(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-24
(45)【発行日】2022-02-01
(54)【発明の名称】変化する球面収差を補正する補正ユニットを備えた顕微鏡
(51)【国際特許分類】
G02B 21/06 20060101AFI20220125BHJP
【FI】
G02B21/06
(21)【出願番号】P 2017503525
(86)(22)【出願日】2015-07-21
(86)【国際出願番号】 EP2015066649
(87)【国際公開番号】W WO2016012450
(87)【国際公開日】2016-01-28
【審査請求日】2018-07-06
【審判番号】
【審判請求日】2020-07-09
(31)【優先権主張番号】102014110208.8
(32)【優先日】2014-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】511079735
【氏名又は名称】ライカ マイクロシステムズ シーエムエス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Leica Microsystems CMS GmbH
【住所又は居所原語表記】Ernst-Leitz-Strasse 17-37, D-35578 Wetzlar, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100165940
【氏名又は名称】大谷 令子
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン シュルツ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン シューマン
(72)【発明者】
【氏名】コーネル ゴンシオア
(72)【発明者】
【氏名】トビアス バウアー
【合議体】
【審判長】瀬川 勝久
【審判官】山村 浩
【審判官】松川 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-264637(JP,A)
【文献】特開平10-227977(JP,A)
【文献】特開2006-79000(JP,A)
【文献】特開2005-266585(JP,A)
【文献】特開2010-26165(JP,A)
【文献】特開2006-119159(JP,A)
【文献】特開平3-131811(JP,A)
【文献】特開2005-316068(JP,A)
【文献】特開平5-134186(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B21/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変化する球面収差を補正する、ビーム路に配置された少なくとも1つの補正ユニット(10)を備えた顕微鏡(21、4
0)において、
前記補正ユニット(10)には、少なくとも1つの光学補正素子(12)が含まれており、前記光学補正素子(12)は、前記ビーム路の収束又は発散領域(14)において光軸(O)に沿って移動可能に配置されており、
前記光学補正素子は、少なくとも1つの補正面(18)を有しており、
前記ビーム路の前記収束又は発散領域(14)が通過する、前記補正面(18)の部分は、補正有効面部分(20)を構成しており、前記補正有効面部分(20)の、前記光軸(O)に対して横方向の、半径方向の寸法は、前記光軸(O)に沿った前記補正素子(12)の移動によって変更可能であり、
前記顕微鏡は、主ビームスプリッタ(24)と走査モジュール(26)との間に前記補正ユニット(10)が配置されている走査顕微鏡(21)である、又は、
前記顕微鏡は、光源(22)と主ビームスプリッタ(24)及び走査モジュール(26)との間、及び/又は、検出器(34)と前記主ビームスプリッタ(24)及び前記走査モジュール(26)との間に少なくとも1つの前記補正ユニット(10)が配置されて
いる走査顕微鏡(40)であり、
前記補正面(18)は、オーバル状の放物面から構成されており、
前記補正面(18)は、前記光軸(O)に沿って前記補正素子(12)を移動させることによって発生する、前記補正有効面部分(20)の前記
寸法の変更により、屈折率不整合によって形成される前記球面収差が補正されるように構成されている
、
ことを特徴とする顕微鏡(21、4
0)。
【請求項2】
前記補正面(18)は、前記光軸(O)の周りに回転対称に形成されている、
請求項1に記載の顕微鏡(21、4
0)。
【請求項3】
前記補正ユニット(10)に作用結合されておりかつ前記補正素子(12)の前記移動によって発生する焦点はずれを補償する焦点合わせ駆動部(32)を有する、
請求項1または2に記載の顕微鏡(21、4
0)。
【請求項4】
前記補正ユニット(10)には、適合光学系(15)が含まれており、
前記適合光学系(15)は、前記ビーム路において前記補正素子(12)に後置されており、かつ、前記適合光学系(15)が、前記補正素子(12)を通過する光束(16)をコリメートするように構成されている、
請求項1から3までのいずれか1項に記載の顕微鏡(21、4
0)。
【請求項5】
前記適合光学系(15)は、前記補正素子(12)を通過する前記光束(16)の束断面が、対物レンズ瞳の大きさに適合可能であるように構成されている、
請求項4に記載の顕微鏡(21、4
0)。
【請求項6】
前記適合光学系(15)には、ズーム系が含まれている、
請求項4又は5に記載の顕微鏡(21、4
0)。
【請求項7】
前記ビーム路の前記収束又は発散領域(14)を形成する光学素子(3
6)を有する、
請求項1から6までのいずれか1項に記載の顕微鏡(21、4
0)。
【請求項8】
前記光学素子は、光ファイバである、
請求項7に記載の顕微鏡(21、4
0)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変化する球面収差を補正する、ビーム路に配置された少なくとも1つの補正ユニットを備えた顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
顕微鏡を用いて生物試料内に焦点を合わせる場合、屈折率不整合による球面収差が発生することがあり、この球面収差は、試料の奥行きに依存して変化する。この収差は、分解能及びコントラストの低下に結び付く。さらにこの収差により、対物レンズの作動距離と、試料内で発生する吸収及び散乱と共に、試料への最大の進入深さが制限される。
【0003】
球面収差を補正するため、補正リングを有する複数の対物レンズが存在し、この補正リングは、光軸に沿って対物レンズ内のレンズ群を移動する。対物レンズの光学的な設計時には、補正に使用されるこのレンズ群を考慮しなければならない。一般的にこのレンズ群は、高額な機械的なコストによってしか具現化することができない。特に、後付けで対物レンズにこのような補正ユニットを備え付けることはできない。
【0004】
欧州特許出願公開第0859259号明細書(EP 0 859 259 A2)には、球面収差を補正するため、対物レンズとチューブレンズとの間にアダプタピースを配置することが提案されており、ここでこのアダプタピースは、互いに接合された複数のレンズからなり、かつ、これらを用いることにより、変化する球面収差を導入ないしは補償することができる。しかしながらここで提案された対物レンズのすぐ上の配置構成は一般的に、系全体の同焦点距離を変化させる。さらに上記のアダプタピースは、焦点距離の異なる複数の対物レンズの瞳孔径が異なることに起因して、必然的に対物レンズ固有に構成しなければならない。
【0005】
米国特許第8659827号明細書(US 8 659 827 B2)には、無限ビーム路に配置される調整可能な無限遠系が開示されており、この無限遠系は、球面収差を導入ないしは補償することが可能である。この無限遠系は、光が同時に異なる複数の視野点に伝搬する複数のビーム路の領域に配置されているため、視野全体に対してこの系を補正しなければならない。これにより、得られる補正効果が大きく制限される。
【0006】
国際公開第2012/025349号(WO 2012/025349 A1)には、球面収差を補償するため、互いに横方向に移動可能な自由形状面を有する補正系が示されている。しかしながらこの補正系に必要な自由形状面は、構成が複雑であるため、作製にコストがかかる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、冒頭に述べたタイプの顕微鏡を発展させて、変化する球面収差、特に屈折率不整合によって発生する収差の補正を、高い信頼性でかつ簡単な技術手段で可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、本発明により、請求項1に記載した特徴的構成を備えた顕微鏡によって解決される。
【0009】
本発明では、顕微鏡に設けられている補正ユニットに、少なくとも1つの光学補正素子が含まれており、ここでこの光学補正素子は、ビーム路の収束又は発散領域において、光軸に沿って移動可能に配置されている。この光学補正素子は、少なくとも1つの補正面を有しており、ビーム路の収束又は発散領域が通過する、この補正面の部分は、補正有効面部分を構成しており、補正有効面部分の、光軸に対して横方向の、半径方向の寸法は、光軸に沿った補正素子の移動によって変更可能である。
【0010】
本発明では、補正素子がビーム路の収束又は発散領域において軸方向に移動させられることにより、補正面の光学的に有効な面部分を好みに合わせて変更することができ、これによって補正素子を通過する光束の波面に所望のように影響が及ぼされる。特にこれにより、補正素子の、補正有効面部分によって発生する波面の変形を正確に調整して、屈折率不整合によって発生する波面誤差が補償される。補正素子はこのために、1つの光学素子として、又はレンズ群もしくは接合部材として構成することが可能である。
【0011】
補正素子の軸方向の移動は、手動又はモータ駆動で行うことが可能である。この補正素子の調整を制御プログラムを用いて行う制御部を設けることも可能である。
【0012】
さらに本発明による補正ユニットを構成して、この補正ユニットが、交換又は切り換え可能に前段に保持された種々異なる複数の補正素子を含むようにする、ことも可能である。これらの補正素子の交換又は切り換えはここでも、手動、モータ駆動で行うことができ、又は制御プログラムの使用によって行うこともできる。
【0013】
補正素子は有利には、非球面屈折素子、例えば光軸の周りの回転対称の非球面レンズであり、このレンズは、光屈折性材料、有利には光学ガラスから作製される。
【0014】
しかしながらこの補正素子は、回折素子から、例えばフレネルゾーンプレート又はホログラムから構成することも可能である。
【0015】
上記の補正素子は有利には色消しされている。しかしながら色消しされていない素子を使用することも可能である。当然のことながらこれが当てはまるのは特に、狭帯域の光又は単色レーザ光で動作する場合である。
【0016】
ここでは、屈折率不整合によって引き起こされる波面誤差を解析的につぎのように示すことができる。すなわち、
【数1】
ここでn
1及びn
2は、互いに接する媒体の屈折率を示しており、これに対し、ρは対物レンズ瞳における相対的な動径座標、αは対物レンズの開口角、dは、屈折率n
2の媒体への進入深さを示す。
【0017】
ここでこの波面誤差は、例えばいわゆるゼルニケ多項式に展開することができ、これは、例えばP. Toeroek, P. Varga, G. Nemeth, "Analytical solution of the diffraction integrals and interpretation of wave-front distortion when light is focused through a planar interface between materials of mismatched refractive indices"、J. Opt. Soc. Am. A.、Vol 12、Issue 12、2660-2671 (1995)に説明されている。この展開式の最低次数はまさに、屈折率不整合によって発生しかつ専門家には"fish tank effect"という名称でも知られている焦点はずれに対応する。これに対して、より高次の次数は、再焦点合わせできない収差に対応する。補償すべきこの波面誤差は、補正素子の表面形状の設計に対するベースとして使用可能である。
【0018】
この補正面の表面形状は有利には、多項式展開に基づいて表すことができる。補正素子を通過する際の光の所望の波面変形は、ひいては補正素子の所望の表面形状は、上記の回転対称のゼルニケ多項式に基づくパラメタ設定によって示すことが可能である。しかしながら、上記の多項式展開は特にゼルニケ多項式に基づいて行う必要はなく、別の多項式展開も適用できることに注意しておく。
【0019】
考えられ得る別の実施形態において上記の補正面は、オーバル状の放物面から構成され、その頂点は有利には光軸上にある。この場合、光軸を含む部分において補正面は、放物線の形状を有する。
【0020】
特に有利な実施形態では、光軸に沿って補正素子を移動することによって発生する、補正有効面部分の変化により、屈折率不整合によって形成される球面収差が補正されるように上記の補正面を構成する。このことが意味するのは、この実施形態において、補正素子を軸方向に移動した際に、屈折率不整合によって試料に発生した焦点はずれに加えて、焦点はずれが導入されないことである。
【0021】
別の有利な実施形態において、補正ユニットは、有利には自動化された焦点合わせ駆動部に作用結合されており、この焦点合わせ駆動部により、補正素子の軸方向の移動によって発生した焦点はずれが補償される。これにより、補正素子の軸方向の移動によって導入された焦点はずれは、例えば、補正面の表面形状を考慮して計算によって算出することができる。この場合にこの焦点合わせ駆動部は、計算によって求めた焦点はずれに依存して駆動制御されて、対応しかつ補償を行う再焦点合わせが行われ得る。
【0022】
本発明による顕微鏡には有利には適合光学系が含まれており、この適合光学系は、ビーム路において補正素子に後置されており、かつ、この適合光学系が、補正素子を通過する光束をコリメートするように構成されている。コリメートを行う適合光学系を補正ユニットにこのように組み込むことにより、後付けの枠内において、大きなコストなしにコリメートされる顕微鏡のビーム路に補正ユニットを使用することができる。
【0023】
特に有利な実施形態ではさらに上記の適合光学系は、補正素子を通過する光束の束断面が、対物レンズ瞳の大きさに適合可能であるように構成されている。これにより、好みに合わせて種々異なる対物レンズに補正ユニットを設計することができる。
【0024】
上記の適合光学系には有利には、補正素子を通過する光束の束断面を連続して変化させることが可能なズーム系が含まれている。このズーム設定は、手動、モータ駆動又は制御プログラムを用いて行うことが可能である。
【0025】
ズーム系の代わりに、束断面の段階的な適合化を可能にする、不連続に切り換え可能な光学ユニットを使用することも可能である。
【0026】
本発明による顕微鏡は有利には、ビーム路の収束又は発散領域を形成する光学素子を有する。この素子は、例えば、コリメートされていないファイバ出口によってビーム路の所望の操作が行われる光ファイバによって具現化することができる。しかしながらここでは、光ファイバの代わりに、ビーム路の収束ないしは発散領域を形成する1つ以上の適切なレンズを使用することも可能である。
【0027】
本発明による顕微鏡は有利には、スキャン顕微鏡又は走査顕微鏡、特にコンフォーカル顕微鏡又はマルチフォトン顕微鏡である。コンフォーカル顕微鏡の場合、補正ユニットは有利には主ビームスプリッタと走査系との間に配置される。コンフォーカル顕微鏡の上記の箇所には軸ビームだけが観察されるため、補正素子の光学的な設計が格段に容易になる。しかしながらここでは、光源と走査モジュールとの間、又は検出器と走査モジュールとの間に補正ユニットを配置することも可能である。1つが光源と走査モジュールとの間に、また別の1つが検出器と走査モジュールとの間に配置される、本発明による2つの補正ユニットを設けることも可能である。マルチフォトン顕微鏡では、本発明による補正ユニットは有利には光源と走査モジュールとの間に設けられる。
【0028】
以下では種々異なる複数の実施例に基づき、図面を参照して本発明を詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】顕微鏡ビーム路の収束領域の種々異なる複数の軸位置に配置されている非球面補正素子を備えた本発明による補正ユニットの概略図である。
【
図2】非球面補正素子を通過する光束の束断面の、適合光学系による操作を説明する概略図である。
【
図3】主ビームスプリッタと走査モジュールとの間に本発明による補正ユニットが配置されているコンフォーカル顕微鏡の概略図である。
【
図4】光源と主ビームスプリッタとの間にも、検出器と主ビームスプリッタとの間にも共に本発明による補正ユニットが1つずつ配置されているコンフォーカル顕微鏡の概略図である。
【
図5】光源と走査モジュールとの間に本発明による補正ユニットが配置されているマルチフォトン顕微鏡を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1には、全体的に参照符号10で示される補正ユニットが示されており、この補正ユニット10は、光顕微鏡における使用のために設けられている。この補正ユニット10は、光顕微鏡において屈折率不整合によって発生しかつ試料の奥行きに依存して変化する球面収差を補正するために使用される。
【0031】
補正ユニット10には、光学補正素子12及び適合光学系15が含まれている。補正素子12は、補正素子12に入射する光束16の複数のエッジビームが、光軸Oに向かって合流する、顕微鏡ビーム路の領域14に配置されている。
【0032】
この実施例において補正素子12は、光屈折性材料、例えば光学ガラスからなるレンズ素子であり、このレンズ素子は、入射する光束16側を向いたその面に非球面レンズ面18を有する。非球面レンズ面18は、オーバル状の回転楕円体の形状を有しており、その頂点は、光軸O上にある。これにより、
図1に示した、光軸を含む部分において、非球面レンズ面18は、放物線の形状を有する。
【0033】
非球面レンズ面18は、補正面を構成しており、光軸Oが延在しているその中央の面部分だけにおいて、上記のビーム路の収束領域14がこの補正面を通っており、これに対して、軸から遠い、補正面18のエッジ部分は、ビーム路の収束領域14の半径方向外側に配置されている。ビーム路の収束領域14が通過する、補正面18の部分を以下では、補正有効面部分20と称する。
【0034】
本発明では、補正素子12を光軸Oに沿って移動し、これによって光軸Oに対して横方向の、中央の補正有効面部分20の半径方向の寸法が、補正すべき球面収差に依存して変化するようにする。補正有効面部分20のこの変化は、
図1において、補正素子12の異なる3つの軸位置に対して示されている。これにより
図1からわかるのは、この補正素子12が、光の方向とは逆に(
図1では右から左に)光軸Oに沿って移動する場合、光軸Oに対して回転対称な非球面面部分20が、ビーム路領域の収束14により、半径方向に外側に向かって大きくなることである。補正有効面部分20の変化に伴い、補正素子12によって得られる補正作用が変化するため、光軸Oに沿った補正素子12の適切な位置決めにより、試料の奥行きと共に変化する収差を補正することができる。
【0035】
補正ユニット10に含まれる適合光学系15は、補正素子12を通過する光束16をコリメートして、適合光学系15から出射した後、このビーム路が平行になるようにする、という機能を有する。適合光学系15はさらに、
図1に示していない顕微鏡対物レンズの瞳径に光束16の断面を適合させるために使用される。
【0036】
この実施例において、適合光学系15は、コリメートされた光束の束断面18を連続的に変化させることができるズーム系である。
図2では適合光学系15の異なる3つのズーム設定と、適合光学系15から出射する光束16の対応する束断面と、が示されている。
【0037】
図3~
図5には純粋に例示的に、補正ユニット10の種々異なる適用例が示されている。
【0038】
図3には、コンフォーカル顕微鏡21が純粋に略示されており、この顕微鏡21には、光源22と、主ビームスプリッタ24と、走査モジュール26と、対物レンズ28と、制御部30と、焦点合わせ駆動部32と、検出器34と、が含まれている。さらにコンフォーカル顕微鏡21には、上で
図1及び
図2を参照して説明した補正ユニット10が設けられており、この補正ユニット10に集光レンズ36が前置されている。集光レンズ36により、ビーム路の収束領域14が形成され、この収束領域14において補正ユニット10の補正素子12が軸方向に移動される。
図3に示した適用例では、補正ユニット10は、主ビームスプリッタ24と走査モジュール26との間に配置されている。
【0039】
制御部30は特に、補正すべき球面収差に依存し、例えば適切なモータにより、ビーム路の収束領域14において、補正素子12を軸方向に移動する機能を有する。補正ユニット10は、制御部30を介して焦点合わせ駆動部32にも結合されている。補正ユニット10をこのようにして焦点合わせ駆動部32に接続することにより、補正素子12の軸方向の移動によって発生する焦点はずれを補償することができ、ここでこの補償は、制御部30の制御下で焦点合わせ駆動部32をトリガし、対応する再焦点合わせをすることによって行われる。これは、例えば制御部30によって出力される制御信号に基づいて行われ、この制御信号には、補正素子12によって発生した焦点はずれが含まれる。これにより、例えば、非球面補正面18の表面形状及び補正素子12の軸方向の移動から、計算によって上記の焦点はずれを求めることができる。
【0040】
図4には別の適用例、すなわち本発明による2つの補正ユニット10及び10’を有するコンフォーカル顕微鏡40が示されている。その他の点において、
図4では、
図3に示したコンポーネントに対応する顕微鏡コンポーネントに同じ参照符号が付されている。
【0041】
図4に示したコンフォーカル顕微鏡40において第1補正ユニット10’は、光源22と主ビームスプリッタ24との間のビーム路に設けられている。
【0042】
図示した例において、光源22から送出される光束は、発散して第1補正ユニット10’に入射するため、収束した光束を受け取る
図1に示した補正ユニットとは異なり、この第1補正ユニット10’は、(
図4には明示的に示していない)その適合光学系が変更されている。したがって補正ユニット10’の適合光学系は、収束する光束ではなく発散する光束を、コリメートされた光束に変換するように設計されている。
【0043】
主ビームスプリッタ24と検出器34との間のビーム路に配置された第2補正ユニット10はここでも、
図1に示したユニットに対応する。第2補正ユニット10には集光レンズ38が後置されており、この集光レンズ38は、補正ユニット10から出射する発散した光束をコリメートする。
【0044】
図5には、ここでも純粋に概略的に、マルチフォトン顕微鏡60が示されており、ここでは、
図1に示した補正ユニット10は、光源22と走査モジュール26との間に配置されている。補正ユニット10には集光レンズ62が前置されており、この集光レンズ62により、光源22から送出されかつコリメートされた光束が、収束された光束に変換され、つぎにこの光束に補正ユニット10が上記のように作用して、球面収差が補正される。
【0045】
ここで指摘したいのは、
図3~
図5に示した適用例は、純粋に例示的なものと理解すべきであり、また本発明による補正コンセプトを逸脱することなく、理屈に適ったように変更しかつ補足できることである。例えば、上記では、焦点合わせ駆動部32への補正ユニット10の接続を
図3の適用例だけに対して説明していた。
図4及び
図5に示した例にもこのような接続を補足できることは自明である。