前記浮遊式構造が、前記トラス構造に沿って前記連結手段と前記緊張手段との間に延びるとともに前記複数の係留索および前記緊張手段に連結可能な緊張索を備える、請求項5を引用する場合の請求項7に記載の浮遊式風力タービン組立体。
【請求項9】
浮遊式風力タービン組立体を係留するための方法であって、
略水平のトラス構造(10)と、複数の浮力タンク(13)とを備える浮遊式プラットフォームを用意するステップであって、前記複数の浮力タンクが、前記浮遊式プラットフォームの中央位置にある中央タンクの形態の中央構造(14)と、前記中央タンクから等距離にある3つの径方向浮力タンク(15)とを備え、前記トラス構造が、前記浮力タンクを連結している、ステップと、
ナセルを備える風力タービンを用意するステップと、
前記浮遊式プラットフォームおよび前記風力タービンを組み立てて、前記複数の浮力タンク(13)がから突き出た状態で曳航可能な浮遊式風力タービン組立体を形成するステップと、
複数の係留索の下端を所望の海底連結位置(19)で海底に固定するステップと、
前記浮遊式風力タービン組立体を、前記海底連結位置および前記海底連結位置に固定された前記複数の係留索の上方の、所望の風力タービン設置場所まで曳航するステップと、
前記複数の係留索の上端を前記浮遊式プラットフォーム上の連結手段に連結するステップと、
前記浮遊式プラットフォームを下降させ、前記径方向浮力タンク(15)を面下の水没位置に置くように、前記複数の係留索の各々を漸増式緊張システムを使用して緊張するステップと
を含む方法。
【請求項10】
前記複数の係留索の軸線が、マスト軸線上にあるとともに前記ナセルまたは該ナセルの上方の高さにある交差位置において互いに交差する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記浮遊式風力タービン組立体が、前記浮力タンク(13)がから突き出る曳航構成にあるときに、該浮力タンクが、静水力学的な安定性をもたらす、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記複数の係留索の各々を漸増式緊張システムを使用して緊張する前記ステップが、前記浮力タンク(13)がから突き出て静水力学的な安定性をもたらす位置から、前記径方向浮力タンク(15)および前記トラス構造(10)が水没して該径方向浮力タンク(15)が海面下になる位置まで、前記浮力タンク(13)を水没させるように前記係留索を緊張することにより、水没させる間に、前記浮力タンクによってもたらされる前記静水力学的な安定性が前記係留索(8)に徐々に伝達されることで、作動構成において、緊張された該係留索が係留安定性をもたらすことを含む、請求項9~11のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浮遊式プラットフォームと、浮遊式プラットフォームの上部に配置された風力タービンとを備える浮遊式風力タービン組立体であって、風力タービンが、浮遊式プラットフォームに連結された下端を有する、マスト軸線を有するマストと、マストの上部に配置されたナセルとを有し、浮遊式プラットフォームは、緊張された複数の係留索によって海底に連結され、係留索の各々は、係留索の長手方向に延びる係留索軸線を含む、浮遊式風力タービン組立体に関する。本発明はまた、そのような浮遊式風力タービン組立体を係留するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
そのような浮遊式風力タービン組立体は、例えば、国際公開第2015/048147号パンフレット、国際公開第2009/064737号パンフレット、韓国特許第101488292号明細書、国際公開第2014/140653号パンフレット、欧州特許出願第2743170号明細書、国際公開第2013/084632号パンフレット、中国特許第102392796号明細書、米国特許出願公開第2012/103244号明細書、国際公開第2009/131826号パンフレットまたは米国特許出願公開第2008/240864号明細書から知られている。
【0003】
一般に、浮遊式風力タービンを支持する4つのカテゴリのフロータタイプがあり、その各々は既存の石油およびガスのコンセプトに示唆される。
1.セミタイプ
2.スパー/喫水の深いタイプ
3.バージタイプ
4.緊張係留式プラットフォーム(TLP)
制限された水深でのみ作動することができるタイプ、例えば連接した塔のようなものは上記にリストされていない。
【0004】
しかし、風力タービンを支持する上での主な課題は、掘削装置または係留装置の場合のような、装置を上甲板で支持することとは異なる。はじめに、支持されている装置、すなわちタービンは細長く、フロータキールの上方でかなりの高さで質量を支持し、物体全体の重心を上昇させる。これは、フロータを不安定にする傾向がある。
【0005】
(タービンが動力を生成している)作動状態では、大きな推力がナセルの高さ、すなわち海面から高いところに及ぼされる。これは、フロータとのタービン連結部に大きな転倒モーメントを与える傾向がある。
【0006】
これまで特許請求されてきたすべての概念は、この転倒モーメントによって誘発されるピッチ/ロールを制限しようとするものであり、これは、タービン製造業者によって課される最も厳しい制約であるためである。
【0007】
フロータのピッチ/ロールの復原は、その重心GとそのメタセンターMとの間の距離である、メタセンター高、GMに比例する。GMが大きいほど、フロータはより安定する。
【0008】
カテゴリ1、セミタイプの場合、安定性は、水面領域を回転中心から遠くに置くことによってメタセンターMを上昇させることによって達成される。これは、次いで、ピッチ/ロールの自由度を復原する。
【0009】
カテゴリ2、スパーまたは喫水の深いタイプの場合、安定性は、重心Gを下げることによって達成される。これらの構造もまた、水面近くに小さな容積を提示することによって波によって誘発される負荷のレベルを低下させる傾向がある。
【0010】
カテゴリ3の場合、バージタイプは、大きな水線領域を与える比較的大きな構造である。
【0011】
カテゴリ4、TLPの場合、ヒーブ、ピッチ、およびロールのいずれの自由度も抑えられているため、運動パフォーマンスと安定性の面で明確な利点がある。ヒーブにおける安定性は、水面の下方に大きな浮力を与え、係留システム内の大きな張力でそれを打ち消すことによって得られる。回転安定性のために、転倒モーメントは、脚部の張力の差によって均衡化される。これは、3つの脚のグループを備えたTLPに対して成立し得るが、4つ以上の脚のグループでも同じ理由付けが有効である。
【0012】
本発明の目的は、特に大きな推進力がナセルの高さで及ぼされたときに、安定性が改善される、特にTLPタイプの浮遊式風力タービン組立体を提供することである。
【発明の概要】
【0013】
ここで、本発明によれば、各係留索(8)は、浮力タンク(13)を水没させるように係留索に作用する漸増式緊張システムを備える。
【0014】
係留脚に徐々に張力をかけることによって、径方向浮力タンクは水没し、水面に入り込む浮力タンクによって付与される静安定性は、係留脚に徐々に伝達される。
【0015】
海底に固定する前の浮遊式構造のこの安定性は、主として径方向タンクによって付与される。カタラマン型船体に関しては、浮力タンクが水線領域S上の海面に、回転軸線から距離dだけ入り込むという事実は、Sxdに比例する回転抵抗を誘発する。径方向浮力タンクのスパンが大きいほど、転覆に対する抵抗が大きくなる。比較的小さいものであるが、トラス構造および/または中央タンクもまた、これらが海面に入り込む場合、曳航構成の安定性に寄与する。この安定性は、フロータが作動構成にあるときに緊張された係留索によって付与される係留安定性とは対照的に、通常、静安定性と呼ばれる。
【0016】
一実施形態では、係留索軸線は、マスト軸線上にあるとともにナセルまたはその上方の高さにある交差位置において互いに交差する。
【0017】
本発明は、風力タービンを支持するTLPタイプのフロータを係留する新規の方法である。緊張材、チェーン、ワイヤまたは合成ロープのいずれからでも作ることができる係留索は、垂直ではなく角度を付けて取り付けられる。
【0018】
ここで提案された本発明は、TLPの概念によって示唆されるが、風力タービンによって及ぼされる特定の負荷、およびナセルにおける運動性能の特定の制約に対処する。フロータを垂直脚で係留する代わりに、脚は、垂直に対して角度を付けて配置されるので、マスト軸線上の交点が、ナセルまたはその上方の高さにおいて生じる。
【0019】
本発明の新規性は、構造に対する脚の配置方法にある。従来の垂直脚TLPと比較して、これは、物体全体がその周りを回転する固定点の位置を調整することができる。この点において、サージおよびスウェイは、ロールおよびピッチが応従している間は抑制され、従来のTLPの挙動とは異なる。また、これにより、風力タービンによって課される特定の負荷および制約に最適に応答することが可能になる。
【0020】
ロールおよびピッチの自由度(DOF)は応従するが、回転は係留脚の交点付近で発生する。従来のTLPとは異なり、本発明では、交点は、ナセルの近くまたはその上方に配置される。これは、ナセルおよびブレードによって見られる実際のロール/ピッチ誘発並進運動が、応従ロール/ピッチDOFを有する他のシステムおよびサージ/スウェイ運動が抑制されない従来のTLPに比べて小さいことを確実にする。これにより、風力タービンの空力性能が向上し、フロータ運動によって誘発された相対風速による複雑な制御の必要性が低減される。
【0021】
これはまた、保守作業のためのナセルのアクセス可能性も向上させる。通常の海洋状態であっても、ナセルレベルに配置されたプラットフォーム上にヘリコプターで着陸する可能性は、フロータおよびその係留システムの低運動挙動によって可能にされなければならない。
【0022】
別の実施形態は、前述の浮遊式風力タービン組立体であって、浮遊式プラットフォームが、上側レベルおよび下側レベルを有する略水平なトラス構造と、少なくとも3つの同一平面浮力タンクと、中央位置にある中央構造体と、中央構造から略等距離の3つの径方向タンクとを有し、トラス構造体は、下側レベルにおいて浮力タンクを連結し、マストの下端は、中央構造体の上方の上側レベルにおいて、浮遊式プラットフォームに連結される、浮遊式風力タービン組立体に関する。これは、特に浮遊式プラットフォームが、風力タービンと既に一体化された状態で現場に曳航されるときに、特に安定した浮遊式構成をもたらす。所望であれば、中央構造は、中央(浮力)タンクを備えてもよい。別の実施形態は、係留索が少なくとも3つの係留索を含む前述の浮遊式風力タービン組立体に関する。
【0023】
別の実施形態は、前述の浮遊式風力タービン組立体であって、少なくとも3つの係留索が、連結手段により浮遊式プラットフォームを海底につなげる下端および上端を有し、連結手段は、径方向タンクに対応する下側レベルのトラス構造上の位置において3つの係留索の各々の上端を受け入れるために設けられる、浮遊式風力タービン組立体に関する。
【0024】
別の実施形態は、前述の浮遊式風力タービンであって、トラス構造体の上側レベルのみが水面の上方に延在する状態で浮遊式プラットフォームを水面より低く保つように、係留索が緊張システムによって緊張される、浮遊式風力タービン組立体に関する。この緊張システムは、運転喫水の正確な適応、したがって浮遊式風力タービン組立体の浮遊特性の正確な調整を可能にする。
【0025】
別の実施形態は、前述の浮遊式風力タービン組立体であって、緊張システムが、上側レベルのトラス構造体上に設けられた取り外し可能な緊張手段を備える、浮遊式風力タービン組立体に関する。
【0026】
別の実施形態は、前述の浮遊式風力タービン組立体であって、浮遊式構造体が、トラス構造に沿って連結手段と緊張手段との間に延びるとともに係留索および緊張手段に連結可能な緊張索を備える、浮遊式風力タービン組立体に関する。別の実施形態は、前述の浮遊式風力タービン組立体であって、係留索が、海底から下側径方向タンクに延び、次いで、連結手段が水面の上方に、かつ緊張手段の近くに配置され得るように、トラス構造に沿ってそらされる、浮遊式風力タービン組立体に関する。
【0027】
本発明の別の態様は、前述の浮遊式風力タービン組立体を係留するための方法であって、
浮遊式プラットフォームおよび風力タービンを埠頭で組み立てて(ドックサイドで組み立てて)浮遊式風力タービン組立体を形成するステップと、
複数の係留索の下端を所望の海底連結位置で海底に固定するステップと、
浮遊式風力タービン組立体を、海底連結位置およびそこに固定された係留索の上方の、所望の風力タービン設置場所まで曳航するステップと、
係留索軸線が、マスト軸線上にあるとともにナセルまたはその上方の高さにある交差位置において互いに交差するように、係留索の上端を浮遊式プラットフォーム上の連結手段に連結するステップと
を含む、方法に関する。
【0028】
別の実施形態は、前述の方法であって、緊張システムが存在するとき、複数の係留索の各々は、浮遊式プラットフォームを水没位置に下降させるように緊張システムを使用して緊張される、方法に関する。この下降プロセスの初期段階全体を通して、径方向タンクおよび/または中央タンクならびにトラス構造は、水中に水没しており、その結果、係留索の張力が増加する。径方向タンクが海面下に消滅した後、これらはもはや、静復原によるフロータおよびタービン組立体の安定性を確実にしない。しかし、この安定化機能は、徐々に係留システムに伝達されている。この方法は、水没プロセス全体を通して安定性を維持するために、外部手段(一時的な浮力、主に水平にフロータにのせる引舟)を必要としない点で新規である。しかし、水没プロセス中の安定性を補うために外部手段を用いることもできる。
【0029】
この特定の取り付け方法は、緊張プロセス全体に沿って安定して保つことを可能にし、径方向タンクによって付与される流力弾性剛性と係留索によって付与される弾性剛性との間の滑らかな移行を可能にする。
【0030】
本発明による浮遊式風力タービン組立体の実施形態は、非限定的な例として、添付の図面を参照して詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明による浮遊式風力タービンの例示的な実施形態の概略側面図である。
図2図1に示す浮遊式風力タービン組立体の浮遊式プラットフォームの上面図である。
図3a】曳航船によって所望の風力タービン設置場所に曳航される浮遊式プラットフォームの側面図である。
図3b】曳航船によって所望の風力タービン設置位置に曳航される浮遊式プラットフォームの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1および図2を併せて論じる。図1は、浮遊式プラットフォーム2と浮遊式プラットフォーム2の上部に配置された風力タービン3とを備える浮遊式風力タービン組立体1を示す。風力タービン3は、マスト軸線Xを有するマスト4を有し、その下端5は、浮遊式プラットフォーム2に連結されている。ナセル6は、マスト4の上部に、約70mなどの60~80mの高さに配置される。浮遊式プラットフォーム2は、緊張された複数の係留索8によって海底7に連結されている。図示するように緊張脚または係留脚などの係留索8は、各々が、係留索8の長手方向に延びる係留索軸線Aを含む。本発明によれば、係留索軸線Aは、マスト軸線X上にあるとともにナセル6またはその上方の高さにある交差位置9において互いに交差する。
【0033】
浮遊式プラットフォーム2は、上側レベル11および下側レベル12を有する略水平なトラス構造10を有する。4つの浮力タンク13が設けられ、中央構造14は、中心位置に中央タンク14を備え、3つの同一平面径方向タンク15は、中央タンク14から略等距離に位置する。トラス構造10は、下側レベル12において浮力タンク13を連結し、マスト4の下端5は、中央タンク14の上方の上側レベル11において、浮遊式プラットフォーム2に連結される。好ましくは、係留索8は、少なくとも3つの係留索を含む。少なくとも3つの係留索8は、連結手段18を用いて浮遊式プラットフォーム2を海底7につなぐ下端16および上端17を有し、この連結手段は、径方向タンク15に対応する下側レベル12のトラス構造10上の位置に、3つの係留索8各々の上端17を受けるために設けられる。係留索8は、トラス構造10の上側レベル11のみが水面の上方に延在する状態で、浮遊式プラットフォーム2を水面よりも低く維持するように緊張システム(図示せず)によって緊張される。緊張システムは、トラス構造の上側レベルに設けられた取り外し可能な緊張手段(図示せず)を備える。浮遊式構造1は、トラス構造10に沿って連結手段18と緊張手段との間に延びるとともに係留索8および緊張手段に連結可能な緊張索(図示せず)を備えてもよい。係留索8は、垂直に対して例えば5~30°、10~20°などの角度で延びてもよい。各々の個々の係留索8は、垂直線に対して他の係留索8の延長角度とは異なる角度で延びることが考えられる。これは、地域の天候/海洋状態、浮遊式プラットフォーム2の構造などに依存する。
【0034】
漸増式緊張システムは詳細には示されていないが、係留索8の上部チェーン部分と相互作用するチェーンロッカーを備えてよく、各係留索に作用するウインチを備えてもよく、または油圧ジャッキを用いた緊張システムを備えてもよい。適切な緊張システムは、国際公開第2013124717号パンフレット、欧州特許第2729353号明細書、欧州特許第0831022号明細書、欧州特許第1106779号明細書または米国特許第9,139,260号明細書に説明されている。
【0035】
前述の浮遊式風力タービン組立体1を係留することは、
浮遊式プラットフォーム2および風力タービン3を埠頭で組み立てて浮遊式風力タービン組立体1を形成するステップと、
複数の係留索8の下端16を所望の海底連結位置19で海底7に固定するステップと、
浮遊式風力タービン組立体1を、海底連結位置19およびそこに固定された係留索8の上方の、所望の風力タービン設置場所に曳航するステップと、
係留索8の軸線A(係留索軸線A)が、マスト軸線上にあるとともにナセル6またはその上方の高さにある交差位置9において互いに交差するように、係留索8の上端17を浮遊式プラットフォーム2上の連結手段18に連結するステップと
を含んでもよい。
【0036】
好ましくは、複数の係留索8の各々は、漸増式緊張システムを用いて緊張され、それにより、浮遊式プラットフォーム2は、緊張プロセス全体にわたって安定性を確実にするための外部手段を想定することなく、水没位置に下降する。径方向タンク15が海面に入り込むとき、安定性は、最初に静水力学的に確実にされる。次いで、係留索引張工程に伴って、安定性が係留索8に徐々に伝達され、係留索の張力は、径方向タンク15、中央タンク14およびトラス構造10の水没が進むことにより、徐々に増大する。
【0037】
推力がナセルのレベルで及ぼされるとき、脚部8の張力の変化もまた、反応として発生する。しかし、その合力すべてが、推力がかけられた地点において交差するため、この地点は動かない。したがって、ナセル6のサージおよびスウェイ運動も抑制される。波荷重が浮遊式プラットフォーム2上に発生するとき、これは、固定/係留脚8からの反応を作り出すようにサージ運動するが、ナセル6は略固定されたままである。係留脚8は、正確にナセル6の高さで交差せずに、傾斜していてもよい。次に、固定点が、交点9に作り出される。最適な交点は、浮遊式プラットフォーム2上の波荷重および風力タービン3上の風荷重を決定する、現場特有の気象および/または海洋条件、および風力タービン3の設計制約に基づいて決定される必要がある。本発明によれば、交点9は、極限の状況において安定した挙動を確実にするために、ナセル6またはその上方に配置されてもよい。
【0038】
従来のTLPとは異なり、大きなスパンにより、浮遊式プラットフォーム2が特に曳航および自由浮遊状態で自然に安定することを可能にする。したがって、風力タービン3を埠頭で組み立てることができ、浮遊式風力タービン組立体1全体を現場まで曳航することができる。図3aおよび図3bは、曳航船20によって風力タービン設置場所まで曳航される浮遊式プラットフォーム2を実際に示す。各曳航船20は、曳航索によってトラス構造10のコーナに連結され、このとき2つの曳航船20は、浮遊式プラットフォーム2を風力タービン設置場所に向けて引っ張り、別の曳航船20は、反力をもたらしている。
【0039】
したがって、本発明は、上記で論じた実施形態を参照して説明されている。実施形態は、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、当業者に周知のさまざまな改変および代替の形を受けやすいことが認識されるであろう。したがって、特定の実施形態について説明してきたが、これらは単なる例であり、本発明の範囲を限定するものではない。
図1
図2
図3A
図3B