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特許7014567アクティブフィルタ、制御方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-24
(45)【発行日】2022-02-01
(54)【発明の名称】アクティブフィルタ、制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H02M 1/12 20060101AFI20220125BHJP
   H02M 7/12 20060101ALI20220125BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20220125BHJP
【FI】
H02M1/12
H02M7/12 H
H02M7/48 M
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017219230
(22)【出願日】2017-11-14
(65)【公開番号】P2019092287
(43)【公開日】2019-06-13
【審査請求日】2020-11-06
(73)【特許権者】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100210572
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 太一
(72)【発明者】
【氏名】石原 有樹
(72)【発明者】
【氏名】角谷 敦之
【審査官】佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-147234(JP,A)
【文献】特開2000-278865(JP,A)
【文献】特開2002-142363(JP,A)
【文献】特開平10-145973(JP,A)
【文献】国際公開第2015/151205(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M1/12,7/48,H02J3/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三相交流電源から負荷へ流れる電流の高調波歪みを補償するアクティブフィルタであって、
前記アクティブフィルタを過電流から保護する保護機能によって前記アクティブフィルタの動作が停止したときのフィルタ電流を記録する記録部と、
前記フィルタ電流に基づいて保護開始電流を決定する決定部と、
フィルタ電流が前記保護開始電流を超えた場合に、前記フィルタ電流が前記保護開始電流以下になるように前記高調波歪みの補償率を調整する調整部と、
を備えるアクティブフィルタ。
【請求項2】
前記調整部は、
フィルタ電流が前記保護開始電流を超えた場合に、前記フィルタ電流が前記保護開始電流以下になるまで、前記補償率から一定の率を減じることを繰り返すことによって、前記補償率を調整する、
請求項1に記載のアクティブフィルタ。
【請求項3】
三相交流電源から負荷へ流れる電流の高調波歪みを補償するアクティブフィルタによる制御方法であって、
前記アクティブフィルタを過電流から保護する保護機能によって前記アクティブフィルタの動作が停止したときのフィルタ電流を記録することと、
前記フィルタ電流に基づいて保護開始電流を決定することと、
フィルタ電流が前記保護開始電流を超えた場合に、前記フィルタ電流が前記保護開始電流以下になるように前記高調波歪みの補償率を調整することと、
を含む制御方法。
【請求項4】
三相交流電源から負荷へ流れる電流の高調波歪みを補償するアクティブフィルタのコンピュータに、
前記アクティブフィルタを過電流から保護する保護機能によって前記アクティブフィルタの動作が停止したときのフィルタ電流を記録することと、
前記フィルタ電流に基づいて保護開始電流を決定することと、
フィルタ電流が前記保護開始電流を超えた場合に、前記フィルタ電流が前記保護開始電流以下になるように前記高調波歪みの補償率を調整することと、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクティブフィルタ、制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
三相交流電源から供給される交流電力を直流電力に変換するコンバータでは、高調波を含む電流が流れることが知られている。この高調波を含む過電流は、電力を供給する三相交流電源側の系統電力を変動させる可能性がある。そのため、系統電力が変動しないように、コンバータに流れる電流の高調波を打ち消す電流を生成するアクティブフィルタと呼ばれる装置が用いられる場合がある。
特許文献1には、関連する技術として、交流電源において異常が発生した場合に、コンバータ回路とインバータ回路とを含み、モータの駆動を継続させるモータ駆動装置に提供する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-022920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、アクティブフィルタには、三相交流電源からコンバータへ流れる電流(以下、「コンバータ電流」と記載)の高調波を打ち消すために生成する電流(以下、「フィルタ電流」と記載)が大きい場合に、そのフィルタ電流の過電流によりアクティブフィルタに不具合が発生しないように、フィルタ電流の生成を停止させる保護機能を備えるものがある。負荷が重い場合には、コンバータから負荷へ流れる電流は大きくなる。そのため、三相交流電源からコンバータへ流れる電流が大きくなり、コンバータ電流に含まれる高調波も大きくなる場合がある。また、三相交流電源からコンバータに供給される交流電圧が正弦波から歪んでいる場合、三相交流電源とコンバータとの間の電位差は、三相交流電源を正弦波と想定した場合の電位差と異なる。そのため、コンバータ電流も想定した電流と大きく異なる場合がある。
上記のように、コンバータ電流が大きくなる場合、コンバータ電流の高調波が大きくなる。そのため、アクティブフィルタでは、高調波を打ち消すためのフィルタ電流が所定の電流の大きさを超えると保護機能が動作し、フィルタ電流の生成を停止させる。そして、アクティブフィルタでは、この停止によってファイル電流が減り、保護機能が解除されてフィルタ電流の生成が再開される。つまり、アクティブフィルタでは、生成されるフィルタ電流が再度所定の電流の大きさを超えると保護機能が動作し、フィルタ電流の生成は停止される。したがって、アクティブフィルタでは、例えば図7に示すような、フィルタ電流の生成とその生成の停止とが繰り返される。つまり、アクティブフィルタは、フィルタ電流が所定の電流を超える場合に、コンバータ電流の高調波を補償しないことになる。
そのため、アクティブフィルタが、三相交流電源からコンバータへ流れるコンバータ電流の高調波を継続的に補償することのできる技術が求められていた。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決することのできるアクティブフィルタ、制御方法及びプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、アクティブフィルタは、三相交流電源から負荷へ流れる電流の高調波歪みを補償するアクティブフィルタであって、前記アクティブフィルタを過電流から保護する保護機能によって前記アクティブフィルタの動作が停止したときのフィルタ電流を記録する記録部と、前記フィルタ電流に基づいて保護開始電流を決定する決定部と、フィルタ電流が前記保護開始電流を超えた場合に、前記フィルタ電流が前記保護開始電流以下になるように前記高調波歪みの補償率を調整する調整部と、を備える。
【0007】
本発明の第2の態様によれば、第1の態様におけるアクティブフィルタにおいて、前記調整部は、フィルタ電流が前記保護開始電流を超えた場合に、前記フィルタ電流が前記保護開始電流以下になるまで、前記補償率から一定の率を減じることを繰り返すことによって、前記補償率を調整してもよい。
【0008】
本発明の第3の態様によれば、制御方法は、三相交流電源から負荷へ流れる電流の高調波歪みを補償するアクティブフィルタによる制御方法であって、前記アクティブフィルタを過電流から保護する保護機能によって前記アクティブフィルタの動作が停止したときのフィルタ電流を記録することと、前記フィルタ電流に基づいて保護開始電流を決定することと、フィルタ電流が前記保護開始電流を超えた場合に、前記フィルタ電流が前記保護開始電流以下になるように前記高調波歪みの補償率を調整することと、を含む。
【0009】
本発明の第4の態様によれば、プログラムは、三相交流電源から負荷へ流れる電流の高調波歪みを補償するアクティブフィルタのコンピュータに、前記アクティブフィルタを過電流から保護する保護機能によって前記アクティブフィルタの動作が停止したときのフィルタ電流を記録することと、前記フィルタ電流に基づいて保護開始電流を決定することと、フィルタ電流が前記保護開始電流を超えた場合に、前記フィルタ電流が前記保護開始電流以下になるように前記高調波歪みの補償率を調整することと、を実行させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の実施形態によるアクティブフィルタによれば、三相交流電源からコンバータへ流れるコンバータ電流の高調波を継続的に補償することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態による電力システムの構成を示す図である。
図2】本発明の一実施形態による制御装置の構成を示す図である。
図3】本発明の一実施形態による電力システムの処理フローを示す図である。
図4】本発明の一実施形態におけるフィルタ電流を説明するための図である。
図5】本発明の一実施形態による電力システムの処理を行った場合の波形例を示す図である。
図6】少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
図7】課題を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施形態>
以下、本発明の一実施形態による電力システムの構成について説明する。
本発明の一実施形態による電力システム1は、三相交流電源から制御対象設備のコンバータへ流れる電流(以下、「コンバータ電流」と記載)の歪みをアクティブフィルタが継続的に補償し、三相交流電源側の電力変動を抑制するシステムである。電力システム1は、図1に示すように、三相交流電源10、制御対象設備20(負荷の一例である)、アクティブフィルタ30、電流センサ40、50を備える。
【0013】
三相交流電源10は、電力系統から供給される電力を用いて生成される120度ごと位相がずれた3つの相を有する電力を制御対象設備20に供給する。
電流センサ40、50のそれぞれは、制御対象設備20のコンバータ電流を検出するセンサである。電流センサ40、50は、3相のうちの2相に流れる電流を検出する。なお、残りの1相に流れる電流については、制御部3022が、3相に流れる電流の総和が0であることに基づいて、電流センサ40、50が検出した電流から算出する。
【0014】
制御対象設備20は、三相交流電源10から供給される電力を用いて動作する設備である。制御対象設備20は、例えば、空気調和機におけるモータを駆動するモータ駆動装置であり、図1に示すように、コンバータ201、平滑化コンデンサ202、インバータ203、モータ204を備える。
【0015】
コンバータ201は、三相交流電源10から供給される交流電力を整流し、直流電力に変換する。
平滑化コンデンサ202は、コンバータ201が生成した直流電力を安定した直流電圧にするためのコンデンサである。
【0016】
インバータ203は、平滑化コンデンサ202に印加される直流電圧を、モータ204を所望の回転数で駆動するための交流電圧に変換する。
モータ204は、インバータ203による変換後の交流電圧に応じた回転数で回転する。
【0017】
アクティブフィルタ30は、図1に示すように、トランジスタ回路301、制御装置302、電流センサ303、304を備える。
トランジスタ回路301は、フィルタ電流を流す回路である。フィルタ電流とは、コンバータ201へ流れるコンバータ電流の高調波歪みを打ち消すために、三相交流電源10とアクティブフィルタ30との間に流す電流のことである。
制御装置302は、アクティブフィルタ30において、過電流が流れないようにフィルタ電流を制御する装置である。制御装置302は、図2に示すように、保護部3021、制御部3022(記録部の一例)、決定部3023、調整部3024、記憶部3025を備える。
【0018】
保護部3021は、フィルタ電流が所定の電流の大きさを超えた場合に、フィルタ電流の生成を停止させる。例えば、保護部3021は、フィルタ電流が所定の電流の大きさを超えた場合に、コンバータ電流の高調波歪みの補償率を0にする指令信号を調整部3024に送信する。
【0019】
制御部3022は、コンバータ電流、フィルタ電流、補償率に基づいて、トランジスタ回路301を制御する。制御部3022は、保護機能によって自アクティブフィルタ30が行う高調波歪みを補償する動作が停止したときのフィルタ電流を記憶部3025に書き込む。
また、制御部3022は、高調波歪みを補償する動作が停止したのちの次回動作時にコンバータ電流、フィルタ電流、保護開始電流、補償率に基づいて、トランジスタ回路301を制御することにより、フィルタ電流を制御する。
決定部3023は、高調波歪みを補償する動作が停止したときのフィルタ電流に基づいて保護開始電流を決定する。例えば、決定部3023は、高調波歪みを補償する動作が停止したときのフィルタ電流値から予め定めた一定の電流値(例えば1アンペア)を減じた電流値を保護開始電流と決定する。
【0020】
調整部3024は、アクティブフィルタ30が高調波歪みを補償する動作の停止状態からその補償を行う動作を再開し、補償する動作を行っている間(次回動作中)にフィルタ電流が保護開始電流を超えた場合に、そのフィルタ電流が保護開始電流以下になるように高調波歪みの補償率を調整する。例えば、調整部3024は、次回動作中にフィルタ電流が保護開始電流を超えた場合に、現在の補償率から一定の率を減じる。なお、調整部3024は、一定の率を減じた補償率についてのフィルタ電流が保護開始電流を超えた場合には、現在の補償率から更に一定の率を減じる。
記憶部3025は、自アクティブフィルタ30が高調波歪みを補償する動作が停止したときのフィルタ電流を記憶する。
【0021】
三相交流電源10は、第1出力端子、第2出力端子、第3出力端子を備える。コンバータ201は、第1入力端子、第2入力端子、第3入力端子、第1出力端子、第2出力端子を備える。平滑化コンデンサ202は、第1端子、第2端子を備える。インバータ203は、第1入力端子、第2入力端子、第1出力端子、第2出力端子、第3出力端子を備える。モータ204は、第1端子、第2端子、第3端子を備える。トランジスタ回路301は、第1端子、第2端子、第3端子、第4端子を備える。制御装置302は、第1入力端子、第2入力端子、第3入力端子、第4入力端子、第5入力端子、第6入力端子、出力端子を備える。電流センサ303、304、40、50のそれぞれは、第1端子、第2端子を備える。
電流センサ303、304のそれぞれは、制御対象設備20に入力される電流を検出する。
【0022】
三相交流電源10の第1出力端子は、制御装置302の第2入力端子、電流センサ303の第1端子、電流センサ40の第1端子のそれぞれに接続される。三相交流電源10の第2出力端子は、コンバータ201の第2入力端子、トランジスタ回路301の第2入力端子のそれぞれに接続される。三相交流電源10の第3出力端子は、制御装置302の第1入力端子、電流センサ304の第1端子、電流センサ50の第1端子のそれぞれに接続される。
【0023】
電流センサ40の第2端子は、コンバータ201の第1入力端子、制御装置302の第3入力端子のそれぞれに接続される。コンバータ201の第3入力端子は、制御装置302の第4入力端子、電流センサ50の第2端子のそれぞれに接続される。コンバータ201の第1出力端子は、平滑化コンデンサ202の第1端子、インバータ203の第1入力端子のそれぞれに接続される。コンバータ201の第2出力端子は、平滑化コンデンサ202の第2端子、インバータ203の第2入力端子のそれぞれに接続される。
インバータ203の第1出力端子は、モータ204の第1端子に接続される。インバータ203の第2出力端子は、モータ204の第2端子に接続される。インバータ203の第3出力端子は、モータ204の第3端子に接続される。
【0024】
トランジスタ回路301の第1端子は、制御装置302の第5入力端子、電流センサ303の第2端子のそれぞれに接続される。トランジスタ回路301の第3端子は、制御装置302の第6入力端子、電流センサ304の第2端子のそれぞれに接続される。トランジスタ回路301の第4端子は、制御装置302の出力端子に接続される。
【0025】
次に、本発明の一実施形態による電力システム1の処理について図3を用いて説明する。なお、ここでは、三相交流電源10が制御対象設備20に供給する電圧が歪んでおり、アクティブフィルタ30において、フィルタ電流が所定の電流の大きさを超えるものとして、特に制御装置302の処理を詳細に説明する。また、高調波歪みの補償率の初期値は100%であるものとする。
【0026】
三相交流電源10は、制御対象設備20に電力を供給する。
制御部3022は、コンバータ電流、フィルタ電流、補償率に基づいて、トランジスタ回路301に制御電圧を供給し、トランジスタ回路301に流れる電流を制御することにより、フィルタ電流を制御する(ステップS1)。具体的には、例えば、コンバータ電流が図4において破線で示される電流である場合、制御部3022は、コンバータ電流とフィルタ電流との総和が図4において実線で示される正弦波となるように、フィルタ電流の制御を行う。なお、制御部3022は、図5の(a)の部分に示すように、補償率が100%になるまで、フィルタ電流を徐々に増加させる制御を行う。
【0027】
保護部3021は、フィルタ電流の大きさと所定の電流の大きさ(例えば図5における第1しきい値)とを比較する。保護部3021は、フィルタ電流の大きさが所定の電流の大きさを超えたか否かを判定する(ステップS2)。
【0028】
保護部3021がフィルタ電流の大きさが所定の電流の大きさを超えていないと判定した場合(ステップS2においてNO)、制御部3022は、補償率が100%であるか否かを判定する(ステップS3)。
【0029】
制御部3022は、補償率が100%ではないと判定した場合(ステップS3においてNO)、ステップS1の処理に戻す。
制御部3022は、補償率が100%であると判定した場合(ステップS3においてYES)、ステップS3の処理を再度行う。
【0030】
保護部3021は、フィルタ電流の大きさが所定の電流の大きさを超えたと判定した場合(ステップS2においてYES)、フィルタ電流の生成を停止させる停止指令信号を制御部3022に送信する。
【0031】
制御部3022は、停止指令信号を保護部3021から受ける。制御部3022は、停止指令信号を受けると、トランジスタ回路301に制御電圧を供給することを停止する。すなわち、制御部3022は、フィルタ電流の生成を停止する(ステップS4)。また、制御部3022は、停止指令信号を受けたとき(すなわち高調波歪みを補償する動作が停止したとき)のフィルタ電流値を記憶部3025に書き込む(ステップS5)。また、制御部3022は、停止指令信号を受けたときのフィルタ電流値を決定部3023に出力する。
【0032】
決定部3023は、制御部3022から高調波歪みを補償する動作が停止したときのフィルタ電流の値を受ける。決定部3023は、高調波歪みを補償する動作が停止したときのフィルタ電流に基づいて保護開始電流を決定する(ステップS6)。例えば、決定部3023は、高調波歪みを補償する動作が停止したときのフィルタ電流値から予め定めた一定の電流値(例えば1アンペア)を減じた電流値を保護開始電流と決定する。このステップS5の処理で決定部3023が決定した保護開始電流は、例えば図5において破線によって示されるフィルタ電流値を示すしきい値であり、第1しきい値よりも小さい値を示すしきい値である。
決定部3023は、決定した保護開始電流の値を制御部3022に出力する。
【0033】
制御部3022は、高調波歪みを補償する動作が停止したのちに再度動作しているときのコンバータ電流、フィルタ電流、保護開始電流、補償率に基づいて、トランジスタ回路301を制御することにより、フィルタ電流を制御する(ステップS7)。
具体的には、制御部3022は、ステップS1の処理と同様に、コンバータ電流が図4において破線で示される電流である場合、コンバータ電流とフィルタ電流との総和が図4において実線で示される正弦波となるように、フィルタ電流の制御を行う。なお、このとき、制御部3022は、図5の(b)の部分に示すように、フィルタ電流が保護開始電流を超えるまで、フィルタ電流を徐々に増加させる制御を行う。
【0034】
制御部3022は、フィルタ電流の大きさと保護開始電流の大きさ(例えば図5における保護開始電流)とを比較する。保護部3021は、フィルタ電流の大きさが保護開始電流の大きさを超えたか否かを判定する(ステップS8)。
制御部3022は、フィルタ電流の大きさが保護開始電流の大きさを超えていないと判定した場合(ステップS8においてNO)、補償率が100%であるか否かを判定する(ステップS9)。
【0035】
制御部3022は、補償率が100%ではないと判定した場合(ステップS9においてNO)、ステップS7の処理に戻す。
制御部3022は、補償率が100%であると判定した場合(ステップS9においてYES)、ステップS9の処理を再度行う。
【0036】
制御部3022は、フィルタ電流の大きさが保護開始電流の大きさを超えていると判定した場合(ステップS8においてYES)、現在の補償率から一定の率を減じる(ステップS10)。制御部3022は、ステップS7の処理に戻す。
【0037】
以上、本発明の一実施形態による電力システム1について説明した。
電力システム1において、制御部3022は、保護機能によってアクティブフィルタ30の動作が停止したときのフィルタ電流を記憶部3025に記録する。決定部3023は、アクティブフィルタ30の動作が停止したときのフィルタ電流に基づいて保護開始電流を決定する。調整部3024は、次回動作中にフィルタ電流が保護開始電流を超えた場合に、フィルタ電流が保護開始電流以下になるように高調波歪みの補償率を調整する。
このようにすれば、フィルタ電流を保護機能が動作する電流未満に抑えることができる。その結果、アクティブフィルタ30は、三相交流電源10から制御対象設備20のコンバータ201へ流れるコンバータ電流の高調波を抑制することができ、アクティブフィルタ30が備える保護機能を動作させることなく継続的にコンバータ電流の高調波歪みを補償することができる。
【0038】
なお、本発明の実施形態において、制御部3022は、高調波歪みを補償する動作が停止したのちの次回動作時にコンバータ電流、フィルタ電流、保護開始電流、補償率に加えて、アクティブフィルタ30における電圧、及び、三相交流電源10とアクティブフィルタ30との接続点における電圧に基づいて、トランジスタ回路301を制御することにより、フィルタ電流を制御するものであってもよい。
【0039】
なお、本発明の実施形態における処理は、適切な処理が行われる範囲において、処理の順番が入れ替わってもよい。
【0040】
本発明の実施形態について説明したが、上述の電力システム1、制御対象設備20、アクティブフィルタ30、その他の制御装置は内部に、コンピュータシステムを有していてもよい。そして、上述した処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。コンピュータの具体例を以下に示す。
図6は、少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
コンピュータ5は、図6に示すように、CPU6、メインメモリ7、ストレージ8、インターフェース9を備える。
例えば、上述の電力システム1、制御対象設備20、アクティブフィルタ30、その他の制御装置のそれぞれは、コンピュータ5に実装される。そして、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式でストレージ8に記憶されている。CPU6は、プログラムをストレージ8から読み出してメインメモリ7に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、CPU6は、プログラムに従って、上述した各記憶部に対応する記憶領域をメインメモリ7に確保する。
【0041】
ストレージ8の例としては、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、半導体メモリ等が挙げられる。ストレージ8は、コンピュータ5のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インターフェース9または通信回線を介してコンピュータ5に接続される外部メディアであってもよい。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ5に配信される場合、配信を受けたコンピュータ5が当該プログラムをメインメモリ7に展開し、上記処理を実行してもよい。少なくとも1つの実施形態において、ストレージ8は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0042】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現してもよい。さらに、上記プログラムは、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるファイル、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例であり、発明の範囲を限定しない。これらの実施形態は、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の追加、省略、置き換え、変更を行ってよい。
【符号の説明】
【0044】
1・・・電力システム
10・・・三相交流電源
20・・・制御対象設備
30・・・アクティブフィルタ
40、50、303、304・・・電流センサ
201・・・コンバータ
202・・・平滑化コンデンサ
203・・・インバータ
204・・・モータ
301・・・トランジスタ回路
302・・・制御装置
3021・・・保護部
3022・・・制御部
3023・・・決定部
3024・・・調整部
3025・・・記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7